説明

常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造

【課題】常温絶縁型超電導ケーブルに適した端末構造を提供する。
【解決手段】常温絶縁型超電導ケーブル200は、超電導導体層212を有する導体部210と、導体部210を収納し、超電導導体層212を冷却する冷媒が流通する冷媒配管213と、冷媒配管213の外周に形成される電気絶縁層215と、を備える。そして、常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造100は、超電導ケーブル200の端末の外周を覆うと共に、当該端末の先端部における導体部210が外部に露出した状態で配置される碍管120と、碍管120から外部に露出した導体部210(超電導導体層212)と引出導体110とを電気的に接続する接続部130と、接続部130の外周を覆うように冷媒配管213に接合され、接続部130を収納する冷媒槽140と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、既存の電力ケーブル(例、CVケーブルやOFケーブルなどの常電導ケーブル)に比較して、大容量の電力を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、実線路を模擬した線路に超電導ケーブルを布設し、実用化に向けて実証試験が進められている。
【0003】
超電導ケーブルには、超電導導体層の外周に電気絶縁層を有する導体部(所謂ケーブルコア)が冷媒配管に収納され、当該電気絶縁層も冷媒(例、液体窒素(LN2))の温度に冷却される低温絶縁型のもの(例えば、特許文献1の段落0004参照)と、超電導導体層の外周に電気絶縁層を有しない導体部が冷媒配管に収納され、この冷媒配管の外周に電気絶縁層が形成され、当該電気絶縁層が常温に保持される常温絶縁型のもの(例えば、特許文献1の段落0003参照)とがある。冷媒配管には、例えば、内管と外管とを有する二重管構造の断熱管が利用されており、断熱性を高めるために、内管と外管との間の空間を真空引きして真空断熱層を形成したり、さらに、この真空断熱層にスーパーインシュレーションといった断熱材を配置したりすることが行われている。
【0004】
ところで、超電導ケーブルを用いて線路を構築する場合、超電導ケーブルの端末において、超電導ケーブルと常電導電力機器(例、常電導ケーブル)とを接続する端末構造(終端接続部)が必要である。上記した低温絶縁型超電導ケーブルの端末構造が、例えば特許文献2に開示されている。この端末構造では、超電導ケーブルの端末を処理して露出させた導体部(超電導導体層)にブッシングの導体(引出導体)を接続し、このブッシングを介して、極低温側から常温側に電流を引き出す構成である。ブッシングは、内部に常電導材料からなる導体を有し、導体の一端が超電導ケーブルの導体部と接続され、他端が常温側に引き出される。そして、上記端末構造は、このブッシングの導体の一端側(超電導ケーブルの導体部と接続される側)を収納する冷媒槽と、冷媒槽の外周を覆う真空容器と、真空容器の常温側に突設される碍管とを備え、ブッシングの他端側が碍管に収納され、導体の他端が碍管を貫通して常温側へ引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8‐64041号公報
【特許文献2】特開2005‐117724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超電導ケーブルを実用化するにあたり、布設されている既存の電力ケーブルを超電導ケーブルに置き換えることが考えられる。しかし、常温絶縁型超電導ケーブルの場合、具体的な端末構造は従来提案されていない。
【0007】
また、常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造として、上記した低温絶縁型超電導ケーブルの端末構造と同様の構成を採用した場合、電力ケーブルの端末構造に使用されている碍管などの既存の端末設備をそのまま利用することができない虞がある。具体的には、超電導ケーブルの能力に応じた電力を送電する場合、引出導体には大電流が流れることになり、引出導体におけるジュール損が非常に大きくなる。これを回避するため、引出導体の断面積(外径)を大きくして、引出導体の電気抵抗を小さくすることが考えられるが、その場合、引出導体を収納する碍管も大径化する。したがって、従来の端末構造の技術を適用した場合、小型化が難しく、碍管なども含めて新規に端末構造を設計・施工する必要がある。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、小型化が可能であり、常温絶縁型超電導ケーブルに適した端末構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造は、常温絶縁型超電導ケーブルの端末と常温側に引き出される引出導体とを接続する端末構造である。常温絶縁型超電導ケーブル(以下、単に「超電導ケーブル」と呼ぶ場合がある)は、超電導導体層を有する導体部と、導体部を収納し、超電導導体層を冷却する冷媒が流通する冷媒配管と、冷媒配管の外周に形成される電気絶縁層と、を備える。