説明

局所ハンダ付け装置

【課題】溶融ハンダの酸化によるドロス形成並びに温度低下による粘度上昇を防止し得る局所ハンダ付け装置の提供。
【解決手段】塔下部17がハンダ槽11内の溶融ハンダに浸漬するように且つノズル2がハウジング5の上面に設けた通し穴14を通って直立するように装備されたハンダ塔6と、開口部21を頂部に形成するチャンバであって、ノズルの上端部が開口部より突出するように、通し穴より上方のノズルを全外周に亘って覆い隠す保温チャンバ7と、チャンバ内部の雰囲気を加温する加熱手段8と、不活性ガスを保温チャンバの側部より内部に流入し、そして保温チャンバ内に充満した不活性ガスをノズルの上端部と開口部の内周壁25との隙間より排出するガス流通手段9と、ハンダ圧送手段とを備えてなる、局所ハンダ付け装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダ付け装置、より具体的には、鉛フリーハンダを用いて、基板の所望箇所に対して相対的に小さい面積でかつ少量のハンダ付けをするための局所ハンダ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、溶融ハンダを収容するハンダ槽と、ハンダ槽内に設置され、溶融ハンダを噴流するためのハンダ噴出し筒とを備え、基板の裏面全体に対して噴出し筒の頂部の噴出口から溶融ハンダを噴流させてハンダ付けを行う噴流ハンダ付け装置が知られている。この種の噴流ハンダ付け装置は通常、ハンダ槽の上面が大気に対して露出しており、また、ハンダ付けの際に、噴出口から多量の溶融ハンダを基板に向けて噴流する構造のものである。そのため、従来のハンダ付け装置は、大気との接触により、溶融ハンダが酸化しやすい構造のものであるという欠点があった。とりわけ、従来の鉛含有のハンダに代えて用いられている所謂鉛フリーハンダは、鉛を含まない組成でより高温で使用されることにより、大気中の酸素により容易に酸化されてドロスと呼ばれるハンダカスが形成しやすい。ドロスはハンダ付け不良を引き起こすため、できるだけ形成させてはならないものである。従って、鉛フリーハンダを使用して大気との接触が容易に為される上記の従来のハンダ付け装置を用いてハンダ付けを行うと、ハンダの酸化による欠点が著しいものになるという問題があった。
そこで、溶融ハンダの噴出し量をなるべく少量にし、その少量の溶融ハンダを基板の所望の箇所に局所的に接触させてハンダ付けを行う構成とすることにより、基板との接触の際の溶融ハンダの大気による酸化をなるべく避け得るようにした、局所ハンダ付け装置が提案されている。
例えば特許文献1は、溶融したはんだを収容するはんだ槽と、上部に開口部を有し、下部にて前記はんだ槽と接続するノズルと、前記はんだ槽に収容されたはんだを前記ノズルの開口部まで圧送する圧送手段とを備え、プリント基板のスルーホールと該スルーホールに挿通された電子部品の端子とを接合すべく前記ノズルの開口部まで圧送されたはんだを前記スルーホールと前記端子とに付着させる局所フローはんだ付け装置において、前記ノズルは、前記開口部と前記下部との間に設けられ該下部の流路断面積よりも小さい流路断面積を有する縮径部と、該縮径部と前記開口部との間に設けられ前記縮径部を通過したはんだの一部を前記ノズルの外部に流出させる流出部とを備えることを特徴とする局所フローはんだ付け装置を提案しており、はんだからプリント基板に熱量が移っても、はんだ自身の熱量が確保され、はんだの温度低下の程度が小さくなると説明されている。
