説明

差圧弁及び空気バネ式懸架装置

【課題】弁体のシール部材の劣化を防止する。
【解決手段】差圧弁は、シール部材50を有する弁体6と、シール部材50に対向する凸部5aを有するバルブシート5と、バルブシート5に押し付ける方向に弁体6を付勢するスプリング4と、弁体6のバルブシート5側への移動を停止するストッパ部31と、を備える。弁体6に加わるバルブシート5側の流体圧とこれと反対側の流体圧との差圧が所定値より小さい場合に、弁体6のシール部材50がバルブシート5の凸部5aに押し付けられる。ストッパ部31は、凸部5aがシール部材50に押し付けられる距離を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧弁及びその差圧弁を備える空気バネ式懸架装置に関する。特に空気バネ式懸架装置は、車両において用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鉄道車両の空気バネ式懸架装置に設けられる従来の差圧弁を例示する。空気バネ式懸架装置は、鉄道車両の車軸を懸架する左右の第一空気バネと第二空気バネを有する。差圧弁は、第一と第二空気バネの圧力差(即ち差圧)に応じて両者を連通し、第一空気バネと第二空気バネのうち正常な空気バネの空気を空気漏れした空気バネへと導き、車体が大きく傾かないようにする。
【0003】
この従来の差圧弁は、第一と第二空気バネの差圧が、差圧弁のスプリングの荷重によって決まる所定値よりも小さい場合、弁体が略円筒形状のバルブシート(又は弁座)に着座して閉じている。この場合に、弁体のバルブシート側の端部に配置されるシール部材は、バルブシートの環状の凸部に押し付けられ、バルブシートのポートを密閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−120723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、差圧弁が繰り返し開閉して、バルブシートの環状の凸部が、シール部材に繰り返し押し付けられると、その押し付けられた部分でシール部材の弾性が失われ硬化した状態になり劣化(へたり)が生じる。このような場合、シール部材がバルブシートのポートを密閉することが困難になり、差圧弁が開く時の差圧が設定値からずれるという問題が生じる。また、シール部材の寿命が短いという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みて、差圧弁において弁体のシール部材の劣化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る差圧弁は、シール部材を有する弁体と、前記シール部材に対向する凸部を有するバルブシートと、前記バルブシートに押し付ける方向に前記弁体を付勢するスプリングと、前記弁体の前記バルブシート側への移動を停止するストッパ部と、を備える。前記弁体に加わる前記バルブシート側の流体圧とこれと反対側の流体圧との差圧が所定値より小さい場合に、前記弁体の前記シール部材が前記バルブシートの前記凸部に押し付けられる。前記ストッパ部は、前記凸部が前記シール部材に押し付けられる距離を制限する。
【0008】
前記ストッパ部は、前記弁体の軸方向と平行に前記弁体から前記バルブシート側へ突出した突出部であってよい。また、前記ストッパ部は、前記弁体の軸方向と平行に前記バルブシートから前記弁体側へ突出した突出部であってよい。さらに、また、前記ストッパ部は、前記弁体と前記バルブシートとの間に配置されるスペーサであってよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、差圧弁において、弁体のシール部材の劣化(へたり)が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】空気バネ式の懸架装置を示す概略図である。
【図2】差圧弁ユニットの一部断面図である。
【図3】第一実施形態に係る差圧弁の一部断面図である。
【図4】第一実施形態に係るストッパ部の機能を示す断面図である。
【図5】第二実施形態に係る差圧弁の一部断面図である。
【図6】第三実施形態に係る差圧弁の一部断面図である。
【図7】その他の実施形態に係る差圧弁の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
