説明

帯電装置,作像カートリッジおよび画像形成装置

【課題】 簡単な電圧制御動作によって、高耐久性を実現できる帯電装置,それを用いる作像カートリッジおよび画像形成装置を提供。
【解決手段】 回動する感光体1に対向する帯電ローラ2a;それに、直流電圧に交流電圧を重畳した帯電電圧を印加する帯電電源30,33;および、該帯電電源が帯電ローラに印加する帯電電圧の交流電圧を、1枚作像分の帯電領域を最小単位とする1又は数単位の帯電区間においては同一電圧とするが、1又は数単位毎に交互に、高値2.3kV,低値2.0kVに切り換える帯電電圧制御手段40,41;を備える。該帯電電圧制御手段は、帯電飽和電流ISおよび帯電飽和電圧VPsを計測してメモリ43に保持し、利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体を帯電する帯電装置ならびにそれを用いる作像カートリッジおよび画像形成装置に関し、特に、これに限定する意図ではないが、感光体である感光体に非接触で対向する帯電ローラとそれに直流電圧に交流電圧を重畳した帯電電圧を印加する帯電電源との組合せである帯電装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の帯電装置としては、スコロトロン等のチャージャ方式のものが主流であったが、オゾン等の放電生成物が大量に発生するという問題があり、近年ではローラやブラシ等を帯電部材とする接触方式の帯電装置が広く使用されるようになった。
【0003】
特許文献1には、弾性ローラ部として、イオン導電性の電気抵抗調整材を含有する材料からなるものを用い、電源として、直流電圧及び交流電圧を出力可能なものを用い、且つ、電源制御手段として、電源からの出力電圧を、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧から、交流成分だけならなる交流電圧に所定のタイミングで切り替える制御を実施することによって、カーボン粉末を分散せしめた材料からなる放電部材よりも安価な放電部材を用いつつ、感光体長期に渡って安定した電位で帯電させる帯電装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、装置停止時にクリーニングブレードの当接しているドラム上の位置が、帯電ローラ当接部に到達するより前に帯電バイアスを印加する画像形成装置が記載されている。帯電バイアスは画像形成時のバイアスより大きい交流バイアスや、交流、長流を重畳し直流成分が正負交互に変化するバイアスであるようにすることによって、異物やクリーニング手段の塗布剤が感光ドラム表面から除去しにくい状態にあり、クリーニング手段をすり抜けることがあっても、異物等の帯電ローラへの付着を抑える。
【0005】
特許文献3には、少なくとも3段階以上の交流ピーク間電圧に直流電圧を重畳した帯電バイアスを印加可能な画像形成装置において、交流電流検知により選択された画像形成時の帯電交流バイアスが、印加可能な最大ピーク間電圧よりも2段階以上低いピーク間電圧が選択された場合に、画像形成前の前回転時の少なくとも一部において、画像形成時の帯電交流バイアスよりも2段階以上高いバイアスを印加することにより、前回転中に、感光ドラム上に残留する異物に起因する画像不良を除去することが、記載されている。
【0006】
接触方式の帯電装置では、感光体(感光体)上のトナー等のごみが帯電部材に静電的に吸引されるため、経時でのトナー等の汚れによる帯電ムラが発生し、帯電装置の寿命を決定する大きな要因となっていた。
【0007】
帯電ローラ(帯電部材)の汚れを低減するために、帯電ローラの両端部にシート状部材を貼り付けて、感光体と帯電ローラの間に微小な帯電ギャップを形成する方法が提案されている(例えば特許文献4)。シート状部材を用いない帯電ギャップの形成方法としては、帯電ローラの端部に段差もしくは溝を設け、そこにスペーサ部材を取り付ける方法がある(例えば特許文献5)。帯電ローラの材質としては、ゴムやスポンジ等の弾性部材を用いるのが一般的であるが、樹脂材料を用いる方法も知られている(例えば、特許文献6,特許文献7)。帯電部材の端部にコロを取り付け、感光体との摩擦を低減しながら帯電ギャップを形成する方式も提案されている(例えば特許文献8,特許文献9)。この場合、ギャップ保持部材(コロ)は感光体の画像領域外の非塗工部(非感光層)に当接するように配置されている。また、有機感光体の耐摩耗性や機械的強度を向上させるために無機物の微粒子を分散させる(例えば特許文献10)、あるいは潤滑性を向上させるためにフッ素樹脂の微粒子を分散させる(例えば特許文献11)など、帯電部材との関係において感光体の表面に保護層を形成する方法も知られている。感光体に対して帯電ローラを非接触状態に設ける方式では、接触方式に比べて帯電ローラの汚れを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、帯電ローラにAC(交流)電圧を印加した場合、コロナ帯電器に比べて発生オゾン量は少ないが、放電生成物による悪影響がある。すなわち感光体表面に放電生成物とトナー及びトナー添加剤が融着して感光体に付着すること(俗に言う感光体フィルミング)によって、感光体表面が低抵抗化して潜像の解像力が低下し、ボケ,画像流れ等が発生しやすくなる。これにより感光体表面の平滑性が損なわれ、感光体のクリーニング不良を誘発し、経時品質を不安定にさせている。そこで、感光体に潤滑剤を塗布することによって、感光体フィルミングを抑制する手段が提案され、製品化されているものもあるが、潤滑剤を塗布することによって、帯電ローラが非接触状態であっても、帯電ローラが汚れやすくなってしまい、帯電装置の寿命が期待以上に伸びない状況となってしまっている。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、比較的簡単な電圧制御動作によって、高耐久性を実現できる帯電装置,それを用いる作像カートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。具体的には、帯電ローラの汚れと感光体表面のトナーフィルミングをともに抑制し、帯電ローラおよび感光体の耐久性を高くすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)回動する感光体(1)に対向する帯電ローラ(2a);
