説明

干渉型レーダ

【課題】 受信アンテナによる空間分解能を上げずに、感度を向上させた干渉型レーダを提供する。
【解決手段】 目標対象物に向けて信号を送信する送信部Tと、目標対象物で反射する反射波を受信する大口径アレイアンテナを備えた受信部Rとを有している。前記送信部Tは、目標対象物の方位及び距離を検出するためのFMCW信号を送信アンテナから出力する機能を有している。前記受信部Rは、前記大口径アレイアンテナ2を複数の等しい小ブロックに分割した干渉ブロック9c毎に受信する受信信号に相関処理を行う複数の相関処理部15と、前記複数の相関処理部15から出力される信号の相等しい信号成分同士をベクトル合成する合成器19とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔する目標対象物を観測する干渉型レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルスレーダ以外の方法を用いて目標対象物(以下、ターゲットという)までの距離とターゲットの速度とを知る方法として、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダがある。従来のFMCWレーダでは、受信信号を送信信号と同一のFMCW信号で周波数変換し、ベースバンド信号生成している。このFMCW信号の周波数のぼり時と、周波数くだり時のベースバンド信号周波数のドップラーシフト量からターゲットの速度を検出し、さらにドップラー周波数成分を補正後のベースバンド周波数からターゲットとの距離を求める手法が使用されている(例えば、特許文献1,特許文献2)。また本発明者は、前記FMCWレーダ技術を応用し、距離と方位を高感度に計測可能な干渉型レーダを提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ターゲットが高速に移動している場合、受信信号を送信波と同じ信号で周波数変換したベースバンド信号は、ターゲットの速度によるドップラーシフトを受けると同時にターゲットの移動に伴って、ベースバンド周波数が変化し、正確な距離の計測を行うことができないという課題があった。さらにターゲットの速度および速度変化が大きい場合、同時に多数の異なる速度のターゲットが存在する場合には、上記手法は適用困難であった。
【0004】
そこで、本発明者は、従来のFMCWレーダの問題を解決した干渉型レーダを開発した。前記干渉型レーダを高感度にするには、受信アンテナの素子数を増やし、さらに相関処理された信号を長時間積分する必要がある。
【0005】
しかしながら、受信アンテナの素子数を増加した場合、アンテナの配列が広がり、干渉処理による総合処理利得は大きくなるが、同時に相関処理の指向性も鋭くなる。ターゲットが高速で移動するような場合、ターゲットの移動によって干渉計出力位相が変化するため、積分効率が低下し、または積分時間を確保することができず、総合的に感度が低下するという問題点があった。
【0006】
また、FMCWレーダで高速移動するターゲットの距離を高精度に観測する場合、そのターゲットからの反射信号はドップラーシフトを伴っており、さらにFMCWのスイープ周期内での距離変化も無視できないため、ターゲットの位置を精度よく求めるのが困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−46941号
【特許文献2】特開2003−177175号
【0008】
本発明の目的は、受信アンテナによる空間分解能を上げずに、感度を向上させた干渉型レーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
干渉型レーダの感度を向上させるためには、相関処理された信号を積分する時間を長くする必要がある。ターゲットが移動している場合、ある程度の監視頻度も必要とされ、その積分時間は例えば数秒以内である必要がある。そして、効果的な積分を行うには、積分時間内でターゲットが単位空間分解能以上移動してはならない。
【0010】
一方、干渉型レーダの感度を上げるには、受信アンテナのゲイン(利得)を向上させる必要がある。受信アンテナでゲインを向上させるには、通常、ビーム幅を狭くし空間分解能を上げることとなる。このように、受信アンテナでゲインを向上させることと、積分時間を確保するために空間分解能を抑えることとは相反する関係にある。
【0011】
そこで、本発明は前記受信アンテナによる空間分解能を上げずに、感度を向上させたのである。すなわち、干渉型レーダの方位分解能は干渉処理(相関処理)を行う最も遠いアンテナ間の距離で決定される。相関処理される信号の積分時間内でターゲットが移動すると、相関処理出力が変化し、十分な時間積分効果が得られない。そのために、想定されるターゲットの移動量に対し、干渉処理の角度分解能が十分低くなるように干渉レーダ画像の1画素のビーム幅をブロードにすることにより、高速移動のターゲットに対し積分時間を確保することができる。
【0012】
アレイアンテナの最遠アンテナ間距離を短くすることにより、干渉レーダ画像の1画素のビーム幅がブロードになるが、アンテナ間距離を一定とすれば、同時にアンテナの素子数も減少するため、アレイアンテナの利得も低下してしまう。最遠アンテナ間距離を抑えた小規模な干渉ブロックをアレイアンテナ上に複数配置し、それら各干渉ブロックの相関出力信号をベクトル合成することにより、空間分解能を上げずに感度を向上することができる。
【0013】
