小型飛行装置
【課題】アクチュエータの負荷を軽減して羽ばたき飛行できるようにする。
【解決手段】胴体1の前部と後部の左右位置に、出力軸4にばね7による復元力を与えるようにしてなる翼駆動用モータ3を、上下方向角度変更可能に設ける。出力軸4に、駆動ロッド14と連結ロッド16と翼本体15からなる羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを取り付ける。羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、翼駆動用モータ3と一緒に迎角の調整を行うと共に、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dとその羽ばたき作動に同伴される空気並びに翼駆動用モータ3の可動部の慣性力と、ばね7の復元力が作る振動系の共振周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を適宜調整することにより、発生させる後流の向きと強さを調整して、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに胴体1へ作用させる揚力と推進力のバランスを変化させて、ホバリングや前進飛行、左右旋回等を行わせる。
【解決手段】胴体1の前部と後部の左右位置に、出力軸4にばね7による復元力を与えるようにしてなる翼駆動用モータ3を、上下方向角度変更可能に設ける。出力軸4に、駆動ロッド14と連結ロッド16と翼本体15からなる羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを取り付ける。羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、翼駆動用モータ3と一緒に迎角の調整を行うと共に、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dとその羽ばたき作動に同伴される空気並びに翼駆動用モータ3の可動部の慣性力と、ばね7の復元力が作る振動系の共振周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を適宜調整することにより、発生させる後流の向きと強さを調整して、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに胴体1へ作用させる揚力と推進力のバランスを変化させて、ホバリングや前進飛行、左右旋回等を行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要の目標位置まで飛行させて該目標位置の情報収集や、上記目標位置への小型機器の搬送等を行わせるために用いる小型飛行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内外の高所位置や災害現場等の人が容易に近づくことが困難な場所、あるいは、化学物質、微生物、放射性物質等での汚染が想定されるような場所の現場状況を調べる場合等に、大きさが数十センチメートル以下というような非常に小型の飛行装置(Micro Air Vehicle:MAV)に、カメラ、マイク、雰囲気ガス中の化学物質、微生物、放射性物質等の有無を検出するための所要の分析装置等の機器を搭載して、該小型飛行装置を目標となる位置まで飛行させ、該小型飛行装置に搭載された機器により検出される現場の計測結果を基に、遠隔地より上記目標位置の情報収集を実施できるようにすることが考えられてきている。
【0003】
ところで、飛行体とその周囲の流体との相互作用を、流体の慣性力と粘性力の比であるレイノルズ数との相関で整理すると、飛行体のサイズとレイノルズ数の大小はほぼ対応しており、従来一般に実用化されているメートルサイズの飛行体では、たとえば、通常の航空機のレイノルズ数が107〜108のオーダーを示すように、レイノルズ数が高くて(Re>105)慣性力が支配的となっているのに対し、上記のようなサイズが小さい小型飛行装置では、レイノルズ数が104〜105程度と低い値となり、周囲の気体(流体)との相互作用では、慣性力と共に粘性力の影響が大となる。又、上記小型飛行装置は、サイズが小さくて機体重量が軽いことから、気流等の影響を容易に受け易く、常に突風の中を飛行するような状態となる。更に、屋内での飛行や、屋外での気流中を飛行させるためには、垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の非常に高度な飛行性能が要求されることから、航空機やヘリコプター等の従来の飛行体とは非常に異なる設計が必要とされている。
【0004】
そのため、上記小型飛行装置にて垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行等を行わせることができるようにするため飛行手段の1つとして、羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置が考えられてきている。
【0005】
この種の羽ばたき飛行する形式の小型の飛行装置としては、従来、たとえば、胴体部の左右位置に、それぞれ前後一組の振動型アクチュエータを、該前後方向に配される各振動型アクチュエータの振動軸(回転軸)が、後方側が低くなるよう胴体軸に対して所要角度傾斜する一直線上に並ぶように配設し、羽前縁をなす羽軸(前羽軸)と羽後縁をなす羽軸(後羽軸)との間に膜を張設して形成してなる羽の上記前羽軸と後羽軸を、上記前側と後側の各振動型アクチュエータにそれぞれ接続した構成としてなるものが提案されている。
【0006】
かかる形式の小型飛行装置において、上記前後の各振動型アクチュエータは、前側の振動型アクチュエータが、後側の振動型アクチュエータよりも所要位相差で先行するようにそれぞれ上下方向に羽ばたき(往復)作動させるようにしてある。これにより、羽の打ち下ろし作動時には、該羽がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにして、打ち下ろし時に羽の膜が移動する空間の体積が最大になるようにしてあり、一方、羽の打ち上げ作動時には、該羽の膜ができるだけ水平面に対して直角に近い角度となるようにして、打ち上げ時に羽根の膜が移動する空間の体積を最小にするようにしてあることから、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力が、羽の打ち上げ動作において羽に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにして機体の浮上力(揚力)を得ることができるようにしてある。更に、上記前後の振動型アクチュエータの位相差を調整して、各羽の打ち上げ及び打ち下げ時の姿勢(角度)を変化させることにより、前後方向への推進力を得ることができるようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0007】
更に、上記のような小型飛行装置の中で、特に、固定側となる上下の支持構造体の間に、左右の羽の羽軸を配置して、該羽軸の基端部を上記支持構造体にヒンジにて上下方向へ回動自在に取り付け、且つ左右の羽を羽ばたかせるための振動型アクチュエータを、上記羽軸の基端寄り位置に取り付けた磁石と、該磁石に対応するように上記支持構造体にそれぞれ取り付けた電磁石と、上記磁石を取り付けた羽軸と、上記電磁石を取り付けた支持構造体との間に介在させたばねの如き弾性体とからなる構成として、該振動型アクチュエータの上下の電磁石より磁気的な引力あるいは斥力を上記羽軸の磁石へ作用させて該羽軸を交互に上下動させることにより、上記羽を羽ばたき作動させることができるようにしたものや、更に、このように羽を羽ばたき作動させる際、上記弾性体の固有振動に同調させた角周波数で羽ばたき作動させることにより、羽軸にかかる力を、羽ばたき飛行に必要な空気力のみに抑えることができるようにしたものも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
又、従来、上記と同様に、羽の打ち下ろし時に羽の膜が移動する空間の体積を、羽の打ち上げ時に羽の膜が移動する空間の体積よりも大きくなるようにして、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力が、羽の打ち上げ動作において羽に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにすることにより、機体の浮上力を得るようにする考えに基づいた別の形式の小型飛行装置として、胴体部の左右位置に、3自由度を持つアクチュエータをそれぞれ設け、該各アクチュエータに、左右一対の羽にそれぞれ長手方向に沿って設けてある主軸の基端部を取り付けて、上記左右の各アクチュエータにて、羽を上下方向に往復作動させることに加えて、羽の主軸を中心とする回転動作と、主軸と羽を一体にした前後方向へ可動を可能とするようにした構成としてなるものも提案されている。
【0009】
かかる形式の小型飛行装置において、羽の打ち下ろし作動時は、該羽がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにし、一方、羽の打ち上げ時は、羽を上下方向の姿勢となるように一旦回転させた後、該羽の有する湾曲形状に沿う軌道で引き上げられるように、羽を回転させると同時に前後方向に動かしながら打ち上げ作動させるようにしてある。これにより、羽の打ち上げ動作において該羽に作用する鉛直下向きの流体力をより小さくできるようにして、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力との差をより大きくすることで、機体の浮上力をより効率よく得ることができるようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献2、特許文献4、特許文献5参照)。
【0010】
更に、従来の羽ばたき飛行する他の形式の小型飛行装置としては、胴体部の左右位置に、羽の長手方向に沿って設けてある軸の前後水平方向の往復作動と、該羽の軸の回転作動を行なうことができるようにしてある駆動装置をそれぞれ設けて、該左右の各駆動装置に、左右一対の対応する羽の軸をそれぞれ取り付けてなる構成としたものも従来提案されている。すなわち、上記駆動装置により左右の羽を前後方向に羽ばたき作動させると同時に、羽を前方及び後方へ打つときには、該羽の上縁側が下縁側に対して先行するように羽の軸を回転させるようにして、各羽により下向きの気流を発生させるようにし、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしたもの、更に、この際、左右の羽の前後方向の振幅の中心位置を、それぞれ独立して進行方向前方又は進行方向後方にずらすことで、各羽の羽ばたき作動時に該羽の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させて、前進、後進、あるいは、左右方向の旋回を行わせるようにすることができるようにしたものも提案されている(たとえば、特許文献5参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−135866号公報
【特許文献2】特開2002−326599号公報
【特許文献3】特開2003−339896号公報
【特許文献4】特開2003−118697号公報
【特許文献5】特開2004−90909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記従来提案されている3つの形式の羽ばたき飛行する小型飛行装置のうち、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた前後一組の振動型アクチュエータにより左右一対の羽を上下方向に羽ばたき作動させる形式、及び、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた3自由度を持つアクチュエータにより左右一対の羽を上下方向に羽ばたき作動させる形式のものでは、垂直離着陸時や空中停止飛行時の如き、羽の湾曲形状による揚力の発生が期待できないときには、機体の浮上力(揚力)を、羽を水平面とほぼ平行な姿勢で打ち下ろすときに該羽の面に作用する鉛直上向きの流体力と、羽を所要の姿勢で打ち上げるときに該羽根に作用する鉛直下向きの流体力との差のみで得る必要がある。しかし、この場合、左右の各翼の一回の羽ばたき作動で得られる揚力は、最大でも羽の面によって下方に、すなわち、該羽の面とほぼ直角方向に押される空気からの反力でしかなく、したがって、得られる浮上力が非常に小さいと考えられる。このために、機体重量を、1グラム未満とする等、極めて軽量としなければならず、駆動装置や電源も非常に軽量としなければならないことから飛行能力にも制限が生じることが懸念される。更に、上記したように機体重量が極めて軽いことから、環境に存在する気流によって飛行状態に大きな影響を受ける虞もある。
【0013】
又、上記従来の羽ばたき飛行する小型飛行装置のうち、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた羽の前後水平方向の往復作動と該羽の回転作動を行なう駆動装置により、左右一対の羽を前後方向に羽ばたき作動させる形式のものでは、該各羽の羽ばたき作動により下向きの気流を発生させて、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしてあり、又、前後方向の推進力は、上記左右の羽の前後方向の振幅の中心位置を、進行方向前方又は進行方向後方にずらして、各羽の羽ばたき作動時に該羽の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させることで得るようにしてある。そのため、浮上力は効率よく得ることができるが、前後方向の推進力は比較的弱く、飛行速度に制限を受けることから、行動範囲が制限される虞が懸念される。
【0014】
更に、上記従来の3つの形式の羽ばたき飛行する小型飛行装置は、いずれも左右一対の羽しか備えていない。そのために、機体が飛行中に左右方向に傾くような姿勢変化を生じた場合には、左右の羽でそれぞれ発生させている揚力を増減させることで左右の揚力のバランスを調整して、速やかに姿勢を制御できるとしても、機体が前後方向に傾くような姿勢変化を生じた場合には、速やかに対応し難いと共に、その調整作用が弱い虞も懸念される。
【0015】
そこで、本発明者は、小型飛行装置に高度な飛行性能を付与するための工夫、研究を重ねた結果、胴体の水平姿勢を保持したままの垂直離着陸、急速旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の高度な飛行性能を備えたトンボに着目した。トンボは、水平飛行時には、翼断面の平均迎角(水平面となす角)をほぼゼロとなるようにして、翼断面が上下往復運動と回転運動が重畳された運動をするように各翼を羽ばたかせており、一方、空中停止飛行時には、翼断面の平均迎角をほぼ90度として、すなわち、翼前縁を上にして、翼断面が前後往復運動と回転運動が重畳された運動をするように各翼を羽ばたかせており、このことから、水平飛行時と空中停止飛行時での違いは、翼断面の該翼断面に対する相対的な往復運動方向は変化せず、翼断面の平均迎角だけが相違している。
【0016】
ところで、トンボの各翼は、3方向の自由度を持つジョイントにより胴体に連結されており、この自由度を生かして、自在に翼断面を上下や前後に動かしたり、回転できるものである。
【0017】
このため、上記トンボの翼の胴体への取付部分の構造を模倣して、上下、前後、回転の3方向の自由度を持つ翼の駆動機構を採用することが考えられる。この場合、上記のような3方向の自由度を備えたユニバーサルジョイントは、ジンバルとモータ等を組み合わせることにより実現することは可能であると考えられるが、重量が過多になり、小型飛行装置に採用することは難しく、又、コスト的にも高価になると考えられる。
【0018】
なお、上記従来提案されている羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置にも、3自由度を持つアクチュエータにより左右一対の羽を羽ばたき作動させる形式のものが提案されているが、該アクチュエータの有する自由度は、羽の打ち上げ作動時に該羽を羽の有する湾曲形状に沿った軌道で引き上げるためのもので、羽の平均迎角を変化させた状態で羽ばたき作動させるためのものではない。
【0019】
更に、各翼を羽ばたかせて飛行する形式の小型飛行装置により所要の使用目的を達成できるようにするためには、使用目的に対応させたペイロードを十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが要求されることがあり、そのために、各翼を高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたかせる必要が生じることがある。このように、各翼を高い周波数で羽ばたかせる場合には、各翼の羽ばたき作動時に発生する慣性力の変動をいかに処理するかが重要となる。
【0020】
トンボの羽ばたきをよく観察すると、羽ばたきの周波数は30Hz程度であまり変わらずに、羽ばたきの振幅を変化させることにより発生させる力を変化させていると考えられる。すなわち、大きな力を発生させるときには、羽ばたきの振幅を大きくし、一方、小さな力を発生させるときには、羽ばたきの振幅を小さくしているように見え、これは、トンボが、羽ばたくときには力学的共振を利用して各翼に作用する慣性力の変動をキャンセルしているためと考えられる。
【0021】
なお、特許文献1には、羽を、羽軸と固定側の支持構造体との間に介在させたばねの如き弾性体の固有振動に同調させた角周波数で羽ばたき作動させることにより、羽軸にかかる力を、羽ばたき飛行に必要な空気力のみに抑えることができるようにする考えは示されているが、上記弾性体は、羽軸と固定側の支持構造体との間に介在されているものであって、羽の平均迎角を変化させた状態で羽ばたき作動させることに対応できるものではない。
【0022】
これらのことを鑑みて、本発明者は、トンボの翼の駆動部の運動をそっくりそのまま模倣するバイオミメティックな考え方ではなく、上記トンボの翼駆動部の優れた点のみを抽出してその構造的な考え方を取り入れるバイオモルフィックな考えに基づいて本発明をなした。
【0023】
したがって、本発明の目的とするところは、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときの慣性力をキャンセルできて、アクチュエータの負荷を軽減することができ、これにより、羽ばたき翼を高い周波数で羽ばたき作動させる場合に有利なものとすることができると共に、羽ばたき翼の羽ばたき作動により高度な飛行性能を達成できて、屋内での飛行や、屋外での気流中にて常に突風の中を飛行するような状態であっても飛行できる小型飛行装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、胴体の左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とし、より具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とする。
【0025】
更に具体的には、請求項3に係る発明に対応させて、アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにして共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに上記翼駆動用モータの出力軸と平行配置してある翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各翼駆動用モータの所定周波数での交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0026】
又、請求項5に係る発明に対応させて、アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに上記線形アクチュエータの出力軸と直角配置してある翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動にて羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときの振幅の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0027】
更に、請求項7に係る発明に対応させて、アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の小型飛行装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)胴体の左右位置の複数個所に、より具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設けた構成としてあるので、アクチュエータの可動部、該アクチュエータにて羽ばたき作動させられる羽ばたき翼、及び、該羽ばたき翼の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、アクチュエータより羽ばたき翼へ作用させる復元力とにより形成される振動系の共振周波数と等しい周波数となるように、上記アクチュエータにて羽ばたき翼を羽ばたき作動させることにより、羽ばたき翼を、いかなる角度姿勢で羽ばたき作動させる場合であっても上記慣性力をキャンセルすることができる。このために、上記アクチュエータの負荷を軽減させることができて、十分なペイロードを積んで長距離を長時間飛行させる場合に求められるように、羽ばたき翼を高い周波数で羽ばたき作動させる場合に有利なものとすることができる。
(2)各羽ばたき翼は、それぞれ独立して上下方向の角度姿勢、すなわち、迎角をそれぞれ調整できると共に、アクチュエータにより上記所定の周波数で羽ばたき作動させる際の振幅をそれぞれ制御することができることから、該各羽ばたき翼の羽ばたき作動により得られる揚力と、推進力の大きさをそれぞれ調整できる。したがって、上記各羽ばたき翼より胴体にそれぞれ作用させる揚力の大きさと、推進力の大きさ及び方向を個別に制御できることから、気流により姿勢が前後左右方向に乱されそうになっても、容易に修正して水平姿勢を保持することができる。又、垂直離着陸や空中停止飛行等の高度な飛行性能を達成できる。
(3)アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、且つ駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とすることにより、各翼駆動用モータにて出力軸に取り付けた羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに、弾性部材により復元力としての復元トルクを作用させることができる。これにより、翼駆動用モータの回転する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より翼駆動用モータの出力軸に与えるようにしてある復元トルクが作る振動系に、翼駆動用モータの出力軸の交互の正、逆転駆動により変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数が上記振動系の共振周波数に等しくなるよう上記翼駆動用モータの出力軸の交互の正、逆転駆動の周波数を調整することにより、上記慣性力をキャンセルできて、翼駆動用モータの負荷を軽減することが可能になる。又、上記翼駆動用モータの上下方向の角度と、上記所定周波数で出力軸を交互に正、逆転駆動する際の角度範囲を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の振幅の制御を行なうことができる。
(4)アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、且つ駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とすることにより、各線形アクチュエータにて出力軸に取り付けた羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに、弾性部材により復元力を作用させることができる。これにより、線形アクチュエータの振動する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より線形アクチュエータの出力軸に与えるようにしてある復元力が作る振動系に、線形アクチュエータの出力軸の振動により変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数が上記振動系の共振周波数に等しくなるように上記線形アクチュエータの出力軸を振動させる周波数を調整することにより、上記慣性力をキャンセルできて、線形アクチュエータの負荷を軽減することが可能になる。又、上記線形アクチュエータの上下方向の角度と、上記所定周波数で出力軸を振動させる範囲を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の振幅の制御を行なうことができる。
(5)アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設けて、該ブラケットに、駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成とすることにより、各線形アクチュエータにて出力軸に連結した羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに、弾性部材により復元力を作用させることができることから、上記(4)と同様に、上記線形アクチュエータの出力軸を振動させる周波数が、線形アクチュエータの振動する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より線形アクチュエータの出力軸に与えるようにしてある復元力が作る振動系の共振周波数に等しくなるように調整することにより、上記慣性力をキャンセルできて、線形アクチュエータの負荷を軽減することが可能になる。更に、上記線形アクチュエータの上下方向の角度と、上記所定周波数で出力軸を振動させる範囲を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の振幅の制御を行うことができる。しかも、線形アクチュエータの出力軸の振動の振幅を、増幅して羽ばたき翼へ伝達して羽ばたき作動させることができるため、線形アクチュエータの出力軸の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、線形アクチュエータの小型化を図るのに有利なものとすることができる。
