説明

少なくとも1つの吸収シートを含む美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品

【課題】改良されたパッドなどの吸収製品を提供すること。
【解決手段】本発明は、美容用/皮膚科用のパーソナルケア/クレンジング吸収製品であって、少なくとも1つの不織吸収シートを含み、この不織吸収シートが、リヨセル繊維を10wt%〜100wt%、他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも1つを0wt%〜90wt%含む。リヨセル繊維は、0.5dtex〜3.5dtexの範囲の繊度を有する。吸収シートは、20g/m2〜500g/m2の範囲の基本質量を有する。機械方向及び横断方向の引張り強度は、5 N/5cm〜1000 N/5cmの範囲である。本発明は更に、この吸収製品を、クレンジング/スキンケア組成物を配置または含ませる基材として、パフ、パッド、ワイプ、ティッシュ、タオル、スポンジ、ブラシ、または綿棒などに用いることに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品、並びに美容用及び/または皮膚科用のクレンジング及び/またはスキンケア組成物を適用するパッド、ワイプ、タオル、ペーパータオル(towelette)、またはティッシュなどの基材としてのこの吸収製品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収シート製品は、大人から乳児までパーソナルケアとして広く普及している。このような例として、例えば、顔用及び体用のクレンジング用ワイプ、スキントリートメント用ワイプ、及びスキンコンディショニング用ワイプを挙げることができる。現在、このようなワイプまたはパッドは、スキンケア組成物や化粧品を皮膚に適用したり、便、尿、及びメイクを除去するために用いられている。
【0003】
このような製品は、消費者の高い要求に応えられるように、例えば、柔軟性、吸収率、及び機械的強度の要求を満たさなければならない。眼の周りなどの敏感な部分のメイク落としに用いられる場合は、消費者は特に慎重に製品を選択する。例えば、パッドまたはワイプの柔軟性が欠けていると、すぐに気付くであろう。また、例えばタンポン(dabbers)と同様に、吸収基材がほつれたり、毛羽立ったりするのは不都合であると考えられる。これにもかかわらず、未だに不織綿または脱脂綿の片がメイク落としローションの吸収材として良く用いられている。
【0004】
スキンケアやクレンジングでは、有効成分が皮膚に直接適用されるのではなく、パッドやワイプを用いてより均一に分散される。従って、指が油性ローションに触れなくて済む。スキンクレンジングには通常、汚れやメイクをむらなく拭き取るパッドやワイプが必要である。何れの場合も、パッドの材料は、繰り返し使用しても皮膚を刺激するものであってはならない。加えて、高い要求を満たす吸収力を有しなければならない。近年、ワイプやパッドの材料の柔軟性及び吸収特性を改良するために様々な試みがなされている。
【0005】
当初は、ウェットワイプ製品は、製紙技術(パルプを用いた製品)に基づいて従来の不織材料から製造されていた。このような製品は一般に受け入れられていたが、繊維材料の柔軟性に問題があった。スパンレーシング(spunlacing)不織技術の導入により、従来の製紙技術による製品に比べて強度及び柔軟性の点で優れた製品が製造できるようになった。これは主に、レーヨンやPET‐PPなどの長くて柔軟な繊維をスパンレーシングに使用したことと、スパンレーシングでは繊維に結合剤が添加されないことによる。
【0006】
しかしながら、たとえこのような製品であっても、例えば約80g/m2などと基本質量が大きい場合は特に、汚れやローションなどを染み込んだ時にワイプが元の構造を維持するのが困難である。一般的なパッドは、このような化合物が染み込むと通常は形が崩れ、その吸収性、強度、及び柔軟性が損なわれてしまう。
【0007】
従って、美容用及び/または皮膚科用の吸収パッドやワイプの要望が未だに続いている。以降の説明から明らかなように、既存の美容用及び皮膚科用のワイプやパッドの欠点を解消するための様々な試みがなされてきた。
【0008】
特許文献1によれば、1本の繊維の細さが0.5dtexよりも細い極細繊維を含む不織布を含むメイク用ワイプは、皮膚に刺激を与えずに化粧品を効率的に除去できるはずである。極細繊維は、不織布の表面積の約20%を占めなければならない。
【0009】
特許文献2によれば、不織ウェブすなわち不織布の柔軟性を、例えば不織ウェブを徐々に引張るなどの機械による後処理で改善することができる。これは、少なくとも所定の角度に対して互いに相補的な3次元表面を有する対向した圧力アプリケータを用いて、または装置の横断方向に基材が非弾性の不織布を永久的に伸長して達成することができる。しかしながら、このような不織布は、耐摩耗性が比較的低く、使用中にほつれ易い。特許文献3によれば、この欠点は、熱接着で少なくとも30%が結合された不織ウェブで克服することができる。不織ウェブの柔軟性は、この改善による影響を受けないはずである。
【0010】
加えて、特許文献4に開示されているように、結合パターンを用いて、柔軟性を維持したまま不織布の耐摩耗性を改善することができる。
【0011】
特許文献5によれば、織布または紙を用いたパッドに比べて皮膚に対するざらつきが少なく、綿を用いた不織ワイプよりも強度が高く柔軟性が改善されたワイプは、基本質量が20g/m2〜130g/m2の不織ウェブで製造することができる。このようなワイプは、所定の摩擦係数を有するように水絡み合せ(hydroentangling)またはニードルパンチによって製造しなければならない。
【0012】
特許文献6に、皮膚科用の化粧シート製品が開示されている。この製品は、有効成分の吸収率が高く、吸収した有効成分を良好に放出し、柔軟性と強度が適度に組み合わせられている。この柔軟な不織繊維化粧用ワイプ材料は、不織繊維層材料が基材層に接着された、基材から少なくとも0.5mmのZ方向ロフトを有する不織繊維層を含まなければならない。このZ方向ロフトは、基材に対して不織繊維層が接着した部分間の弧状部分によって形成される。この弧状部分は、ワイプのワイピング断面積の20%〜99%を占める。このようなワイプは、広範な不織布または不織繊維から製造することができ、インチ当たり少なくとも2つのクリンプを有するコンジュゲート繊維や、特許文献7によって要求されるような繊維の全ての交差部が接着された不織布を使用しなくても良い。特許文献7によれば、圧縮しにくく、かつ物理的強度及び耐磨耗性が高い一般用及び工業用のパッドを得るには、かなり複雑な特殊な要求を満たさなければならない。
【0013】
特許文献8に従えば、メルトブローン(meltblown)不織ワイプもパーソナルケアに用いるのに適している。
【0014】
特許文献5によれば、不織ウェブの基本質量は20g/m2〜130g/m2であり、スキンクレンジングワイプとして適するように水絡み合せ(hydroentangling)またはニードルパンチで製造しなければならない。
【0015】