図1のように、第一実施形態において、差圧弁ユニット10は4点支持方式の空気バネ式の懸架装置に設けられている。空気バネ式懸架装置は、車両の車軸を懸架する左右の第一と第二空気バネ11、12と、第一と第二空気バネ11、12の圧力差(差圧)に応じて両者を連通する差圧弁ユニット10とを備える。車両は、例えば鉄道車両であるが、これに限定されない。高さ調整弁13は、第一と第二空気バネ11、12に導かれる空気圧を調整し、車両の車高を調整する。
【0012】
差圧弁ユニット10は、第一と第二空気バネ11、12の一方が空気漏れした場合、第一、第二空気バネ11、12のうち正常な空気バネの高い圧力を空気漏れした空気バネへと導き、車体が大きく傾かないようにする。
【0013】
図2は、本実施形態に係る差圧弁ユニット10の一部断面図である。差圧弁ユニット10は一対の差圧弁1、2を備える。差圧弁1と差圧弁2は同じ構造を有している。差圧弁1(又は差圧弁2)は、連通路3と、スプリング4と、バルブシート5と、弁体6と、ストッパ部31とを備える。
【0014】
連通路3は、差圧弁1(又は差圧弁2)が開いた場合に左右に配置された第一と第二空気バネ11、12を連通できる。スプリング4は、略円筒形状の弁体6を付勢してバルブシート5に押し付ける。ストッパ部31は、弁体6のバルブシート5側への移動を停止するもので、第一実施形態では、弁体6のバルブシート5側の端面6dにおいて、弁体6と一体的に設けられている。バルブシート5は、略円筒形状であり、円環状の凸部5aを弁体6側の端部に備え、また、空気(流体)を流通できるポート5bを内部に備える。ポート5bは、軸60の方向に垂直な円状の断面を有する空気通路である。なお、凸部5aは、環状の形状であれば、円環状のほかに四角環状等の形状を有してもよい。
【0015】
中空のキャップ(蓋)41は、差圧弁1(又は差圧弁2)の中空の円筒形の後部42に結合される。流体圧としての第一空気バネ11の空気圧P1(又は第二空気バネ12の空気圧P2)は、中空のキャップ41と差圧弁1(又は差圧弁2)の中空の後部42を介して、スプリング4が設置されるバネ室43に導かれる。さらに、空気圧P1(又は空気圧P2)は、弁体6の孔6aを介して連通路3に導かれる。
【0016】
弁体6は、シリンダ部40内で摺動し、第一と第二空気バネ11、12の連通を許可又は禁止する。弁体6は軸対称な形状を有し、弁体6の軸60の方向は弁体6の摺動方向に略一致する。バルブシート5に対して弁体6が着座する場合、差圧弁1(又は差圧弁2)が閉じる。バルブシート5から弁体6が離れると、差圧弁1(又は差圧弁2)が開く。なお、弁体6のバルブシート5側の端部に配置されるシール部材50は、バルブシート5の円環状の凸部5aに押し付けられた場合に、バルブシート5のポート5bを密閉する。
【0017】
シール部材50は、弁体6の本体部分6cの軸60の方向の端部に埋め込まれて嵌合している。シール部材50は、樹脂(ゴム)からなる軸対称な略円板状の部材であり、シール部材50の軸と弁体6の軸60は略一致している。例えば、樹脂は、NBR(ニトリルゴム)である。弁体6の本体部分6cは、銅などの金属からなり、シール部材50は、弁体6の本体部分6cに焼き付けられている。
【0018】
弁体6は、スプリング4が設置されるバネ室43と連通路3を連通する孔6aを有する。さらに、弁体6は、バルブシート5側に空気通路6b(又は切欠き)も有する。空気通路6bは、バルブシート5から弁体6が離れた場合に、バルブシート5のポート5bを介して連通路3同士を連通する。
【0019】
差圧弁1の弁体6は、弁体6を閉じ側に付勢する第一空気バネ11の空気圧力P1を受ける閉じ側受圧面8と、弁体6を開き側に付勢する第二空気バネ12の空気圧力P2を受ける開き側受圧面9とを有する。同様に、差圧弁2の弁体6は、弁体6を閉じ側に付勢する第二空気バネ12の空気圧力P2を受ける閉じ側受圧面8と、弁体6を開き側に付勢する第一空気バネ11の空気圧力P1を受ける開き側受圧面9とを有する。
【0020】
差圧弁1の弁体6において第一空気バネ11の空気圧力P1を受ける閉じ側有効受圧面積と、第二空気バネ12の空気圧力P2を受ける開き側有効受圧面積とは等しく、バルブシート5内のポート5bの断面積A3となる。同様に、差圧弁2の弁体6において第二空気バネ12の空気圧力P2を受ける閉じ側有効受圧面積と、第一空気バネ11の空気圧力P1を受ける開き側有効受圧面積とは等しく、バルブシート5内のポート5bの断面積A3となる。なお、弁体6のバルブシート側の空気通路6b(又は切欠き)の存在によって、バルブシート5の円環状の凸部5aより外側に位置した部位に作用する開き側と閉じ側の圧力は互いに相殺される。
