説明

干渉合成開口レーダシステム、処理方法、飛行体制御装置、飛行体制御方法及びプログラム

【課題】高度が異なる複数の合成開口レーダ間で観測対象物を一致させ、2つの衛星の観測データ間の相関を適切に保つ。
【解決手段】合成開口レーダ衛星200の軌道と合成開口レーダ衛星100が観測した観測対象物の位置とに基づいて合成開口レーダ衛星200のオフナディア角θを算出し、合成開口レーダ衛星200のオフナディア角が算出したオフナディア角θになるように合成開口レーダ衛星200のアンテナの指向性を設定する。次に、合成開口レーダ衛星100のオフナディア角θと合成開口レーダ衛星100が放射する電波の周波数帯域f±B/2と算出した合成開口レーダ衛星200のオフナディア角θとに基づいて合成開口レーダ衛星200が放射する電波の周波数帯域f±B/2を算出し、合成開口レーダ衛星200が放射する電波の周波数帯域を算出した周波数帯域f±B/2に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成開口レーダによって観測対象物の観測を行う2つの飛行体が生成した観測データを用いて干渉合成開口レーダ処理を行う干渉合成開口レーダシステム、処理方法、飛行体制御装置、飛行体制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機や人工衛星等の飛行体から地球や惑星等の天体の遠隔観測を行うシステムにおいて、観測装置を飛行体に搭載し、観測装置により観測されたデータが別途設置された解析装置において解析される方式が採用されている。
飛行体に搭載される観測装置は様々なものがあるが、その中でも広い用途に用いられるものとして、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Rader)がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
合成開口レーダは、飛行体の移動に伴う複数の観測位置で、小さい開口面を有するレーダを用いて観測対象に電波を放射し、観測対象からの反射波を順次観測することで小さい開口面のレーダを複数並べたのと同じ効果を得る。これにより、仮想的に大きい開口面のレーダを実現する手法である。合成開口レーダは、飛行体の進行方向に直交する方向の地上に電波を放射し、地上からの反射波を受信することにより地上の映像を再生する観測データを得る。観測データは、例えば地上からの反射波の位相情報や強度情報である。
【0004】
合成開口レーダを用いて観測されるものとして、例えば地形の標高データがある。標高データは、予め定められた範囲内において飛行体が観測した2つの観測データを干渉させ、位相情報の差を解析することで算出する。なお、このように2つの観測データを干渉させて位相情報の差を解析する手法を干渉(Interferometric、インターフェロメトリ)合成開口レーダと呼ぶ。また、標高データの算出だけでなく、2回の時間差で観測したデータにより地殻変動を検出することにも使用できる。
【0005】
近年、干渉合成開口レーダとして、人工衛星に搭載された合成開口レーダを用いたものが利用されている。回帰軌道を周回する人工衛星に合成開口レーダを搭載し、合成開口レーダが同一の観測対象物を2度観測することで2つの観測データを取得する。解析装置が2つの観測データの処理を行うことにより、干渉合成開口レーダが実現されている。また、近年は複数の合成開口レーダ衛星が打ち上げられ、複数の合成開口レーダ衛星間での干渉合成開口レーダ観測が提案されている。
【特許文献1】特開2004−191053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、複数の合成開口レーダ衛星間で干渉合成開口レーダ観測を行う場合、従来はそれぞれの観測を同じオフナディア角によって行うため、観測を行う軌道が異なると観測する地点が変わってしまう。オフナディア角とは、合成開口レーダ衛星の地表に対する鉛直直下方向と観測における電波の発射方向とが成す角度のことである。そのため、複数の合成開口レーダ衛星が同じ軌道またはほぼ同じ高度の隣接する軌道を周回しなければ、複数の合成開口レーダ衛星間で観測対象物を一致させることが難しいという問題がある。
特に、高度が異なる2つの合成開口レーダの軌道を地表に投影した軌跡は2つの合成開口レーダ間で全く異なるものとなるため、観測対象物に対する相対的な位置が大幅に変化してしまう。さらに、同じ周波数条件での観測では、高度が異なる2つの合成開口レーダ同士の軌道間距離が大きいほど2つの合成開口レーダ衛星の観測データの相関度が低下する。そのため、2つの衛星における軌道間距離を適切に保つことが難しく、観測データの相関度を保てないという問題があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高度が異なる複数の合成開口レーダ間で観測対象物を一致させ、2つの衛星の観測データ間の相関を適切に保つ干渉合成開口レーダシステム、処理方法、飛行体制御装置、飛行体制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、観測対象物の観測を行う第1の飛行体と、前記観測対象物の観測を行う第2の飛行体と、解析装置とを備える干渉合成開口レーダシステムであって、前記第1の飛行体は、アンテナを介して、前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信する電波送受信部と、前記受信した電波から観測データを生成する観測データ生成部と、前記解析装置に前記観測データを送信する観測データ送信部と、を備え、前記解析装置は、前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出する軌道算出部と、前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出するオフナディア角算出部と、前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出する周波数帯域算出部と、前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する制御情報生成部と、前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する制御情報送信部と、を備え、前記第2の飛行体は、前記解析装置から前記制御情報を受信する制御情報受信部と、前記受信した制御情報に基づいてアンテナの指向性の角度と放射する電波の周波数帯域を制御する制御部と、前記アンテナを介して前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信する電波送受信部と、前記受信した電波から観測データを生成する観測データ生成部と、前記解析装置に前記観測データを送信する観測データ送信部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、観測対象物の観測を行う第1の飛行体と、前記観測対象物の観測を行う第2の飛行体と、解析装置とを備える干渉合成開口レーダシステムを用いた処理方法であって、前記第1の飛行体の電波送受信部は、アンテナを介して、前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信し、前記第1の飛行体の観測データ生成部は、前記受信した電波から観測データを生成し、前記第1の飛行体の観測データ送信部は、前記解析装置に前記観測データを送信し、前記解析装置の軌道算出部は、前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出し、前記解析装置のオフナディア角算出部は、前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出し、前記解析装置の周波数帯域算出部は、前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出し、前記解析装置の制御情報生成部は、前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成し、前記解析装置の制御情報送