(6)更に、上記(3)、(4)又は(5)の構成において、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に羽ばたき翼の上下方向の迎角の制御と、羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた構成とすることにより、上記(3)、(4)又は(5)に示した効果に加えて、本発明の小型飛行装置の姿勢が崩れて所要方向に傾斜した場合には、傾斜した側と、その反対側に作用する揚力のバランスを変えるよう、各羽ばたき翼の迎角及び羽ばたき作動を変化させて姿勢を修正して、飛行姿勢を安定に保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1(イ)(ロ)乃至図4は本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、前後方向の長さ寸法を、たとえば、十数センチメートル程度としてある胴体1の左右両側部の複数個所、たとえば、前部左右位置と後部左右位置の4個所に、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、翼駆動用モータ3と一緒に上下方向へ回動させて前後方向姿勢と上下方向姿勢との間で角度姿勢を独立して変更可能となるようそれぞれ設けて、出力軸4に対して所要の弾性係数を有する弾性部材により復元トルク(復元力)を与えながら該出力軸4を正、逆転駆動できるようにしてある共振型アクチュエータとしての上記翼駆動用モータ3の上記出力軸4に連結し、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の角度を制御すると共に、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上記翼駆動用モータ3により、弾性部材の弾性力に基づいて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動時に生じる慣性力をキャンセルできるような所定の周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させることにより飛行できるようにする。
【0031】
以下、詳述する。
【0032】
上記共振型アクチュエータとしての翼駆動用モータ3は、図3(イ)(ロ)に示す如く、出力軸4の中間部に、該出力軸4と直角方向で且つ相対する方向に所要長さ突出するようにばね用アーム5を取り付け、一方、翼駆動用モータ3のケースの前面の外周部における180度対向する2個所に、出力軸4と平行に延びるようにばね用の支柱6をそれぞれ設ける。該各支柱6と上記アーム5の先端部同士との間には、所要の弾性係数を有する弾性部材として、たとえば、所要のばね定数を有するばね7を介在させて、出力軸4が回転するとき、ばね7の弾性力が作用するようにした構成とする。すなわち、上記出力軸4を正、逆転駆動させるときに、該出力軸4と一緒に回転する上記各ばね用アーム5の先端部位置が、位置固定されている上記各ばね用支柱6に対して近接、離反するよう相対変位させられることに伴い、上記各ばね用アーム5の先端部とばね用支柱6との間の各ばね7が初期状態より伸縮変形させられるようにし、この伸縮変形するときの各ばね7の有する弾性力(初期形状への復元力)により、上記各ばね用アーム5の先端部位置と各ばね用支柱6との相対位置を初期状態へ戻すように力が各ばね用アーム5に与えられるようにし、これにより、翼駆動用モータ3の出力軸4に対して初期状態へ復元させるような所要の復元トルク(復元力)を与えることができるようにした構成としてある。なお、上記翼駆動用モータ3は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0033】
したがって、上記各翼駆動用モータ3の出力軸4の正、逆転駆動により上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるときには、各翼駆動用モータ3の回転する出力軸4及びロータ等の可動部と、羽ばたき作動する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dと、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気による慣性力が生じることから、この慣性力と、上記ばね7により各翼駆動用モータ3の出力軸4に対して与えられる復元力によって形成される振動系(以下、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系と云う)に対して、各翼駆動用モータ3より変動外力が加えられることになる。よって、このように各翼駆動用モータ3より上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系に対して変動外力を加える際の該変動外力の周波数、具体的には、各翼駆動用モータ3の出力軸4の交互の正、逆転駆動の周波数が、上記振動系の共振周波数に等しくなるようにすることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる上記の如き慣性力をキャンセルすることができて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させることができるようにしてある。
【0034】
上記構成としてある翼駆動用モータ3は、図3(イ)(ロ)に示す如く、外側面に出力軸4と直角方向で且つ相対する方向となるよう回転支持軸8を取り付けて、該各回転支持軸8を、胴体1の前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ設けてある左右一対の軸受9a,9bに回転自在に支持させるようにして、図2に示す如く支持させる。更に、一方(片側)の回転支持軸8、たとえば、各翼駆動用モータ3の胴体1の中心側に位置する各々の回転支持軸8に、角度変更用ギア10をそれぞれ取り付け、且つ該各ギア10に噛合させた各ピニオン13を、胴体1に設置してある各々独立させた角度制御用モータ11の出力軸12に取り付け、各角度制御用モータ11でピニオン13を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア10、回転支持軸8を介して翼駆動用モータ3を、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。これにより、上記各角度制御用モータ11の回転数を適宜制御することで、それぞれ対応する翼駆動用モータ3と一緒に該翼駆動用モータ3に取り付けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の迎角(向き)をそれぞれ独立に変更できるようにしてある。なお、上記角度制御用モータ11は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0035】
上記羽ばたき翼2a,2b,2c,2dは以下のような構成としてある。すなわち、各翼駆動用モータ3の出力軸4に、左右方向に延びて胴体1の外方へ所要寸法突出するようにしてある駆動ロッド14の一端部(胴体1側端部)をそれぞれ連結して固定し、出力軸4の回転で駆動ロッド14が各ばね7による復元力の作用を受けながら振られるようにする。なお、上記駆動ロッド14は、多少の柔軟性(撓性)を備えた素材製のものとしてもよい。上記各駆動ロッド14の胴体1の外方へ突出した他端側には、対応する翼駆動用モータ3の出力軸4と平行な面内に配置してある矩形状の翼本体15の前縁部を、該翼本体15の幅方向に所要間隔で配した複数本(図では3本)の連結ロッド16を介して一体に取り付ける。これにより、上記各翼駆動用モータ3の出力軸4を、それぞれ所要の角度範囲、たとえば、30度程度の角度範囲で交互に正、逆転駆動させることにより、該出力軸4に連結してある駆動ロッド14の往復動作を介して、該駆動ロッド14と連結ロッド16と翼本体15とからなる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上記各出力軸4の回転角度範囲にそれぞれ対応した所要の角度範囲で個別に羽ばたき作動させることができるようにしてある。すなわち、各翼駆動用モータ3にて出力軸4を正、逆転駆動させるときの角度範囲を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動する振幅を独立して制御できるようにしてある。
【0036】
更に、上記各連結ロッド16は、柔軟性(撓性)を備えた素材製として、上記羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の際に翼本体15に空気抵抗が作用すると、その荷重を受けて上記各連結ロッド16が所要量撓むようにしてある。これにより、上記翼駆動用モータ3にて羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき運動させるときには、上記各連結ロッド16が撓むことによって、駆動ロッド14の往復移動に対し、上記各連結ロッド16を介して接続してある翼本体15の往復移動が所要位相遅れると共に、該各翼本体15の前縁(駆動ロッド14側の縁)の往復移動に対し、後縁(反駆動ロッド14側の縁)が所要位相遅れて追従するようになることから、翼本体15に、所謂フェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0037】
上記各翼本体15は、低アスペクト比となる矩形状としてあり、たとえば、該翼本体15の前縁部に沿って配置した左右方向に延びる横骨部材17と、該横骨部材17の長手方向の複数個所(図では5個所)に一端部を取り付けると共に、他端部が翼本体15の後縁に達するよう配置した複数本の縦骨部材18とからなる骨組み構造に、薄いプラスチックフィルムのようなフィルム19を張ってなる構成としてある。更に、上記各縦骨部材18は、柔軟性(撓性)を備えてなる素材製として、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の際、上記翼本体15のフィルム19の受ける空気抵抗の荷重により上記各縦骨部材18がそれぞれ所要量撓むようにし、このことによっても、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動時にそれぞれの翼本体15にフェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0038】
上記において翼本体15の形状を低アスペクト比となる形状としたのは、本発明の小型飛行装置はサイズが小さく、このため流体との相互作用は104〜105程度と低いレイノルズ数で支配されるようになるため、通常のレイノルズ数が105よりも大となるようなメーターサイズの飛行体とは異なり、翼弦長が翼幅に比して小さい高アスペクト比の翼形状よりも低アスペクト比の翼形状の方がより有利となるためである。
【0039】
したがって、上記各翼駆動用モータ3の出力軸4を交互に正、逆転駆動させて駆動ロッド14を振ることにより羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させると、それぞれ対応する翼本体15の後縁側の外方領域にはスリップストリーム(後流)が発生し、このため、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dには、上記後流の反力がそれぞれ作用するようになる。よって、本発明の小型飛行装置全体では、上記4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにそれぞれ作用する後流の反力における垂直方向上向きの成分(垂直分力)の合力を揚力として作用させ、又、上記4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにそれぞれ作用する後流の反力の水平方向成分(水平分力)を水平方向の推進力として作用させることができるようにしてある。
【0040】
更に、各翼駆動用モータ3の出力軸4の交互の正、逆転駆動の周波数が、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しくなる所定の周波数となるようにして各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる状態にて、上記各翼駆動用モータ3ごとに出力軸4を交互に正、逆転駆動するときの角度範囲を増減させて、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの振幅を独立して調整することにより、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる後流の大きさを個別に制御できるようにしてあると共に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を独立して調整することにより、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる後流の方向を個別に制御できるようにようにしてある。このため、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに発生させる揚力と推進力のバランスを変更することができるようになることから、本発明の小型飛行装置にて高度の飛行性能が実現できるようになる。
【0041】
すなわち、たとえば、角度制御用モータ11により翼駆動用モータ3を回動させて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を、図1(イ)に示す如く、それぞれ90度、すなわち、翼前縁が垂直方向上向きとなる姿勢とさせた状態にて、翼駆動用モータ3の出力軸4を羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数で交互に正、逆転駆動させると、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルして、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させた状態にて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることができる。この際、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼本体15の後流は、垂直方向下向きに発生されるようになる。このため、該後流の反力は垂直方向上向きの成分のみとなって、水平分力は生じない。よって、気流のない領域にて、上記各翼駆動用モータ3によるそれぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を調整して、4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにてそれぞれ発生させる後流の反力の合力である本発明の小型飛行装置の揚力が、本発明の小型飛行装置の機体重量(全体重量)を上回るようにすれば、該小型飛行装置は、水平方向に移動されることなく垂直上昇するようになる。一方、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記周波数にて羽ばたき作動させるときの振幅を小さくして上記本発明の小型飛行装置の揚力が機体重量を下回るようにすると、該小型飛行装置は垂直に降下させられるようになる。更に、上記本発明の小型飛行装置の揚力が機体重量と釣り合うようにすれば、本発明の小型飛行装置は空中停止飛行(ホバリング)を行うことができるようになる。なお、上記のように垂直上昇、垂直降下、ホバリングの際は、胴体前部の羽ばたき翼2a,2bと胴体後部の羽ばたき翼2c,2dとを逆位相で羽ばたき作動させるようにすると、好ましくない不平衡力の発生を防止することが可能になる。
【0042】
又、たとえば、上記角度制御用モータ11により翼駆動用モータ3を上下方向に回転させて羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度を変更すると、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動により発生する後流の方向が垂直方向下向きより傾くことから、該後流の反力には水平方向成分が生じることとなる。したがって、図1(ロ)に示す如く、4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、いずれも所要迎角で前方やや上向きとなるような姿勢とさせた状態にて、各翼駆動用モータ3の出力軸4を羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数で交互に正、逆転駆動させると、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルして、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させた状態にて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることができ、この際、該4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにより発生される後流の反力が前方やや上向きに作用するようになるため、上記発生される後流の反力の垂直分力の合力である揚力が本発明の小型飛行装置の機体重量と釣り合うように、上記所定の周波数で羽ばたき作動させる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの振幅を適宜調整することにより、水平分力の合力である推進力が前向きに作用するようになる。このことから、静かな気流中では、本発明の小型飛行装置は、一定高度を保持したまま、発生させる推進力の大きさに応じて前方へ飛行できるようになる。なお、上記のように本発明の小型飛行装置を前方へ飛行させる際には、胴体前部の羽ばたき翼2a,2bと、胴体後部の羽ばたき翼2c,2dはほぼ同様に羽ばたき作動させればよいが、胴体後部の羽ばたき翼2c,2dは、それぞれ前方に位置する羽ばたき翼2a,2bの後流の中で運動することとなるので、左右の同じ側に設けられている前後の羽ばたき翼2aと2c、2bと2dでは干渉が生じる。したがって、この干渉の効果を加味できるよう、前後の羽ばたき翼2a,2bと2c,2dの羽ばたき作動時の位相差を適宜調整させるようにするとよい。
【0043】
更に、上記のように本発明の小型飛行装置を一定高度を保持した状態で前方へ飛行させる際、上記所定の周波数で羽ばたき作動させている各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dのうち、胴体左側の前後の羽ばたき翼2a,2cの羽ばたき作動の振幅と、胴体右側の前後の羽ばたき翼2b,2dの羽ばたき作動の振幅とを相違させるようにすると、羽ばたき翼2a,2cより胴体左側に作用する推進力と、羽ばたき翼2b,2dにより胴体右側に作用する推進力の大きさが相違するようになる。このため、静かな気流中においては、上記本発明の小型飛行装置を、作用する推進力がより小さい左右方向の一側へ旋回させることができるようになる。一方、飛行している小型飛行装置を左右方向のいずれか一側へ旋回させようとする乱れた気流中においては、小型飛行装置が旋回させられようとする側となる胴体1の左右いずれか一側に作用する推進力が、他側に作用する推進力も大きくなるように、左右の羽ばたき翼2a,2cと2b,2dとの羽ばたき作動の振幅を相違させるようにすれば、本発明の小型飛行装置が所定の飛行コースから外れるのを防止する効果を得ることができるようになる。
【0044】
上記のような各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上記所定の周波数での羽ばたき作動による本発明の小型飛行装置の前方への飛行中や左右への旋回中に、各翼駆動用モータ3による上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき振幅を増減させたり、角度制御用モータ11の駆動により翼駆動用モータ3と一緒に各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を適宜変更して、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dによって発生させる後流の反力中の垂直分力の合力である揚力が、機体重量よりも大となるようにしたり、あるいは、機体重量を下回るようにすれば、本発明の小型飛行装置を前方への飛行中や旋回中に徐々に上昇させたり、あるいは、徐々に降下させることもできるようになる。
【0045】
なお、上記のように上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、各翼駆動用モータ3の出力軸4の羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数での交互の正、逆転駆動により羽ばたき作動させて、本発明の小型飛行装置へ水平方向の推進力を与える際、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各翼駆動用モータ3の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dで発生させる後流の向きを、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに設定されている迎角よりも下方へ偏らせるようにして、該下方へ偏った後流の反力により機体重量を支えるための揚力を得るようにしてもよい。このようにすれば、本発明の小型飛行装置を水平方向前方に飛行させる際、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角をゼロ、すなわち、水平方向前方に向けた姿勢とすることが可能になる。
【0046】
更に、図1(イ)に示したように、本発明の小型飛行装置にホバリング、垂直上昇あるいは垂直降下を行わせているときに、左右のいずれか一側の羽ばたき翼2a,2c又は2b,2dの姿勢を、やや前方に傾斜させ、且つ他側の羽ばたき翼2b,2d又は2a,2cの姿勢を、やや後方に傾斜させるようにすれば、胴体1の左側と右側に、互いに前後方向に逆向きの推進力を作用させることができるようになるため、本発明の小型飛行装置をその場で左右方向に回頭させることも可能になる。更に、左右両側の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、すべてやや後方に傾斜した姿勢とすれば、後進飛行させることも可能になる。
【0047】
ところで、本発明の小型飛行装置は、胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に設けてある4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき作動をそれぞれ独立して制御することにより、上述したような垂直上昇、垂直降下、ホバリング、垂直上昇や垂直降下やホバリングしながらのその場回頭、前進飛行、左右への旋回、前進あるいは旋回しながらの上昇や下降、後進飛行等の高度な飛行性能を達成できるものであるが、前述したように、サイズが小型としてあるために、実際の環境下を飛行する場合には、環境に存在する気流の影響を受けて常に乱流の中を飛行するような状態になる。このため、容易に姿勢が乱される虞があると共に、乱流の中を飛行することに伴い、所望する飛行コースから容易に逸脱する虞も懸念される。このような姿勢の乱れの修正や所望する飛行コースからの逸脱の修正を、作業者が無線制御等によってその都度行うことは困難であるため、本発明の小型飛行装置では以下のような制御機構を備えて、飛行の自律制御を行わせることができるようにしてある。
【0048】
すなわち、図4に示す如く、胴体1の所要位置に、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ21、ジャイロ等の姿勢センサ22、障害物の検出を行うための衝突防止センサ23を設け、該各センサ21,22,23からの信号を基に、胴体1の前部左右位置及び後部左右位置の上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに対応するよう設けられている翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11の組に対し、それぞれ独立した制御指令を与えるコントローラ24を備える。
【0049】
更に、胴体1の所要位置には、外部の図示しない制御装置より無線で発せられる本発明の小型飛行装置の使用目的に応じた飛行指令を受信して、上記コントローラ24に入力するための無線受信器25及び指令設定器26を設けるようにしてある。更に、上記コントローラ24より出力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等を、上記外部の制御装置へ無線で送信するための状態監視器27並びに無線送信器28を設けるようにしてある。
【0050】
上記コントローラ24について詳述すると、その機能の一つとしては、先ず、姿勢制御機能がある。これは、上述したように本発明の小型飛行装置は、飛行中に乱流によって容易に姿勢が乱される虞があることから、上記コントローラ24は、搭載してある姿勢センサ22より入力される信号に基づいて、前後左右方向の傾斜を常時監視し、傾きが検出されると、該検出された傾きが解消されて水平姿勢に戻るように、前部左右位置及び後部左右位置の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度、及び、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数で羽ばたき作動させている各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの振幅を適宜変更すべく、翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へ指令を与えるようにしてある。
