説明

布をゴムに接着するための方法、処理した布、および布−ゴム複合体

所望により溶液の形態にあり、所望によりα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を含有するマレイン化イミドポリマー樹脂であって、該ポリマーがブタジエンホモポリマー、ブタジエンコポリマー、イソプレンホモポリマー、イソプレンコポリマー、およびポリ(無水マレイン酸-コ-アルケニルベンゼン)からなる群から選択されるマレイン化イミドポリマー樹脂を用いて布を処理し、それによって布-ゴム接着を改善する。処理した布および布-ゴム複合体ならびに特定の使用も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マレイン化イミドポリマーを含有する組成物、好ましくは接着剤組成物、より具体的には、ゴムを布に結合するためおよびゴムコンパウンドを布で強化するための接着剤組成物、布を処理してゴムへの接着を高める方法、強化したゴム物品、ならびに、該組成物の関連用途に関する。
【背景技術】
【0002】
強化したゴム物品は、多種多様の消費者用および工業用用途において使用されている。強化した成形ゴム物品の性能は、強化材のゴムへの接着に依存する。合成糸を用いて調製した布は、ゴムに結合するのが困難である傾向にある。実際的には、接着を改善するために、いくつかの作業が行われている。繊維を延伸するときにスピン仕上げが適用され、これがエポキシ樹脂などの接着活性化剤を含有することができる。製織の前または後に糸をヒートセットして、延伸によって繊維に付加される配向を緩和し、ゴム結合硬化工程中の収縮を回避することができる。この工程中の収縮は、接着に悪影響を及ぼすであろう。最後に、ゴムへの良好な結合を得るために、接着剤の浸漬被覆が布に適用される。
【0003】
接着剤を適用するための通常の浸漬被覆法は、多くの工程を含むことができ、各適用に適応させる。即ち、布の種類および一緒に成形されるゴムに依存して、異なる接着剤を使用することができる。一部の工程は、溶媒に溶解したポリイソシアネートによる布の前処理浸漬を含むことができる。次いで、布を乾燥し、強制空気オーブンに通して、被覆を硬化させ、布をヒートセットする。この操作に続いて、樹脂強化ラテックス(RFL)浴中での浸漬処理を行い、第2のオーブン通過を行うことができる。このような浴の組成物は、他の接着促進剤(例えば、エポキシ類、フェノール類など)の添加を含むことができる。RFL浴は、レゾルシノールおよびホルムアルデヒドまたは他のメチレン供与体の水中6%樹脂溶液を調製することによって得られる。この溶液を、規定のpHおよび温度で一定時間反応させ、次いでゴムラテックス中に注ぎ、このブレンドを再び使用前に一定時間にわたり「熟成」させる。米国特許第3,307,966号(E.I.DuPontに譲渡)は、このような方法を記載している。
【0004】
実際的には、このような種類のRFL浸漬接着剤は、いくつかの欠点を有している。これには以下のものが含まれる。接着剤組成物の保存寿命が、いくつかの因子(pH、温度および正確な成分を含む)に依存し、制御するのが困難である。通常の保存寿命は、1日から1ヶ月まで変化することができ、この後に材料を処分しなければならない。また、接着剤がその有用な特性範囲から逸脱しているか否かを試験するのが困難である。
【0005】
バッチ毎の変動も問題である。環境および安全上の課題も存在する。接着剤が高温(200℃まで)で乾燥および硬化される。高いエネルギー使用に加えて、溶媒、ホルムアルデヒドおよび他の物質の放出がある。最後に、末端用途適用における接着剤の性能が不十分であることが多い。目標は、RFL接着剤を有するゴム-布界面における接着層破壊ではなく、ゴムマトリックスの凝集破壊を有することである。これは、ゴムに他の添加剤を添加することによってのみ達成しうることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、布を処理して、上記した従来技術の欠点を回避しながら布-ゴム接着を改善するためのある種の物質および方法を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、本発明は、少なくとも1つのマレイン化イミドポリマー[このポリマーは、ブタジエンホモポリマー、ブタジエンコポリマー、イソプレンホモポリマー、イソプレンコポリマーおよびポリ(マレイミド-コ-アルケニルベンゼン)からなる群から選択される]および所望により少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を含有する組成物、好ましくは接着剤組成物、より具体的には布を処理するための接着剤組成物に関する。他の態様において、本発明は、本発明に係る物質および方法を用いて製造したゴム-布複合体ならびに該組成物の特定の末端用途に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の対象は、少なくとも1つの上記のようなマレイン化イミドポリマー(より具体的にはイミド塩としてのポリマー)、ならびに、所望により少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を含有する組成物、好ましくは接着剤組成物に関する。この組成物は、有機溶媒もしくは水またはこれらの組合せ中の溶液の形態にあることができる。マレイン化イミドポリマーを、そのままでまたは溶液として布に適用することができる。有機溶媒または水のどちらかに基づく溶液を使用することができる。水に基づく溶液が好ましい。
