説明

小型干渉分光計

【課題】 手持ち式分光計に組み込むことができる干渉計を開示する。
【解決手段】 干渉計は、包囲光路光学部品群と検出器を有し、包囲光路光学部品群は少なくとも2つの反射素子(221、222)とビームスプリッタ(210)を有し、ビームスプリッタは入力ビーム(205)を第1および第2ビーム(231、232)へ分割する。包囲光路光学部品群は第1および第2のビームを、領域を包囲する光路の逆方向に周回させ、第1および第2のビームを検出器(250)に向けて出力する。検出器は第1および第2のビームの干渉により生じたパターンを検知する。好ましい実施例では、2つの反射素子は一対の凹面鏡であり、包囲光路光学部品群は三角形の領域を包囲する。反射および結像のために凹面鏡を使用するので干渉計は小型になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手に持つ事が出来るサイズの分光装置に組み込むことができるような、小型の干渉計に関する。この装置は、可動部品がなく、それゆえに過酷な環境で用いるのに適した構成を取りうる。
【背景技術】
【0002】
よく知られている干渉計として、マイケルソン干渉計やサニャク干渉計がある。図1に示したようなマイケルソン干渉計は、部分反射鏡10と、一対の反射鏡21、22とを有している。部分反射鏡10は光を2つの成分に分割する。反射鏡21、22と部分反射鏡10は、光が2つの直線光路、すなわち区間31、32に沿って進むように配置される。各成分は、異なった区間に沿った帰路を進む。一方の区間32の光路長は調整することができる。両成分は焦点面で再結合し、干渉縞を形成する。両成分はレンズ40を通過して結合されるが、このレンズには等しい傾斜角で到達する。ビームの方向にある1つの反射鏡22をずらすことにより、2つの区間の間の光路長差を変化させることができる。干渉縞55は通常は同心円の形をとる。光路長差が変化させられると、干渉縞の間隔も変化する。光路長差が時間に比例して変化し、かつ検出器50が干渉縞55の環の中心に置かれている場合、検出器からの信号は、波長と光路長差で決まる周期を持った正弦波として変化するであろう。
【0003】
マイケルソン干渉計の長所としては、比較的広い角度範囲にわたって入射光を受け入れることができる点が挙げられる。しかしながら、光源に関するあらゆる空間情報は、干渉縞の中では均一に分布するため、干渉縞の中で失われてしまう。
【0004】
サニャク干渉計は図2に示している。サニャク干渉計もまた、部分反射鏡110と、一対の反射鏡121、122とを有している。部分反射鏡は、マイケルソン干渉計の場合と同様に光を2つの成分に分割するが、2つの成分は区画に沿って進むのではない。2つの成分は部分反射鏡110に直接戻るように反射されるのではなく、他方の反射鏡121、122へ向かって反射されるように、反射鏡の位置が変えられている。したがって、両成分は同じような光路を伝って逆方向に進む。このため、サニャク干渉計は、共通光路干渉計といわれることもある。当該2つの成分は、部分反射鏡110を経由し、レンズ140を通過して、干渉縞155を形成する。マイケルソン干渉計とは異なり、干渉縞155は円形ではなく直線形である。
【0005】
検出器150が干渉パターンの中に配置され、かつ一方の反射鏡122が図2の矢印で示されるように走査される場合、検出器からの信号は正弦波状に変化する。あるいは、干渉パターンを横切るように検出器を動かしても、信号は正弦波状に変化する。
【0006】
サニャク干渉計がマイケルソン干渉計と異なる点としては、他には、マイケルソン干渉計では、それぞれの区画の鏡がとても正確な位置あわせを要求されるのに対し、サニャク干渉計では、鏡の位置あわせにそれほどの正確さを要求されない点が挙げられる。これは、2つのビームが非対称であってずれを生み、そのビームの三角形の光路の結果として、光路長差が生じるためである。
【0007】
上述したサニャク配置に基づく干渉計は、非特許文献1で報告されている。報告された装置は、干渉パターンを検出するためにCCDアレイを用いている。非特許文献2は同様の装置を記述しており、当該装置はさらに、検出器に向かう出力ビームをはね返す鏡を有している。非特許文献2では、このシステムの光学スループットが、マイケルソン型干渉計のそれよりも大きいと考察している。そのような干渉計では、分解能が光源の広さによって制限されるからである。非特許文献3もまた同様の装置を記述しており、当該装置はさらに、検出器で入力開口を再現するための円筒形のレンズを有している。
【0008】
非特許文献4では、DASI(Digital Array Scanned Interferometer:デジタルアレイ走査干渉計)のような、他の干渉計の配置が考察されている。この装置は、ウォラストン・プリズムと検出器アレイを有している。
【0009】
上述してきた装置の多くは扱いづらいものであり、構成部品の位置あわせと品質について厳格な制御を要し、リアルタイムで出力スペクトルを生ずることができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Berlinghieri J.C. et al., "A CCD Fourier Transform Spectrometer", CCDs in Astronomy: Proceedings of the Conference, Tucson, Arizona, 6-8 Sept, 1989.
【非特許文献2】Okamoto T., "Fourier Transform Spectrometer with Self-Scanning Photodiode Array", Applied Optics, Vol. 23, No. 2, 1984.
【非特許文献3】Lucey P. G. et al. "SMIFTS: A Cryogenically Cooled, Spatially Modulated Imaging Infrared Interferometer Spectrometer", Proc. SPIE, Vol. 1937, 130 (1993).
【非特許文献4】Katzberg and Statham, NASA Technical paper 3570, August 1996.