特許文献9によれば、ニードルパンチ不織布は、60wt%〜90wt%の長さが2.54cm〜15.32cmのリヨセル繊維、10wt%〜40wt%の長さが2.54cm〜15.32cmのポリエステル繊維、及び0wt%〜30wt%の他の織物繊維からなる。リヨセル繊維は、繊維状構造にされる前は0.75デニール〜6デニールの範囲の値を有する。不織布は、カーディング、クロスラッピング、及びニードルパンチで製造することができる。特に好ましい繊維には、けん縮されたリヨセル繊維及びポリエステル繊維が含まれる。しかしながら、特許文献9に従ったファブリックは、やや粗く硬めであり、柔軟性及び嵩(厚み)が不足している。特許文献9に開示されているファブリックは、特許文献10に開示されているように主に自動車用及びバッテリー用に利用されている。
【0016】
また、床掃除用ワイプの不織布基材が良く用いられている。特許文献11では、このような床掃除用ワイプは、エマルジョンではない液状配合物が含浸された不水溶性基材として記載されている。不水溶性基材は、ポリエステル不織布の第1の層とニードルパンチセルロース不織布の第2の層からなる。
【0017】
特許文献12に、皿洗い用の洗浄ワイプが開示されている。この不水溶性基材は、ポリプロピレン繊維の粗い繊維からなる上層と、セルロース繊維からなる吸収性中心層と、例えばポリエステル繊維の細い繊維からなる下層から構成されている。中心の吸収層だけに、界面活性剤、可溶化剤、及び防腐剤に加えて水溶性セルロースポリマーを含む洗浄用組成物が含浸されている。
【0018】
特許文献13に開示されている化粧用ワイプは、C12-30カルボン酸モノグリセリドまたはC12-30カルボン酸ジグリセリドを含むPIT乳剤とすることもできる水中油型乳剤が含浸されている。シート材料は、木材パルプ、ポリオレフィン、ポリエステル、またはポリアミド繊維などの不織布から形成されるのが好ましい。好ましくは、セルロースパルプと接着剤の混合物を用いる。この不織シート材料は、エアーレイイング(airlaying)、ウェットレイイング(wetlaying)、またはカーディングなどの様々な製法で製造することができる。特許文献13に従ったワイプは、柔軟であってワイプ使用後に柔らかい感触を与えるため、最終製品または原料として用いる繊維に特殊な繊維柔軟材を添加しなくても良い。
【0019】
特許文献14は、マイクロステープル繊維及び第2の吸収性ステープル繊維からなる不織布洗浄用ワイプが記載されている。マイクロステープル繊維は、少なくとも2種類のポリマーからなる多成分スプリット繊維であり、第2のステープル繊維は、合成繊維スピニングによってビスコースリヨセル繊維から製造される。このような洗浄用ワイプが2つ以上の不織層からなる場合は、これらの層は、絡み合わせ、積層、またはニードルパンチによって結合される。このような洗浄用ワイプは、耐磨耗性及び汚れの吸収率が高く強度も高い。
【0020】
従来の不織ワイプ材料に関連した問題は、構造を維持するのに適していないため、ローションを含んだり湿ったりすると形が崩れる。加えて、大量の材料を使用しなくても、皮膚をこすった時に柔らかい肌触りを損なわない不織布に達するのが望ましい。
【特許文献1】特開2003‐095868号公報
【特許文献2】米国特許第5,626,571号明細書
【特許文献3】国際公開第02/31245号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5,964,742号明細書
【特許文献5】欧州特許第750062 A1号明細書
【特許文献6】国際公開第03/022116号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5,605,749号明細書
【特許文献8】米国特許第4,775,582号明細書
【特許文献9】米国特許第5,928,973号明細書
【特許文献10】国際公開第96/13071号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/050230号パンフレット
【特許文献12】米国特許第6,569,828 B1号明細書
【特許文献13】国際公開第02/072052号パンフレット
【特許文献14】独国特許第19917275 B4号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、眼の周りの皮膚などの敏感な部分であっても化粧品を適用するのに適し、嵩(厚み)があって柔らかく皮膚に刺激を与えず、効率的にメイク落としができ、かつ繊維がほぐれずに皮膚に化粧用及び皮膚科用ローションを適用するのに適し、更にローションを含んだ場合や除去したメイクを含んだ場合に元の構造を維持できるパッドなどの吸収製品を提供することにある。
【0022】
本発明の更なる目的は、特に、美容用及び皮膚科用のローションなどの液体を含んだ後にこのような液体を保持するのに優れ、このような液体が重力によって下方に移動するのを防止する吸収製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、少なくとも1つの不織吸収シートを含む美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品に関する。この不織吸収シートは、リヨセル繊維を10wt%〜100wt%、他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも1つを0wt%〜90wt%含む。このリヨセル繊維は、0.5dtex〜3.5dtexの範囲の繊度を有する。この吸収シートは、20g/m2〜500g/m2の範囲の基本質量を有する。機械方向及び横断方向の引張り強度が5 N/5cm〜1000 N/5cmの範囲である。
【0024】
吸収シートは、リヨセル繊維を30wt%〜90wt%、特に40wt%〜80wt%、他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維、特に合成繊維を10wt%〜70wt%、特に20wt%〜60wt%含むのが好ましい。
【0025】
別の好適な実施形態では、吸収シートは、リヨセル繊維を10wt%〜50wt%、特に10wt%〜40wt%、綿から製造されるのが好ましい天然繊維を10wt%〜40wt%、そして半合成繊維及び/または合成繊維を10wt%〜80wt%、特に20wt%〜80wt%含む。
【0026】
本発明の別の態様に従えば、天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも一部が、特に、少なくとも1つの永久親水性表面を有する吸収製品が提供される。
【0027】
また、吸収シートが、天然繊維を10wt%〜90wt%、特に30wt%〜70wt%、特に少なくとも1つの永久親水性表面を有する少なくとも一部を含む半合成繊維及び/または合成繊維を10wt%〜90wt%、特に20wt%〜60wt%、そしてポリエステル繊維を0wt%〜50wt%、特に10wt%〜30wt%を含むのが好ましい。
【0028】
本発明のある実施形態では、吸収シートは、ウェブ製造法であるカーディング及びウェブ接着法であるニードルパンチによって形成され、カードされた繊維がニードルパンチの前にクロスラップされる。
【0029】
合成繊維がポリエステル繊維、特にPET繊維を含むのが特に好ましい。
【0030】