【0021】
差圧弁1において、弁体6を閉じ側(バルブシート5側)に付勢する力はスプリング4の付勢力Fと第一空気バネ11の圧力P1による付勢力P1×A3の和となる。一方、弁体6を開き側(スプリング4側)に付勢する力は第二空気バネ12の圧力P2による付勢力P2×A3となる。従って、P2×A3>F+P1×A3になると差圧弁1が開く。弁体6が開く第一と第二空気バネ11、12の差圧ΔP(=P2−P1)は、F/A3(定数)となる。このため、差圧ΔPが所定値F/A3を超える場合、差圧弁1が開き、弁体6の空気通路6bに空気が流れて、第二空気バネ12の高い圧力P2は第一空気バネ11へと導かれる。一方、差圧ΔPが所定値F/A3より小さい場合、弁体6がバルブシート5に着座して差圧弁1は閉じている。
【0022】
差圧弁2において、弁体6を閉じ側に付勢する力はスプリング4の付勢力Fと第二空気バネ12の圧力P2による付勢力P2×A3の和となる。一方、弁体6を開き側に付勢する力は第一空気バネ11の圧力P1による付勢力P1×A3となる。従って、P1×A3>F+P2×A3になると差圧弁2が開く。弁体6が開く第一と第二空気バネ11、12の差圧ΔP(=P1−P2)は、F/A3(定数)となる。このため、差圧ΔPが所定値F/A3を超える場合、差圧弁2が開き、弁体6の空気通路6bに空気が流れて、第一空気バネ11の高い圧力P1は第二空気バネ12へと導かれる。一方、差圧ΔPが所定値F/A3より小さい場合、弁体6がバルブシート5に着座して差圧弁2は閉じている。
【0023】
次に、図3と図4を参照して、ストッパ部31の構成と機能について説明する。ストッパ部31は、突出部として、弁体6の軸60の方向と平行な方向に弁体6からバルブシート5側へ突出し、弁体6のバルブシート5側の端面6dにおいて弁体6の軸60から離れる方向に設けられている。ストッパ部31は、単一の部材として、弁体6の軸60の周りで円環状に設けてよいし、また、複数のストッパ部31を互いに分離して設けてもよい。複数のストッパ部31がバルブシート5に当接した場合に荷重が均等に掛るように、複数のストッパ部31は、軸60に関して円周方向に等間隔で配置されることが好ましい。
【0024】
図3のように、弁体6は、差圧弁1(又は差圧弁2)が開いた後閉じる場合に、スプリング4に押されて、弁体6の軸60の方向に沿ってバルブシート5側へ移動する。図4のように、ストッパ部31が、バルブシート5の弁体6側の端面5cに当接すると、弁体6のバルブシート5側への移動は停止する。ストッパ部31は、円環状の凸部5aがシール部材50に押し付けられる距離(長さ)を所定距離(所定の長さ)Lに制限する。所定距離Lは、凸部5aの高さh0から、ストッパ部31の高さh1を減算した値となる(L=h0−h1)。即ち、所定距離Lは、ストッパ部31の高さh1により調整できる。なお、凸部5aの高さh0は、バルブシート5の端面5cからの軸60の方向における高さである。ストッパ部31の高さh1は、シール部材50の端面6dからの軸60の方向における高さである。
【0025】
所定距離Lは、シール部材50の劣化(へたり)が生じない程度に小さく設定されるが、凸部5aとシール部材50によるシールが可能な程度には大きく設定される。所定距離Lは、例えば、シール部材50の厚みの30パーセントである。また、凸部5aの高さh0とストッパ部31の高さh1は、弁体6の端面6dとバルブシート5の端面5cの間に形成される空気通路35に空気が流通しやすくなる程度に高くする必要がある。従って、シール部材50の劣化(へたり)を防止するために、凸部5aの高さh0自体を所定距離Lに設定して、ストッパ部31の高さh1をゼロとすることは問題を生じる。
【0026】
次に、第一実施形態の作用効果について述べる。第一実施形態によると、差圧弁1(又は差圧弁2)は、弁体6のバルブシート5側への移動を停止するストッパ部31を備える。ストッパ部31は、バルブシート5の凸部5aがシール部材50に押し込まれる距離を制限する。これにより、弁体6のシール部材50の劣化(へたり)が防止でき、シート部からの空気漏れを防ぐことが可能となる。さらに、シール部材50が弁体6の本体部分6cに焼き付けられている場合、弁体6自体の交換時期や使用可能期間が延びる。
【0027】