【発明の概要】
【0011】
本発明が提供するのは、ビーム分割光学部品群または光路相違光学部品群および検出器を有する干渉計であって、前記ビーム分割光学部品群または光路相違光学部品群は、少なくとも2つの反射素子と、1つのビームスプリッタと、を有し、前記ビームスプリッタは入力ビームを第1のビームおよび第2のビームへと分割するように構成されており、前記第1の反射素子は、前記第1のビームを第1の光路に沿って検出器へと向かわせるよう構成されており、前記第2の反射素子は、前記第2のビームを第2の光路に沿って検出器へと向かわせるよう構成されており、前記第1および第2の光路は光路長差を有しており、前記ビーム分割光学部品群または光路相違光学部品群は、前記第1のビームおよび前記第2のビームを前記検出器上に焦点合わせさせるように構成されており、前記検出器は、前記第1のビームと前記第2のビームの干渉により生じたパターンを検出するよう構成されている、干渉計である。前記ビーム分割光学部品群または光路相違光学部品群は、入力ビームを2つのビームに分割し、前記2つのビームを、前記検出器において再結合するような光路に沿って進ませる。前記2つのビームの光路は、光路長差、つまり、検出器の長さに沿った光路長差の変動を有する。前記ビーム分割光学部品群または光路相違光学部品群の第1の機能は光学ビームを第1および第2のビームへと分割することであり、あるいはオフセット光学部品群と呼ばれることがあるかもしれない。
【0012】
本発明の干渉計には、2つのビームの検出器への焦点合わせが、例えば反射素子のような、ビーム分割光学部品群または光路相違光学部品群によってなされるという利点がある。これにより、干渉計を小型化できる。
【0013】
反射素子の数は、好ましくは2つであり、これらはビームを検出器上に焦点合わせし、干渉計が検出器の平面を横切って製造されるように構成される。
【0014】
前記ビーム分割光学部品群または光路相違光学部品群は、前記第1および第2のビームが、領域を包囲する光路の周囲の逆方向に向けられるように、構成されてもよい。
【0015】
第1および第2の反射素子は凹面鏡であってもよい。
【0016】
また、本発明が提供するのは、包囲光路をなす光学部品群および検出器を有する干渉計であって、前記包囲光路をなす光学部品群は、少なくとも2つの反射素子と、1つのビームスプリッタと、を有し、前記ビームスプリッタは入力ビームを第1のビームおよび第2のビームへと分割するように構成されており、前記包囲光路をなす光学部品群は、前記第1のビームおよび前記第2のビームを、領域を包囲する光路を逆方向に周るように進ませて、前記第1のビームおよび前記第2のビームを前記検出器に向けて出力し、前記包囲光路をなす光学部品群は、前記第1のビームおよび前記第2のビームを前記検出器上に焦点合わせさせるように構成されており、前記検出器は、前記第1のビームと前記第2のビームの干渉により生じたパターンを検出するよう構成されている、干渉計である。包囲光路とは、検出器へ向けられる前にビームが周る領域を包囲する光路である。2つのビームは逆方向に伝搬し、それゆえに、逆循環と考えられてもよい。包囲光路を有するため、干渉計は、共通光路干渉計と呼ばれることがあるかもしれない。しかしながら、2つのビームがビームスプリッタを離れて検出器の方向へ向かうときには、2つのビームはわずかに異なった位置からわずかに異なった角度で出るので、2つのビームがとる光路は正確に向かい合ってはいない。すなわち、2つのビームはビームスプリッタを通過するとき、ずれ距離の分だけ離間している。
【0017】
上述の干渉計の利点は、焦点合わせ機能が、例えば鏡のような包囲光路光学部品群に組み込まれており、そのために構成部品の数が減少することである。特に、出力フーリエ光学部品群が必要ないので、装置は小さくさらに密集して作ることができる。他の利点は、干渉計が、干渉パターンを生成するための可動部品を必要としないように構成されることである。
【0018】
反射素子は好ましくは鏡であるが、回折格子を有してもよい。ある実施形態として、2つの反射素子は一緒に1つのユニットとして形成されてもよい。
【0019】
検出器は、第1および第2のビームの干渉によって生成されたインターフェログラムのサンプリングをする。
【0020】
包囲光路光学部品群のビーム焦点合わせを行うものは、少なくとも1つの反射素子の湾曲であってもよい。包囲光路光学部品群のビーム焦点合わせを行うものは、2つの反射素子の湾曲であってもよい。
【0021】
少なくとも1つの反射素子の湾曲は、像面での光の場の形状が検出器の検出面の形状と一致するような態様で、第1および第2のビームを検出器に焦点合わせするよう構成されてもよい。少なくとも1つの反射素子の湾曲は、像面が平面状の光の場を持つような態様で、第1および第2のビームを焦点合わせするよう構成されてもよい。
【0022】
干渉計は、2つの反射素子を有してもよく、第1のビームがビームスプリッタによって2つの反射素子のうちの第1の反射素子へと向けられ、第2のビームがビームスプリッタによって2つの反射素子のうちの第2の反射素子へ向けられるような態様で、ビームスプリッタと2つの反射素子が構成されてもよい。
【0023】
第1の反射素子は、第1のビームを第2の反射素子に向けるよう構成されてもよく、第2の反射素子は、第2のビームを第1の反射素子に向けるよう構成されてもよく、第2および第1の反射素子は、それぞれ第1および第2のビームをビームスプリッタに向けるよう構成されていてもよい。
【0024】
ビームスプリッタは、第1および第2のビームを、それぞれ透過および反射によって生成してもよい。
【0025】
ビームスプリッタは、第1および第2のビームを、包囲光路から検出器へ向けてもよい。ビームスプリッタは、第1および第2のビームを、それぞれ透過および反射によって検出器へ向けてもよい。
【0026】
干渉計は、入力ビームをコリメートする入力光学部品群をさらに有していてもよい。例えば、望遠鏡または双眼鏡の構成である。
【0027】
2つの反射素子の曲率は同じであってもよいし、少なくとも1つの反射素子が凹形でもよい。
【0028】
検出器は、第1および第2のビームの干渉によって生成されたパターンを直線に沿って検知するよう構成されていてもよい。検出器は、好ましくはセンサの直線状アレイである。
【0029】
検出器は、直線に沿って走査するために動くよう構成された、少なくとも1つのセンサを有していてもよい。
【0030】
包囲光路は、三角形、正方形、その他のあらゆる循環形状であってもよい。
【0031】
