説明

局所組成物

局所塗布のための単相医薬組成物に加えて、使用および投与のキットおよび方法が提供される。該組成物は、生物活性剤;少なくとも非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む送達ビヒクル;ならびに揮発性溶媒を含み、該生物活性剤は組成物中に未飽和状態で存在し、該生物活性剤は送達ビヒクル中に過飽和状態で存在し、該結晶化阻害剤は、送達ビヒクル中の生物活性剤の結晶化を遅延することができる。生物活性剤には、テルビナフィンおよびアシクロビルが含まれる。爪甲真菌症および水痘帯状疱疹感染症、HSV−1感染症、またはHSV−2感染症の治療が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年6月14日に出願された米国仮特許出願第60/813,372号、2006年7月27日に出願された米国仮特許出願第60/820,542号、および2006年7月27日に出願された米国仮特許出願第60/820,546号の利益を請求し、これらの特許の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、送達ビヒクル中に生物活性剤を含有する、揮発性成分を有する単相局所組成物に関する。該生物活性剤は、その塗布時に組成物から放出されるべきものである。
【背景技術】
【0003】
(背景)
医薬品の局所送達は、その製剤から放出された後、皮膚、爪、および/または蹄などの障壁に浸透して、治療を必要とする領域に達する該医薬品の能力に依存して変わる。患者によって必要とされる管理が最小限となる、非観血的方法が好ましい。
【0004】
イオン導入などの幾つかの方法は、障壁に電位傾度を作り出して医薬品の浸透を高めることによるものである。これらの方法は、主に正味電荷を有する薬剤を対象とする。
【0005】
非荷電または両性イオンの薬剤を含む大部分の薬剤について、担体中の薬物の化学ポテンシャルに焦点を当てる方法が有用となっている。身体への薬物の流動性(flux)は、その担体中の薬物の化学ポテンシャルを増大することによって高めることができる。このことは、通常、担体中の薬物飽和度の調節により薬物組成物を化学的に最適化することによって行われる。この手法の利点は、障壁自体の特性が比較的影響を受けにくく、薬理効果開始の遅延時間が低減されるということである。この手法に対する2つの態様には、i)組成物中に薬物の高化学ポテンシャルを最初に作り出すこと、およびii)組成物の塗布後、障壁周辺において薬物の高い化学ポテンシャルを維持することが含まれる。通常、薬物に関して飽和である医薬組成物を調製することが望ましい。塗布中の組成物の別の態様は、使用されるビヒクルへの薬物の可溶性および拡散性によって、障壁周辺の薬物の枯渇が排除されなければならないことである。この目的で使用される組成物の例は、マイクロエマルションおよびエマルションである。
【0006】
組成物を飽和に保つための別の手法は、担体中に過剰量の薬物(非可溶化)を使用することであり、それによって該薬物が、後に障壁を介して浸透済みの薬物に置き換わるように溶解する。
【0007】
さらに別の手法は、薬物の過飽和組成物の使用である。ここで過飽和組成物中の薬物は、対応する飽和組成物と比較してより高い化学ポテンシャルを有するので、障壁に浸透するための薬物の推進力は、飽和組成物中よりも高い。例えば、かかる組成物は以下の手段または原理に従って調製されてきた。i)医薬について関連する温度および/または圧力と比較して、薬物の可溶性がより高い温度および/または圧力で薬物を溶解させること(非特許文献1;特許文献1)、ii)抗核形成剤の存在下または非存在下で、in situでまたは塗布の前に飽和薬物溶液をそのための非溶媒と混合し、それによって単に物理的操作を行うこと(特許文献2、特許文献3)、iii)周囲空気への溶媒蒸発(非特許文献2)、iv)ヒト身体への溶媒浸透、v)ヒト身体から組成物への水の取込み、またはvi)ヒト身体からのH+取込みによって生じる組成物中のpH変化。
【0008】
特許文献4には、ガラス形成担体に溶解した活性薬剤の溶液を含む生物学的に活性な組成物が開示されており、該担体は、可塑剤を含有するガラス形成物質を含む。
【0009】
特許文献5は、それから放出される生物活性剤を含む生物学的に活性な新規組成物に関するものであり、前記生物活性剤は、担体中に過飽和状態で溶解かつ/または分散しており、該担体は、液体および/または固体の非結晶性エステルおよび/またはポリエステルマトリックスを含み、前記生物活性剤の沈殿は、そこでは実質的にまたは完全に阻害される。
【0010】
化粧上の観点からみると、身体表面上に塗布できる製剤(例えば、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、スティック等)の量は、約1〜10mg/cmの範囲に制限され、したがって揮発性部分の蒸発に好都合な表面対体積比を有する薄フィルムが生成される。したがって、製剤は必然的に組成物中で急速な変化を受ける。塗布できる製剤の量が制限されることによって、浸透に重要な要素としての薬物の到達可能性(accessibility)がさらに強化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第97/10812号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,940,701号明細書
【特許文献3】米国特許第4,767,751号明細書
【特許文献4】米国特許第6,083,518号明細書
【特許文献5】米国特許第6,537,576号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】W.L.ChouおよびS.Riegelmann、J.Pharm.Sci.、60巻、No.9、1281〜1302頁、1971年
【非特許文献2】Coldmanら、J.Pharm.Sci.、58、No.9(1969年)、1098〜1102頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
幾つかの薬物担体は、担体中の溶媒およびポリマーの含量に基付く相分離を受け易い。活性薬物の均一な塗布および効率的な使用を確実にするために、単相の局所組成物を有することが望ましい。
【0014】
必要な領域への医薬品のバイオアベイラビリティを増大可能にする安定な局所組成物を提供することが、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(要旨)
生物活性剤、送達ビヒクル、および揮発性溶媒を含有する局所組成物に加えて、使用、製造、および治療のキットおよび方法が提供される。本発明の一態様では、生物活性剤;送達ビヒクル中の生物活性剤の結晶化を遅延することができる非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む送達ビヒクル;ならびに揮発性溶媒を含む、局所塗布のための単相医薬組成物が提供され、生物活性剤は組成物中に未飽和状態で存在し、揮発性溶媒の蒸発時に、生物活性剤は過飽和状態で送達ビヒクル中に存在する。1つまたは複数の実施形態では、組成物は可塑剤をさらに含む。
【0016】
「組成物」という用語は、生成物そのものを意味し、組成物は、要望に応じて管等にパッケージされる。「送達ビヒクル」に言及することにより、蒸発しないようにされ、かつ揮発性成分が蒸発した後に治療領域上に留まる、生物活性剤を担持する組成物の部分を意味する。「揮発性溶媒」という用語は、組成物の塗布後に蒸発する組成物の部分を意味する。即ち「揮発性溶媒」は、使用される場合には24時間未満に、選択された特定の温度で、典型的には約23℃の室温で送達ビヒクルなどの担体を残し、それによって組成物中の溶媒の存在が一瞬の間であるようにする、共溶媒を含む1つまたは複数の溶媒を指す。さらに、「揮発性溶媒」は、生物活性剤を溶解することができる。
【0017】
一実施形態では、揮発性溶媒は、20℃で0.5kPa以上の蒸気圧を有し、詳細な一実施形態では、蒸気圧は2kPa以上であり、より詳細な実施形態では、蒸気圧は5kPa以上である。
【0018】
一般に組成物は、全体としての組成物中、生物活性剤が未飽和状態であるように調製される。即ち、存在する生物活性剤の全量が組成物に溶解する。揮発性成分(複数)が蒸発すると、薬剤は、送達ビヒクル中に過飽和状態で存在する。
【0019】
「非ポリマー性結晶化阻害剤」に言及することにより、抗核形成剤とみなされる化合物、即ち生物活性剤などの化合物の沈殿を遅延または防止する薬剤を含むことを意味する。結晶化阻害剤は、例えば、活性化合物が溶媒の蒸発によって過飽和になるとき、長時間、例えば2、4、8、12、または24時間以上も活性化合物の結晶化を防止することができる薬剤である。
【0020】
1つまたは複数の実施形態では、揮発性溶媒は、酢酸、アセトン、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピル、水、n−ブチルエーテル、イソプロパノール、またはその組合せを含む。
【0021】
一実施形態では、非ポリマー性結晶化阻害剤は、ヒドロキシカルボン酸を含む。詳細な一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸は、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、またはその組合せを含む。
【0022】
1つまたは複数の実施形態では、非ポリマー性結晶化阻害剤は、投与後少なくとも約24時間、組成物を安定にするものである。本発明の一実施形態によれば、組成物の投与後、最大約2時間(または他の実施形態では、4、8、12、または24時間も)、送達ビヒクル中の生物活性剤の結晶化がない場合、組成物は安定であるとみなすことができる。1つまたは複数の実施形態では、塗布後の有効成分の流動性が組成物の有効期間にわたって許容される率以上を維持する場合に、組成物は安定とみなすこともできる。許容される率は、対象となる有効成分に特異的であり、当業者によって理解されよう。一実施形態では、組成物は、3カ月(または他の実施形態では、6、9、12、18、または24カ月も)、適切な保存容器中で安定なままである。適切な保存容器への言及は、揮発性溶媒の著しい喪失なしに組成物をそのまま保持できる容器を意味する。
【0023】
「フィルム形成剤」への言及には、基質への組成物の塗布後に基質上に層またはフィルムを形成し、送達ビヒクルと相溶性があり、塗布した位置に対して適所に有効成分を保つことができる、ポリマーなどの物質が含まれる。フィルム形成剤は、例えば望ましい一貫性を組成物に提供し、塗布後ある時間枠にわたって有効成分を送達することができる。詳細な一実施形態では、増粘剤とも呼ばれるフィルム形成剤は、親水コロイド、親水コロイド誘導体、またはその組合せを含む。一実施形態では、フィルム形成剤は、デンプン、ペクチン、寒天、セルロース、セルロース誘導体、カラギーナン、ガラクタン、アルギン酸塩、アガロース、キサンタンガム、またはその組合せを含む。別の実施形態は、セルロース、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、もしくはその組合せを含むセルロース誘導体を有する。
【0024】
特定の一実施形態では、フィルム形成剤は、組成物中約30℃〜約100℃、具体的には40〜70℃、より具体的には45〜55℃の曇り点(C)を有する。
【0025】
1つまたは複数の実施形態では、送達ビヒクルは、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)、酢酸プロピル、アニソール、またはその組合せを含む可塑剤をさらに含む。
【0026】
1つまたは複数の実施形態では、生物活性剤は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤、細胞増殖阻害剤、利尿薬、免疫調節剤、局所麻酔薬、抗炎症剤、乾癬剤、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せである。
【0027】
詳細な一実施形態では、生物活性剤は、テルビナフィン、ナフチフィン、アモロルフィン、ブテナフィン、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含む。テルビナフィンは、1つまたは複数の実施形態において、組成物中に約0.1〜約10重量%、より具体的には0.5〜5重量%、最も具体的には2〜4重量%の量で存在する。
【0028】