【特許文献1】特開2007−5678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1が提案する局所フローハンダ付け装置は、はんだが角形の上筒部41の内部全体に圧送され、広口の開口部41aより盛り上がってプリント基板30と接触する構造のもの(図3、図5参照)であり、相対的に広い面積のはんだ表面が大気と常に接触しており、そのため溶融ハンダが酸化されてドロスを形成しやすい。また、特許文献1に提案される局所フローはんだ付け装置は、プリント基板に接した際の溶融はんだの温度低下防止については考慮されているが、はんだ槽内の貯留時からプリント基板との接触時に至る移送経路全体における溶融はんだの温度維持については考慮されたものではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は創意工夫した結果、局所ハンダ付け装置において、ハンダ槽からノズルを経て基板との接触までの移送経路の間、ノズルの開口部を除いて実質的に密閉した構造のものとし、且つその密閉された内部空間、特にノズルの外側の空間を高温の不活性ガスで充満させたことにより、ハンダ槽内の貯留時から基板との接触時までのハンダ移送経路全体にわたり、溶融ハンダの酸化によるドロス形成並びに温度低下による粘度上昇を防止し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、
直立するノズルの上端より、必要少量の溶融ハンダを吐出し、基板と接触させることにより、基板の所望箇所に対してハンダ付けを行う局所ハンダ付け装置において、
ヒータ装備のハンダ槽を閉じられた内部空間に収容する密閉型ハウジングと、
細筒形の上記ノズルを塔上部に備えるハンダ塔であって、塔下部が該ハンダ槽内の溶融ハンダに浸漬するように且つ該ノズルが前記ハウジングの上面に設けた通し穴を通って直立するように装備されたハンダ塔と、
開口部を頂部に形成するチャンバであって、上記ノズルの上端部が該開口部より突出するように、前記通し穴より上方の上記ノズルを全外周に亘って覆い隠す保温チャンバと、
ヒータ部材を該保温チャンバ内に備え、チャンバ内部の雰囲気を加温する加熱手段と、
不活性ガスを前記保温チャンバの側部より内部に流入し、そして該保温チャンバ内に充満した不活性ガスを上記ノズルの上端部と前記開口部の内周壁との隙間より排出するガス流通手段と、
前記ハンダ槽内の溶融ハンダを、前記ハンダ塔の内部を通って上記ノズルの上端より吐出するハンダ圧送手段とを備えてなる、局所ハンダ付け装置に関する。
このうち本発明の好ましい態様は、上記のヒータ部材は、上記ノズルの周囲を巻回する加熱コイルからなる、上記のハンダ付け装置に関する。
また本発明の別の好ましい態様は、上記のガス流通手段は、前記保温チャンバ内に流入された不活性ガスの流れが、前記ヒータ部材に接して加温され、次いで前記ハンダ槽内の溶融ハンダの表面にあたり、その後、上記ノズルの外周面と接触するように装備されているところの、上記の局所ハンダ付け装置に関する。
本発明のさらに別の好ましい態様は、上記の溶融ハンダは鉛フリーハンダであり、前記不活性ガスは窒素ガスであり、そして前記加熱手段は前記保温チャンバの内部雰囲気を250℃ないし400℃に加温することができる手段であるところの、上記の局所ハンダ付け装置に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の局所ハンダ付け装置にあっては、ハンダ槽及びその中で直立するハンダ塔を閉じられた空間内に収容し、且つ、ハンダ塔上部のノズルを全外周に亘って、ヒータ部材を備えた保温チャンバで覆い隠し、さらに、保温チャンバの内部を不活性ガスで充満させる構造としたことにより、溶融ハンダがハンダ槽内部から基板に向かって吐出されるまでの移送経路全体にわたり、溶融ハンダが大気と接触することをほぼ完全に防止し得るとともに、溶融ハンダの温度が低下することをも有効に防止し得る。従って、ハンダ付け工程において、溶融ハンダの酸化によるドロス発生、及び溶融ハンダの温度低下による粘度上昇が引き起こすハンダ付け不良が、効果的に防止される。この効果は、鉛フリーハンダを用いたハンダ付けにおいてより顕著に発揮される。
また、ヒータ部材がノズル周囲を巻回する加熱コイルからなる態様であれば、ノズルの外周面に向かって全方位から加温することができるため、特にノズルに圧送された溶融ハンダの温度低下をより有効に防止し得る。さらには、ノズルを中心としてその周囲を均一に加温できるため、温度のむらを少なくさせることもできる。