信部は、前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信し、前記第2の飛行体の制御情報受信部は、前記解析装置から前記制御情報を受信し、前記第2の飛行体の制御部は、前記受信した制御情報に基づいてアンテナの指向性の角度と放射する電波の周波数帯域を制御し、前記第2の飛行体の電波送受信部は、前記アンテナを介して前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信し、前記第2の飛行体の観測データ生成部は、前記受信した電波から観測データを生成し、前記第2の飛行体の観測データ送信部は、前記解析装置に前記観測データを送信する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、第1の飛行体が観測を行う観測対象物と同一の観測対象物の観測を行う第2の飛行体の制御情報を生成する飛行体制御装置であって、前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出する軌道算出部と、前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出するオフナディア角算出部と、前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出する周波数帯域算出部と、前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する制御情報生成部と、前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する制御情報送信部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、第1の飛行体が観測を行う観測対象物と同一の観測対象物の観測を行う第2の飛行体の制御情報を生成する飛行体制御装置を用いた飛行体制御方法であって、軌道算出部は、前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出し、オフナディア角算出部は、前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出し、周波数帯域算出部は、前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出し、制御情報生成部は、前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成し、制御情報送信部は、前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、第1の飛行体が観測を行う観測対象物と同一の観測対象物の観測を行う第2の飛行体の制御情報を生成する飛行体制御装置を、前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出する軌道算出部、前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出するオフナディア角算出部、前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出する周波数帯域算出部、前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する制御情報生成部、前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する制御情報送信部、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第2の飛行体における軌道と第1の飛行体が観測した観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体のオフナディア角を算出し、第2の飛行体のアンテナの指向性を算出したオフナディア角に設定することを示す制御情報を生成する。これにより、第1の飛行体と第2の飛行体の観測対象物を一致させることができる。さらに、第1の飛行体のオフナディア角と第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と算出した第2の飛行体のオフナディア角とに基づいて、第1の飛行体と第2の飛行体が放射する電波の地表投影波数スペクトルとが重なりを持つ周波数帯域を算出し、第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する。これにより、第1の飛行体の観測データと第2の飛行体の観測データとの間の相関を適切に保ち、干渉合成開口レーダ処理を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による干渉合成開口レーダシステムの構成を示す概略ブロック図である。
干渉合成開口レーダシステムは、合成開口レーダ衛星100(第1の飛行体)と、合成開口レーダ衛星200(第2の飛行体)と、解析装置300(飛行体制御装置)とを備える。合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200は高度の異なる軌道に乗っている。
【0015】
図2は、合成開口レーダ衛星100の構成を示す概略ブロック図である。
合成開口レーダ衛星100は、対陸上アンテナ101と、制御情報受信部102と、制御部103と、指向性アンテナ104(アンテナ)と、電波送受信部105と、観測データ生成部106と、観測データ送信部107とを備える。
制御情報受信部102は、対陸上アンテナ101を介して解析装置300から観測の制御に関する制御情報を受信する。
制御部103は、制御情報受信部102が受信した制御情報に基づいて電波送受信部105の制御を行う。
指向性アンテナ104は、予め決定されたオフナディア角により電波を放射するように固定されている。
電波送受信部105は、制御部103の制御に基づいて指向性アンテナ104を介して予め決定された周波数帯域で観測対象物に対して電波を放射し、反射した電波を受信する。
観測データ生成部106は、電波送受信部105が受信した電波から観測データを生成する。
観測データ送信部107は、対陸上アンテナ101を介して解析装置300に観測データを送信する。
【0016】
図3は、合成開口レーダ衛星200の構成を示す概略ブロック図である。
合成開口レーダ衛星200は、対陸上アンテナ201と、制御情報受信部202と、制御部203と、指向性アンテナ204(アンテナ)と、電波送受信部205と、観測データ生成部206と、観測データ送信部207とを備える。
制御情報受信部202は、対陸上アンテナ201を介して解析装置300から観測の制御に関する制御情報を受信する。
制御部203は、制御情報受信部202が受信した制御情報に基づいて電波送受信部205の制御や指向性アンテナ204の指向性の角度の制御を行う。
指向性アンテナ204は、電気的に指向性の角度を制御することができる。指向性アンテナ204には、例えばフェーズドアレイアンテナ等を用いる。
電波送受信部205は、制御部203の制御に基づいて指向性アンテナ204を介して観測対象物に対して電波を放射し、反射した電波を受信する。
観測データ生成部206は、電波送受信部205が受信した電波から観測データを生成する。
観測データ送信部207は、対陸上アンテナ201を介して解析装置300に観測データを送信する。
つまり、合成開口レーダ100はオフナディア角と放射する電波の周波数が固定であるが、合成開口レーダ200はオフナディア角と放射する電波の周波数を解析装置300から受信する制御情報に基づいて変化させることができる。
【0017】
図4は、解析装置の構成を示す概略ブロック図である。
解析装置300は、対衛星アンテナ301と、軌道予測部302(軌道算出部)と、軌道決定部303(軌道算出部)と、オフナディア角算出部304と、周波数帯域算出部305と、衛星情報記憶部306と、制御情報生成部307と、制御情報送信部308と、観測データ受信部309と、観測データ記憶部310と、観測データフィルタ部311と、干渉処理部312とを備える。