さらなる一態様では、テルビナフィン、アセトン、クエン酸、グリセロール、およびフィルム形成剤を含む、爪甲真菌症の治療に効果的な組成物が提供される。詳細な一実施形態では、組成物は、2〜10重量%の範囲の量のテルビナフィン、10〜50重量%の範囲の量のアセトン、1〜10重量%の範囲の量のクエン酸、1〜10重量%の範囲の量のグリセロール、および2〜8重量%の範囲の量のフィルム形成剤を含む。例示的組成物は、一実施形態において塗布後にラッカーを形成するゲルである。例示的フィルム形成剤は、ヒドロキシエチルセルロースである。詳細な一実施形態では、組成物は、適切な保存容器中で約12カ月以上の期間、安定なままである。別の詳細な実施形態では、組成物は、適切な保存容器中で約24カ月以上の期間、安定なままである。また、テルビナフィン、アセトン、クエン酸、グリセロール、およびフィルム形成剤の組成物から形成される安定な過飽和フィルムが提供される。
【0029】
別の詳細な実施形態では、生物活性剤は、アシクロビル、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含む。アシクロビルは、1つまたは複数の実施形態において、組成物中に約0.01〜約10重量%、より具体的には0.05〜5重量%、最も具体的には0.1〜0.5重量%の量で存在する。
【0030】
一実施形態では、非ポリマー性結晶化阻害剤は、組成物中約5〜約15重量%の量で存在する。別の実施形態では、揮発性成分は、組成物中約10〜約95重量%の量で存在する。さらなる一実施形態では、フィルム形成剤は、組成物中約0.5〜約5重量%の量で存在する。さらに別の実施形態では、可塑剤は、組成物中約5〜約15重量%の量で存在する。
【0031】
他の実施形態は、医薬として許容可能な賦形剤、浸透促進剤、角質溶解剤もしくは剥離剤、カオトロピック物質、芳香剤、皮膚緩和薬、またはその組合せをさらに含む送達ビヒクルを提供することができる。
【0032】
別の態様ではキットが提供される。キットは、生物活性剤;生物活性剤の結晶化を遅延することができる非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む送達ビヒクル;ならびに揮発性溶媒を含む単相医薬組成物(生物活性剤は組成物中に未飽和状態で存在し、生物活性剤は過飽和状態で送達ビヒクル中に存在する)、ならびに生物活性剤を必要とする領域に組成物を塗布するための塗布具を含む。
【0033】
別の態様では、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、エアロゾル、またはポンプスプレーなどの医薬として許容可能な組成物が提供される。
【0034】
本発明のさらなる一態様には、生物活性剤がテルビナフィン、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩である、爪甲真菌症の治療または予防用の医薬品の製造のための組成物の使用が含まれる。過飽和抗真菌剤を投与するステップを含む、爪甲真菌症の治療方法も提供される。一実施形態では、該方法は、治療有効量のテルビナフィン、ナフチフィン、アモロルフィン、ブテナフィン、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含む単相組成物;フィルム形成剤および非ポリマー性結晶化阻害剤を含む送達ビヒクル;ならびに揮発性溶媒を、治療を必要とする局所領域に塗布するステップ(テルビナフィン、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩は、組成物中に未飽和状態で存在する);揮発性溶媒を蒸発させるステップ;ならびに揮発性溶媒の蒸発時に、送達ビヒクル中で過飽和状態であるテルビナフィン、その誘導体、プロドラッグ、または塩を提供するステップをさらに含む。
【0035】
さらなる一態様には、生物活性剤が、アシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩である、水痘帯状疱疹感染症、HSV−1感染症、またはHSV−2感染症の治療または予防用の医薬品の製造のための組成物の使用が含まれる。過飽和抗ウィルス剤を投与するステップを含む、水痘帯状疱疹感染症、HSV−1感染症、またはHSV−2感染症の治療または予防方法も提供される。一実施形態では、該方法は、治療有効量のアシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩を含む単相組成物;フィルム形成剤および非ポリマー性結晶化阻害剤を含む送達ビヒクル;ならびに揮発性溶媒を、治療を必要とする局所領域に塗布するステップ(アシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩は、組成物中に未飽和状態で存在する);揮発性溶媒を蒸発させるステップ;ならびに揮発性溶媒の蒸発時に、アシクロビル、その誘導体、プロドラッグ、または塩が送達ビヒクル中で過飽和状態となるようにアシクロビル、その誘導体、プロドラッグ、または塩および送達ビヒクルを提供するステップをさらに含む。
【0036】
さらなる一態様では、単相局所組成物の製造方法が提供される。該方法は、生物活性剤を提供するステップ;送達ビヒクル中の生物活性剤の結晶化を遅延することができる非ポリマー性結晶化阻害剤を含む送達ビヒクルを提供するステップ;揮発性溶媒を提供するステップ;生物活性剤、送達ビヒクル、および揮発性溶媒を混合して、組成物を形成するステップを含み、生物活性剤は組成物中に未飽和状態で存在し、生物活性剤は送達ビヒクル中に過飽和状態で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(詳細な説明)
本発明の実施形態による生物活性剤を含有する局所組成物は、予想外の安定性および/または高い送達率を提供する。理論に制限されるものではないが、開示されている本発明の態様は、組成物からの揮発成分の蒸発が、送達ビヒクル中の生物活性剤の熱学力的活性の増大をもたらすという原理に従って作用する。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、生物活性剤は、組成物中に未飽和状態で存在することによって組成物中の活性薬剤の沈殿を防止することにより、その有効期間にわたって生成物を物理的に安定にする。揮発性成分が蒸発すると、送達ビヒクル中の生物活性剤の熱力学的活性は、特に過飽和状態に相当するレベルまで増大することになろう。したがって、皮膚、爪、および/または蹄などの障壁を介する薬物の流動性は、未飽和および飽和系と比較して増大する。
【0039】
混合物中の物質の過飽和度が高いほど、混合物から離れる物質への要望は高くなろう(即ち、物質が過飽和である場合、混合物からの物質の放出は未飽和と比較してより高くなろう)。しかし過飽和状態は、定義により物理的に不安定であり、最終的には沈殿(即ち物質の相分離が、別々の液相または固相の形態で、過飽和状態で存在する)が生じることになる。混合物中の物質の過飽和度が高いほど、物質がより多量に沈殿する傾向がある。
【0040】
In Vitro放出試験(IVRT)を使用して、様々な媒体を使用することによって様々な膜上での組成物の流動性を評価することができる。適切な膜には、天然および合成膜が含まれる。天然膜には、それに限定されるものではないが、牛の蹄、豚の耳の皮膚、豚の蹄、馬の蹄等が含まれる。合成膜には、それに限定されるものではないが、シラスティック、タフリン(tuffryn)、テフロン(登録商標)、ナイロン、フルオロポア(fluoropore)、および他の膜が含まれる。レセプター溶液とも呼ばれる媒体の例には、それに限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水およびクエン酸緩衝液が含まれる。
【0041】
組成物中の結晶化阻害剤の使用によって、活性薬剤のより高い過飽和度が可能となり、それによって、対象となる組織中の薬剤の局所濃度がより高くなる。
【0042】
本発明の1つまたは複数の実施形態の局所組成物は、治療を必要としている領域に塗布され、周囲空気への組成物の揮発性成分の容易またはスムースな蒸発が可能となる。「局所」という用語は、「皮膚、経皮、爪、および経爪」に関する。
【0043】
本発明の1つまたは複数の実施形態に存在するフィルム形成剤は、治療を必要とする領域に局所組成物を保持し、それによって生物活性剤を保持する一助となる。したがって、組成物中のフィルム形成剤の可溶性は、揮発性溶媒の蒸発後の活性薬剤の放出度合いに影響を与えることが見出されている。最適な活性薬剤の放出は、可能な限り組成物に溶けにくいようにポリマーを増粘しながらも、均質な/単相生成物を提供することによって実現されることが見出されている。組成物中のポリマーの可溶性を改変する方法を、以下に詳述する。
【0044】
溶液中のポリマーの挙動(ここでは、本発明の態様の生物学的に活性な組成物によって表すことができる)は、溶媒の特性に強く依存する。良好な溶媒中では、ポリマーは自由に拡張し、多量を占める。質の悪い溶媒中では、ポリマーは縮小して少量を占めることになる。中間タイプの溶媒中では、ポリマーの可溶性は中程度であり、即ち良好でも質が悪くもない。
【0045】
ポリマーおよびその官能基のタイプに依存して、温度低下または上昇によって、溶液から相分離が誘発される恐れがある。この概念を基に、溶媒中にポリマーが可溶化する温度を超える臨界温度Tを定義することができる。しかし、所与のポリマーに対するTは重合度にも依存し、したがってモノマーが無限に可溶性のはずであると同時に、対応するポリマーが部分的にのみ可溶性である温度間隔は大きい。
【0046】
混濁は、幾つかのポリマーの可溶性を制限する恐れのある、予期せぬ別のサーモトロピック現象である。一般に、可溶性は温度上昇と共に増大する。しかし混濁は相分離であり、これは曇り点(本明細書ではCと示される)に対する臨界温度を超える温度上昇で生じるものである。この相分離の背景にある機構は、一般に温度が上昇するにつれて、水が極性基に対してより質の悪い溶媒になることに寄与し得る。
【0047】
したがって曇り点(C)は、組成物中の粘度増大ポリマーが、組成物に該ポリマーが中程度に可溶化すると同時に、均質な生成物をなおも提供する系であるかどうかを決定するための適切かつ実用的なパラメータである。
【0048】
臨界温度(T)または曇り点(C)いずれかの観点から見て、使用されるポリマーのタイプに依存する相分離は、特定の組成物のみにおいて決定される。即ち、特定の組成物の範囲外の潜在的濃度依存性による相分離は無視される。T<Tである場合、またはT>Cである場合に相分離が存在する。所与の任意のポリマーについて、TまたはCのいずれかが観測される。
【0049】
相分離は、封止ガラスバイアル中、定義された温度で(例えば5℃間隔で)サンプルを終夜保存し、翌日目視検査を行うことによって定義することができる。相分離は、以前は透明な組成物が一晩で混濁または不透明に変わる場合、肉眼的相分離の前段階であると結論付けられる。「相分離」への言及には、有効成分、結晶化阻害剤、フィルム形成剤、またはその組合せなどの組成物の任意の成分の沈殿が含まれる。
【0050】
したがって、本発明の幾つかの実施形態によれば、組成物中のポリマーの可溶性が制限されることによって、医薬上関連する温度間隔内でポリマーが自由に可溶化する組成物と比較して、揮発性部分の蒸発後の送達ビヒクルからの生物学的有効成分が放出しやすいという予期せぬ観測がどのようであるか特定されている。
【0051】
したがって本発明のこの実施形態は、組成物中の粘度増大ポリマーの可溶性を制限すると同時に、有効期間の観点に関連する温度間隔にわたって肉眼的に均質な生成物を提供し[例えば、Note for Guidance on Declaration of Storage Conditions EMEA/CMP/QWP/609/96/rev1参照]、それによって塗布後の送達ビヒクルからの生物活性薬剤の放出を容易にする方法を記載する。
【0052】
周囲媒体中のポリマーの可溶性を改変する様々な手段は、それに限定されるものではないが、ポリマー鎖長の変更、関連ポリマーへの切替え、緩衝剤のタイプおよび緩衝剤濃度の変更、電解質の追加、非溶媒の使用、カオトロピック(水構造の破壊;Wood J.M.、Osmosensing by Bacteria:Signals and Membrane−Based Sensors、Microbiol.Mol.Biol.Rev.、1999年3月、230〜262頁、63巻、No.1)物質、コスモトロピック(水構造生成;Wood J.M.の上記論文)物質、pHの変化等を含むことができる。
【0053】