また、ガス流通手段が、前記保温チャンバ内に流入された不活性ガスの流れが、ヒータ部材に接して加温され、次いでハンダ槽内の溶融ハンダの表面にあたり、その後、ノズルの外周面と接触するように装備されている態様であれば、流入され加温された不活性ガスが、さらに溶融ハンダにあたることにより、さらに加温され、そのより高温の状態でノズ
ルの全外周面に沿って下方から上方へと流れる。そのため、特にノズルに圧送された溶融ハンダの温度低下をより確実に防止できる。
さらにまた、本発明において、溶融ハンダが鉛フリーハンダであり、不活性ガスが窒素ガスであり、そして加熱手段が保温チャンバの内部雰囲気を250℃ないし400℃に加温することができる手段である構成であれば、鉛フリーハンダを用いた局所ハンダ付けに最も適するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
鉛フリーハンダを用いたハンダ付けの場合には、以下の点に留意する必要がある。1つは、上述したように、鉛フリーハンダは、外気中の酸素により酸化されて、ハンダ付け不良を起こすドロスを形成しやすいという点である。2つめは、鉛フリーハンダはその融点が比較的高いため(およそ220℃)、温度が低下すると容易に粘度が上昇してしまうという点である。粘度の上昇は、溶融ハンダの吐出が円滑でなくなるため、ハンダ付け不良を引き起こしてしまう。これらの問題が生じないようにするべく、本発明の局所ハンダ付け装置にあっては、ハンダ槽とそれよりノズルの開口部までのハンダ移送部を全て密閉された構造とし、且つ、その密閉された内部空間、特にノズル外側の空間が高温の不活性ガスで充満される構造となっている。本発明の局所ハンダ付け装置の構造について、以下より具体的に説明する。
【0007】
本発明の局所ハンダ付け装置は、直立するノズルの上端より、必要少量の溶融ハンダを吐出し、基板と接触させることによって、基板の所望箇所に対してハンダ付けを行うハンダ付け装置であり、特に鉛フリーハンダを用いたハンダ付けに適するものである。そしてそしてこの局所ハンダ付け装置は、密閉型ハウジング、ハンダ塔、保温チャンバ、加熱手段、ガス流通手段及びハンダ圧送手段を備えたものである。
【0008】
密閉型ハウジングは、ヒータ装備のハンダ槽を閉じられた内部空間に収容するものである。ここで、閉じられた内部空間とは基本的に、密閉型ハウジング内にハンダ槽を収容したときに、該ハンダ槽が大気とは完全に遮断され得る構造となっている場合の他、例えば内部空間の一部が大気と連通したチャネルを有するが大気が流入しない構造となっている場合をも包含する。
ハンダ槽は、ハンダを溶融状態に維持するために、その底面部及び/又は側面部において、ヒータを装備してなり、鉛フリーハンダを用いたハンダ付けに適するべく、およそ250℃ないしおよそ300℃に加温可能となっている。また本発明においてハンダ槽の容量寸法は、従来の噴流ハンダ装置のハンダ槽に比して格段に小さめのもので十分である。このため、装置全体としての寸法もより小さいものとなり、その設置面積がより小さく済み、しかも移動させやすいという利点もある。
【0009】
ハンダ塔は、細筒形のノズルを塔上部に備えている一方、塔下部がハンダ槽内の溶融ハンダに浸漬するように装備される。それとともに、かかるハンダ塔は、ノズルがハウジングの上面に設けた通し穴を通って直立するように装備されている。ここで通し穴は、保温チャンバの内部に流入し加温された不活性ガスの通り道ともなるので、通し穴の内周壁とノズルの外周面との間にガスの流通が円滑になる程度の間隔を生じるような大きさのものがよい。
本発明において、ノズルの形状は細筒形とされることにより、吐出する溶融ハンダが基板の所望箇所のみに接触し、同時にハンダ付けの必要のないその周辺の電子部品との接触の防止をより確実なものとしている。この点において、ノズルの形状は細い円筒形の他、例えば中空の細い多角柱形(例えば四角柱形、六角柱など)を挙げることができる。
【0010】
保温チャンバは、開口部を頂部に形成しており、ノズルの上端部が該開口部より突出するように、上述の通し穴より上方のノズルを全外周に亘って覆い隠す構造のものである。
