説明

常磁性ガーネット結晶と常磁性ガーネット結晶の製造方法

【課題】回転引き上げ法によって容易に歩留り良く製造することができ、光特性や結晶性に優れたテルビウムを含有する常磁性ガーネット結晶とその製造方法を提供する。
【解決手段】常磁性ガーネット結晶であって、該常磁性ガーネット結晶は、組成式Tb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表され、該組成式において、MはMg2+、Zn2+の少なくとも1種類以上、NはGe4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類以上であり、式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすものであることを特徴とする常磁性ガーネット結晶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常磁性のガーネット結晶と常磁性ガーネット結晶の製造方法に関し、具体的には、主に光アイソレータ用ファラデー回転子として用いられるテルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)を主成分とする常磁性ガーネット結晶と常磁性ガーネット結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
希土類・ガリウム・ガーネット結晶の一般的な製造方法としては、るつぼ中で溶融した原料に種結晶をつけて回転させながら引き上げるというチョクラルスキー法(CZ法:回転引き上げ法)が知られている。
このCZ法により、ネオジム・ガリウム・ガーネット(NGG)結晶、サマリウム・ガリウム・ガーネット(SGG)結晶、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)結晶等が生産されている。
【0003】
この希土類・ガリウム・ガーネット結晶において、希土類にテルビウムを用いたテルビウム・ガリウム・ガーネット結晶(以下TGG結晶と略すことあり)がある。このTGG結晶は、低光損失、高熱伝導率、高ダメージ閾値、高ベルデ定数の結晶として知られており、主に400nm〜1100nm(470nm〜500nmを除く)用のローテーターや光アイソレータなどに利用されている。
【0004】
しかし、このTGG結晶をCZ法によって製造しようとすると、結晶が捩れたり、引き上げた結晶が割れたりする。特に2インチ以上の大きな直径の結晶を回転引き上げするときには、これらの現象が顕著に現れるため、CZ法で歩留りよくTGG結晶を育成することは困難であった。そのため、直径が1インチ程度の結晶を得るのが、限度であった。
また、捩れが生じた結晶から光アイソレータ用ファラデー回転子を切り出すと、捩れに基づくと思われる歪みによって、消光性能が劣化し、ファラデー回転子としては使えないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2008−7340号公報
【特許文献2】特開平7−89797号公報
【非特許文献1】Philips J. Res. 33, 186−202(1978)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、回転引き上げ法(CZ法)において、TGG結晶を製造する場合、直径が1インチ程度ならば割れずに結晶が得られるが、それ以上の大口径のものを得ることができない上に、捩れが起きやすいため、安定的に結晶を育成して、育成した結晶から例えば円柱を切り出して得られるガーネット結晶からでは、性能が良いファラデー回転子とすることは困難であった。
【0007】
そこで、本発明では、上記の課題を解決し、回転引き上げ法によって容易に歩留り良く製造することができ、光特性や結晶性に優れたテルビウムを含有する常磁性ガーネット結晶とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、常磁性ガーネット結晶であって、該常磁性ガーネット結晶は、組成式Tb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表され、該組成式において、MはMg2+、Zn2+の少なくとも1種類以上、NはGe4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類以上であり、式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすものであることを特徴とする常磁性ガーネット結晶を提供する(請求項1)。
【0009】
すなわち、本発明の常磁性ガーネット結晶は、その結晶組成がTb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表されるものであって、そして、MはMg2+、Zn2+のうち少なくとも1種類以上であり、NはGe4+、Ti4+、Si4+のうち少なくとも1種類以上であり、かつ、その式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすものであることを特徴とするテルビウムを含有する常磁性ガーネット結晶である。
このように、結晶中のガリウムを、Mg2+、Zn2+の少なくとも一種類と、Ge4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類で置換する組成とすることによって、r{c}、r[a]、r(d)であらわされるガーネット構造の各サイトの平均イオン半径を結晶性が良好となるよう適切な値とすることができ、よって、結晶性を良好なものとすることができ、また捩れの少ない常磁性ガーネット結晶とすることができる。