軌道予測部302は、合成開口レーダ100及び合成開口レーダ200が観測を行う前に、合成開口レーダ100及び合成開口レーダ200が観測を行う軌道を算出する。
軌道決定部303は、合成開口レーダ100及び合成開口レーダ200が観測を行った後に、合成開口レーダ100及び合成開口レーダ200が観測を行った軌道を決定する。
オフナディア角算出部304は、軌道予測部302が予測した合成開口レーダ200の軌道と観測対象物の位置とに基づいてオフナディア角を算出する。
周波数帯域算出部305は、衛星情報記憶部306に予め登録されている合成開口レーダ100のオフナディア角及び合成開口レーダ100が放射する電波の周波数帯域と、オフナディア角算出部304が算出したオフナディア角とに基づいて合成開口レーダ200が放射する電波の周波数帯域を算出する。
制御情報生成部307は、軌道予測部302が予測した軌道に基づいて合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の制御情報を生成する。
制御情報送信部308は、対衛星アンテナ301を介して合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200に制御情報を送信する。
観測データ受信部309は、対衛星アンテナ301を介して合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200から観測データを受信し、観測データ記憶部310に登録する。
観測データフィルタ部311は、観測データ記憶部310が記憶する合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の観測データから、当該2つの観測データの地表投影波数スペクトルが重なる部分を取り出す。地表投影波数スペクトルは、角振動数と波数の関数であり、例えば波数空間と時間のフーリエ変換の形などで表される。
干渉処理部312は、軌道決定部が決定した1回目の観測における軌道及び2回目の観測における軌道と、観測データフィルタ部311が前記地表投影波数の重なる部分を取り出した合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の観測データとに基づいて干渉合成開口レーダ処理を行う。
そして、本実施形態による干渉合成開口レーダシステムにより、干渉合成開口レーダシステムは高度が異なる合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200との間で観測対象物を一致させ、2つの衛星の観測データ間の相関を適切に保つ処理を行う。
【0018】
次に、干渉合成開口レーダシステムの動作を説明する。
まず、合成開口レーダ衛星100が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作を説明する。
図5は、合成開口レーダ衛星100が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作を示すシーケンス図である。
まず、観測を行う前に、解析装置300の軌道予測部302は、予め得られている合成開口レーダ衛星100の現時点までの軌道に基づいて、合成開口レーダ衛星100の将来の軌道の計算を行い、観測時における合成開口レーダ衛星100の予測軌道を算出する(ステップS101)。観測の軌道を算出すると、制御情報生成部307は、観測対象物の位置と、現在の合成開口レーダ衛星の位置と、予測した軌道とに基づいて、観測の制御情報を生成する(ステップS102)。制御情報には、観測開始時刻、観測時間等が含まれる。制御情報を生成すると、制御情報送信部308は、対衛星アンテナ301を介して合成開口レーダ衛星100に制御情報を送信する(ステップS103)。
【0019】
解析装置300が制御情報を送信すると、合成開口レーダ衛星100の制御情報受信部102は、対陸上アンテナ101を介して制御信号を受信する(ステップS104)。制御信号を受信すると、制御部103は受信した制御情報に基づいて電波送受信部105の制御を行う。制御部103は、制御情報が示す観測開始時刻になると、電波送受信部105から指向性アンテナ104を介して電波の放射を実行する(ステップS105)。電波の放射を実行すると、電波送受信部105は、指向性アンテナ104を介して放射し、観測対象物に反射した電波を、指向性アンテナ104を介して受信する(ステップS106)。複数回の送受信を繰り返して、複数の観測位置で放射した電波を受信すると、観測データ生成部106は、受信した複数の電波に基づいて観測データを生成する(ステップS107)。観測データを生成すると、観測データ送信部107は、対陸上アンテナを介して生成した観測データを解析装置300に送信する(ステップS108)。
【0020】
合成開口レーダ100が観測データを送信すると、解析装置300の観測データ受信部309は、対衛星アンテナ301を介して観測データを受信し、観測データ記憶部310に登録する(ステップS109)。このとき、合成開口レーダ100が観測を行った軌道は、軌道予測部302が算出した予測軌道との間に誤差が生じる可能性があり、必ずしも一致しているとは限らない。従って、正確な干渉合成開口レーダ処理を行うためには合成開口レーダ100の実際の軌道を再度算出する必要がある。そこで、観測データ受信部309が観測データを受信すると、軌道決定部303は、観測における合成開口レーダ衛星100の軌道を決定する(ステップS109)。軌道決定の手段としては、例えば合成開口レーダ衛星100にGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)の受信機を搭載し、衛星測位によって合成開口レーダ衛星100の位置を決定する手段や、地上においてレーザーレンジを行うことで合成開口レーダ衛星100の位置を決定する手段等が挙げられる。
以上が、合成開口レーダ衛星100が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作である。
【0021】
次に、合成開口レーダ衛星200が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作を説明する。
図6は、合成開口レーダ衛星200が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作を示すシーケンス図である。
合成開口レーダ衛星100による観測が終了すると、解析装置300の軌道予測部302は、予め得られている合成開口レーダ衛星200の現時点までの軌道に基づいて、合成開口レーダ衛星200の将来の軌道の計算を行い、観測時における合成開口レーダ衛星200の予測軌道を算出する(ステップS201)。
【0022】
観測の軌道を算出すると、オフナディア角算出部304は、予測した合成開口レーダ衛星200の軌道と観測対象物とに基づいて合成開口レーダ衛星200のオフナディア角を算出する(ステップS202)。オフナディア角の算出方法は様々なものが考えられるが、例えば以下のように行う。
図7は、合成開口レーダ衛星100のオフナディア角と合成開口レーダ衛星200のオフナディア角を示す図である。
まず、オフナディア角算出部304は、軌道決定部303が決定した合成開口レーダ衛星100の軌道から合成開口レーダ衛星100の高度Hを算出する。またオフナディア角算出部304は、軌道予測部302が算出した合成開口レーダ衛星200の予測軌道から合成開口レーダ衛星200の高度Hを算出する。次に、オフナディア角算出部304は、合成開口レーダ衛星100の軌道と合成開口レーダ衛星200の予測軌道から合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200との間の地上軌跡における軌道間距離dを算出する。合成開口レーダ衛星100の高度H、合成開口レーダ衛星200の高度H、軌道間距離dを算出すると、オフナディア角算出部304は、合成開口レーダ衛星100の高度Hと合成開口レーダ衛星200の高度Hと軌道間距離dと衛星情報記憶部306に記憶されている合成開口レーダ衛星100のオフナディア角θとを用いて合成開口レーダ衛星200のオフナディア角θを算出する。このとき、オフナディア角θは近似的に式(1)で示される。
【0023】
【数1】