反射素子およびビームスプリッタは、互いに対して固定されていてもよい。検出器は、包囲光路光学部品群に対して固定されていてもよい。
【0032】
好ましくは、ビームスプリッタは、入力ビームを、実質的に等しい強度を持つ第1および第2のビームに分割するものであってもよい。
【0033】
包囲光路光学部品群、あるいは反射素子およびビームスプリッタは、モノリシックに形成されていてもよい。
【0034】
検出器は、干渉パターンの中の空間的変化を示す信号を出力するよう構成されていてもよい。
【0035】
また、本発明が提供するのは、上述の干渉計を有する分光計であって、さらに、干渉パターンのフーリエ変換に基づいて入力ビームの中にある波長を示すように構成された分析器を有する、分光計である。
【0036】
さらに、本発明が提供するのは、上述の干渉計を有する結像分光計であって、検出器が、第1および第2のビームの組み合わせによって生成されたパターンを2次元的に検知するよう構成されている、結像分光計である。そのような実施例では、検出器は、第1および第2のビームの干渉により生成された空間的に変動するパターンを一方向に検知し、入力ビームについての画像情報を第2の方向に検知するよう構成されていてもよい。干渉計は瞳面干渉計または像面干渉計として構成されていてもよい。前者が、完全な画像を作り出すのに走査を必要とするのに対し、後者は、その代わりに、完全なインターフェログラムを作り出すのに走査を必要とする。瞳面干渉計は、インターフェログラムを得て、それにより完全な波長スペクトルを得るのに移動を必要としないので、分光計としての用途には好ましい。
【0037】
検出器はセンサの2次元アレイであるのが好ましいが、代わりに、検出器は、領域を走査するために直線に沿って動くよう構成されたセンサの直線状アレイであってもよい。
【0038】
結像分光計は、さらに、入力ビームの中にある波長と、入力ビームに関する画像イメージと、を示すように構成された分析器を有していてもよい。
【0039】
また、本発明が提供するのは、包囲光路の中にある1つ以上の鏡が、逆循環するビームを検出器へ焦点合わせするように湾曲している、サニャク干渉計である。これは、包囲あるいは循環光路の中にフーリエ光学部品群が統合されている、改良されたサニャク干渉計である。
【0040】
また、本発明が提供するのは、2つの反射素子と、ビームスプリッタと、検出器を有し、ビームスプリッタは、入力ビームを第1のビームと第2のビームに分割するよう構成されており、2つの反射素子とビームスプリッタは、領域を包囲する光路を周って逆方向に第1および第2のビームを進ませ、検出器に向かって第1および第2のビームを出力するよう構成されており、包囲光路内の光学素子はビームを検出器に焦点合わせし、検出器は、第1および第2のビームの干渉により生成されたパターンを検出するよう構成されている、フーリエ変換分光計である。
【0041】
以下、本発明の実施例について、従来技術の特徴とともに添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来のマイケルソン干渉計を示す図である。
【図2】従来のサニャク干渉計を示す図である。
【図3】本発明の一実施例による干渉計を示す図である。
【図4】図3の干渉計を周って進むビームの末端を示す、光線の軌跡の図である。
【図5】図3の干渉計を周って進むビームの中心と末端を示す、光線の軌跡の図である。
【図6】画像の中の2つの特徴を分解するためのレイリー基準を説明する図である。
【図7】分光計システムを示す図である。
【図8】(a)と(b)は、それぞれ、インターフェログラムおよび波長スペクトルを示す図である。
【図9】インターフェログラムおよび画像情報が、2次元画素アレイを有する検出器からどのようにして得られるのかを示す図である。
【図10】本発明の代替的な実施例による干渉計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図3に、本発明による干渉計を示す。この干渉計は、検出器250と包囲光路光学部品群を有している。包囲光路光学部品群は、入力ビームを第1および第2のビームに分割し、それらは次に光路包囲領域のまわりで反対方向に進み、すなわち、2つの光路は反対方向に巡回する。
【0044】
包囲光路光学部品群は、ビームスプリッタすなわち光分割器210、および、鏡221、222のような2つの反射素子を有する。ビームスプリッタ210は、部分反射鏡、薄膜ビームスプリッタ、ビームスプリッタキューブ、平板ビームスプリッタ、などであってよい。鏡221、222は、互いに同じ曲率を持つように湾曲していてもよいし、あるいは異なった曲率を持つように湾曲していてもよい。当該曲率は、凹面鏡を形成するように設定される。検出器250はセンサアレイとするのが好ましいが、空間的に走査される単一のセンサを用いても良い。検出器250は、像面に設置される。
【0045】
ビームスプリッタは、光または放射線の入力ビーム205の入射角に対して45°に配置されるのが好ましい。入力ビームは、光分割器すなわちビームスプリッタ210によって2つのビームに分割される。上述したタイプのビームスプリッタに関しては、ビームスプリッタは、反射ビーム231(破線にて表記)および透過ビーム232(実線にて表記)を生ずる。ビームスプリッタにおける入力ビーム205の入射角を調整することで、透過ビームと反射ビームの振幅の比率を調整できる。入力ビームの入射角が45°である場合に、透過ビームと反射ビームの振幅比が50:50となるようにビームスプリッタが設計されていることが好ましい。しかしながら、あらゆる他の構成も可能である。2つの鏡221、222は、ビームスプリッタからの距離および角度がおよそ等しくなるように配置されているが、正確に等しいわけではない。第1の鏡221は、ビームスプリッタの前側すなわち入力ビーム205と同じ側に設置されており、反射ビーム231を受けるように配置されている。第2の鏡222は、ビームスプリッタ210の後ろ側、すなわち入力ビーム205とは反対の側に設置されており、透過ビーム232を受けるように配置されている。
【0046】
第1の鏡221において、ビームスプリッタからの反射ビーム231は再び反射され、第2の鏡222の方へ向けられる。ビーム231は第2の鏡222でもまた反射され、ビームスプリッタ210の方へ向けられる。ビームスプリッタでは、ビーム231は、像面にある検出器250に向かって反射される。
【0047】
第2の鏡222において、ビームスプリッタからの透過ビーム232は反射され、第1の鏡221の方へ向けられる。ビーム232は第1の鏡221でもまた反射され、ビームスプリッタ210の方へ向けられる。ビーム232はビームスプリッタを透過し、像面にある検出器250へと進む。