本発明の局所組成物の送達ビヒクル中に使用される結晶化阻害剤は、送達ビヒクル中の過飽和生物活性剤の結晶化を遅延するように選択される。かかる遅延は、生物学的に活性な組成物の局所投与後、0〜24時間、より具体的には0〜12時間などの、少なくとも治療上関連する時間枠にわたって延長することができる。結晶化阻害剤は非ポリマー性であるが、モノマー性であってもオリゴマー性であってもよい。本明細書で使用されるように、「ポリマー性」は10個を超えるモノマー単位を含む分子を指し、「オリゴマー性」は2〜10個のモノマー単位を含む分子を指す。
【0054】
結晶化阻害剤の存在下での安定性に関するin vitro試験の標準的手順には、ペトリ皿の底部にポリマーフィルム(例えばポリエチレン)を成型すること、ペトリ皿の底部のフィルム上に、結晶化阻害剤候補物を含有する試験ゲルまたは組成物を均一に塗布すること(〜160mg/cm)、試験ゲルを入れたペトリ皿を、32℃のキャビネットまたはオーブンに終夜置くこと(〜18±1時間)、および試験ゲルを顕微鏡下で調査して、結晶の存在を視覚的に決定することが含まれる。10〜100×の拡大を使用する。結晶が無い場合、結晶化阻害剤候補物を、結晶化阻害剤とみなす。
【0055】
かかる結晶化阻害剤は、有機酸、例えばヒドロキシカルボン酸、特にα−ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、または乳酸)を単独で、または適切な可塑剤(本明細書では、それが添加される材料のガラス転移温度を有意に低下し、それによって材料をより軟化し、より柔軟にする物質と定義される)、例えば低分子量のジ−またはトリアルコール(例えばジプロピレングリコールまたはグリセロール)と組み合わせて含むことができる。あるいは、かかる結晶化阻害剤は、先に挙げた物質のオリゴマーエステルおよびそれらの混合物であってよく、先に挙げた物質は、<20%(w/w)の量のモノマー形態で存在することもできる。さらなる一実施形態は、結晶化阻害剤としてポリオール、例えばマルチトールを提供する。
【0056】
別の結晶化阻害剤は、単糖もしくは多糖、またはその混合物の群から選択することができる。
【0057】
適切な結晶化阻害剤は、ガラス形成物質として、10〜95重量パーセントの範囲のクエン酸またはそのエステルおよび/もしくはオリゴエステル、ならびに5〜90重量パーセントの範囲のプロピレングリコールまたはグリセロールを含む可塑剤を含むことができ、ここで重量パーセントは、ガラス形成物質および可塑剤を組み合わせた重量に対するものである。別の実施形態では、適切な結晶化阻害剤は、クエン酸のエステルおよび/またはポリエステル、ならびにその他に記載の(WO99/58109、US6,537,576)化学反応(複数)によって得られる可塑剤を含むことができる。そのようにして形成された結晶化阻害剤を構成する分子の分子量およびその分布の調節によって、マトリックス中の生物活性剤の可溶性を制御できることに言及する価値がある。一実施形態では、結晶化阻害剤はクエン酸およびプロピレングリコールのオリゴマーであり、ここでオリゴマーエステルは、2〜8のモノマー計数および約30〜100%のエステル化度を有する。単官能性モノマーは、反応(複数)の終点の制御を手段として、化学反応(複数)に導入することができる。非限定的な例として、結晶化阻害剤は少量の出発物質(複数)を含有することができるが、本発明の範囲にも含まれている。出発物質は、例えばモノマー、例えばクエン酸またはプロピレングリコールである。一般にこのことは、エステルまたはポリエステルを形成する反応(複数)が、生物活性剤なしに実施されることを意味する。
【0058】
送達ビヒクル中に使用される、増粘または粘度増大ポリマーとも呼ばれるフィルム形成剤は、例えば望ましい一貫性を組成物に付与し、生物学的に活性な物質の長期間にわたる送達を可能にする。それらは一般に医薬として許容可能な親水コロイド(例えば多糖)である。
【0059】
適切なフィルム形成剤の例は、デンプン、セルロース、ペクチン、寒天、カラギーナン、ガラクタン、アルギン酸塩、またはアガロースなどの天然親水コロイドである。適切な粘度増大ポリマーの別の例は、アニオン性または非イオン性セルロース誘導体などの化学的に改変された親水コロイドである。適切なアニオン性セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)である。適切な非イオン性セルロース誘導体には、疎水的に改変された水溶性または水膨潤性ポリマーを対象としたWO00/24966に記載のものなどのヒドロキシアルキルセルロース誘導体が含まれる。かかる誘導体の特定の例は、i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびエチルヒドロキシエチルセルロース;ならびにii)疎水的に改変されたメチルセルロースおよび疎水的に改変されたヒドロキシプロピルセルロースである。
【0060】
揮発性溶媒は、当業者に周知の原理に従って、医薬として許容可能な蒸発率を達成し、組成物の有効期間にわたって結晶化阻害剤を機能的に安定に保つ環境を提供するように選択される。同様に、当業者に周知の原理に従って、組成物中の生物活性剤の可溶性は、塗布後の送達ビヒクル中の活性成分の高い飽和度を可能にするのに十分高くなければならない。
【0061】
したがって、適切な溶媒は、酢酸、アセトン、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピル、水、n−ブチルエーテル、イソプロパノール、またはその組合せを含む。
【0062】
溶媒は、個々にまたは混合物として使用することができる。他のタイプの溶媒は、溶媒混合物の可溶性を改変するためにごく一部含まれ得る。
【0063】
本発明の実施形態によれば、生物活性剤は、ヒトまたは動物である哺乳類への局所投与のための任意の医薬として活性な薬剤であってよい。活性薬剤の選択は一般に制限されない。生物活性剤は、皮膚、爪、舌下、歯肉、口腔、経皮、経爪、鼻、膣、および直腸投与のための薬剤によって例示され、それによって得られる生物効果は、局所的および/または全身的であってよい。本発明の生物学的に活性な組成物による送達に適した医薬として活性な薬剤は、それに限定されるものではないが、抗菌剤(例えば、メトロニダゾール、クリンダマイシン)、抗真菌剤(例えば、クロトリマゾール、エコナゾール、テルビナフィン、フルコナゾール、アモロルフィン、イトラコナゾール、ケトコナゾール)、抗ウィルス剤(例えば、アシクロビル、ペンシクロビル、シドフォビル、ブリブジン)、細胞増殖阻害剤(例えば、メトトレキサート、5−フルオロウラシル)、利尿薬(例えば、スピロノラクトン)、免疫調節剤(例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、ピメクロリムス)、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、ブピバカイン)、抗炎症剤(例えば、ピロキシカム、ジクロフェナク、タクロリムス、ピメクロリムス)、乾癬剤(例えば、タザロテン、ジトラノール)、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩によって例示される。特に適切なものは、免疫調節剤および抗炎症剤である。
【0064】
したがって、本発明の実施形態はまた、医薬品としての使用について本明細書で記載される生物学的に活性な局所単相組成物に関する。
【0065】
本発明の一実施形態は、生物活性剤が、全組成物の特に0.1〜10重量%、より具体的には0.5〜5重量%、最も具体的には1〜3重量%の濃度のテルビナフィン、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩の場合である。したがって本発明はまた、生物活性剤が、テルビナフィン、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩である、爪甲真菌症の治療または予防用の医薬品の製造のための、本明細書に定義の生物学的に活性な局所単相組成物の使用に関する。本発明のこの実施形態では、組成物中に、以下にさらに論じる剥離剤および/または角質溶解剤を含むことが好ましい。あるいは本発明はまた、生物活性剤がテルビナフィン、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩である、治療有効量の本明細書に定義の生物学的に活性な局所単相組成物を、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、爪甲真菌症の治療または予防方法に関する。
【0066】
本発明の別の実施形態は、生物活性剤が、全組成物の特に0.01〜10重量%、より具体的には0.05〜5重量%、最も具体的には0.1〜0.5重量%の濃度のアシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩の場合である。したがって、本発明の実施形態はまた、生物活性剤が、アシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩である、水痘帯状疱疹感染症、HSV−1感染症、またはHSV−2感染症の治療または予防用の医薬品の製造のための、本明細書に定義の生物学的に活性な局所単相組成物の使用に関する。あるいは本発明はまた、生物活性剤がアシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩である、治療有効量の本明細書に定義の生物学的に活性な局所単相組成物を、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、水痘帯状疱疹感染症、HSV−1感染症、またはHSV−2感染症の治療または予防方法に関する。
【0067】
本発明の一実施形態では、組成物は浸透促進剤をさらに含む。その目的は、薬物送達を容易にするために、皮膚または粘膜などの生物障壁の特性を可逆的に変えることである。浸透促進剤は、単純アルキルエステル、リン脂質、テルペン、非イオン性界面活性剤、アザシクロヘプタノン(例えば、アゾンおよびその誘導体)、オレイル界面活性剤等から選択することができる。適切な浸透促進剤の例は、「Pharmaceutical skin penetration enhancement」、Walters K.A.およびHadgraft J.編、Marcel Dekker NY、1993年、ならびに「Percutaneous penetration enhancers」2版、Smith E.W.およびMaibach H.I.編、CRC Press、2005年に挙げられている。
【0068】
生物学的に活性な物質の強化された熱力学的活性の効果に加えて、爪を介する浸透性のさらなる増強は、尿素、アセチルシステイン、およびチオ酸によって例示される角質溶解剤、いわゆる剥離剤を組成物中に含むことによってもたらすことができる。
【0069】
カオトロピック物質を含むことによって、疎水性の相互反応(水中の通常の水素結合構造を崩壊し、水素結合した疎水性複合体を破壊する)の変化により、浸透をさらに改善することができる。カオトロピック物質は、尿素、アラントイン、またはグアニジンによって例示され得る。
【0070】
pHを調節するための代替緩衝剤、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム)などのさらなる賦形剤を組成物に添加して、組成物を医薬として許容可能にすることができる。
【0071】
本発明の態様はさらに、本明細書で定義の生物学的に活性な局所単相組成物を含む、ゲル、ローション、クリーム、または軟膏などの医薬として許容可能な組成物に関する。
【0072】
幾つかの生物活性剤について、組成物をその投与のすぐ前に調製することが好ましい。実際に、本組成物はかかる調製に有用であり、さらに長期保存および塗布のための組成物に適している。
【実施例】
【0073】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに例示するものである。実施例において「室温」という用語は、15〜30℃の範囲、一般に18〜28℃の範囲の温度に関する。
【0074】
(実施例1)
表1aの組成物のテルビナフィン3%ゲルを、以下のステップに従って、ビーカー中室温で調製した。i)クエン酸および水酸化ナトリウムを水に溶解し、ii)グリセロール、アセトン、およびテルビナフィンを添加し、iii)ヒドロキシエチルセルロースを激しい撹拌下で添加し、iv)均質なゲルを得た後に、組成物を24時間静置して平衡化し、それによって例えばヒドロキシエチルセルロースを膨潤させ、任意の気泡を消散させた。
【0075】
【表1a】