【0024】
これにより、合成開口レーダ衛星200のオフナディア角θを求めることができる。なお、式(1)は平面地球モデルでの計算式であり、より厳密には球体地球モデルによりオフナディア角θを求める。また、ここではオフナディア各θからオフナディア角θを求めたが、これに限られず、例えば合成開口レーダ衛星100が観測した観測対象物の位置を把握することができる場合、当該観測対象物の位置と合成開口レーダ衛星200の高度Hを用いてオフナディア角θを求めても良い。
【0025】
オフナディア角θを算出すると、周波数帯域算出部305は、衛星情報記憶部306に予め登録されている合成開口レーダ100のオフナディア角θ及び合成開口レーダ100が放射する電波の周波数帯域f±B/2とに基づいて合成開口レーダ200が放射する電波の周波数帯域f±B/2を算出する(ステップS203)。但し、fは、合成開口レーダ衛星100が放射する電波の中心周波数を示す。また、Bは、合成開口レーダ衛星100が放射する電波の帯域幅を示す。また、fは、合成開口レーダ衛星200が放射する電波の中心周波数を示す。また、Bは、合成開口レーダ衛星200が放射する電波の帯域幅を示す。
【0026】
以下に、ステップS203による周波数帯域の算出方法を説明する。
図8は、合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200の周波数帯域及び地表投影波数スペクトルを示す図である。
周波数帯域算出部305は、合成開口レーダ衛星200の観測帯域の地表投影波数スペクトルが、図8に示すように合成開口レーダ衛星100の観測帯域の地表投影波数スペクトルと重なりを持つように、合成開口レーダ衛星200が放射する電波の周波数帯域を設定する。合成開口レーダ衛星100の地表投影波長スペクトルkg1min〜kg1maxと周波数帯域f±B/2の関係は、式(2)、式(3)で示される。
【0027】
【数2】