【0048】
2つのビーム231、232は、ループすなわち領域のまわりを反対方向に進む。図3に示すように、第1のビーム231はBS−M1−M2−BS−Dの順に進み、第2のビーム232はBS−M2−M1−BS−Dの順に進む。
【0049】
ビーム231、232がビームスプリッタを2回目に離れるとき、それらのビームは互いに対してわずかに変位する。すなわち、光学系のまわりの光路が、2つのビームの間のずれを生む。このずれは、2つの鏡221、222の位置のわずかな違いに起因している。2つのビームが像面で再結合するとき、当該2つのビームの間の相対的な位相差によって、干渉が起こる。検出器における干渉パターンは、インターフェログラム(図8a参照)として知られており、干渉パターンは、それぞれのビームが光源の画像を形成し、かつ、その2つの画像が同じ光源からコヒーレントに発生する結果として生じる。インターフェログラムのフーリエ変換は、入力ビームの中に存在する波長のスペクトル(図8b参照)をもたらす。図8aと図8bについての詳細は後述する。
【0050】
2つの光路間の光路長差により、位相差が生じる。図3に示すように、光路長差は、ずれの距離ΔSとずれの角度θRに比例する。光路長差δは、下記の式で決まる。
【0051】
【数1】

【0052】
図4および図5は、干渉計に入射するビームの末端が2つになる場合を示す。ビームの2つの末端は、実際の光路長差によって変化し、像面で干渉する。例えば、図5に示すように、光路長差は像面yに沿って変化する。この図に示されている線は、3つの光路、すなわち、ビームの2つの末端とビームの中心とを表す。ずれの角度は再結合の角度でもあるので、光学系の焦点距離の寸法をFとしたとき、次式の関係が成り立つ。
【0053】
【数2】

【0054】
ずれの角度θRがゼロから離れて増加するにつれ、焦点面yに沿った距離が変化し、次式の関係が成り立つ。
【0055】
【数3】

【0056】
干渉縞の中心は、光路長差ゼロの位置ZPDとなる。これは、像面のy(0)の位置と考えてもよい。
【0057】
光路長差は、干渉計の性能指数を決めるのに役立つ。レイリー基準によって、像面の特徴から、分解可能な最小間隔すなわち分解能が決定される。図6に示すように、スペクトル分解能については、一方の画像または特徴の一次回折の最小値が他方の画像または特徴の最大値と一定するような、2つの画像または特徴間の間隔Δνによって与えられる。分解能の決定には次式(Griffiths, 2002)が用いられてきた。
【0058】
【数4】

【0059】
ここで、δmaxは、ずれの角度が干渉計のとりうる最大値となった結果実現される、最大光路長差である。
【0060】
このように、ずれの離間距離やずれの角度が大きくなると、分解能は向上する。したがって、ずれの角度を大きくすると、検出器において干渉パターンが大きく広がるので、長い検出器が必要になるかもしれない。検出器がすでに十分長い場合には、信号対ノイズ比の良い検出器や、デジタル−アナログ変換分解能の良い検出器を使えば、インターフェログラムを正確にデータ表現できるかもしれない。これは、波長スペクトルを作り出すための、曲線のより良い当てはめやフーリエ変換に使うことができる。したがって、ある程度の分解能を達成するために、検出器アレイの長さや光路長差のパラメータが、利用可能な成分に合うように交換されうる。分解能を増加させるためには、画素ピッチを小さくすることもできよう。本発明の干渉計において、検出器の長さを長くして分解能を増やすことは、マイケルソン干渉計においては、より大きな距離にわたって可動鏡を走査して分解能を増やすことに相当する。いずれの場合も、光路長差を増やす結果となる。
【0061】
鏡221、222は、像面に平坦な場を作り出すよう湾曲していることが好ましい。検出器はその像面に配置される。検出器が正確に像面になく、像面に対して傾いて配置されている場合、インターフェログラムは歪んでしまい、ZPDから離れるにつれてインターフェログラムに非線形性が生じる。これは、平坦な検出器を用いることを前提とした場合である。そうではなく、もし検出器が湾曲している場合、像面における場は検出器の湾曲に適合しなくてはならない。鏡は、検出器の形状と合わせるために像面を平坦にし、あるいは、湾曲させるように設計される。鏡221、222は同一の球面を持つことが望ましいが、そうすると2つの鏡を装置専用にあつらえることが必要になるため、一方の鏡は民生品とし、他方の鏡は専用にあつらえることで、検出器において要求される場の形を作り出すことが可能である。収差を減らすため、一方または両方の鏡は非球面にしてもよい。他の実施例としては、検出器の上に焦点を合わせるために、包囲光路すなわち逆方向巡回経路の中の他の光学部品を用いてもよいが、鏡221、222の焦点効果を組み入れた実施例が好ましい。
【0062】
検出器における場の形は、検査される物体または光源のタイプによっても決まる。物体または光源からの入力ビームは、無限遠におけるレーザ光源または物体からのビームのように、コリメートされるのが好ましい。物体光または光源光がコリメートされない場合には、単純な結像システムを干渉計への入力に用いることができる。例えば、双眼鏡または望遠鏡の結像システムを使えば、無限遠に物体または光源を出現させることができる。そのようなシステムは、オープンパス望遠鏡、光ファイバー光、赤外分光に用いられるような全反射減衰(ATR:Attenuated Total Reflectance)光学装置、などを含んでもよい。双眼鏡や望遠鏡などの入力光学系は、検出器におけるインターフェログラムの構造を変化させる。これについての詳細は後述する。鏡の形状は、入力ビームの特徴を矯正するのにも使われる。例えば、直交軸の中で入力ビームの光の位相が整合しない場合、鏡の1つが、球状に湾曲した凹面鏡とは異なり、等しくない曲率半径を有して楕円形状に湾曲していてもよい。
【0063】
図7に示すように、干渉計は分光システムに組み入れられてもよい。光源301などから来た光の入力ビーム300は、干渉計330に入射する。干渉計は、検出器の各画素に入射した光の強度に基づいて、信号331を生成する。信号331は分析器350に入力される。分析器は、検出器の各画素の受光強度に基づいてインターフェログラムを表示してもよい。分析器は、検出器から受け取った信号331のフーリエ変換を実行することで、入力ビーム300に含まれる波長を表す出力を発する。ひとつの実施例としては、当該信号は、検出器アレイにおける各画素についての信号数を含んでいてもよい。分析器350は高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いてフーリエ変換を行ってもよい。