該帯電ローラに、直流電圧に交流電圧を重畳した帯電電圧を印加する帯電電源(30,33);および、
該帯電電源が前記帯電ローラに印加する帯電電圧の前記交流電圧を、1枚作像分の帯電領域を最小単位とする1又は数単位の帯電区間においては同一電圧とするが、1又は数単位毎に交互に、高値(2.3kV),低値(2.0kV)に切り換える(図7)、帯電電圧制御手段(40,41);を備える帯電装置。
【0011】
なお、理解を容易にするために括弧内には、図面に示し後述する実指令の対応要素の符号又は対応事項を、例示として参考までに付記した。後記(2)〜(12)においても同様である。
【発明の効果】
【0012】
一貫して低値の交流電圧を印加すると、感光体のフィルミングは抑制されるが、帯電ローラ汚れによる縦スジが発生しやすい。しかし、一貫して高値の交流電圧を印加すると、帯電ローラ汚れによる縦スジの発生は抑制されるが、感光体のフィルミングが発生し易い。本発明によれば、帯電電圧制御手段(40,41)が交互に、高値(2.3kV),低値(2.0kV)に切り換える(図7)ので、低値(2.0kV)を印加することによる帯電ローラ汚れを高値(2.3kV)を印加することによって抑制し、高値を印加することによる感光体のフィルミングを低値を印加することによって抑制する。総合して、帯電ローラ汚れを抑制し、しかも感光体のフィルミングを抑制するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例であるカラープリンタの、機構概要を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す作像カートリッジの1つを示す拡大縦断面図である。
【図3】図2に示す帯電ローラ2aに帯電電圧を印加する電源30,33と、帯電電圧を制御する制御手段40,41との組合せを示すブロック図である。
【図4】図3に示すCPU42が、帯電ローラ2aの飽和電流値IS(図8)を計測する帯電電流制御の概要を示すフローチャートである。
【図5】図3に示すCPU42が、帯電ローラ2aの飽和電圧値VPs(図7)を計測する帯電電圧制御の概要を示すフローチャートである。
【図6】図3に示すCPU42が、作像のために帯電ローラ2aに印加する帯電電圧を切り換える、作像時帯電電圧制御の概要を示すフローチャートである。
【図7】図3に示すCPU42の作像時帯電電圧制御により帯電ローラ2aに印加される帯電電圧の変化パターンの数例を示すタイムチャートである。
【図8】図2に示す感光体1の、帯電ローラ2aの帯電電流による、帯電電位飽和特性を示すグラフである。
【図9】図2に示す感光体1の、帯電ローラ2aの帯電電圧による、帯電電位飽和特性を示すグラフである。
【図10】トナーの形状を表す拡大平面図であり、形状を現す指標値算出式尾も示す。
【図11】トナーの形状と形状を規定するパラメータを示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(2)前記高値の交流電圧を印加する帯電区間は、前記低値の交流電圧を印加する帯電区間以下である;上記(1)に記載の帯電装置。
【0015】
(3)前記帯電電圧制御手段(40,41)は、前記感光体(1)の帯電電位が飽和するときの帯電電流値(IS)となる前記交流電圧(VPs)を求めてメモリ(43)に保持し(図5)、前記交流電圧の高値,低値の一方は該メモリ(43)に保持する交流電圧(VPs)とし他方はそれより設定値(0.3kV)高いものとする;上記(1)又は(2)に記載の帯電装置。
【0016】
(4)前記帯電電圧制御手段(40,41)は、前記感光体(1)の帯電電位が飽和するときの帯電電流値(IS)を求めてメモリ(43)に保持する(図4);上記(3)に記載の帯電装置。
【0017】
(5)前記感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部材;を更に備える上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の帯電装置。
【0018】
(6)前記感光体(1);
上記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の帯電装置;
前記感光体(1)に形成された静電潜像にトナーを与えトナー像を形成する現像装置;および、
前記トナー像を用紙又は中間転写体に転写した後の感光体(1)の表面を清掃するクリーニング手段;
を備える作像カートリッジ(図2)。
【0019】
(7)前記現像装置のトナーは、体積平均粒径が3〜8μmで、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.00〜1.40の範囲にある;上記(6)に記載の作像カートリッジ。
【0020】
(8)前記現像装置のトナーは、形状係数SF−1が100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2が100〜180の範囲にある;上記(6)に記載の作像カートリッジ。
【0021】
(9)前記現像装置のトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー,ポリエステル,着色剤および離型剤を有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである;上記(6)に記載の作像カートリッジ。
【0022】
(10)前記現像装置のトナーは、略球形状である;上記(6)に記載の作像カートリッジ。
【0023】
(11)上記(6)乃至(10)のいずれか1つに記載の作像カートリッジ;
該作像カートリッジの前記感光体の帯電面に画像光を投射し静電潜像を形成する露光装置(9);
前記トナー像を直接に又は中間転写体(56)を介して間接に、用紙に転写する転写手段(51,61);および、
前記用紙上のトナー像を用紙に固定する定着装置(71〜74);
を備える画像形成装置。
【0024】
(12)前記画像形成装置は、中間転写ベルト(56)ならびに該中間転写ベルトに沿って配列された複数の作像カートリッジを備え;
前記転写手段(51,61)は、各カートリッジが形成した各トナー像を前記中間転写ベルト(56)の同一位置に重ね転写する1次転写手段(51)、および、該転写ベルト上の重ね転写されたトナー像を用紙に転写する2次転写手段(61)、を含む;上記(6)乃至(11)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0025】