また、ストッパ部31は、弁体6の軸60の方向と平行に弁体6からバルブシート5側へ突出した突出部である。これにより、ストッパ部31は、弁体6のバルブシート5側への移動を確実に停止できるとともに、ストッパ部31の高さの調整によって、バルブシート5の凸部5aがシール部材50に押し付けられる距離を的確に調整できる。また、ストッパ部31は、弁体6と一体的に成形できるため、安価にストッパ部31を設けることができる。
【0028】
空気バネ式懸架装置は、差圧弁1、2に連通する第一空気バネ11と第二空気バネ12とを備える。第一空気バネ11の空気圧P1と第二空気バネ12の空気圧P2の一方は、差圧弁1(又は差圧弁2)の弁体6に加わるバルブシート5側の流体圧(空気圧)であり、他方は、差圧弁の弁体6に加わるバルブシート側とは反対側の流体圧(空気圧)である。シール部材50の劣化(へたり)の小さな差圧弁1(又は差圧弁2)を使用することで、シート部からの空気漏れを防ぐことができ、第一と第二空気バネ11、12の一方の流体(空気)が漏れた場合には、第一と第二空気バネ11、12のうち正常な空気バネの流体(空気)を空気漏れした空気バネへ導く。
【0029】
<第二実施形態>
次に、図5を参照して、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態からストッパ部の構成が変更されている。他の構成は、第一実施形態と同じであり説明を省略する。
【0030】
第二実施形態において、ストッパ部32は、突出部として、弁体6の軸60の方向と平行な方向にバルブシート5から弁体6側へ突出し、バルブシート5の弁体側の端面5cにおいて円環状の凸部5aの脇に設けられている。ストッパ部32は、単一の部材として、弁体6の軸60(又はバルブシート5の軸)の周りで円環状に設けてよいし、また、複数のストッパ部32を互いに分離して設けてもよい。複数のストッパ部32が弁体6に当接した場合に荷重が均等に掛るように、複数のストッパ部32は、軸60に関して円周方向に等間隔で配置される。
【0031】
弁体6は、差圧弁1(又は差圧弁2)が開いた後閉じる場合に、スプリング4に押されて、軸60の方向に沿ってバルブシート5側へ移動する。ストッパ部32が、弁体6のバルブシート側の端面6dに当接すると、弁体6のバルブシート5側への移動は停止する。ストッパ部32は、円環状の凸部5aがシール部材50に押し込まれる距離を所定距離Lに制限する。所定距離Lは、凸部5aの高さh0から、ストッパ部32の高さh2を減算した値となる(L=h0−h2)。即ち、所定距離Lは、ストッパ部32の高さh2により調整できる。なお、ストッパ部32の高さh2は、バルブシート5の端面5cからの軸60の方向における高さである。
【0032】
第一実施形態と同様に、所定値Lは、シール部材50の劣化(へたり)が生じない程度に小さく設定されるが、凸部5aとシール部材50によるシールが可能な程度には大きく設定される。また、凸部5aの高さh0とストッパ部32の高さh2は、弁体6の端面6dとバルブシート5の端面5cの間に形成される空気通路35に空気が流通しやすくなる程度に高くされる。
【0033】
次に、第二実施形態の作用効果について述べる。第二実施形態によると、第一実施形態と同じく、弁体6のシール部材50の劣化(へたり)が防止できる。また、ストッパ部32は、弁体6の軸60の方向と平行にバルブシート5から弁体6側へ突出した突出部である。これにより、ストッパ部32は、弁体6のバルブシート5側への移動を確実に停止できるとともに、ストッパ部32の高さの調整によって、バルブシート5の凸部5aがシール部材50に押し込まれる距離を的確に調整できる。ストッパ部32は、バルブシート5と一体的に成形できるため、安価にストッパ部32を設けることができる。
【0034】
<第三実施形態>
次に、図6を参照して、第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態からストッパ部の構成が変更されている。他の構成は、第一実施形態と同じであり説明を省略する。
【0035】
第三実施形態において、ストッパ部33は、スペーサとして、弁体6の端面6dとバルブシート5の端面5cの間において弁体6の軸60から離れる方向に設けられている。ストッパ部33は、単一の部材として、弁体6の軸60の周りで円環状に設けられている。これにより、ストッパ部33がバルブシート5と弁体6の両方に当接した場合に荷重が均等に掛かる。
【0036】
