説明

少なくとも1つの機械補助ユニット用の駆動デバイス

【課題】 少なくとも1つの機械補助ユニット用の駆動デバイスを提供すること。
【解決手段】 ベルトを介して機械(VM)から機械補助ユニット(K、L、S/G)に機械駆動力を伝達するための機械補助ユニット(K、L、S/G)用の駆動デバイス(1)であって、少なくとも1つの機械補助ユニットが、電気機械(S/G)として提供され、電気機械(S/G)が、ポリVベルトによって駆動されるようにポリVベルト・プーリを有し、または歯付きベルトによって駆動されるように歯付きベルト・プーリを有する駆動デバイス(1)は、ベルトが、歯付き面(R)とポリV面(R)とを有し、面が、本質的に互いに反対に位置し、機械ベルト・プーリが、電気機械がポリVベルト・プーリを有する場合には機械駆動力を伝達する目的でベルトの歯付き面を駆動するように設計され、または、電気機械が歯付きベルト・プーリを有する場合にはポリVベルト・プーリとして設計されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による機械補助ユニット用の駆動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
機械、例えば自動車の内燃機関は、通常、電力を発生するための発電機、空調ユニット、パワー・ステアリングまたは水ポンプなど、様々な関連の機械補助ユニットを有する。これらの機械補助ユニットは、主に、ベルトを介して機械または内燃機関によって駆動され、そのために、例えば、内燃機関のクランクシャフトが、ベルトを駆動する目的でベルト・プーリを有し、次いで、そのベルトを介して、さらなる機械補助ユニットのベルト・プーリが機械的に結合される。したがって、機械補助ユニットは、内燃機関が回転するときに、ベルトを介して一緒に回転され、したがって駆動される。
【0003】
これに伴う1つの問題は、ベルトを介する機械から機械補助ユニットへの高いトルクの伝達である。例えば、この目的で、より幅広のベルトを提供することができるが、これは、対応する設置空間が利用可能である必要がある。さらに、ベルト張力を高めることもできるが、これは、それぞれの軸受に、より大きいレベルの負荷をかける。さらに、噛合ベルト、例えば歯付きベルトを使用することができるが、これは、結合された機械補助ユニットが電気機械または発電機である場合には特に不利である。特に、前記発電機の高い度合いの慣性により、機械の回転振動が生成されるので、ベルトが特に高いレベルの負荷を受けることがある。この問題は、特に、機械が内燃機関であり、そのクランクシャフトがベルトを駆動する場合に生じる。
【0004】
一般的なタイプを成す下記特許文献1は、クランクシャフトによって機械補助ユニットを駆動する目的で、ポリVベルト(poly−V−belt)を、対応するベルト・プーリと共に使用することを開示している。
【0005】
下記特許文献2は、Vベルトと歯付きベルトとを結合させたものを開示している。しかし、前記ベルトの使用に関して、前記文献は、Vベルトが、かなりの力を伝達するのに適しており、一方、歯付きベルトが、精密な制御運動を伝達するために提供されることしか述べていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE第10200686号明細書
【特許文献2】DE第1107033号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも1つが電気機械として提供される機械補助ユニット用の代替的な駆動デバイスを規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴によって実現される。従属請求項は、本発明の有利な改良形態および発展形態に関する。
【0009】
本発明は、ベルトを使用して、内燃機関と電気機械との機械的な結合を修正するという概念に基づく。すなわち、電気機械への力の伝達とは別に、ベルトの特別な構成によってベルトに力が導入される。歯システムを一方の面に提供され、他方の面がポリV面として設計されたベルトがこの目的で使用され、前記2つの面が実質的に互いに反対に位置する。電気機械がポリVベルト・プーリを有する場合、内燃機関のクランクシャフト・ベルト・プーリは、歯付きベルト・プーリとして設計されて、内燃機関の駆動力を伝達する目的でベルトの歯付き面を駆動する。対照的に、電気機械が歯付きベルト・プーリを有する場合、内燃機関のベルト・プーリは、ポリVベルト・プーリとして設計されて、内燃機関の駆動力を伝達する目的でベルトのポリV面を駆動する。ベルトの歯付き面と歯付きベルト・プーリとの噛合接続が、内燃機関または機械と電気機械との間での強いトルクの確実な伝達をもたらす。