3種類のテルビナフィン組成物のin vitro浸透を、牛の蹄の膜で、フランツ拡散セルおよび脱ガス緩衝液のレセプター溶液を使用して実施した。各試験膜について、試験組成物をブラシで塗布した。このテルビナフィン3%ゲルから牛の蹄のテルビナフィンin vitro浸透を、Lamisil Dermgel1%(Novartis、Lot F00049A)およびLamisil Cream1%(Novartis、Lot WC114)からのものと比較した。3つのサンプルの6時間後の浸透蓄積量の平均値および標準偏差を、表1bに示す。レセプター溶液中のテルビナフィンの濃度に細胞量をかけ、膜面積で割ることによって、テルビナフィンの浸透量(μg/cm)を算出した。テルビナフィンの浸透量を実験回数で割ることによって、流動性を算出した。
【0076】
送達ビヒクルの粘度が高すぎて、可溶性および飽和レベルを決定することができないため、表1bの浸透データを使用して飽和レベルを推測した。不活性膜を介する薬物最初の浸透は、薬物の飽和レベルのみに依存し、その濃度には依存しないことが周知である。したがって、薬物の標準飽和溶液から得られた浸透データ(例えば、表1bのLamisil Dermgel1%およびLamisil Cream1%)を、本発明の例示的組成物から得たデータ(例えば、表1bのテルビナフィン3%ゲル)と比較して、相対的飽和レベルを決定した。テルビナフィン3%ゲルで達成された蓄積量が、Lamisil Dermgel1%およびLamisil Cream1%で達成された蓄積量よりも多かったことから、テルビナフィン3%ゲルは、飽和Lamisilの例と比較してより飽和、例えば過飽和であった。
【0077】
【表1b】

