説明

希土類ボンド磁石の製造方法

【課題】磁性粉を高充填した場合においても磁性粉の流動性を高め得、また磁性粉と熱可塑性樹脂バインダとを良好に密着接触させ得て、磁石製品の破壊強度を高強度となし得る希土類ボンド磁石の射出成形による製造方法を提供する。
【解決手段】希土類鉄系合金から成る磁性粉10に熱可塑性樹脂バインダを添加及び混練して成るボンド磁石材を射出成形して目的とする形状のボンド磁石とする製造方法において、先ず磁性粉10の表面を熱可塑性樹脂バインダ12Aにてコーティングするコーティング処理を1次混練として行い、しかる後にコーティング処理した磁性粉10に熱可塑性樹脂バインダ12Bを添加及び混練する2次混練を行ってボンド磁石材となし、これを射出成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は希土類ボンド磁石の製造方法に関し、詳しくは射出成形により希土類ボンド磁石を成形し、製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類鉄系合金の磁性粉を熱可塑性樹脂バインダ(以下樹脂バインダとすることがある)で固めて成る希土類ボンド磁石は、高い磁気特性を有しており、HDDスピンドルモータ,CD-ROM,DVD等のディスクの再生装置や自動車電装モータ或いは携帯電話振動モータ等の磁石として広く用いられている。
【0003】
また希土類ボンド磁石の製造方法として、希土類鉄系合金、代表的にはNd-Fe-B系,Sm-Fe-N系の合金から成る磁性粉に熱可塑性樹脂バインダを添加し、混練したボンド磁石材を射出成形機にて成形型のキャビティに射出し、目的とする形状に成形し、製造する方法が広く用いられている。
【0004】
近年、モータの小型化,高性能化が加速しており、これに伴って希土類ボンド磁石の磁気特性の更なる向上が強く要請されており、その要請に答えるべく磁性粉の粒径や熱可塑性樹脂バインダの重合度の最適化、滑剤添加等の研究が従来なされている。
希土類ボンド磁石の高特性化を図るうえで最も端的な方法は、希土類ボンド磁石における磁性粉の充填量をより高充填化することである。
【0005】
但し従来の射出成形によるボンド磁石の製造方法の場合、磁性粉を高充填化しようとしても自ずとそこに限界があり、一定以上に磁性粉を高充填化することができないといった問題があった。
図4は従来の射出成形による希土類ボンド磁石の製造方法の工程例を示している。
図に示すように、従来にあっては先ず磁性粉を粉砕して粒径調整し、カップリング剤によるカップリング処理を施した後に、熱可塑性樹脂バインダの全量(ボンド磁石における熱可塑性樹脂の全量)を添加して、磁性粉と熱可塑性樹脂バインダとを混練機にて混練する。
【0006】
従来の製造方法では、その際の混練機としてスクリューを2本内蔵した2軸混練機を用い、そのスクリューの回転により磁性粉と熱可塑性樹脂バインダとを混練し、熱可塑性樹脂バインダを溶融流動化させて磁性粉と熱可塑性樹脂バインダとを混合し、ペレット状の混練材(ボンド磁石材)する。その後、この混練材を射出成形機内で加熱溶融し、射出成形機により成形型のキャビティに射出し、目的の形状のボンド磁石とする。
【0007】
このような従来の製造方法の場合、磁性粉の充填量を一定以上に高くすると、磁性粉即ちボンド磁石材の流動性が悪化し、射出成形に際してこれを金型のキャビティの隅々まで十分に充填できず、また成形品(磁石製品)の強度が悪化してしまう。
また場合よって流動性不足によりボンド磁石の成形そのものができなくなってしまう。
【0008】
その理由は次のようなものである。
図5に示しているように、磁性粉10に対して熱可塑性樹脂バインダ12の全量をいきなり添加して、それら磁性粉10と熱可塑性樹脂バインダ12とを混練するだけの従来の製造方法の場合、混練後において磁性粉10と熱可塑性樹脂バインダ12とが十分に馴染んでおらず、具体的には磁性粉10の表面が熱可塑性樹脂バインダ12にて十分に濡れておらず(磁性粉10の全表面に熱可塑性樹脂バインダ12が接触付着しておらず)、それら磁性粉10と熱可塑性樹脂バインダ12との間に空隙Kが生じたり、或いは磁性粉10と10とが直接接触してしまう。
【0009】