【0009】
好ましくは、マレイン化イミドポリマーの水溶液を、系中に存在する塩基性窒素を酸で中和することによって生成させ、この溶液を処理過程において使用する。所望により、少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を、上記溶液と一緒に使用することができる。また、界面活性剤などの添加剤を、必要に応じて含有させることもできる。可溶性イミド塩の濃度は、約1%〜約90%、好ましくは約10%〜約50%の範囲内であってよい。可溶性金属塩の濃度は、独立して同じ範囲内、即ち、溶液を基準に0〜約90%、好ましくは約1〜90%、より好ましくは約10〜50重量%であってよい。マレイン化イミドポリマーならびにα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩の溶液を含有する本発明の組成物は、少なくとも1つの上記イミドの水溶液を、少なくとも1つの上記金属塩の水溶液とブレンドすることによって調製することができる。上記イミド溶液は、好ましくは、上記イミドを中和するように機能する酸をさらに含有する。従って好ましくは、上記イミドは、上記金属塩を含有していることもある水溶液中の酸/塩基塩の形態にある。この酸は、マレイン化イミド樹脂(ポリマー)中の塩基性部位(窒素)をプロトン化するに十分な強さのものであり、その性質は強酸または弱酸および有機酸または無機酸であることができる。その例には以下の酸が含まれるが、これらには限定されない:塩酸、硫酸、リン酸、アルキルもしくはアリールスルホン酸、炭酸、あるいは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、クエン酸、シュウ酸および乳酸からなる群から選択されるカルボン酸。好ましい酸は酢酸であり、これはイミドの酢酸塩を与える。上記した本発明の組成物において、上記イミドポリマーと上記金属塩の重量比は、1:99〜99:1、好ましくは80:20〜40:60の範囲内であってよい。
【0010】
接着剤の布への適用は、そのような処理を行うための通常の方法(浸漬被覆、噴霧適用またはローラー適用を含む)のいずれかによって行うことができる。
【0011】
本発明に係るマレイン化イミドポリマーは、既知の方法を用いて、マレイン化樹脂(ポリマー)と第一/第三アミンとの反応によって調製する。マレイン化樹脂(ポリマー)の分子量、微細構造および無水マレイン酸含量は、通常の方法によって最適化することができる。マレイン化樹脂(ポリマー)の数平均分子量は、好ましくは約20,000ダルトン未満、より好ましくは約1000〜約10,000ダルトンである。これら樹脂(ポリマー)は、ポリブタジエンおよび/またはブタジエンホモポリマー、ブタジエンコポリマー、イソプレンホモポリマー、イソプレンコポリマー、またはポリ(無水マレイン酸-コ-アルケニルベンゼン)樹脂、例えばスチレン-無水マレイン酸コポリマー(SMA)であってよい。ブタジエンポリマーおよびコポリマーは、1,2-および1,4-ブタジエン単位を約1:99〜約95:1の比で、およびシスおよびトランス1,4-ブタジエン単位を100:1〜1:100の比で含むことができる。樹脂(ポリマー)中の無水マレイン酸含量は、約1〜約50重量%、より好ましくは約5〜約30重量%の範囲内であることができる。ブタジエンおよびイソプレンと、1つまたはそれ以上の他のモノマー(例えば、スチレン、置換スチレン、ビニルシクロヘキセン、アクリル酸およびメタクリル酸エステル、ジシクロペンタジエン、ノルボレンなど)とのコポリマーを、マレイン化およびイミド化することができる。また、ブタジエンと置換ジエン(例えばイソプレン)とのコポリマーも、マレイン化樹脂(ポリマー)において適する。
【0012】
イミドの調製に使用するアミンは、環式イミドを形成しうる1つの第一アミン基および1つまたはそれ以上の第三アミン基を含む物質からなり、本明細書においては「第一/第三アミン」と称する。この第一/第三アミンは、その性質が脂肪族、脂環式または芳香族であってよい。環式イミドの形成またはその水溶性を妨げない程度まで、他の官能基が第一/第三アミンに存在することができる。適する第一/第三アミンの例には、以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、アミノプロピルモルホリン、N,N-ジブチルアミノプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルアミノエチルアミン、N,N-ジエチルアミノプロピルアミンおよびN,N-ジメチルアミノエチルアミン。
【0013】