ベルトとポリVベルト・プーリとの間でトルクを伝達するためのベルトのポリV面の使用は、スリップにより生じ得る回転振動の高いレベルの減衰をもたらす。この場合、ベルトは、内燃機関または機械から電気機械にトルクを伝達すること(電気機械の発電機動作)も、電気機械から内燃機関または機械にトルクを伝達すること(電気機械のモータ動作)もできることは言うまでもない。したがって、Vベルトと歯付きベルトとの複合体(結合体)のこの新規の可能な使用法により、ベルトの脆弱化またはベルトによるノイズ発生をもたらす高いレベルの振動負荷を伴わずに、クランクシャフトと電気機械との間で高いトルクを確実に伝達することができる。代替形態として、ここで、ポリV面ではなく、別の適切な駆動ベルト面を有するベルトを選択することも可能であることは言うまでもない。
【0010】
本発明による駆動デバイスは、電気機械が、自動車での内燃機関の始動機/発電機として提供される場合に、特に有利である。この場合、電気機械は、モータ(始動機)としても、発電機としても動作させることができる。したがって、電気機械は、内燃機関から電気機械に、かつ電気機械から内燃機関にトルクを伝達することができることが必要である。電気機械が、内燃機関を始動することができるように適度に大きいサイズでなければならないので、対応して高いトルクも伝達される。特に、低温においてさえ、内燃機関を始動するときにベルトを介して高いトルクを確実に伝達できなければならない。これは、本発明による駆動デバイスによって確実に保証される。
【0011】
回転振動の問題は、主に、電気機械または発電機を結合するときに(その高い慣性モーメントのために)生じるので、本発明は、有利には、同様にベルトの歯付き面を使用する他の機械補助ユニットを駆動することを提案する。したがって、このタイプの機械補助ユニット、例えばパワー・ステアリング・ポンプまたは空調用圧縮機は、ベルトの歯付き面を介してクランクシャフトによってトルクを確実に供給される。
【0012】
好ましい実施形態では、さらに、ベルト・テンショナー(ベルト張力調整装置)として電気機械を使用することが提供される。このために、ベルトに張力を与えるために、ばねによって電気機械を調節することが特に提供される。その代替として、またその追加として、電気機械に関連付けられた2つの車輪が移動されることが提供される。これは、所望のベルト張力を保証できるようにする。
【0013】
本発明は、有利には、ベルトまたはベルト・プーリをクランクシャフトから結合解除する(decoupling)ためのクラッチを提供することを提案する。このタイプのクラッチは、例えば磁気クラッチとして設計され得る。これは、自動車が停止している、すなわち内燃機関がオフに切り替えられているときに、停止状態で空調を行うという利点を有する。このために、ベルトによって空調用圧縮機を駆動する目的で、始動機/発電機がモータとして動作される。したがって、クランクシャフトが係合解除されるので、それと共に内燃機関が回転する必要がない。さらなる利点は、蓄電池が完全に充電されているときに始動機/発電機を結合解除するというオプションである。したがって、例えば、電気的な空調構成が存在し、空調システムがオフに切り替えられるとき、ベルト駆動装置は、内燃機関から結合解除され、したがって、始動機/発電機を駆動する目的で追加のトルクは必要とされない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の特に好ましい実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。一つの図面は、本発明の特に好ましい実施形態を概略的に示す。
【0016】
前記図(図1)は、複数の機械補助ユニットK、L、S/G用の本発明による駆動デバイス1を例示する。駆動デバイス1は、機械VM、この場合には内燃機関によって駆動される。この目的で、内燃機関VMのクランクシャフトが、対応するベルト・プーリを有する。この内燃機関ベルト・プーリは、ベルトを介して、それぞれの機械補助ユニットK、L、S/Gのベルト・プーリを駆動する。この場合に提供される機械補助ユニットは、空調用圧縮機Kと、パワー・ステアリング・ポンプLと、始動機/発電機S/Gとである。さらに、偏向ローラ(a deflection roller)Uも提供される。ベルトは、この場合、歯付きベルト/駆動ベルト複合体である。このために、ベルトは、対応する歯システムを有する第1の面Rを有する。前記第1の面と反対のベルトの面Rが、駆動ベルト面として構成される。対応する高い力を伝達するために、前記面は、特にポリVベルト面として設計されてもよい。ベルトの第1の歯付き面Rは、クランクシャフトからベルトにトルクを確実に伝達するために提供される。このために、クランクシャフトのベルト・プーリは、歯付きベルト・プーリとして設計されて、ベルトの歯付き面Rと相互作用する。機械補助ユニットK、Lに関連付けられたベルト・プーリも、それぞれ歯付きベルト・プーリとして設計されて、ベルトの歯付き面Rと相互作用する。さらに、偏向ローラUも、歯付き面Rによって駆動されるよう、対応して提供される。