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【実施例】
【0026】
図1に、本発明の第1実施例の画像形成装置であるプリンタPRTを示す。プリンタPRTは、その内部の略中央に中間転写ベルト56を備えている。中間転写ベルト56は、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料からなり、中抵抗に調整された基体からなる無端状ベルトで、4つのローラ52〜55に掛け回して支持され、図中矢印A方向に回転駆動される。中間転写ベルト56の下方にはイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)およびブラック(K)の各色トナーに対応した4つの作像カートリッジが中間転写ベルト56のベルト面に沿って並んでいる。
【0027】
図2に、4つの作像カートリッジのうちの1つPRCを拡大して示す。いずれの作像カートリッジも同様の構成である。図1に示す作像カートリッジのそれぞれは、感光体1(Y,M,CおよびK)を有し、各感光体1の周りには、感光体1表面に電荷を与える帯電装置2、感光体1表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置4,感光体1表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置3、および、トナー像転写後の感光体1表面のクリーニングをするクリーニング装置8、がそれぞれ配置されている。
【0028】
図1を再度参照すると、4つの作像カートリッジの下方には、帯電した各感光体の表面に各色の画像データに基づいて露光をし、潜像を形成する露光装置9が備えられている。
中間転写ベルト56を挟んで、各感光体1と対向する位置には、感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト56上に一次転写する一次転写ローラ51がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ51は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。
【0029】
中間転写ベルト56のローラ52で支持された部分の外側には、二次転写ローラ61が圧接されている。二次転写ローラ61は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。二次転写ローラ61と中間転写ベルト56との接触部が二次転写部であり、中間転写ベルト56上のトナー像が用紙に転写される。中間転写ベルト56のローラ55で支持された部分の外側には、二次転写後の中間転写ベルト56の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置57が設けられている。
【0030】
二次転写部の上方には、用紙上のトナー像を用紙に半永久的に定着させる定着装置70が備えられている。定着装置70は、内部にハロゲンヒータを有する加熱ローラ72及び定着ローラ73に巻き掛けられた無端の定着ベルト71と、定着ベルト71を介して定着ローラ73に対向、圧接して配置される加圧ローラ74とから構成されている。画像形成装置の下部には、用紙を載置し、二次転写部に向けて用紙を送り出す給紙装置20が備えられている。
【0031】
図2を再度参照すると、1つの作像カートリッジは、感光体1,帯電装置2,潤滑剤塗布装置3,現像装置4およびクリーニング装置8が一体的に組み付けた、プリンタPTR本体に着脱可能な作像プロセスカートリッジである。感光体1は、有機感光体であり、ポリカーボネート系の樹脂で表面保護層が形成されている。帯電装置2は、帯電部材として導電性芯金の外側に中抵抗の弾性層を被覆して構成される帯電ローラ2aを備える。
【0032】
帯電ローラ2aは、帯電電源30,33(図3)に接続されており、所定の電圧が印加される。帯電ローラ2aは、感光体1に対して微小な間隙をもって配設されている。この微小な間隙は、例えば、帯電ローラ2aの両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有するスペーサ部材を巻き付けるなどして、スペーサ部材の表面を感光体1表面に当接させることで、設定することができる。また、帯電ローラ2aには、帯電ローラ2a表面に接触してクリーニングする帯電クリーニング部材2bが設けられている。
【0033】
潤滑剤塗布装置3は、固定されたケースに収容された固形潤滑剤3bと、固形潤滑剤3bに接触して潤滑剤を削り取り、感光体1に塗布するブラシローラ3aとを備える。固形潤滑剤3bは、直方体状に形成されており、加圧部材3cによってブラシローラ3a側に付勢されている。加圧部材3cは、板バネ、圧縮バネ等のバネがよく、特に図に示すように圧縮バネを好適に用いることができる。固形潤滑剤3bはブラシローラ3aによって削り取られ消耗し、経時的にその厚みが減少するが、加圧部材3cで加圧されているために常時ブラシローラ3aに当接している。ブラシローラ3aは、回転しながら削り取った潤滑剤を感光体1表面に塗布する。
【0034】
ブラシローラ3aのブラシ繊維の太さは、3〜8デニールが好ましく、ブラシ繊維の密度は2万〜10万本/inchが好ましい。ブラシ繊維の太さが細すぎると、ブラシローラ3aが感光体1表面に当接したときに毛倒れを起こしやすくなり、逆にブラシ繊維が太すぎると繊維の密度を高くすることができなくなる。また、ブラシ繊維の密度が低いと感光体1表面に当接するブラシ繊維の本数が少ないため、潤滑剤を均一に塗布することができず、逆にブラシ繊維の密度が高すぎると繊維と繊維の隙間が小さくなり、掻き取った潤滑剤の粉体の付着量が減るため、塗布量が不足してしまう。そこで、毛倒れを起こしにくくするためのブラシ繊維の太さと、潤滑剤の均一な塗布を効率的に行うことができるブラシ繊維の密度とを有する、上記設定範囲のブラシローラ3aとしている。
【0035】