(実施例2)
臨床研究
足指の爪の爪甲真菌症の治療にテルビナフィン3%ゲルを使用した結果を、非盲検研究から得た。この研究では、爪甲真菌症を伴う患者を、テルビナフィン3%ゲルまたはビヒクルのみで42日間治療した。42日間の研究結果によって、ベースラインでKOH陽性であった治療患者の39.3%が、42日目に陰性に転換したことが示された。PAS陽性ベースラインを示した42.8%の治療患者が、完了時に陰性となった。ベースラインで皮膚糸状菌の培養陽性であった95.2%は、完了時に陰性となった。爪床のテルビナフィンの平均濃度(各時点当たりn=4〜5)は、14日目には2898ng/mg;28日目には2640ng/mg;および42日目には795ng/mgであった。テルビナフィンネイルラッカー3%の局所塗布後、テルビナフィンは十分な量で爪板に浸透して、爪甲真菌症の治療に効果をもたらす。
【0078】
(実施例3)
表3aの組成物AおよびBのアシクロビル0.1%ゲルを、それぞれ以下のステップに従って、ビーカー中室温で調製した。i)アシクロビル、結晶化阻害剤(オリゴマークエン酸エステル)および安息香酸ナトリウムを水に溶解した、ii)pHを水酸化ナトリウムで調節した、iii)混合物を45℃に加熱した、iv)ヒドロキシプロピルセルロースを添加した、v)組成物を撹拌しながら室温に冷却した、vi)撹拌を2時間後に終了した。
【0079】
【表3a】

