説明

差込みプラグおよびその製造方法

【課題】製造コストの低減を図りつつ、電気的特性の確保と、被係合部の強度の確保とを両立させることができる差込みプラグおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】中子5は、被係合部51cが形成された第1中子51と、該1中子51より高い絶縁性を有する第2中子52とにより構成され、第1、第2中子51、52には、接地極4の挿通により、その基部が被覆されると共に、第1、第2中子51、52間の相対位置が位置決めされる第1、第2接地極挿通孔51b、52cが穿設されており、中子5より軟質の合成樹脂製の外皮6は、射出成形により、コード2の先端部及び中子5を被覆するように配設され、被係合部51cに対応して、該被係合部51cを外表面に露出させるための開口部61が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端子の基部を被覆する合成樹脂製の中子と、コードの先端部及び前記中子を被覆するように配設された外皮とを備えると共に、電源側に設けられた係合部と係合する被係合部を外表面に備えた差込みプラグおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源側のコンセント(端子差込口)にプラグ(端子)が挿入された状態を保持するために、電源(コンセント)側に係合部を備える一方、プラグ側に、係合部と係合可能な被係合部(突起部)を形成したものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1では、コンセントの端子差込口を覆うカバーに前記係合部を形成する一方、プラグには、その外表面に被係合部を形成している。そして、プラグの端子を端子差込口に挿入する過程で、係合部、被係合部が係合されるようになっており、この係合部、被係合部の係合により、プラグが端子の引き抜き方向に移動することが規制され、プラグの挿入状態が保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−124133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示されているような差込みプラグは、一般的に、端子の基部を被覆する合成樹脂製の中子と、該中子を被覆する合成樹脂製の外皮とを備えている。そして、中子は、プラグの電気的特性を考慮して、外皮よりも絶縁性の高い素材が用いられる一方、外皮は、操作性等を考慮して、中子よりも軟質な素材が用いられる。
【0006】
ここで、上述した差込みプラグの製造方法としては、例えば、中子、外皮をボルト締結等によって一体化する組み立て工程により製造する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、上述のような組み立て工程を備えた製造方法では、中子と外皮との間に大きな隙間が形成され易く、しかもその隙間が必然的に外表面に露出する構造になってしまう。従って、前記隙間から異物が内部に侵入し易くなり、ひいてはプラグの電気的特性の低下を招く虞がある。
【0008】
特に、前記特許文献1に開示されているように、電気自動車やハイブリッド自動車の充電用プラグとして用いられる場合等、プラグを挿入するコンセントが屋外の壁面に設置されていることも考えられるため、土砂や、雨水、塵埃等の異物がプラグ内部に侵入しないようにするための工夫が必要となる。
【0009】
また、前記特許文献1では、前記被係合部を外皮に形成しているが、この場合、外皮が軟質の素材で構成されていることにより、被係合部の強度が十分に確保できないという問題がある。
【0010】
このため、例えば、プラグから延びるコードが前記引き抜き方向に引っ張られた場合等、プラグに大きな荷重が入力された場合、被係合部の変形等よって係合状態が不安定となり、プラグの挿入状態を保持できなくなる虞があった。
【0011】
この発明は、製造コストの低減を図りつつ、電気的特性の確保と、被係合部の強度の確保とを両立させることができる差込みプラグおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、コードの先端部に接続され、電源側のコンセントに設けられた端子差込口に挿入される複数の端子と、該端子の基部を被覆する合成樹脂製の中子と、射出成形により、前記コードの先端部及び前記中子を被覆するように配設された、該中子より軟質の合成樹脂製の外皮とを備えると共に、前記電源側に設けられた係合部との係合により、前記端子の前記端子差込口への挿入状態を保持する被係合部を外表面に備えた差込みプラグであって、前記中子は、前記被係合部が形成された第1中子と、第2中子とにより構成され、前記第1、第2中子には、前記複数の端子のうち少なくとも1つを挿通することにより、該端子の基部が被覆されると共に、前記第1、第2中子間の相対位置が位置決めされる第1、第2端子挿通孔が穿設されており、前記外皮には、前記被係合部に対応して、該被係合部を外表面に露出させるための開口部が形成された差込みプラグであることを特徴とする。