このため、射出成形に際して磁性粉10が磁性粉10と10との間に介在する媒介としての熱可塑性樹脂バインダ12内を円滑に流動できず、このことが成形不良に繋がったり、成形そのものができなくなってしまう原因となる。
また空隙Kの部分では熱可塑性樹脂バインダ12が成形品の強度に対して寄与しておらず、却って強度的な弱点部分となってしまう。
そしてこのことが成形品の強度低下をもたらす。
【0010】
例えば磁性粉10の充填率が低く、図5(B)(イ)に示しているように磁性粉10が互いに分離していて、各磁性粉10を熱可塑性樹脂バインダ12が全周に亘って包んだ状態にあると、磁性粉10は熱可塑性樹脂バインダ12を媒介として、恰も海の中を移動するように磁性粉10が円滑に流動し、成形型のキャビティに混練材即ちボンド磁石材を射出成形する際にキャビティの隅々までボンド磁石材を充填することができる。
またこのようにして得られた成形品は高い破壊強度を有する。
【0011】
これに対して、図5(B)(ロ)に示すように磁性粉10が高充填状態にあって、各磁性粉10が十分に熱可塑性樹脂バインダ12にて取り囲まれておらず、磁性粉10と10とが直接接触していたり、或いは磁性粉10と熱可塑性樹脂バインダ12との間に空隙Kが存在していたりすると、磁性粉10の流れが阻害され、流動性が低下して成形性を悪化させたり、また破壊強度の低下をもたらしてしまう。
【0012】
尚本発明に対する先行技術として、下記特許文献1には「プラスチック磁石組成物」についての発明が示され、そこにおいてNd-Fe-B系磁性粉末90〜95重量%と、熱可塑性樹脂5〜10重量%とから成るプラスチック磁石組成物における磁性粉末の表面を金属で被覆することで、磁石組成物を射出成形する際の流動性を高めるようになした点が開示されている。
この特許文献1に開示のものは、本発明と共通の課題を有するものであるが、その解決手段において本発明とは異なった別異のものである。
【0013】
また下記特許文献2には、「合金粉末、合金焼結体及びそれらの製造方法」についての発明が示され、そこにおいて流動性に優れた合金粉末の製造方法として、1次粒子粉末を有機系バインダで互いに結合することにより2次粒子粉末を形成せしめる点が開示されているが、この特許文献2に開示のものは焼結体を製造するためのもので、本発明のようなボンド材を製造するためのものではなく、またその焼結体も本発明のような磁石では無い点で本発明とは異なったものである。
【0014】
更に特許文献3には、「硬質合金焼結体の製造方法及び硬質合金焼結体」についての発明が示され、そこにおいて焼結時における低融点バインダの分解除去に伴う成形体の変形を防止することを内容とした、液相焼結法を用いた寸法精度の高い硬質合金焼結体を提供する点が開示されている。
しかしながらこの特許文献3に開示のものも、本発明のようなボンド磁石を対象とするものではなく、本発明とは異なったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平4−150004号公報
【特許文献2】特開2000−160203号公報
【特許文献3】特開2007−314870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、磁性粉を高充填した場合においても磁性粉の流動性を高め得、また磁性粉と熱可塑性樹脂バインダとを良好に密着状態に接触付着させ得て磁石製品の破壊強度を高強度となし得る希土類ボンド磁石の射出成形による製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、希土類鉄系合金から成る磁性粉に熱可塑性樹脂バインダを添加してそれら磁性粉とバインダ樹脂とを混練して成るボンド磁石材を射出成形機にて成形型に射出し、目的とする形状のボンド磁石とするボンド磁石の製造方法において、前記樹脂バインダの添加量の全量の一部を用いて先ず前記磁性粉と樹脂バインダとを混練し、該磁性粉の表面を該樹脂バインダにてコーティングするコーティング処理を1次混練として行い、しかる後に該樹脂バインダの残りの量を、前記コーティング処理した磁性粉に添加して、該コーティング処理した磁性粉と該添加した樹脂バインダとを混練する2次混練を行って前記ボンド磁石材となし、該ボンド磁石材を前記射出成形することを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記1次混練によるコーティング処理後の混練材に対して解砕処理を施し、表面に樹脂バインダがコーティングされた前記磁性粉の凝集体を解砕した上で、前記2次混練を行うことを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0019】