アシクロビル0.1%ゲルAおよびBからの切除した豚の耳の全層皮膚へのアシクロビルのin vitro浸透を、ゾビラックスクリーム5%(Glaxo Wellcome、Lot0021208)からのものと比較した。6.5時間および12.5時間後の6〜8のサンプルの平均値を、それぞれ表3bに示す。
【0080】
表3bの浸透データを使用して、飽和性を推測した。薬物の標準飽和溶液(例えば、表3bのゾビラックスクリーム5%)のデータを、本発明の例示的組成物から得たデータ(例えば、表3bのアシクロビル0.1%ゲル(A)および(B))と比較して、相対的飽和レベルを決定した。アシクロビル0.1%ゲル(A)および(B)で達成された蓄積量は、ゾビラックスクリーム5%で達成された蓄積量よりも多かったことから、アシクロビル0.1%ゲル(A)および(B)は、飽和ゾビラックスの例と比較してより飽和、例えば過飽和であった。
【0081】
【表3b】

(実施例4)
3種類の増粘剤の1つ、生物活性剤(アシクロビル)、溶媒混合物、および結晶化阻害剤を含有する一連の組成物を製造し、終夜32℃で静置して平衡化した。組成物を表4aに列挙する。
【0082】
【表4a】

アシクロビル組成物のin vitro浸透を、豚の内耳皮膚の膜で、ブロナー(Bronaugh)拡散セルおよび脱ガスリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のレセプター溶液を使用して実施した。ブロナータイプの細胞中での放出率に関して組成物を試験した。曇り点も決定され、これらの結果を表4bに示す。
【0083】
【表4b】

共に45℃未満の曇り点を有する組成物AおよびBは、活性薬剤の優れた流動性をもたらした。したがって、Cが減少するにつれて流動性は改善するが、Cが低すぎると相分離が予期されると思われる。
【0084】
(実施例5)
増粘剤としてのヒドロキシプロピルセルロース(HPC、Klucel(登録商標)MF Pharm)、生物活性剤(アシクロビル)、異なるエタノール濃度の溶媒混合物、および結晶化阻害剤を含有する一連の組成物を製造した。組成物を表5aに列挙する。
【0085】
【表5a】

アシクロビル組成物のin vitro浸透を、豚の内耳皮膚の膜で、ブロナー(Bronaugh)拡散セルおよび脱ガスリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のレセプター溶液を使用して実施した。ブロナータイプの細胞中での放出率に関して組成物を試験した。溶媒混合物中の最初のエタノール含量に対して、豚の耳の皮膚を介する薬物浸透性を決定した。曇り点も決定され、これらの結果を表5bに示す。HPCフィルム形成剤の曇り点を、エタノール濃度の関数とした。
【0086】
【表5b】

35〜45℃以内の曇り点を有する組成物AおよびBは、活性薬剤の優れた流動性をもたらした。
【0087】
(実施例6)
増粘剤としての、キサンタンガムを含有する2種類の組成物(X、Xantural180)、生物活性剤(アシクロビル)、異なるエタノール濃度の溶媒混合物、および結晶化阻害剤を製造した。組成物を表6aに列挙する。
【0088】
【表6a】

アシクロビル組成物のin vitro浸透を、豚の内耳皮膚の膜で、ブロナー(Bronaugh)拡散セルおよび脱ガスリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のレセプター溶液を使用して実施した。ブロナータイプの細胞中での放出率に関して組成物を試験した。溶媒混合物中の最初のエタノール含量に対して、豚の耳の皮膚を介する薬物浸透性を決定し、結果を表6bに示す。
【0089】
【表6b】

組成物Aは組成物Bと比較して多量のエタノールを含有しており、活性薬剤の優れた流動性をもたらした。しかし組成物Aは、相分離する傾向もあった。したがって、組成物の流動性性能は、組成物が相分離する傾向と平衡を保つ必要がある。
【0090】
(実施例7)
4つのアシクロビルゲル(表7a)を、6匹の家畜の豚に局所投与した(豚の屠殺の6、2、および0.5時間前)。全ての組成物を、3回の全ての塗布時に各豚の背中に無作為に塗布した。屠殺後、各豚の部位を個々に洗浄し、テープで剥離し、切除し、凍結し、薄切りにした(50μmの厚さで10個の薄切り。全ての画分を、シンチグラフィーによって分析した。
【0091】
【表7a】