【0013】
この発明の態様として、前記第1、第2中子には、互いの嵌合により、前記端子の挿通方向における前記第1、第2中子間の相対位置を位置決めする嵌合部、被嵌合部が形成された構成とすることができる。
【0014】
この発明の態様として、前記嵌合部は、前記第1中子の両端部に一対形成されると共に、前記被係合部及び第1端子挿通孔は、前記一対の嵌合部の中間部に形成、穿設される構成とすることができる。
【0015】
この発明の態様として、前記複数の端子として、一対の栓刃及び接地極を備えると共に、前記第1、第2端子挿通孔に挿通される前記端子を、前記接地極とし、前記一対の栓刃を、前記一対の嵌合部に対応してその近傍に配設した構成とすることができる。
【0016】
この発明の態様として、前記第2中子は、前記第1中子より高い絶縁性を有し、前記複数の端子の基部が、前記第2中子に被覆されると共に、前記端子のうち1つが、前記第1、第2端子挿通孔に挿通される構成とすることができる。
【0017】
この発明の態様として、前記第1、第2端子挿通孔は、互いに異なる孔幅を有し、前記端子には、前記第1、第2端子挿通孔の境界部と対応する位置に、前記孔幅に対応して太さが異なる段差部が形成された構成とすることができる。
【0018】
また、この発明は、コードの先端部に接続され、電源側のコンセントに設けられた端子差込口に挿入される複数の端子と、該端子の基部を被覆する合成樹脂製の中子と、該中子より軟質の合成樹脂製の外皮とを備えると共に、前記電源側に設けられた係合部との係合により、前記端子の前記端子差込口への挿入状態を保持する被係合部を外表面に備えた差込みプラグの製造方法であって、前記被係合部が形成された第1中子に穿設された第1端子挿通孔、及び第2中子に穿設された第2端子挿通孔に前記複数の端子のうち少なくとも1つを挿通することにより、該端子の基部を被覆すると共に、前記第1、第2中子間の相対位置を位置決めして、前記中子を生成する工程と、前記被係合部を除いて、前記コードの先端部及び前記中子を被覆するように前記外皮を射出成形する工程とを備えた差込みプラグの製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、外皮よりも硬質の中子(第1中子)に被係合部を形成し、該被係合部を、外皮の開口部から外表面に露出させるように構成したことで、被係合部の強度を確保することができる。
【0020】
そして、外皮を射出成形することで、中子と外皮、及び第1、第2中子を隙間無く一体化することができる。このため、上述のように開口部を外皮に形成する仕様であっても、土砂や、雨水、塵埃等の異物が内部へ侵入することを確実に防止でき、差込みプラグの電気的特性を確保することができる。
【0021】
さらに、被係合部が形成された第1中子と、第2中子とで中子を構成することにより、中子の成形を容易にすることができ、差込みプラグの製造コスト低減を図ることができる。
【0022】
そして、端子を第1、第2端子挿通孔に挿通させることによって、第1、第2中子間の相対位置を位置決めすることにより、専用の治具や締結部材等を用いなくても、第1、第2中子間の相対位置を、差込みプラグの既存の構成要素を用いて位置決めすることができる。このため、差込みプラグの製造コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る差込みプラグを示す平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】第1中子を示す図であって、(a)正面図、(b)底面図、(c)B−B線矢視断面図。
【図4】第2中子を示す図であって、(a)背面図、(b)平面図、(c)C−C線矢視断面図(d)D−D線矢視断面図。
【図5】第1、第2中子の嵌合部位を示す断面図。
【図6】接地極を示す斜視図。
【図7】差込みプラグをコンセントに挿入した状態を示す図であって、(a)側面図、(b)正面図。
【図8】差込みプラグの製造工程を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る差込みプラグを示す平面図であり、図2は、図1のA−A線矢視断面図である。図1、図2に示すように、差込みプラグ1は、コード2の先端部に接続される複数の端子として、一対の栓刃3、3、及び接地極4を備えると共に、栓刃3、3及び接地極4の基部を被覆する中子5と、コード2の先端部及び中子5を被覆する外皮6とを備えている。
【0025】