そのため、その覆い隠された内部の空間に不活性ガスが流入すれば、該不活性ガスが該空間を充満して、保温チャンバ内部が実質的に大気と遮断された空間となる。そして、保温チャンバ内部の空間に充満した不活性ガスは、ヒータ部材により加温されるとともにハンダ槽内の溶融ハンダに接するので、溶融ハンダ表面及びノズルがともに加温される。そのため、溶融ハンダが密閉されたハンダ槽からノズルに圧送されその後ノズル上端より基板に向けて吐出するという移送経路全般にわたり、溶融ハンダの酸化及び温度低下を効果的に防ぐことができる。
ここで、保温チャンバの開口部より突出するノズルの上端部は、ノズル上端から吐出した溶融ハンダが基板の所望の箇所に確実に接触してハンダ付けできる長さを有するものとする必要がある。しかし、突出するノズルの上端部の長さが長すぎると、低温の大気と直接接触することで、溶融ハンダの温度低下そして粘度上昇を引き起こしてしまうので、ノズルの上端部は、なるべく短めの長さに設定される。
また、保温チャンバの開口部は、その内周壁とノズルの上端部の外面との間に、保温チャンバ内の不活性ガスを排出するのに適度の隙間を有する大きさに設定されている。すなわち、大気が保温チャンバ内部に流れ込まないような大きさに、一方、ノズル上端から吐出した溶融ハンダをかき乱すことのない大きさに、隙間は調整されている。
【0011】
また、本発明の局所ハンダ付け装置においては、ヒータ部材を該保温チャンバ内に備え、チャンバ内部の雰囲気を加温する加熱手段を装備している。加熱手段は、保温チャンバ内に流入した不活性ガスを粘度低下を引き起こさない所要温度まで加温し、或いは所要温度まで加温しなくてもある程度の温度まで予備加温するためのものである。ヒータ部材が保温チャンバ内部の雰囲気を予備加温した場合においては、該雰囲気がハンダ槽内の溶融ハンダ表面によってさらに加温されて所要温度にされる。ヒータ部材は好ましくは、ノズルの周囲を巻回する加熱コイルからなる。この態様においては、ノズルの外周面に対しすべての方角より加温されるため、特にノズルを優先的に加温するのに都合がよい。しかも、この態様の加熱コイルは、ノズルの外周面に直接接しないので、ノズルを必要以上に加温することがない一方で、ノズルの外周面から離れすぎもしないので、ノズルに対する加温の効果を損なうことがない。
【0012】
また、本発明の局所ハンダ付け装置においては、不活性ガスを保温チャンバの側部より内部に流入し、そして該保温チャンバ内に充満した不活性ガスをノズルの上端部と開口部の内周壁との隙間より排出するガス流通手段が備えられている。不活性ガスが保温チャンバの頂部から排出されることにより、下方から上方に向かう不活性ガスの流れを生じる。そのため、不活性ガスが、ノズルの外周面に沿って、ノズルの下方から上端部へとノズルの外周面に接しながら流れるので、ノズルの全体にわたる加温をより確実にすることができる。
好ましくは、ガス流通手段は、保温チャンバ内に流入された不活性ガスの流れが、ヒータ部材に接して加温され、次いでハンダ槽内の溶融ハンダの表面にあたり、その後、ノズルの外周面と接触する態様のものである。かかる態様によると、保温チャンバ内部に流入した不活性ガスは一旦、ヒータ部材により所要温度又はそれに近い温度まで加温され、その後、高温に保たれたハンダ槽の溶融ハンダの表面にあたって、不活性ガスの温度がさらに上昇される。その後、不活性ガスは、溶融ハンダ表面から保温チャンバの頂部の開口部へと向かって上昇して流れるので、ノズルの外周面全体を覆うようにして流れ、そして開口部より保温チャンバ外へと排出される。そのため、この態様によると、保温チャンバ内部において不活性ガスの温度が所要温度により確実に維持されるので、ハンダ槽内部から基板との接触に至るまでの溶融ハンダの温度維持がより確実に為される。
【0013】
また、ハンダ圧送手段は、ハンダ槽内の溶融ハンダを、ハンダ塔の内部を通ってノズルの上端より吐出させる。このハンダ圧送手段は通常、プロペラ、該プロペラに取り付けられたシャフト、及び該シャフトを介してプロペラを回転させるための動力源からなる。そ