図1は本発明の製造方法の要部の概念図を表している。
図示のように、本発明では先ず熱可塑性樹脂バインダ12の添加量の全量の一部(12A)を用いて、磁性粉10と熱可塑性樹脂バインダ12Aとを混練し、磁性粉10の表面を熱可塑性樹脂バインダ12Aにてコーティングするコーティング処理を1次混練として行い、しかる後に熱可塑性樹脂バインダ12の残りの量(熱可塑性樹脂バインダ12B)を、先にコーティング処理した磁性粉10に添加して混練する2次混練を行ってボンド磁石材となし、そのボンド磁石材を射出成形して目的とする形状のボンド磁石を得るものである。
【0020】
本発明では、希土類鉄系合金の磁性粉として種々のものを用いることが可能であるが、好適にはかかる希土類鉄系合金の磁性粉としてNd-Fe-B系やSm-Fe-N系磁性粉を用いる。
また熱可塑性樹脂バインダについては、結晶性樹脂としてポリアミド12,ポリアミド6,ポリアミド66,PPS,PE等種々のものを用いることができ、また非結晶性樹脂としてPVC,EVA,PESその他のものを用いることができる。
【0021】
またボンド磁石における磁性粉の含有率(充填率)は、50〜75体積%の範囲内となすことができる。
尚磁性粉の好適な粒径は、平均粒径で100〜200μmの範囲内である。
【0022】
本発明では、従来の製造方法のように熱可塑性樹脂バインダ12の全量をいきなり磁性粉10に対し添加して混練を行わず、先ずその一部即ち少量の熱可塑性樹脂バインダ12Aを用いて磁性粉10との混練を行い、磁性粉10の表面を熱可塑性樹脂バインダ12Aでコーティングする。即ち磁性粉10の表面に熱可塑性樹脂バインダ12Aのコーティング膜14を形成する。
このとき、混練機による混練の効果が磁性粉10と熱可塑性樹脂バインダ12Aとの十分な強制接触及び密着のために用いられ、磁性粉10の表面に熱可塑性樹脂バインダ12Aのコーティング膜14が良好に形成される。
【0023】
尚このコーティングのための1次混練では、後述の2次混練で用いられる熱可塑性樹脂バインダ12Bと同じものを用いることもできるが、2次混練で用いる熱可塑性樹脂バインダ12Bよりも混練時に高粘性を発現するものを用いることができる。
また混練機についても、2次混練で用いるものと同じものを用いることも可能であるが、1次混練で用いる混練機として2次混練で用いる混練機よりも大きな剪断力,剪断作用で混練を行う混練機、具体的には例えばニーダ混練機を好適に用いることができ、またバンバリーミキサーその他の混練機を用いることもできる。
この1次混練において加える熱可塑性樹脂バインダ12Aの量は、最終的に加えられる熱可塑性樹脂バインダ12の全量の半量以下の量としておくことができる。
望ましくはその全量に対して1/3〜1/6の量とする。
【0024】
本発明ではこの1次混練の後に、先にコーティング処理した磁性粉10に対して熱可塑性樹脂バインダ12の残りの量を添加し、混練機にて混練を行う。
その際、後に添加した熱可塑性樹脂バインダ12Bは、磁性粉10の表面に施されたコーティング膜14と良く馴染み、かかるコーティング膜14を介して熱可塑性樹脂バインダ12Bと磁性粉10とが良好に全面接触し、熱可塑性樹脂バインダ12Bが磁性粉10を取り囲む状態に磁性粉10と熱可塑性樹脂バインダ12Bとが均一混合する。
【0025】
その際に磁性粉10の周りに図5に示したようにな空隙Kを生ぜしめたり、或いは磁性粉10と10とが直接接触してしまうのを良好に抑制することができる。
またその結果として、2次混練にて得られた混練材即ちボンド磁石材は、磁性粉10の熱可塑性樹脂バインダ12に対する流動性が高く確保される。
【0026】