上記固形潤滑剤3bとしては、乾燥した固体疎水性潤滑剤を用いることが可能であり、ステアリン酸亜鉛の他にも、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸基を持つものを用いることができる。また、同じ脂肪酸基であるオレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレイン酸鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸銅、や、パルチミン酸、亜鉛パルチミン酸コバルト、パルチミン酸銅、パルチミン酸マグネシウム、パルチミン酸アルミニウム、パルチミン酸カルシウムを用いてもよい。他にも、カプリル酸鉛、カプロン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、及びリコリノレン酸カドミウム等の脂肪酸、脂肪酸の金属塩なども使用できる。さらに、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、オオバ油、みつろう、ラノリンなどのワックス等も使用できる。
【0036】
本実施形態においては、上記ブラシローラ3aによる潤滑剤塗布位置に対して移動方向の下流側の感光体表面にクリーニング手段としてのクリーニングブレード8aを当接させ、かつ、潤滑剤均し手段としての潤滑剤均しとしての機能を持たせている。クリーニングブレード8aは弾性体であるゴムから構成されているものである。
【0037】
現像装置4は、感光体1と対向する位置に、内部に磁界発生手段を備える現像スリーブ4aが配置されている。現像スリーブ4aの下方には、図示しないトナーボトルから投入されるトナーを現像剤と混合し、攪拌しながら現像スリーブ4aへ汲み上げるための2つのスクリュー4bが備えられている。現像スリーブ4aによって汲み上げられるトナーと磁性キャリアからなる現像剤は、ドクターブレード4cによって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像スリーブ4aに担持される。現像スリーブ4aは、感光体1との対向位置において同方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを感光体1の潜像面に供給する。
【0038】
現像装置4のトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー,ポリエステル,着色剤および離型剤を有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系溶媒中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである。600dpi以上の微少ドットを再現するために、現像装置4のトナーの体積平均粒径は3〜8μmが好ましい。体積平均粒径Dvと個数平均粒径Dnとの比Dv/Dnは、1.00〜1.40の範囲にあることが好ましい。Dv/Dnが1.00に近いほど粒径分布がシャープであることを示す。このような小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、静電転写方式では転写率を高くすることができる。
【0039】
また、トナーの形状係数SF−1は、100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。図10の(a)および(b)は、形状係数SF−1、形状係数SF−2を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記(1)式で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
【0040】
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(100π/4) ・・・(1)
SF−1の値が100の場合、トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。また、形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記(2)式で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
【0041】
SF−2={(PERI)/AREA}×(100π/4) ・・・(2)
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。
【0042】
トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0043】
現像装置4のトナーは、略球形状であり、以下の形状規定によって表すことができる。図11は、本発明のトナーの形状を模式的に示す図である。図11において、略球形状のトナーを長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定するとき、本発明のトナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)(図11の(b)参照)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)(図11の(c)参照)が0.7〜1.0の範囲にあることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、真球形状から離れるためにドット再現性及び転写効率が劣り、高品位な画質が得られなくなる。また、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。なお、r1、r2、r3は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変えて写真を撮り、観察しながら測定した。
【0044】
図3に、帯電ローラ2aに帯電電圧を印加する帯電電源の構成を示す。直流電源30の直流定電圧回路31は、作像プロセスを制御するプロセスコントローラ41のCPU42が与える目標電圧Vdcoに、電圧センサ31が検出した出力電圧が合致するように、定電圧制御(フィードバック電圧制御)により直流電圧を制御する。本実施例では、作像のための直流電圧は−750Vである。
【0045】