各干渉ブロック内のアンテナの配置、無限遠ターゲットに対する角度関係を等しくすれば、各干渉ブロック内の同じ位置関係にある相関出力からは、同じ信号成分が出力されるはずである。各干渉ブロックは独立した受信システムで構成されているので、雑音は独立であり、干渉ブロックの出力信号のベクトル和は干渉ブロックの数だけS/Nの改善が図られる。
【0014】
ただし、アレイアンテナ上における干渉ブロックは、以下の条件が成立している必要がある。
C>>2B・D sinθ
ここで、送信部の送信周波数帯域をB、ベクトル合成する複数の干渉ブロックの中で最も離れた干渉ブロック間の最大アンテナ間距離をD、アンテナ面の法線方向からのターゲット方向角度をθ、光速をCである。
【0015】
受信アレイアンテナのアンテナ素子数を4096×4096とした場合、ビーム幅を制限するために干渉ブロックの個数を512×512とすると、縦横に8分割、合計64個の干渉ブロックを設けることができる。各干渉ブロックの出力信号成分は等しいので、ベクトル合成することにより、64倍、約18dBのS/N改善が期待できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、受信アンテナによる空間分解能を上げずに、感度を向上させることができる。
【0017】
さらに、低空間分解能高感度干渉型レーダと同じアンテナのデータを用いて高分解能トラッキングレーダを実現することができる。すなわち、受信アンテナの最大開口を使ってターゲットの大まかな位置を検出し、次に特定のターゲットを捉えて、その特定のターゲットの位置を高精度にトラッキングすることができる。
【0018】
さらに、MTI測距で得たターゲットの速度データを使い、線形予測して前記速度データに対して周波数補正を行うことにより、ターゲットの高精度な測距を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る干渉型レーダは、複数の送信モジュールから構成される1台の送信部Tと、複数台の受信部Rとを有している。
【0021】
図1に示す本発明の実施形態に係る干渉型レーダは、運用面から見ると、パッシブモードとアクティブモードとの2つの動作モードを備えている。そしてアクティブモードは、測距モードと、MTIモードと、ISARモードを備えている。各モードについて説明する。
【0022】
前記パッシブモードは、ターゲットに向けて電波(送信波)を放射することなく、例えば航空機の気象レーダ,戦闘機のFCSレーダ,人工衛星搭載レーダの信号などのように受信アンテナビーム内で受信可能周波数範囲の全電波源の方向と電波強度とを表示する動作モードである。
【0023】
アクティブモードのうち前記測距モード及び前記MTIモードは、時分割に交互に動作し、それぞれターゲットの方位と距離と、およびターゲットの方位と速度を計測するとともに、その計測結果を合成して画面表示する。また前記測距モード及び前記MTIモードでは、全視野を瞬時にもれなく観測する概査MTI機能と特定のターゲットのMTIを高精度に行う個別MTI機能、また全視野を瞬時にもれなく観測する概査測距機能と特定のターゲットの測距を高精度に行う個別測距機能が同時に動作する。これら概査MTI,概査測距、個別MTI,個別測距機能の計測結果は画像処理されて、全体画面上に合成して、又は個別ターゲットの詳細情報として表示される。前記ISARモードは、動作時に電波(送信波)を送信し、ターゲットからの反射波を受信して、ISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar)処理を行い画像化するモードである。
【0024】
前記送信部Tは図1に示すように複数のモジュールから構成される。前記複数のモジュールは、同期信号発生部1と、信号生成部2と、エキサイタ3と、信号分配器4と、信号分配器4で分配された信号がそれぞれ入力する複数の位相器5と、各位相器5にそれぞれ接続された複数のマイクロパワーモジュール(MPM)6と、各マイクロパワーモジュール6からの送信波を送信する複数の送信アンテナ7とを有している。ここに、マイクロパワーモジュール(MPM)6は図示しない位相安定回路を備えた小型のTWTA(Traveling Wave Tube Amplifier)が組み込まれ、送信波を増幅するものである。またエキサイタ3は、信号生成部2からの送信波の振幅を大きくして信号分配器4に出力させる。
【0025】
前記複数の送信アンテナ7は図2に示すように、1つのアンテナ面9aにマトリックス状に配列している。実施形態における送信アンテナの素子数は50個に設定しているが、この素子数に限られるものではない。前記アンテナ面9aは、その法線方向を中心として観測可能範囲がターゲット21に向いた平面形状をなしている。なお、ターゲット21としては、ミサイル,航空機などの高速飛行物体が挙げられるが、図ではミサイルを図示している。
【0026】
前記送信アンテナ7は、前記マイクロパワーモジュール6及び前記位相器5の直列回路にそれぞれ直列に接続されている。前記複数の位相器5には、信号分配器4で分配された信号が並列にそれぞれ入力する。複数の位相器5はビーム幅及びビーム方向をそれぞれ調整して送信波を送信アンテナ7に出力するため、前記複数の送信アンテナ7は図2に示すように、これらのアンテナ7を組み合わせた合成開口からのビーム幅が広いブロードビームB1と、前記合成開口からのビーム幅が特定のターゲット21の方向に集中した鋭利なペンシルビームB2とに切り替えられて送信波を送信する。ここで、ブロードビームB1は測距モード時とMTIモード時とに出力させるものであり、送信信号を後述する受信アンテナの全視野角に均一電力で照射するビームである。ペンシルビームB2は特定のターゲット21を注目してできるだけ高いS/N比で観測するとき及びISAR観察モード時に出力させるものであり、送信信号を特定の方向に全送信電力を集中させたビームである。