本組成物は、所望により、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を含有することができる。このα,β-エチレン性不飽和カルボン酸は、好ましくは、メタクリル酸またはアクリル酸またはクロトン酸、またはチグリン酸、または桂皮酸、あるいはこれらの組合せからなる。金属対イオンは、1価、2価、3価、4価またはさらに高い価数のイオンからなることができる。その例には以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、ベリリウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、鉄、銅および銀、またはこれらの組合せ。
【0014】
上記の金属塩は、好ましくはジアクリル酸亜鉛である。
本組成物は、好ましくは水溶液の形態にあり、さらに酢酸を含有する。
【0015】
本発明のさらなる対象は、布を処理してゴムへの接着を高める方法であって、本発明に従って上に規定した接着剤組成物を布に適用することを含んでなる方法に関する。この組成物を、噴霧、浸漬被覆、押出またはローラー被覆によって適用することができる。処理する布を、約240℃までの温度に加熱することができる。
【0016】
合成または天然繊維の布を処理することができる。ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、炭素繊維、金属繊維およびガラス繊維などの合成布が全て適している。また、綿、レーヨン、絹または羊毛などの天然繊維に基づく布も、2種類またはそれ以上の繊維のブレンドから調製された布と同様に適している。
【0017】
本発明のさらなる対象は、本発明の接着剤組成物で処理した布に関する。この布を、ゴムと一緒に積層および成形し、そして硬化させて強化ゴム物品を得ることができる。
【0018】
使用するゴムの種類は限定されず、天然または合成ゴムが含まれる。これらには以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)、EPM(エチレン-プロピレンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、HNBR(水素化ニトリルゴム)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、XIIR(ハロブチルゴム)、UR(ウレタンゴム)ならびにこれら物質のブレンドおよびコポリマー。フリーラジカル開始剤、好ましくは過酸化物、またはイオウ硬化剤を、ゴムの硬化に使用することができる。
【0019】
本発明の接着剤組成物および/または方法を使用して製造した強化ゴム物品を、種々の末端用途適用に使用することができる。これらには以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:自動車ホースおよびベルト、コンベヤーベルト、伝動ベルト、自動車エアバッグ、柔軟性印刷用ブランケット、エンジンマウント、タイヤおよびあらゆる他の強化成形ゴム生成物。
【0020】
布-ゴム接着の分野以外の本発明の組成物の他の可能な適用および使用には、複合体構造の特性を改善するためのガラス繊維または炭素繊維強化材の処理、ならびに、金属、プラスチック、木材、紙、ガラスまたは布などの基材をそれら自体または他の材料に結合するための接着剤としての使用が含まれる。
【0021】
本発明の組成物の別の使用は、非接着適用においてであることができる。これらは、例えば、エラストマー中への充填剤の適合および分散(均質性)を改善するための分散剤(充填したエラストマーを使用して、タイヤ、ベルト、ホースまたは他の物品を製造する);金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または他の基材のための被覆剤である。このような被覆剤は、水溶液または溶媒溶液組成物から、あるいは、電気泳動析出によって適用することができる。
【0022】
本発明のさらなる対象は、エラストマー中への充填剤のための分散剤であって、本発明に従って規定される少なくとも1つの組成物を含有する分散剤に関する。
【実施例】
【0023】
以下に挙げる実施例は、本発明のいくつかの非限定的な態様を示すものである。これらの実施例において、全ての部数は、他に指定することがなければ重量による。
実施例1:マレイン化ポリブタジエンイミドの調製
機械的撹拌機、熱電対および窒素散布管を装着した1リットルフラスコに、マレイン化ポリブタジエン樹脂(Ricon 131MA17、Sartomer Companyから入手可能)(368.7g)、キシレン(385.2g)およびN,N-ジメチルアミノプロピルアミン(71.6g)を入れた。この混合物を加熱還流して水を除去した。水の生成が停止した後に、キシレンを留去し、温度を160℃まで上昇させ、それ以上の揮発分が収集されなくなるまで維持した。この最終生成物は、2mg KOH/gの酸価および60℃で6200mPa.s(cP)の粘度を有していた。
【0024】
実施例2:水中15%濃度の接着剤溶液の調製
以下の表1に示す成分を用いて溶液を調製した。
【表1】