【0028】
【数3】

【0029】
但し、式(2)のkg1minは、合成開口レーダ衛星100の観測帯域の地表投影波長スペクトルの最小値を示す。また、iは、合成開口レーダ衛星100が放射する電波の入射角を示し、合成開口レーダ衛星100のオフナディア角θから算出される。また、cは光の速度を示す。
また、式(3)のkg1maxは、合成開口レーダ衛星100の観測帯域の地表投影波数スペクトルの最大値を示す。
【0030】
合成開口レーダ衛星200の地表投影波長スペクトルkg2min〜kg2maxと周波数帯域f±B/2の関係は、式(4)、式(5)で示される。
【0031】
【数4】

【0032】
【数5】

【0033】
但し、式(4)のkg2minは、合成開口レーダ衛星200の観測帯域の地表投影波長スペクトルの最小値を示す。また、iは、合成開口レーダ衛星200が放射する電波の入射角を示し、合成開口レーダ衛星200のオフナディア角θから算出される。
また、式(5)のkg2maxは、合成開口レーダ衛星200の観測帯域の地表投影波数スペクトルの最大値を示す。
【0034】
合成開口レーダ衛星100の地表投影波数スペクトルkg1min〜kg1maxと合成開口レーダ衛星200の地表投影波数スペクトルkg2min〜kg2maxとに重なりを持たせるには、式(6)、式(7)を満たす必要がある。
【0035】
【数6】

【0036】
【数7】

【0037】
したがって、式(6)に式(3)、式(4)を代入し、式(7)に式(2)、式(5)を代入することで、地表投影波数スペクトルに重なりを持たせる周波数帯域の条件式である式(8)、式(9)を得ることができる。
【0038】
【数8】

【0039】
【数9】

【0040】
但し、i1Nは、合成開口レーダ衛星100の観測範囲のニア側(観測範囲の中で合成開口レーダ衛星の位置を地表に投影した地点に最も近い地点)における入射角を示す。また、i2Nは、合成開口レーダ衛星200の観測範囲のニア側における入射角を示す。また、i1Fは、合成開口レーダ衛星100の観測範囲のファー側(観測範囲の中で合成開口レーダ衛星の位置を地表に投影した地点に最も遠い地点)における入射角を示す。また、i2Fは、合成開口レーダ衛星200の観測範囲のファー側における入射角を示す。なお、i1N及びi1Nは合成開口レーダ衛星100のオフナディア角θと高度Hとを用いることで求めることができ、i1N及びi1Nは合成開口レーダ衛星200のオフナディア角θと高度Hとを用いることで求めることができる。また、式(8)のmin(sin(i1N)/sin(i2N),sin(i1F)/sin(i2F))は、sin(i1N)/sin(i2N)とsin(i1F)/sin(i2F)のうち最小のものを示す。また、式(9)のmax(sin(i1N)/sin(i2N),sin(i1F)/sin(i2F))は、sin(i1N)/sin(i2N)とsin(i1F)/sin(i2F)のうち最大のものを示す。
【0041】
周波数帯域算出部305は、式(8)、式(9)を満たすf及びBを算出し、算出したf及びBに基づいて周波数帯域f±B/2を決定する。
これにより、合成開口レーダ衛星100の地表投影波数スペクトルkg1min〜kg1maxと合成開口レーダ衛星200の地表投影波数スペクトルkg2min〜kg2maxとの間に重なり部分ができるため、合成開口レーダ衛星100の観測データと合成開口レーダ衛星200の観測データとの間の相関性を確保することができる。
なお、図8では、2つの合成開口レーダ衛星の地表投影波数スペクトルの関係がkg1min>kg2minかつkg2max>kg1maxである場合を示しているが、これに限られず、式(6)、式(7)を満たしていればkg1min≦kg2minまたはkg2max≦kg1maxであっても良い。つまり、2つの合成開口レーダ衛星の地表投影波数スペクトルが重なりを持っていれば良い。
以上がステップS203による周波数帯域の算出方法である。
【0042】
制御情報生成部307は、算出したオフナディア角θと算出した周波数帯域f±Bと観測対象物の位置と現在の合成開口レーダ衛星200の位置と予測した軌道とに基づいて制御情報を生成する(ステップS204)。制御情報には、指向性アンテナ204の指向性の制御情報(θ)、放射する電波の周波数帯域(f±B)、観測開始時刻、観測時間等が含まれる。このとき、合成開口レーダ衛星200が、算出したオフナディア角で観測対象物の観測を行うように観測開始時刻と観測時間を設定する。制御情報を生成すると、制御情報送信部308は、対衛星アンテナ301を介して合成開口レーダ衛星200に制御情報を送信する(ステップS205)。
【0043】
解析装置300が制御情報を送信すると、合成開口レーダ衛星200の制御情報受信部202は、対陸上アンテナ201を介して制御信号を受信する(ステップS206)。制御信号を受信すると、制御部203は受信した制御情報に基づいて電波送受信部205及び指向性アンテナ204の制御を行う。制御部203は、制御情報が示すオフナディア角θで観測を行うように指向性アンテナ104の仰角方向の指向性を制御する(ステップS207)。これにより、合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200の観測とが観測する観測対象物を一致させることができる。制御部203は、制御情報が示す観測開始時刻になると、電波送受信部205から指向性アンテナ204を介して制御情報が示す周波数帯域f±Bで電波の放射を実行する(ステップS208)。電波の放射を実行すると、電波送受信部205は、指向性アンテナ204を介して放射し、観測対象物に反射した電波を、指向性アンテナ204を介して受信する(ステップS209)。複数回の送受信を繰り返して、複数の観測位置で放射した電波を受信すると、観測データ生成部206は、受信した複数の電波に基づいて観測データを生成する(ステップS210)。観測データを生成すると、観測データ送信部207は、対陸上アンテナを介して生成した観測データを解析装置300に送信する(ステップS211)。
【0044】
合成開口レーダ200が観測データを送信すると、解析装置300の観測データ受信部309は、対衛星アンテナ301を介して観測データを受信し、観測データ記憶部310に登録する(ステップS212)。観測データ受信部309が観測データを受信すると、軌道決定部303は、観測における合成開口レーダ衛星200の軌道を決定する(ステップS213)。軌道決定の手段としては、例えば合成開口レーダ衛星200にGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)の受信機を搭載し、衛星測位によって合成開口レーダ衛星200の位置を決定する手段や、地上においてレーザーレンジを行うことで合成開口レーダ衛星200の位置を決定する手段等が挙げられる。
以上が、合成開口レーダ衛星200が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作である。
【0045】
上述した手順で合成開口レーダ衛星100の観測及び合成開口レーダ衛星200の観測を終了すると、観測データフィルタ部311は、観測データ記憶部310が記憶する合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の観測データから、当該2つの観測データの地表投影波数スペクトルが重なる部分を取り出す。具体的には、合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の観測データから、式(10)を満たす地表投影波数スペクトルkgの範囲を取り出す。
【0046】
【数10】

