説明

層状物品

【課題】層状物品を提供する。
【解決手段】本物品は、第1の外側層(300)と、第2の中間層(200、201)と、基材(100)とを含み、第2の中間層(200、201)は、第1の界面で第1の外側層(300)にかつ第2の界面で基材(100)に接触している。第1の外側層(300)は、Al−TiOを含み、また第2の中間層(200、201)は、傾斜機能材料を含む。傾斜機能材料は、第1の界面に近接した位置において実質的にAl−TiOを含まずかつ第2の界面の位置において第1の外側層(300)と実質的に等しい量のAl−TiOを有する組成を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には被覆物品に関する。具体的には、本発明は、総括的にはタービン部品の形態の被覆物品に関する。さらに、本発明は、総括的には皮膜がタービン部品に耐侵食性及び耐スティック性をもたらすようになったタービン部品の形態の被覆物品に関する。
【背景技術】
【0002】
それに限定されないが、ガスタービンバケット及びノズルのようなタービン部品内に並びに該タービン部品上に、侵食が発生する可能性がある。侵食は、バナジウム含有アッシュがそれらの部品上に侵食を生じさせるおそれがある程度まで過量のバナジウム(V)を含むアッシュ形成燃料を燃焼させた時に明確に確認することができる。燃料は、必ずしもバナジウムを含んでいる必要はないが、燃焼したあらゆる燃料が、含アッシュ燃焼ガスを形成する。
【0003】
高レベルのV(>100ppm)を含む重油燃料(HFO)を燃焼させるガスタービンは、腐食を抑制するためにこれらの燃料に付加されたバナジウム及びマグネシウムの反応により生じたアッシュによる衝撃及び侵食を受ける傾向になる可能性がある。これらのアッシュ粒子の衝撃及びその侵食作用により、タービン部品材料の喪失が生じて、該タービン部品の健全性に悪影響を与える可能性がある。幾つかのケースにおけるタービン部品は、該タービン部品を酸化から保護しようとして施工した被膜を有することができる。しかしながら、それら被膜の幾つかは、アッシュの衝撃及び侵食に対する耐性を適切に有するものにはなっていない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6740364号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
つまり、本発明の1つの態様によると、物品は、第1の外側層と、第2の中間層と、基材とを含む。第2の中間層は、第1の界面で第1の外側層にかつ第2の界面で基材に接触しており、またさらに第1の外側層は、Al−TiOを含む。第2の中間層は、傾斜機能材料を含み、この傾斜機能材料は、第1の界面に近接した位置において実質的にAl−TiOを含まずかつ第2の界面の位置において第1の外側層と実質的に等しい量のAl−TiOを有する組成を含む。
【0006】
つまり、本発明の別の態様によると、物品は、第1の外側層と、第2の中間層と、基材とを含む。第2の中間層は、第1の界面で第1の外側層にかつ第2の界面で基材に接触しており、またさらに第1の外側層は、Al−TiOを含む。第2の中間層は、イットリウム安定化ジルコニアを含む。
【0007】
つまり、本発明のさらに別の態様によると、物品は、第1の層と、基材とを含む。第1の層は、耐侵食性及び耐スティック性をもたらすNiCr−Cr材料を含む。
【0008】
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様並びに利点は、図面全体を通して同じ参照符号が同様の部品を表している添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより一層良好に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によって具現化した例示的な皮膜の概略図。
【図2】本発明によって具現化した別の例示的な皮膜(層1がまた粗面層150を含む必要がある−修正した図2参照)の概略図。
【図3】本発明によって具現化した別の例示的な皮膜(層1がNiCr−Crとなる必要がある−修正した図3参照)の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つ又はそれ以上の特定の実施形態について、以下に説明する。これら実施形態の簡潔な説明を行うために、本明細書では、実際の実施態様の全ての特徴については説明しないことにする。あらゆる工学技術又は設計プロジェクトにおけるのと同様にあらゆるそのような実際の実施態様の開発では、多数の実施態様仕様の決定を行って、実施態様間で変化する可能性があるシステム関連及びビジネス関連制約条件の順守のような開発者の特定の目標を達成するようにしなければならないことを理解されたい。さらに、そのような開発努力は、複雑なものとなりかつ時間がかかる可能性があるが、それにも拘わらず、本開示の利点を有する当業者には、設計、組立及び製造の定型業務であることになることを理解されたい。