【0064】
図8に結果の例を示す。図8aはインターフェログラムを示し、図8bは波長スペクトルを示す。横軸は、検出器に沿った距離、すなわち、像面yの中の距離に相当する。検出器に沿った画素数に相当するy位置2400と2500の間には、重要な信号が見られる。図8aの垂直軸は、強度に相当する。検出器の大部分に沿っては干渉が起こらないし、それゆえに入力ビームは単に検出器アレイを横切って広がるだけである。データ点2400と2500の間の領域では、重なり合いまたは打ち消しあう干渉が起こり、検出器の画素に入射する強度は大きくなりまたは小さくなって、インターフェログラムの重要な特徴を作り出す。波長スペクトルは、このインターフェログラムのフーリエ変換から導き出される。
【0065】
本発明による干渉計の利点は、機械的な走査が不要である点である。例えば、図1に示された従来のマイケルソン干渉計については、光路長差を生じさせるためには一方の鏡を空間的に走査することが必要であり、そのような走査は著しく高度な正確さを要求される。本発明の干渉計では、光学的配置と直線状の検出器アレイの利用によって光路長差が作られるので、可動部品は不要である。本発明による干渉計の他の利点としては、可動部品がないため、原理上は走査時間がとても短く、検出器からの信号の読み出しにかかる時間によってのみ制限される点である。これは、干渉計と分析器が、入力光のスペクトルの変化についての一時的情報を作り出すことを意味する。例えば、リアルタイムでほぼ連続的にまたは毎秒多くの回数で更新される入力ビームの中の波長のグラフを作り出す。可動部品がないことにより、極度の温度や振動のために可動部品が誤動作する傾向がある人工衛星などの、厳しい環境の中で使うのに適した装置にもなる。本発明による干渉計のさらなる利点としては、焦点合わせが鏡に組み入れられるので、干渉計が従来の干渉計よりも小型にできる点が挙げられる。
【0066】
他の実施例では、直線形の検出器アレイが、像面を横切って機械的に走査される単一部品検出器に置き換えられる。この実施例はより安価な装置となるであろうが、頑丈さは低下するであろう。また、像面を横切って単一部品検出器を動かすのに時間がかかるので、入力波長の変化について得られる一時的情報も少なくなるであろう。それでも、単一部品検出器を利用すれば、インターフェログラム全体を横切ってサンプリングするのに同一の部品が使えるので、像面を横切った直線性を改善できるかもしれない。つまり、検出器アレイの場合には多数の画素があり、それぞれの画素ごとに性能特性が異なるかもしれないのに対し、像面を横切る検出器の性能は変化しないであろう。
【0067】
他の実施例では、検出器は画素の2次元アレイを有する。この実施例では、干渉計は結像分光器の一部を形成するかもしれない。例えば、図9に示すように、2次元検出器アレイによって、対象の光景についての限定的な空間情報が作られる。上述の干渉計は、瞳面干渉計(pupil plane interferometer)である。
【0068】
図9に示すように、対象の光景の線502に沿った各点(例えば501)について、インターフェログラムが2次元検出器アレイの線510に沿って生成される。このように、瞳面干渉計は、線502に沿った501のような各点について、一連のインターフェログラムを作成する。すなわち、空間情報が一方向に作られ、結像情報が直行する方向に作られる。図9では、空間情報は水平方向に示されている。これは、図3に示された検出器250の線に沿う方向に相当する。対象の光景についての限定的な空間情報は、図9において鉛直方向に含まれたものとして示されている。これは、図3の紙面に垂直な方向に相当する。
【0069】
瞳面干渉計は、図3の入力ビーム205として、コリメートされたビームを受け取る。
【0070】
あるいは、干渉計は、相対的に同じ位置に配置された、同じ反射部品、ビームスプリッタ、および検出器を用いる像面干渉計として構成されてもよい。像面干渉計は、追加的に、システムの焦点を瞳面ではなく像面に位置させる、双眼鏡や望遠用の光学系のような入力光学部品を含む。これにより、検出器にわたる画像を持つ像面干渉計となり、それゆえに、検出器にDC信号を生じさせ、画像の上に上書きされた干渉パターンに起因する変調を生じさせる。検出器の各画素は、やはり位置に依存する光路長差(OPD)を有する。画像の光景の中にある個々の点について、完全なインターフェログラムを発生するため、当該点は検出器の線を横切って走査されなければならない。この技術は、信号の時間領域積分(TDI:Time Domain Integration)として知られており、フーリエ変換が実行される前に完了しなければならない。
【0071】
上述したとおり、像面干渉計については、インターフェログラムは、検出器を横切って画像の光景の中の点を走査することにより形成される。これは、入力光学系にある走査鏡を用いて行われる。逆に、瞳面干渉計については、完全なインターフェログラムが既に形成されているが、完全な画像を生成するためには走査が必要となる。走査鏡を用いて、あるいは分光計それ自身が動くことによって、走査が再び行われる。
【0072】
像面干渉計には、各インターフェログラムについての画素あたりの信号が、瞳面干渉計よりも大きいという利点がある。瞳面干渉計には、信号が検出器アレイを横切る方向に平坦に分布するという利点がある。瞳面干渉計こそが本明細書の中心である。なぜなら、瞳面干渉計は、波長スペクトルを得る装置の動き、または当該装置の中の動きを必要としないからである。
【0073】
干渉計は民生品(COTS)の部品を用いて組み立てられている。干渉計に用いられている2つの凹面鏡は、Newport Optics社の曲率半径100mmのものである。鏡のコーティングは、保護されたアルミニウムである。これらの鏡は、図3の鏡221、222(M1、M2)の役目を務める。ビームスプリッタ210は、ソーラボ(Thorlabs)社の平板ビームスプリッタであり、700−1200nmの範囲でビームの分割ができるように近赤外コーティングが施されている。検出器は、Mightex社(米国)の3648画素のCCD直線形検出器アレイである。
【0074】
干渉計をテストするために、Ocean Optics社が供給する白色光タングステン・ハロゲン光源から光が入力された。光源は可視−近赤外で作動し、光はBiFi Optilas社の標準ファイバー光学コリメータを通って入力される。
