説明

導電膜形成用基体、導電膜及び導電膜の製造方法

【課題】インク受容層の塗布むらを抑制し、併せて、ヘイズの低減、グラビア印刷等を行った場合の滲み防止を図る。
【解決手段】支持体と、該支持体上に形成されたインク受容層とを有する導電膜形成用基体である。インク受容層は、無機微粒子と樹脂とを含有し、無機微粒子と樹脂との屈折率差が0.05以内であって、且つ、無機微粒子の粒径が0.12μm以上0.50μm以下である。無機微粒子はシリカであることが好ましい。樹脂はエチルセルロース又はアクリルを使用することができる。インク受容層の厚みが10μm以上、50μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜形成用基体及びこれを用いて形成された導電膜並びに導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro−Magnetic Interference:EMI)が急増している。EMIは電子・電気機器の誤動作や障害の原因になるほか、これらの装置のオペレータに健康障害を与えることも指摘されている。このため、電子・電気機器では、電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
上記EMIの対策には、電磁波をシールドする必要があるが、それには金属の電磁波を貫通させない性質を利用すればよい。例えば、筐体を金属体又は高導電体にする方法や回路基板と回路基板との間に金属板を挿入する方法、ケーブルを金属箔で覆う方法等が採用されている。しかし、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(プラズマディスプレイパネル)等のディスプレイでは、オペレータが画面に表示される文字等を認識する必要があるため、電磁波をシールドする部材には透明性が要求される。
【0004】
特に、PDPは、CRTと比較すると多量の電磁波を発生するため、より強い電磁波シールド能が求められている。電磁波シールド能は、簡便には表面抵抗率で表すことができ、CRT用の透光性電磁波シールド材料では、表面抵抗率は約300オーム/sq以下であることが要求されるのに対し、PDP用の透光性電磁波シールド材料では2.5オーム/sq以下が要求され、PDPを用いた民生用プラズマテレビでは1.5オーム/sq以下(望ましくは0.1オーム/sq以下)という極めて高い導電性が要求されている。
【0005】
また、透明性に関する要求レベルは、CRT用として約70%以上、PDP用として80%以上が要求されており、さらに高い透明性のものも望まれている。
【0006】
上記の要求から、以下に示されるように、開口部を有する金属メッシュを利用して電磁波シールド性と透明性とを両立させる種々の部材がこれまで提案されている。
【0007】
(1)導電性繊維
例えば特許文献1には、導電性繊維からなる電磁波シールド材が開示されている。しかし、このシールド材はメッシュ線幅が太く、ディスプレイ画面に配置すると、画面が暗くなり、ディスプレイに表示された文字が見えにくいという欠点がある。
【0008】
(2)フォトリソグラフ法により形成されたメッシュ
フォトリソグラフ法を利用したエッチング加工により、透明基体上に金属薄膜のメッシュを形成する方法が提案されている(例えば特許文献2〜5等参照)。しかし、その製造工程は煩雑、且つ、複雑で、生産コストが高価になるという間題点があった。
【0009】
(3)印刷方式により形成されたメッシュ
スクリーン印刷等の印刷法で無電解めっき触媒を含んだインクを格子状パターンに印刷し、次いで無電解めっきを行う方法が提案されている(例えば特許文献6及び7等参照)。しかし、印刷される線幅は60μm程度と太く、ディスプレイの用途としては不適切であった。
【0010】
印刷方式における線幅を狭小化する方法として、インクに可溶な樹脂又はインクを吸収できる樹脂と、平均粒径0.1μm以下の粒子とを用いたインク受容層をベース上に設ける方法が提案されている(例えば特許文献8及び9参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平5−327274号公報
【特許文献2】特開2003−46293号公報
【特許文献3】特開2003−23290号公報
【特許文献4】特開平5−16281号公報
【特許文献5】特開平10−338848号公報
【特許文献6】特開平11−170420号公報
【特許文献7】特開平5−283889号公報
【特許文献8】特開2002−38095号公報
【特許文献9】特許第3895229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献8や9において、例えばグラビア印刷で印刷層を形成する場合、例えばスクリーン印刷等と比してインク中の溶媒割合が多く、また、それによりインク粘度が低いことから、平均粒径0.1μm以下の粒子を用いると、印刷時に滲みが発生し、線幅が大きくなるという問題がある。そこで、高い液体吸収性をもったインク受容層を用いることが必要となるが、この液体吸収性を高めるためには、インク受容層に含有される粒子の平均粒径を大きくすることが考えられる。しかし、むやみに平均粒径を大きくすると、導電膜形成用基体のヘイズが増加するおそれがあり、また、インク受容層の塗布むらが発生しやすく、印刷層中の粒子がインク受容層側に流れてしまい、やはり、滲みによる線幅の拡大が問題となる。インク受容層の厚みを厚くすることも考えられるが、導電膜形成用基体のヘイズが増加し、白濁してしまう傾向がある。