なお、図示を省略したがプリンタPRTには、ユーザ端末(例えばパソコン)からの印刷指令に応じてプロセスコントローラ41に印刷を指示するシステムコントローラ(プリンタコントローラとも言う),該システムコントローラにユーザ指示を与える操作ボードおよびシステムコントローラとユーザ端末との間の通信を行う外部通信装置がある。該システムコントローラは、操作ボードおよびユーザ端末からのユーザ指示に応じてプリンタPRTの初期状態あるいは動作(印刷条件)を設定し、印刷指示がある場合はプロセスコントローラ41に作像を指示する。プロセスコントローラ41には、図3に示す帯電電源インターフェース40の他に、他の作像関連機器のドライバ及びセンサとのインターフェースも接続されており、システムコントローラ41は、システムコントローラの指示に応じて、初期設定,作像プロセス制御等を行う。
【0046】
プロセスコントローラ41のCPU42が、交流電源33に交流定電圧出力を指示しているときには、交流電源33の定電圧制御36が、CPU42が与える目標電圧Vacoに、電圧センサ37が検出した出力電圧が合致するように、定電圧制御(フィードバック電圧制御)により、交流電源回路34の出力交流電圧Vpp(ピーク間電圧)を制御する。CPU42が定電流出力を指示しているときには、交流電源33の定電流制御38が、CPU42が与える目標電流Iacoに、電流センサ39が検出した出力電流(帯電電流)が合致するように、交流電源回路34を定電流制御(フィードバック電流制御)して、帯電ローラ2a/感光体1間を流れる電流(帯電電流)を制御する。
【0047】
なお、CPU42が出力する目標電圧Vdco,Vacoおよび目標電流Iacoはデジタルデータであるが、帯電電源インターフェース(電気回路)40がデジタルデータをアナログ信号に変換して、直流定電圧回路31,定電圧制御36および定電流制御38に与える。
【0048】
次に帯電ローラ2aに印加する帯電電圧の制御を具体的に説明する。図9は、−750Vの直流定電圧に、ピーク間電圧Vppの定電圧交流電圧を重畳した帯電電圧を、帯電ローラ2aの芯金に印加して、感光体1表面を帯電したときの、該ピーク間電圧Vppと感光体1の表面電位との関係を示す。各線G1,G2,G3及びG4は、感光体1/帯電ローラ2a間のギャップGがそれぞれ80μm,60μm,40μm及び0μmの帯電電位飽和特性を示す。交流電圧の周波数は同一である。図9から判るように、ギャップGがいかなるときも、交流のピーク間電圧Vppが或る値以上となると、感光体1の表面電位はほぼ一定の値を示し、その値は帯電ローラ2aに印加した直流定電圧(図示例では−750V)にほぼ一致している。すなわち、ギャップがG1(80μm)のときは、ピーク間電圧がVp1以上となると感光体1の表面電位はほぼ−750Vの一定の値となり、同様にギャップがそれぞれG2(60μm),G3(40μm)およびG4(0μm)のときは、ピーク間電圧がそれぞれVp2,Vp3およびVp4以上となると、感光体1の表面電位は、全てほぼ−750Vの値(一定値)となる。
【0049】
一方、帯電ローラ2aを感光体表面から離間させるスペーサの厚みは予め判っているので、ギャップGが変動するとしても、その最大ギャップの大きさは、実験等により予め把握することができる。そこで、その感光体1と帯電ローラ2aが回転したときの最大のギャップGが、例えば80μmであるプリンタの場合には、直流定電圧に、Vp1以上の定電圧制御されたピーク間電圧値の交流電圧を重畳した電圧を帯電ローラ2aに印加する。最大のギャップGが60μmであるプリンタの場合は、Vp2以上の定電圧制御されたピーク間電圧を持つ交流電圧を、また最大のギャップGが40μmのプリンタの場合は、Vp3以上の定電圧制御されたピーク間電圧の交流電圧を直流定電圧と共に帯電ローラ2aに印加する。
【0050】
このようにすれば、各プリンタの作動時に、感光体表面をほぼ一定の電位(図9の例ではほぼ−750V)に帯電させることができる。しかも、帯電ローラ2aに印加する交流電圧を定電流制御するのではなく、定電圧制御するので、定電流制御の場合にみられたハーフトーン画像の濃度むら、すなわち横すじ模様が現われる不具合を防止できる。このように、定電圧制御されるピーク間電圧の値を、ギャップGの大きさがいかなるときも、被帯電体の表面電位がほぼ一定となる値に設定することにより、従来のDC印加方式やAC印加方式の場合に発生していた欠点を全て除去することができる。
【0051】
ところで、本例のAC印加方式の場合、感光体1の表面電位をほぼ一定の値に帯電させることのできるピーク間電圧を帯電ローラ2aに印加すればよいのであるから、例えば図9にVp5で示した大きな電圧を印加してもよい。このようにすれば、最大ギャップが40μmであるときも、またこれよりも大きい60μmであるときも、さらにはその最大ギャップが80μmであるときも、上述の効果を奏することができる。しかも帯電ローラ2aに印加するピーク間電圧値を簡単に設定することができる。
【0052】
ところが、ピーク間電圧値が大きくなりすぎると、感光体1が疲労しやすくなる。例えば、最大ギャップが80μmであったとき、帯電ローラ2aに対しVp5のピーク間電圧を印加したとすると、特に、回転する感光体1と帯電ローラ2aとの間のギャップGが最小となった時、帯電ローラ2aに印加される電圧値が過剰となり、帯電ローラ2aと感光体1との間に形成される電界の強さが強くなりすぎて感光体1の疲労が促進され、その寿命が短められる。しかも感光体表面にトナーフィルミングが形成されやすくなり、これによって異常画像が発生するおそれもある。
【0053】
そこで、定電圧制御されたピーク間電圧の値を、ギャップGの大きさがいかなるときも、被帯電体たる感光体1の表面電位がほぼ一定となるピーク間電圧値のうちの最小の電圧値に設定することが好ましい。例えば、図9において最大ギャップGが80μmであるときは、ピーク間電圧値をVp1に設定し、また60μmのときはVp2に、40μmのときはVp3にそれぞれ設定するのである。このようにすれば、回転する感光体1と帯電ローラ2aの間のギャップGが最小になったときも、帯電ローラ2aに過剰な電圧が印加されることはなく、上述した不具合の発生を阻止することができる。
【0054】
また、帯電ローラ2aに印加するピーク間電圧値Vppを次のように設定することもできる。すなわち、図8に示すように、DCにACを重畳する方式を採用した場合、帯電ローラ2aに供給される帯電電流値がIS以上であれば、ギャップGがいかなるときも感光体表面をほぼ一定の値(図8の例では−750V)に維持することができる。電流値がIS以上であると、感光体表面の電位が飽和するのである。そこで、交流定電流を定電流制御により帯電ローラ2aから感光体1に通電し、感光体1の表面電位がほぼ一定の値に飽和したときに、帯電ローラ2aから感光体1に通電している電流の値ISを飽和電流値ISと称することにすると、この飽和電流値ISを検出して(図4)、その値を不揮発メモリ43に記憶しておく。