従って本発明によれば、従来に増して磁性粉10を高充填することが可能であり、且つそのような高充填をした場合においても磁性粉10即ち混練材(ボンド磁石材)の流動性を高く保持することができ、ボンド磁石材を射出成形したときに良好に金型のキャビティ内で流動させることができ、キャビティの隅々までボンド磁石材を充満させることができる。
【0027】
これにより成形不良や成形そのものができなくなったりする問題を解決でき、また上記のような空隙の発生や磁性粉同士の接触を回避できるため、成形性の向上とともに成形品(磁石製品)の強度を高強度となすことができる。
尚、上記の2次混練においては混練機として従来の2軸混練機、即ちスクリューを2本内蔵した混練機を用い、スクリューの回転により磁性粉と熱可塑性樹脂バインダ12Bとを混練しつつ先端から押出す2軸混練機を好適に用いることができる。
因みに、従来の製造方法の場合熱可塑性樹脂バインダ12の添加量は34体積%以上とすることが必要で、これよりも添加量が少ないと成形を良好に行うことができなかったのが、本発明によれば熱可塑性樹脂バインダ12の添加量を、ボンド磁石全体の量を基準として31%以下に少なくすることが可能である。
好適には熱可塑性樹脂バインダ12を全量で31体積%〜29体積%とする。
その際、2次混練で添加する熱可塑性樹脂バインダ12Bの添加量は23〜26体積%とし、1次混練で添加する熱可塑性樹脂バインダ12Aの量を5〜9体積%とするのが好適である。
尚、熱可塑性樹脂バインダ12の添加量を除いた量が磁性粉10の含有量即ち充填量となる。
【0028】
本発明では、1次混練でのコーティング処理により得られた混練材に対して解砕処理を施し、表面に熱可塑性樹脂バインダ12Aがコーティングされた磁性粉10の凝集体を解砕した上で、2次混練を行うようになすのが望ましい(請求項2)。
【0029】
1次混練後の磁性粉10は、表面の熱可塑性樹脂バインダ12Aのコーティング膜を介して凝集を起こし易く、そのまま2次混練に供して混練を直接行うと磁性粉10を十分良好に熱可塑性樹脂バインダ12中に分散させることが難しい。
そこで2次混練に先立って、予め1次混練後に塊状となった凝集体を解砕しておくことで、その後の2次混練を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の希土類ボンド磁石の製造方法の概念図である。
【図2】本発明の実施形態の製造方法のプロセスの説明図である。
【図3】圧環強度の測定方法の説明図である。
【図4】従来の希土類ボンド磁石の製造方法のプロセスの一例を示す図である。
【図5】図4の製造方法の不具合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明の実施形態及び実施例を以下に説明する。
図2は、本発明の実施形態の希土類ボンド磁石の製造方法のプロセスの一例を示している。
図に示しているように、この実施形態では先ず希土類鉄系合金から成る磁性粉を粉砕して、その後粒径調整する。
そして粒径調整した磁性粉に対して熱可塑性樹脂バインダの全添加量の一部を用いて1次混練を行い、磁性粉の表面に熱可塑性樹脂バインダのコーティング膜を形成する。
【0032】
その後、1次混練にて得た混練材を解砕処理し、そして解砕処理したものを次の2次混練に供して、そこで熱可塑性樹脂バインダの残りの量を添加して2次混練を行い、ボンド磁石材とする。そしてこれを用いて射出成形し、求める形状のボンド磁石を製造する。但し厳密には射出成形した段階では成形体は着磁しておらず、そこでその後に着磁を施して希土類ボンド磁石とする。
【実施例】
【0033】
表1に示すように、磁性粉としてNd-Fe-B(平均粒径は134μm)を用い、同表に示す熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12を用いて1次混練を行い、磁性粉表面へのコーティング処理を行った。
このときのポリアミド12の添加量は8体積%とした。
【0034】
次に解砕処理を行った上で2次混練を行った。このとき熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12を用いた。
その際の熱可塑性樹脂バインダの添加量は22体積%(実施例1),30体積%(実施例2)とした。