して、使用されるノズルの長さ又は内径との兼ね合いにもよるが、このハンダ圧送手段によって、ノズル上端より吐出される溶融ハンダが必要少量となるように調整される。
【0014】
本発明において不活性ガスは、例えば高圧ボンベなどのガス供給源からチャンバ内部に流入される。このとき不活性ガスは、常温であっても、またある程度の温度まで、例えばおよそ100℃ないし200℃まで予備加温されていてもよい。そして、チャンバ内部に流入した不活性ガスは、ヒータ部材によって、あるいはさらにハンダ槽内の溶融ハンダ表面に接することにより、最終的におよそ250℃ないしおよそ400℃の範囲の温度に加温される。かかる範囲内にあれば、ノズルに圧送された溶融ハンダの温度が十分に必要な温度に維持される一方で、溶融ハンダの過熱によるハンダ付けのときの基板の他の電子部品への熱の影響を避けることができる。より好ましくは、不活性ガスはおよそ350℃まで加温される。また、不活性ガスは、ノズルに圧送された溶融ハンダの温度低下が起きないように十分な量でチャンバ内部に流入される。その流入量はおよそ20リットル(L)/分以上であり、好ましくはおよそ20L/分以上であり、及びより好ましくは、およそ50L/分である。本発明において、不活性ガスとしては例えば、窒素ガス、ヘリウムガス又はアルゴンガスなどが挙げられ、安価で比較的入手しやすいという点で、窒素ガスが好ましい。
【0015】
本発明において特に好ましい態様は、溶融ハンダは鉛フリーハンダであり、不活性ガスは窒素ガスであり、そして加熱手段は保温チャンバの内部雰囲気を250℃ないし400℃に加温することができる手段である。このうち、より好ましくは、加熱手段が保温チャンバの内部雰囲気をおよそ350℃に加温することができる手段である。
【実施例】
【0016】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0017】
実施例:
本実施例においては、図1の斜視図及び図2の断面図に示す局所ハンダ付け装置1を挙げて説明する。
局所ハンダ付け装置1は、鉛フリーハンダを用いて、基板(図示せず)の所望箇所に対してハンダ付けを行う装置である。この局所ハンダ付け装置1において、ハンダ付けは、ノズル2(細筒形;全長およそ20cm;内径およそ10mm)の上端3より、溶融した鉛フリーハンダ4を吐出し、基板の所望箇所と接触させることにより行われる。ノズル2から吐出される鉛フリーハンの量は、ハンダ付けするのに十分であって且つノズル2から垂れ流れない量に調整した。
そしてこの局所ハンダ付け装置1は、密閉型ハウジング5、ハンダ塔6、保温チャンバ7、加熱手段8、ガス流通手段9及びハンダ圧送手段10を備えている。
【0018】
密閉型ハウジング5(縦×横×高さ=1150mm×1000mm×900mm)は、鉄鋳物からなるハンダ槽11の上部を覆う平板部材5’と、ハンダ槽11の側部及び底部を覆う箱型部材5”の2の部材がパッキン12を介して互いに組み合わされて箱型に構成されており、ハンダ槽11全体を閉じられた内部空間13に収容している。また、密閉型ハウジング5の上面つまり平板部材5’のほぼ中央には、ノズル2を通すための通し穴14が設けられているが、保温チャンバ7により覆われているため、ハンダ槽11内の鉛フリーハンダ4は大気から遮断された構造である。なお、ハンダ槽11の底部にはヒータ15が複数個装備されており、ハンダ槽11内の鉛フリーハンダ4をおよそ250℃以上に維持できるようになっている。
【0019】
ハンダ塔6はほぼ円錐台の構造を有し、その塔上部16においてノズル2を備えている
。そしてハンダ塔6は、その塔下部17がハンダ槽11内の鉛フリーハンダ4に浸漬し且つノズル2が密閉型ハウジング5の前述の通し穴14を通って直立するように装備してある。ここで通し穴14は、該通し穴14の内周壁18とノズルの外周面19とが互いに接触せずある程度の間隔の間が生じる大きさのものとし、窒素ガスがこの間を円滑に通過することのできるようにした。この円錐台形状のハンダ塔6は、下方から上方に向かうにつれて先細りとなる構造のもののため、鉛フリーハンダ4がハンダ塔6に圧送されたときに、上方に向かうほど流圧が増して、鉛フリーハンダ4がノズルの上端2へと圧送されるのを確実にしている。