【0011】
本明細書では、第1の、第2のなどの用語は、様々な要素を説明するのに用いることができるが、それらの要素は、これら用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これら用語は、1つの要素を別の要素と区別するためにのみ用いている。例えば、例示的実施形態の技術的範囲から逸脱せずに、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、また同様に第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で用いる場合に、「及び/又は」という用語は、関連する記載項目の1つ又はそれ以上のいずれか及び全ての組合せを含む。
【0012】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのみのものであり、例示的な実施形態の限定を意図するものではない。本明細書で用いる場合に、数詞を付していない表現は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の形態もまた含むことを意図している。さらに、本明細書で用いる場合の「含む」、「含んでいる」、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、記述した特徴、回数、ステップ、操作、要素及び/又は構成部品の存在を特定するが、1つ又はそれ以上のその他の特徴、回数、ステップ、操作、要素、構成部品及び/或いはそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことを理解されたい。
【0013】
例えば本発明を決して限定するものではないが、本発明の態様は、耐侵食性及び/又は耐衝撃性を強化した皮膜を提供することである。これらの皮膜は、物品に対して本発明によって具現化した強化型の耐侵食性及び/又は耐衝撃性皮膜をもたらす。例えば、本発明によって具現化した物品は、タービン部品を含むことができる。タービン部品は、それに限定されないが、ガスタービンを含むタービンのバケット、ベーン、ノズル、ライナ、ガスタービン燃焼システムの部品、燃焼器、移行部品、ブレード又はあらゆるその他の高温ガス通路部品のようなガスタービン部品とすることができ、本明細書では、本発明に対する非限定的な表現としてタービン部品つまり「物品」と呼ぶことにする。
【0014】
強化型の耐侵食性及び/又は耐衝撃性皮膜をもたらす本発明によって具現化した皮膜は、重油燃料(HFO)を使用することができるタービンにおいて使用することができ、その場合に、これら重油燃料機械内のVレベルは、約100ppm以下であり、一般的には約20〜約60ppmの範囲内である。従って、強化型の耐侵食性及び/又は耐衝撃性皮膜をもたらす本発明によって具現化した皮膜は、正常間隔以前に発生する可能性があるタービン部品の過早整備補修を回避させることができる。
【0015】
本発明の1つの態様は、タービン部品の一部を形成したMCrAlY基材上における耐侵食性セラミック外側皮膜を提供する。図を参照すると、本発明によって具現化したセラミック皮膜1(図1、図2及び図3に示すような)は一般的に、それに対して該セラミック皮膜を施工した基材100又は金属部分と同等であるか或いは基材100又は金属部分よりも滑らかである平滑度を示すことになる。基材は、MCrAlYタービン部品を含むことができる。
【0016】
本発明によって具現化したセラミック皮膜1の平滑度は、タービン部品の金属基材及びあらゆる既存のタービン部品皮膜と比較して、その耐侵食性故に長時間にわたるタービン部品の使用中に維持することができる。タービン部品の金属基材100又はあらゆる既存のタービン部品皮膜100(図2)は、比較的滑らかな状態で使用開始することができるが、該タービン部品の使用の間に比較的粗面状態にかつ滑らかでない状態になることになる。タービン部品の使用により、該タービン部品の平滑性が、それに限定されないが例えばアッシュ侵食によって粗面状にされる。侵食により、タービン部品のより多くの汚損が生じるおそれがある。
【0017】
本発明によって具現化したように、タービン用の燃料の燃焼の間に形成されたアッシュ粒子のような粒子は、公知の硬質セラミック皮膜により跳ね返されかつ該皮膜にスティックしない可能性がある。本発明によって具現化した皮膜1は、アルミナ、アルミナ、アルミナ−チタニア、NiCr−Cr及びドープ/希土類安定化ジルコニアの少なくとも1つをその層状構造を含むことができる。