更に別の実施形態では、吸収シートの繊維の少なくとも一部が、2.5dtex未満、好ましくは2.0dtex未満、より好ましくは1.3dtex以下の繊度を有する。
【0031】
本発明の別の好適な実施形態に従えば、吸収シートは、0.4mm〜5mm、好ましくは1.5mm〜3mm、より好ましくは1.8mm〜2.8mmの範囲の厚みを有する。
【0032】
別の好適な実施形態に従えば、吸収シートは、リヨセル繊維を50wt%〜65wt%、ポリエステル繊維を35wt%〜50wt%含み、これらの繊維が共に、1.7dtex、好ましくは1.4dtex以下の繊度を有する
【0033】
本発明の別の好適な態様では、吸収シートの基本質量は、30g/m2〜400g/m2、好ましくは50g/m2〜250g/m2、より好ましくは150g/m2〜200g/m2の範囲である。
【0034】
別の態様では、吸収シートの引張り強度は、機械方向及び横断方向において、20 N/5cm〜800 N/5cm、好ましくは80 N/5cm〜400 N/5cm、より好ましくは100 N/5cm〜250 N/5cmの範囲である。
【0035】
別の実施形態に従えば、吸収シートの伸長率は、20%〜160%、好ましくは70%〜120%、より好ましくは80%〜100%の範囲である。
【0036】
更なる態様に従えば、吸収製品、特に吸収シートのカワバタ検査による曲げトルクが、特に機械方向及び横断方向の両方において、0.20 g×cm以下、好ましくは0.17 g×cm以下、より好ましくは0.15 g×cm以下である。
【0037】
少なくとも1つの吸収シートの少なくとも1つの表面が、少なくとも1つの3次元表面パターン、特に少なくとも1つのエンボス加工を含むのが特に好ましい。
【0038】
吸収製品の3次元表面パターンを、ニードルパンチ法によって形成することができる。例えば、単位面積当たりのニードル密度、ニードルを刺入する深さ、強度、及び/またはニードルの大きさ、及び/または隆起または下降した領域のパターンの形状の変更によって、様々な3次元パターンを形成することができる。更に、吸収製品の表面のこのような構造またはパターンの形成は、カレンダーロール法(calendar roles)及びエンボス加工技術を用いて達成することができる。
【0039】
本発明の好適な実施形態では、吸収シートは0.09 g/cm3未満の密度を有する。
【0040】
更に、吸収製品は、美容用及び/または皮膚科用のパッド、タオル、ペーパータオル(towelette)、ティッシュ、ワイプ、またはこれらの一部の形態にすることができる。
【0041】
別の好適な実施形態では、本発明に従った吸収製品は更に、美容用または皮膚科用のクレンジング及び/またはスキンケア組成物を含む。
【0042】
別の態様に従った吸収製品組立体は、少なくとも部分的に直接または間接的に互いに重ねられ、特に少なくとも1つのスタックに整列されたまたはロール上に配置された、本発明に従った2つ、3つ、またはそれ以上の吸収製品を含む。
【発明の効果】
【0043】
眼の周りの皮膚などの敏感な部分であっても化粧品を適用するのに適し、嵩(厚み)があって柔らかく皮膚に刺激を与えず、効率的にメイク落としができ、かつ繊維がほぐれずに皮膚に化粧用及び皮膚科用ローションを適用するのに適し、更にローションを含んだ場合や除去したメイクを含んだ場合に元の構造を維持できるパッドなどの吸収製品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いるパーセント表示は、特段の記載がない限り重量パーセント(w/w)を使用する。
【0045】
本発明は、詳細を後述する少なくとも1つの不織布吸収シートを含む美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品に関する。不織吸収シートは、約10wt%〜約100wt%、好ましくは約30wt%〜約90wt%、より好ましくは約40wt%〜約80wt%のリヨセル繊維と、約0wt%〜約90wt%、好ましくは約10wt%〜約70wt%、より好ましくは約20wt%〜約60wt%の他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも1つを含む。
【0046】
不織吸収シートが、例えば、約50wt%のリヨセル繊維と、約50wt%のポリエステル繊維(特にPET繊維)を含む場合、好ましい柔軟性、強度、及び曲げ特性が得られる。
【0047】
リヨセルは、1996年に連邦取引委員会(Federal Trade Commission)が認めたジェネリック繊維の名称である。リヨセルは、いわゆる合成繊維としての特徴を有する。リヨセルは木材パルプから製造されるためセルロースが主成分であり、例えばN‐メチルモルフォリン‐N‐オキシドなどの水溶性第3級アミンN‐オキシドに溶解したセルロース溶液を好適なダイを介して水溶性凝固槽内に押し出して単繊維の集合体を製造して得られる(溶媒スピニング法(solvent spinning))。このような単繊維を水で洗浄して溶媒を除去し、乾燥させる。例えば米国特許第5,094,690号に従えば、セルロースは第3級アミンオキシドの水溶液に懸濁し、撹拌しながら90℃〜120℃の温度に加熱する。
【0048】
リヨセルは、多くの点でレーヨンよりも綿に類似している。しかしながら、ビスコースなどの他のセルロース繊維と同様に、呼吸性かつ吸収性であり、着心地が良いのが普通である。リヨセルは、高い湿潤強度を有する。
【0049】
リヨセル繊維は、例えば、Tencel(商標)(アコーディス・セルローシック・ファイバーズ(Acordis Cellulosic Fibers))またはLenzing lyocell(商標)(レンジング・ファイバーズ(Lenzing Fibers))として販売されている。
【0050】
一般に、本発明に有用な天然材料には、絹、ケラチン(keratine)、及びセルロース繊維が含まれる。リヨセル繊維と共に使用できる好適な天然繊維は、例えば、綿、羊毛、絹、リネン、シサル麻、大麻、ちょ麻、亜麻、黄麻、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0051】
好適な半合成繊維は、例えば、特にビスコース、キュプラ(cupro)、及び/またはモダール(modal)などの再生セルロース、ポリ乳酸、アルギン酸塩、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。特に、再生セルロース様ビスコースが好適である。
【0052】
本発明に有用な合成繊維材料は、限定するものではないが、アセテート繊維、アラミド繊維(aramide fibers)、ナイロンなどのポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維などのポリエステル繊維、ポリプロピレン及びポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリウレタン繊維またはフォーム、及びこれらの組合せからなる群から選択される。好適な合成繊維には更に、PE/PET繊維またはPP/PE繊維などの2成分または3成分繊維が含まれる。このような繊維は、いわゆるコア型、シース型、並列型、またはアイランド・イン・ザ・シー型(island-in-the-sea-type)の繊維とすることができる。