【0013】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、インク受容層の塗布むらを抑制し、併せて、ヘイズの低減、グラビア印刷等を行った場合の滲み防止を図ることができ、高精細の印刷層、金属層を形成することができる導電膜形成用基体及びそれを用いて形成された導電膜並びに導電膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
【0015】
[1] 第1の本発明に係る導電膜形成用基体は、支持体と、前記支持体上に形成されたインク受容層とを有する導電膜形成用基体において、前記インク受容層は、無機微粒子と樹脂とを含有し、前記無機微粒子と前記樹脂との屈折率差が0.05以内であって、且つ、前記無機微粒子の粒径が0.12μm以上0.50μm以下であることを特徴とする。
【0016】
[2] 第1の本発明において、前記無機微粒子がシリカであることを特徴とする。
【0017】
[3] 第1の本発明において、前記樹脂がエチルセルロース又はアクリルであることを特徴とする。
【0018】
[4] 第1の本発明において、前記樹脂(A)と前記無機微粒子(B)の重量比率(A:B)が1:3〜1:50であることを特徴とする。
【0019】
[5] 第1の本発明において、前記インク受容層上に、さらに金属粒子及び樹脂を含有する印刷層を有することを特徴とする。
【0020】
[6] 第1の本発明において、前記インク受容層の厚みが10μm以上、50μm以下であることを特徴とする。
【0021】
[7] 第1の本発明において、前記印刷層が格子状であることを特徴とする。
【0022】
[8] 第1の本発明において、前記金属粒子が無電解めっき用触媒としての性能を備えていることを特徴とする。
【0023】
[9] 次に、第2の本発明に係る導電膜は、上述した第1の本発明に係る導電膜形成用基体に対し、無電解めっきを施すことで得られることを特徴とする。
【0024】
[10] 次に、第3の本発明に係る導電膜の製造方法は、支持体と、該支持体上に形成されたインク受容層とを有する導電膜形成用基体の前記インク受容層上に金属粒子及び樹脂を含有する印刷層をグラビア印刷する工程と、前記印刷層が形成された前記導電膜形成用基体に対して、無電解めっきを施して、前記印刷層に金属層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0025】
[11] 第3の本発明において、前記グラビア印刷の速度が1m/分以上、30m/分以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る導電膜形成用基体、導電膜及び導電膜の製造方法によれば、インク受容層の塗布むらを抑制し、併せて、ヘイズの低減、グラビア印刷等を行った場合の滲み防止を図ることができ、高精細の印刷層、金属層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の導電膜形成用基体及び導電膜の実施形態を説明する。
【0028】
本発明の導電膜形成用基体は、支持体と、支持体上に形成されたインク受容層とを有する。
【0029】
特に、インク受容層は、無機微粒子と樹脂とを含有し、無機微粒子と樹脂との屈折率差が0.05以内であって、且つ、無機微粒子の粒径が0.12μm以上、0.50μm以下である。無機微粒子の粒径は、好ましくは0.20μm以上、0.30μm以下である。
【0030】
無機微粒子の平均粒径を0.12μm以上、0.50μm以下とすることで、印刷用インクの溶媒(有機溶剤)の吸収性を高めることができる。この場合、平均粒径を0.1μmよりも大きくすることから、導電膜形成用基体のヘイズの増加が懸念されるが、無機微粒子と樹脂との屈折率差を0.05以内にすることで、無機微粒子の粒径を0.12μm以上、0.50μm以下にしても、導電膜形成用基体のヘイズの増加を抑制することができる。なお、無機微粒子の平均粒径が0.50μmを超えると、インク受容層上に無電解めっき触媒能を有する金属粒子含有インクを印刷した場合に、インク受容層中に吸収された金属粒子が印刷箇所に留まることなくインク受容層の内部に広がるため、めっき前におけるインク受容層上の見かけの印刷線幅が制御できていたとしても、めっき後に出来上がる線幅は印刷線幅よりも大きくなってしまうおそれがある。
【0031】
インク受容層に含有する無機微粒子としては、シリカを用いることが好ましい。シリカを用いることで、アルミナ等の他の無機微粒子と比してインク受容層の塗布むらを低減することができる。
【0032】
このように、本実施の形態に係る導電膜形成用基体においては、インク受容層の塗布むらを低減でき(印刷用インクによるパターン形成を設計パターンに忠実に行えることにつながる:再現性の向上)、且つ、印刷用インクの溶媒の吸収性を高めることができ(線幅の縮小化につながる)、且つ、ヘイズの増加の抑制(透明性の確保につながる)を実現することができる。