脱イオン水および酢酸を、クォートペイント缶に加え、ホットプレート上に置き、約60℃まで温めた。撹拌しながらマレイン化ポリブタジエンイミドを徐々に加えた。温度を約60℃に維持しながら撹拌を続けた。約4時間で溶液が完成した。
【0025】
実施例3:繊維の被覆
マレイン化ポリブタジエンイミド酢酸塩溶液を用いて、ナイロン、ポリエステルおよびアラミド織布を被覆した。ポリエステルおよびナイロン織布の試料(0.305kg/m2;9oz/yd2)に、この溶液をローラー被覆し、フード中、室温で乾燥させた。次いで、布を伸縮フレームに吊し、空気オーブン中、200℃で90秒間硬化させた。冷却後、布上の接着剤の重量を、布の未被覆重量から測定した重量増加として算出した。また、アラミド織りテープ(5.08cm;2インチ幅)も同じように処理した。重量増加%を以下の表2にまとめる。
【表2】

【0026】
実施例4:EPDMマスターバッチの調製
EPDM成型用コンパウンドを以下のように調製した。表3に示す最初の5つの成分を混合して「マスターバッチ」にした。2本ロール機において過酸化物を加えた。
【表3】

【0027】
実施例5:EPDMゴム-布複合体の試験片の調製
T型剥離接着試験試料を次のように調製した。EPDMゴムコンパウンドを、2本ロール機において約0.76mm(0.030インチ)厚みのシートにした。このシートから3つの細片を切断した[約4.45cm(1.75インチ)幅×10.16cm(4インチ)長さ]。これらを2つの細片、即ち5.08cm(2インチ)幅×12.7cm(5インチ)長さの処理した布で挟んだ。布の一方の末端の約2.54cm(1インチ)はゴムで被覆しなかった。この領域にアルミニウムホイル細片を置いて、ゴムが布に結合するのを妨げた。この領域を後に使用して、引張試験機の両端に複合体の分離した部分を置き、剥離した。これらの複合体を、加熱した段プレスにおいて160℃(320°F)で40分間成形した。
【0028】
成形後に、試料を1日間冷却および緩和させ、次いで接着強度を試験した。2.54cm(1インチ)幅の細片を各試料からダイ切断した。試料の分離した末端を、引張試験機に配置し、12.7cm/分(5インチ/分)で剥離した。複合体を剥離する際の力を記録した。結果を以下の表にまとめる。ここで、「力」は、2.54cm(1インチ)幅の試料を剥離するのに要する力であり、「凝集破壊%」は、ゴムが、2つの布細片に結合したほぼ同じ厚みのゴムに裂けて離れた領域の割合(%)である。T型剥離接着の結果を以下の表4にまとめる。
【表4】