本実施形態では、上述したコード2が、2本の導線21、21(図2では、手前側のみ示す。)と、1本のアース線22とにより構成されている。そして、導線21及びアース線22は、いずれも導電性を有する線条の導体を複数本束ねた芯線21a、22aが絶縁材21b、22bで被覆された構成となっており、各先端部では、絶縁材21b、22bが取り除かれて芯線21a、22aが露出している。
【0026】
そして、導線21は、露出した芯線21aがそれぞれ栓刃3の基部にカシメ等で接続されることにより、先端が栓刃3に接続される一方、アース線22は、露出した芯線22aが、接地極4の基部にカシメ等で接続されることにより、先端が接地極4と接続されている。
【0027】
また、本実施形態では、中子5が、それぞれ素材の異なる第1、第2中子51、52により構成されている。第1中子51は、第2中子52よりも硬質な素材によって構成される一方、第2中子52は、第1中子51よりも絶縁性の高い素材によって構成されており、例えば、第1中子51は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂により構成され、第2中子52は、メラミン樹脂により構成される。
【0028】
第1中子51は、図3に示すように、その両端部に凸形状をなす一対の嵌合部51a、51aを有している。そして、該一対の嵌合部51a、51a間の中間部には、接地極4の形状に対応する第1接地極挿通孔51bが穿設されると共に、嵌合凹部51dを有する被係合部51cが形成されている。
【0029】
一方、第2中子52には、図4に示すように、第1中子51の嵌合部51aと嵌合可能な一対の嵌合孔52a、52aが穿設されている。そして、この一対の嵌合孔52a、52aに対応して、その近傍には、栓刃3、3の形状に対応する一対の栓刃挿通孔52b、52bが穿設され、さらに、該一対の嵌合孔52a、52a間の中間部には、接地極4の形状に対応する第2接地極挿通孔52cが穿設されている。
【0030】
中子5では、第2中子52の栓刃挿通孔52b、52bに栓刃3、3を挿通されることにより、栓刃3、3の基部が、第2中子52によって被覆される。そして、栓刃3、3は、図5に示すように、一対の嵌合部51a、51a(嵌合孔52a、52a)に対応してその近傍に配設されるようになっている。
【0031】
また、中子5では、嵌合部51aと嵌合孔52aとの嵌合により、接地極4の挿通方向における第1、第2中子51、52間の相対位置が位置決めされるようになっている。そして、この位置決めにより、第1、第2接地極挿通孔51b、52cが、図2に示すように連通し、連続した1つの接地極挿通孔53を形成するようになっている。
【0032】
本実施形態では、この接地極挿通孔53に接地極4を挿通させることにより、接地極4の基部が第1、第2中子51、52によって被覆される。そして、接地極4は、図5に示すように、一対の嵌合部51a、51a(嵌合孔52a、52a)の中間部に配設されると共に、前記挿通方向と直交する方向(以下、直交方向という。)における第1、第2中子51、52間の相対位置が、接地極4によって位置決めされるようになっている。
【0033】
ここで、第1中子51では、接地極4の基部のみが被覆される一方、第2中子52では、栓刃3、3、及び接地極4の基部が被覆されている。本実施形態では、このように複数の端子(栓刃3、3、及び接地極4)の基部を被覆する第2中子52を、高い絶縁性を有する素材で構成することによって、栓刃3、3、接地極4同士が確実に絶縁され、差込みプラグ1の電気的特性の向上が図られている。
【0034】
また、中子5では、第1接地極挿通孔51bの断面形状が、図3に示すように多角形状(ここでは正六角形状)をなす一方で、第2接地極挿通孔52cの断面形状が、図4に示すように円形状をなしている。これにより、第1、第2接地極挿通孔51b、52c間では、その孔幅(断面積)が異なっており、第1接地極挿通孔51bが第2接地極挿通孔52cよりも大きく設定されている。
【0035】
一方、接地極4では、図2、図5、図6に示すように、第1中子51に被覆される基部の断面形状が、第1接地極挿通孔51bの形状に対応して多角形状(ここでは正六角形状)をなすと共に、第2中子52に被覆される基部の断面形状が、第2接地極挿通孔52cの形状に対応して円形状をなしている。
【0036】
そして、接地極4では、多角形状をなす部位が、他よりも厚肉に形成され、この厚肉部と他の部位とにより段差部41が形成されている。これにより、接地極4を接地極挿通孔53に挿通した時には、第1、第2接地極挿通孔51b、52cとの境界部と段差部41とが隙間無く嵌合し、その結果、接地極4の位置決めがなされるようになっている。この接地極4の位置決めにより、接地極4の先端部は、図1、図2に示すように、栓刃3、3の先端部よりも突出した位置に配置される。
【0037】