【0051】
具体的に説明すると、たとえば、姿勢センサ22の信号により左側が下がるように傾斜していることが検出されたときには、そのときの飛行状態における各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動状態に比して、胴体左側の前後の羽ばたき翼2a,2cによる揚力をやや増加させると共に、この揚力の増加に伴って所望の飛行コースより外れて上昇しないようにするために、胴体右側の前後の羽ばたき翼2b,2dによる揚力をやや減少させ、更に、この際、所望の飛行コースから左右方向に逸れないようにするために、左側及び右側の各羽ばたき翼2a,2c及び2b,2dによる胴体1の左右に作用する推進力は変化させないよう、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角及び上記所定の周波数での羽ばたき作動の振幅を、それぞれ対応する翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11により調整させるようにする。これにより、胴体1の左側と右側に作用する揚力のバランスを調整して傾斜を修正して水平姿勢を保持することができるようにしてある。
【0052】
同様に、右側が下がるような傾斜が検出された場合や、前後方向の傾斜が検出された場合にも、それぞれ胴体1の下がった側と上がった側に存在する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力のバランスを変化させることにより、傾斜を修正して水平姿勢を保持することができるようにしてある。
【0053】
上記コントローラ24の別の機能としては、飛行制御機能がある。これは、本発明の小型飛行装置を所定の目標位置まで飛行させ、その後、所望の作業の終了後に初期位置又は所定の場所まで戻らせるためのものである。したがって、GPSや、GPS電波の届かないところでは磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ21より入力される信号に基づいて本発明の小型飛行装置自体の位置(たとえば、三次元座標)を検出することができるようにしてある。又、外部の制御装置より無線受信器25、指令設定器26を介して飛行指令、たとえば、目標位置がGPS座標等により設定されると、上記検出された自己の初期位置(離陸位置)から目標位置に至るための方向、距離等を求めて、飛行コースを、たとえば、先ず、垂直に離陸して所要高さ位置まで垂直上昇した後、目標位置に向けて所要方位へ前進飛行するというような飛行コースを自動的に判断して設定できるようにしてあり、該設定された飛行コースに沿って飛行するために要求される揚力及び推進力の変化に応じて、すなわち、上記飛行コースに設定された高度に合せて上昇又は下降するために揚力を調整したり、左右方向へ旋回させるために左右の推進力のバランスを調整したり、更には、飛行速度を設定するために全体に作用する推進力を調整できるよう、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定の周波数での羽ばたき作動の振幅を適宜独立に制御できるようにしてある。これにより、本発明の小型飛行装置は、上記設定された飛行コースに沿って上記目標位置まで飛行することができるようにしてある。
【0054】
又、本発明の小型飛行装置は上記したように乱流によって飛行コースを容易に乱され易いことから、上記コントローラ24の飛行制御機能としては、本発明の小型飛行装置を上記のように所定の飛行コースに沿って飛行させる際に、GPS座標等の上記位置センサ21からの信号に基づいて本発明の小型飛行装置の現在の飛行位置を常時監視し、検出される現在の飛行位置が、上記所定の飛行コースからずれていることが検出された場合には、このずれを修正するように左右の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へ適宜指令を与えて、左右方向へ旋回させたり、上昇あるいは下降を行わせることができるようにする。これにより、飛行コースが乱されても随時修正しながら本発明の小型飛行装置を目標位置まで飛行させることができる機能も有するようにしてある。
【0055】
更に、上記コントローラ24の飛行制御機能としては、目標位置における所定の目的が達成された後に、本発明の小型飛行装置を初期位置(離陸位置)あるいは予め設定された所定の位置まで戻るように帰還用の飛行コースを設定すると共に、該帰還用飛行コースに沿って上記したと同様の制御を行うことで飛行させることもできるようにしてあるものとする。
【0056】
上記コントローラ24の更に別の機能としては、飛行コース上に存在する障害物を自動的に回避する障害物回避機能も備えているものとする。これは、衝突防止センサ23より入力される信号に基づいてコントローラ24が進行方向前方を常に監視し、飛行コースの前方に障害物の存在が検出されると、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へ適宜指令を与えることにより、飛行方向を上下左右方向へ適宜変更して上記障害物を迂回させるようにしてある。このようにして障害物を避けた後は、コントローラ24の有する上記飛行制御機能に基づいて、目標位置に至る飛行コースあるいは帰還用飛行コースに戻させるようにすればよい。
【0057】
上記衝突防止センサ23としては、たとえば、光フロー(Optic Flow)センサを採用すればよい。これは、ある移動体が移動しているときに該移動体より外部を視覚的に観測すると、得られる外部の像は、進行方向前方の一点より放射状に拡大し、移動体の上下左右位置では後方へ該移動体の速度と対応する速さで最も速く流れた後、進行方向後方の一点に集約されるように変化する。この際、上記移動体の進行方向の前方に位置している物体は、視界上における相対位置が変化せず、進行方向の前方からずれた位置に存在している物体は、その進行方向からの上下左右へのずれ方向に応じて、視界上では上下左右方向にその相対位置が変化すること、又、これらの進行方向前方からずれた位置に存在する物体は、進行方向からのずれが小さいほど、視界上における相対位置の変化率が大きくなる、という原理を利用して進行方向前方の障害物を検出できるようにしてある。
【0058】
更に又、胴体1の図示しない所定位置には、本発明の小型飛行装置の使用目的に応じたペイロード20として、たとえば、遠隔地の情報収集を目的とする場合には、画像撮影用のCCDセンサ20aや、雰囲気ガス中に存在する物質を検出するための化学センサ20b、バイオセンサ20c等の各種センサや、搬送対象物の離脱操作や把持操作等を行わせるための把持装置(図示せず)のようなペイロード20を搭載できるようにしてある。該ペイロード20が、各種センサである場合には、図4に示す如く、該センサによる計測結果を、上記状態監視器27へ送り、上記コントローラ24より入力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等と一緒に無線送信器28を経て外部の制御装置へ無線で送信させるようにしてもよい。
【0059】
図1(イ)(ロ)に示す如く、胴体1の下部所要位置には、本発明の小型飛行装置を離着陸させるときに接地させるための脚29を設けるようにしてある。又、胴体1の所要位置には各モータ3,11や上記制御機構における各機器に電力供給を行なうためのバッテリー等の図示しない電源を搭載するようにしてある。
【0060】
なお、本発明の小型飛行装置は飛行体であることから、上記した各種構成要素は、いずれも軽量であることが重要になる。したがって、上記各種構成要素は、いずれも、要求される強度や機能が満たされる範囲内において軽い材質のものを適宜選択して用いるようにすればよい。
【0061】
上記構成としてあることにより、本発明の小型飛行装置を使用する場合は、作業者が所要の離陸位置まで搬送して地上や所要個所に載置した状態にて、外部の制御装置より無線にて目標位置までの飛行及び所要の目的、たとえば、ペイロード20として搭載してある各種センサによる上記目標位置の状況観測等を行うよう飛行指令を発すると、該指令が本発明の小型飛行装置の無線受信器25及び指令設定器26を経てコントローラ24に入力される。このようにコントローラ24へ指令が入力されると、該コントローラ24では、上記指定された目標位置までの飛行コースが設定され、この所定の飛行コースに沿って飛行できるような揚力及び推進力が得られるように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3と角度制御用モータ11をそれぞれ駆動させるための指令が個別に発せられる。これにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角が角度制御用モータ11により所要の角度に調整されると共に、翼駆動用モータ3により上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dが、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数にて振幅が適宜制御されて羽ばたき作動されることから、本発明の小型飛行装置は、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルして、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させた状態で上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させて、上記所定の飛行コースに沿って目標位置まで飛行するようになる。
【0062】
この飛行の際、乱流等により姿勢が乱れると、姿勢センサ22より入力される信号によりコントローラ24にて該姿勢の乱れが検出されて、この姿勢の乱れを修正するよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定の周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は常に水平姿勢を保持したまま飛行できるようになる。
【0063】
又、風の影響等により所定の飛行コースから逸脱すると、位置センサ21からの信号によりコントローラ24にて飛行コースからのずれが検出されて、この飛行コースからのずれを修正するよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されて揚力や推進力が調整されるため、本発明の小型飛行装置は目標位置へ向けて飛行できるようになる。
【0064】
更に、飛行コース上に障害物がある場合には、衝突防止センサ23からの信号によりコントローラ24にて上記障害物が検出され、この障害物を迂回して飛行できるよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は障害物を避けて飛行できるようになる。
【0065】
本発明の小型飛行装置が目標位置に達すると、ペイロード20に搭載したセンサによる上記目標位置の状況が計測されて、たとえば、上記センサをCCDセンサ20aとした場合には、上記目標位置の状況の映像が撮影でき、又、化学センサ20bとしたりバイオセンサ20cとした場合には、上記目標位置における雰囲気ガスの分析等を行わせて、該目標位置の映像や雰囲気中のガス成分の分析結果等を、状態監視器27、無線送信器28を介し外部の制御装置へ送信させることができるようになる。
【0066】
その後、上記目標位置における目的の作業が終了すると、離陸位置あるいは予め指定された所定位置まで帰還するための飛行コースに沿って飛行できるよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されて発生される揚力及び推進力が調整されるため、本発明の小型飛行装置は上記離陸位置あるいは所定位置まで帰還させられるようになる。
【0067】
このように、本発明の小型飛行装置によれば、前部左右位置及び後部左右位置に設けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角をそれぞれ対応する翼駆動用モータ3と一緒に上下方向へ回動させて独立に制御できるようにしてあると共に、上記各翼駆動用モータ3を、出力軸4に対してばね7の弾性力に基づいた復元力を作用させることができるようにした構成としてあるため、翼駆動用モータ3の出力軸4を羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数で交互に正、逆転駆動させて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをいかなる迎角に設定した状態においても、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルできることから、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させることができる。このように、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動で発生する慣性力の変動を緩和できることから、本発明の小型飛行装置にて所要の使用目的を達成できるようにするために、使用目的に対応させた後述するペイロード20を十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが求められ、そのため、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたき作動させることが要求される場合であっても、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記要求を満たすように高い周波数で羽ばたき作動させることができる。
【0068】
更に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角と、上記所定の周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を独立に制御して羽ばたき作動できるようにしてあるため、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dより胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に作用する揚力や推進力を独立して調整できる。このために、本発明の小型飛行装置は、そのサイズからレイノルズ数が104〜105程度と低いものであるため、メーターサイズの飛行体とは大幅に異なる流体との相互作用を受けて、常に乱流の中を飛行するような状況となるが、姿勢センサ22にて検出される姿勢の乱れを常時修正して水平姿勢に保持したまま、高度な飛行性能を達成することができる。
【0069】
更に目標位置と使用目的に関する飛行指令を与えることにより、上記目標位置までの自律飛行を行わせた後、該目標位置における所定の作業を行わせ、しかる後、離陸位置あるいは所定位置まで戻るように飛行させることができる。そのため、たとえば、災害発生現場や人が容易に近づけない個所の撮影を行ったり、該個所の雰囲気中に含まれるガスの成分を分析して、有害ガスの発生の有無を確認したりする等、遠隔地から上記目標位置の情報収集を行なうことが可能になる。
【0070】
更に、ペイロード20に把持装置を搭載しておけば、所要の搬送物を、目標位置として設定される人が容易に近付けない個所や、遠隔地まで搬送させたり、回収させたりすることも可能になる。
【0071】
次に、図5(イ)(ロ)乃至図8は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態において、前部左右位置と後部左右位置に上下方向に角度変更できるように設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、共振型アクチュエータとしての翼駆動用モータ3に連結して羽ばたき作動させるようにしてあることに代えて、前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ上下方向に角度変更できるよう設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、出力軸36に対して所要の弾性係数を有する弾性部材により復元力を与えながら該出力軸36を軸心方向に振動できるようにしてある共振型アクチュエータとして、たとえば、ムービングコイル形式の線形アクチュエータ30の出力軸36に連結して、該線形アクチュエータ30の出力軸36の振動により羽ばたき作動させるようにしたものである。
【0072】
すなわち、上記ムービングコイル形の線形アクチュエータ30は、図7(イ)(ロ)に示す如く、一端側を閉塞した円筒状の支持容器31の他端側を、中央部に所要口径の開口部32を有する蓋部31aで閉鎖できるようにし、且つ該支持容器31の内部に、半径方向の磁界を発生させる環状のギャップ(溝)33aを備えた永久磁石製の磁気回路33を設置して、該磁気回路33と蓋部31aとの間に所要の空間部を形成すると共にギャップ33aが蓋部31a側に開放するようにする。上記磁気回路33のギャップ33a内には、コイル34を、軸心方向に往復移動できるように挿入配置して、該コイル34の蓋部31a側の軸方向端部に、取付部材35を取り付け、更に、該取付部材35の中央部に、蓋部31aの中央部の開口部32にスライド自在に挿入させた出力軸36の一端を取り付ける。更に又、上記蓋部31aの前面の外縁部における周方向の複数個所(図では4個所)に、出力軸4と平行に延びるようにばね用の支柱38をそれぞれ設け、該各ばね用支柱38の先端部と、蓋部31aの開口部32を通して外部へ突出させてある上記出力軸36の中間部との間に、放射方向に配置した所要の弾性係数を有する弾性部材としての所要のばね定数を有するばね37を介在させて、各ばね37を上記出力軸36とばね用支柱38にそれぞれ連結した構成としてある。これにより、上記コイル34に所要周波数の交流電力を給電すると、該コイル34を上記磁気回路33のギャップ33a内における磁界との相互作用により軸心方向に往復運動させることができて、このコイル34の軸心方向の往復運動に伴い、取付部材35を上記空間部内で移動させて、上記出力軸36を、上記給電する交流電力の周波数と同様の周波数で軸心方向に振動(往復移動)させることができるようにしてあり、この際、該出力軸36が軸心方向に変位して位置固定の各ばね用支柱38の先端部に対して相対変位すると、上記出力軸36とばね用支柱38との間の各ばね37が初期状態より伸長させられて、この伸長させられた各ばね37の弾性力により、上記振動する出力軸36に対して初期状態へ戻すような所要の復元力を与えることができるようにしてある。なお、上記において、各ばね37は、たとえば、コイルばね等のように、伸縮を利用して出力軸36の軸心方向の変位に対して復元力を与えるものとして説明したが、板ばねのような曲げ変形を利用する形式のばねとして、出力軸36が軸心方向に変位することに伴って曲げ変形されるときに生じる反発力(弾性力)により、上記出力軸36に対して復元力を与えることができるようにしてもよい。
【0073】
したがって、上記線形アクチュエータ30の出力軸36の振動により該出力軸36に連結してある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるべく、該線形アクチュエータ30にて振動(往復移動)する出力軸36、取付部材35及びコイル34とからなる可動部と、羽ばたき作動する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dと、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気による慣性力、及び、上記ばね37より各線形アクチュエータ30の出力軸36に対して与えられる復元力によって形成される振動系(以下、図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態と同様に、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系と云う)に対して、各線形アクチュエータ30より変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数、具体的には、各線形アクチュエータ30の出力軸36を振動させる周波数が、上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しくなるようにする。これにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる上記の如き慣性力をキャンセルすることができ、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる各線形アクチュエータ30の負荷を軽減させることができるようにしてある。
【0074】
上記構成としてある線形アクチュエータ30は、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態における翼駆動用モータ3と同様に、支持容器31の外側面に、図7(イ)(ロ)に示す如く、コイル34の往復動方向とは直交する方向で且つ相対する方向に回転支持軸8を取り付けて、該支持容器31の両側へ延びる回転支持軸8を、胴体1の前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ設けてある左右一対の軸受9a,9bに回転自在に支持させるようにして、図6に示す如く胴体1上に設置させる。更に、一方(片側)の回転支持軸8、たとえば、各線形アクチュエータ30の胴体1の中心側に位置する各々の回転支持軸8に、角度変更用ギア10をそれぞれ取り付け、且つ該各ギア10に噛合させた各ピニオン13を、胴体1に設置してある各々独立させた角度制御用モータ11の出力軸12に取り付け、各角度制御用モータ11によりピニオン13を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア10、回転支持軸8を介して線形アクチュエータ30を、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。
【0075】
更に、上記線形アクチュエータ30の出力軸36には、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態における各翼駆動用モータ3の出力軸4に連結した場合と同様に、左右方向に延びて胴体1の外方へ所要寸法突出するようにしてある駆動ロッド14の一端部(胴体1側の端部)を図7(イ)に示す如く直角の状態で連結して固定すると共に、該駆動ロッド14の胴体1外方へ突出した他端側に、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態における翼本体15と同様の構成とし且つ上記線形アクチュエータ30の出力軸36と直角な面内に配置してある翼本体15の前縁部を、複数の連結ロッド16を介し取り付けて、出力軸36の往復移動で駆動ロッド14、連結ロッド16を介し翼本体15が羽ばたき作動するようにした構成としてある。本実施の形態の各図では、線形アクチュエータ30の出力軸36を垂直方向上向きとするときに、翼本体15は翼前縁が水平方向前向きの姿勢となり、線形アクチュエータ30の出力軸36を水平方向後向きとするときに、翼本体15は翼前縁が垂直方向上向きの姿勢となるように設定してある。
【0076】
したがって、上記線形アクチュエータ30の出力軸36を上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい周波数にて所要の振幅で振動させることにより、該出力軸36に連結してある駆動ロッド14と連結ロッド16と翼本体15とからなる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dが、上記翼本体15の面に垂直な方向へ振動させられて羽ばたき作動されるようになり、この際、上記各線形アクチュエータ30の出力軸36を、上記所定の周波数で振動させるときの振幅を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の振幅を独立して制御できるようになると共に、上記各角度制御用モータ11の回転数を適宜制御することにより、各線形アクチュエータ30と一緒にそれぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の迎角(向き)を独立に変更して、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力と推進力をそれぞれ独立して制御することができるようにしてある。
【0077】
更に又、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動を、それぞれ線形アクチュエータ30にて行わせるようにしてあることに伴い、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力と推進力をそれぞれ独立して制御するためのコントローラとしては、図4に示した各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3と角度制御用モータ11へそれぞれ指令を与えるコントローラ24に代えて、図8に示す如く、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの線形アクチュエータ30と角度制御用モータ11へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記所定の周波数にて羽ばたき作動させるときの振幅と上下方向の角度姿勢をそれぞれ制御する指令を与える機能を有するコントローラ24aを設けるようにしてある。
【0078】
その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図4に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0079】