【0075】
Mightex社のCCDによって、スペクトルが500−1100nmの範囲で計測された。Mightex社の3648画素直線形アレイ検出器の画素ピッチは7μmであった。画素ピッチが2.2μmである5メガピクセル2次元検出器も、この構成例において用いられている。波長範囲は、異なった波長範囲を感受できる異なった検出器を用いて広げることができる。例えば、InGaS系検出器は900−2550nmの放射を検出でき、MCT(HgCdTe)は5−15μmの放射を検出できる。広いまたは異なった波長を検出することが望まれるのであれば、ビームスプリッタに異なったコーティングを施すことが必要となろう。
【0076】
COTS干渉計の設置面積は約40mm×40mmであり、装置の高さは約25mmである。鏡とビームスプリッタとの間隔はおよそ15mmである。ビームスプリッタと検出器アレイの間隔は約30mmである。Mightex社の3648検出器アレイの長さは約30mmである。2つの鏡はビームスプリッタ面に対して約30°の角度である。検出器はビームスプリッタ面に対して約80°の角度である。これらの角度および距離は一例にすぎず、他の様々な構成をとることが可能である。
【0077】
これらの構成部品により、EMスペクトルの可視光領域において約0.1−0.5nmの分解能を有する干渉分光計ができる。
【0078】
鏡、ビームスプリッタ、検出器の相対位置は光学モデリングソフトウェアを用いて決定される。このソフトウェアは、鏡121、122の位置と曲率半径を正しく決定し、焦点が平面になる位置に検出器が来るように分光計の部品を最適に整列させる。
【0079】
上述の構成の変形により、光学部品は様々な態様で変更してもよく、異なった波長のために最適化したり、異なった装置サイズのために最適化したりしてよい。
【0080】
例えば、ビームスプリッタ、鏡、検出器は、上述したCOTS装置で用いられるものからすべて変更してもよい。
【0081】
ビームスプリッタは、使われる光学材料を変えることにより変更してもよい。当該使われる材料は、必要とされる動作の波長領域にとって最適なものとしてよい。利用可能な材料としては、可視光の場合には、BK7、石英、フッ化カルシウムが、赤外の場合には、ゲルマニウム、セレン化亜鉛、臭化カリウムが選ばれてもよい。ビームスプリッタは、特定の波長に用いるのに最適なコーティングを含んでもよい。コーティングは、ビームスプリッタのタイプやビームスプリッタのどの表面がコーティングされるかに応じて、非反射性としても反射性としてもよい。コーティングは、望まれるスペクトル範囲をカバーする広帯域であることが望ましい。上述したとおり、薄膜型や平板型など、異なったタイプのビームスプリッタを用いてよい。これらの中には、当該波長および当該装置が用いられる環境について有望なものがあろう。ビームスプリッタの形状もまた、透過光や反射光の特有の分散を調整するように変更してよい。例えば、形状を変えることによって、収差を補償したり、ビームをチャープしたりしてもよい。ビームのチャープは、平板形の代わりにくさび形ビームスプリッタを用いて実現してもよい。
【0082】
鏡は、検出器における平面に沿って放射を焦点合わせするような形状に作られている。このためには、鏡の曲率半径と位置が正確に決定される必要がある。鏡の曲率半径を変えると、焦点距離が代わり、それによってシステムの焦点面の位置が変わる。したがって、鏡の曲率半径を変えることにより、機器のサイズとスペクトル分解能が変わりうる。2つの鏡はまた、互いに異なる局率半径を有するように特徴づけられてもよい。鏡はまた、波面収差を補償するために非球面の表面を有してもよい。使われる鏡のタイプもまた、性能要求を満たすように変更してもよい。鏡のコーティングは、装置が動作する波長に応じて、金、銀、アルミニウムとしてよい。鏡を用いる代わりに、回折格子を光学反射部品として用いることもできる。回折格子は、波長に依存する干渉特徴、すなわちフィルター機能をもたらすために用いられるであろう。機械的に焦点距離を変えられるような、変形可能な鏡を用いてもよい。
【0083】
検出器の材料、画素数、画素サイズなどのパラメータは、装置の性能を決定する。上述のとおり、2次元アレイなら画像情報を出力するし、直線形アレイなら高感度と高速読み出しを実現する。使われる検出器のタイプは、サンプリングされる放射の波長に依存する。異なった波長に対する検出器のタイプの例としては、以下のものが挙げられる。
・可視 − CCD、CMOS検出器など。
・近赤外 − InGaAs、InSb、Ge、MTCなど。
・中赤外 − MTC、量子井戸赤外フォトダイオード(QWIP:quantum well infrared photodiode)。
・広帯域ボロメータ・アレイ。
代わりに、単一素子の検出器が用いられてもよい。単一素子は、上述したとおり、像面を横切って機械的に走査するように構成されてもよい。
【0084】
上述したとおり、干渉分光計はインターフェログラム情報のみを作り出すように構成することができ、あるいは、2次元検出器アレイを用いて画像情報を作り出すこともできる。分光計はさらに、入力放射を検出器で計測できる波長にヘテロダインするための局所発振器を組み入れてもよい。
【0085】
上述の実施例は、COTS部品のような別個の光学部品を用いて説明してきた。しかし、装置は単一のガラス片から、またはシリコンの中にマイクロマシニングにより、モノリシックに製作することもできる。あるいは、独立した部品を組み立てることによって、ビームスプリッタや鏡面が統合された単一のモノリシック光学系として作ることもできる。光学系はまた、光学部品や電子部品を統合した単一の検出器チップ、すなわち「ラブ・オン・チップ」システムを作るMEMS(Micro-Electro-Mechanical-Systems)技術を用いて製造してもよい。
【0086】
他にも、包囲光路の中に焦点光学系あるいはフーリエ光学系を含ませたような光学的構成も可能である。例えば、図10が示す光学的配置は、図3の実施例と比較して、さらに別の鏡を含んでいる。光が進む包囲光路は、図3に示した三角形の光路とは異なり、およそ正方形または長方形である。図10の実施例は、ビームスプリッタすなわち光分割器310、検出器350、3つの鏡321、322、323を含んでいる。鏡321、322、323は1つ、2つ、または3つの曲面鏡であってもいいし、残りの鏡は平面鏡であってもいい。図10の構成では、2つの曲面鏡が321と322に、1つの平面鏡が323に示されている。入力ビーム305は、ここでも、コリメートされたビームであることが好ましい。入力ビームは光分割器310に入射し、そこで反射ビーム331と透過ビーム332になる。反射ビーム331は、BS−M1−M3−M2−BS−Dの光路を周り、最後に検出器Dに入射する。透過ビーム332は、BS−M2−M3−M1−BS−Dの光路を周り、やはり最後に検出器Dに入射する。図3と同様、この鏡の整列によって、2つの光路間に小さな光路長差が生じる。この光路長差により、検出器において干渉がおこり、それによって上述したものと同様のインターフェログラムが作られる。