【0027】
前記同期信号発生部1は、前記信号生成部2及び前記受信部R並びにそのほかの各部に同期信号を出力する。前記信号生成部2は前記同期信号発生部1からの同期信号を入力として、MTIモード時にCW(Continuous Wave)信号を出力し、測距モード時及びISARモード時にFMCW(Frequency-Modulated
Continuous Wave)信号を出力する。ここに、CW信号とは、周波数を変調させずに連続して出力される信号である。FMCW信号とは、周波数を直線的に変調させながら連続的に出力される信号である。
【0028】
前記受信部Rは図3に示すように、1つのアンテナ面9bにマトリクス状に縦横に配列されているアンテナを有している。前記アンテナ面9bは、その法線方向を中心として観測可能範囲が観測すべき方向に向いた平面形状をなしており、受信アンテナ8としてマイクロ波(例えばXバンド)受信アンテナが用いられる。
【0029】
図3及び図4に示す実施形態では、アンテナ面9bには、縦横に512×512のアンテナ8がマトリクス状に配列されて、大口径アレイアンテナを構成している。そして、ビーム幅の制限を緩和するために縦横に4分割した16個の干渉ブロック9cが設けられており、各干渉ブロック9c内には、128×128の個数のアンテナ8がマトリクス状に配置されている。なお、受信アンテナ上に設定する干渉ブロック9cは16個に限られるものではない。干渉ブロック9cの分割数をnとすると、2の個数の干渉ブロック9cを設定するようにすればよいものである。
【0030】
各干渉ブロック9c内のアンテナの配置、無限遠ターゲットに対する角度関係を等しくすれば、各干渉ブロック9c内の同じ位置関係にある相関出力からは、同じ信号成分が出力されるはずである。各干渉ブロックは独立した受信システムで構成されているので、雑音は独立であり、干渉ブロックの出力信号のベクトル和は干渉ブロックの数だけS/Nの改善が図られる。ただし、アレイアンテナ上における干渉ブロック9cは、以下の条件が成立している必要がある。
C>>2B・D sinθ
ここで、送信部の送信周波数帯域をB、ベクトル合成する複数の干渉ブロックの中で最も離れた干渉ブロック間の最大アンテナ間距離をD、アンテナ面の法線方向からのターゲット方向角度をθ、光速をCとして設定している。
【0031】
送信アンテナ7のアンテナパターンはMTIモード及び測距モードでは受信アンテナ8の全視野角に均等に照射するようにブロードビームモードB1に選定される。
【0032】
前記各干渉ブロック9cに含まれる複数の受信アンテナ8は図1に示すように、それぞれほぼ等しい電気的仕様を有する受信装置を備えている。前記受信装置は、低雑音増幅器(LNA)10と、周波数変換部11と、対をなすローパスフィルタ12a,12bと、A/D変換部13と、FFT処理部14を備えている。これらの構成は、それぞれの受信アンテナ8に独立に備えられている。さらに受信部Rは、干渉ブロック毎に相関処理部(相関器15a、積分器15b)を備えている。そして受信部Rは、複数の相関処理部15の出力信号をベクトル合成する合成器19と、2次元FFT処理部16と、データ処理部17と、表示部18と、ターゲット選択部22と、複数の個別MTI/測距処理部23とを備えている。個別MTI/測距処理部23は、概査MTI,概査測距で求めた目標対象物の速度、距離デーアを用いて、目標対象物の速度を高精度に測定する個別MTI部と、前記個別MTI部の速度データを用いて目標対象物の速度によるドップラー周波数、距離変化に伴うFMCWベースバンド信号の周波数補正を行い、目標対象物の位置を高精度に測距する個別測距処理部とを有している。
【0033】
前記低雑音増幅器10は前記受信アンテナ8から出力される受信信号を増幅する。前記周波数変換部11は前記信号生成部2から出力される信号を用いて、複数の受信アンテナ8が受信する受信信号に対して周波数変換を行い、それぞれの受信信号からベースバンドの複素信号であるIQ信号(アナログ信号)を出力し、そのI信号を一方のローパスフィルタ12aに、残りのQ信号を他方のローパスフィルタ12bにそれぞれ出力する。ローパスフィルタ12a,12bは、IQ信号の高周波成分を除去する。前記A/D変換部13は、ローパスフィルタ12a,12bで高周波成分が除去されたアナログのIQ信号(受信信号)を前記同期信号発生部1からの同期信号に同期させてディジタル信号にA/D変換する。前記FFT処理部14は、受信アンテナ8で受信されて復調された前記A/D変換部13からのディジタル信号について離散フーリエ変換を並行して実行し(FFT)、その出力信号を前記相関処理部15及び前記ターゲット選択部22に出力する。
【0034】
前記相関処理部15は相関器15aと積分器15bとを有し、前記FFT処理部14からの出力信号を干渉ブロック9cに含まれる複数の受信アンテナ8の信号間で相関積分処理を行う。合成器19は、各干渉ブロック9cから出力される複数の相関処理部15の出力信号をベクトル合成する。前記2次元FFT処理部16は、合成器19でベクトル合成された信号を入力として、アンテナ面(受信アンテナのアンテナ面)9bに入力される信号の位相面から電波源(ターゲット21)の方向を求める処理を行う。前記データ処理部17は、合成器19でベクトル合成され前記2次元FFT処理部16で2次元FFT処理されたデータを入力とし、MTIモードでターゲットの速度毎に分類したターゲットの方位エレベーションと測距モードでターゲットの距離ごとに分類したターゲットの方位エレベーションを表示部18に出力し、かつターゲットの方位データをターゲット選択部22に出力するとともに、ターゲットの速度データを複数の個別MTI/測距処理部23に出力する。