【0033】
インク受容層に含有する樹脂としては、例えばエチルセルロース(屈折率=1.48)、アクリル(屈折率=1.49)、ポリエチレン(屈折率=1.52)又はエポキシ(屈折率=1.56)等を用いることができるが、無機微粒子としてシリカを用いた場合は、エチルセルロース又はアクリルを用いることが好ましい。無機微粒子と樹脂との屈折率差を0.05以内にすることができるからである。
【0034】
インク受容層中の樹脂と無機微粒子の比は重量比で1:3〜1:50とすることが好ましく、1:4〜1:15とすることがより好ましく、1:5〜1:10とすることがさらに好ましい。樹脂1に対して無機微粒子が3よりも少ない場合は、インク受容層中に十分な空隙が形成されず、印刷時において、受容層表面におけるにじみが発生しやすくなる傾向がある。他方、50よりも大きい場合は、樹脂によるバインダー効果が十分に得られず、膜強度、密着性の低下を招く傾向がある。また、ヘイズも増加し、透明性も失ってしまうおそれもある。
【0035】
インク受容層の膜厚は、10〜50μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。膜厚が上記下限値未満であると、液吸収性が低下し、にじみが発生してしまう傾向がある。他方、上記上限値を越えると、塗布むらやヘイズが増加してしまう傾向がある。
【0036】
支持体は、めっき液に対して耐性を有し、耐薬品性があり、且つ、透明性、絶縁性、機械的強度等があれば、種々の材料が使用可能であり、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂等が例として挙げられる。また、インク受容層は支持体上に直接形成してもよいが、密着性が得にくいような場合は支持体とインク受容層との間に易接着層を設けてもよい。
【0037】
導電膜形成用基体中の印刷層は、無電解めっき触媒能を有する金属粒子と疎水性樹脂を含有する。また、この印刷層は、前記無電解めっき触媒能を有する金属粒子と疎水性樹脂に加えて有機溶剤を構成物に含む印刷インクをインク受容層上に印刷することで得られる。
【0038】
印刷層中の無電解触媒能を有する金属粒子の例としてはPd、Au、Ag、Pt等が挙げられ、これらを単体、もしくは2種類以上を混合して使用することができる。また、これら金属粒子をセラミックス等他の粒子に担持させた状態であってもよい。
【0039】
印刷層中の疎水性樹脂としては、めっき液に対して耐性を有し、耐薬品性があり、且つ、インク受容層に対して良好な密着性が得られれば特に限定されることなく、種々のものが使用可能である。例えば、エチルセルロース、プロピルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0040】
有機溶剤については、金属粒子の分散が可能であり、樹脂を溶解可能であれば特に限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系、シクロヘキサノン等の環化脂肪族系、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系、イソプロピルアルコール、α−テルピネオール等のアルコール系等の溶剤が使用可能であり、これら有機溶剤を印刷方式や条件等に応じて選択する必要がある。また、これら有機溶剤は単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
印刷層の形状としては格子状にパターニングされ、非印刷部における光透過性を保持したものがよい。また、このパターンにおけるライン幅を、30μm以下、開口率を80%以上にすることで、より透光性が良好な導電膜形成用基体を得ることができる。
【0042】
印刷方法としては、特に制限はないが、安定的に印刷ラインの均一性が得られるという点からスクリーン印刷やグラビア印刷を用いることが好ましい。
【0043】
本発明に係る導電膜は、上述の導電膜形成用基体に形成された無電解触媒能を有する金属粒子を含有する印刷層に対し、無電解めっきを施すことで得ることができる。無電解めっきに用いることが可能な金属種としては、Cu、Ag、Au、Ni等が挙げられ、中でもCuを用いることが好ましい。
【0044】
すなわち、本発明に係る導電膜の製造方法は、支持体と、該支持体上に形成されたインク受容層とを有する導電膜形成用基体のインク受容層上に金属粒子及び樹脂を含有する印刷層をグラビア印刷する工程と、印刷層が形成された導電膜形成用基体に対して、無電解めっきを施して、印刷層に金属層を形成する工程とを有する。
【0045】
この場合、グラビア印刷の速度を1m/分以上、30m/分以下とすることが好ましい。これにより、印刷用インクによるパターン形成を設計パターンに忠実に行うことができ、パターン形成の再現性を向上させることができる。しかし、上述の範囲を逸脱した範囲ではパターン形成の再現性が低下してしまう。1m/分未満では未転写箇所の溶剤までもが転写中の箇所に引き込まれるような形で多く基体に吸収されてしまい、未転写箇所での粘度が増加した結果パターンの転写が十分に行われず、いわゆる「かすれ」が発生してしまう。また、30m/分より速くなるとこちらはインクの転写が印刷速度に対して追いつかなくなる。そのため、こちらも印刷されるべき箇所に印刷層が形成されず、いわゆる「かすれ」が発生することになる。