【0055】
図4に、「飽和電流値ISの検出」CSDの概要を示す。図示を省略した操作ボードから初期設定の中の「飽和電流値IS」の設定が指示されて、これに応答して図示を省略したシステムコントローラが、図3に示すプロセスコントローラ41に、「飽和電流値ISの検出」を指示すると、プロセスコントローラ41(のCPU42)が、「飽和電流値ISの検出」CSDを実行する。ここではまず、感光体1の回転駆動を開始する(s1)。これにより感光体1および帯電ローラ2aが回転を始める。次に、直流定電圧回路31の出力を−750Vとする。すなわち、直流定電圧回路31に、−750Vを指定する目標電圧Vdcoを与えて、直流定電圧回路31をオン(目標電圧出力)にする(s2)。
【0056】
つぎに、交流電源33に定電流出力(38動作,36停止)を指示し(s3)、電流初期値(IS検出に定めた目標電流範囲の最低値)を表す目標電流Iacoを定電流制御38に与えて、交流電源回路34および定電流制御38をオン(帯電電流出力)にする(s4)。
【0057】
そしてCPU42は、帯電ローラ2aが設定回数回転する間、電位センサ5の検出電位すなわち感光体1の表面電位を、所定周期で繰り返し読み込んで、帯電電位(表面電位)が設定値(−750V)に達したか検索し(s5)、達していないと、定電流制御38に与えている目標電流Iacoを1ステップ高値に変更して(s6)、また電位センサ5の検出電位を読み込んで、帯電電位が設定値(−750V)に達したか検索する(s5)。設定値に達したときは、そのとき定電流制御38に与えている目標電流Iacoを、飽和電流値ISとして不揮発メモリ43に保存する(s7)。すなわち、不揮発メモリ43に保持している飽和電流値ISを、今回検出した値に更新する。そして電源30および33をオフ(出力停止)にして(s8)、感光体1の回転駆動を停止する(s9)。帯電ローラ2aは感光体1に連動して駆動されるので、帯電ローラ2aも回転を停止する。
【0058】
一方、プリンタPTRのウォームアップ時、或いは印刷終了後などの非画像形成時に、帯電ローラ2aに対して、定電圧制御により、数種のピーク間電圧値の交流電圧をそれぞれ印加する。このときの電圧印加を予備印加と称することにすると、その予備印加時に帯電ローラ2aに供給される電流の値が前述の飽和電流値ISとなったときのピーク間電圧値VPsを検出する(図5)。そして、印刷(作像)時に、前述の直流定電圧(本例では−750V)に、上述の如く検出されたピーク間電圧値VPsの交流を重畳した帯電電圧を帯電ローラ2aに印加して、感光体表面を帯電する。飽和電流値ISとするピーク間電圧値VPsを、帯電ローラ2aに印加する交流電圧のピーク間電圧値Vppとする。
【0059】
図5に、「ピーク間電圧値VPsの検出」VSDの概要を示す。プリンタPTRのウォームアップ時,印刷を終了し前回の「ピーク間電圧値VPsの検出」VSDの後印刷枚数積算値が設定値以上増大しているとき、あるいは、操作ボードより初期設定の中の「ピーク間電圧値VPsの検出」VSDが指示されたときCPU42は「ピーク間電圧値VPsの検出」VSDを開始する。ここではまず、感光体1の回転駆動を開始する(s11)。これにより感光体1および帯電ローラ2aが回転を始める。次に、直流定電圧回路31の出力を−750Vとする。すなわち、直流定電圧回路31に、−750Vを指定する目標電圧Vdcoを与えて、直流定電圧回路31をオン(目標電圧出力)にする(s12)。
【0060】
つぎに、交流電源33に定電流出力(36動作,38停止)を指示し(s13)、電圧初期値(VPs検出に定めた目標電圧範囲の最低値)を表す目標電圧Vacoを定電圧制御36に与えて、交流電源回路34および定電圧制御36をオン(帯電交流電圧出力)にする(s14)。
【0061】
そしてCPU42は、帯電ローラ2aが設定回数回転する間、電流センサ39の検出電流すなわち帯電電流を、所定周期で繰り返し読み込んで、帯電電流が、不揮発メモリ43に記憶している飽和電流値ISに達したか検索し(s15)、達していないと、定電圧制御36に与えている目標電圧Vacoを1ステップ高値に変更して(s16)、また電流センサ39の検出電圧を読み込んで、帯電電流が飽和電流値ISに達したか検索する(s15)。飽和電流値ISに達したときは、そのとき定電圧制御36に与えている目標電圧Vacoを、飽和電圧値VPsとして不揮発メモリ43に保存する(s17)。すなわち、不揮発メモリ43に保持している飽和電圧値VPsを、今回検出した値に更新する。そして電源30および33をオフ(出力停止)にして(s18)、感光体1の回転駆動を停止する(s19)。帯電ローラ2aは感光体1に連動して駆動されるので、帯電ローラ2aも回転を停止する。
【0062】
作像時に、前述の直流定電圧(本例では−750V)に、この飽和電圧値VPs(ピーク間電圧)の交流電圧を重畳した電圧を帯電ローラ2aに印加して、感光体表面を帯電させると、環境が変化したり、スペーサの摩耗が進んだときも、帯電ローラ2aに対して、必ず飽和電流値ISの電流、換言すれば感光体表面を所定の電位(本例では−750V)に帯電させることのできる値のピーク間電圧が帯電ローラ2aに印加される。この印加電圧設定方法を採用すると、環境検知手段やギャップ検知手段の検知結果、或いは帯電部材2の使用時間の検知結果に基づいてユーザが、帯電ローラ2aに印加するピーク間電圧値を設定する必要がなくなり、メンテナンス作業を簡素化することができる。
【0063】
ところで、上述のように、飽和電流値ISを流す飽和電圧値VPsをピーク間交流電圧に設定するのは、帯電ローラ2aに印加される交流電圧値が過剰による感光体の疲労及び、感光体表面のトナーフィルミング等の不具合を極力抑制する為である。しかし、感光体表面をトナーフィルミングで保護する潤滑剤塗布装置3により、微粒となった潤滑剤が、帯電ローラ2aを感光体1に非接触に保った状態でも、ローラ表面に付着し、帯電不良を発生しやすい。つぎに実験例を示す。
【0064】
−比較例1と実施例1に共通の事項−
帯電に関わる条件は、
線速:205mm/sec.