成功基準は、0.5〜6時間にわたる、真皮内での少なくとも0.3μg/cmのアシクロビル最小濃度とした。この基準は、文献[O’Brienら「Acyclovir.An updated review of its antiviral activity、pharmacokinetic properties and therapeutic efficacy」Drugs 37(1989年)233〜309頁;Wagstaffら「Aciclovir;A reappraisal of its antiviral activity、pharmaeokinetics properties and therapeutic efficacy」Drugs 47(1994年)153〜205頁]からのin vitroのIC50値を基に設定した。比較として、7.5〜10mgを1日3回静脈投与すると、血清中5〜10μg/cmのアシクロビル血清濃度が得られたが、800mgを1日5回経口投与すると、1〜1.5μg/cmしか得られなかった[Herneら「Antiviral therapy of acute herpes zoster in older patients.Drugs and Aging Feb.8:2(1996年)97〜112頁]。
【0092】
全ての組成物は、高用量の経口治療について血清中において報告されたものより十分高い、豚の背面皮膚中の皮膚濃度(0〜500μm)をもたらした(表7b)。質量平衡についての考察から、塗布用量は10mg/cmから2〜5mg/cmに低減できることも分かった。
【0093】
【表7b】

(実施例8)
以下の表は、本発明の実施形態の多用途性、ならびに薬物放出に対する相分離の温度(即ち、ポリマーのタイプに依存する曇り点(C)または臨界温度(T))の最適化に含まれ得る添加剤を例示するものである。
【0094】
【表8a】

【0095】
【表8b】

曇り点は、20〜100℃の温度間隔で、可塑剤−溶媒組成物を変えることによって調節することができる。
【0096】
(実施例9)
比較例
組成物中の結晶化阻害剤の量の増大は、可塑剤および有効成分両方の沈殿をもたらし得る。表9aのサンプルAおよびBを、沈殿後32℃で15時間観測した。サンプルAは、クエン酸およびアシクロビル両方の結晶を示した。類似の量のアシクロビルを有するサンプルBは、結晶を示さなかった。
【0097】
【表9a】

結晶化阻害剤の存在下では、有効成分の量が、揮発性溶媒の蒸発後の結晶の形成に影響を及ぼす。サンプル表9b、9c、および9dは、1時間、4時間、および26時間に、それぞれ32℃で観測したものである。
【0098】
表9bのサンプルAおよびBは、蒸発後、フィルム中に結晶を示さなかった。サンプルCは、7時間を超えた後に結晶を示した。サンプルDは1時間後に結晶を示した。
【0099】
【表9b】

表9cのサンプルAは、蒸発後、フィルムに結晶を示さなかった。サンプルBは、7時間を超えた後に結晶を示した。サンプルCは1時間後に結晶を示した。
【0100】
【表9c】

表9dのサンプルAおよびBは、蒸発後、フィルムに結晶を示さなかった。サンプルCは1時間後に結晶を示した。
【0101】
【表9d】

(実施例10)
比較例
より濃縮されたゲルが沈殿し、アシクロビル中で飽和した系を提供するであろうという概念に基付いて、異なる薬物濃度を有するアシクロビルゲルを調製した。その際のその飽和流動性は、より低いアシクロビル濃度を有するゲルの個々の流動性に関係付けられ得るものであった。0.1%ゲルは、0.5%および0.7%ゲルよりも流動性が約1.6倍高いことが観測されたが、これは、蒸発後に飽和製剤を得るために、この特定のビヒクル中に0.06%(w/w)のアシクロビルが含まれることを示すものであった。
【0102】
【表10a】

(実施例11)
以下の表は、本発明の多用途性の実施形態を例示するものである。本発明の実施形態で言及された親水コロイドは、天然親水コロイド(キサンタンガム);非イオン性セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、HPC;ヒドロキシエチルセルロース、HEC;エチルセルロース、EC);およびアニオン性セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、CMC)の各群からの特定のポリマーによって表される。これらの特定のポリマーのそれぞれは、わずかに異なる特性を有する様々な改変形態に存在することもできる。当業者には理解されるように、生物活性剤の可溶性によって、どのタイプの組成物を使用するかが決定される。
【0103】
【表11a】

クエン酸ジエチル(Citrofol(登録商標)Dec;クエン酸/クエン酸ジエチル/クエン酸トリエチル/エタノールが5/25/45/25の混合物)
【0104】
【表11b】

【0105】
【表11c】

Transcutol(登録商標)=ジエチレングリコールモノエチルエーテル
**MPD=2−メチル−2,4−ペンタンジオール
(実施例12)
実施例1で調製され、表1aの組成物を有するテルビナフィン3%ゲルを、安定性の目的で比較した。これらのテルビナフィン組成物のin vitro浸透を、実施例1に記載の牛の蹄の膜で実施したが、各試験膜について、200mg/cmの量の試験組成物を塗布した。表12は、調製後24カ月の2つのサンプルおよび調製後1週間未満の1つのサンプルについて、6時間後の流動性データを示している。浸透能力に有意な差は存在せず、24カ月間保存されていたテルビナフィン3%の流動性を、1週間未満の新しく生成された組成物と比較した。
【0106】
【表12】