また、3価と4価が安定して存在するテルビウムイオンにおいて、イオン半径が小さいため結晶欠陥の原因となる4価のイオンの存在量を減少させるために、2価の陽イオン(Mg2+、Zn2+)より4価の陽イオン(Ge4+、Ti4+、Si4+)の式量を多くしたものであるため、4価のテルビウムイオンの発生量を抑制することができ、以上によって、結晶中に結晶欠陥が少なく、また光特性の良好なテルビウムを含有する常磁性ガーネット結晶となっている。
【0010】
また、本発明では、常磁性ガーネット結晶の製造方法であって、該常磁性ガーネット結晶は、組成式Tb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表され、該組成式において、MがMg2+、Zn2+の少なくとも1種類以上、NがGe4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類以上となり、かつ式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすような出発原料を用いて、回転引き上げ法によって育成することを特徴とする常磁性ガーネット結晶の製造方法を提供する(請求項2)。
【0011】
このように、常磁性ガーネット結晶の組成式がTb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表され、該組成式において、MがMg2+、Zn2+の少なくとも1種類以上、NがGe4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類以上となり、かつ式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすように、出発原料を調整して回転引き上げ法で結晶を育成することによって、一般的な手法によって容易に結晶を育成することができ、また、ガリウムを2価のイオンと4価のイオンで置換し、4価のイオンの置換量を2価のイオンの置換量よりも多くすることによって、その結晶性を良好なものとすることができる。
【0012】
このとき、前記回転引き上げ法で常磁性ガーネット結晶を育成する際に、育成雰囲気を、酸素濃度が1〜3%の窒素雰囲気とすることが好ましい(請求項3)。
このような雰囲気で育成することによって、育成中の結晶に捩れが発生することをより抑制することができる酸素濃度とすることができ、よってより容易に大口径で高結晶性の常磁性ガーネット結晶を育成することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の常磁性ガーネット結晶や常磁性ガーネット結晶の製造方法によれば、通常の育成方法では製造困難であった大口径のテルビウムを含む常磁性ガーネット結晶を、一般的な製造方法で容易に育成することができる。また、可視光波長域光アイソレータの回転子として光特性の優れるTGG系単結晶が比較的容易に得られることから、可視光波長域用の光アイソレータを実用化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、回転引き上げ法によって容易に歩留り良く製造することができ、光特性や結晶性に優れた大口径のテルビウムを含有する常磁性ガーネット結晶とその製造方法の開発が待たれていた。
【0015】
そこで、本発明者は、まず、TGG結晶の育成が難しい原因について以下に示すような検討を行った。
先ず、TGG結晶の育成が難しい原因について以下のように考察した。
【0016】
TGG結晶が属するガーネット結晶の構造は、陽イオンのサイトは、3種類のサイト{c}、[a]、(d)から構成され、各々の酸素配位数は、8,6,4個である。このため、陽イオンはそのイオン半径の大きな順番に{c}、[a]、(d)サイトに入る。
この{c}、[a]、(d)サイトに入るイオン半径の比、r[a]/r{c}、r(d)/r{c}の値は、各サイトの酸素の配位数が8,6,4個となっているため、Goldschmidtの規則により推定でき、また、実験的にも範囲が報告されている(特許文献1参照)。
【0017】
この結果では、陽イオン半径の比率が適当な値からずれると結晶育成が難しくなり、極端なときは全く出来なくなる。なお、特許文献1に記載の技術はガーネット構造が出来やすく、また、ガーネット構造以外の相の影響がでないセラミックスについての結果であり、適切なr[a]/r{c}、r(d)/r{c}の値の範囲は、CZ法では非常に狭くなると予測される。
【0018】
上記の考えを、CZ法でのガリウム・ガーネット結晶の育成に当てはめると、ネオジムイオン、サマリウムイオン、ガドリニウムイオンの半径は、非特許文献1によれば、各々1.120Å、1.087Å、1.061Åという値と比較的大きいことに対し、テルビウムイオンの半径は1.044Åと小さい。
このため、[a]、(d)サイトを占めるガリウムイオン(イオン半径0.62Å)、特に(d)サイトを占めるガリウムイオンに対してテルビウムイオンの半径が小さいことで結晶育成が困難になると考えられる。
【0019】
また、ネオジムイオン、サマリウムイオン、ガドリニウムイオンが3価で安定しているのに対し、テルビウムイオンは酸素雰囲気中で3価から4価に容易に価数を変える。この4価のイオンは、3価のイオンと比較し、イオン半径が極端に小さくなると予測でき、よってより結晶の育成が困難になると考えられる。この価数変化が生じやすいこともTGG結晶の育成が困難になる原因とみなせる。