【0053】
本発明に従った吸収製品の好適な実施形態は、リヨセル繊維とは別に、少なくとも一部が、特殊な永久親水性表面を有する繊維も含む。このような特殊な永久親水性表面は、例えば、上記したような天然繊維、半合成繊維、または合成繊維をコーティングして得ることができる。このような繊維には、特殊な永久親水性仕上げされた、例えば、ナイロンなどのポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維などのポリエステル繊維、ポリプロピレン及びポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、PE/PET繊維またはPP/PE繊維などの2成分または3成分繊維、ビスコース繊維、綿繊維、羊毛繊維、絹繊維、リネン繊維、シサル麻繊維、大麻繊維、ちょ麻繊維、亜麻繊維、黄麻繊維、及びこれらの組合せが含まれる。
【0054】
このような永久親水性仕上げは、例えば、国際特許出願第96/33303号に従って得ることができる。具体的には、ポリジオルガノシロキサンを含む少なくとも1種類の親水性潤滑剤を含む第1のスピン仕上げを適用し、延ばした後にこの第1のスピン仕上げに、ポリジオルガノシロキサンを含む少なくとも1つの陽イオン帯電防止剤を含む第2のスピンフィニッシュが適用される。また、国際特許出願第97/00351号に従えば、永久親水性表面仕上げされた繊維は、ポリオキシエチレンジエステル及びポリアルキレンジエステルの反復部分を有する親水性コポリエステル、及び一方の末端または両末端がアルキル基またはエステル基でエンドキャップされた酸化ポリプロピレンポリマーを含む水溶性分散物と用いて得ることができる。前記ポリマーは、4つ以上の酸化プロピレン単位を有し、平均分子量が少なくとも約300である。加えて、永久親水性仕上げの組成物も開示されている。この組成物は、有機溶媒、ポリオキシエチレンジエステル及びポリアルキレンジエステルの反復部分を有する親水性コポリエステル、及び一方の末端または両末端がアルキル基またはエステル基でエンドキャップされた酸化ポリプロピレンポリマーを含む混合物を含む。前記ポリマーは、4つ以上の酸化プロピレン単位を有し、平均分子量が少なくとも約300である。更に、国際特許出願第97/00351号に、ポリオキシエチレンジエステル及びポリアルキレンジエステルの反復部分を有する親水性コポリエステル、及び平均分子量が1100を超えるポリプロピレングリコールを含む分散物が開示されている。加えて、前記国際特許出願第97/00351号に、有機溶媒、ポリオキシエチレンジエステル及びポリアルキレンジエステルの反復部分を有する親水性コポリエステル、及び平均分子量が1100を超えるポリプロピレングリコールを含む混合物も開示されている。
【0055】
これに加えて或いは別法では、合成繊維材料は、製造後に、繊維材料内に分散した親水性化合物が繊維の表面に移動して特殊な永久親水性繊維仕上げが形成されるのが好ましい。例えば、ポリエステル繊維、特にPET繊維、ポリプロピレン繊維、及び上記した2成分繊維は、このような特殊な永久親水性仕上げの主成分またはコア材料として特に好ましい。
【0056】
国際特許出願第98/42898号に従えば、永久親水性繊維表面は、ポリオレフィンと、カルボシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、オキサゾリン基、イミダゾリン基、エポキシド基、イソシアネート基、エステル基、エーテル基、アミド基、アルカノールアミン基、及びアルカノールアミド基などの極性残基を有する化合物などの移動可能な両親媒性物質と、鉛塩、ニッケル塩、ジルコニウム塩、クロム塩、チタン塩、及びスズ塩などのからなる群から選択される遷移金属化合物を含む混合物の押出し、カレンダリング、または射出成形によって形成することができる。また、米国特許第6,699,922号(B2)に従えば、永久親水性表面を備えた不織布は、有効量のポリエチレングリコールのジ‐C10-12脂肪酸エステルを含むポリマーからなる合成繊維から製造することができる。
【0057】
永久親水性仕上げされた好適なポリエステル繊維は、例えば、Hydrofix(登録商標)(デュポン社(DuPont))として販売されている。永久親水性仕上げされた好適なポリプロピレン繊維は、例えば、Hyentangle WA(商標)(ファイバー・ビジョンズ社(Fiber Visions))として販売されている。
【0058】
具体的には、このように表面処理された天然繊維、半合成繊維、及び合成繊維の仕上げ面の実質的に全体に特殊な永久親水性仕上げが形成される。
【0059】
少なくとも一部が特殊な永久親水性仕上げされた上記した繊維は、リヨセル繊維だけと混紡して、または上記した天然繊維、半合成繊維、または合成繊維の任意の繊維、またはこれらの組合せとリヨセル繊維を混紡して、本発明に従った吸収シートを形成することができる。特殊な永久親水性表面を有する繊維を含むこのような吸収製品は、その吸収製品内に適用されたまたは含浸された液体が重力によりその製品から下方に移動するのを防止するのに特に適している。特に、リヨセル繊維以外の本発明に従ったこのような吸収製品は、永久親水性表面を有する繊維を含むのが好ましい。このような永久親水性表面を有する繊維は、通常は、たとえ水分に曝されたり水で洗浄したりしても親水性特性を維持する。例えば、親水性表面またはコーティングの永久性は、EDANA標準法ERT150.2‐93によって決定することができる。また、例えば国際特許出願第96/33303号に開示されているように、変更EDANA法を用いることもできる。標準法に比べて変更法では、吸収製品の全く同じ点に対して3回の裏抜け測定を行う。吸収製品は、検査中に拭き取ったり乾燥させたりしない。3回の連続検査の後、各検査について測定値の平均値及び標準偏差を求める。永久親水性表面/コーティングとして分類するために、3回目の裏抜き時間を、最大20秒、好ましくは最大10秒、より好ましくは最大5秒とすべきである。別法では、親水性表面の永久性は、例えばEDANA法ERT151.0‐93によって測定する再湿潤特性によって決定することができる。具体的には、完全に濡れた羊毛に4kgの荷重をかけて重ねられた乾燥濾紙に逆流する流体の量(グラム)を測定する。また、吸収性及び保持特性は、EDANA 10.3‐99の検査で決定することができる。後者の検査では、特にパッドまたはワイプの形態の本発明の吸収製品は、水では最大1200wt%以上、特に安定した油/水ローションでは最大1500wt%以上の吸収率及び保持力を示し、少なくとも吸収製品への接触では相の分離は肉眼では確認されなかった。
【0060】
永久親水性表面を有する本発明に従った吸収製品は、この吸収製品内の所望の部分に導入された液体またはローションを保持するのに特に適している。例えば、スキンケア組成物を導入して個々の吸収製品を積み重ねたとしても、スキンケア組成物はそれぞれの吸収製品内に維持されて下方に移動しないため、時間が経過しても、積層された上部の吸収製品が乾燥して下部の吸収製品がスキンケアローションでびしょ濡れになることがない。
【0061】
本発明の永久親水性表面は、水分に繰り返し曝されたり水で洗浄されたりしてもその親水性が失われない表面と定義することができる。