そして、この端末構造は、超電導ケーブルの端末の外周を覆うと共に、当該端末の先端部における導体部が外部に露出した状態で配置される碍管と、碍管から外部に露出した導体部と引出導体とを電気的に接続する接続部と、接続部の外周を覆うように冷媒配管に接合され、接続部を収納する冷媒槽と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、超電導ケーブルの端末の外周を覆う碍管から当該ケーブルの端末の先端部における導体部が外部に露出し、この導体部と引出導体との接続部が碍管の外部に設けられる。そのため、引出導体の外径を大きくしても、碍管の外径を大きくする必要がなく、碍管の外径が小さくて済む。よって、端末構造の小型が可能であり、また、端末構造を施工する際、既存の電力ケーブルの端末設備の一部(例えば、碍管)をそのまま利用することができるため、超電導ケーブルの布設コストを低減することができる。
【0011】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造の一形態としては、冷媒槽の側面に、当該冷媒槽内に連通し、引出導体の引出方向とは異なる方向に分岐する分岐冷媒配管に接合される冷媒導通口を備えることが挙げられる。
【0012】
この構成によれば、超電導ケーブルの冷媒配管に流通する冷媒を引出導体の引出方向とは異なる方向に冷媒導通口を通して端末から引き出すことができる。超電導ケーブルを布設し送電を行う場合、例えば、一端側の端末から引き出された冷媒を、分岐冷媒配管を介して外部に設けられる冷却システムに送り、冷媒配管を流通することによって温度上昇した冷媒を所定の温度まで冷却した後、冷却した冷媒を他端側の端末から冷媒配管に戻すことができ、冷媒を循環させることができる。
【0013】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造の一形態としては、さらに、冷媒槽の外周を覆う真空槽を備え、この真空槽の側面に、当該真空槽内に連通し、当該真空槽内を真空引きするための真空引ポートを備えることが挙げられる。
【0014】
この構成によれば、冷媒槽の外周に真空槽を備えることで、真空槽内(冷媒槽と真空槽との間の空間)を真空引きして、冷媒槽の断熱性をより高めることができる。
【0015】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造の一形態としては、冷媒槽が接続部よりも引出導体側に延長して形成され、引出導体と冷媒槽との間隔が0.1mm以上2.5mm以下であることが挙げられる。
【0016】
冷媒槽内の冷媒を液体状態に維持した場合、極低温側から常温側への温度勾配が十分にとれず、冷媒槽を封止するシール部材が過度に冷却されて劣化する可能性がある。そこで、冷媒槽内を液体冷媒(例、液体窒素(LN2))と気体冷媒(例、窒素ガス(GN2))とに分け、冷媒による冷却が必ずしも必要ではない接続部よりも引出導体側に気体冷媒を充填することが考えられる。ここで、引出導体の外周面と冷媒槽の内周面との間隔を大きくした場合、気体冷媒の領域を確保するため、加圧機により気体冷媒を加圧する必要がある。これに対し、上記構成によれば、引出導体と冷媒槽との間隔を0.1mm以上2.5mm以下に小さくしたことで、加圧機により加圧することなく気体冷媒の領域が確保されると共に、気体冷媒の圧力と液体冷媒の圧力とが平衡し、冷媒槽内における液体冷媒の液面が安定し易い。また、間隔を小さくしたことで、引出導体と冷媒槽との間の空隙の容積が小さくなり、熱侵入も抑制し易い。
【0017】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造の一形態としては、超電導ケーブルが2条布設され、両超電導ケーブルの同じ一端側の端末に設けられた各々の端末構造における冷媒槽の側面に、当該冷媒槽内に連通し、前記引出導体の引出方向とは異なる方向に分岐する分岐冷媒配管に接合される冷媒導通口を備える。そして、各々の端末構造における冷媒導通口同士が、前記分岐冷媒配管を介して接続されていることが挙げられる。
【0018】
この構成によれば、まず、超電導ケーブルが2条布設されているので、各超電導ケーブルに電流を分担させることができ、1条あたりの電流容量を小さくして、各超電導ケーブルを小型化することが可能である。次に、各々の端末構造における冷媒導通口同士が分岐冷媒配管を介して接続されていることで、一方の超電導ケーブルの冷媒配管に流通する冷媒と他方の超電導ケーブルの冷媒配管に流通する冷媒とを共通化することができる。具体的には、一方の超電導ケーブルの冷媒配管に流通する冷媒が他端側から一端側に流れるとき、この冷媒を、分岐冷媒配管を介して、他方の超電導ケーブルの冷媒配管に送り、他端側から一端側に流すことで、両超電導ケーブルの冷媒を共通化することができる。これにより、冷却システムも共通化することができ、冷却システムの設置スペースを削減できる。上記の場合、冷却システムを両超電導ケーブルの他端側に設置し、他方の超電導ケーブルの冷媒配管を通って戻った冷媒を、冷却システムに送り、冷却システムで冷却した後、再び一方の超電導ケーブルの冷媒配管に供給して循環させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造は、碍管から外部に露出した導体部に引出導体が取り付けられ、導体部と引出導体との接続部が碍管の外部に設けられることで、碍管の外径が小さく、小型化が可能である。よって、既存の電力ケーブルの端末構造に使用されている碍管などの端末設備をそのまま利用することができ、超電導ケーブルの布設コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】常温絶縁型超電導ケーブルの一例を模式的に示す概略断面図である。