【0020】
また、密閉型ハウジング5の平板部材5’の上面に取り付けられているのが、保温チャンバ7である。保温チャンバ7には、その頂部20のほぼ中心において円形の開口部21を形成しており、ノズル2の上端部22がその開口部21より突出するとともに、該開口部21より下方であって通し穴14より上方のノズル2の全外周にわたって覆い隠している。ノズル上端部22の長さは、基板のハンダ付け箇所の構造に対応した長さであって、且つ、鉛フリーハンダ4が該上端部22に圧送されたときに著しい粘度上昇を防止できる温度(およそ250℃以上)に維持される長さとなるように調整した。
また本実施例においては、保温チャンバの密閉性をより高める目的で、略円錐台形状のノズルキャップ23と、円筒形のバッフル24とを併用して、ノズル2の周囲を覆うように取り付けてある。その結果、ノズル2の上端部22と開口部21の内周壁25との隙間26は、窒素ガスが排出したとき、圧力がかかってノズル2の上端3からの鉛フリーハンダ4の吐出がかき乱されることがないように大きく、且つ、大気が保温チャンバ7の内部に流入してしまうことが防止され得るように小さく設定された。
【0021】
そして本実施例においては、保温チャンバ7内の雰囲気を加温するための加熱手段8は、局所ハンダ付け装置1外に備えた電熱器8’と、該電熱器8’により加熱される、保温チャンバ7内に備えた加熱コイル8”とからなる。そのうち加熱コイル8”は、ノズル外周面19の周囲を巻回するようにして備え、ノズル2の外周面19に対してその周囲のあらゆる方向から熱放射できるようにした。また、加熱コイル8”は、その上方及び左右側方を保温チャンバ7の一部である壁27に覆われ、且つ下方を密閉型ハウジング5の平板部材5’により覆われており、保温チャンバ7の内部において他とは区分けされた、トンネル状の加温用区画28となっている。そして、この加温用区画28においては、その真下の平板部材5’の一部において複数の通気孔29を形成していることにより、該区画28内とハンダ槽11内の鉛フリーハンダ4上方の空間とが連通した構造のものとしている。
そして、ガス流通手段9によれば、窒素ガスを、高圧ボンベ(ガス供給手段)30より保温チャンバ7の側部31を介して加温用区画28に流入すると、窒素ガスは一旦、加温用区画28内でおよそ350℃まで加温され、それから通気孔29を通過して下方のハンダ槽11内の鉛フリーハンダ4の表面にあたった後、通し穴14の内周壁18とノズルの外周面19との間を通過して、保温チャンバ7の頂部に形成された隙間26に向かって上昇していく(図2中の矢印参照。)。窒素ガスが鉛フリーハンダ4の表面にあたると、鉛フリーハンダ4の高温によって窒素ガスの温度の低下が防止されるだけでなく、鉛フリーハンダ4の表面付近が連続して流れる窒素ガスでカバーされるため、鉛フリーハンダ4表面の酸化防止をより効果的に行える。そして、窒素ガスが隙間26に向かって上昇するとき、ノズル2の外周面19に沿うので、ノズル2の加温をより確実なものとすることができる。
【0022】
また、局所ハンダ付け装置1には、ハンダ槽11内に備えられたプロペラ32、プロペラ32を駆動するモータ33、及び該モータ33の駆動力をプロペラ32に伝達する動力伝達手段34とからなるハンダ圧送手段10を備える。ハンダ圧送手段10により、ハンダ槽11内の鉛フリーハンダ4は、フローダクト35からハンダ塔6の内部を通り、ノズ
ル上端3より吐出される。
また、局所ハンダ付け装置1には、断熱カバー36を使用して、保温チャンバ7の保温効果をさらに上げた。
【0023】