【0062】
本発明に従った吸収製品は単層または複層とすることができる。例えば、ここに開示した2つ、3つ、またはそれ以上の不織吸収シートから形成することができる。これに加えて或いは別法では、不織吸収シート自体は単層または複層とし、例えば2つ、3つ、またはそれ以上のシートを個々に含むことができる。
【0063】
繊維または長繊維がランダムにまたは所定の方向に配置された繊維または長繊維からなるウェブ構造を有する不織材料が特に好ましい。不織ウェブ構造は、エアーレイイング法(airlaying)またはある種のウェットレイイング法(wetlaying)によって形成することができる。少なくとも部分的に方向性を有する不織ウェブ構造は、他のウェットレイイング法またはカーディング法で形成することができる。一般に、吸収シートは、カーディング法、スパンボンド法、メルトブローイング法(meltblowing)、エアーレイイング法、及びウェットレイイング法からなる群から選択されるウェブ製造方法で製造することができる。最終吸収シートを製造する不織材料は少なくとも一定の方向性を有するのが特に好ましい。このような方向性を有する不織材料はカーディング法で製造するのが好ましい。
【0064】
カードされた不織ウェブ材料の繊維は、主に装置の方向に向き、装置の横断方向に向かないのが好ましい。
【0065】
複層シート材料は、請求項1の内容に適合した1つの吸収シートであって、同じまたは異なった不織材料の2つ以上の層及び/または他の製造方法で得た層を含むと定義する。この不織吸収シートは、複層シート材料の上部層及び/または下部層を構成するのが最も好ましい。
【0066】
本発明の別の態様に従えば、複層シート材料は、ニードルパンチ、樹脂接着、化学接着、熱接着、水絡み合せ(hydroentanglement)、またはこれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1つの繊維接着法によって形成するのが好ましい。最も好適なこのような複層シート材料は、上記した方法により近接して整合したシート/層が互いに接合される水絡み合わせ及び/またはニードルパンチによって製造することができる。
【0067】
水絡み合わせ法では、通常は支持体に保持された不織基材に向かって多数の極細のウォータージェットが噴射される。このようなウォータージェットの代わり、または同時に加圧空気ジェットを用いることもできる。
【0068】
ウェブ形成ステップの前に、不織材料をクロスラップ(cross-lap)するのが特に好ましい。このようなクロスラップは、当業者に周知である。例えば、カードされたウェブ材料がベルトまたはキャリヤに載せられている時に、このウェブ材料を前後に移動させると共にその下側前部をこの前後方向に対して垂直に引張って、ウェブ材料をZ状に重ね合わせる。
【0069】
ニードルパンチ法の場合、1または複数のニードル織機が用いられ、カードされた繊維のウェブなどの緩い繊維のウェブが緊密な不織布にされる。ニードルパンチにより繊維がそのウェブに亘って機械的に方向が合わせられる。ニードルは、例えばニードルボードまたはニードル織機などのニードル器具に、非線形に配置することができる。ニードルパンチステップでは、少なくとも1つのニードル器具を用いるのが好ましい。このようなニードル器具は、dm2当たり約50〜300、好ましくは70〜250、より好ましくは90〜110の範囲のニードルを有する。好適な実施形態では、ベッドに付与されるエネルギーが可能な限り小さく、好ましくは接着物質を用いなくても離層しない接着されたウェブ組織が得られるように、1分当たりのストローク、織機当たりのニードル数、パッドの前進速度、及び特にニードルの刺入の程度が調整される。
【0070】
ニードルパンチ法を用いることにより、柔軟性及び嵩(厚み)の点で優れたリヨセル繊維を用いて強度の高いウェブを得ることができる。
【0071】
本発明に従った吸収製品と共に使用するリヨセル繊維は、0.5dtex〜3.4dtex、好ましくは2.5dtex未満、より好ましくは2.0dtex未満、更に好ましくは1.7dtex未満、特に1.4dtex未満の範囲の繊度を有する繊維が好ましい。リヨセル繊維だけでなく天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維も、同じ一般的及び好適な繊度範囲になるように不織吸収シートに使用するのが特に好ましい。
【0072】
具体的には、本発明に従った吸収製品の吸収シートは、基本質量が20g/m2〜500g/m2、好ましくは30g/m2〜400g/m2、より好ましくは50g/m2〜250g/m2、特に150g/m2〜200g/m2の範囲である。
【0073】
更に、本吸収シートは、機械方向及び横断方向において5〜1000 N/5cmの範囲の引張り強度を有する。好ましい引張り強度の値は、20 N/5cm〜800 N/5cm、より好ましくは80 N/5cm〜400 N/5cm、更に好ましくは100 N/5cm〜250 N/5cmの範囲である。
【0074】
本吸収シートは、機械強度が優れており、特に湿潤強度は満足できるものである。従って、本発明に従った吸収製品は、濡れても形が崩れず、シート材料の嵩(厚み)が減らずにエマルジョンやローションなどのスキンケア組成物または落としたメイク及び/または老廃物を十分な量、吸収することができる。
【0075】
様々な用途に対して0.4mm〜5mmの範囲の厚みの吸収シートで通常は十分であることが分かった。たとえ1.5mm〜3mm、より好ましくは1.8mm〜2.8mmの厚みでも、皮膚に対して柔軟な感触及び嵩(厚み)を達成することができる。従って、繊維、特にリヨセルを過剰に用いずにこのような感覚を得ることができる。
【0076】
本発明の吸収製品は、柔軟性と強度の点で優れている。具体的には、このような吸収材料の柔軟な感覚及び曲げ易さにより、乾燥した状態またはローションを含んだ状態で皮膚に使用する際に好ましい印象を与える。吸収製品、特に吸収製品に使用される吸収シートは、曲げトルクが0.2g×cm以下、好ましくは0.17g×cm以下、特に0.15g×cm以下であるのが最適である。このような吸収製品は、柔軟性が機械方向及び横断方向における上記した曲げトルク範囲を満たすという点で特に優れていることが分かった。
【0077】
本発明における曲げトルクは、カワバタKES‐FB2純粋曲げテスター(Kawabata KES-FB2 pure bending tester)で測定する。このカワバタ曲げ検査は、不織材料または他の繊維材料の基本的な機械特性を測定するようにデザインされたカワバタ・システムの一部である。この検査では、曲げトルクは、少なくとも3つのサンプルの結果を集め、その3つの検査結果の平均から求められる。このサンプルの大きさは8.9cm×8.9cmである。更に、較正質量は50gであり、器具の感度は5×1に等しい。前側移動ジョーと後側移動ジョーとの間隙は1cmに設定されている。サンプルには側面方向がない。各測定には4つの曲げサイクルがある。各サイクルの曲率は、0cm-1、+2.5cm-1、−2.5cm-1、0cm-1に等しい。サイクルの速度は、0.5cm-1/秒であり、測定回数は8に設定されている。曲げトルク(g×cm)は、曲率(1/cm カーブ)に対してモーメント(g×cm/cm)が約0.5cm-1〜1.5cm-1の範囲にある線形回帰線の傾斜を表す。