【図2】実施の形態1に係る常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造の全体概略構成を示す一部切欠断面図である。
【図3】実施の形態1に係る常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造の要部概略構成を示す半断面図である。
【図4】実施の形態2に係る常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造の全体概略構成を示す一部切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、各図において、同一又は相当の部材には同一の符号を用いる。
【0022】
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、常温絶縁型超電導ケーブルを説明する。図1に示す超電導ケーブル200は、冷媒配管213内に超電導導体層212を有する導体部210を収納したケーブルであり、超電導導体層212が冷媒214により冷却され、電気絶縁層215が冷媒214により冷却されない構成である。ここでは、冷媒配管213内に1条の導体部210が収納された単心ケーブルを示す。
【0023】
導体部210は、代表的には、中心から順にフォーマ211、超電導導体層212、保護層(図示せず)を有する。フォーマ211は、超電導導体層212の支持体や異常時電流(短絡電流など)の流路に利用される部材であり、銅やアルミニウムなどの常電導体で形成されている。より具体的には、例えば、エナメルなどの絶縁被覆を有する複数の金属線を撚り合わせた撚り線などの中実体、金属パイプや金属帯を螺旋状に成形したスパイラルパイプなどの中空体が挙げられる。金属パイプなどの中空体とした場合、その内部空間を冷媒の流路に利用することが可能である。
【0024】
超電導導体層212は、例えば、酸化物超電導体を有するテープ状線材が好適に利用できる。テープ状線材は、例えば、Bi2223系超電導テープ線(Ag-MnやAgなどの安定化金属中に酸化物超電導体からなるフィラメントが配されたシース線)、RE123系薄膜線材(RE:希土類元素(例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)。金属基板に酸化物超電導相が成膜された積層線材)が挙げられる。超電導導体層212は、上記テープ状線材を螺旋状に巻回して形成した単層構造又は多層構造が挙げられる。この例では、超電導導体層212は、多層構造である(図2、3参照)。保護層は、この超電導導体層212を保護するためのものであり、クラフト紙などを巻回した構成が挙げられる。
【0025】
上記導体部210を収納する冷媒配管213は、超電導導体層212を冷却して超電導状態に維持するための冷媒214(代表的には液体窒素や液体ヘリウム)が流通し、冷媒214の流路として機能する。この冷媒配管213は、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属製の内管213i及び外管213oを有し、両管213i,213oの間に真空断熱層が形成された二重管構造の真空断熱管である。この例では、内管213i及び外管213oのそれぞれにコルゲート加工が施されている。また、真空断熱層にスーパーインシュレーションといった断熱材を配置すると、断熱性を高めることができる。内管213iと外管213oとの間にスペーサを配置すると、両管213i,213oの接触を防ぎ、接触箇所からの熱侵入を防止でき、断熱性を高めることができる。
【0026】
超電導ケーブル200では、上記冷媒配管(真空断熱管)213の外周に電気絶縁層215が形成されている。電気絶縁層215は常温環境で使用されるため、その構成材料には、常電導ケーブルで実績がある電気絶縁強度に優れる材料、代表的にはCVケーブルに利用される架橋ポリエチレン(XLPE)などを利用できる。架橋ポリエチレンなどの絶縁性樹脂は、冷媒配管213の上に押出しにより電気絶縁層215を容易に形成できるため、超電導ケーブルの製造性に優れる。電気絶縁層215の上には、図示しないが、銅やアルミニウムなどの遮蔽や、ビニルやポリエチレンなどのシースを施す。この遮蔽は主として電界遮蔽層として機能し、一方、シースは機械的な保護層として機能する。
【0027】