【0047】
これにより、合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の観測データ間における相関性の無い部分を除去することができる。
【0048】
次に、干渉処理部312は、観測データフィルタ部311が地表投影波数スペクトルの重なる部分を取り出した合成開口レーダ衛星100の観測データに基づいて合成開口レーダ衛星100の観測による合成開口レーダ画像を生成する。同様に、干渉処理部312は、観測データフィルタ部311が地表投影波数スペクトルの重なる部分を取り出した合成開口レーダ衛星200の観測データに基づいて合成開口レーダ衛星200の観測による合成開口レーダ画像を生成する。
次に、干渉処理部312は、決定した合成開口レーダ衛星100の軌道と決定した合成開口レーダ衛星200の軌道とに基づいて、合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200との間の軌道間距離を算出する。例えば、合成開口レーダ衛星100の観測における軌道の中心座標と合成開口レーダ衛星200の観測における軌道の中心座標との間の距離を計算することで軌道間距離を算出する。
合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の観測による合成開口レーダ画像を生成し、軌道間距離を算出すると、干渉処理部312は、合成開口レーダ衛星100及び合成開口レーダ衛星200の観測による合成開口レーダ画像の干渉処理を行い、干渉画像から軌道間距離による誤差を除去することで、干渉合成開口レーダ処理を行う。
【0049】
このように、本実施形態によれば、合成開口レーダ衛星200の軌道と合成開口レーダ衛星100が観測した観測対象物の位置とに基づいて合成開口レーダ衛星200のオフナディア角を算出し、指向性アンテナ204の指向性を算出したオフナディア角に設定することを示す制御情報を生成する。これにより、合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200の観測対象物を一致させることができる。さらに、合成開口レーダ衛星100のオフナディア角と合成開口レーダ衛星100が放射する電波の周波数帯域と算出した合成開口レーダ衛星200のオフナディア角とに基づいて、合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200が放射する電波の地表投影波数スペクトルとが重なりを持つ周波数帯域を算出し、合成開口レーダ衛星200が放射する電波の周波数帯域を算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する。これにより、合成開口レーダ衛星100の観測データと合成開口レーダ衛星200の観測データとの間の相関を適切に保ち、干渉合成開口レーダ処理を実行することができる。
【0050】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、解析装置300が制御情報の生成と観測データの受信を行う場合を説明したが、これに限られず、制御情報の生成を行う装置と観測データの受信を行う装置を別の装置としても良い。
【0051】
なお、本実施形態では、周波数算出部305が式(8)、式(9)を満たす周波数帯域を算出し、観測データフィルタ部311が式(10)を満たす地上投影波数スペクトルを取り出す場合を説明したが、これに限られず、例えば式(11)、式(12)を満たすことで合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200との間の地表投影波数スペクトルをほぼ一致させることができる場合、周波数算出部305が式(11)、式(12)を満たす周波数帯域を算出することで、観測データフィルタ部311を備えない構成としても良い。
【0052】
【数11】