【0087】
他にも、フーリエ光学系が包囲光路に含まれた光学配置が可能である。互いの光路間での光路長差は、分析される光の可干渉距離よりもずっと小さくしなければならない。図10の実施例はより多くの部品を有しているので、組立てや調整が難しいかもしれない。
【0088】
さらに他にも、ビームスプリッタで生じた2つのビームが包囲光路のまわりを逆方向に伝播しない実施例が可能である。例えば、ビームスプリッタが発する第1および第2のビームが、図3の90°よりも小さな角度、例えば30°で分かれてもよい。そして、2つの凹面鏡が、第1および第2のビームを検出器に向けるようにしてもよい。この実施例では、鏡は離間して配置され、双方が同じ方向を向いているかもしれない。第1および第2のビームが包囲光路を周らない実施例でも、鏡により焦点効果が起こるので、干渉計は小型にできる。すべての実施例において、光学部品の数を減らせるならばそれは利点である。それでも、図3の実施例には、インターフェログラムを作るための光学部品の調整がが、相対的に容易であり、場合によっては自己調整であると考えられる、というさらなる利点がある。
【0089】
本発明による干渉光学系が使えるかもしれない応用分野は非常に多く、多岐にわたる。本発明の装置は次に記す応用ができるかもしれない。すなわち、大気汚染の監視(例えば、都市地域または工業地域における原位置での監視、または、無人機や気球やロケットゾンデの配備)、化学処理のセンサ(例えば、大規模な薬学あるいは石油化学の製造工場で用いられる化学処理の原位置でのオンライン測定、化学薬品および爆発物の検知および分析のための反テロリズムあるいは軍事上の応用)、大気遠隔探知およびその他の科学測定、環境試験(すなわち、危険物の試験、道端の車両の排気試験、ガス漏れ監視)、呼気による糖尿病試験のような医療診断、などである。装置が化学薬品の判別に用いられるような実施例もあるかもしれない。装置はサニャク干渉計に基づいているので、装置は加速度計としても使われるかもしれない。
【0090】
上述の装置には、添付した特許請求の範囲の範囲から外れないような様々な修正および改変がなされてもよいことを、当業者は理解するであろう。例えば、干渉計は可視および赤外の波長で用いられると説明してきたが、これらの波長には限定されず、他の波長で用いられてもよい。光学部品やコーティングには、用いられる特定の波長にあわせた最適化が必要となるかもしれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包囲光路をなす光学部品群および検出器を有する干渉計であって、
前記包囲光路をなす光学部品群は、少なくとも2つの反射素子と、1つのビームスプリッタと、を有し、前記ビームスプリッタは入力ビームを第1のビームおよび第2のビームへと分割するように構成されており、前記包囲光路をなす光学部品群は、前記第1のビームおよび前記第2のビームを、領域を包囲する光路を逆方向に周るように進ませて、前記第1のビームおよび前記第2のビームを前記検出器に向けて出力し、
前記包囲光路をなす光学部品群は、前記第1のビームおよび前記第2のビームを前記検出器上に焦点合わせさせるように構成されており、
前記検出器は、前記第1のビームと前記第2のビームの干渉により生じたパターンを検出するよう構成されている、干渉計。
【請求項2】
前記包囲光路をなす光学部品群による前記ビームの焦点合わせは、前記反射素子の少なくとも1つが湾曲していることによって行われる、請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
前記包囲光路をなす光学部品群による前記ビームの焦点合わせは、前記反射素子の2つが湾曲していることによって行われる、請求項2に記載の干渉計。
【請求項4】
前記反射素子の少なくとも1つの前記湾曲は、像面における光の場の形状が、前記検出器の表面の形状と実質的に一致するような態様で、前記第1のビームおよび前記第2のビームを前記検出器上に焦点合わせするよう構成されている、請求項2または請求項3に記載の干渉計。
【請求項5】
前記反射素子の少なくとも1つの前記湾曲は、像面が平坦な光の場を持つような態様で、前記第1のビームおよび前記第2のビームを焦点合わせするよう構成されている、請求項2から4のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項6】
2つの反射素子を有し、前記ビームスプリッタと2つの反射素子は、前記第1のビームが前記ビームスプリッタによって前記2つの反射素子のうちの第1の反射素子に向けられ、前記第2のビームが前記ビームスプリッタによって前記2つの反射素子のうちの第2の反射素子に向けられるよう配置されている、請求項1から5のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項7】
前記反射素子のうちの第1の反射素子は、前記第1のビームを前記反射素子のうちの第2の反射素子に向けるように配置されており、前記反射素子のうちの第2の反射素子は、前記第2のビームを前記反射素子のうちの第1の反射素子に向けるように配置されており、前記第2および第1の反射素子は、それぞれ第1および第2のビームを前記ビームスプリッタに向けるよう配置されている、請求項6に記載の干渉計。
【請求項8】
前記ビームスプリッタは、前記第1および第2のビームを、それぞれ、透過と反射によって生成する、請求項1から7のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項9】
前記ビームスプリッタは、前記第1および第2のビームを前記包囲光路から前記検出器へと向ける、請求項1から8のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項10】
前記ビームスプリッタは、前記第1および第2のビームを、それぞれ、透過と反射によって前記検出器へ向ける、請求項9に記載の干渉計。
【請求項11】