次に、図2、3を参照して、常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造を説明する。図2、3に示す端末構造100は、超電導ケーブル200の端末と常温側に引き出される引出導体110とを接続する端末構造であり、超電導ケーブル200の端末の外周を覆う碍管120から当該ケーブル200の端末の先端部における導体部210が外部に露出し、この導体部210と引出導体110との接続部130が碍管120の外部に設けられる構成である。
【0028】
引出導体110は、超電導ケーブル200の端末の先端部における導体部210(超電導導体層212)に電気的に接続され、極低温側から常温側への電流の引き出しに利用される部材である。引出導体110には、例えば、銅やアルミニウムなどの常電導体で形成された棒状体や管状体が利用できる。この例では、引出導体110は、銅製の棒状体であり、一端側に導体部210が挿入される挿入穴が形成されている。
【0029】
碍管120は、超電導ケーブル200の端末が挿入され、超電導ケーブル200の端末の外周を覆うと共に、当該端末の先端部における導体部210が外部に露出した状態で配置される部材である。碍管120には、例えば、磁器製又はポリマー製や樹脂(例えばエポキシ樹脂)製のものが利用できる。この例では、碍管120は、磁器製であり、超電導ケーブル200の電気絶縁層215を有する箇所に取り付けられた底板121に支持碍子122を介して支持されている(図2参照)。また、碍管120の先端には、電界シールドリング125が設けられている。
【0030】
超電導ケーブル200の端末は、電気絶縁層215が除去され、冷媒配管213が露出しており、先端部において、冷媒配管213の端部から引き出された導体部210が段剥ぎ処理され、導体部210の超電導導体層212及びフォーマ211が露出している。そして、引出導体110の一端側に形成された挿入穴に露出した導体部210(フォーマ211及び超電導導体層212)が挿入され、引出導体110の一端側がかしめられてフォーマ211が接合されると共に、引出導体110の挿入穴に超電導導体層212が半田接続されることで、導体部210(超電導導体層212)と引出導体110とを電気的に接続する接続部130が形成されている。
【0031】
冷媒槽140は、接続部130の外周を覆うように冷媒配管213(内管213i(図3参照))に接合され、接続部130を収納する部材であり、内部(接続部130と冷媒槽140との間の空間)に冷媒配管213に流通する冷媒が充填される。冷媒槽140には、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属で形成された筒状体が利用できる。この例では、冷媒槽140の側面に、当該冷媒槽140内に連通し、引出導体110の引出方向とは異なる方向に分岐する分岐冷媒配管145に接合される冷媒導通口141が設けられている。
【0032】
さらに、冷媒槽140の外周には、冷媒槽140を覆う真空槽150を備える。この真空槽150は、冷媒配管213(外管213o(図3参照))に接合され、冷媒槽140を断熱する部材である。真空槽150には、冷媒槽140と同様、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属で形成された筒状体が利用できる。この例では、真空槽150の側面に、当該真空槽150内(冷媒槽140と真空槽150との間の空間)に連通し、当該真空槽150内を真空引きするための真空引ポート151が設けられている。真空槽150内を真空引きして真空断熱層を形成することで、冷媒槽140の断熱性が高められる。また、真空槽150の側面には、冷媒槽140の冷媒導通口141に対応する位置に開口が設けられており、この開口を通って分岐冷媒配管145が冷媒槽140に接合される。真空槽150内には、冷媒配管213と同様、スーパーインシュレーションといった断熱材(図示せず)を配置したり、冷媒槽140と真空槽150との接触を防止するためのスペーサ(図示せず)を配置してもよい。
【0033】
この例では、冷媒槽140及び真空槽150は、冷媒配管213の内管213i及び外管213oにそれぞれ溶接により接合されている。また、分岐冷媒配管145は、冷媒配管213と同様、二重管構造の真空断熱管である。
【0034】
その他、この例では、常温側の引出導体110には、接続部130を挟んで碍管120の電界シールドリング125の反対側の位置に電界シールド160が取り付けられている。電界シールド160は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金などの金属で形成され、引出導体110が挿通される貫通孔を有する筒状体であり、図3に示すように、椀状の頭部161と頭部161から接続部130側に延びる筒状の脚部162とを有する。この貫通孔(頭部161の内周面及び脚部162の内周面)は、1つのストレート管163で形成されている。電界シールド160の内部は空洞であり、空気が充填されている。
【0035】