ところで、外皮6は、第1、第2中子51、52よりも軟質な素材により構成され、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂により構成されている。そして、後述する射出成形により、図2に示すように、コード2の先端部及び中子5を被覆するように配設されている。
【0038】
また、外皮6では、第1中子51の被係合部51cに対応する位置において、外皮6に開口部61が形成されている。そして、図1、図2に示すように、被係合部51cが、開口部61から差込みプラグ1の外表面に露出した状態となっている。
【0039】
次に、図7を参照して、差込みプラグ1を電源側のコンセント7に接続する方法について説明する。
図7に示すコンセント7は、前記特許文献1に開示されたコンセントと同様、一対の栓刃差込口71a、71a、及び接地極差込口71bを有する本体71と、図示しないヒンジ等を介して本体71に回動可能に支持されたカバー72とを備えている。
【0040】
コンセント7では、カバー72が、バネ等の付勢手段により、図7(a)中二点鎖線で示すように栓刃差込口71a、71a、及び接地極差込口71bを閉じる方向に付勢されている。そして、カバー72の内面側、つまりは、その閉時において、栓刃差込口71a、71a、及び接地極差込口71bと対向する面側には、楔形状の係合部72aが形成されている。
【0041】
コンセント7に差込みプラグ1を挿入する際には、先ず、使用者が前記付勢手段の付勢力に抗してカバー72を回動させることにより、該カバー72を開ける。そして、カバー72の開状態を保持したまま、差込みプラグ1の被係合部51cが露出した側を、カバー72の内面側と対向させ、栓刃3、3、及び接地極4を、それぞれ対応する差込口71a、71a、71bに挿入する。
【0042】
この時、栓刃3等が栓刃差込口71a等に挿入される過程で、被係合部51cの先端が係合部72aを乗り越えると、該係合部72aが、図7に示すように、前記付勢手段の付勢力によって被係合部51cの嵌合凹部51dに嵌合し、これによって、係合部72と被係合部とが係合するようになっている。そして、この係合部72と被係合部51cとの係合により、差込みプラグ1が栓刃3等の引き抜き方向に移動することが規制され、差込みプラグ1(栓刃3等)の挿入状態が保持されるようになっている。
【0043】
次に、図8を参照して、差込みプラグ1を製造する方法について説明する。差込みプラグ1の製造では、先ず、図8(a)に示すように、第2中子52の嵌合孔52aに第1中子51の嵌合部51aを嵌合させ、接地極4の挿通方向における第1、第2中子51、52間の相対位置を位置決めする。この時、第1、第2接地極挿通孔51b、52cが連通し、図8(b)に示すように、連続した1つの接地極挿通孔53が形成される。
【0044】
そして、図8(b)に示すように、予め導線21の先端が接続された栓刃3、3を、それぞれ対応する第2中子52の栓刃挿通孔52b、52bに挿通して、その基部を第2中子52で被覆すると同時に、予めアース線22の先端が接続された接地極4を、対応する接地極挿通53に挿通して、その基部を第1、第2中子51、52で被覆する。
【0045】
この時、接地極4の挿通により、前記直交方向における第1、第2中子51、52間の相対位置が位置決めされる。これにより、第1、第2中子51、52では、前記挿通方向及び前記直交方向における相対位置が位置決めされ、両中子51、52間の相対位置が略完全に固定される。これにより、中子5が生成される。
【0046】
次に、第1中子51の被係合部51cを除いて、コード2(導線21、アース線22)の先端部及び第1、第2中子51、52を被覆するように外皮6を射出成形する。外皮6を形成するには、図8(a)、(b)に示す中子生成工程で生成された中子5を、図8(c)で示すように、所定形状のキャビィティを有した上型8と下型9との間に入れて、合成樹脂(具体的には、ポリ塩化ビニル樹脂)で射出成形する。この射出成形工程により、被係合部51cを外表面に露出させるための開口部61を有する外皮6が形成され、差込みプラグ1が完成する。
【0047】
このように、本実施形態に係る差込みプラグ1では、外皮6よりも硬質の中子5(第1中子51)に被係合部51cを形成し、該被係合部51cを、外皮6の開口部61から外表面に露出させるように構成したことで、被係合部51cの強度を確保することができる。
【0048】
そして、外皮6を射出成形することで、中子5と外皮6、及び第1、第2中子51、52を隙間無く一体化することができる。このため、上述のように開口部61を外皮6に形成する仕様であっても、土砂や、雨水、塵埃等の異物が内部へ侵入することを確実に防止でき、差込みプラグ1の電気的特性を確保することができる。
【0049】
さらに、中子5は、栓刃3、接地極4の挿通孔51b、52b、52c、及び被係合部51cを有するものであるため、必然的にその形状が複雑となり、それ故、中子5の一体成形は極めて困難となる。