【0017】
ここで、電気機械、すなわち始動機/発電機S/Gは、その高い慣性のため、ベルトの駆動ベルト面Rを介して接続される。この場合、駆動ベルト面Rは、ベルトと始動機/発電機S/Gとの間で対応する高いトルクを伝達する目的で、ポリV面として設計される。トルクは、ベルトの歯付き面によっては伝達されないので、回転振動も、内燃機関VMのクランクシャフトと始動機/発電機S/Gとの間で伝達されない。したがって、干渉する振動負荷を伴わずに、クランクシャフトと機械補助ユニットとの間で高いトルクの確実な伝達が可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 駆動デバイス
VM 機械、内燃機関
K 機械補助ユニット、空調用圧縮機
L 機械補助ユニット、パワー・ステアリング・ポンプ
S/G 機械補助ユニット、始動機/発電機、電気機械
U 偏向ローラ
歯付き面
駆動ベルト面、ポリV面
S ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトを介して機械(VM)から機械補助ユニット(K、L、S/G)に機械駆動力を伝達するための前記機械補助ユニット用の駆動デバイス(1)であって、少なくとも1つの機械補助ユニットが、電気機械(S/G)として提供され、前記電気機械(S/G)が、ポリVベルトによって駆動されるようにポリVベルト・プーリを、または、歯付きベルトによって駆動されるように歯付きベルト・プーリを有する、駆動デバイス(1)において、
前記ベルトは、歯付き面(R)とポリV面(R)とを有し、前記各面が、本質的に互いに反対に位置し、機械ベルト・プーリが、前記電気機械がポリVベルト・プーリを有する場合には前記機械駆動力を伝達する目的で前記ベルトの歯付き面を駆動するように設計され、または、前記電気機械が歯付きベルト・プーリを有する場合にはポリVベルト・プーリとして設計される、ことを特徴とする駆動デバイス(1)。
【請求項2】
前記機械が内燃機関として提供され、前記機械ベルト・プーリがクランクシャフト・ベルト・プーリとして提供され、前記電気機械が自動車での始動機/発電機として提供される請求項1に記載の駆動デバイス。
【請求項3】
少なくとも1つのさらなる機械補助ユニットが提供され、前記さらなる機械補助ユニットを、同様に、前記ベルトの前記歯付き面または前記ポリV面によって駆動することができる、請求項1または2に記載の駆動デバイス。
【請求項4】
さらなる機械補助ユニットが、パワー・ステアリング・ポンプ、空調用圧縮機、または水ポンプとして設計される、請求項3に記載の駆動デバイス。
【請求項5】
前記電気機械が、前記ベルトの所望のベルト張力を設定するためのベルト張力調整装置として設計される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の駆動デバイス。
【請求項6】
前記ベルトに張力を与えるために、特に少なくとも1つのばね(S)によって、前記電気機械を前記ベルトに対して移動させることができる、請求項5に記載の駆動デバイス。
【請求項7】
2つの結合された車輪が提供され、前記車輪が、前記ベルトに張力を与えるために前記ベルトに対して移動させることができるように構成される、請求項5または6に記載の駆動デバイス。
【請求項8】
前記機械ベルト・プーリを、クラッチによって前記ベルト駆動装置から結合解除することができる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の駆動デバイス。
【請求項9】
電気機械を有する機械補助ユニットに内燃機関のクランクシャフトを機械的に結合するためのVベルト/歯付きベルト複合体の使用であって、前記電気機械と前記クランクシャフトとが、前記Vベルト/歯付きベルト複合体のそれぞれ異なる面から結合される、Vベルト/歯付きベルト複合体の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2009−270713(P2009−270713A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110823(P2009−110823)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】