尚実施例1,実施例2それぞれにおいて、1次混練のときに加えた熱可塑性樹脂バインダと合せて全体の添加量は30体積%(実施例1),38体積%(実施例2)である。
また磁性粉の充填量は70体積%(実施例1),62体積%(実施例2)である。
【0035】
尚1次混練と2次混練で、ともに熱可塑性樹脂バインダとしてポリアミド12を用いているが、それぞれの品番は異なっている。
具体的には、1次混練ではポリアミド12として宇部興産(株)製 PA12樹脂 UBESTA 3014Uを用い、また2次混練では宇部興産(株)製 PA12樹脂 UBESTA 3014UMXをそれぞれ用いた。
実施例1,実施例2それぞれについて、射出成形性の判定結果及び成形品の圧環強度,磁気特性が比較例とともに表1に併せて示してある。
ここで射出成形はφ16mm×φ14mm×h10mmの成形品を射出温度260℃,金型温度80℃の下で成形した。
【0036】
尚、1次混練では(株)モリヤマ製 DR3-10(3L)の加圧ニーダー混練機を用い、また解砕機として大阪ケミカル(株)製 ワンダーブレンダー WB-1を用いた。
更に2次混練では、スクリューを2軸備えた2軸型混練押出機を用い、更に成形品の圧環強度の測定は、(株)島津製作所製 オートグラフ AG-1 20kNTを用いた。
【0037】
この圧環強度の測定試験は、図3に示す円筒形状の成形体(φ16mm×φ14mm×h10mm)に対して、外周から中心に向けて圧縮力を加えてこれを圧壊し、そのときの圧壊に必要な力を測定することにより行った。
【0038】
表1において、実施例2と比較例2との比較から明らかなように、本実施例に従って製造した成形品は、成形品の圧環強度が59で、比較例2のものに比べて高く、また磁気特性も優れている。
更に成形性については、実施例2のものでは良好な結果が得られたが、比較例2では流動性が不十分で密度不足となり、その結果として圧環強度,磁気特性ともに実施例2のものに比べて劣っている。
【0039】
更に実施例1と比較例1との比較から明らかなように、比較例1では、磁性粉の充填率が高過ぎるために成形不能であったのに対し、実施例1では、同じ磁性粉の高充填の下でも良好に成形することができ、得られた成形品の圧環強度も高く、特に磁気特性については磁性粉の充填率が高充填であることによって高い磁気特性が得られている。
【0040】
【表1】

【0041】
以上本発明の実施形態,実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 磁性粉
12,12A,12B 熱可塑性樹脂バインダ
14 コーティング膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類鉄系合金から成る磁性粉に熱可塑性樹脂バインダを添加してそれら磁性粉とバインダ樹脂とを混練して成るボンド磁石材を射出成形機にて成形型に射出し、目的とする形状のボンド磁石とするボンド磁石の製造方法において、
前記樹脂バインダの添加量の全量の一部を用いて先ず前記磁性粉と樹脂バインダとを混練し、該磁性粉の表面を該樹脂バインダにてコーティングするコーティング処理を1次混練として行い、
しかる後に該樹脂バインダの残りの量を、前記コーティング処理した磁性粉に添加して、該コーティング処理した磁性粉と該添加した樹脂バインダとを混練する2次混練を行って前記ボンド磁石材となし、該ボンド磁石材を前記射出成形することを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記1次混練によるコーティング処理後の混練材に対して解砕処理を施し、表面に樹脂バインダがコーティングされた前記磁性粉の凝集体を解砕した上で、前記2次混練を行うことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−192542(P2010−192542A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33275(P2009−33275)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(595181210)株式会社ダイドー電子 (41)
【Fターム(参考)】