【0078】
一般に、本発明のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品を、オムツ、生理用ナプキン、パンティーライナー、赤ちゃん用ワイプ、クレンジング用ワイプ、ウェットワイプ、絆創膏、及び包帯などの様々な用途に広く用いることができる。
【0079】
不織布に対してここで用いる用語「機械方向」は、例えば市販の不織布製装置で不織ウェブが製造される時にそのウェブが移動する方向を指す。同様に、用語「横断方向」は、機械方向に垂直なウェブの平面の方向を指す。
【0080】
ここで用いる用語「基本質量」は、吸収製品または不織吸収シートの単位面積当たりの質量を指す。基本質量の単位には、通常はg/m2が用いられる。
【0081】
驚くべきことに、添付の特許請求の範囲で請求した最終製品により、美容用及び皮膚科用の極めて有利なパッド材料が得られることが分かった。このシート材料は、乾燥状態またはスキンケア組成物を含んだ状態にかかわらず、皮膚に対する柔軟性が高いが、極めて緊密で高い機械強度を有するため掴み易い。また、吸収製品の吸収シートの有利な曲げ特性により、優れた柔軟性が実現されている。特に、本発明に従った比較的薄いシート状吸収製品であっても、パッド製品を保持して移動させる指を皮膚で感じない。例えばコットンパッドとは異なり、たとえ強く擦っても、本発明の吸収製品では全く毛羽が立たないという大きな利点がある。更に、吸収製品はその形状を維持し、使用中に複数の部分或いは層に分離しない。その柔軟性及び機械強度により、皮膚を擦らなくても、吸収製品を用いた1回のステップでメイクを落とすことができる。従って、本発明の吸収製品により、眼の周りなどの敏感な皮膚が引張られたり損傷を受けたりするのが防止される。従って、本発明の吸収製品を用いれば、メイク、たとえ防水マスカラなどの防水メイクであっても優しく軽く落とすことができるという全体的な印象である。更に、このような製品には糸くずのようなものが全く見られない。
【0082】
本発明の吸収製品では、この製品に導入された如何なる液体やローションも重力によってこの製品内を移動することがなく、たとえ長期間保管したとしても初めに導入された深さに維持されるという驚くべき事実が分かった。
【0083】
本発明に従った吸収製品の吸収シートの製造について以下に詳細に説明する。
【0084】
繊維の芯が開いてそれぞれの繊維が実質的に自由で機械方向に向きが合わせられるカーディングステップの前に、レンジング社(Lenzing)のリヨセル繊維60wt%とトレビラ社(Trevira)のポリエチレンテレフタレート(PET)40wt%を混合した。リヨセル繊維及びPET繊維の両方は、1.3dtexの繊度を有する。dtexは10,000mの長さの単繊維の質量を指す。つまり、上記した繊維10,000mの質量は1.3gである。次いで、この繊維をロール上を前進させて、強化される前の約10cmの深さの軽量の不織層を設ける。この不織層を、いわゆるクロスラッパー(cross-lapper)でクロスラップする。最終製品の重さによって、不織層をクロスラッパーの中に1回、2回、または数回と積み重ねる。同時に、積層した不織材料がその底端部から垂直方向に引張られて積層不織材料がZ状構造になり、クロスラッパーから引き離される。次いで、クロスラップ不織材料を、1cm2当たり約100のニードルを備えた少なくとも1つのニードルボードを有する1または複数のニードルパンチユニットに送る。針の付いたニードルで繊維をパンチしてパッドにし、繊維を絡み合わせる。このニードルパンチ工程の最後で、強化された不織シート材料を、例えばパッドやワイプに切断する。例えば、1分当たりのストローク、1つのニードルボードのニードル数、及びニードルの刺入深さなどのパラメータにより、得られる不織吸収シートの柔軟性を調節することができる。
【0085】
上記した方法と同様の方法で、20wt%の綿繊維、20wt%のリヨセル繊維、及び60wt%のPET繊維を含む不織吸収シートを製造した。
【0086】
更に、比較のために、(a)70wt%のビスコース繊維及び30wt%のPET繊維(それぞれの繊度は1.7dtex)、(b)60wt%の綿繊維及び40wt%のPET繊維(米国細綿、PETの繊度は1.3dtex)、及び(c)100wt%の綿繊維(米国細綿)を用いて上記した方法に従ってシート材料を製造した。検査結果を以下の表に示す。
【表1】

【0087】
上の表から分かるように、本発明に従った吸収製品は比較のシート材料よりも基本質量が小さいが、機械方向の引張り強度及び横断方向の引張り強度が高い。更に、少ない材料で厚いパッドを製造することができる。加えて、本発明に従った極薄シートであっても、同じ厚みの従来のパッド材料では得ることができなかった柔軟な感触と厚みを実現することができる。また、本発明に従った吸収製品は吸収特性が優れている。
【0088】
本発明の吸収製品の別の主な利点は、特に繊維が永久親水性表面を有する場合に、多量の液体またはローションを容易に吸収及び維持するだけでなく、この製品に染み込んだスキンケア組成物及び/またはクレンジング組成物を十分な量、放出できることである。吸収率及び保持特性は、例えば、EDANA 10.3‐99の検査で決定することができる。この検査では、通常は10cm×10cmの繊維標本を液体槽で浸して飽和状態にする。次いで、この標本を垂直方向に保持して液体を2分間、滴下させてから、浸した標本の質量及び吸収された液体の量を決定する。
【0089】
例えば、上記した表の例2に従った基本質量が185g/m2、厚みが2.43mmの10cm×10cmの繊維パッドをEDANA 10.3‐99で検査すると、約1200wt%の水、約1200wt%〜1300wt%のローションを保持した。ローションについては後述する。更に、50wt%のリヨセル繊維(1.3dtex)、30wt%のPET繊維(1.3dtex)、及び20wt%の永久親水性表面を有するポリプロピレン繊維(HyEntangle WA;1.7dtex)を含み、上記した表のパッドとなるように製造された、基本質量が約185g/m2、厚みが約2.4mmの10cm×10cmの本発明に従った繊維パッドを上記したEDANAで検査した。その結果、約700wt%〜800wt%の水、約1400wt%〜1500wt%の後述するローションを保持できることが分かった。次いで、50wt%のリヨセル繊維(1.3dtex)、30wt%のPET繊維(1.3dtex)、及び20wt%の永久親水性表面を有するPET繊維(Hydrofix PET;1.7dtex)を含む、上記した表のパッドとなるように製造された、基本質量が約185g/m2、厚みが約2.4mmの10cm×10cmの本発明に従った繊維パッドを上記したEDANA検査した。その結果、約1000wt%〜1100wt%の水、約1400wt%の後述するローションを保持できることが分かった。EDANA検査に用いる上記した安定したローションは、水(73.395wt%)、EDTA 四ナトリウム(0.08wt%)、ココ・グルコシド(0.275wt%)、フェノキシエタノール(0.9wt%)、保存剤(ブチルパラベン、エチルパラベン、イソブチルパラベン、メチルパラベン、及びプロピルパラベンを含む)(0.3wt%)(Nipastatという名称で販売されている)、PITエマルジョン(10wt%)(水、セテアレス‐12、セテアレス‐20、セテアリルアルコール、イソノナン酸セテアリル、パルミチン酸セチル、グリセリン、及びステアリン酸グリセロール(また、Emulgade CMという名称で販売されており、セテアレス‐12は12エトキシ単位を有するエトキシル化セトステアリル(またはセテアリル)アルコールであり、セテアレス‐20は20エトキシ単位を有するエトキシル化セトステアリルアルコールである)、シクロペンタシロキサン(10wt%)、イソヘキサデカン(3wt%)、グリセリン(2wt%)、及びクエン酸(0.05wt%)を混合して得られる。