【0018】
本発明によって具現化したセラミック皮膜は、約5〜約45μmの範囲にある供給原料粉末径を使用して高速空気プラズマ溶射ガンによって施工することができる。そのようなプロセスは、表面Ra〜100マイクロインチを有する滑らかな皮膜を生成することになる。
【0019】
本発明によって具現化したセラミック皮膜1の厚さは、約0.002〜約0.10インチの範囲又は少なくとも約10ミルを有し、或いは約10ミル〜約15ミルの厚さを有する。耐侵食性スティック防止つまり第1の外側層300と呼ぶことができるセラミック層1は、Al−TiO皮膜を含む。第1の外側層300のTiOの組成は、約0〜約20%の範囲、例えば約0〜約13%の範囲内で変化することができる。
【0020】
本発明によって具現化した皮膜は、第2の中間層200又は201を含む。第2の中間層200又は201は、第1の界面で第1の外側層300にかつ第2の界面で基材100に接触する。
【0021】
図1に示すように、第2の中間層201は、基材/既存皮膜上に傾斜機能材料として施工することができる。この第2の中間層201における傾斜機能材料は、Al−TiO皮膜を含み、この皮膜内では、TiOが、実質的に約0〜約20%、例えば約0〜約13%の範囲内で変化し、かつTiOが、基材100の位置での第1の界面における実質的に約0%から約20%に、例えば約0%から第1の外側層との間の第2の界面における約13%の範囲内で傾斜し又は変化している。
【0022】
それに代えてまた本発明の別の態様によると、第2の中間層200は希土類元素を含むイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)材料を含むことができる。これらの希土類元素には、タンタルTa、イッテルビウムYb、セリウムCe及び/又はスカンジウムScの少なくとも1つを含むことができる。これらの希土類元素は、第2の中間層200のより良好な固着を助けることができる。
【0023】
本発明によって具現化したセラミック皮膜1は、ガスタービンの殆ど全ての段において見られる温度及び環境に耐えるのを可能にすることができる。
【0024】
本発明によって具現化したセラミック皮膜1は、粉末を含む第1の外側層及び第2の外側層の少なくとも1つを有することができる。粉末は、約5μm(μ5m)〜約45μm(μ45m)の範囲の直径を有する粉末材料として供給することができる。
【0025】
本発明の別の態様において、図3は、ガスタービンの第2段及びより高温段で使用するようになった本発明によって具現化した皮膜が、NiCr−Crを含むことを示している。この皮膜400は、基材100及びあらゆる既存皮膜上における単層構成を有する(本発明の技術的範囲にあるものとしてこの実施形態に示している)。この皮膜400は、ガスタービンの第1段の温度と比較して、該ガスタービンの第2段及びより高段における温度に耐えるのを可能にすることができる。
【0026】
それに限定されないが、ガスタービン用のバケット、ベーン、ノズル、ライナ、ガスタービン燃焼システムの部品、燃焼器、移行部品、ブレード又はあらゆるその他の高温ガス通路部品のような高温ガス通路部品は、重油燃料(HFO)を燃焼させることによって作動させることができる。これらのガスタービンは、本発明によって具現化した皮膜1で被覆され、かつ該タービン内で発生したアッシュ/粒子物質による衝撃/侵食/汚損損傷からタービン部品を保護することになる。本発明によって具現化した皮膜は、約100ppmよりも高いバナジウム(V)レベルを含むHFOを燃焼させるガスタービンに適用することを意図している。
【0027】
本発明によって具現化した皮膜1の化学物質は、抑制V環境に関して不活性であるつまりアッシュ侵食に対する耐性を有するように選択され、かつ微細粉末及び高速空気プラズマ溶射法を使用して施工することができる。従って、皮膜1は、ガスタービンの高温ガス通路内のアッシュによる汚損/スティック作用に対する耐性を有する緻密かつ滑らかな皮膜を生成することができる。
【0028】
本発明によって具現化したように耐衝撃性及び耐スティック防止侵食性皮膜1を施工する利点は、高温ガス通路及びガスタービン部品寿命を延長することである。従って、これらの部品は、期待補修間隔にわたって機能を維持することができる。また、本発明によって具現化したようにガスタービンに皮膜1を設けた場合には、水洗浄によるアッシュ除去の頻度を殆ど必要とせず、タービンがより多くの電気を発電することができるような該タービンの作動つまり「アップタイム」を可能にする。
【0029】