【0035】
本発明の実施形態においては、送信アンテナ7からの送信と受信アンテナ8による受信とが同時刻に行われるため、図3に示すように送信アンテナ7からの送信信号が受信アンテナ8に廻り込まないように送信アンテナ7と受信アンテナ8とを白抜き矢印で示すように干渉しない程度に分離して設置する。
【0036】
さらに本発明の実施形態における方位分解能は、最も離れて設置された受信アンテナ8,8間の距離により決定される。また観測可能な視野角は、各受信アンテナ8のビーム幅により決定される。
【0037】
本発明の実施形態においては、前記送信部Tと前記受信部Rとの動作を変更することにより、非常に高感度にターゲットの方位と速度とを検出するMTIモードと、同様に高感度にターゲットの方位と距離とを計測する測距モードとで動作させる。本発明は図1に示すように制御部20を備えている。前記制御部20は、前記送信部Tと前記受信部Rとの動作を前記MTIモードと前記測距モードの二つの動作モードに数十ミリ秒から数秒以内で交互に切り替え、その出力画像を合成して、高精度な測距、MTIレーダ画像として表示する制御を行う機能を有している。さらに制御部20はMTIモード及び測距モードにおいて、データ処理部17及び高精度測距処理部19を動作制御し、個別のターゲットに関し、高精度に速度計測,距離計測を行う制御機能を有している。
【0038】
先ず、本発明におけるMTIモード時の動作について説明する。制御部20からMTIモードの指令が送信部Tに入力すると、信号生成部2は同期信号発生部1からの同期信号を入力として一定周波数のCW信号を連続して出力し、そのCW信号をエキサイタ3に通して信号分配器4に出力する。信号分配器4は、入力したCW信号を分配して複数の位相器5に出力する。位相器5は、分配された信号が入力すると、送信アンテナ7から送信する送信信号のビーム幅,ビーム方向が所定の形になるように位相を調整し、その調整後の送信信号をマイクロパワーモジュール6に通して送信アンテナ7に出力する。複数の送信アンテナ7は、一定周波数の連続したCW信号を送信信号(送信波)としてターゲット21を含む観測エリアに向けて放射する。
【0039】
制御部20は、送信部Tと受信部RとにMTIモードの動作指令を同時に出力するものであり、送信部Tが上述したように送信信号(CW信号)をターゲット21を含む観測エリアに向けて送信している際に、受信部Rはターゲット21で反射される信号(受信信号)を受信している。このように送信部Tと受信部Rとは、同時に動作しているために、送信部Tからの送信信号が受信部Rに線形動作領域(小信号の範囲;リニアな範囲)を超えるほど強力な信号として廻り込むと、受信部Rは、送信部Tから出力された送信信号とターゲット21からの反射信号とを識別することが困難になる。そのため、送信アンテナ7と受信アンテナ8とを離して設置している。ここに、前記送信信号のパワーが前記線形動作領域であれば、送信アンテナ7から受信アンテナ8に廻り込む不要な送信波を受信部およびFFT処理で分離することが可能である。
【0040】
図3において、送信アンテナ7から送信される送信信号のアンテナビーム方向に高速で飛翔してくるターゲット21が存在しているとする。この場合、送信アンテナ7からの送信信号はターゲット21で反射され、その反射波は非常に微弱な受信信号として複数の受信アンテナ8で受信される。
【0041】
前記受信アンテナ8で受信した受信信号(反射波)は、ターゲット21の速度VによりドップラーシフトΔfを受けている。ここに、送信アンテナ7から送信される送信信号の送信周波数をf、ターゲット21の速度をV、ドップラーシフトをΔf、Cを光速とすると、これらの関係は次の式(1)となる。
Δf=(2×V×f)/C (1)
【0042】
前記H系及びV系の複数の受信アンテナ8で受信された信号は、それぞれ低雑音増幅器10で増幅され、その増幅後の受信信号が周波数変換部11にそれぞれ入力する。それぞれの周波数変換部11は、信号生成部2からの送信信号(送信アンテナ7から送信される送信波)で周波数変換し、ベースバンド周波数の信号(ベースバンド信号)に変換する。
【0043】
A/D変換部13は、複数の周波数変換部11からの前記ベースバンド信号を受け取ると、アナログ信号である前記ベースバンド信号をディジタル信号に変換し、そのディジタル信号であるベースバンド信号をFFT処理部14に出力する。
【0044】
次に前記FFT処理部14は、入力したベースバンド信号をドップラーシフト周波数に分類する(スペクトル解析)。このとき、ベースバンド信号に含まれる直流周波数成分は、速度を持たないターゲットからの反射信号、及び送信アンテナ7から受信アンテナ8への廻り込み成分であるので、A/D変換部13及びFFT処理部14により除去される。Xバンドの周波数を用いる干渉レーダの実施例では、計測対象速度範囲を最大7Km/sとすると、最高ドップラー周波数は約450KHzとなる。この場合、A/D変換周波数はその2倍以上となり、たとえば1MHzとする。概査MTI処理では、必要速度分解能を70m/s程度とすると、256点FFTが必要になる。この出力を相関処理し、積分、二次元FFT処理を行い、速度毎の画面として画像化する。
【0045】
前記FFT処理部14でのFFT処理を図7に基づいて説明する。送信アンテナ7と受信アンテナ8とのスラントンジ方向速度がVであるターゲット21からの反射信号はドップラーシフトを受けている。このドップラーシフト周波数によりターゲット21からの信号を分類し、速度ごとのターゲット分布図を求める。