【0020】
この課題を解決するため、本発明者は、{c}、[a]、(d)であらわされるガーネット構造の各サイトの平均イオン半径を適当な値とするべく、テルビウムイオンやガリウムイオンを置換することを検討した。ただ、{c}サイトに入るテルビウムを置換するとテルビウムに起因する常磁性が弱くなるので好ましくない。このため、[a]、(d)サイトに入る陽イオン(ガリウムイオン)について検討した。
【0021】
この結果、[a]サイトにはガリウムイオンよりイオン半径が大きくなるマグネシウムイオン(Mg2+)、亜鉛イオン(Zn2+)のうち少なくとも1種類以上を、(d)サイトにはガリウムイオンよりイオン半径が小さくなるゲルマニウムイオン(Ge4+)、チタニウムイオン(Ti4+)もしくは珪素イオン(Si4+)のうち少なくとも1種類以上でガリウムイオンを置換することで、{c}、[a]、(d)サイトの平均イオン半径の比を適当な値とすることが出来ることを発想した。
【0022】
また、TGG結晶では、結晶に不可欠なテルビウムイオンは、その電子配置により、3価のイオンと4価のイオンの両方とも安定的に存在する。この内、4価のイオンはイオン半径が小さくなり、結晶欠陥の原因となるため好ましくない。
そのため、テルビウムイオンを含むガーネット結晶の製造方法では、この4価のイオンの生成を抑えるために、結晶育成での雰囲気ガス中の酸素分圧を下げるという方法が採用されている(特許文献2参照)。
【0023】
しかし、酸化物結晶の育成ではある程度の酸素分圧がないと、結晶育成中に結晶が捩れるという不具合が生じるため、上述の方法ではテルビウムを含有するガーネット結晶の育成は困難なものとなっていた。
【0024】
この問題を解決するため、本発明者は、2価の陽イオンと4価の陽イオンとの置換量に着目して鋭意検討を重ねた結果、先に置換することを発想した2価の陽イオン(Mg2+、Zn2+)と4価の陽イオン(Ge4+、Ti4+、Si4+)の置換量において、4価の陽イオンの置換量を2価より同量以上に多くすることによって、結晶中のテルビウムイオン(Tb4+)の存在量を減少させることができ、この課題を解決することがでいることを発見し、本発明を完成させた。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の常磁性ガーネット結晶は、その結晶組成が、Tb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表されるものであって、また、MはMg2+、Zn2+のうち少なくとも1種類以上、NはGe4+、Ti4+、Si4+のうち少なくとも1種類以上であり、かつ、その式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすものである。
【0026】
このように、陽イオンサイトが{c}、[a]、(d)の3種類から構成される本発明のようなTGG系の常磁性ガーネット結晶は、{c}サイトに入るテルビウムイオンの他に、ガリウムイオンが入る[a]、(d)サイトに、ガリウムイオンに加えて、[a]サイトはガリウムイオンよりイオン半径が大きくなるマグネシウムイオン、亜鉛イオンのうち少なくとも一種類で、(d)サイトはガリウムイオンよりイオン半径が小さくなるゲルマニウムイオン、チタニウムイオン、珪素イオンのうち少なくとも一種類以上でガリウムイオンを置換したものである。
このため、{c}、[a]、(d)サイトの平均イオン半径の比を、結晶性および光特性が良好となる適当な値とすることができる。よって、例えば回転引き上げ法など容易な製造方法によって、直径が大きく結晶性が良好なテルビウムを含む常磁性のガーネット結晶を育成することができるものとなっている。
【0027】
また、ガリウムイオンと置換されるGe4+、Ti4+、Si4+などの4価のイオンの置換量が、Mg2+、Zn2+の置換量に比べて等しいかそれ以上であるため、4価のテルビウムイオンがガーネット結晶中に存在することを抑制することができ、よって結晶性が良好な常磁性ガーネット結晶とすることができる。
【0028】
本発明の常磁性ガーネット結晶の製造方法は以下のような工程とすることができ、以下にその一例を示すが、本発明の常磁性ガーネット結晶の製造方法はもちろんこれに限定されるものではない。
【0029】
まず、原料となるTb、Ga、ガリウムイオンと置換するための2価の陽イオンとなる例えばMgO、ZnOといった酸化物あるいはMgCO、ZnCOといった炭酸塩と、ガリウムイオンと置換する4価の陽イオンとなるGeO、TiO、SiOとを所望量秤量し、均一になるまで混合する。
このとき、育成される常磁性ガーネット結晶は、組成式がTb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表されるが、このうち、MはMg2+、Zn2+の少なくとも1種類以上となるように、NはGe4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類以上となるように、かつ式量x、yは0<x≦y<2の関係を満たすように、出発原料の混合比を調整する。
【0030】
その後、イリジウム製のるつぼの中に入れて、高周波加熱装置で加熱して融解させる。
その後、例えばYAl12結晶から切り出した種結晶を融液に接触させて、回転引き上げ法で育成することで、常磁性ガーネット結晶を製造することができる。
【0031】
このとき、結晶育成の際の育成雰囲気における酸素濃度を酸素1〜3%とし、残りを窒素とした雰囲気とすることができる。