【0050】
そこで、本実施形態では、被係合部51cが形成された第1中子51と、第2中子52とで中子5を構成している。これにより、中子5の成形を容易にすることができ、差込みプラグ1の製造コスト低減を図ることができる。
【0051】
そして、本実施形態では、接地極4を第1、第2接地極挿通孔51b、52cに挿通させることによって、第1、第2中子51、52間の相対位置が位置決めされるようになっている。これにより、専用の治具や締結部材等を用いなくても、第1、第2中子51、52間の相対位置を、差込みプラグ1の既存の構成要素を用いて位置決めすることができる。このため、差込みプラグ1の製造コスト低減を図ることができる。
【0052】
また、第1、第2中子51、52に嵌合部51a、嵌合孔52aを形成したことで、接地極4との協働により、第1、第2中子51、52間の、前記挿通方向及び前記直交方向における相対位置を位置決めすることができ、第1、第2中子51、52間の相対位置を略完全に固定することができる。
【0053】
この場合、後の外皮6の射出成形工程で、第1、第2中子51、52がずれることを確実に抑制でき、中子5(第1、第2中子51、52)と外皮6とをより正確に一体化させることができる。このため、差込みプラグ1の不良品が生成される確率を低減でき、その結果、差込みプラグ1の製造コストをさらに低減させることができる。
【0054】
また、一対の嵌合部51a、51aを形成したことで、第1、第2中子51、52の位置決め精度の向上を図ることができ、第1、第2中子51、52のずれをより確実に抑制することができる。
【0055】
そして、被係合部51cを、一対の嵌合部51a、51aの中間部に形成したことで、例えば、コード2を差込みプラグ1の引き抜き方向に引っ張る等して、被係合部51cに大きな荷重が加わった時、被係合部51cを介して入力される荷重が嵌合部51a、51a(嵌合孔52a、52a)のいずれかに偏ることを防止できる。これにより、中子5(具体的には、嵌合部51a及び嵌合孔52a)の破損を抑制することができる。
【0056】
さらに、第1接地極挿通孔51bを、一対の嵌合部51a、51aの中間部に穿設したことで、例えば、コンセント7(図7参照)に挿入された差込みプラグ1を引き抜く際、該差込みプラグ1を上下(または前後)左右に振り回すように引っ張る等して、接地極4に大きな荷重が加わった時、接地極4を介して入力される荷重が嵌合部51a、51aのいずれかに偏ることを防止できる。これにより、中子5の破損を抑制することができる。
【0057】
また、一対の栓刃3、3を、一対の嵌合部51a、51a(嵌合孔52a、52a)に対応してその近傍に配設することで、例えば、コンセント7に挿入された差込みプラグ1を引き抜く際、該差込みプラグ1を上下(または前後)左右に振り回すように引っ張る等して、栓刃3、3及び接地極4に大きな荷重が加わった時、栓刃3、3及び接地極4を介して入力される荷重が嵌合部51a、51aのいずれかに偏ることを防止できる。これにより、中子5の破損を抑制することができる。
【0058】
また、複数の端子(栓刃3、3、接地極4)の基部を、高い絶縁性を有する第2中子52で被覆すると共に、1つの端子(接地極4)を、第1、第2接地極挿通孔51b、52cに挿通させるようにしたことで、上述したように、差込みプラグ1の電気的特性を第2中子52によって向上させつつ、一般的に高価とされる、絶縁性の高い素材の使用を必要最小限とすることによって、差込みプラグ1の製造コスト低減を図ることができる。
【0059】
また、互いに異なる孔幅を有するように第1、第2接地極挿通孔51b、52cを穿設する一方、接地極4において、第1、第2接地極挿通孔51b、52cの境界部と対応する位置に段差部41を形成したことで、第1、第2中子51、52のいずれかに段差部を形成しなくても、第1、第2接地極挿通孔51b、52cの孔幅の差によって前記境界部に段差部を形成することができ、該段差部と段差部41とを嵌合させることにより、接地極4の位置決めを確実に行うことができる。このため、中子5の成形が容易となり、その結果、差込みプラグ1の製造コストをさらに低減することができる。
【0060】
そして、接地極4の位置決め精度の向上を図ることで、上述したように、接地極4の先端を栓刃3の先端よりも突出させるよう確実に位置決めすることができる。
【0061】
なお、上述した実施形態では、差込みプラグ1の端子のうち、接地極4によって第1、第2中子51、52間の相対位置の位置決めがなされるようになっているが、本発明は、これに限らず、端子の1つである栓刃3によって前記位置決めがなされるように構成してもよい。この場合、接地極4を備えていない差込みプラグであっても本発明を適用することができる。
【0062】