本実施の形態によれば、上記角度制御用モータ11の回転を制御して線形アクチュエータ30と一緒に各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上下方向に回転させることができるようにしてあると共に、上記各線形アクチュエータ30を、出力軸36に対してばね37の弾性力に基づいた復元力を作用させることができるようにした構成としてあるため、線形アクチュエータ30の出力軸36を、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数で振動させて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをいかなる迎角に設定した状態においても、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルできることから、各線形アクチュエータ30の負荷を軽減させることができる。このように、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動で発生する慣性力の変動を緩和できることから、本実施の形態の小型飛行装置にて所要の使用目的を達成できるようにするために、使用目的に対応させた後述するペイロード20を十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが求められ、そのため、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたき作動させることが要求される場合であっても、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記要求を満たすように高い周波数で羽ばたき作動させることができる。
【0080】
更に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角と、上記所定の周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を独立に制御して羽ばたき作動できるようにしてあるため、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dより胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に作用する揚力や推進力を独立して調整できる。
【0081】
このために、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態におけるコントローラ24によるそれぞれ対応する角度制御用モータ11と翼駆動用モータ3の制御により各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに独立した迎角及び羽ばたき作動の振幅の制御と同様に、コントローラ24aの有する姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能に基づいて、角度制御用モータ11と線形アクチュエータ30へ制御指令を与えることにより、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度姿勢としての迎角、及び、羽ばたき作動の振幅をそれぞれ独立に制御することで、図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
上記のように本実施の形態における小型飛行装置を飛行させるときに水平方向前方に飛行させる場合には、上記各線形アクチュエータ30に単なる交流電力を給電しているときに、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを所要迎角で前方やや上向きの姿勢となるようにすることにより、後流を後方やや下向きに発生させて、該後流の反力中における垂直方向上向きの成分により本発明の小型飛行装置の機体重量を支えるための揚力を得るようにすればよい。又、上記各線形アクチュエータ30に対し、交流電力を供給するときに直流分を同時に負荷して、対応する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各線形アクチュエータ30の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dで発生させる後流の向きを、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに設定されている迎角よりも下方へ偏らせて、該下方へ偏った後流の反力により機体重量を支えるための揚力を得ることができれば、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を、水平方向前方に向けた姿勢とすることができる。
【0083】
次いで、図9(イ)(ロ)はいずれも図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態の応用例を示すもので、図9(イ)に示すものは、図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態に示したように、出力軸36と支持容器31の蓋部31aの前面に設けたばね用支柱38との間にばね37を介在させて共振型としてなる各線形アクチュエータ30の出力軸36に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド14の一端部(胴体1側の端部)を直接固定する構成に代えて、上記共振型としてなる各線形アクチュエータ30の支持容器31の蓋部31aの前面における出力軸36より胴体1外側寄りとなる左右方向の一側位置に、出力軸36と平行に所要寸法突出するブラケット39を設けて、該ブラケット39の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2d(図では羽ばたき翼2aについてのみ示してある)の駆動ロッド14の基端側となる一端寄りの所要個所を、ピン40によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させ、該各駆動ロッド14の基端側としての一端部には、軸心方向に沿って所要の寸法を有する長孔41を設ける。一方、上記線形アクチュエータ30の出力軸36の先端部には、先端側に左右方向に連通する隙間を備えたクレビス形状の連結部材42を取り付けて、該連結部材42の先端側の隙間に上記駆動ロッド14の一端部を沿わせて配置させるようにし、上記駆動ロッド14の長孔41に挿通させた動力伝達用ピン43の両端部を、上記連結部材42の先端部に取り付けて連結部材42と駆動ロッド14の一端部とを係合させる。これにより、線形アクチュエータ30の出力軸36が軸心方向へ振動すると、上記動力伝達用ピン43と長孔41を介し駆動ロッド14が揺動させられるようにした構成としたものである。
【0084】
又、図9(ロ)に示すものは、上記共振型としてなる各線形アクチュエータ30の支持容器31の蓋部31aの前面における出力軸36より胴体1中心側寄りとなる左右方向の他側位置に、出力軸36と平行に所要寸法突出するブラケット39を設けて、該ブラケット39の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2d(図では羽ばたき翼2aについてのみ示してある)の駆動ロッド14の基端側としての一端部を、ピン40によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させると共に、図9(イ)に示したと同様に、駆動ロッド14の基端側となる所要個所に長孔41を設け、線形アクチュエータ30の出力軸36の先端に固定した図9(イ)と同様の連結部材42に、上記駆動ロッド14の長孔41形成部を沿わせて、動力伝達用ピン43を長孔41に通すことにより係合させるようにし、線形アクチュエータ30の出力軸36が軸心方向へ振動することにより、駆動ロッド14がブラケット39への枢着点を中心に揺動させられるようにした構成としたものである。
【0085】
その他の構成は、いずれも図5(イ)(ロ)乃至図8に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0086】
上記図9(イ)及び図9(ロ)に示したものでは、いずれも、線形アクチュエータ30の出力軸36を軸心方向に振動させることにより、該出力軸36に連結部材42を介して取り付けてある動力伝達用ピン43の変位が、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド14における長孔41の部分を上記出力軸36の軸心方向に押し引き駆動させるようにする。これにより、該各駆動ロッド14は、図9(イ)及び図9(ロ)にそれぞれ一点鎖線及び二点鎖線で示す如く、線形アクチュエータ30の支持容器31の蓋部31aの前面所要位置に設けたブラケット39の先端部のピン40を支点として揺動させられるようになることから、該各駆動ロッド14の他端部に取り付けてある翼本体15を、羽ばたき作動させることができるようになる。又、上記各線形アクチュエータ30の出力軸36を振動させるときには、該出力軸36に対してばね37の弾性力に基づいた復元力を作用させることができることから、線形アクチュエータ30の出力軸36を、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数で振動させて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをいかなる迎角に設定した状態においても、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルできることから、各線形アクチュエータ30の負荷を軽減させることができる。更に、このように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる際には、各線形アクチュエータ30の出力軸36の振動の振幅を、該出力軸36に取り付けてある連結部材42先端部の上記動力伝達用ピン43にて押し引き駆動される駆動ロッド14の長孔41の位置から支点、すなわち、上記ブラケット39の先端部のピン40までの距離L1と、該支点となるブラケット39の先端部のピン40から上記駆動ロッド14の胴体1外方へ突出した他端側における翼本体15の取付位置までの距離L2との比(L2/L1)に応じて増幅させて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dへ伝達することができる。このために、線形アクチュエータ30の出力軸36の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、したがって、線形アクチュエータ30の小型化を図るのに有利なものとすることができる。
【0087】
図10(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、図3(イ)(ロ)の変形例を示すもので、図10(イ)に示すものは、翼駆動用モータ3における出力軸4に対して復元トルクを与えるための機構として、図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態のように、出力軸4に直角方向で且つ相対する方向となるよう取り付けた2本のばね用アーム5の先端部と、翼駆動用モータ3のケース前面に突設した2本のばね用支柱6の先端部との間に、該アーム5及び支柱6の各先端部を頂点とする四辺形上に位置するよう4本のばね7を介在させて接続した構成とすることに代えて、出力軸4に直角方向で相対する放射方向に突出するよう取り付けた2本のばね用アーム5の先端部と、翼駆動用モータ3のケース前面の外周縁部所要位置に突設した1本のばね用支柱6の先端部との間に、2本のばね7を介在させて接続したものである。又、図10(ロ)に示すものは、出力軸4に直角方向に所要長さ突出するように取り付けた1本のばね用アーム5の先端部と、翼駆動用モータ3のケース前面の外周縁部における180度対向する位置に設けた2本のばね用支柱6のそれぞれの先端部との間に、2本のばね7を介在させて設けるようにしたものである。したがって、上記図10(イ)及び図10(ロ)に示したものでは、いずれも出力軸4が回転するときに、該出力軸4に対して上記2本のばね7により復元トルクを与えることができるようにしてある。
【0088】
更に、図10(ハ)に示すものは、出力軸4の外周面所要位置に、弾性部材としての渦巻ばね44の中心側端部を連結し、且つ該渦巻ばね44の外周側端部を翼駆動用モータ3のケース前面の所要個所に設けたばね用支柱6に連結した構成としたものである。この場合、出力軸4が回転すると、上記渦巻ばね44が変形されるようになるため、該変形される渦巻ばね44が初期形状へ戻ろうとする復元力を利用して上記出力軸4に復元トルクを与えることができるようにしてある。
【0089】
図11(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態として、図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態及び、図9(イ)(ロ)の実施の形態におけるムービングコイル形の線形アクチュエータ30の変形例を示すもので(図では図7(イ)(ロ)に対応する図として示してある)、図7(イ)(ロ)に示したと同様に、円筒状の支持容器31と、該支持容器31の内部に内部に設ける永久磁石製の磁気回路33と、該磁気回路33のギャップ33a内に軸心方向に往復移動できるよう挿入配置したコイル34と、該コイル34の軸方向端部に取り付けた取付部材35と、上記支持容器31の蓋部31aの中央部の開口部32にスライド自在に挿入させると共に一端を上記取付部材35に取り付けた出力軸36とからなる構成としてある線形アクチュエータ30における上記出力軸36に復元力を与えるためのばね37を、上記蓋部31aの前面の外周部所要位置に設けたばね用支柱38と、上記出力軸36における支持容器31より突出する部分の中間部の外周面との間に介在させるようにした構成に代えて、上記蓋部31aと磁気回路33との間に形成されている空間部における軸心方向中間位置とほぼ対応する支持容器31の内周面と、上記コイル34の蓋部31a側の外周部との間に、周方向の複数個所(図では4個所)に半径方向に沿うよう(放射方向となるよう)に配置した所要の弾性係数を有する弾性部材としての所要のばね定数を有するばね37を介在させて、各ばね37を支持容器31とコイル34にそれぞれ接続した構成としたものである。
【0090】
本実施の形態における線形アクチュエータ30においても、上記コイル34に所要周波数の交流電力を給電して該コイル34を上記磁気回路33のギャップ33a内における磁界との相互作用により軸心方向に往復運動させることにより出力軸36を軸心方向へ振動させるときには、コイル34の軸心方向の変位に伴って上記各ばね37が伸長させられるようになるため、この伸長させられた各ばね7の弾性力により、上記コイル34と一緒に該コイル34に取付部材35を介し連結されている出力軸36に対して初期状態へ戻すような所要の復元力を与えることができるようにしてある。なお、上記において、各ばね37は、たとえば、コイルばね等のように、伸縮を利用してコイル34と一緒に軸心方向に変位する出力軸36に対して復元力を与えるものとして説明したが、板ばねのような曲げ変形を利用する形式のばねとして、コイル34が軸心方向に変位することに伴って曲げ変形されるときに生じる反発力(弾性力)により、上記コイル34及び出力軸36に対して復元力を与えることができるようにしてもよい。
【0091】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、以下に述べるようにしたものも含むものである。たとえば、本発明の小型飛行装置のサイズは、適宜増減してもよい。胴体1は、たとえば、流線形のような本発明の小型飛行装置の飛行時に抵抗とならないような形状としてあれば、形状は自在に決定してよい。
【0092】
駆動ロッド14と翼本体15を繋ぐ連結ロッド16の本数は、3本として示してあるが、適宜増減してもよい。翼本体15は、軽量で且つ羽ばたき作動により本発明の小型飛行装置を飛行させるために必要とされる所要の揚力及び推進力を得られるような面積、及び、羽ばたき作動時にフェザリングを生じさせるための柔軟性を備えた平面状のものとしてあれば、横骨部材17の本数を増やしたり、縦骨部材18の本数を増減させてもよい。更には、一枚板状のものとする等、横骨部材17と縦骨部材18とフィルム19とからなる構成以外のものとしてもよい。又、形状は低アスペクト比の矩形状とすることが好ましいが、低アスペクト比でなくてもよく、その形状を多少変更してもよい。翼本体15と連結ロッド16は共に柔軟性を備えていることが望ましいが、いずれか一方の柔軟性のみで翼本体15にフェザリングを生じさせることができれば、他方は柔軟性を備えていなくてもよい。翼本体15の前縁部を、連結ロッド16を介在させることなく駆動ロッド14に直接取り付けるようにしてもよい。
【0093】
図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態においては、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度を変更させる場合、軸受9a,9bに回転支持軸8を介して回動自在に支持させてある翼駆動用モータ3を、又、図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態においては、軸受9a,9bに回転支持軸8を介して回動自在に支持させてある線形アクチュエータ30を、それぞれ角度制御用モータ11によりピニオン13、角度変更用ギア10を介して上下方向に回転させるものとして示したが、本発明の小型飛行装置を飛行させるときに各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに所望される迎角を取らせることができるように所要の角度範囲で回転でき、且つ軽量であれば、上記翼駆動用モータ3や線形アクチュエータ30を上下方向に回転させる機構は、ラック、ピニオン機構や、所要のアクチュエータによる直接あるいはリンクを介した押し引き機構、その他のいかなる機構を採用してもよい。
【0094】
図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態、及び、図10(イ)(ロ)の実施の形態において、出力軸4の所要の角度範囲における正、逆転駆動を許容でき、且つ該回転される出力軸4に対して復元トルクを与えることができるような所要の弾性係数を備えていれば、ばね用アーム5の先端部とばね用支柱6の先端部との間に、たとえば、ゴム等のばね7以外の弾性部材を介在させて設ける等、いかなる弾性部材を採用するようにしてもよい。図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態、図9(イ)(ロ)の実施の形態、及び、図11(イ)(ロ)の実施の形態において、出力軸36の振動時に該出力軸36に対して復元力を作用させるためのばね37は、周方向に4本設けるものとして示したが、数は適宜増減させてよい。更には、出力軸36の所要振幅の振動を許容でき、且つ該振動される出力軸36に対して復元力を与えることができるような所要の弾性係数を備えていれば、ゴム等のばね37以外の弾性部材を介在させて設ける等、いかなる弾性部材を採用するようにしてもよい。
【0095】
図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態、及び、図9(イ)(ロ)の実施の形態における、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるための共振型の線形アクチュエータとしては、磁気回路33のギャップ33a内における磁界とコイル34との電磁的な相互作用を利用して出力を得るようにしたボイスコイル形とすると共に、支持容器31の蓋部31aの前面に設けたばね用支柱38と出力軸36との間にばね37を介在させてなる構成の線形アクチュエータ30を例示したが、出力軸を軸心方向に振動させることができると共に、該振動する出力軸に対して固定側との間に介在させた所要の弾性係数を備えた弾性部材に寄り復元力を付与できるようにしてあれば、線形アクチュエータにおける出力軸を軸心方向へ振動させるための駆動形式は、上記線形アクチュエータ30の如くボイスコイル形とすることに代えて、線形超音波モータや電磁式の線形モータの駆動形式を採用するようにしてもよい。
【0096】
図9(イ)(ロ)の実施の形態においては、線形アクチュエータ30のブラケット39に回動可能に取り付けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド14の基端側を、線形アクチュエータ30の出力軸36に、該出力軸36の軸心方向への振動により揺動できるように連結できれば、駆動ロッド14の長孔41と、出力軸36側に取り付けた動力伝達用ピン43とを係合させる構成以外のいかなる連結手段を採用してもよい。
【0097】
位置センサ21は、本発明の小型飛行装置の位置を検出することができれば、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ以外にも、加速度センサ等、任意のものを採用してもよい。姿勢センサ22は、たとえば、GPS受信機及びアンテナを3台ずつ用いる等、ジャイロ以外のものを採用するようにしてもよい。衝突防止センサ23は、飛行方向の前方に位置する障害物を検出できれば、光フローセンサ以外にも、超音波や赤外線のエコーにより障害物を検出するセンサ等、任意の形式のものを採用してもよい。
【0098】
本発明の小型飛行装置の飛行に支障を来たさないサイズ、重量としてあれば、ペイロード20は、本発明の小型飛行装置の所望の使用目的に応じて、任意のものとしてよい。したがって、本発明の小型飛行装置は、上記積載するペイロード20に応じた任意の使用目的に適用できる。
【0099】
更に、上記実施の形態ではコントローラ24,24aは、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を有するものとして説明したが、これらは基本的な機能であり、本発明の小型飛行装置に、別の小型飛行装置との通信装置を設けて、コントローラ24,24aに、別の小型飛行装置と相互に連係した働きをさせるための機能を追加したり、飛行に関わる別の外部情報を収集するための別のセンサを追加して、該センサの信号に基づいて上記姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能等にそれぞれ修正を加えることができるようにしたり、更に、上記ペイロード20に搭載する機器の制御機能を追加する等、任意の機能を併せ持つようにしてもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は垂直方向上向きの揚力を発生させている状態、(ロ)は前進飛行する状態をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図2】図1の装置の概略切断平面図である。
【図3】図2に用いられている翼駆動用モータを示すもので、(イ)は拡大平面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図4】図1の装置の制御機構を示す概要図である。
【図5】本発明の実施の他の形態を示すもので、(イ)は各羽ばたき翼を垂直方向上向き姿勢として垂直方向上向きの揚力を発生させている状態を、(ロ)は前進飛行する状態をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図6】図5の装置の概略切断平面図である。
【図7】図6に用いられている線形アクチュエータとその支持構造を示すもので、(イ)は図6のB−B方向からの一部切断拡大図、(ロ)は(イ)のC−C方向矢視図である。
【図8】図5の装置の制御機構を示す概要図である。
【図9】(イ)(ロ)はいずれも図5の装置に用いる共振型の線形アクチュエータの他の形態を示すもので、図7(イ)(ロ)の応用例を示す図である。
【図10】(イ)(ロ)(ハ)はいずれも図1の装置に用いる翼駆動用モータの他の形態をそれぞれ示すもので、図3(イ)(ロ)の変形例を示す概要図である。
【図11】図5の装置に用いる共振型の線形アクチュエータの更に他の形態を示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のD−D方向矢視断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 胴体
2a,2b,2c,2d 羽ばたき翼
3 翼駆動用モータ(アクチュエータ)
4 出力軸
7 ばね(弾性部材)
14 駆動ロッド
15 翼本体
22 姿勢センサ
24,24a コントローラ
30 線形アクチュエータ(アクチュエータ)
36 出力軸
37 ばね(弾性部材)
39 ブラケット
44 渦巻ばね(弾性部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要の目標位置まで飛行させて該目標位置の情報収集や、上記目標位置への小型機器の搬送等を行わせるために用いる小型飛行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内外の高所位置や災害現場等の人が容易に近づくことが困難な場所、あるいは、化学物質、微生物、放射性物質等での汚染が想定されるような場所の現場状況を調べる場合等に、大きさが数十センチメートル以下というような非常に小型の飛行装置(Micro Air Vehicle:MAV)に、カメラ、マイク、雰囲気ガス中の化学物質、微生物、放射性物質等の有無を検出するための所要の分析装置等の機器を搭載して、該小型飛行装置を目標となる位置まで飛行させ、該小型飛行装置に搭載された機器により検出される現場の計測結果を基に、遠隔地より上記目標位置の情報収集を実施できるようにすることが考えられてきている。
【0003】