帯電AC周波数:1500Hz
AC飽和電流IS:1.6mA
評価条件は、
原稿・転写材サイズ:A4
原稿送り方向:横(210mm)
カラーモード:フルカラー(4色)モード
1回あたりのプリント枚数(1回あたりの転写材出力枚数):2枚
で実施した。
【0065】
−比較例1−
各機械の帯電の交流電圧(ピーク間電圧)Vppの印加条件は、
機械A:上記AC飽和電流IS:1.6mAとなるVPs
機械B:該VPs+100V
機械C:該VPs+150V
機械D:該VPs+200V
機械E:該VPs+300V
とした。上記5台にて、帯電ローラ汚れに関する縦スジ、ならびに、感光体フィルミングに関する濃度ムラ,クリーニング不良および感光体表面フィルミングを評価した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
上記VPs+150V(機械C)が画像品質で一番バランスが取れた結果が得られた。しかしながら、帯電ローラの汚れの目安となる縦スジに着目すると、若干、感光体フィルミングが発生した為、それによる濃度ムラが見受けられるものの、機械D、すなわち上記VPs+200V、とした方が良い結果となっている為、次の実施例1を実施し評価した。
【0068】
−実施例1−
比較例1の結果を受け、所定枚の画像形成毎に、Vppを以下のように切換えた;
通常印加時:上記IS×1.00に相当するVPs
所定枚の画像形成期間:該VPs+300V(例えば、通常2000Vなら2300V)
所定枚:2枚(A4紙横送りを1枚とカウント)
要約すると、A4横送りの2枚を画像形成する度に、通常印加である2000Vと所定枚毎に印加する2300Vを切り替える、図7に示すパターンAとなる。図7に示すVaco=2.0kVの上ピーク値は+250V、下ピーク値は−1750Vである。Vaco=2.3kVの上ピーク値は+400V、下ピーク値は−1900Vである。上記条件にて、比較例1の場合と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
図6に、図示しないシステムコントローラからの印刷指示に応答して、図3に示すプロセスコントローラ41のCPU42が実行する、作像時の「帯電電圧制御」CVCの概要を示す。ここではまず、感光体1の回転駆動を開始する(s21)。これにより感光体1および帯電ローラ2aが回転を始める。次に、第1枚目の作像のための帯電開始タイミングになると(s22)、CPU42は、直流定電圧回路31の出力を−750Vとする。すなわち、直流定電圧回路31に、−750Vを指定する目標電圧Vdcoを与えて、直流定電圧回路31をオン(目標電圧出力)にする(s23)。また、交流電源33に定電圧出力(36動作,38停止)を指示し、不揮発メモリ43の飽和電圧VPsを表す目標電圧Vacoを定電圧制御36に与えて、交流電源回路34および定電圧制御36をオン(帯電交流電圧出力)にする(s24)。
【0071】
そして第1枚目の帯電終了タイミングを待って(s25)、印刷終了でないと、第2枚目を表すためにフラグレジスタFfp(CPU42の内部メモリの一領域)のデータ「0」(1枚目)を「1」に書き換えて(s27,s28)、帯電電圧出力を継続する(s25)。第2枚目の帯電終了タイミングになると、そこでも印刷終了でないと、フラグレジスタFfpのデータを「0」(3枚目:1枚目と同義)に戻し(s26,s27,s29)、帯電電源30,33をオフ(帯電出力停止)にして(s30)、次の第3枚目の作像のための帯電開始タイミングになるのを待つ(s31)。
【0072】
次に、第3枚目の作像のための帯電開始タイミングになると(s31)、CPU42は、直流定電圧回路31の出力を−750Vとする(s32)。また、交流電源33に定電圧出力(36動作,38停止)を指示し、不揮発メモリ43の飽和電圧VPsに300Vを加えた電圧値を表す目標電圧Vacoを定電圧制御36に与えて、交流電源回路34および定電圧制御36をオン(帯電交流電圧出力)にする(s33)。そして第3枚目の帯電終了タイミングを待って(s34)、印刷終了でないと、第4枚目(第2枚目と同義)を表すためにフラグレジスタFfpのデータ「0」(3枚目)を「1」に書き換えて(s36,s37)、帯電電圧出力を継続する(s34)。第4枚目の帯電終了タイミングになると、そこでも印刷終了でないと、フラグレジスタFfpのデータを「0」(5枚目:1枚目と同義)に戻し(s35,s36,s38)、帯電電源30,33をオフにして(s39)、次の第5枚目の作像のための帯電開始タイミングになるのを待つ(s22)。
【0073】
印刷終了になるまで、上述の第1枚〜第4枚の帯電制御と同様な帯電制御を繰り返す。これにより、帯電ローラ2aには、図7に示すパターンAで、交流電圧が印加される。印刷を終了すると、CPU42は、帯電電源30,33をオフにして(s40)、感光体1の回転駆動を停止する(s41)。これにより帯電ローラ2aも回転を停止する。
【0074】
以上のように、所定枚の画像形成毎に帯電ローラ2aに印加する交流電圧Vppを通常印加する交流電圧値VPsと異なる電圧VPs+300Vを所定枚の画像形成の間印加することによって、帯電ローラ汚れと感光体フィルミングが少なくなる。すなわち、帯電ローラ2aの汚れと感光体1のトナーフィルミングは、比較例1では、トレードオフの関係にある結果となったが、帯電ローラ2aの汚れによる縦スジの発生が良くなる飽和電流値ISとなる飽和電圧値VPsより大きくしたVpp(VPs+300V)と、感光体1に対して、ハザードを極力抑えた飽和電流値ISとなるVPsを交互に組み合わせて印加する事で、「VPs+300V」を一貫してかけた時(比較例1)の感光体1のフィルミングが抑制され、又、VPsを一貫してかけた時の帯電ローラ汚れによる縦スジも抑えられた。
【0075】