【0029】
実施例6:ジアクリル酸亜鉛(ZDA)-酢酸溶液ブレンドの調製、処理した布およびその接着試験
実施例2に記載した操作に従った。処理用溶液の濃度を、20%濃度まで増大させた。マレイン化ポリブタジエンイミド溶液の成分を以下の表5にまとめ、金属塩溶液の成分を以下の表6にまとめる。
【表5】

【表6】

【0030】
溶液を濾過して残留する酸化亜鉛を除去した。
これら2つの溶液のブレンドを、異なる比で調製した。ZDAの量を以下の表7にまとめる。変化させたのは、ブレンド中のジアクリル酸亜鉛溶液の量であった。ポリエステルおよびナイロン織布の両方を、実施例2の記載のように処理し、硬化させ、成形し、そして試験した。結果を以下の表7にまとめる。これら試料のそれぞれにおける接着剤の重量は、4.4%〜5.5%であり、平均して5重量%であった。
【表7】

【0031】
実施例7:EPDMゴムへの接着促進剤の添加ならびにポリエステルおよびナイロン繊維との複合体
実施例5に記載した操作に従った。処理用溶液は、実施例1で調製したマレイン化ポリブタジエンイミドの20%濃度の酢酸塩溶液であった。これらの実験において、接着促進剤をEPDMゴムコンパウンドに加えた。第1の接着促進剤は、17重量%の付加した無水マレイン酸を含むポリブタジエン樹脂である(Ricobond 1731ブランド)。第2の接着促進剤は、EPMゴム中約75%のジアクリル酸亜鉛の分散物である(SR 75EPM 2Aブランド)。これらの接着促進剤のそれぞれを、2本ロール機において7phr(部数/100部のゴム)でゴムコンパウンドに加えた。接着促進剤を含まないコンパウンドも試験した。T型剥離接着の結果を以下の表8にまとめる。
【表8】

【0032】
実施例8:イミド-ZDA接着剤溶液およびゴム-布複合体
実施例6に記載した操作に従った。以下の処理用溶液の組合せを使用した:NTX 6715酢酸塩およびジアクリル酸亜鉛(両方とも20%濃度)。ジアクリル酸亜鉛は、接着剤溶液のブレンド中25%であった。実施例6のように、同じ接着促進剤をEPDMゴムコンパウンドに加えた。T型剥離接着の結果を以下の表9にまとめる。
【表9】

【0033】
これらの結果は、所望によりジアクリル酸亜鉛溶液とブレンドしたポリブタジエンイミド酢酸塩溶液が、ゴムに結合する布のための非常に良好な処理剤であることを示す。処理した布は、ゴムへの接着促進剤の添加によってさらに改善される。
【0034】
実施例9:UV硬化した酢酸塩-ZDA
実施例8のマレイン化ポリブタジエンイミド酢酸塩/ジアクリル酸亜鉛の溶液ブレンドを、先の実施例における熱硬化に代えてUV硬化用に修飾した。接着剤ブレンド中に25%のジアクリル酸亜鉛が存在した。50gの20% NTX 6715酢酸塩/ジアクリル酸亜鉛溶液ブレンド中に、0.78gのKIP-EM光開始剤をブレンドした。これはおよそ1.5%(湿/湿)である。未被覆のポリエステルおよびナイロン布を、200℃で90秒間ヒートセットした。次いで、これらに、UV修飾した接着剤溶液を被覆した。次いで、これらの布を、118W/cm(300ワット/インチ)の2つのランプを有するASHDEE装置において、15.2m/分(50ft/分)でUV硬化させた。布の前面および背面の両方を2回通過させた。接着剤の被覆重量は、ポリエステルが10.6%およびナイロンが11.3%であった。次いで、処理した布を、先の実施例におけるように、EPDMコンパウンドと一緒に成形し、接着試験を行った。結果を以下の表10にまとめる。
【表10】