【実施例1】
【0046】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0047】
(本発明1:インク受容層形成用塗布液1の調製)
トルエン100重量部中にエチルセルロース(屈折率=1.48)2重量部を加え、これを攪拌しながら溶解する。さらにこれを攪拌したままでトクヤマ(株)製シリカ(レオロシールQS−10:屈折率=1.46、平均粒径=0.12μm)を10重量部追加し、樹脂と無機微粒子(シリカ)の重量比を1:5としたインク受容層形成用塗布液1を調製した。
【0048】
(本発明2:インク受容層形成用塗布液2の調製)
無機微粒子(シリカ)の平均粒径を0.25μmとしたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液2を調製した。
【0049】
(本発明3:インク受容層形成用塗布液3の調製)
無機微粒子(シリカ)の平均粒径を0.46μmとしたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液3を調製した。
【0050】
(本発明4:インク受容層形成用塗布液4の調製)
無機微粒子(シリカ)の平均粒径を0.25μmとし、樹脂と無機微粒子の重量比を1:15としたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液4を調製した。
【0051】
(本発明5:インク受容層形成用塗布液5の調製)
水100重量部中に日本純薬(株)製アクリルエマルジョン(ジュリマーAT613)(屈折率=1.49)2重量部を攪拌しながら混合させる。これを攪拌したままでトクヤマ(株)製シリカ(レオロシールQS−10:屈折率=1.46、平均粒径=0.25μm)を10重量部追加し、樹脂と無機微粒子(シリカ)の重量比を1:5としたインク受容層形成用塗布液1を調製した。
【0052】
(比較例1:インク受容層形成用塗布液6の調製)
シリカの代わりに日本アエロジル(株)社製アルミナ(AEROXIDE Alu−C)10重量部を用い(屈折率=1.65、平均粒径=0.23μm)としたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液6を調製した。
【0053】
(比較例2:インク受容層形成用塗布液7の調製)
樹脂と無機微粒子(アルミナ)の重量比を1:15としたこと以外は、インク受容層形成用塗布液6と同様にして塗布液7を調製した。
【0054】
(比較例3:インク受容層形成用塗布液8の調製)
無機微粒子(シリカ)の平均粒径を0.25μmとし、エチルセルロース樹脂の代わりにポリエチレン樹脂(屈折率=1.52)を用いたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液8を調製した。
【0055】
(比較例4:インク受容層形成用塗布液9の調製)
無機微粒子(シリカ)の平均粒径を0.25μmとし、エチルセルロース樹脂の代わりにエポキシ樹脂(屈折率=1.56)を用いたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液9を調製した。
【0056】
(比較例5:インク受容層形成用塗布液10の調製)
無機微粒子(シリカ)の平均粒径を0.07μmとしたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液10を調製した。
【0057】
(比較例6:インク受容層形成用塗布液11の調製)
無機微粒子(シリカ)の平均粒径を0.53μmとしたこと以外は、インク受容層形成用塗布液1と同様にして塗布液11を調製した。
【0058】
(インク受容層の形成)
易接着性の付与されたPETフィルム上に上記調製済み塗布液を塗布し、これを90℃で2分乾燥することで透明性を備えた厚み20μmのインク受容層を形成した。
【0059】
(インク作製)
水100重量部に対し塩化カリウム0.03重量部を攪拌しながら溶解させ、この中にさらに塩化パラジウム0.015重量部を溶解させる。得られたパラジウムイオン含有水溶液にクエン酸三ナトリウム0.06重量部を加えて溶解させた後、ここへさらに水10重量部に対して0.003重量部の水素化ホウ素ナトリウムを溶解させた水溶液を加えることでパラジウムコロイド分散液を得た。このパラジウムコロイド液を限外ろ過により脱塩し、ろ過済みのコロイド液にアルミナ5重量部を加えてヘテロ凝集、沈殿したところをろ過、解砕することでアルミナ担持パラジウム粒子を得た。次に、トルエン100重量部に対してエチルセルロース樹脂を8重量部溶解させ、この液中に先ほど作製したパラジウム粒子を1重量部加えることで無電解めっき用触媒含有インクを得た。
【0060】
(インク受容層上への印刷)