【0053】
【数12】

【0054】
また、本実施形態では、対陸上アンテナ101、対陸上アンテナ201及び対衛星アンテナ301がそれぞれ1つである場合を説明したが、これに限られず、それぞれに送信アンテナと受信アンテナを別々に備える構成としても良い。
【0055】
また、本実施形態では、制御部203が指向性アンテナ204の指向性の角度を電気的に制御する場合を示したが、これに限られず、例えば指向性アンテナ204を固定ビームのアンテナとし、制御部203が指向性アンテナ204を物理的に駆動させることで指向性の角度を制御しても良い。
図9は、制御部が指向性アンテナを物理的に駆動させる合成開口レーダ衛星200の構成を示す概略ブロック図である。
合成開口レーダ衛星200は、さらに駆動機構208を備える。制御部203は、制御情報が示す指向性の制御情報に基づいて、駆動機構208に制御命令を送信する。制御命令を受信すると、駆動機構208は、指向性アンテナを物理的に駆動させ、指向性アンテナ104の指向性の角度を制御する。
【0056】
また、本実施形態では、制御部203が指向性アンテナ204の指向性の角度を電気的に制御する場合を示したが、これに限られず、例えば指向性アンテナ204を固定ビームのアンテナとし、合成開口レーダ衛星200の姿勢を制御することで指向性の角度を制御しても良い。
図10は、合成開口レーダ衛星200の姿勢を制御することで指向性の角度を制御する合成開口レーダ衛星200の構成を示す概略ブロック図である。
合成開口レーダ衛星200は、さらに衛星姿勢制御部209を備える。制御部203は、制御情報が示す指向性の制御情報に基づいて、衛星姿勢制御部209に制御命令を送信する。制御命令を受信すると、衛星姿勢制御部209は、合成開口レーダ衛星200の姿勢を制御し、指向性アンテナ204から放射される電波の角度を制御する。
【0057】
また、本実施形態では、合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200による観測を行う場合を説明したが、これに限られず、例えば航空機が合成開口レーダを備えることで干渉合成開口レーダを実現しても良い。
また、合成開口レーダ衛星と合成開口レーダを備える航空機との間の干渉合成開口レーダ観測を行っても良い。この場合、合成開口レーダ衛星と航空機のどちらが指向性の制御を行っても良い。
【0058】
上述の解析装置300は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0059】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態による干渉合成開口レーダシステムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】合成開口レーダ衛星100の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】合成開口レーダ衛星200の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】解析装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】合成開口レーダ衛星100が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作を示すシーケンス図である。
【図6】合成開口レーダ衛星200が観測を行う際の干渉合成開口レーダシステムの動作を示すシーケンス図である。
【図7】合成開口レーダ衛星100のオフナディア角と合成開口レーダ衛星200のオフナディア角を示す図である。
【図8】合成開口レーダ衛星100と合成開口レーダ衛星200の周波数帯域及び地表投影波数スペクトルを示す図である。
【図9】制御部が指向性アンテナを物理的に駆動させる合成開口レーダ衛星200の構成を示す概略ブロック図である。
【図10】合成開口レーダ衛星200の姿勢を制御することで指向性の角度を制御する合成開口レーダ衛星200の構成を示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
100…合成開口レーダ衛星 101…対陸上アンテナ 102…制御情報受信部 103…制御部 104…指向性アンテナ 105…電波送受信部 106…観測データ生成部 107…観測データ送信部 200…合成開口レーダ衛星 201…対陸上アンテナ 202…制御情報受信部 203…制御部 204…指向性アンテナ 205…電波送受信部 206…観測データ生成部 207…観測データ送信部 300…解析装置 301…対衛星アンテナ 302…軌道予測部 303…軌道決定部 304…オフナディア角算出部 305…周波数帯域算出部 306…衛星情報記憶部 307…制御情報生成部 308…制御情報送信部 309…観測データ受信部 310…観測データ記憶部 311…観測データフィルタ部 312…干渉処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象物の観測を行う第1の飛行体と、前記観測対象物の観測を行う第2の飛行体と、解析装置とを備える干渉合成開口レーダシステムであって、
前記第1の飛行体は、
アンテナを介して、前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信する電波送受信部と、
前記受信した電波から観測データを生成する観測データ生成部と、
前記解析装置に前記観測データを送信する観測データ送信部と、
を備え、
前記解析装置は、
前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出する軌道算出部と、
前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出するオフナディア角算出部と、
前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出する周波数帯域算出部と、
前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する制御情報生成部と、
前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する制御情報送信部と、
を備え、
前記第2の飛行体は、
前記解析装置から前記制御情報を受信する制御情報受信部と、
前記受信した制御情報に基づいてアンテナの指向性の角度と放射する電波の周波数帯域を制御する制御部と、
前記アンテナを介して前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信する電波送受信部と、
前記受信した電波から観測データを生成する観測データ生成部と、
前記解析装置に前記観測データを送信する観測データ送信部と、
を備えることを特徴とする干渉合成開口レーダシステム。
【請求項2】
前記解析装置は、
前記第1の飛行体及び前記第2の飛行体から観測データを受信する観測データ受信部と、
前記算出した第1の飛行体の軌道と前記算出した第2の飛行体の軌道と前記受信した第1の飛行体の観測データと前記地表投影波数スペクトルが重なる部分を取り出した第2の飛行体の観測データとに基づいて干渉合成開口レーダ処理を行う干渉処理部と、
を備えることを特徴とする干渉合成開口レーダシステム。
【請求項3】
前記解析装置の周波数帯域算出部が算出する前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域は、
第1の飛行体が放射する電波の中心周波数をf、第1の飛行体が放射する電波の帯域幅B、第2の飛行体が放射する電波の中心周波数をf、第2の飛行体が放射する電波の帯域幅をB、第1の飛行体が放射する電波の第1の飛行体の観測範囲のニア側における入射角をi1N、第2の飛行体が放射する電波の第2の飛行体の観測範囲のニア側における入射角をi2N、第1の飛行体が放射する電波の第1の飛行体の観測範囲のファー側における入射角をi1F、第2の飛行体が放射する電波の第2の飛行体の観測範囲のファー側における入射角をi2F、sin(i1N)/sin(i2N)とsin(i1F)/sin(i2F)のうち最小のものを示す関数をmin(sin(i1N)/sin(i2N),sin(i1F)/sin(i2F))、sin(i1N)/sin(i2N)とsin(i1F)/sin(i2F)のうち最大のものを示す関数をmax(sin(i1N)/sin(i2N),sin(i1F)/sin(i2F))とした場合の、
【数1】