ところで、飛行体とその周囲の流体との相互作用を、流体の慣性力と粘性力の比であるレイノルズ数との相関で整理すると、飛行体のサイズとレイノルズ数の大小はほぼ対応しており、従来一般に実用化されているメートルサイズの飛行体では、たとえば、通常の航空機のレイノルズ数が107〜108のオーダーを示すように、レイノルズ数が高くて(Re>105)慣性力が支配的となっているのに対し、上記のようなサイズが小さい小型飛行装置では、レイノルズ数が104〜105程度と低い値となり、周囲の気体(流体)との相互作用では、慣性力と共に粘性力の影響が大となる。又、上記小型飛行装置は、サイズが小さくて機体重量が軽いことから、気流等の影響を容易に受け易く、常に突風の中を飛行するような状態となる。更に、屋内での飛行や、屋外での気流中を飛行させるためには、垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の非常に高度な飛行性能が要求されることから、航空機やヘリコプター等の従来の飛行体とは非常に異なる設計が必要とされている。
【0004】
そのため、上記小型飛行装置にて垂直離着陸、急旋回、空中停止飛行等を行わせることができるようにするため飛行手段の1つとして、羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置が考えられてきている。
【0005】
この種の羽ばたき飛行する形式の小型の飛行装置としては、従来、たとえば、胴体部の左右位置に、それぞれ前後一組の振動型アクチュエータを、該前後方向に配される各振動型アクチュエータの振動軸(回転軸)が、後方側が低くなるよう胴体軸に対して所要角度傾斜する一直線上に並ぶように配設し、羽前縁をなす羽軸(前羽軸)と羽後縁をなす羽軸(後羽軸)との間に膜を張設して形成してなる羽の上記前羽軸と後羽軸を、上記前側と後側の各振動型アクチュエータにそれぞれ接続した構成としてなるものが提案されている。
【0006】
かかる形式の小型飛行装置において、上記前後の各振動型アクチュエータは、前側の振動型アクチュエータが、後側の振動型アクチュエータよりも所要位相差で先行するようにそれぞれ上下方向に羽ばたき(往復)作動させるようにしてある。これにより、羽の打ち下ろし作動時には、該羽がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにして、打ち下ろし時に羽の膜が移動する空間の体積が最大になるようにしてあり、一方、羽の打ち上げ作動時には、該羽の膜ができるだけ水平面に対して直角に近い角度となるようにして、打ち上げ時に羽根の膜が移動する空間の体積を最小にするようにしてあることから、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力が、羽の打ち上げ動作において羽に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにして機体の浮上力(揚力)を得ることができるようにしてある。更に、上記前後の振動型アクチュエータの位相差を調整して、各羽の打ち上げ及び打ち下げ時の姿勢(角度)を変化させることにより、前後方向への推進力を得ることができるようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0007】
更に、上記のような小型飛行装置の中で、特に、固定側となる上下の支持構造体の間に、左右の羽の羽軸を配置して、該羽軸の基端部を上記支持構造体にヒンジにて上下方向へ回動自在に取り付け、且つ左右の羽を羽ばたかせるための振動型アクチュエータを、上記羽軸の基端寄り位置に取り付けた磁石と、該磁石に対応するように上記支持構造体にそれぞれ取り付けた電磁石と、上記磁石を取り付けた羽軸と、上記電磁石を取り付けた支持構造体との間に介在させたばねの如き弾性体とからなる構成として、該振動型アクチュエータの上下の電磁石より磁気的な引力あるいは斥力を上記羽軸の磁石へ作用させて該羽軸を交互に上下動させることにより、上記羽を羽ばたき作動させることができるようにしたものや、更に、このように羽を羽ばたき作動させる際、上記弾性体の固有振動に同調させた角周波数で羽ばたき作動させることにより、羽軸にかかる力を、羽ばたき飛行に必要な空気力のみに抑えることができるようにしたものも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
又、従来、上記と同様に、羽の打ち下ろし時に羽の膜が移動する空間の体積を、羽の打ち上げ時に羽の膜が移動する空間の体積よりも大きくなるようにして、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力が、羽の打ち上げ動作において羽に作用する鉛直下向きの流体力よりも大となるようにすることにより、機体の浮上力を得るようにする考えに基づいた別の形式の小型飛行装置として、胴体部の左右位置に、3自由度を持つアクチュエータをそれぞれ設け、該各アクチュエータに、左右一対の羽にそれぞれ長手方向に沿って設けてある主軸の基端部を取り付けて、上記左右の各アクチュエータにて、羽を上下方向に往復作動させることに加えて、羽の主軸を中心とする回転動作と、主軸と羽を一体にした前後方向へ可動を可能とするようにした構成としてなるものも提案されている。
【0009】
かかる形式の小型飛行装置において、羽の打ち下ろし作動時は、該羽がなるべく水平面と平行な姿勢となるようにし、一方、羽の打ち上げ時は、羽を上下方向の姿勢となるように一旦回転させた後、該羽の有する湾曲形状に沿う軌道で引き上げられるように、羽を回転させると同時に前後方向に動かしながら打ち上げ作動させるようにしてある。これにより、羽の打ち上げ動作において該羽に作用する鉛直下向きの流体力をより小さくできるようにして、羽の打ち下ろし動作において該羽に作用する鉛直上向きの流体力との差をより大きくすることで、機体の浮上力をより効率よく得ることができるようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献2、特許文献4、特許文献5参照)。
【0010】
更に、従来の羽ばたき飛行する他の形式の小型飛行装置としては、胴体部の左右位置に、羽の長手方向に沿って設けてある軸の前後水平方向の往復作動と、該羽の軸の回転作動を行なうことができるようにしてある駆動装置をそれぞれ設けて、該左右の各駆動装置に、左右一対の対応する羽の軸をそれぞれ取り付けてなる構成としたものも従来提案されている。すなわち、上記駆動装置により左右の羽を前後方向に羽ばたき作動させると同時に、羽を前方及び後方へ打つときには、該羽の上縁側が下縁側に対して先行するように羽の軸を回転させるようにして、各羽により下向きの気流を発生させるようにし、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしたもの、更に、この際、左右の羽の前後方向の振幅の中心位置を、それぞれ独立して進行方向前方又は進行方向後方にずらすことで、各羽の羽ばたき作動時に該羽の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させて、前進、後進、あるいは、左右方向の旋回を行わせるようにすることができるようにしたものも提案されている(たとえば、特許文献5参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−135866号公報
【特許文献2】特開2002−326599号公報
【特許文献3】特開2003−339896号公報
【特許文献4】特開2003−118697号公報
【特許文献5】特開2004−90909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記従来提案されている3つの形式の羽ばたき飛行する小型飛行装置のうち、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた前後一組の振動型アクチュエータにより左右一対の羽を上下方向に羽ばたき作動させる形式、及び、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた3自由度を持つアクチュエータにより左右一対の羽を上下方向に羽ばたき作動させる形式のものでは、垂直離着陸時や空中停止飛行時の如き、羽の湾曲形状による揚力の発生が期待できないときには、機体の浮上力(揚力)を、羽を水平面とほぼ平行な姿勢で打ち下ろすときに該羽の面に作用する鉛直上向きの流体力と、羽を所要の姿勢で打ち上げるときに該羽根に作用する鉛直下向きの流体力との差のみで得る必要がある。しかし、この場合、左右の各翼の一回の羽ばたき作動で得られる揚力は、最大でも羽の面によって下方に、すなわち、該羽の面とほぼ直角方向に押される空気からの反力でしかなく、したがって、得られる浮上力が非常に小さいと考えられる。このために、機体重量を、1グラム未満とする等、極めて軽量としなければならず、駆動装置や電源も非常に軽量としなければならないことから飛行能力にも制限が生じることが懸念される。更に、上記したように機体重量が極めて軽いことから、環境に存在する気流によって飛行状態に大きな影響を受ける虞もある。
【0013】
又、上記従来の羽ばたき飛行する小型飛行装置のうち、胴体部の左右位置にそれぞれ設けた羽の前後水平方向の往復作動と該羽の回転作動を行なう駆動装置により、左右一対の羽を前後方向に羽ばたき作動させる形式のものでは、該各羽の羽ばたき作動により下向きの気流を発生させて、この下向きの気流の反作用によって浮上力(揚力)を得るようにしてあり、又、前後方向の推進力は、上記左右の羽の前後方向の振幅の中心位置を、進行方向前方又は進行方向後方にずらして、各羽の羽ばたき作動時に該羽の基端側から先端方向に向かうよう発生している流れの前後方向のバランスを変化させることで得るようにしてある。そのため、浮上力は効率よく得ることができるが、前後方向の推進力は比較的弱く、飛行速度に制限を受けることから、行動範囲が制限される虞が懸念される。
【0014】
更に、上記従来の3つの形式の羽ばたき飛行する小型飛行装置は、いずれも左右一対の羽しか備えていない。そのために、機体が飛行中に左右方向に傾くような姿勢変化を生じた場合には、左右の羽でそれぞれ発生させている揚力を増減させることで左右の揚力のバランスを調整して、速やかに姿勢を制御できるとしても、機体が前後方向に傾くような姿勢変化を生じた場合には、速やかに対応し難いと共に、その調整作用が弱い虞も懸念される。
【0015】
そこで、本発明者は、小型飛行装置に高度な飛行性能を付与するための工夫、研究を重ねた結果、胴体の水平姿勢を保持したままの垂直離着陸、急速旋回、空中停止飛行(ホバリング)等の高度な飛行性能を備えたトンボに着目した。トンボは、水平飛行時には、翼断面の平均迎角(水平面となす角)をほぼゼロとなるようにして、翼断面が上下往復運動と回転運動が重畳された運動をするように各翼を羽ばたかせており、一方、空中停止飛行時には、翼断面の平均迎角をほぼ90度として、すなわち、翼前縁を上にして、翼断面が前後往復運動と回転運動が重畳された運動をするように各翼を羽ばたかせており、このことから、水平飛行時と空中停止飛行時での違いは、翼断面の該翼断面に対する相対的な往復運動方向は変化せず、翼断面の平均迎角だけが相違している。
【0016】
ところで、トンボの各翼は、3方向の自由度を持つジョイントにより胴体に連結されており、この自由度を生かして、自在に翼断面を上下や前後に動かしたり、回転できるものである。
【0017】
このため、上記トンボの翼の胴体への取付部分の構造を模倣して、上下、前後、回転の3方向の自由度を持つ翼の駆動機構を採用することが考えられる。この場合、上記のような3方向の自由度を備えたユニバーサルジョイントは、ジンバルとモータ等を組み合わせることにより実現することは可能であると考えられるが、重量が過多になり、小型飛行装置に採用することは難しく、又、コスト的にも高価になると考えられる。
【0018】
なお、上記従来提案されている羽ばたき飛行する形式の小型飛行装置にも、3自由度を持つアクチュエータにより左右一対の羽を羽ばたき作動させる形式のものが提案されているが、該アクチュエータの有する自由度は、羽の打ち上げ作動時に該羽を羽の有する湾曲形状に沿った軌道で引き上げるためのもので、羽の平均迎角を変化させた状態で羽ばたき作動させるためのものではない。
【0019】
更に、各翼を羽ばたかせて飛行する形式の小型飛行装置により所要の使用目的を達成できるようにするためには、使用目的に対応させたペイロードを十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが要求されることがあり、そのために、各翼を高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたかせる必要が生じることがある。このように、各翼を高い周波数で羽ばたかせる場合には、各翼の羽ばたき作動時に発生する慣性力の変動をいかに処理するかが重要となる。
【0020】
トンボの羽ばたきをよく観察すると、羽ばたきの周波数は30Hz程度であまり変わらずに、羽ばたきの振幅を変化させることにより発生させる力を変化させていると考えられる。すなわち、大きな力を発生させるときには、羽ばたきの振幅を大きくし、一方、小さな力を発生させるときには、羽ばたきの振幅を小さくしているように見え、これは、トンボが、羽ばたくときには力学的共振を利用して各翼に作用する慣性力の変動をキャンセルしているためと考えられる。
【0021】
なお、特許文献1には、羽を、羽軸と固定側の支持構造体との間に介在させたばねの如き弾性体の固有振動に同調させた角周波数で羽ばたき作動させることにより、羽軸にかかる力を、羽ばたき飛行に必要な空気力のみに抑えることができるようにする考えは示されているが、上記弾性体は、羽軸と固定側の支持構造体との間に介在されているものであって、羽の平均迎角を変化させた状態で羽ばたき作動させることに対応できるものではない。
【0022】
これらのことを鑑みて、本発明者は、トンボの翼の駆動部の運動をそっくりそのまま模倣するバイオミメティックな考え方ではなく、上記トンボの翼駆動部の優れた点のみを抽出してその構造的な考え方を取り入れるバイオモルフィックな考えに基づいて本発明をなした。
【0023】
したがって、本発明の目的とするところは、羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときの慣性力をキャンセルできて、アクチュエータの負荷を軽減することができ、これにより、羽ばたき翼を高い周波数で羽ばたき作動させる場合に有利なものとすることができると共に、羽ばたき翼の羽ばたき作動により高度な飛行性能を達成できて、屋内での飛行や、屋外での気流中にて常に突風の中を飛行するような状態であっても飛行できる小型飛行装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、胴体の左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とし、より具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなる構成とする。
【0025】
更に具体的には、請求項3に係る発明に対応させて、アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにして共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに上記翼駆動用モータの出力軸と平行配置してある翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各翼駆動用モータの所定周波数での交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0026】
又、請求項5に係る発明に対応させて、アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに上記線形アクチュエータの出力軸と直角配置してある翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動にて羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときの振幅の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【0027】
更に、請求項7に係る発明に対応させて、アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成とし、又、この構成に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の小型飛行装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)胴体の左右位置の複数個所に、より具体的には、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設けた構成としてあるので、アクチュエータの可動部、該アクチュエータにて羽ばたき作動させられる羽ばたき翼、及び、該羽ばたき翼の羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気の慣性力と、アクチュエータより羽ばたき翼へ作用させる復元力とにより形成される振動系の共振周波数と等しい周波数となるように、上記アクチュエータにて羽ばたき翼を羽ばたき作動させることにより、羽ばたき翼を、いかなる角度姿勢で羽ばたき作動させる場合であっても上記慣性力をキャンセルすることができる。このために、上記アクチュエータの負荷を軽減させることができて、十分なペイロードを積んで長距離を長時間飛行させる場合に求められるように、羽ばたき翼を高い周波数で羽ばたき作動させる場合に有利なものとすることができる。
(2)各羽ばたき翼は、それぞれ独立して上下方向の角度姿勢、すなわち、迎角をそれぞれ調整できると共に、アクチュエータにより上記所定の周波数で羽ばたき作動させる際の振幅をそれぞれ制御することができることから、該各羽ばたき翼の羽ばたき作動により得られる揚力と、推進力の大きさをそれぞれ調整できる。したがって、上記各羽ばたき翼より胴体にそれぞれ作用させる揚力の大きさと、推進力の大きさ及び方向を個別に制御できることから、気流により姿勢が前後左右方向に乱されそうになっても、容易に修正して水平姿勢を保持することができる。又、垂直離着陸や空中停止飛行等の高度な飛行性能を達成できる。
(3)アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、且つ駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とすることにより、各翼駆動用モータにて出力軸に取り付けた羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに、弾性部材により復元力としての復元トルクを作用させることができる。これにより、翼駆動用モータの回転する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より翼駆動用モータの出力軸に与えるようにしてある復元トルクが作る振動系に、翼駆動用モータの出力軸の交互の正、逆転駆動により変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数が上記振動系の共振周波数に等しくなるよう上記翼駆動用モータの出力軸の交互の正、逆転駆動の周波数を調整することにより、上記慣性力をキャンセルできて、翼駆動用モータの負荷を軽減することが可能になる。又、上記翼駆動用モータの上下方向の角度と、上記所定周波数で出力軸を交互に正、逆転駆動する際の角度範囲を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の振幅の制御を行なうことができる。
(4)アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、且つ駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成とすることにより、各線形アクチュエータにて出力軸に取り付けた羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに、弾性部材により復元力を作用させることができる。これにより、線形アクチュエータの振動する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より線形アクチュエータの出力軸に与えるようにしてある復元力が作る振動系に、線形アクチュエータの出力軸の振動により変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数が上記振動系の共振周波数に等しくなるように上記線形アクチュエータの出力軸を振動させる周波数を調整することにより、上記慣性力をキャンセルできて、線形アクチュエータの負荷を軽減することが可能になる。又、上記線形アクチュエータの上下方向の角度と、上記所定周波数で出力軸を振動させる範囲を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の振幅の制御を行なうことができる。
(5)アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、上下方向に角度変更可能にそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設けて、該ブラケットに、駆動ロッドと翼本体とからなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成とすることにより、各線形アクチュエータにて出力軸に連結した羽ばたき翼を羽ばたき作動させるときに、弾性部材により復元力を作用させることができることから、上記(4)と同様に、上記線形アクチュエータの出力軸を振動させる周波数が、線形アクチュエータの振動する可動部、羽ばたき翼及び該羽ばたき翼の羽ばたき作動に伴われて一緒に運動する空気の慣性力と、上記弾性部材より線形アクチュエータの出力軸に与えるようにしてある復元力が作る振動系の共振周波数に等しくなるように調整することにより、上記慣性力をキャンセルできて、線形アクチュエータの負荷を軽減することが可能になる。更に、上記線形アクチュエータの上下方向の角度と、上記所定周波数で出力軸を振動させる範囲を制御することにより、羽ばたき翼の上下方向の迎角の変更と、羽ばたき作動の振幅の制御を行うことができる。しかも、線形アクチュエータの出力軸の振動の振幅を、増幅して羽ばたき翼へ伝達して羽ばたき作動させることができるため、線形アクチュエータの出力軸の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、線形アクチュエータの小型化を図るのに有利なものとすることができる。
(6)更に、上記(3)、(4)又は(5)の構成において、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に羽ばたき翼の上下方向の迎角の制御と、羽ばたき作動の制御を行うコントローラを備えた構成とすることにより、上記(3)、(4)又は(5)に示した効果に加えて、本発明の小型飛行装置の姿勢が崩れて所要方向に傾斜した場合には、傾斜した側と、その反対側に作用する揚力のバランスを変えるよう、各羽ばたき翼の迎角及び羽ばたき作動を変化させて姿勢を修正して、飛行姿勢を安定に保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1(イ)(ロ)乃至図4は本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、前後方向の長さ寸法を、たとえば、十数センチメートル程度としてある胴体1の左右両側部の複数個所、たとえば、前部左右位置と後部左右位置の4個所に、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、翼駆動用モータ3と一緒に上下方向へ回動させて前後方向姿勢と上下方向姿勢との間で角度姿勢を独立して変更可能となるようそれぞれ設けて、出力軸4に対して所要の弾性係数を有する弾性部材により復元トルク(復元力)を与えながら該出力軸4を正、逆転駆動できるようにしてある共振型アクチュエータとしての上記翼駆動用モータ3の上記出力軸4に連結し、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の角度を制御すると共に、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上記翼駆動用モータ3により、弾性部材の弾性力に基づいて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動時に生じる慣性力をキャンセルできるような所定の周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させることにより飛行できるようにする。
【0031】
以下、詳述する。
【0032】
上記共振型アクチュエータとしての翼駆動用モータ3は、図3(イ)(ロ)に示す如く、出力軸4の中間部に、該出力軸4と直角方向で且つ相対する方向に所要長さ突出するようにばね用アーム5を取り付け、一方、翼駆動用モータ3のケースの前面の外周部における180度対向する2個所に、出力軸4と平行に延びるようにばね用の支柱6をそれぞれ設ける。該各支柱6と上記アーム5の先端部同士との間には、所要の弾性係数を有する弾性部材として、たとえば、所要のばね定数を有するばね7を介在させて、出力軸4が回転するとき、ばね7の弾性力が作用するようにした構成とする。すなわち、上記出力軸4を正、逆転駆動させるときに、該出力軸4と一緒に回転する上記各ばね用アーム5の先端部位置が、位置固定されている上記各ばね用支柱6に対して近接、離反するよう相対変位させられることに伴い、上記各ばね用アーム5の先端部とばね用支柱6との間の各ばね7が初期状態より伸縮変形させられるようにし、この伸縮変形するときの各ばね7の有する弾性力(初期形状への復元力)により、上記各ばね用アーム5の先端部位置と各ばね用支柱6との相対位置を初期状態へ戻すように力が各ばね用アーム5に与えられるようにし、これにより、翼駆動用モータ3の出力軸4に対して初期状態へ復元させるような所要の復元トルク(復元力)を与えることができるようにした構成としてある。なお、上記翼駆動用モータ3は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0033】