【0090】
上記した開示から、本発明の様々な改良形態及び変更形態が可能であることが明らかであろう。従って、添付の特許請求の範囲内で本発明をここに開示した以外の方法で実施できることを理解されたい。
【0091】
本発明の実施態様は以下の通りである。
(1)美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品であって、少なくとも1つの不織吸収シートを含み、この不織吸収シートが、
リヨセル繊維を10wt%〜100wt%、そして他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも1つを0wt%〜90wt%を含み、
前記リヨセル繊維が、0.5dtex〜3.5dtexの範囲の繊度を有し、
前記吸収シートが、20g/m2〜500g/m2の範囲の基本質量を有し、
機械方向及び横断方向の引張り強度が5 N/5cm〜1000 N/5cmの範囲であることを特徴とするパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品。
(2)前記吸収シートが、リヨセル繊維を30wt%〜90wt%、特に40wt%〜80wt%、そして他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維、特に合成繊維を10wt%〜70wt%、特に20wt%〜60wt%含むことを特徴とする実施態様(1)に記載の吸収製品。
(3)前記吸収シートが、リヨセル繊維を10wt%〜50wt%、特に10wt%〜40wt%、綿から製造されるのが好ましい天然繊維を10wt%〜40wt%、そして半合成繊維及び/または合成繊維を10wt%〜80wt%、特に20wt%〜80wt%含むことを特徴とする実施態様(1)に記載の吸収製品。
(4)前記天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも一部が、特に、少なくとも1つの永久親水性表面を含むことを特徴とする実施態様(1)乃至(3)の1つに記載の吸収製品。
(5)前記吸収シートが、天然繊維を10wt%〜90wt%、特に30wt%〜70wt%、特に少なくとも1つの永久親水性表面を有する部分を含む半合成繊維及び/または合成繊維を10wt%〜90wt%、特に20wt%〜60wt%、そしてポリエステル繊維を0wt%〜50wt%、特に10wt%〜30wt%含むことを特徴とする実施態様(4)に記載の吸収製品。
【0092】
(6)前記吸収シートが、ウェブ製造法であるカーディング及びウェブ接着法であるニードルパンチを用いて形成され、カードされた繊維がニードルパンチの前にクロスラップされることを特徴とする実施態様(1)乃至(5)の1つに記載の吸収製品。
(7)前記合成繊維がポリエステル繊維、特にPET繊維を含むことを特徴とする実施態様(1)乃至(6)の1つに記載の吸収製品。
(8)前記吸収シートの前記繊維が、2.5dtex未満、好ましくは2.0dtex未満、より好ましくは1.3dtex以下の繊度を有することを特徴とする実施態様(1)乃至(7)の1つに記載の吸収製品。
(9)前記吸収シートが、リヨセル繊維を50wt%〜65wt%、そしてポリエステル繊維を35wt%〜50wt%含み、これらの繊維が共に、1.7dtex、好ましくは1.4dtex以下の繊度を有することを特徴とする実施態様(1)乃至(8)の1つに記載の吸収製品。
(10)前記吸収シートが、0.4mm〜5mm、好ましくは1.5mm〜3mm、より好ましくは1.8mm〜2.8mmの範囲の厚みを有することを特徴とする実施態様(1)乃至(9)の1つに記載の吸収製品。
【0093】
(11)前記吸収シートの前記基本質量が、30g/m2〜400g/m2、好ましくは50g/m2〜250g/m2、より好ましくは150g/m2〜200g/m2の範囲であることを特徴とする実施態様(1)乃至(10)の1つに記載の吸収製品。
(12)前記吸収シートの前記引張り強度が、20 N/5cm〜800 N/5cm、好ましくは80 N/5cm〜400 N/5cm、より好ましくは100 N/5cm〜250 N/5cmの範囲であることを特徴とする実施態様(1)乃至(11)の1つに記載の吸収製品。
(13)前記吸収シートの伸長率が、20%〜160%、好ましくは70%〜120%、より好ましくは80%〜100%の範囲であることを特徴とする実施態様(1)乃至(12)の1つに記載の吸収製品。
(14)前記吸収製品、特に前記吸収シートのカワバタ検査による曲げトルクが、特に機械方向及び横断方向の両方において、0.20 g×cm以下、好ましくは0.17 g×cm以下、より好ましくは0.15 g×cm以下であることを特徴とする実施態様(1)乃至(13)の1つに記載の吸収製品。
(15)少なくとも1つの前記吸収シートの少なくとも1つの表面が、少なくとも1つの3次元表面パターン、特に少なくとも1つのエンボス加工を含むことを特徴とする実施態様(1)乃至(14)の1つに記載の吸収製品。
【0094】
(16)前記吸収シートが0.09 g/cm3未満の密度を有することを特徴とする実施態様(1)乃至(15)の1つに記載の吸収製品。
(17)前記製品が、美容用及び/または皮膚科用のパッド、タオル、ペーパータオル(towelette)、ティッシュ、ワイプ、またはこれらの一部であることを特徴とする実施態様(1)乃至(16)の1つに記載の吸収製品。
(18)更に、美容用及び/または皮膚科用のクレンジング及び/またはスキンケア組成物を含むことを特徴とする実施態様(1)乃至(17)の1つに記載の吸収製品。
(19)少なくとも部分的に直接または間接的に互いに重ねられ、特に少なくとも1つのスタックに整列されたまたはロール上に配置された、実施態様(1)乃至(18)の1つに従った2つ、3つ、またはそれ以上の前記吸収製品を含む吸収製品組立体。
(20)実施態様(1)乃至(18)の1つに従った吸収製品をパフ、パッド、ワイプ、ティッシュ、タオル、ペーパータオル(towelette)、スポンジ、ブラシ、綿ボール、グローブ、ミット、綿棒、またはこれらの一部として、美容用及び/または皮膚科用に、特に美容用及び/または皮膚科用の特にローションの形態のクレンジング及び/またはスキンケア組成物を配置するため、及び/または含ませるための基材として使用すること。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品であって、少なくとも1つの不織吸収シートを含み、この不織吸収シートが、