【0046】
すなわち図7に示すように、前記FFT処理部14は、前記A/D変換部13でA/D変換されたディジタル信号であるベースバンド信号を一定周期T1,T2,T3・・・毎に周波数解析する。この場合、A/D変換のサンプル周波数Δtは、次式(2)で示すように想定される最高ドップラー周波数の2倍以上であることが必要である。
【0047】
1/Δt>2Δfmax (2)
ここに、Δfmaxは、想定される最高ドップラー周波数である。
【0048】
またFFT処理部14に1回に入力処理するデータ時間T1,T2,T3・・・は、次式(3)で示すように、必要とする速度分解能のドップラー周波数の逆数時間以上でなければならない。
【0049】
T1,T2,T3・・・>1/Δfmin (3)
ただし、Δfmin=2ΔVf/Cである。ここに、ΔVは速度分解能、Δfminはドップラー周波数分解能である。
【0050】
前記FFT処理部14でドップラーシフト周波数に分類された信号が相関処理部(相関器15a,積分器15b)に入力すると、相関処理部15により相関積分処理が行われる。次に相関処理と積分処理とに区分けして説明する。
【0051】
先ず前記相関器15aが干渉ブロックの受信アンテナ8系列の信号間で相関処理を行う場合について説明する。図7に示すように、前記FFT処理部14でドップラーシフト周波数に分類された信号(F(ω))が前記相関器15aに入力すると、前記相関器15aは、その干渉ブロック内で基準とするある特定のアンテナ8の信号の共役信号とそれ以外の受信アンテナ8の相互間で信号相互間で複素乗算演算を行う。前記相関器15aによる相関処理により、各受信アンテナ系統で受信された信号間の、入射方向による位相差が検出され、全受信アンテナ8間の相関を求めることにより、アンテナ面9bに入射される全受信信号のベクトル合成された位相面を求めることができる。
【0052】
前記積分器15bは、前記相関器15aで相関処理された信号を長時間積分処理する。前記積分器15bによる積分の結果、受信アンテナ8の受信機内部で発生する内部雑音が抑圧され、内部雑音レベル以下の非常に微弱な受信信号も画像化することができる。同時に受信部R内の共通的なスプリアスが存在する場合、そのスプリアスは相関積分処理で抽出される。そのため、受信部Rの局部発信には共通信号源の逓倍信号ではなく、フェーズドロック発信器による独立発信信号を使う必要がある。前記周波数変換部11からのベースバンド信号に含まれる直流分は、A/D変換部13及びFFT処理部14で除去することにより、送信アンテナ7からの送信信号が受信アンテナ8の受信信号に混入する影響を除去することができる。
【0053】
以上の処理は、受信アンテナ上の干渉ブロック9c毎に行われる。すなわち、図6に示すように、受信アンテナ2上に設けられた512×512個のアンテナ8が縦横に4分割した16個の干渉ブロック9c内にそれぞれ128×128個ずつ配置されている。そして、干渉ブロック9c毎に、相関器15aは、基準となるアンテナ8と、残りのアンテナ8とで受信した信号の相関処理を行う。そして干渉ブロック9c毎に、積分器15bは、相関器15aで相関処理された信号を積分する。したがって、積分器15bの出力信号は、干渉ブロック9cの個数に相当する個数だけ出力される。
【0054】
合成器19は、各干渉ブロック9cの積分器15bから出力される信号をベクトル合成する。合成器19がベクトル合成することにより、空間分解能は1個の干渉ブロック9cのもつ分解能を保ったまま、受信アンテナ2の最大開口、すなわち複数の干渉ブロック9c内での信号をベクトル合成した信号となり、S/Nが16倍になる。したがって、合成器19がベクトル合成することにより、干渉ブロック内の基準となるアンテナ8とそのほかの受信アンテナ間の全ての組み合わせについてドップラーシフト周波数別に相関演算が行なれ、図8(a)に示すように分類されたドップラーシフト周波数(ターゲット21の速度)別のアンテナ面9bに入力される受信信号(ターゲット21からの反射波)の位相面(H−V)を求めることができる。
【0055】
前記2次FFT処理部16は前記合成器19からの信号を受けると、図8(a)に示す位相面(H−V)の2次元関数を2次元FFT処理することにより、図8(b)に示す速度ごとに分類したターゲット21の方位エレベーション(D−E)を求める。
【0056】
前記データ処理部17は、前記説明した概査MTI処理で求められたターゲット21の方位エレベーション(D−E)に基づいて特定ターゲット21の方向及び速度を計測する。すなわち、MTIモードでは、送信側から連続したCW信号が出力される。ターゲット4の速度Vにより受信信号はドプラーシフトされたものであり、ドップラーシフトΔfがドップラー周波数として検出されるから、データ制御部17は、式(1)によりターゲット21の速度Vを算出する。本発明では、送信信号にCW信号を用いているため、非常に高精度に速度分析を行うことができる。必要なドップラー周波数分解能の逆数が1回の周波数解析処理に必要なデータ時間である。たとえば、送信信号の送信周波数が10GHzである場合に、100m/sの速度分解能を得るためには、0.15msの受信データを周波数解析すればよい。
【0057】
次に、本発明における測距モード時の動作について説明する。測距モード時においては、MTIモード時に出力したCW信号に代えて、FMCW信号を出力する。この測距モードは、MTIモードと同じ構成で送信信号をFMCWとすることにより、ターゲットまでの距離を計測することができる。
【0058】
この測距モードにおいては、受信信号を送信信号と同じFMCW信号で周波数変換することにより、ターゲット21の距離が反射信号(受信信号)の周波数に変換される。