上述のような雰囲気で常磁性ガーネット結晶を育成することによって、結晶に捩れがより発生しないような酸素濃度で結晶の育成を行うことができるため、よって大口径で結晶性が良好な常磁性ガーネット結晶を育成することができる。
【0032】
このように、本発明の常磁性ガーネット結晶の製造方法は、回転引き上げ法によって育成することができるため、容易に製造することができ、また、捩れが起き難いため、大口径で結晶性が良好な常磁性ガーネット結晶を製造できる製造方法となっている。このため、歩留り良く低コストで常磁性ガーネット結晶を製造することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜6、比較例1〜3)
まず、純度99.99%の酸化テルビウム(Tb)原料と、純度99.99%の酸化ガリウム(Ga)と純度99.99%の酸化マグネシウム(MgO)と純度99.99%の酸化ゲルマニウムを準備した。
そして、ガリウムイオンと置換するマグネシウムイオンとゲルマニウムイオンの置換量を後述する表1に挙げたように各々の原料調合物を調整した。
【0034】
【表1】

【0035】
この調合物を混合し、イリジウム製のるつぼに投入し、通常の高周波加熱炉を用いて溶融させて、CZ法によって結晶を育成した。イリジウム製のるつぼ形状は直径約100mm、高さ約100mmで、種結晶としては5mm角に切り出したYAG結晶(YAl12結晶)を用いた。育成する結晶の直径は60mm、長さ50mmとした。
育成雰囲気は、酸素濃度2%、残りは窒素ガスとした雰囲気で行い、ガス流量は1リットル/分とした。
【0036】
マグネシウムイオンの置換量がx=0の比較例1のときは、直径60mmの結晶はコーン部のみ育成することはできたが、ボディ部に入ると捩れを生じてしまい、最終的に結晶を育成することはできなかった。
マグネシウムイオンの置換量xとゲルマニウムイオンの置換量yがx=y=0.1、0.2、1.0の実施例1、3、5の時は、育成したガーネット結晶に少々の捩れが見られたものの直径60mm、長さ50mmの結晶を育成することができた。
マグネシウムイオンの置換量xがx=0.1、0.2、1.0で、ゲルマニウムイオンの置換量yがy=0.101、0.202、1.01の実施例2、4、6の時は、捩れることなく直径60mm、長さ50mmの結晶を育成することができた。
マグネシウムイオンの置換量xがx=2.0、2.0で、ゲルマニウムイオンの置換量yがy=2.0、2.02の比較例2、3の時は、結晶を育成することはできたものの、育成されたガーネット結晶が淡い茶色に着色しており、また捩れが見受けられた。
【0037】
そして、実施例4のガーネット結晶から直径2mm、長さ30mmの結晶をくりぬいて、両端面を鏡面加工として内部を観察した結果、気泡、介在物は見られなかった。
このくりぬいた結晶について、消光性能を測定した結果、42dBと非常に良好な値を示し、光アイソレータ用途に問題なく使えることが確認できた。
【0038】
(実施例7)
実施例4において、ガリウムイオンと置換するマグネシウムイオンを亜鉛イオンとした以外は、実施例4と同様の条件で常磁性ガーネット結晶を育成し、そして、育成した常磁性ガーネット結晶に対して実施例4と同様の評価を行った。
【0039】
(実施例8、9)
実施例4において、ガリウムイオンと置換するゲルマニウムイオンを、各々チタニウムイオン、珪素イオンとした(各々実施例8、9)以外は、実施例4と同様の条件で常磁性ガーネット結晶を育成し、そして、育成した常磁性ガーネット結晶に対して実施例4と同様の評価を行った。
【0040】
実施例7〜9のいずれの常磁性ガーネット結晶も、捩れが発生することなく育成することができ、また消光性能も各々41dB、40.5dB、40.2dBであり、良好な光特性を有する常磁性ガーネット結晶であることがわかった。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常磁性ガーネット結晶であって、
該常磁性ガーネット結晶は、組成式Tb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表され、
該組成式において、MはMg2+、Zn2+の少なくとも1種類以上、NはGe4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類以上であり、
式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすものであることを特徴とする常磁性ガーネット結晶。
【請求項2】
常磁性ガーネット結晶の製造方法であって、
該常磁性ガーネット結晶は、組成式Tb(Ga2−x)(Ga3−y)O12で表され、
該組成式において、MがMg2+、Zn2+の少なくとも1種類以上、NがGe4+、Ti4+、Si4+の少なくとも1種類以上となり、かつ式量x、yが0<x≦y<2の関係を満たすような出発原料を用いて、回転引き上げ法によって育成することを特徴とする常磁性ガーネット結晶の製造方法。
【請求項3】
前記回転引き上げ法で常磁性ガーネット結晶を育成する際に、育成雰囲気を、酸素濃度が1〜3%の窒素雰囲気とすることを特徴とする請求項2に記載の常磁性ガーネット結晶の製造方法。

【公開番号】特開2009−221035(P2009−221035A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65424(P2008−65424)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】