リヨセル繊維を10wt%〜100wt%、そして他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも1つを0wt%〜90wt%を含み、
前記リヨセル繊維が、0.5dtex〜3.5dtexの範囲の繊度を有し、
前記吸収シートが、20g/m2〜500g/m2の範囲の基本質量を有し、
機械方向及び横断方向の引張り強度が5 N/5cm〜1000 N/5cmの範囲であることを特徴とするパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品。
【請求項2】
前記吸収シートが、リヨセル繊維を30wt%〜90wt%、特に40wt%〜80wt%、そして他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維、特に合成繊維を10wt%〜70wt%、特に20wt%〜60wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の吸収製品。
【請求項3】
前記吸収シートが、リヨセル繊維を10wt%〜50wt%、特に10wt%〜40wt%、綿から製造されるのが好ましい天然繊維を10wt%〜40wt%、そして半合成繊維及び/または合成繊維を10wt%〜80wt%、特に20wt%〜80wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の吸収製品。
【請求項4】
前記天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも一部が、特に、少なくとも1つの永久親水性表面を含むことを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の吸収製品。
【請求項5】
前記吸収シートが、天然繊維を10wt%〜90wt%、特に30wt%〜70wt%、特に少なくとも1つの永久親水性表面を有する部分を含む半合成繊維及び/または合成繊維を10wt%〜90wt%、特に20wt%〜60wt%、そしてポリエステル繊維を0wt%〜50wt%、特に10wt%〜30wt%含むことを特徴とする請求項4に記載の吸収製品。
【請求項6】
前記吸収シートが、ウェブ製造法であるカーディング及びウェブ接着法であるニードルパンチを用いて形成され、カードされた繊維がニードルパンチの前にクロスラップされることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の吸収製品。
【請求項7】
前記合成繊維がポリエステル繊維、特にPET繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の吸収製品。
【請求項8】
前記吸収シートの前記繊維が、2.5dtex未満、好ましくは2.0dtex未満、より好ましくは1.3dtex以下の繊度を有することを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の吸収製品。
【請求項9】
前記吸収シートが、リヨセル繊維を50wt%〜65wt%、そしてポリエステル繊維を35wt%〜50wt%含み、これらの繊維が共に、1.7dtex、好ましくは1.4dtex以下の繊度を有することを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の吸収製品。
【請求項10】
前記吸収シートが、0.4mm〜5mm、好ましくは1.5mm〜3mm、より好ましくは1.8mm〜2.8mmの範囲の厚みを有することを特徴とする請求項1乃至9の1つに記載の吸収製品。
【請求項11】
前記吸収シートの前記基本質量が、30g/m2〜400g/m2、好ましくは50g/m2〜250g/m2、より好ましくは150g/m2〜200g/m2の範囲であることを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載の吸収製品。
【請求項12】
前記吸収シートの前記引張り強度が、20 N/5cm〜800 N/5cm、好ましくは80 N/5cm〜400 N/5cm、より好ましくは100 N/5cm〜250 N/5cmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載の吸収製品。
【請求項13】
前記吸収シートの伸長率が、20%〜160%、好ましくは70%〜120%、より好ましくは80%〜100%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載の吸収製品。
【請求項14】
前記吸収製品、特に前記吸収シートのカワバタ検査による曲げトルクが、特に機械方向及び横断方向の両方において、0.20 g×cm以下、好ましくは0.17 g×cm以下、より好ましくは0.15 g×cm以下であることを特徴とする請求項1乃至13の1つに記載の吸収製品。
【請求項15】
少なくとも1つの前記吸収シートの少なくとも1つの表面が、少なくとも1つの3次元表面パターン、特に少なくとも1つのエンボス加工を含むことを特徴とする請求項1乃至14の1つに記載の吸収製品。
【請求項16】
前記吸収シートが0.09 g/cm3未満の密度を有することを特徴とする請求項1乃至15の1つに記載の吸収製品。
【請求項17】
前記製品が、美容用及び/または皮膚科用のパッド、タオル、ペーパータオル(towelette)、ティッシュ、ワイプ、またはこれらの一部であることを特徴とする請求項1乃至16の1つに記載の吸収製品。
【請求項18】
更に、美容用及び/または皮膚科用のクレンジング及び/またはスキンケア組成物を含むことを特徴とする請求項1乃至17の1つに記載の吸収製品。
【請求項19】
少なくとも部分的に直接または間接的に互いに重ねられ、特に少なくとも1つのスタックに整列されたまたはロール上に配置された、請求項1乃至18の1つに従った2つ、3つ、またはそれ以上の前記吸収製品を含む吸収製品組立体。
【請求項20】
請求項1乃至18の1つに従った吸収製品をパフ、パッド、ワイプ、ティッシュ、タオル、ペーパータオル(towelette)、スポンジ、ブラシ、綿ボール、グローブ、ミット、綿棒、またはこれらの一部として、美容用及び/または皮膚科用に、特に美容用及び/または皮膚科用の特にローションの形態のクレンジング及び/またはスキンケア組成物を配置するため、及び/または含ませるための基材として使用すること。

【公開番号】特開2006−56875(P2006−56875A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−200538(P2005−200538)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(597046982)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ゲーエムベーハー (13)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Gmbh
【住所又は居所原語表記】Kaiserswerther Strasse 270,D−40474 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】