【0059】
したがって、相関処理部15は、その干渉ブロック内で基準とするある特定の受信アンテナ8とそれ以外の受信アンテナ8の信号相互間で周波数別に複素乗算演算を行う。各干渉ブロック毎の出力信号を合成器19でベクトル合成し、図8(a)に示すようにターゲット21までの距離で分類された周波数(ターゲット21の距離)別のアンテナ面9bに入力される受信信号(ターゲット21からの反射波)の位相面(H−V)を求めることができる。図8(a)には、ターゲット21までの距離に相当する周波数別に分類された複数の前記位相面(H−V)を図示している。
【0060】
前記2次FFT処理部16は前記相関処理部15からの信号を受けると、図8(a)に示す位相面(H−V)の2次元関数を2次元FFT処理することにより、図8(b)に示すターゲット21の距離ごとに分類したターゲット21の方位エレベーション(D−E)を求める。概査処理ではターゲット21が速度を持っている場合は静止している場合より若干周波数がシフトするが、距離分解能の誤差内に抑えることが可能である。Xバンドの干渉レーダの実施例では最大観測範囲を3000Kmとした場合、FMCW信号の繰り返し周期は20mS程度、最高距離分解能を1mとすると、FMCW送信信号帯域幅は150MHzとなる。ターゲット21の最大ドップラー周波数シフトは450KHz程度であるので、概査で距離分解能を20Kmとした場合、ドップラー周波数偏移による誤差は無視することができる。
【0061】
概査処理においては、前記受信アンテナ8の受信信号を前記FFT処理部14によるFFT処理で周波数分類した後はMTIモードと同じように相関処理、積分を行い、S/N比を向上させている。視野角内のターゲットの数に関係なく(性能低下することなく)データ処理部17でそれぞれのターゲットの軌跡をトレースすることが可能である。受信アンテナ8に対するターゲット21の方位,ターゲット21までの距離及びターゲット21の速度が大きく変化しない限り(誤差範囲内のとき)、ターゲット21で反射された信号の相関出力位相は一定なため、長時間にわたって位相積分を行い、高感度化,高精度化を図ることができる。測距モードと同様にベースバンド信号への変換後に直流成分近傍の低周波成分を除去することにより、受信アンテナ8への送信信号の回り込み成分を除去することができる。
【0062】
さらにデータ処理部17は、図8(b)に示す2次FFT処理部16から出力される方位エレベーション(D−E)ごとの信号強度を解析し、前記算出したターゲット21の距離ごとに方位エレベーション(D−E)内での座標からターゲット21の方位方向を検出する。
【0063】
前記制御部20は、前記送信部Tと前記受信部Rとの動作を前記MTIモードと前記測距モードの二つの動作モードに数十ミリ秒から数秒以内で交互に切り替える。
【0064】
前記表示部18は、MTIモード時に前記データ処理部17からのデータを受け取ると、ドップラー周波数毎に分類されたターゲット21の速度及び方位方向のデータを合成し、視野角全体に存在するターゲット21の方位,速度を合成表示する。さらに表示部18は、測距モード時に前記データ処理部17からのデータを受け取ると、距離に対応したベースバンド周波数毎に分類されたターゲット21の距離及び方向のデータを合成し、視野角全体に存在するターゲット21の方向,距離を合成表示する。したがって、ターゲット位置情報(x,y,z及びx,y,z)を受信アンテナ8のビームB3内に三次元表示(3D)する。ターゲット21の速度及び進行方向情報をベクトル表示する。さらにターゲット21の軌跡情報を破線表示する。
【0065】
以上説明した概査MTI及び概査測距モードでは、受信アンテナ8による視野角全体に存在するターゲット21の方位,速度,距離を合成表示する場合であるが、特定のターゲット21について精密測距,トラッキング,予想軌道の表示を行う、或いは図9(b)のようなISAR画像の表示を行う場合がある。この場合について説明する。この場合、MTIモードで取得したターゲット21の速度情報を基にして周波数Δfを補正することにより、距離分解能を向上、すなわち位置と時間とを同定する必要がある。この処理は図1のターゲット選択部22と個別MTI/測距処理部23とにより行われる。
【0066】
先ず、ターゲット選択部22による処理について説明する。図5に示すように、ターゲット選択部22はディジタルビームフォーミング処理を行う。具体的に説明すると、ターゲット選択部22は、データ処理部17から方位データ,概査MTI,概査測距データを受取ると、その方位データに基づいて位相関数生成部22aから位相関数を生成し、これを乗算器22bに出力する。乗算器22bは、概査MTI,概査測距データからFFT処理部14のターゲット信号が含まれる周波数分出力に前記位相関数を掛けて、その信号を加算器22cに出力する。加算器22cは、複数の乗算器22bから出力される信号を加算して、特定のターゲット21の方向を選び出す。
【0067】
個別MTI/測距処理部23は、ターゲット選択部22が選び出した特定のターゲットの方向で概査MTI,概査測距データに相当するベースバンド周波数周辺の信号を用いて更に高精度なMTI測距を行う。
【0068】
MTIモード時にFFT処理部15から入力し、ターゲット選択部22で選択した、ある特定の方向にあるターゲットの概査MTI信号を個別MTI処理部23で更に詳細に周波数解析し、ドップラー周波数を更に高精度に求め、速度を決定する。この高精度速度データを用いて、高精度な測距が可能となる。
【0069】