【0035】
本明細書において本発明を詳細に記載および説明したが、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、種々の改変、変更、改善および修正が当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーが、ブタジエンホモポリマー、ブタジエンコポリマー、イソプレンホモポリマー、イソプレンコポリマー、およびポリ(無水マレイン酸-コ-アルケニルベンゼン)からなる群から選択される少なくとも1つのマレイン化イミドポリマーおよび所望により少なくとも1つのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を含有する組成物。
【請求項2】
有機溶媒もしくは水またはこれらの組合せ中の溶液の形態にある請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
マレイン化イミドポリマーが、所望によりα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩をも含有する水溶液において、酸/塩基塩の形態にある請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
塩を、マレイン化イミドポリマー中の塩基性部位をプロトン化するに十分な強さの酸の添加によって調製する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
酸が、塩酸、硫酸、リン酸、アルキルもしくはアリールスルホン酸、炭酸、あるいは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、クエン酸、シュウ酸および乳酸からなる群から選択されるカルボン酸からなる請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸もしくは桂皮酸の塩またはこれらの組合せからなり、金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、ベリリウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、鉄、銅もしくは銀またはこれらの組合せからなる群から選択される請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
金属塩がジアクリル酸亜鉛である請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
酢酸をさらに含有する水溶液の形態にある請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
布を処理してゴムへの接着を高めるための請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
布を処理してゴムへの接着を高めるための方法であって、請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物を布に適用することを含んでなる方法。
【請求項11】
接着剤組成物を、噴霧、浸漬被覆、押出またはローラー被覆によって布に適用する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
処理した布を、約240℃までの温度で熱処理する請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
布が、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、綿、レーヨン、絹、羊毛、ナイロン、ポリプロピレン、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維またはこれらのブレンドからなる請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項9に記載の接着剤組成物を用いて、または請求項10〜13のいずれかに記載の方法に従って処理した布。
【請求項15】
請求項14に記載の処理した布を、ゴムと一緒に積層および成形し、そして硬化させた強化ゴム物品。
【請求項16】
ゴムが、天然または合成ゴム、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)、EPM(エチレン-プロピレンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、HNBR(水素化ニトリルゴム)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、XIIR(ハロブチルゴム)、UR(ウレタンゴム)ならびにこれら物質のブレンドおよびコポリマーからなる群から選択される請求項15に記載のゴム物品。
【請求項17】
ゴムを、フリーラジカル開始剤またはイオウ硬化剤によって硬化させる請求項15または16に記載のゴム物品。
【請求項18】
ゴムを過酸化物によって硬化させる請求項17に記載のゴム物品。
【請求項19】
自動車ホースおよびベルト、コンベヤーベルト、伝動ベルト、自動車エアバッグ、柔軟性印刷用ブランケット、エンジンマウント、タイヤおよびあらゆる他の強化成形ゴム生成物を含む末端用途適用のための請求項15〜18のいずれかに記載の強化ゴム物品を製造する際の、請求項1〜9のいずれかに記載の接着剤組成物の使用。
【請求項20】
複合体構造の特性を改善するためのガラス繊維または炭素繊維強化材の処理における、ならびに、金属、プラスチック、木材、紙、ガラスまたは布から選択される基材をそれら自体または他の材料に結合するための接着剤としての使用における、請求項1〜9のいずれかに記載の接着剤組成物の使用。
【請求項21】
エラストマー中への充填剤の分散剤としての、あるいは、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または他の基材のための被覆剤としての、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項22】
請求項1〜8のいずれかに記載の少なくとも1つの組成物を含有する、エラストマー中への充填剤のための分散剤。

【公表番号】特表2007−537312(P2007−537312A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512078(P2007−512078)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005075
【国際公開番号】WO2005/113609
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(502433287)サートーマー・テクノロジー・カンパニー・インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Sartomer Technology Company, Inc.
【Fターム(参考)】