さらに、前記入力ビームをコリメートするための入力光学部品を有する、請求項1から10のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項12】
前記入力光学部品は、望遠鏡または双眼鏡を構成する配置を有する、請求項11に記載の干渉計。
【請求項13】
前記2つの反射素子の曲率は同じである、請求項3から12のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項14】
前記反射素子の少なくとも1つは凹形である、請求項2から13のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項15】
前記検出器は、前記第1および第2のビームの干渉によって作られたパターンを直線に沿って検知できるよう構成されている、請求項1から14のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項16】
前記検出器は、センサの直線状アレイである、請求項15に記載の干渉計。
【請求項17】
前記検出器は、直線に沿って走査するために動くよう構成された、少なくとも1つのセンサを有する、請求項15に記載の干渉計。
【請求項18】
前記包囲光路は三角形である、請求項1から17のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項19】
前記反射素子とビームスプリッタは、互いに対して固定されている、請求項1から18のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項20】
前記検出器は、前記包囲光路をなす光学部品群に対して固定されている、請求項1から16および請求項18のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項21】
前記ビームスプリッタは、前記入力ビームを、ほぼ等しい強度を有する第1ビームおよび第2ビームに分割する、請求項1から18のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項22】
前記包囲光路をなす光学部品群、または、前記反射素子および前記ビームスプリッタは、モノリシックに形成されている、請求項1から21のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項23】
前記検出器は、干渉パターン中における空間的変化を示す信号を出力するよう構成された、請求項1から22のいずれか一つに記載の干渉計。
【請求項24】
請求項23に記載の干渉計を有し、さらに、干渉パターンのフーリエ変換に基づいて入力ビームに存在する波長を示すよう構成された分析器を有する、分光計。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一つに記載の干渉計を有する結像分光計であって、前記検知器は、前記第1および第2のビームを組み合わせることによって生成されたパターンを2次元で検知するように構成されている、結像分光計。
【請求項26】
前記検知器は、前記第1および第2のビームの干渉によって生成される空間的に変化するパターンを一方向において検知し、かつ、前記入力ビームについての結像情報を第2の方向において検知するよう構成されている、請求項25に記載の結像分光計。
【請求項27】
前記検出器は、センサの2次元アレイである、請求項25または26に記載の結像分光計。
【請求項28】
前記検出器は、領域を走査するために直線に沿って動くよう構成された、センサの直線状アレイである、請求項25または26に記載の結像分光計。
【請求項29】
前記入力ビームの中にある波長と、前記入力ビームに関する結像情報と、を示すように構成された分析器をさらに有する、請求項25から28のいずれか一つに記載の結像分光計。
【請求項30】
包囲光路の中の1つ以上の鏡が、逆循環ビームを検出器の上に焦点合わせするよう湾曲している、サニャク干渉計。
【請求項31】
ビーム分割光学部品群と検出器を有する干渉計であって、
前記ビーム分割光学部品群は、少なくとも2つの反射素子とビームスプリッタとを有し、前記ビームスプリッタは入力ビームを第1および第2のビームに分割するよう構成されており、第1の前記反射素子は前記第1のビームを第1の光路に沿って検出器へ向かわせるよう構成されており、第2の前記反射素子は前記第2のビームを第2の光路に沿って前記検出器へと向かわせるよう構成されており、前記第1および第2の光路は光路長差を有しており、
前記ビーム分割光学部品群は前記第1および第2のビームを前記検出器に焦点合わせするよう構成されており、
前記検出器は、前記第1および第2のビームの干渉によって生成されたパターンを検出するよう構成されている、干渉計。
【請求項32】
前記ビーム分割光学部品群は、第1および第2のビームが領域を包囲する光路を逆方向に周って進むように配置される、請求項31に記載の干渉計。
【請求項33】
前記第1および第2の反射素子が凹形である、請求項31または32に記載の干渉計。
【請求項34】
前記ビーム分割光学部品群は、前記第1および第2のビームの干渉パターンを、前記干渉パターンが前記検出器の平面を横切って広がるように生成する、請求項31から33のいずれか一つに記載の干渉計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−517465(P2013−517465A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548473(P2012−548473)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000045
【国際公開番号】WO2011/086357
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(507187802)ザ サイエンス アンド テクノロジー ファシリティーズ カウンシル (15)
【氏名又は名称原語表記】THE SCIENCE AND TECHNOLOGY FACILITIES COUNCIL
【住所又は居所原語表記】Harwell Innovation Campus, Rutherford Appleton Laboratory, Chilton, Didcot, Oxon OX11 0QX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】