上記触媒含有インクを用いてインク受容層形成用塗布液1〜11を用いて形成されたインク受容層上に印刷を行い、本発明1〜5、比較例1〜6に係る導電膜形成用基体を得た。印刷方式はグラビア印刷であり、印刷機には松尾産業(株)製グラビア印刷機K303マルチコーターを用いた。版としてはL/S=20/300μm、溝深さ10μmで格子状にパターンが形成されたものを用いた。また印刷速度は10m/分とした。
【0061】
(無電解銅めっき)
触媒インクを印刷した本発明1〜5、比較例1〜6に係る導電膜形成用基体に対し、奥野製薬(株)製無電解銅めっき液(OPC−750)を用いて20℃で30分めっきを行って格子状の金属パターンを形成した。
【0062】
(評価)
得られた導電膜に対し、下記の評価を行った。
【0063】
<塗布むら>
インク受容層の塗布むらを、金属パターンの変形の度合いを目視にて確認することで、下記のようにして評価した。
A:皆無
B:注視すると可認
C:見た目に明らか
【0064】
<ヘイズ測定>
インク受容層形成後に導電膜形成用基体のヘイズを測定し、下記のようにして評価した。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
【0065】
得られた結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
本発明1〜5については、塗布むら、ヘイズともに問題なかった。印刷パターンの線幅についても、本発明1だけ増加傾向があったが(23〜25μm)、本発明2〜5については、いずれも20〜22μmの範囲の線幅にて形成することができた。また、めっき後の線幅については、本発明1〜5ともに、印刷パターンの線幅をそのまま踏襲しており、インクの滲み等が生じていないことがわかる。
【0068】
一方、比較例1〜6についてみると、塗布むらは比較例1及び2について生じていることがわかった。ヘイズについては、比較例1〜4が5%以上であって、特に、比較例2についてはヘイズが10%を超えていた。比較例5及び6については、塗布むらはなく、ヘイズも5%未満で良好であったが、比較例5は、印刷パターンの線幅が25〜50μmと太くなっていた。比較例6は、印刷パターンの線幅が20〜21μmと良好であったが、めっき後の線幅が80〜90μmと大幅に太くなっており、インクの滲みが生じていることがわかる。
【実施例2】
【0069】
(本発明11:インク受容層1の形成)
易接着性の付与されたPETフィルム上に調製済みの前記塗布液1を塗布し、これを90℃で2分乾燥することで透明性を備えた厚み10μmのインク受容層1を形成した。
【0070】
(本発明12:インク受容層2の形成)
調製済みの塗布液1を塗布して、厚み20μmのインク受容層2を形成した。
【0071】
(本発明13:インク受容層3の形成)
調製済みの塗布液1を塗布して、厚み30μmのインク受容層3を形成した。
【0072】
(本発明14:インク受容層4の形成)
調製済みの塗布液1を塗布して、厚み50μmのインク受容層4を形成した。
【0073】
(比較例11:インク受容層5の形成)
調製済みの塗布液1を塗布して、厚み5μmのインク受容層5を形成した。
【0074】
(比較例12:インク受容層6の形成)
調製済みの塗布液1を塗布して、厚み60μmのインク受容層6を形成した。
【0075】
その後、インク作製、インク受容層1〜6上への印刷、無電解銅めっきは、上述と同様にして行った。
【0076】
(評価)
得られた導電膜に対し、下記の評価を行った。
【0077】
<塗布むら>
インク受容層の塗布むらを、金属パターンの変形の度合いを目視にて確認することで、下記のようにして評価した。
A:皆無
B:注視すると可認
C:見た目に明らか
【0078】
<ヘイズ測定>
インク受容層形成後に導電膜形成用基体のヘイズを測定し、下記のようにして評価した。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
【0079】
得られた結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
本発明11〜13について、塗布むら、ヘイズともに問題なかった。本発明14は塗布むらについては問題なかったが、ヘイズが5%以上、10%未満で他の本発明11〜13と比して少し劣っていた。印刷パターンの線幅についても、本発明11だけ増加傾向があったが(22〜24μm)、本発明12〜14については、いずれも20〜22μmの範囲の線幅にて形成することができた。
【0082】
一方、比較例11及び12についてみると、比較例11は、塗布むら、ヘイズともに問題なかったが、印刷パターンの線幅が30〜40μmと太くなっていた。比較例12は、塗布むら、ヘイズともに悪化していることがわかった。
【実施例3】
【0083】
(本発明21:印刷パターン1の形成)
上述した触媒含有インクを用い、上述したインク受容層形成用塗布液1を用いて形成された厚み20μmのインク受容層上に印刷を行って印刷パターン1を形成した。印刷方式はグラビア印刷であり、印刷機には松尾産業(株)製グラビア印刷機K303マルチコーターを用いた。版としてはL/S=20/300μm、溝深さ10μmで格子状にパターンが形成されたものを用いた。そして、印刷速度は1m/分とした。