弁体6は、差圧弁1(又は差圧弁2)が開いた後閉じる場合に、スプリング4に押されて、軸60の方向に沿ってバルブシート5側へ移動する。ストッパ部33が、バルブシート5の端面5c及び弁体6のバルブシート5側の端面6dの両方に当接すると、弁体6のバルブシート5側への移動は停止する。ストッパ部33は、環状の凸部5aがシール部材50に押し込まれる距離を所定値Lに制限する。所定距離Lは、凸部5aの高さh0から、ストッパ部33の高さ(厚み)h3を減算した値となる(L=h0−h3)。即ち、所定距離Lは、ストッパ部33の高さh3により調整できる。第一実施形態と同様に、所定距離Lは、シール部材50の劣化(へたり)が生じない程度に小さく設定されるが、凸部5aとシール部材50によるシールが可能な程度には大きく設定される。
【0037】
次に、第三実施形態の作用効果について述べる。第三実施形態によると、第一実施形態と同じく、弁体6のシール部材50の劣化(へたり)が防止できる。また、ストッパ部33は、バルブシート5と弁体6との間に配置されるスペーサである。これにより、ストッパ部33は、弁体6のバルブシート5側への移動を確実に停止できるとともに、ストッパ部33の高さ(厚み)の調整によって、バルブシート5の凸部5aがシール部材50に押し込まれる距離を的確に調整できる。また、既存の差圧弁においても、ストッパ部33を用いて、弁体6のシール部材50の劣化が防止できる。
【0038】
本発明は上記の第一から第三の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。例えば、図7のように、シリンダ40に設けられたストッパ部34が、弁体6のバルブシート5側への移動を停止させ、凸部5aがシール部材50に押し込まれる距離を所定値に制限してもよい。また、例えば、上記の実施形態において、空気圧は流体圧の一種として示されたもので、差圧弁1、2に導入される流体圧を油圧等として差圧弁1、2を利用することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1、2 差圧弁
3 連通路
4 スプリング
5 バルブシート
5a 凸部
5b ポート
5c 端面
6 弁体
6a 孔
6b 空気通路
6c 本体部分
6d 端面
10 差圧弁ユニット
11 第一空気バネ
12 第二空気バネ
31、32、33、34 ストッパ部
40 シリンダ
50 シール部材
60 弁体の軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材を有する弁体と、
前記シール部材に対向する凸部を有するバルブシートと、
前記バルブシートに押し付ける方向に前記弁体を付勢するスプリングと、
前記弁体の前記バルブシート側への移動を停止するストッパ部と、を備え、
前記弁体に加わる前記バルブシート側の流体圧とこれと反対側の流体圧との差圧が所定値より小さい場合に、前記弁体の前記シール部材が前記バルブシートの前記凸部に押し付けられ、
前記ストッパ部は、前記凸部が前記シール部材に押し付けられる距離を制限することを特徴とする差圧弁。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記弁体の軸方向と平行に前記弁体から前記バルブシート側へ突出した突出部であることを特徴とする請求項1に記載の差圧弁。
【請求項3】
前記ストッパ部は、前記弁体の軸方向と平行に前記バルブシートから前記弁体側へ突出した突出部であることを特徴とする請求項1に記載の差圧弁。
【請求項4】
前記ストッパ部は、前記弁体と前記バルブシートとの間に配置されるスペーサであることを特徴とする請求項1に記載の差圧弁。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の前記差圧弁と、
前記差圧弁に連通する第一空気バネと第二空気バネと、を備え、
前記第一空気バネの空気圧と前記第二空気バネの空気圧の一方は、前記差圧弁の前記弁体に加わる前記バルブシート側の流体圧であり、他方は、前記差圧弁の前記弁体に加わる前記バルブシート側とは反対側の流体圧であることを特徴とする空気バネ式懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−202521(P2012−202521A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69658(P2011−69658)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】