したがって、上記各翼駆動用モータ3の出力軸4の正、逆転駆動により上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるときには、各翼駆動用モータ3の回転する出力軸4及びロータ等の可動部と、羽ばたき作動する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dと、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気による慣性力が生じることから、この慣性力と、上記ばね7により各翼駆動用モータ3の出力軸4に対して与えられる復元力によって形成される振動系(以下、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系と云う)に対して、各翼駆動用モータ3より変動外力が加えられることになる。よって、このように各翼駆動用モータ3より上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系に対して変動外力を加える際の該変動外力の周波数、具体的には、各翼駆動用モータ3の出力軸4の交互の正、逆転駆動の周波数が、上記振動系の共振周波数に等しくなるようにすることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる上記の如き慣性力をキャンセルすることができて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させることができるようにしてある。
【0034】
上記構成としてある翼駆動用モータ3は、図3(イ)(ロ)に示す如く、外側面に出力軸4と直角方向で且つ相対する方向となるよう回転支持軸8を取り付けて、該各回転支持軸8を、胴体1の前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ設けてある左右一対の軸受9a,9bに回転自在に支持させるようにして、図2に示す如く支持させる。更に、一方(片側)の回転支持軸8、たとえば、各翼駆動用モータ3の胴体1の中心側に位置する各々の回転支持軸8に、角度変更用ギア10をそれぞれ取り付け、且つ該各ギア10に噛合させた各ピニオン13を、胴体1に設置してある各々独立させた角度制御用モータ11の出力軸12に取り付け、各角度制御用モータ11でピニオン13を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア10、回転支持軸8を介して翼駆動用モータ3を、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。これにより、上記各角度制御用モータ11の回転数を適宜制御することで、それぞれ対応する翼駆動用モータ3と一緒に該翼駆動用モータ3に取り付けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の迎角(向き)をそれぞれ独立に変更できるようにしてある。なお、上記角度制御用モータ11は、電磁モータ又は超音波モータのいずれの形式であってもよい。
【0035】
上記羽ばたき翼2a,2b,2c,2dは以下のような構成としてある。すなわち、各翼駆動用モータ3の出力軸4に、左右方向に延びて胴体1の外方へ所要寸法突出するようにしてある駆動ロッド14の一端部(胴体1側端部)をそれぞれ連結して固定し、出力軸4の回転で駆動ロッド14が各ばね7による復元力の作用を受けながら振られるようにする。なお、上記駆動ロッド14は、多少の柔軟性(撓性)を備えた素材製のものとしてもよい。上記各駆動ロッド14の胴体1の外方へ突出した他端側には、対応する翼駆動用モータ3の出力軸4と平行な面内に配置してある矩形状の翼本体15の前縁部を、該翼本体15の幅方向に所要間隔で配した複数本(図では3本)の連結ロッド16を介して一体に取り付ける。これにより、上記各翼駆動用モータ3の出力軸4を、それぞれ所要の角度範囲、たとえば、30度程度の角度範囲で交互に正、逆転駆動させることにより、該出力軸4に連結してある駆動ロッド14の往復動作を介して、該駆動ロッド14と連結ロッド16と翼本体15とからなる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、上記各出力軸4の回転角度範囲にそれぞれ対応した所要の角度範囲で個別に羽ばたき作動させることができるようにしてある。すなわち、各翼駆動用モータ3にて出力軸4を正、逆転駆動させるときの角度範囲を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動する振幅を独立して制御できるようにしてある。
【0036】
更に、上記各連結ロッド16は、柔軟性(撓性)を備えた素材製として、上記羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の際に翼本体15に空気抵抗が作用すると、その荷重を受けて上記各連結ロッド16が所要量撓むようにしてある。これにより、上記翼駆動用モータ3にて羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき運動させるときには、上記各連結ロッド16が撓むことによって、駆動ロッド14の往復移動に対し、上記各連結ロッド16を介して接続してある翼本体15の往復移動が所要位相遅れると共に、該各翼本体15の前縁(駆動ロッド14側の縁)の往復移動に対し、後縁(反駆動ロッド14側の縁)が所要位相遅れて追従するようになることから、翼本体15に、所謂フェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0037】
上記各翼本体15は、低アスペクト比となる矩形状としてあり、たとえば、該翼本体15の前縁部に沿って配置した左右方向に延びる横骨部材17と、該横骨部材17の長手方向の複数個所(図では5個所)に一端部を取り付けると共に、他端部が翼本体15の後縁に達するよう配置した複数本の縦骨部材18とからなる骨組み構造に、薄いプラスチックフィルムのようなフィルム19を張ってなる構成としてある。更に、上記各縦骨部材18は、柔軟性(撓性)を備えてなる素材製として、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の際、上記翼本体15のフィルム19の受ける空気抵抗の荷重により上記各縦骨部材18がそれぞれ所要量撓むようにし、このことによっても、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動時にそれぞれの翼本体15にフェザリングをパッシブに行わせることができるようにしてある。
【0038】
上記において翼本体15の形状を低アスペクト比となる形状としたのは、本発明の小型飛行装置はサイズが小さく、このため流体との相互作用は104〜105程度と低いレイノルズ数で支配されるようになるため、通常のレイノルズ数が105よりも大となるようなメーターサイズの飛行体とは異なり、翼弦長が翼幅に比して小さい高アスペクト比の翼形状よりも低アスペクト比の翼形状の方がより有利となるためである。
【0039】
したがって、上記各翼駆動用モータ3の出力軸4を交互に正、逆転駆動させて駆動ロッド14を振ることにより羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させると、それぞれ対応する翼本体15の後縁側の外方領域にはスリップストリーム(後流)が発生し、このため、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dには、上記後流の反力がそれぞれ作用するようになる。よって、本発明の小型飛行装置全体では、上記4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにそれぞれ作用する後流の反力における垂直方向上向きの成分(垂直分力)の合力を揚力として作用させ、又、上記4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにそれぞれ作用する後流の反力の水平方向成分(水平分力)を水平方向の推進力として作用させることができるようにしてある。
【0040】
更に、各翼駆動用モータ3の出力軸4の交互の正、逆転駆動の周波数が、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しくなる所定の周波数となるようにして各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる状態にて、上記各翼駆動用モータ3ごとに出力軸4を交互に正、逆転駆動するときの角度範囲を増減させて、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの振幅を独立して調整することにより、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる後流の大きさを個別に制御できるようにしてあると共に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を独立して調整することにより、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる後流の方向を個別に制御できるようにようにしてある。このため、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに発生させる揚力と推進力のバランスを変更することができるようになることから、本発明の小型飛行装置にて高度の飛行性能が実現できるようになる。
【0041】
すなわち、たとえば、角度制御用モータ11により翼駆動用モータ3を回動させて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を、図1(イ)に示す如く、それぞれ90度、すなわち、翼前縁が垂直方向上向きとなる姿勢とさせた状態にて、翼駆動用モータ3の出力軸4を羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数で交互に正、逆転駆動させると、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルして、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させた状態にて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることができる。この際、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼本体15の後流は、垂直方向下向きに発生されるようになる。このため、該後流の反力は垂直方向上向きの成分のみとなって、水平分力は生じない。よって、気流のない領域にて、上記各翼駆動用モータ3によるそれぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を調整して、4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにてそれぞれ発生させる後流の反力の合力である本発明の小型飛行装置の揚力が、本発明の小型飛行装置の機体重量(全体重量)を上回るようにすれば、該小型飛行装置は、水平方向に移動されることなく垂直上昇するようになる。一方、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記周波数にて羽ばたき作動させるときの振幅を小さくして上記本発明の小型飛行装置の揚力が機体重量を下回るようにすると、該小型飛行装置は垂直に降下させられるようになる。更に、上記本発明の小型飛行装置の揚力が機体重量と釣り合うようにすれば、本発明の小型飛行装置は空中停止飛行(ホバリング)を行うことができるようになる。なお、上記のように垂直上昇、垂直降下、ホバリングの際は、胴体前部の羽ばたき翼2a,2bと胴体後部の羽ばたき翼2c,2dとを逆位相で羽ばたき作動させるようにすると、好ましくない不平衡力の発生を防止することが可能になる。
【0042】
又、たとえば、上記角度制御用モータ11により翼駆動用モータ3を上下方向に回転させて羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度を変更すると、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動により発生する後流の方向が垂直方向下向きより傾くことから、該後流の反力には水平方向成分が生じることとなる。したがって、図1(ロ)に示す如く、4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、いずれも所要迎角で前方やや上向きとなるような姿勢とさせた状態にて、各翼駆動用モータ3の出力軸4を羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数で交互に正、逆転駆動させると、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルして、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させた状態にて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることができ、この際、該4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにより発生される後流の反力が前方やや上向きに作用するようになるため、上記発生される後流の反力の垂直分力の合力である揚力が本発明の小型飛行装置の機体重量と釣り合うように、上記所定の周波数で羽ばたき作動させる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの振幅を適宜調整することにより、水平分力の合力である推進力が前向きに作用するようになる。このことから、静かな気流中では、本発明の小型飛行装置は、一定高度を保持したまま、発生させる推進力の大きさに応じて前方へ飛行できるようになる。なお、上記のように本発明の小型飛行装置を前方へ飛行させる際には、胴体前部の羽ばたき翼2a,2bと、胴体後部の羽ばたき翼2c,2dはほぼ同様に羽ばたき作動させればよいが、胴体後部の羽ばたき翼2c,2dは、それぞれ前方に位置する羽ばたき翼2a,2bの後流の中で運動することとなるので、左右の同じ側に設けられている前後の羽ばたき翼2aと2c、2bと2dでは干渉が生じる。したがって、この干渉の効果を加味できるよう、前後の羽ばたき翼2a,2bと2c,2dの羽ばたき作動時の位相差を適宜調整させるようにするとよい。
【0043】
更に、上記のように本発明の小型飛行装置を一定高度を保持した状態で前方へ飛行させる際、上記所定の周波数で羽ばたき作動させている各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dのうち、胴体左側の前後の羽ばたき翼2a,2cの羽ばたき作動の振幅と、胴体右側の前後の羽ばたき翼2b,2dの羽ばたき作動の振幅とを相違させるようにすると、羽ばたき翼2a,2cより胴体左側に作用する推進力と、羽ばたき翼2b,2dにより胴体右側に作用する推進力の大きさが相違するようになる。このため、静かな気流中においては、上記本発明の小型飛行装置を、作用する推進力がより小さい左右方向の一側へ旋回させることができるようになる。一方、飛行している小型飛行装置を左右方向のいずれか一側へ旋回させようとする乱れた気流中においては、小型飛行装置が旋回させられようとする側となる胴体1の左右いずれか一側に作用する推進力が、他側に作用する推進力も大きくなるように、左右の羽ばたき翼2a,2cと2b,2dとの羽ばたき作動の振幅を相違させるようにすれば、本発明の小型飛行装置が所定の飛行コースから外れるのを防止する効果を得ることができるようになる。
【0044】
上記のような各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上記所定の周波数での羽ばたき作動による本発明の小型飛行装置の前方への飛行中や左右への旋回中に、各翼駆動用モータ3による上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき振幅を増減させたり、角度制御用モータ11の駆動により翼駆動用モータ3と一緒に各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を適宜変更して、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dによって発生させる後流の反力中の垂直分力の合力である揚力が、機体重量よりも大となるようにしたり、あるいは、機体重量を下回るようにすれば、本発明の小型飛行装置を前方への飛行中や旋回中に徐々に上昇させたり、あるいは、徐々に降下させることもできるようになる。
【0045】
なお、上記のように上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、各翼駆動用モータ3の出力軸4の羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数での交互の正、逆転駆動により羽ばたき作動させて、本発明の小型飛行装置へ水平方向の推進力を与える際、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各翼駆動用モータ3の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dで発生させる後流の向きを、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに設定されている迎角よりも下方へ偏らせるようにして、該下方へ偏った後流の反力により機体重量を支えるための揚力を得るようにしてもよい。このようにすれば、本発明の小型飛行装置を水平方向前方に飛行させる際、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角をゼロ、すなわち、水平方向前方に向けた姿勢とすることが可能になる。
【0046】
更に、図1(イ)に示したように、本発明の小型飛行装置にホバリング、垂直上昇あるいは垂直降下を行わせているときに、左右のいずれか一側の羽ばたき翼2a,2c又は2b,2dの姿勢を、やや前方に傾斜させ、且つ他側の羽ばたき翼2b,2d又は2a,2cの姿勢を、やや後方に傾斜させるようにすれば、胴体1の左側と右側に、互いに前後方向に逆向きの推進力を作用させることができるようになるため、本発明の小型飛行装置をその場で左右方向に回頭させることも可能になる。更に、左右両側の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、すべてやや後方に傾斜した姿勢とすれば、後進飛行させることも可能になる。
【0047】
ところで、本発明の小型飛行装置は、胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に設けてある4つの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び羽ばたき作動をそれぞれ独立して制御することにより、上述したような垂直上昇、垂直降下、ホバリング、垂直上昇や垂直降下やホバリングしながらのその場回頭、前進飛行、左右への旋回、前進あるいは旋回しながらの上昇や下降、後進飛行等の高度な飛行性能を達成できるものであるが、前述したように、サイズが小型としてあるために、実際の環境下を飛行する場合には、環境に存在する気流の影響を受けて常に乱流の中を飛行するような状態になる。このため、容易に姿勢が乱される虞があると共に、乱流の中を飛行することに伴い、所望する飛行コースから容易に逸脱する虞も懸念される。このような姿勢の乱れの修正や所望する飛行コースからの逸脱の修正を、作業者が無線制御等によってその都度行うことは困難であるため、本発明の小型飛行装置では以下のような制御機構を備えて、飛行の自律制御を行わせることができるようにしてある。
【0048】
すなわち、図4に示す如く、胴体1の所要位置に、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ21、ジャイロ等の姿勢センサ22、障害物の検出を行うための衝突防止センサ23を設け、該各センサ21,22,23からの信号を基に、胴体1の前部左右位置及び後部左右位置の上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに対応するよう設けられている翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11の組に対し、それぞれ独立した制御指令を与えるコントローラ24を備える。
【0049】
更に、胴体1の所要位置には、外部の図示しない制御装置より無線で発せられる本発明の小型飛行装置の使用目的に応じた飛行指令を受信して、上記コントローラ24に入力するための無線受信器25及び指令設定器26を設けるようにしてある。更に、上記コントローラ24より出力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等を、上記外部の制御装置へ無線で送信するための状態監視器27並びに無線送信器28を設けるようにしてある。
【0050】
上記コントローラ24について詳述すると、その機能の一つとしては、先ず、姿勢制御機能がある。これは、上述したように本発明の小型飛行装置は、飛行中に乱流によって容易に姿勢が乱される虞があることから、上記コントローラ24は、搭載してある姿勢センサ22より入力される信号に基づいて、前後左右方向の傾斜を常時監視し、傾きが検出されると、該検出された傾きが解消されて水平姿勢に戻るように、前部左右位置及び後部左右位置の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度、及び、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数で羽ばたき作動させている各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの振幅を適宜変更すべく、翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へ指令を与えるようにしてある。
【0051】
具体的に説明すると、たとえば、姿勢センサ22の信号により左側が下がるように傾斜していることが検出されたときには、そのときの飛行状態における各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動状態に比して、胴体左側の前後の羽ばたき翼2a,2cによる揚力をやや増加させると共に、この揚力の増加に伴って所望の飛行コースより外れて上昇しないようにするために、胴体右側の前後の羽ばたき翼2b,2dによる揚力をやや減少させ、更に、この際、所望の飛行コースから左右方向に逸れないようにするために、左側及び右側の各羽ばたき翼2a,2c及び2b,2dによる胴体1の左右に作用する推進力は変化させないよう、それぞれの羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角及び上記所定の周波数での羽ばたき作動の振幅を、それぞれ対応する翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11により調整させるようにする。これにより、胴体1の左側と右側に作用する揚力のバランスを調整して傾斜を修正して水平姿勢を保持することができるようにしてある。
【0052】
同様に、右側が下がるような傾斜が検出された場合や、前後方向の傾斜が検出された場合にも、それぞれ胴体1の下がった側と上がった側に存在する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力のバランスを変化させることにより、傾斜を修正して水平姿勢を保持することができるようにしてある。
【0053】
上記コントローラ24の別の機能としては、飛行制御機能がある。これは、本発明の小型飛行装置を所定の目標位置まで飛行させ、その後、所望の作業の終了後に初期位置又は所定の場所まで戻らせるためのものである。したがって、GPSや、GPS電波の届かないところでは磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ等の位置センサ21より入力される信号に基づいて本発明の小型飛行装置自体の位置(たとえば、三次元座標)を検出することができるようにしてある。又、外部の制御装置より無線受信器25、指令設定器26を介して飛行指令、たとえば、目標位置がGPS座標等により設定されると、上記検出された自己の初期位置(離陸位置)から目標位置に至るための方向、距離等を求めて、飛行コースを、たとえば、先ず、垂直に離陸して所要高さ位置まで垂直上昇した後、目標位置に向けて所要方位へ前進飛行するというような飛行コースを自動的に判断して設定できるようにしてあり、該設定された飛行コースに沿って飛行するために要求される揚力及び推進力の変化に応じて、すなわち、上記飛行コースに設定された高度に合せて上昇又は下降するために揚力を調整したり、左右方向へ旋回させるために左右の推進力のバランスを調整したり、更には、飛行速度を設定するために全体に作用する推進力を調整できるよう、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定の周波数での羽ばたき作動の振幅を適宜独立に制御できるようにしてある。これにより、本発明の小型飛行装置は、上記設定された飛行コースに沿って上記目標位置まで飛行することができるようにしてある。
【0054】
又、本発明の小型飛行装置は上記したように乱流によって飛行コースを容易に乱され易いことから、上記コントローラ24の飛行制御機能としては、本発明の小型飛行装置を上記のように所定の飛行コースに沿って飛行させる際に、GPS座標等の上記位置センサ21からの信号に基づいて本発明の小型飛行装置の現在の飛行位置を常時監視し、検出される現在の飛行位置が、上記所定の飛行コースからずれていることが検出された場合には、このずれを修正するように左右の各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へ適宜指令を与えて、左右方向へ旋回させたり、上昇あるいは下降を行わせることができるようにする。これにより、飛行コースが乱されても随時修正しながら本発明の小型飛行装置を目標位置まで飛行させることができる機能も有するようにしてある。
【0055】