特定のターゲット21が受信アンテナ8側に移動する場合の位置関係は図9に示す通りとなる。図10において、受信アンテナ8での受信信号と送信信号との関係は、ターゲットが静止している場合の受信信号はαとなり、ターゲットが一定速度Vで近づく場合の受信信号はβとなる。γがターゲットの距離変化による周波数の変化を示している。またBは帯域幅を示している。
【0070】
図10に示すように、ターゲット21が停止している場合、周波数変換部11で送信信号と受信信号の差分を求めると、ターゲット21までの距離が受信信号の周波数に変換される。この場合、ターゲット21が停止しているため、距離変化による周波数の変化はない。送信信号に対する受信信号の遅延時間Tは次式(4)で表される。
【0071】
=2R/C=2(R−Vt)/C (4)
R(R)は受信アンテナ8からターゲット21までの距離、Cは光速、Vはターゲット21の速度である。
【0072】
ここに、ターゲット21までの距離Rのデータには、前記測距モードで求めた距離情報を用いる。またターゲット21の速度のデータには、前記MTIモードで求めた距離情報を用いる。tは、前記測距モードで求めた距離情報と前記MTIモードで求めた距離情報とに基づいて求める。
【0073】
周波数変換部11で周波数変換したベースバンド周波数の変化と時間(ターゲット21までの距離変化)との関係において、周波数変換部11で周波数変換したベースバンド周波数fは、次の式(5)で表される。
【0074】
=2kR/C (5)
kはチャープ率であって、送信信号の繰り返しパルス幅をτ、送信信号の帯域幅をBとすると、k=B/τである。
【0075】
図9において、ターゲット21が停止している場合、ベースバンド周波数fはターゲット21までの距離によって決定される。FMCW周波数の帯域幅BでA/D変換のサンプル周波数もBのとき、FMCWのベースバンド周波数は折り返した結果、一定になる。
【0076】
したがって、周波数変換部11で周波数変換されて距離に相当する周波数別に分類されたベースバンド信号(受信信号)は点線α0で示すように一定となる。
【0077】
これに対して、ターゲット21が高速で受信アンテナ8に近づく場合を考える。図9において、ターゲット21が高速(一定速度)で移動する場合、ベースバンド周波数fは、tの一次式で変化する。すなわち、ベースバンド周波数fは、ドップラー周波数による影響を受けてさらに距離の変化による周波数変化を生じる。そのベースバンドfは次式(6)で表される。
【0078】
y={-2kVt+2(kR-Vf)}/C (6)
【0079】
ターゲット21が高速で移動する場合、ドップラー周波数シフトによる距離誤差の増大、積分時間内の距離変化による感度の低下が生じる。
【0080】
個別MTI/測距部23の周波数補正部23aは、ターゲット選択部22から特定のターゲットの方位情報とデータ処理部17から概査処理結果の速度距離データをそれぞれ取得する。前記データの取得後、周波数補正部23aは、概査MTI処理で求めたターゲットのドップラー周波数に相当するFFT処理部14の出力信号のうち、データ処理部17から入力した方位情報から求める方位方向のベースバンド信号fのみを抽出する。
【0081】
この抽出されたベースバンド信号fに、ドップラー周波数及びターゲット21までの距離変化による周波数変化の補正項を加える。その周波数変化の補正項を加えたベースバンド信号foutは次式(7)で表せる。
【0082】
out=f-{2(kVt+Vf)}/C (7)
【0083】
次にFFT部23bは、周波数補正部23aで前記高精度に計測した速度データを用いて、高精度測距処理を行う。すなわちFFT部23bは、概査測距モードで求めた距離情報から、そのターゲット情報が含まれるFFT処理部14の出力周波数を選択し、全受信アンテナ系統分の信号を取得する。そして高精度測距処理部19は、全受信アンテナ系統分の信号を、概査で求めたターゲット方位のみが強め合うように位相合成することにより、ターゲットの信号方向成分のみを抽出する。この抽出された信号に前記の高精度に求めた速度データを使用し、積分部23cにより積分時間にわたり距離補正,ドップラー補正を行い、その後に高精度な周波数解析を行う。これにより特定ターゲットについて、正確な距離情報をデータ処理部17に出力する。データ処理部17は、高精度な即データと精密距離データを表示部18に出力する。
【0084】
表示部18は、データ処理部15からの距離情報に基づいて、特定のターゲットについて精密測距,トラキング,予想軌道を表示する。ISARモードではISAR画像を表示する。また精密測距モードは、測距モードと併用して使用され、画像表示部18は、特定ターゲットの精密距離を測定時刻のタイムスタンプとともに表示する。この場合、データ処理部17は、個別MTI/測距処理部23からの距離情報に基づいてターゲットの軌道推定を行う。
【0085】
上述した実施形態では、同期信号発生部1からの同期信号を基準信号として用いたが、基準信号は同期信号に限られない。すなわち本発明に係るFMCWレーダは、一定周波数変化率(チャープ率)kで変化し、周期Tで繰り返す信号を送信する送信部Tと、目標対象物で反射した信号を送信信号と全く同じタイミングまたは位相同期したタイミングの周波数変化率kの局部発信信号で周波数変換するヘテロダイン機能を有する受信部Rと、前記kとTの積になるサンプル周波数F(F=kT)でディジタル化するA/D変換部とを有する構成に変更してもよい。
【0086】