【数2】

を満たし、
前記解析装置は、
前記受信した第2の飛行体の観測データ及び前記受信した第1の飛行体の観測データから、当該2つの観測データの地表投影波数が重なる部分を取り出す観測データフィルタ部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の干渉合成開口レーダシステム。
【請求項4】
前記解析装置の周波数帯域算出部が算出する前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域は、
第1の飛行体が放射する電波の中心周波数をf、第1の飛行体が放射する電波の帯域幅をB、第2の飛行体が放射する電波の中心周波数をf、第2の飛行体が放射する電波の帯域幅をB示し、第1の飛行体が放射する電波の入射角をi、第2の飛行体が放射する電波の入射角iとした場合の、
【数3】

【数4】

を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の干渉合成開口レーダシステム。
【請求項5】
観測対象物の観測を行う第1の飛行体と、前記観測対象物の観測を行う第2の飛行体と、解析装置とを備える干渉合成開口レーダシステムを用いた処理方法であって、
前記第1の飛行体の電波送受信部は、アンテナを介して、前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信し、
前記第1の飛行体の観測データ生成部は、前記受信した電波から観測データを生成し、
前記第1の飛行体の観測データ送信部は、前記解析装置に前記観測データを送信し、
前記解析装置の軌道算出部は、前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出し、
前記解析装置のオフナディア角算出部は、前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出し、
前記解析装置の周波数帯域算出部は、前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出し、
前記解析装置の制御情報生成部は、前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成し、
前記解析装置の制御情報送信部は、前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信し、
前記第2の飛行体の制御情報受信部は、前記解析装置から前記制御情報を受信し、
前記第2の飛行体の制御部は、前記受信した制御情報に基づいてアンテナの指向性の角度と放射する電波の周波数帯域を制御し、
前記第2の飛行体の電波送受信部は、前記アンテナを介して前記観測対象物に対して電波を放射し、当該観測対象物で反射した電波を受信し、
前記第2の飛行体の観測データ生成部は、前記受信した電波から観測データを生成し、
前記第2の飛行体の観測データ送信部は、前記解析装置に前記観測データを送信する、
ことを特徴とする処理方法。
【請求項6】
第1の飛行体が観測を行う観測対象物と同一の観測対象物の観測を行う第2の飛行体の制御情報を生成する飛行体制御装置であって、
前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出する軌道算出部と、
前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出するオフナディア角算出部と、
前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出する周波数帯域算出部と、
前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する制御情報生成部と、
前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する制御情報送信部と、
を備えることを特徴とする飛行体制御装置。
【請求項7】
第1の飛行体が観測を行う観測対象物と同一の観測対象物の観測を行う第2の飛行体の制御情報を生成する飛行体制御装置を用いた飛行体制御方法であって、
軌道算出部は、前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出し、
オフナディア角算出部は、前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出し、
周波数帯域算出部は、前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出し、
制御情報生成部は、前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成し、
制御情報送信部は、前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する、
ことを特徴とする飛行体制御方法。
【請求項8】
第1の飛行体が観測を行う観測対象物と同一の観測対象物の観測を行う第2の飛行体の制御情報を生成する飛行体制御装置を、
前記第1の飛行体の軌道及び前記第2の飛行体の軌道を算出する軌道算出部、
前記算出した第1の飛行体の軌道と前記観測対象物の位置とに基づいて第2の飛行体の観測におけるオフナディア角を算出するオフナディア角算出部、
前記第1の飛行体の観測におけるオフナディア角と、前記第1の飛行体が放射する電波の周波数帯域と、前記算出した第2の飛行体の観測におけるオフナディア角とに基づいて前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を算出する周波数帯域算出部、
前記第2の飛行体のアンテナの指向性を前記算出したオフナディア角に設定し、前記第2の飛行体が放射する電波の周波数帯域を前記算出した周波数帯域に設定することを示す制御情報を生成する制御情報生成部、
前記第2の飛行体に前記生成した制御情報を送信する制御情報送信部、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−78396(P2010−78396A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245510(P2008−245510)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】