更に、上記コントローラ24の飛行制御機能としては、目標位置における所定の目的が達成された後に、本発明の小型飛行装置を初期位置(離陸位置)あるいは予め設定された所定の位置まで戻るように帰還用の飛行コースを設定すると共に、該帰還用飛行コースに沿って上記したと同様の制御を行うことで飛行させることもできるようにしてあるものとする。
【0056】
上記コントローラ24の更に別の機能としては、飛行コース上に存在する障害物を自動的に回避する障害物回避機能も備えているものとする。これは、衝突防止センサ23より入力される信号に基づいてコントローラ24が進行方向前方を常に監視し、飛行コースの前方に障害物の存在が検出されると、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3及び角度制御用モータ11へ適宜指令を与えることにより、飛行方向を上下左右方向へ適宜変更して上記障害物を迂回させるようにしてある。このようにして障害物を避けた後は、コントローラ24の有する上記飛行制御機能に基づいて、目標位置に至る飛行コースあるいは帰還用飛行コースに戻させるようにすればよい。
【0057】
上記衝突防止センサ23としては、たとえば、光フロー(Optic Flow)センサを採用すればよい。これは、ある移動体が移動しているときに該移動体より外部を視覚的に観測すると、得られる外部の像は、進行方向前方の一点より放射状に拡大し、移動体の上下左右位置では後方へ該移動体の速度と対応する速さで最も速く流れた後、進行方向後方の一点に集約されるように変化する。この際、上記移動体の進行方向の前方に位置している物体は、視界上における相対位置が変化せず、進行方向の前方からずれた位置に存在している物体は、その進行方向からの上下左右へのずれ方向に応じて、視界上では上下左右方向にその相対位置が変化すること、又、これらの進行方向前方からずれた位置に存在する物体は、進行方向からのずれが小さいほど、視界上における相対位置の変化率が大きくなる、という原理を利用して進行方向前方の障害物を検出できるようにしてある。
【0058】
更に又、胴体1の図示しない所定位置には、本発明の小型飛行装置の使用目的に応じたペイロード20として、たとえば、遠隔地の情報収集を目的とする場合には、画像撮影用のCCDセンサ20aや、雰囲気ガス中に存在する物質を検出するための化学センサ20b、バイオセンサ20c等の各種センサや、搬送対象物の離脱操作や把持操作等を行わせるための把持装置(図示せず)のようなペイロード20を搭載できるようにしてある。該ペイロード20が、各種センサである場合には、図4に示す如く、該センサによる計測結果を、上記状態監視器27へ送り、上記コントローラ24より入力される本発明の小型飛行装置の現在位置や飛行状況等と一緒に無線送信器28を経て外部の制御装置へ無線で送信させるようにしてもよい。
【0059】
図1(イ)(ロ)に示す如く、胴体1の下部所要位置には、本発明の小型飛行装置を離着陸させるときに接地させるための脚29を設けるようにしてある。又、胴体1の所要位置には各モータ3,11や上記制御機構における各機器に電力供給を行なうためのバッテリー等の図示しない電源を搭載するようにしてある。
【0060】
なお、本発明の小型飛行装置は飛行体であることから、上記した各種構成要素は、いずれも軽量であることが重要になる。したがって、上記各種構成要素は、いずれも、要求される強度や機能が満たされる範囲内において軽い材質のものを適宜選択して用いるようにすればよい。
【0061】
上記構成としてあることにより、本発明の小型飛行装置を使用する場合は、作業者が所要の離陸位置まで搬送して地上や所要個所に載置した状態にて、外部の制御装置より無線にて目標位置までの飛行及び所要の目的、たとえば、ペイロード20として搭載してある各種センサによる上記目標位置の状況観測等を行うよう飛行指令を発すると、該指令が本発明の小型飛行装置の無線受信器25及び指令設定器26を経てコントローラ24に入力される。このようにコントローラ24へ指令が入力されると、該コントローラ24では、上記指定された目標位置までの飛行コースが設定され、この所定の飛行コースに沿って飛行できるような揚力及び推進力が得られるように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3と角度制御用モータ11をそれぞれ駆動させるための指令が個別に発せられる。これにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角が角度制御用モータ11により所要の角度に調整されると共に、翼駆動用モータ3により上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dが、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所定の周波数にて振幅が適宜制御されて羽ばたき作動されることから、本発明の小型飛行装置は、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルして、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させた状態で上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させて、上記所定の飛行コースに沿って目標位置まで飛行するようになる。
【0062】
この飛行の際、乱流等により姿勢が乱れると、姿勢センサ22より入力される信号によりコントローラ24にて該姿勢の乱れが検出されて、この姿勢の乱れを修正するよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定の周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は常に水平姿勢を保持したまま飛行できるようになる。
【0063】
又、風の影響等により所定の飛行コースから逸脱すると、位置センサ21からの信号によりコントローラ24にて飛行コースからのずれが検出されて、この飛行コースからのずれを修正するよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されて揚力や推進力が調整されるため、本発明の小型飛行装置は目標位置へ向けて飛行できるようになる。
【0064】
更に、飛行コース上に障害物がある場合には、衝突防止センサ23からの信号によりコントローラ24にて上記障害物が検出され、この障害物を迂回して飛行できるよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されるため、本発明の小型飛行装置は障害物を避けて飛行できるようになる。
【0065】
本発明の小型飛行装置が目標位置に達すると、ペイロード20に搭載したセンサによる上記目標位置の状況が計測されて、たとえば、上記センサをCCDセンサ20aとした場合には、上記目標位置の状況の映像が撮影でき、又、化学センサ20bとしたりバイオセンサ20cとした場合には、上記目標位置における雰囲気ガスの分析等を行わせて、該目標位置の映像や雰囲気中のガス成分の分析結果等を、状態監視器27、無線送信器28を介し外部の制御装置へ送信させることができるようになる。
【0066】
その後、上記目標位置における目的の作業が終了すると、離陸位置あるいは予め指定された所定位置まで帰還するための飛行コースに沿って飛行できるよう上記コントローラ24より各翼駆動用モータ3及び各角度制御用モータ11へ指令が発せられて、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度及び上記所定周波数での羽ばたき作動の振幅が適宜調整されて発生される揚力及び推進力が調整されるため、本発明の小型飛行装置は上記離陸位置あるいは所定位置まで帰還させられるようになる。
【0067】
このように、本発明の小型飛行装置によれば、前部左右位置及び後部左右位置に設けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角をそれぞれ対応する翼駆動用モータ3と一緒に上下方向へ回動させて独立に制御できるようにしてあると共に、上記各翼駆動用モータ3を、出力軸4に対してばね7の弾性力に基づいた復元力を作用させることができるようにした構成としてあるため、翼駆動用モータ3の出力軸4を羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数で交互に正、逆転駆動させて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをいかなる迎角に設定した状態においても、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルできることから、各翼駆動用モータ3の負荷を軽減させることができる。このように、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動で発生する慣性力の変動を緩和できることから、本発明の小型飛行装置にて所要の使用目的を達成できるようにするために、使用目的に対応させた後述するペイロード20を十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが求められ、そのため、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたき作動させることが要求される場合であっても、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記要求を満たすように高い周波数で羽ばたき作動させることができる。
【0068】
更に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角と、上記所定の周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を独立に制御して羽ばたき作動できるようにしてあるため、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dより胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に作用する揚力や推進力を独立して調整できる。このために、本発明の小型飛行装置は、そのサイズからレイノルズ数が104〜105程度と低いものであるため、メーターサイズの飛行体とは大幅に異なる流体との相互作用を受けて、常に乱流の中を飛行するような状況となるが、姿勢センサ22にて検出される姿勢の乱れを常時修正して水平姿勢に保持したまま、高度な飛行性能を達成することができる。
【0069】
更に目標位置と使用目的に関する飛行指令を与えることにより、上記目標位置までの自律飛行を行わせた後、該目標位置における所定の作業を行わせ、しかる後、離陸位置あるいは所定位置まで戻るように飛行させることができる。そのため、たとえば、災害発生現場や人が容易に近づけない個所の撮影を行ったり、該個所の雰囲気中に含まれるガスの成分を分析して、有害ガスの発生の有無を確認したりする等、遠隔地から上記目標位置の情報収集を行なうことが可能になる。
【0070】
更に、ペイロード20に把持装置を搭載しておけば、所要の搬送物を、目標位置として設定される人が容易に近付けない個所や、遠隔地まで搬送させたり、回収させたりすることも可能になる。
【0071】
次に、図5(イ)(ロ)乃至図8は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態において、前部左右位置と後部左右位置に上下方向に角度変更できるように設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、共振型アクチュエータとしての翼駆動用モータ3に連結して羽ばたき作動させるようにしてあることに代えて、前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ上下方向に角度変更できるよう設ける各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、出力軸36に対して所要の弾性係数を有する弾性部材により復元力を与えながら該出力軸36を軸心方向に振動できるようにしてある共振型アクチュエータとして、たとえば、ムービングコイル形式の線形アクチュエータ30の出力軸36に連結して、該線形アクチュエータ30の出力軸36の振動により羽ばたき作動させるようにしたものである。
【0072】
すなわち、上記ムービングコイル形の線形アクチュエータ30は、図7(イ)(ロ)に示す如く、一端側を閉塞した円筒状の支持容器31の他端側を、中央部に所要口径の開口部32を有する蓋部31aで閉鎖できるようにし、且つ該支持容器31の内部に、半径方向の磁界を発生させる環状のギャップ(溝)33aを備えた永久磁石製の磁気回路33を設置して、該磁気回路33と蓋部31aとの間に所要の空間部を形成すると共にギャップ33aが蓋部31a側に開放するようにする。上記磁気回路33のギャップ33a内には、コイル34を、軸心方向に往復移動できるように挿入配置して、該コイル34の蓋部31a側の軸方向端部に、取付部材35を取り付け、更に、該取付部材35の中央部に、蓋部31aの中央部の開口部32にスライド自在に挿入させた出力軸36の一端を取り付ける。更に又、上記蓋部31aの前面の外縁部における周方向の複数個所(図では4個所)に、出力軸4と平行に延びるようにばね用の支柱38をそれぞれ設け、該各ばね用支柱38の先端部と、蓋部31aの開口部32を通して外部へ突出させてある上記出力軸36の中間部との間に、放射方向に配置した所要の弾性係数を有する弾性部材としての所要のばね定数を有するばね37を介在させて、各ばね37を上記出力軸36とばね用支柱38にそれぞれ連結した構成としてある。これにより、上記コイル34に所要周波数の交流電力を給電すると、該コイル34を上記磁気回路33のギャップ33a内における磁界との相互作用により軸心方向に往復運動させることができて、このコイル34の軸心方向の往復運動に伴い、取付部材35を上記空間部内で移動させて、上記出力軸36を、上記給電する交流電力の周波数と同様の周波数で軸心方向に振動(往復移動)させることができるようにしてあり、この際、該出力軸36が軸心方向に変位して位置固定の各ばね用支柱38の先端部に対して相対変位すると、上記出力軸36とばね用支柱38との間の各ばね37が初期状態より伸長させられて、この伸長させられた各ばね37の弾性力により、上記振動する出力軸36に対して初期状態へ戻すような所要の復元力を与えることができるようにしてある。なお、上記において、各ばね37は、たとえば、コイルばね等のように、伸縮を利用して出力軸36の軸心方向の変位に対して復元力を与えるものとして説明したが、板ばねのような曲げ変形を利用する形式のばねとして、出力軸36が軸心方向に変位することに伴って曲げ変形されるときに生じる反発力(弾性力)により、上記出力軸36に対して復元力を与えることができるようにしてもよい。
【0073】
したがって、上記線形アクチュエータ30の出力軸36の振動により該出力軸36に連結してある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるべく、該線形アクチュエータ30にて振動(往復移動)する出力軸36、取付部材35及びコイル34とからなる可動部と、羽ばたき作動する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dと、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に同伴されて一緒に運動する空気による慣性力、及び、上記ばね37より各線形アクチュエータ30の出力軸36に対して与えられる復元力によって形成される振動系(以下、図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態と同様に、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系と云う)に対して、各線形アクチュエータ30より変動外力を加えるときに、該変動外力の周波数、具体的には、各線形アクチュエータ30の出力軸36を振動させる周波数が、上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しくなるようにする。これにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる上記の如き慣性力をキャンセルすることができ、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる各線形アクチュエータ30の負荷を軽減させることができるようにしてある。
【0074】
上記構成としてある線形アクチュエータ30は、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態における翼駆動用モータ3と同様に、支持容器31の外側面に、図7(イ)(ロ)に示す如く、コイル34の往復動方向とは直交する方向で且つ相対する方向に回転支持軸8を取り付けて、該支持容器31の両側へ延びる回転支持軸8を、胴体1の前部左右位置と後部左右位置にそれぞれ設けてある左右一対の軸受9a,9bに回転自在に支持させるようにして、図6に示す如く胴体1上に設置させる。更に、一方(片側)の回転支持軸8、たとえば、各線形アクチュエータ30の胴体1の中心側に位置する各々の回転支持軸8に、角度変更用ギア10をそれぞれ取り付け、且つ該各ギア10に噛合させた各ピニオン13を、胴体1に設置してある各々独立させた角度制御用モータ11の出力軸12に取り付け、各角度制御用モータ11によりピニオン13を独立して回転させることにより、上記角度変更用ギア10、回転支持軸8を介して線形アクチュエータ30を、それぞれ独立して前後方向に沿う垂直面内で上下方向に回転(角度変更)できるようにしてある。
【0075】
更に、上記線形アクチュエータ30の出力軸36には、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態における各翼駆動用モータ3の出力軸4に連結した場合と同様に、左右方向に延びて胴体1の外方へ所要寸法突出するようにしてある駆動ロッド14の一端部(胴体1側の端部)を図7(イ)に示す如く直角の状態で連結して固定すると共に、該駆動ロッド14の胴体1外方へ突出した他端側に、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態における翼本体15と同様の構成とし且つ上記線形アクチュエータ30の出力軸36と直角な面内に配置してある翼本体15の前縁部を、複数の連結ロッド16を介し取り付けて、出力軸36の往復移動で駆動ロッド14、連結ロッド16を介し翼本体15が羽ばたき作動するようにした構成としてある。本実施の形態の各図では、線形アクチュエータ30の出力軸36を垂直方向上向きとするときに、翼本体15は翼前縁が水平方向前向きの姿勢となり、線形アクチュエータ30の出力軸36を水平方向後向きとするときに、翼本体15は翼前縁が垂直方向上向きの姿勢となるように設定してある。
【0076】
したがって、上記線形アクチュエータ30の出力軸36を上記羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい周波数にて所要の振幅で振動させることにより、該出力軸36に連結してある駆動ロッド14と連結ロッド16と翼本体15とからなる各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dが、上記翼本体15の面に垂直な方向へ振動させられて羽ばたき作動されるようになり、この際、上記各線形アクチュエータ30の出力軸36を、上記所定の周波数で振動させるときの振幅を個別に制御することにより、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の振幅を独立して制御できるようになると共に、上記各角度制御用モータ11の回転数を適宜制御することにより、各線形アクチュエータ30と一緒にそれぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの上下方向の迎角(向き)を独立に変更して、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力と推進力をそれぞれ独立して制御することができるようにしてある。
【0077】
更に又、本実施の形態では、上記したように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動を、それぞれ線形アクチュエータ30にて行わせるようにしてあることに伴い、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を備えて該各制御機能に基づいて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dにて発生させる揚力と推進力をそれぞれ独立して制御するためのコントローラとしては、図4に示した各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの翼駆動用モータ3と角度制御用モータ11へそれぞれ指令を与えるコントローラ24に代えて、図8に示す如く、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの線形アクチュエータ30と角度制御用モータ11へそれぞれ指令を与えて、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記所定の周波数にて羽ばたき作動させるときの振幅と上下方向の角度姿勢をそれぞれ制御する指令を与える機能を有するコントローラ24aを設けるようにしてある。
【0078】
その他の構成は図1(イ)(ロ)乃至図4に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0079】
本実施の形態によれば、上記角度制御用モータ11の回転を制御して線形アクチュエータ30と一緒に各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上下方向に回転させることができるようにしてあると共に、上記各線形アクチュエータ30を、出力軸36に対してばね37の弾性力に基づいた復元力を作用させることができるようにした構成としてあるため、線形アクチュエータ30の出力軸36を、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数で振動させて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをいかなる迎角に設定した状態においても、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルできることから、各線形アクチュエータ30の負荷を軽減させることができる。このように、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動で発生する慣性力の変動を緩和できることから、本実施の形態の小型飛行装置にて所要の使用目的を達成できるようにするために、使用目的に対応させた後述するペイロード20を十分に搭載できるようにすると共に、長距離を長時間飛行できるようにすることが求められ、そのため、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを、高い周波数(数10Hz〜数100Hz)で羽ばたき作動させることが要求される場合であっても、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを上記要求を満たすように高い周波数で羽ばたき作動させることができる。
【0080】
更に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角と、上記所定の周波数で羽ばたき作動させるときの振幅を独立に制御して羽ばたき作動できるようにしてあるため、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dより胴体1の前部左右位置及び後部左右位置に作用する揚力や推進力を独立して調整できる。
【0081】
このために、図1(イ)(ロ)乃至図4に示した実施の形態におけるコントローラ24によるそれぞれ対応する角度制御用モータ11と翼駆動用モータ3の制御により各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dごとに独立した迎角及び羽ばたき作動の振幅の制御と同様に、コントローラ24aの有する姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能に基づいて、角度制御用モータ11と線形アクチュエータ30へ制御指令を与えることにより、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度姿勢としての迎角、及び、羽ばたき作動の振幅をそれぞれ独立に制御することで、図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
上記のように本実施の形態における小型飛行装置を飛行させるときに水平方向前方に飛行させる場合には、上記各線形アクチュエータ30に単なる交流電力を給電しているときに、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを所要迎角で前方やや上向きの姿勢となるようにすることにより、後流を後方やや下向きに発生させて、該後流の反力中における垂直方向上向きの成分により本発明の小型飛行装置の機体重量を支えるための揚力を得るようにすればよい。又、上記各線形アクチュエータ30に対し、交流電力を供給するときに直流分を同時に負荷して、対応する各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの打下げ時の速度が打上げ時の速度よりも大となるように上記各線形アクチュエータ30の駆動を制御し、これにより、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dで発生させる後流の向きを、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに設定されている迎角よりも下方へ偏らせて、該下方へ偏った後流の反力により機体重量を支えるための揚力を得ることができれば、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの迎角を、水平方向前方に向けた姿勢とすることができる。