而して、このハンダ付け装置1を使用することにより、鉛フリーハンダ4を用いた局所ハンダ付けにおいて、ハンダ槽11内の鉛フリーハンダ4が大気中の酸素と接触するのを防止してドロスの形成を防ぐとともに、鉛フリーハンダ4が、ハンダ槽11内からノズル2を通ってその上端3から吐出し、そして基板にハンダ付けされるまでの移送経路全般にわたって、該鉛フリーハンダ4の温度低下を防止してその粘度上昇を防ぎ、もって、ハンダ付け不良を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の局所ハンダ付け装置の一態様を示す模式図である。
【図2】図2は、図1のA−A線における断面を示す模式図である。
【図3】図3は、図1に示す局所ハンダ付け装置の分解模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1 局所ハンダ付け装置 2 ノズル 3 ノズルの上端 4 鉛フリーハンダ 5 密閉型ハウジング 5’ 平板部材 5” 箱型部材 6 ハンダ塔
7 保温チャンバ 8 加熱手段 8’ 電熱器 8” 加熱コイル
9 ガス流通手段 10 ハンダ圧送手段 11 ハンダ槽 12 パッキン 13 閉じられた内部空間 14 通し穴 15 ヒータ 16 塔上部
17 塔下部 18 通し穴の内周壁 19 ノズルの外周面
20 保温チャンバの頂部 21 開口部 22 ノズルの上端部
23 ノズルキャップ 24 バッフル 25 開口部の内周壁 26 隙間
27 保温チャンバの壁 28 加温用区画 29 通気孔 30 高圧ボンベ
31 保温チャンバ7の側部 32 プロペラ 33 モータ
34 動力伝達手段 35 フローダクト 36 断熱カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立するノズルの上端より、必要少量の溶融ハンダを吐出し、基板と接触させることにより、基板の所望箇所に対してハンダ付けを行う局所ハンダ付け装置において、
ヒータ装備のハンダ槽を閉じられた内部空間に収容する密閉型ハウジングと、
細筒形の上記ノズルを塔上部に備えるハンダ塔であって、塔下部が該ハンダ槽内の溶融ハンダに浸漬するように且つ該ノズルが前記ハウジングの上面に設けた通し穴を通って直立するように装備されたハンダ塔と、
開口部を頂部に形成するチャンバであって、上記ノズルの上端部が該開口部より突出するように、前記通し穴より上方の上記ノズルを全外周に亘って覆い隠す保温チャンバと、
ヒータ部材を該保温チャンバ内に備え、チャンバ内部の雰囲気を加温する加熱手段と、
不活性ガスを前記保温チャンバの側部より内部に流入し、そして該保温チャンバ内に充満した不活性ガスを上記ノズルの上端部と前記開口部の内周壁との隙間より排出するガス流通手段と、
前記ハンダ槽内の溶融ハンダを、前記ハンダ塔の内部を通って上記ノズルの上端より吐出するハンダ圧送手段とを備えてなる、局所ハンダ付け装置。
【請求項2】
前記ヒータ部材は、上記ノズルの周囲を巻回する加熱コイルからなる、請求項1に記載のハンダ付け装置。
【請求項3】
前記ガス流通手段は、前記保温チャンバ内に流入された不活性ガスの流れが、前記ヒータ部材に接して加温され、次いで前記ハンダ槽内の溶融ハンダの表面にあたり、その後、上記ノズルの外周面と接触するように装備されている、請求項1又は請求項2に記載の局所ハンダ付け装置。
【請求項4】
前記溶融ハンダは鉛フリーハンダであり、前記不活性ガスは窒素ガスであり、そして前記加熱手段は前記保温チャンバの内部雰囲気を250℃ないし400℃に加温することができる手段である、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の局所ハンダ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−101395(P2009−101395A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276387(P2007−276387)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(591239494)セイテック株式会社 (3)
【出願人】(502366424)有限会社ジット (2)
【Fターム(参考)】