尚、通常電圧値と異なる電圧値の印加時間を1:1の比とした図7のパターンB〜Dでも同様な効果が得られた。よって、1回あたりの作像回数(枚数)が任意で異なる場合、いわゆる実使用においても、図7のパターンE〜Hの様に、所定作像回数(枚数)毎にVppを切り替える事が有効である。更には、本実施例では、出力Vppの切り替えを作像回数(枚数)で管理しているが、任意の所定時間としても同様の効果が得られる。
【0076】
また、プリンタPRTにおいて飽和電流値ISを検出して不揮発メモリ43に保持するが、これを初期設定のなかで、ユーザが増減調整するようにするのが好ましい。また、各プリンタで飽和電流値ISを検出するのに代えて、同一機種の各プリンタには、実験により求めた、あるいは図3に示す構成の帯電装置を備える試作機で求めた、飽和電流値ISを、不揮発メモリに書き込んでおくこともできる。すなわち、飽和電流値ISの検出を、各プリンタにおいては省略することもできる。
【符号の説明】
【0077】
1:感光体
2:帯電装置
2a:帯電ローラ
2b:帯電クリーニング部材
3:塗布装置
3a:ブラシローラ
3b:固形潤滑剤
3c:加圧部材
4:現像装置
5:電位センサ
51:1次転写ローラ
56:中間転写ベルト
61:2次転写ローラ
8:クリーニング装置
8a:ブレード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開2007−072030号公報
【特許文献2】特開2005−173273号公報
【特許文献3】特開2004−258539号公報
【特許文献4】特開2001−194868号公報
【特許文献5】特開2002−055508号公報
【特許文献6】特開2001−337515号公報
【特許文献7】特開2003−066693号公報
【特許文献8】特開2001−312121号公報
【特許文献9】特開2000−206805号公報
【特許文献10】特開平08−339092号公報
【特許文献11】特開平11−218945号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動する感光体に対向する帯電ローラ;
該帯電ローラに、直流電圧に交流電圧を重畳した帯電電圧を印加する帯電電源;および、
該帯電電源が前記帯電ローラに印加する帯電電圧の前記交流電圧を、1枚作像分の帯電領域を最小単位とする1又は数単位の帯電区間においては同一電圧とするが、1又は数単位毎に交互に、高値,低値に切り換える、帯電電圧制御手段;
を備える帯電装置。
【請求項2】
前記高値の交流電圧を印加する帯電区間は、前記低値の交流電圧を印加する帯電区間以下である;請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記帯電電圧制御手段は、前記感光体の帯電電位が飽和するときの帯電電流値となる前記交流電圧を求めてメモリに保持し、前記交流電圧の高値,低値の一方は該メモリに保持する交流電圧とし他方はそれより設定値高いものとする;請求項1又は2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記帯電電圧制御手段は、前記感光体の帯電電位が飽和するときの帯電電流値を求めてメモリに保持する;請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部材;を更に備える請求項1乃至4のいずれか1つに記載の帯電装置。
【請求項6】
前記感光体;
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の帯電装置;
前記感光体に形成された静電潜像にトナーを与えトナー像を形成する現像装置;および、
前記トナー像を用紙又は中間転写体に転写した後の感光体の表面を清掃するクリーニング手段;
を備える作像カートリッジ。
【請求項7】
前記現像装置のトナーは、体積平均粒径が3〜8μmで、体積平均粒径Dvと個数平均粒径Dnとの比Dv/Dnが1.00〜1.40の範囲にある;請求項6に記載の作像カートリッジ。
【請求項8】
前記現像装置のトナーは、形状係数SF−1が100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2が100〜180の範囲にある;請求項6に記載の作像カートリッジ。
【請求項9】
前記現像装置のトナーは、少なくとも、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー,ポリエステル,着色剤および離型剤を有機溶媒中に分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーである;請求項6に記載の作像カートリッジ。
【請求項10】
前記現像装置のトナーは、略球形状である;請求項6に記載の作像カートリッジ。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか1つに記載の作像カートリッジ;
該作像カートリッジの前記感光体の帯電面に画像光を投射し静電潜像を形成する露光装置;
前記トナー像を直接に又は中間転写体を介して間接に、用紙に転写する転写手段;および、
前記用紙上のトナー像を用紙に固定する定着装置;
を備える画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成装置は、中間転写ベルトならびに該中間転写ベルトに沿って配列された複数の作像カートリッジを備え;
前記転写手段は、各カートリッジが形成した各トナー像を前記中間転写ベルトの同一位置に重ね転写する1次転写手段、および、該転写ベルト上の重ね転写されたトナー像を用紙に転写する2次転写手段、を含む;
請求項6乃至11のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−191340(P2010−191340A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37615(P2009−37615)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】