また、本発明は、第1、第2中子51、52間の相対位置を位置決めする端子が、少なくとも1つであればよく、さらには、第2中子52を、第1中子51より高い絶縁性を有する素材で構成することにも限定されない。従って、第1、第2中子51、52に複数の挿通孔を穿設し、複数の端子によって前記位置決めがなされるように構成してもよい。
【0063】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、複数の端子は、栓刃3、3、接地極4に対応し、
以下同様に、
第1、第2端子挿通孔は、第1、第2接地極挿通孔51b、52cに対応し、
被嵌合部は、嵌合孔52aに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…差込みプラグ
2…コード
3…栓刃
4…接地極
5…中子
6…外皮
7…コンセント
41…段差部
51…第1中子
51a…嵌合部
51b…第1接地極挿通孔
51c…被係合部
52…第2中子
52a…嵌合孔
52c…第2接地極挿通孔
61…開口部
72a…係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードの先端部に接続され、電源側のコンセントに設けられた端子差込口に挿入される複数の端子と、
該端子の基部を被覆する合成樹脂製の中子と、
射出成形により、前記コードの先端部及び前記中子を被覆するように配設された、該中子より軟質の合成樹脂製の外皮とを備えると共に、
前記電源側に設けられた係合部との係合により、前記端子の前記端子差込口への挿入状態を保持する被係合部を外表面に備えた差込みプラグであって、
前記中子は、前記被係合部が形成された第1中子と、
第2中子とにより構成され、
前記第1、第2中子には、前記複数の端子のうち少なくとも1つを挿通することにより、該端子の基部が被覆されると共に、前記第1、第2中子間の相対位置が位置決めされる第1、第2端子挿通孔が穿設されており、
前記外皮には、前記被係合部に対応して、該被係合部を外表面に露出させるための開口部が形成された
差込みプラグ。
【請求項2】
前記第1、第2中子には、互いの嵌合により、前記端子の挿通方向における前記第1、第2中子間の相対位置を位置決めする嵌合部、被嵌合部が形成された
請求項1に記載の差込みプラグ。
【請求項3】
前記嵌合部は、前記第1中子の両端部に一対形成されると共に、
前記被係合部及び第1端子挿通孔は、前記一対の嵌合部の中間部に形成、穿設される
請求項2に記載の差込みプラグ。
【請求項4】
前記複数の端子として、一対の栓刃及び接地極を備えると共に、
前記第1、第2端子挿通孔に挿通される前記端子を、前記接地極とし、
前記一対の栓刃を、前記一対の嵌合部に対応してその近傍に配設した
請求項3に記載の差込みプラグ。
【請求項5】
前記第2中子は、前記第1中子より高い絶縁性を有し、
前記複数の端子の基部が、前記第2中子に被覆されると共に、
前記端子のうち1つが、前記第1、第2端子挿通孔に挿通される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の差込みプラグ。
【請求項6】
前記第1、第2端子挿通孔は、互いに異なる孔幅を有し、
前記端子には、前記第1、第2端子挿通孔の境界部と対応する位置に、前記孔幅に対応して太さが異なる段差部が形成された
請求項1〜5のいずれか一項に記載の差込みプラグ。
【請求項7】
コードの先端部に接続され、電源側のコンセントに設けられた端子差込口に挿入される複数の端子と、
該端子の基部を被覆する合成樹脂製の中子と、
該中子より軟質の合成樹脂製の外皮とを備えると共に、
前記電源側に設けられた係合部との係合により、前記端子の前記端子差込口への挿入状態を保持する被係合部を外表面に備えた差込みプラグの製造方法であって、
前記被係合部が形成された第1中子に穿設された第1端子挿通孔、及び第2中子に穿設された第2端子挿通孔に前記複数の端子のうち少なくとも1つを挿通することにより、該端子の基部を被覆すると共に、前記第1、第2中子間の相対位置を位置決めして、前記中子を生成する工程と、
前記被係合部を除いて、前記コードの先端部及び前記中子を被覆するように前記外皮を射出成形する工程とを備えた
差込みプラグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−58419(P2013−58419A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196656(P2011−196656)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(391018732)富士電線工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】