この電界シールド160は、引出導体110の外周に固定した台座165に頭部161が接合され、脚部162の先端に冷媒槽140が接合されると共に、頭部161の底部に真空槽150が接合されることで、引出導体160の外周を覆うように取り付けられている。そして、引出導体110とストレート管163とは密着しておらず、引出導体110とストレート管163との間の空間は、冷媒槽140内の冷媒が充填される空間に連通している。つまり、ストレート管163は、冷媒槽140の延長部として機能し、冷媒槽140が接続部130よりも引出導体110側に延長して形成された状態となる。
【0036】
さらに、脚部162の一部(ここでは、脚部162の外周面)にベローズを設け、これにより、熱伸縮を吸収できるように構成されている。また、ベローズを設けることにより、伝熱距離を長くとることができ、熱侵入も抑制し易い。
【0037】
この冷媒槽140の延長部において、引出導体110の外周面と延長部(ストレート管163)の内周面との間隔は、0.1mm以上2.5mm以下に設定されている。また、冷媒槽140内は、液体冷媒と気体冷媒とに分け、冷媒槽140の延長部において、気体冷媒の領域が確保されるようにしている。これにより、冷媒槽140の延長部において、極低温側から常温側への温度勾配を持たせることができ、例えば、引出導体110と台座165との接触面をシールするためのシール部材166が過度に冷却されることを防止して、シール部材166の劣化を防ぐことができる。また、上記間隔を0.1mm以上2.5mm以下にしたことで、加圧機により加圧することなく気体冷媒の領域が確保されると共に、気体冷媒の圧力と液体冷媒の圧力とが平衡し、冷媒槽内における液体冷媒の液面が安定し易い。
【0038】
また、真空槽150は、電界シールド160の脚部162の外周も覆うように延長して形成されている。
【0039】
次いで、この常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造100では、図2に示すように、冷媒槽140内の冷媒が、冷媒導通口141に接合された分岐冷媒配管145を介して、引出導体110の引出方向とは異なる方向に引き出される。そして、引き出された冷媒は、分岐冷媒配管145からさらに流体配管310,320を介して、外部に設けられる冷却システム400に送られる。ここで、常温絶縁型超電導ケーブルの場合、高電圧部である超電導導体層212の外周に電気絶縁層215を有していないため、冷媒配管213が高電位である。よって、分岐冷媒配管145に接続され、冷媒配管213と間接的に接続される流体配管310も高電位である。これに対し、冷却システム400などの外部装置は通常、接地部(低電圧部)に設けられるので、冷却システム400に接続される流体配管320は低電位である。そのため、高電位の流体配管310と低電位の流体配管320を直接接続した場合、電位差により冷却システム400が故障する可能性がある。そこで、流体配管310と流体配管320とを電気的に絶縁した状態で接続するための流体配管の接続構造300を備える。この接続構造300は、絶縁継手(図示せず)を備え、この絶縁継手を介して流体配管310と流体配管320とを接続する構成である。
【0040】
(実施の形態2)
以上説明した実施の形態1では、1条の常温絶縁型超電導ケーブルを用いて線路を構築する場合の端末構造の一例を説明した。実施の形態2では、図4を参照して、2条の常温絶縁型超電導ケーブルを用いて線路を構築する場合の端末構造の一例を説明する。なお、ここでは、図3、4を用いて説明した実施の形態1に係る端末構造との相違点を中心に説明する。
【0041】
図4に示す2条の超電導ケーブル201,202は、実施の形態1で説明した超電導ケーブル200と同じ構成である。両超電導ケーブル201,202は、並列に布設され、図4に示すように、両超電導ケーブル201,202の同じ一端側の端末には、実施の形態1で説明した端末構造100と同様の端末構造101,102がそれぞれ設けられている。そして、各々の端末構造101,102における引出導体110同士が接続導体170によって電気的に接続されている。つまり、両超電導ケーブル201,202は、互いに並列接続されており、導体部210(超電導導体層212)に流れる電流の方向が同じである。この例では、両超電導ケーブル201,202の他端側から一端側(図4中、超電導ケーブル200側から引出導体110側)に向かって電流が流れ、接続導体170に電気的に接続される取出導体175によって各引出導体110から一括して電流が取り出され、常電導電力機器に送られる。これら接続導体170及び取出導体175はそれぞれ、常電導体の編組線で形成されている。このように、複数の超電導ケーブルを用いて線路を構築し、複数の超電導ケーブルに電流を分担させることで、1条あたりの電流容量を小さくして、各超電導ケーブルを小型化することが可能である。
【0042】
また、図4に示す両超電導ケーブル201,202の同じ一端側(電流の取り出し側)の端末に設けられた端末構造101,102において、各々の端末構造101,102における冷媒導通口141同士が分岐冷媒配管145を介して接続されている。つまり、一方の端末構造101における冷媒槽140と他方の端末構造102における冷媒槽140との間で分岐冷媒配管145を介して冷媒が流通可能である。この例では、一方の超電導ケーブル201における冷媒配管213に流れる冷媒が電流の方向と同じ方向に流れ、分岐冷媒配管145を介して、他方の超電導ケーブル202における冷媒配管213に流れる冷媒が電流の方向とは逆方向に流れる。これにより、一方の超電導ケーブル201の冷媒配管213に流通する冷媒が他方の超電導ケーブル202の冷媒配管213を通って戻るように構成されている。