この構成によれば、図3に示すようにFMCWの繰り返し周波数を高くし、かつ広帯域に周波数を変化させるFMCWレーダにおいて、遠距離からの反射信号の受信信号エネルギーを有効に処理するために、繰返し周期と周波数変化率の積と等しいA/D変換を行うことにより、一周期を遥かに超えた受信信号成分もディジタル信号の折り返し特性により同じ周波数に変換され、全受信信号エネルギーが有効に処理される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように本発明によれば、空間分解能を上げずに、感度を向上させることができる。さらに大口径アレイアンテンの最大開口で目標対象物の位置を確認した後、特定のターゲットを選択して、そのターゲットの方位を高精度に測距することができる。さらに特定のターゲットを選択して、そのターゲットの速度を高精度に測距することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態に係る干渉型レーダの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る干渉型レーダにおける送信部に設置する送信アンテナの構成を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る干渉型レーダにおける受信部に設置する受信アンテナの構成を示すとともに、測距モード動作時を示す構成図である。
【図4】受信アンテナ上に配置した干渉ブロックを示す図である。
【図5】ターゲット選択部と個別MTI/測距処理部を示す構成図である。
【図6】干渉ブロック毎に相関処理を行う場合を説明する概念図である。
【図7】本発明の実施形態におけるFFT及び相関処理を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態における2次元FFT処理を説明する図である。
【図9】ターゲットと受信アンテナとの関係を説明する図である。
【図10】MTIモードで得られたターゲットの速度データで周波数補正を行う場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0089】
T 送信部
R 受信部
7 送信アンテナ
8 受信アンテナ
11 周波数変換部
13 A/D変換部
14 FFT処理部
15 相関処理部
16 2次FFT処理部
17 データ処理部
18 表示部
19 合成器
22 ターゲット選択部
23 個別MTI/測距処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標対象物に向けて信号を送信する送信部と、
目標対象物で反射する反射波を受信する大口径アレイアンテナを備えた受信部とを有し、
前記送信部は、目標対象物の方位及び距離を検出するためのFMCW信号を送信アンテナから出力する機能を有し、
前記受信部は、前記大口径アレイアンテナを複数の等しい小ブロックに分割した干渉ブロック毎に受信する受信信号に相関処理を行う複数の相関処理部と、前記複数の相関処理部から出力される信号の相等しい信号成分同士をベクトル合成する合成器とを含むことを特徴とする干渉型レーダ。
【請求項2】
前記大口径アレイアンテナは、アンテナ面に複数のアンテナ素子をマトリクス状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の干渉型レーダ。
【請求項3】
前記干渉ブロックは、前記大口径アレイアンテナのアンテナ面を縦横に等分割して配置したことを特徴とする請求項1に記載の干渉型レーダ。
【請求項4】
前記相関処理部は、前記干渉ブロック毎に独立して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の干渉型レーダ。
【請求項5】
前記大口径アレイアンテナ上の前記干渉ブロックの配置は、
前記送信部の送信周波数帯域をB、ベクトル合成する複数の干渉ブロックの中で最も離れた干渉ブロック間の最大アンテナ間距離をD、アンテナ面の法線方向からの目標対象物の方位角度をθ、光速をCとした場合に、
C>>2B・D sinθ
の条件を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の干渉型レーダ。
【請求項6】
前記干渉ブロック内の複数のアンテナ素子は、前記大口径アレイアンテナ上の複数のアンテナ素子を等分割してマトリクス状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の干渉型レーダ。
【請求項7】
目標対象物からの反射波を前記大口径アレイアンテナの最大開口で受信した信号に基づいて、低空間分解能で目標対象物の方位を求める機能を備えたデータ処理部と、
相関処理前の受信信号をディジタルビームフォーミングすることにより、最大アンテナ間距離に応じた空間分解能で目標対象物の方位を求めるターゲット選択部とを有することを特徴とする請求項1に記載の干渉型レーダ。
【請求項8】
概査MTI,概査測距で求めた目標対象物の速度、距離データを用いて、目標対象物の速度を高精度に測定する個別MTI部、および前記個別MTI部の速度データを用いて目標対象物の速度によるドップラー周波数、距離変化に伴うFMCWベースバンド信号の周波数補正を行い目標対象物の位置を高精度に測距する個別測距処理部を有することを特徴とする請求項7に記載の干渉型レーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−308285(P2006−308285A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106864(P2005−106864)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】