本明細書に開示した範囲は、包括的でありかつ組合せ可能である(例えば、「最大約25重量%までの又はより具体的には約5重量%〜約20重量%」の範囲というのは、「約5重量%〜約25重量%」の範囲の端点及び全ての中間値などを含む)。「組合せ」というのは、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを包括する。さらに、本明細書における「第1の」、「第2の」などの用語は、何らの順序、数量又は重要度を表すものではなく、むしろ1つの要素を別の要素から区別するために使用しており、また本明細書における数詞を付していない表現は、数量の限定を表すものではなく、むしろ記載した事項の少なくとも1つが存在することを表している。数量と関連して使用する「約」と言う修飾語は、記述した数値を包含しかつ文脈によって決まる意図的意味を有する(例えば、特定の数量の測定に関連する誤差の程度を含む)。本明細書で使用する場合における「1つ又は複数の」という前置表現は、この表現が前置する用語のものの単数及び複数の両方を含み、従ってその用語のものの1つ又はそれ以上を含む(例えば、1つ又は複数の着色料という表現は、1つ又はそれ以上の着色料を含む)ことを意図している。本明細書全体にわたる「1つの実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」などという表現は、その実施形態と関連させて説明した特定の要素(例えば、特徴形状、構造及び/又は特性)が本明細書に記載した少なくとも1つの実施形態には含まれまた他の実施形態には存在することができ或いは存在しなくてもよいことを意味している。加えて、記載した要素は、様々な実施形態においてあらゆる好適な方法で組合せることができることを理解されたい。
【0030】
本明細書では、本発明の一部の特徴のみを例示しかつ説明してきたが、当業者には多くの修正及び変更が想起されるであろう。従って、特許請求の範囲は、全てのそのような修正及び変更を本発明の技術思想の範囲内に属するものとして保護することを意図していることを理解されたい。
【符号の説明】
【0031】
1 セラミック皮膜
100 基材
150 既存皮膜/基材の粗面層
200 第2の中間層
201 第2の中間層
300 第1の外側層
400 単層構成の皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外側層(300)と、
第2の中間層(200、201)と、
基材(100)と
を含む物品であって、
第2の中間層(200、201)が、第1の界面で第1の外側層(300)にかつ第2の界面で前記基材(100)に接触し、
第1の外側層(300)が、Al−TiOを含み、
第2の中間層(200、201)が、傾斜機能材料を含み、
前記傾斜機能材料が、第1の界面に近接した位置において実質的にAl−TiOを含まずかつ第2の界面の位置において第1の外側層(300)に実質的に等しい量のAl−TiOを有する組成を含む、
物品。
【請求項2】
第1の外側層(300)が、そのTiOの量が該第1の層の約20%である状態になったAl−TiOを含む、請求項1記載の物品。
【請求項3】
第2の中間層(200、201)が、少なくとも約10ミルの厚さを含む、請求項1記載の物品。
【請求項4】
前記基材(100)が、MCrAlYタービン部品を含む、請求項1記載の物品。
【請求項5】
前記基材(100)が、基層と該基層上の皮膜層とを含む、請求項1記載の物品。
【請求項6】
物品であって、
第1の外側層(300)と、
第2の中間層(200、201)と、
基材(100)と、を含み、
第2の中間層(200、201)が、第1の界面で第1の外側層(300)にかつ第2の界面で前記基材(100)に接触し、
第1の外側層(300)が、Al−TiOを含み、
第2の中間層(200、201)が、イットリウム安定化ジルコニアを含む、
物品。
【請求項7】
第2の中間層(200、201)のイットリウム安定化ジルコニアが、希土類ドーピング構成成分をさらに含む、請求項6記載の物品。
【請求項8】
前記希土類ドーピング構成成分が、タンタル、イッテルビウム、セリウム及びスカンジウムの少なくとも1つを含む、請求項6記載の物品。
【請求項9】
前記基材(100)が、基層と該基層上の皮膜層とを含む、請求項6記載の物品。
【請求項10】
物品であって、
第1の層と、
基材(100)と、を含み、
第1の層が、耐侵食性及び耐スティック性をもたらすNiCr−Cr材料を含む、
物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−184796(P2011−184796A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−41053(P2011−41053)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】