本明細書を通じて、「1つの実施形態」、「幾つかの実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、または「一実施形態」への言及は、該実施形態に関連して記載される特定の特性、構造、材料、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な箇所における「1つまたは複数の実施形態において」、「幾つかの実施形態において」、「1つの実施形態において」、または「一実施形態において」などの句の出現は、本発明の同じ実施形態に言及している必要はない。さらに、特定の特性、構造、材料、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切なやり方で組み合わせることができる。
【0107】
本明細書では、本発明の実施形態を特定の実施形態に関して記載してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および応用例の例示に過ぎないことを理解されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に様々な改変および変更を加え得ることを、当業者は理解されよう。したがって、本発明が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある改変および変更を含むことが企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性剤;
送達ビヒクルであって、前記送達ビヒクル中の前記生物活性剤の結晶化を遅延することができる非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む、送達ビヒクル;ならびに
揮発性溶媒
を含む、局所的塗布のための単相医薬組成物であって、前記生物活性剤が前記組成物中に未飽和状態で存在し、前記揮発性溶媒の蒸発時に、前記生物活性剤が過飽和状態で前記送達ビヒクル中に存在する、組成物。
【請求項2】
前記揮発性溶媒が、20℃で5kPa以上の蒸気圧を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記非ポリマー性結晶化阻害剤が、ヒドロキシカルボン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシカルボン酸が、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、またはその組合せを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の投与後最大約24時間、前記非ポリマー性結晶化阻害剤が、前記送達ビヒクル中の前記生物活性剤の結晶化を遅延する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記揮発性溶媒が、酢酸、アセトン、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピル、水、n−ブチルエーテル、イソプロパノール、またはその組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記フィルム形成剤が、親水コロイド、親水コロイド誘導体、またはその組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記フィルム形成剤が、デンプン、ペクチン、寒天、セルロース、セルロース誘導体、カラギーナン、ガラクタン、アルギン酸塩、アガロース、キサンタンガム、またはその組合せを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記セルロースまたはセルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはその組合せを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記フィルム形成剤が、組成物中、約30℃〜約100℃の曇り点(C)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記曇り点(C)が約40℃〜約70℃である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記曇り点(C)が約45℃〜約55℃である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記可塑剤が、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)、酢酸プロピル、アニソール、またはその組合せを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記生物活性剤が、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤、細胞増殖阻害剤、利尿薬、免疫調節剤、局所麻酔薬、抗炎症剤、乾癬剤、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記生物活性剤が、テルビナフィン、ナフチフィン、アモロルフィン、ブテナフィン、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記生物活性剤が、テルビナフィン、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含み、組成物中約0.1〜約10重量%の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記生物活性剤がテルビナフィンを含み、前記非ポリマー性結晶化阻害剤がクエン酸を含み、前記揮発性溶媒がアセトンを含み、前記フィルム形成剤がヒドロキシエチルセルロースを含み、前記可塑剤がグリセロールを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記生物活性剤が、アシクロビル、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記アシクロビル、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せが、組成物中約0.01〜約10重量%の量で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記非ポリマー性結晶化阻害剤が、組成物中約5〜約15重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記揮発性溶媒が、組成物中約10〜約95重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記フィルム形成剤が、組成物中約0.5〜約5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記可塑剤が、組成物中約5〜約15重量%の量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項25】
前記送達ビヒクルが、医薬として許容可能な賦形剤、浸透促進剤、角質溶解剤もしくは剥離剤、カオトロピック物質、芳香剤、皮膚緩和薬、またはその組合せをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
テルビナフィン、アセトン、クエン酸、グリセロール、およびフィルム形成剤を含む、爪甲真菌症の治療に有効な単相組成物。
【請求項27】
2〜10重量%の範囲の量のテルビナフィン、10〜50重量%の範囲の量のアセトン、1〜10重量%の範囲の量のクエン酸、1〜10重量%の範囲の量のグリセロール、および2〜8重量%の範囲の量のフィルム形成剤を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記テルビナフィンが組成物中に未飽和状態で存在し、アセトンの蒸発時に、前記テルビナフィンが過飽和状態で前記送達ビヒクル中に存在する、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物がゲルである、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
生物活性剤;
前記生物活性剤の結晶化を遅延することができる非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む送達ビヒクル;ならびに
揮発性溶媒
を含む単相医薬組成物であって、ここで、前記生物活性剤は前記組成物中に未飽和状態で存在し、前記揮発性溶媒の蒸発時に、前記生物活性剤は過飽和状態で前記送達ビヒクル中に存在する、単相医薬組成物、ならびに
前記生物活性剤を必要とする領域に前記組成物を塗布するための塗布具
を含むキット。
【請求項31】
ゲル、ローション、クリーム、軟膏、エアロゾル、またはポンプスプレーなどの、請求項1に記載の組成物を含む医薬として許容可能な製剤。
【請求項32】
前記生物活性剤が、テルビナフィン、ナフチフィン、アモロルフィン、ブテナフィン、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せである、爪甲真菌症の治療用または予防用の医薬品の製造のための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項33】
過飽和抗真菌剤を投与するステップを含む、爪甲真菌症の治療方法。
【請求項34】
治療有効量のテルビナフィン、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩を含む単相組成物;非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む送達ビヒクル;ならびに揮発性溶媒を、治療を必要とする局所領域に塗布するステップであって、ここで、前記テルビナフィン、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩は、前記組成物中に未飽和状態で存在する、ステップ;
前記揮発性溶媒を蒸発させるステップ
をさらに含み、前記投与ステップが、前記揮発性溶媒の蒸発時に、前記テルビナフィン、その誘導体、プロドラッグ、または塩が前記送達ビヒクル中で過飽和状態となるように、前記テルビナフィン、その誘導体、プロドラッグ、または塩および前記送達ビヒクルを提供するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記送達ビヒクルが可塑剤をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記生物活性剤がテルビナフィンを含み、前記非ポリマー性結晶化阻害剤がクエン酸を含み、前記揮発性溶媒がアセトンを含み、前記フィルム形成剤がヒドロキシエチルセルロースを含み、前記可塑剤がグリセロールを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、2〜10重量%の範囲の量のテルビナフィン、10〜50重量%の範囲の量のアセトン、1〜10重量%の範囲の量のクエン酸、1〜10重量%の範囲の量のグリセロール、および2〜8重量%の範囲の量のフィルム形成剤を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生物活性剤が、アシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩である、水痘帯状疱疹感染症、HSV−1感染症、またはHSV−2感染症の治療用または予防用の医薬品の製造のための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項39】
過飽和抗ウィルス剤を投与するステップを含む、水痘帯状疱疹感染症、HSV−1感染症、またはHSV−2感染症の治療または予防方法。
【請求項40】
治療有効量のアシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩を含む単相組成物;非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む送達ビヒクル;ならびに揮発性溶媒を、治療を必要とする局所領域に塗布するステップであって、ここで、前記アシクロビル、またはその誘導体、プロドラッグ、もしくは塩は、前記組成物中に未飽和状態で存在する、ステップ;
前記揮発性溶媒を蒸発させるステップ
をさらに含み、前記投与ステップが、前記揮発性溶媒の蒸発時に、前記アシクロビル、その誘導体、プロドラッグ、または塩が前記送達ビヒクル中で過飽和状態となるように、前記アシクロビル、その誘導体、プロドラッグ、または塩および前記送達ビヒクルを提供するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記送達ビヒクルが可塑剤をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
生物活性剤を提供するステップ;
送達ビヒクルを提供するステップであって、前記送達ビヒクル中の前記生物活性剤の結晶化を遅延することができる非ポリマー性結晶化阻害剤およびフィルム形成剤を含む、ステップ;
揮発性溶媒を提供するステップ;ならびに
前記生物活性剤、前記送達ビヒクル、および前記揮発性溶媒を混合して、組成物を形成するステップ
を含み、前記生物活性剤が前記組成物中に未飽和状態で存在し、前記生物活性剤が前記送達ビヒクル中に過飽和状態で存在する、単相局所組成物の製造方法。
【請求項43】
前記生物活性剤が、テルビナフィン、ナフチフィン、アモロルフィン、ブテナフィン、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記生物活性剤が、アシクロビル、その誘導体、そのプロドラッグ、その塩、またはその組合せを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
適切な保存容器中で約12カ月以上の期間、安定なままである、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
適切な保存容器中で約24カ月以上の期間、安定なままである、請求項45に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−540019(P2009−540019A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515645(P2009−515645)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/071212
【国際公開番号】WO2007/147052
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(399131150)ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ・リミテッド (19)
【出願人】(506017137)ドクター レディズ ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】