【0084】
(本発明22:印刷パターン2の形成)
印刷速度を10m/分としたこと以外は、印刷パターン1と同様にして印刷パターン2を形成した。
【0085】
(本発明23:印刷パターン3の形成)
印刷速度を20m/分としたこと以外は、印刷パターン1と同様にして印刷パターン3を形成した。
【0086】
(本発明24:印刷パターン4の形成)
印刷速度を30m/分としたこと以外は、印刷パターン1と同様にして印刷パターン4を形成した。
【0087】
(比較例21:印刷パターン5の形成)
印刷速度を0.5m/分としたこと以外は、印刷パターン1と同様にして印刷パターン5を形成した。
【0088】
(比較例22:印刷パターン6の形成)
印刷速度を40m/分としたこと以外は、印刷パターン1と同様にして印刷パターン6を形成した。
【0089】
(評価)
得られた印刷パターン1〜6に対し、下記の評価を行った。
【0090】
<かすれ>
印刷パターンの形成状態を、目視にて確認することで、下記のようにして評価した。
A:かすれなし
B:部分的にかすれ発生
C:一面にかすれ発生
【0091】
得られた結果を表3に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
本発明21〜23について、いずれもかすれは発生していなかったが、本発明24についてかすれが一部発生していた。印刷パターンの線幅については、本発明21だけ増加傾向があったが(22〜24μm)、本発明22〜24については、いずれも20〜22μmの範囲の線幅にて形成することができた。
【0094】
一方、比較例21及び22についてみると、比較例21は、一部かすれが発生し、また、印刷パターンの線幅が30〜40μmと太くなっていた。比較例22は、一面にかすれが発生していた。
【0095】
なお、本発明に係る導電膜形成用基体、導電膜及び導電膜の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体上に形成されたインク受容層とを有する導電膜形成用基体において、
前記インク受容層は、無機微粒子と樹脂とを含有し、前記無機微粒子と前記樹脂との屈折率差が0.05以内であって、且つ、前記無機微粒子の粒径が0.12μm以上0.50μm以下であることを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項2】
請求項1記載の導電膜形成用基体において、
前記無機微粒子がシリカであることを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項3】
請求項2記載の導電膜形成用基体において、
前記樹脂がエチルセルロース又はアクリルであることを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項4】
請求項1記載の導電膜形成用基体において、
前記樹脂(A)と前記無機微粒子(B)の重量比率(A:B)が1:3〜1:50であることを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電膜形成用基体において、
前記インク受容層上に、さらに金属粒子及び樹脂を含有する印刷層を有することを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項6】
請求項5記載の導電膜形成用基体において、
前記インク受容層の厚みが10μm以上、50μm以下であることを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項7】
請求項5又は6記載の導電膜形成用基体において、
前記印刷層が格子状であることを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の導電膜形成用基体において、
前記金属粒子が無電解めっき用触媒としての性能を備えていることを特徴とする導電膜形成用基体。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の導電膜形成用基体に対し、無電解めっきを施すことで得られる導電膜。
【請求項10】
請求項1に記載の導電膜形成用基体の前記インク受容層上に金属粒子及び樹脂を含有する印刷層をグラビア印刷する工程と、
前記印刷層が形成された前記導電膜形成用基体に対して、無電解めっきを施して、前記印刷層に金属層を形成する工程とを有する導電膜の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の導電膜の製造方法において、
前記グラビア印刷の速度が1m/分以上、30m/分以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。

【公開番号】特開2009−190267(P2009−190267A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33349(P2008−33349)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】