【0083】
次いで、図9(イ)(ロ)はいずれも図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態の応用例を示すもので、図9(イ)に示すものは、図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態に示したように、出力軸36と支持容器31の蓋部31aの前面に設けたばね用支柱38との間にばね37を介在させて共振型としてなる各線形アクチュエータ30の出力軸36に、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド14の一端部(胴体1側の端部)を直接固定する構成に代えて、上記共振型としてなる各線形アクチュエータ30の支持容器31の蓋部31aの前面における出力軸36より胴体1外側寄りとなる左右方向の一側位置に、出力軸36と平行に所要寸法突出するブラケット39を設けて、該ブラケット39の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2d(図では羽ばたき翼2aについてのみ示してある)の駆動ロッド14の基端側となる一端寄りの所要個所を、ピン40によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させ、該各駆動ロッド14の基端側としての一端部には、軸心方向に沿って所要の寸法を有する長孔41を設ける。一方、上記線形アクチュエータ30の出力軸36の先端部には、先端側に左右方向に連通する隙間を備えたクレビス形状の連結部材42を取り付けて、該連結部材42の先端側の隙間に上記駆動ロッド14の一端部を沿わせて配置させるようにし、上記駆動ロッド14の長孔41に挿通させた動力伝達用ピン43の両端部を、上記連結部材42の先端部に取り付けて連結部材42と駆動ロッド14の一端部とを係合させる。これにより、線形アクチュエータ30の出力軸36が軸心方向へ振動すると、上記動力伝達用ピン43と長孔41を介し駆動ロッド14が揺動させられるようにした構成としたものである。
【0084】
又、図9(ロ)に示すものは、上記共振型としてなる各線形アクチュエータ30の支持容器31の蓋部31aの前面における出力軸36より胴体1中心側寄りとなる左右方向の他側位置に、出力軸36と平行に所要寸法突出するブラケット39を設けて、該ブラケット39の先端部に、それぞれ対応する羽ばたき翼2a,2b,2c,2d(図では羽ばたき翼2aについてのみ示してある)の駆動ロッド14の基端側としての一端部を、ピン40によりそれぞれ回動自在に枢着して支持させると共に、図9(イ)に示したと同様に、駆動ロッド14の基端側となる所要個所に長孔41を設け、線形アクチュエータ30の出力軸36の先端に固定した図9(イ)と同様の連結部材42に、上記駆動ロッド14の長孔41形成部を沿わせて、動力伝達用ピン43を長孔41に通すことにより係合させるようにし、線形アクチュエータ30の出力軸36が軸心方向へ振動することにより、駆動ロッド14がブラケット39への枢着点を中心に揺動させられるようにした構成としたものである。
【0085】
その他の構成は、いずれも図5(イ)(ロ)乃至図8に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0086】
上記図9(イ)及び図9(ロ)に示したものでは、いずれも、線形アクチュエータ30の出力軸36を軸心方向に振動させることにより、該出力軸36に連結部材42を介して取り付けてある動力伝達用ピン43の変位が、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド14における長孔41の部分を上記出力軸36の軸心方向に押し引き駆動させるようにする。これにより、該各駆動ロッド14は、図9(イ)及び図9(ロ)にそれぞれ一点鎖線及び二点鎖線で示す如く、線形アクチュエータ30の支持容器31の蓋部31aの前面所要位置に設けたブラケット39の先端部のピン40を支点として揺動させられるようになることから、該各駆動ロッド14の他端部に取り付けてある翼本体15を、羽ばたき作動させることができるようになる。又、上記各線形アクチュエータ30の出力軸36を振動させるときには、該出力軸36に対してばね37の弾性力に基づいた復元力を作用させることができることから、線形アクチュエータ30の出力軸36を、羽ばたき作動の慣性力とばね復元力による振動系の共振周波数に等しい所要の周波数で振動させて、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させることにより、上記各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dをいかなる迎角に設定した状態においても、該各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動に伴って生じる慣性力をキャンセルできることから、各線形アクチュエータ30の負荷を軽減させることができる。更に、このように各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させる際には、各線形アクチュエータ30の出力軸36の振動の振幅を、該出力軸36に取り付けてある連結部材42先端部の上記動力伝達用ピン43にて押し引き駆動される駆動ロッド14の長孔41の位置から支点、すなわち、上記ブラケット39の先端部のピン40までの距離L1と、該支点となるブラケット39の先端部のピン40から上記駆動ロッド14の胴体1外方へ突出した他端側における翼本体15の取付位置までの距離L2との比(L2/L1)に応じて増幅させて各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dへ伝達することができる。このために、線形アクチュエータ30の出力軸36の振動の振幅が小さくても、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの羽ばたき作動の振幅を大きく設定することが容易になり、したがって、線形アクチュエータ30の小型化を図るのに有利なものとすることができる。
【0087】
図10(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、図3(イ)(ロ)の変形例を示すもので、図10(イ)に示すものは、翼駆動用モータ3における出力軸4に対して復元トルクを与えるための機構として、図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態のように、出力軸4に直角方向で且つ相対する方向となるよう取り付けた2本のばね用アーム5の先端部と、翼駆動用モータ3のケース前面に突設した2本のばね用支柱6の先端部との間に、該アーム5及び支柱6の各先端部を頂点とする四辺形上に位置するよう4本のばね7を介在させて接続した構成とすることに代えて、出力軸4に直角方向で相対する放射方向に突出するよう取り付けた2本のばね用アーム5の先端部と、翼駆動用モータ3のケース前面の外周縁部所要位置に突設した1本のばね用支柱6の先端部との間に、2本のばね7を介在させて接続したものである。又、図10(ロ)に示すものは、出力軸4に直角方向に所要長さ突出するように取り付けた1本のばね用アーム5の先端部と、翼駆動用モータ3のケース前面の外周縁部における180度対向する位置に設けた2本のばね用支柱6のそれぞれの先端部との間に、2本のばね7を介在させて設けるようにしたものである。したがって、上記図10(イ)及び図10(ロ)に示したものでは、いずれも出力軸4が回転するときに、該出力軸4に対して上記2本のばね7により復元トルクを与えることができるようにしてある。
【0088】
更に、図10(ハ)に示すものは、出力軸4の外周面所要位置に、弾性部材としての渦巻ばね44の中心側端部を連結し、且つ該渦巻ばね44の外周側端部を翼駆動用モータ3のケース前面の所要個所に設けたばね用支柱6に連結した構成としたものである。この場合、出力軸4が回転すると、上記渦巻ばね44が変形されるようになるため、該変形される渦巻ばね44が初期形状へ戻ろうとする復元力を利用して上記出力軸4に復元トルクを与えることができるようにしてある。
【0089】
図11(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態として、図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態及び、図9(イ)(ロ)の実施の形態におけるムービングコイル形の線形アクチュエータ30の変形例を示すもので(図では図7(イ)(ロ)に対応する図として示してある)、図7(イ)(ロ)に示したと同様に、円筒状の支持容器31と、該支持容器31の内部に内部に設ける永久磁石製の磁気回路33と、該磁気回路33のギャップ33a内に軸心方向に往復移動できるよう挿入配置したコイル34と、該コイル34の軸方向端部に取り付けた取付部材35と、上記支持容器31の蓋部31aの中央部の開口部32にスライド自在に挿入させると共に一端を上記取付部材35に取り付けた出力軸36とからなる構成としてある線形アクチュエータ30における上記出力軸36に復元力を与えるためのばね37を、上記蓋部31aの前面の外周部所要位置に設けたばね用支柱38と、上記出力軸36における支持容器31より突出する部分の中間部の外周面との間に介在させるようにした構成に代えて、上記蓋部31aと磁気回路33との間に形成されている空間部における軸心方向中間位置とほぼ対応する支持容器31の内周面と、上記コイル34の蓋部31a側の外周部との間に、周方向の複数個所(図では4個所)に半径方向に沿うよう(放射方向となるよう)に配置した所要の弾性係数を有する弾性部材としての所要のばね定数を有するばね37を介在させて、各ばね37を支持容器31とコイル34にそれぞれ接続した構成としたものである。
【0090】
本実施の形態における線形アクチュエータ30においても、上記コイル34に所要周波数の交流電力を給電して該コイル34を上記磁気回路33のギャップ33a内における磁界との相互作用により軸心方向に往復運動させることにより出力軸36を軸心方向へ振動させるときには、コイル34の軸心方向の変位に伴って上記各ばね37が伸長させられるようになるため、この伸長させられた各ばね7の弾性力により、上記コイル34と一緒に該コイル34に取付部材35を介し連結されている出力軸36に対して初期状態へ戻すような所要の復元力を与えることができるようにしてある。なお、上記において、各ばね37は、たとえば、コイルばね等のように、伸縮を利用してコイル34と一緒に軸心方向に変位する出力軸36に対して復元力を与えるものとして説明したが、板ばねのような曲げ変形を利用する形式のばねとして、コイル34が軸心方向に変位することに伴って曲げ変形されるときに生じる反発力(弾性力)により、上記コイル34及び出力軸36に対して復元力を与えることができるようにしてもよい。
【0091】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、以下に述べるようにしたものも含むものである。たとえば、本発明の小型飛行装置のサイズは、適宜増減してもよい。胴体1は、たとえば、流線形のような本発明の小型飛行装置の飛行時に抵抗とならないような形状としてあれば、形状は自在に決定してよい。
【0092】
駆動ロッド14と翼本体15を繋ぐ連結ロッド16の本数は、3本として示してあるが、適宜増減してもよい。翼本体15は、軽量で且つ羽ばたき作動により本発明の小型飛行装置を飛行させるために必要とされる所要の揚力及び推進力を得られるような面積、及び、羽ばたき作動時にフェザリングを生じさせるための柔軟性を備えた平面状のものとしてあれば、横骨部材17の本数を増やしたり、縦骨部材18の本数を増減させてもよい。更には、一枚板状のものとする等、横骨部材17と縦骨部材18とフィルム19とからなる構成以外のものとしてもよい。又、形状は低アスペクト比の矩形状とすることが好ましいが、低アスペクト比でなくてもよく、その形状を多少変更してもよい。翼本体15と連結ロッド16は共に柔軟性を備えていることが望ましいが、いずれか一方の柔軟性のみで翼本体15にフェザリングを生じさせることができれば、他方は柔軟性を備えていなくてもよい。翼本体15の前縁部を、連結ロッド16を介在させることなく駆動ロッド14に直接取り付けるようにしてもよい。
【0093】
図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態においては、各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの角度を変更させる場合、軸受9a,9bに回転支持軸8を介して回動自在に支持させてある翼駆動用モータ3を、又、図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態においては、軸受9a,9bに回転支持軸8を介して回動自在に支持させてある線形アクチュエータ30を、それぞれ角度制御用モータ11によりピニオン13、角度変更用ギア10を介して上下方向に回転させるものとして示したが、本発明の小型飛行装置を飛行させるときに各羽ばたき翼2a,2b,2c,2dに所望される迎角を取らせることができるように所要の角度範囲で回転でき、且つ軽量であれば、上記翼駆動用モータ3や線形アクチュエータ30を上下方向に回転させる機構は、ラック、ピニオン機構や、所要のアクチュエータによる直接あるいはリンクを介した押し引き機構、その他のいかなる機構を採用してもよい。
【0094】
図1(イ)(ロ)乃至図4の実施の形態、及び、図10(イ)(ロ)の実施の形態において、出力軸4の所要の角度範囲における正、逆転駆動を許容でき、且つ該回転される出力軸4に対して復元トルクを与えることができるような所要の弾性係数を備えていれば、ばね用アーム5の先端部とばね用支柱6の先端部との間に、たとえば、ゴム等のばね7以外の弾性部材を介在させて設ける等、いかなる弾性部材を採用するようにしてもよい。図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態、図9(イ)(ロ)の実施の形態、及び、図11(イ)(ロ)の実施の形態において、出力軸36の振動時に該出力軸36に対して復元力を作用させるためのばね37は、周方向に4本設けるものとして示したが、数は適宜増減させてよい。更には、出力軸36の所要振幅の振動を許容でき、且つ該振動される出力軸36に対して復元力を与えることができるような所要の弾性係数を備えていれば、ゴム等のばね37以外の弾性部材を介在させて設ける等、いかなる弾性部材を採用するようにしてもよい。
【0095】
図5(イ)(ロ)乃至図8の実施の形態、及び、図9(イ)(ロ)の実施の形態における、羽ばたき翼2a,2b,2c,2dを羽ばたき作動させるための共振型の線形アクチュエータとしては、磁気回路33のギャップ33a内における磁界とコイル34との電磁的な相互作用を利用して出力を得るようにしたボイスコイル形とすると共に、支持容器31の蓋部31aの前面に設けたばね用支柱38と出力軸36との間にばね37を介在させてなる構成の線形アクチュエータ30を例示したが、出力軸を軸心方向に振動させることができると共に、該振動する出力軸に対して固定側との間に介在させた所要の弾性係数を備えた弾性部材に寄り復元力を付与できるようにしてあれば、線形アクチュエータにおける出力軸を軸心方向へ振動させるための駆動形式は、上記線形アクチュエータ30の如くボイスコイル形とすることに代えて、線形超音波モータや電磁式の線形モータの駆動形式を採用するようにしてもよい。
【0096】
図9(イ)(ロ)の実施の形態においては、線形アクチュエータ30のブラケット39に回動可能に取り付けてある羽ばたき翼2a,2b,2c,2dの駆動ロッド14の基端側を、線形アクチュエータ30の出力軸36に、該出力軸36の軸心方向への振動により揺動できるように連結できれば、駆動ロッド14の長孔41と、出力軸36側に取り付けた動力伝達用ピン43とを係合させる構成以外のいかなる連結手段を採用してもよい。
【0097】
位置センサ21は、本発明の小型飛行装置の位置を検出することができれば、GPSや磁気センサと飛行速度計と飛行高度計からなる位置センサ以外にも、加速度センサ等、任意のものを採用してもよい。姿勢センサ22は、たとえば、GPS受信機及びアンテナを3台ずつ用いる等、ジャイロ以外のものを採用するようにしてもよい。衝突防止センサ23は、飛行方向の前方に位置する障害物を検出できれば、光フローセンサ以外にも、超音波や赤外線のエコーにより障害物を検出するセンサ等、任意の形式のものを採用してもよい。
【0098】
本発明の小型飛行装置の飛行に支障を来たさないサイズ、重量としてあれば、ペイロード20は、本発明の小型飛行装置の所望の使用目的に応じて、任意のものとしてよい。したがって、本発明の小型飛行装置は、上記積載するペイロード20に応じた任意の使用目的に適用できる。
【0099】
更に、上記実施の形態ではコントローラ24,24aは、姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能を有するものとして説明したが、これらは基本的な機能であり、本発明の小型飛行装置に、別の小型飛行装置との通信装置を設けて、コントローラ24,24aに、別の小型飛行装置と相互に連係した働きをさせるための機能を追加したり、飛行に関わる別の外部情報を収集するための別のセンサを追加して、該センサの信号に基づいて上記姿勢制御機能、飛行制御機能、障害物回避機能等にそれぞれ修正を加えることができるようにしたり、更に、上記ペイロード20に搭載する機器の制御機能を追加する等、任意の機能を併せ持つようにしてもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の小型飛行装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は垂直方向上向きの揚力を発生させている状態、(ロ)は前進飛行する状態をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図2】図1の装置の概略切断平面図である。
【図3】図2に用いられている翼駆動用モータを示すもので、(イ)は拡大平面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図4】図1の装置の制御機構を示す概要図である。
【図5】本発明の実施の他の形態を示すもので、(イ)は各羽ばたき翼を垂直方向上向き姿勢として垂直方向上向きの揚力を発生させている状態を、(ロ)は前進飛行する状態をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図6】図5の装置の概略切断平面図である。
【図7】図6に用いられている線形アクチュエータとその支持構造を示すもので、(イ)は図6のB−B方向からの一部切断拡大図、(ロ)は(イ)のC−C方向矢視図である。
【図8】図5の装置の制御機構を示す概要図である。
【図9】(イ)(ロ)はいずれも図5の装置に用いる共振型の線形アクチュエータの他の形態を示すもので、図7(イ)(ロ)の応用例を示す図である。
【図10】(イ)(ロ)(ハ)はいずれも図1の装置に用いる翼駆動用モータの他の形態をそれぞれ示すもので、図3(イ)(ロ)の変形例を示す概要図である。
【図11】図5の装置に用いる共振型の線形アクチュエータの更に他の形態を示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のD−D方向矢視断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 胴体
2a,2b,2c,2d 羽ばたき翼
3 翼駆動用モータ(アクチュエータ)
4 出力軸
7 ばね(弾性部材)
14 駆動ロッド
15 翼本体
22 姿勢センサ
24,24a コントローラ
30 線形アクチュエータ(アクチュエータ)
36 出力軸
37 ばね(弾性部材)
39 ブラケット
44 渦巻ばね(弾性部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体の左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなることを特徴とする小型飛行装置。
【請求項2】
胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなることを特徴とする小型飛行装置。
【請求項3】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項4】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付け、更に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各翼駆動用モータの所定周波数での交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項5】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項6】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付け、更に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項7】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項8】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結し、更に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項1】
胴体の左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなることを特徴とする小型飛行装置。
【請求項2】
胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、羽ばたき翼を、それぞれ独立して上下方向に角度調整可能に設け、且つ上記各羽ばたき翼を所要の角度姿勢に保持しながら復元力を作用させて羽ばたき作動させるアクチュエータを個別に設け、該アクチュエータにより上記羽ばたき翼をそれぞれ所定周波数で且つ所要の振幅で羽ばたき作動させて飛行できるようにしてなることを特徴とする小型飛行装置。
【請求項3】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項4】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元トルクを与えながら該出力軸を正、逆転駆動できるようにしてなる共振型とした翼駆動用モータとし、該翼駆動用モータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が前後方向又は上下方向に向くように角度変更可能にそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各翼駆動用モータの出力軸にそれぞれ取り付け、更に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各翼駆動用モータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各翼駆動用モータの所定周波数での交互の正、逆転駆動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項5】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付けた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項6】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドを、上記各線形アクチュエータの出力軸にそれぞれ取り付け、更に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項7】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結してなる構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【請求項8】
アクチュエータを、出力軸と固定側との間に所要の弾性係数を有する弾性部材を介在させて出力軸に復元力を与えながら該出力軸を軸心方向に振動できるようにしてなる共振型の線形アクチュエータとし、該線形アクチュエータを、胴体の前部左右位置と後部左右位置の複数個所に、出力軸が上下方向又は前後方向に角度変更できるようにそれぞれ設け、且つ上記線形アクチュエータの左右方向の片側位置にブラケットを設け、該ブラケットに、左右方向に延びる駆動ロッドに翼本体の前縁部を保持させてなる羽ばたき翼の上記駆動ロッドの基端側を、回動可能に取り付けると共に、該駆動ロッドの基端側を、上記線形アクチュエータの出力軸に、該出力軸の軸心方向への振動により揺動できるよう連結し、更に、胴体の姿勢を検出するための姿勢センサと、該姿勢センサから入力される信号を基に上記各線形アクチュエータの出力軸の上下方向の角度の制御、及び、該各線形アクチュエータの所定周波数での出力軸の振動による羽ばたき翼の羽ばたき作動の振幅の制御を行うコントローラを備えた構成を有することを特徴とする小型飛行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−88769(P2006−88769A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273811(P2004−273811)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(504182406)有限会社数理解析研究所 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(504182406)有限会社数理解析研究所 (6)
【Fターム(参考)】
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