【0043】
さらに、両超電導ケーブル201,202の同じ他端側(電流の供給側。図示せず)の端末においても、それぞれ同様の端末構造が設けられており、他方の端末構造における冷媒導通口から分岐冷媒配管を介して引き出された冷媒が、一方の端末構造における冷媒導通口から分岐冷媒配管を介して供給され循環する。ここで、電流供給側には、冷却システム(図示せず)が設置されており、他方の超電導ケーブル202の冷媒配管213を通って戻った冷媒が、冷却システムに一旦送られ、冷却システムで冷却された後、一方の超電導ケーブル201の冷媒配管213に供給され循環する。
【0044】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、本発明の範囲は上述した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造は、常温絶縁型超電導ケーブルを用いた線路に好適に利用することができる。例えば、既存の電力ケーブルの端末構造に使用されている碍管などの端末設備をそのまま利用することができるので、超電導ケーブルの布設コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0046】
100,101,102 常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造
110 引出導体
120 碍管
121 底板 122 支持碍子 125 電界シールドリング
130 接続部
140 冷媒槽 141 冷媒導通口 145 分岐冷媒配管
150 真空槽 151 真空ポート
160 電界シールド
161 頭部 162 脚部 163 ストレート管(貫通孔)
165 台座 166 シール部材
170 接続導体 175 取出導体
200,201,202 常温絶縁型超電導ケーブル
210 導体部 211 フォーマ 212 超電導導体層
213 冷媒配管(真空断熱管) 213i 内管 213o 外管
214 冷媒 215 電気絶縁層
300 流体配管の接続構造
310,320 流体配管
400 冷却システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体層を有する導体部と、前記導体部を収納し、前記超電導導体層を冷却する冷媒が流通する冷媒配管と、前記冷媒配管の外周に形成される電気絶縁層と、を備える常温絶縁型超電導ケーブルの端末と常温側に引き出される引出導体とを接続する端末構造であって、
前記超電導ケーブルの端末の外周を覆うと共に、当該端末の先端部における導体部が外部に露出した状態で配置される碍管と、
前記碍管から外部に露出した導体部と前記引出導体とを電気的に接続する接続部と、
前記接続部の外周を覆うように前記冷媒配管に接合され、前記接続部を収納する冷媒槽と、
を備えることを特徴とする常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造。
【請求項2】
前記冷媒槽の側面に、当該冷媒槽内に連通し、前記引出導体の引出方向とは異なる方向に分岐する分岐冷媒配管に接合される冷媒導通口を備えることを特徴とする請求項1に記載の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造。
【請求項3】
さらに、前記冷媒槽の外周を覆う真空槽を備え、
前記真空槽の側面に、当該真空槽内に連通し、当該真空槽内を真空引きするための真空引ポートを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造。
【請求項4】
前記冷媒槽が前記接続部よりも前記引出導体側に延長して形成され、
前記引出導体と前記冷媒槽との間隔が0.1mm以上2.5mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造。
【請求項5】
前記超電導ケーブルが2条布設され、
両超電導ケーブルの同じ一端側の端末に設けられた各々の端末構造における冷媒槽の側面に、当該冷媒槽内に連通し、前記引出導体の引出方向とは異なる方向に分岐する分岐冷媒配管に接合される冷媒導通口を備え、
各々の端末構造における冷媒導通口同士が、前記分岐冷媒配管を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の常温絶縁型超電導ケーブルの端末構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−186890(P2012−186890A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46836(P2011−46836)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】