説明

平坦なモバイルアンテナのための追跡システム

平坦なモバイルアンテナのための、以下を含む追跡システム。軸の周りのアンテナの回転を感知する、角速度センサ(1)。縦軸に対するアンテナの方向を感知するセンサ(2)。アンテナビームの方向の必要な修正を計算し、センサ(1、2)の出力、および駆動ブロック(4)およびビーム制御ブロック(5)の入力に接続された制御ブロック(3)。アンテナの方向を変え、駆動ブロック(4)の出力に接続され、アンテナパネル(8)を駆動する少なくとも1つのモータ(7)。アンテナパネル(8)に接続された、電子ビームの方向付けブロック(5)。システムの全ブロックの電源を提供するために、車両の電気ネットワークの電圧を適当な値へ変換する電源ブロック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、インターネット、および衛星から放送される他の通信信号を提供する、移動車両およびプラットホーム上に取り付け可能な、1つの軸に対する機械的な位置決めと、他の軸に対する電子ビームの方向付けとを結合させた、平坦なアンテナのための追跡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動車両に取り付けられたアンテナは、衛星からの信号を受信するために、そのビームが常に衛星に向けられるよう、その方向を保たなければならない。この目的のために、追跡システムの制御の下に作動し、さらに、車両の(または、直接的にアンテナの)方向の変化に反応し、さらに、ビームの方向に、必要な修正を提供するよう、モータあるいは電子ビーム制御のためのブロックに対しコマンドを発する、機械的および/または電子的ビーム方向付けを備えたアンテナが必要である。多くの場合、こうした追跡システムは、クォーツ、圧電性あるいはマイクロ電気機械(MEMS)の技術に基づく角速度センサ(レートジャイロスコープ)を含んでいる。これらは安価であることが特徴だが、温度変化、直線的な加速、およびオフセットならびにスケールファクターに関する他のファクターにより生ずる重要なエラーにより、悪影響を受ける。この理由のため、こうしたセンサを使用する異なる追跡システムの主要な要素は、受信信号の測定強度を用いる、アンテナの方向、およびジャイロスコープエラーの修正のための、異なる方法である。最も広く用いられている方法は、ほとんど、衛星への推定される方向の周りの狭い領域における機械的スキャニング、およびモノ‐パルス法である。
【0003】
特許文献1は、ビーム方位角の機械的制御と、移相器を用いる仰角での電子ビームの方向付けとの結合を使用するシステムを開示している。より高いスキャン速度を達成するために、追加的に移相器を使用することにより、両方の軸上でのビームの傾きが、小さな角度で得られる。
【0004】
特許文献2は、機械的ドライブを伴うアンテナを開示している。この追跡システムは、信号強度の減少が登録される間、所与の方向に回転するように命じ、その後、その運動方向が逆にされる。特定の間隔で、両方向への運動が平均化され、それらは、後にジャイロスコープのオフセットの修正に使用される。機械的駆動システムの待ち時間が長いために、こうしたシステムの平均間隔は比較的に大きいが、これは、ジャイロスコープのオフセット修正が、大きな遅れを伴うことを意味している。
【0005】
特許文献3は、2つのアンテナパネルによる受信信号の位相差を用いて、全ての軸に対するモータの制御が実行される、アンテナシステムを提供している。
【特許文献1】米国特許第6,191,734号明細書
【特許文献2】米国特許第5,900,836号明細書
【特許文献3】米国特許第5,309,162号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシステムの欠点は、追加的移相器の要件であり、これにより、このシステムはより複雑で高価なものとなっている。さらに、この追跡システムは、ジャイロスコープエラーの推定を実行しておらず、したがって、このアンテナは、障害物により信号経路が隠されると、すぐ後にその方向を喪失してしまうことになろう。
【0007】
特許文献2のシステムは、小さな障害物による信号変動(信号を完全に中断するわけではなく、短い時間その強度を減少させるのみ)にも影響を受ける可能性がある。
【0008】
特許文献3のシステムは方向センサを使用しないので、信号受信が障害物により中断されると、その方向を保つことができなくなる。
【0009】
本発明の目的は、取り付けられている車両の動きに拘わらず、選択された衛星の方向へアンテナビームを保つ、安価な追跡システムを提供することである。また、ビル、木、トンネル、橋、丘などのような、電波に対して非透過である障害物により、受信が一時的に中断した間でさえ、アンテナの方向付けが保たれることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらおよび他の利点を達成するために、本発明の目的に従う平坦なモバイルアンテナの追跡システムは、以下を含んでいる:
角速度センサ(ジャイロスコープ);
縦軸に向くアンテナの方向を測定するセンサ(傾斜計);
上記センサの測定値に応じて、アンテナビームの方向についての必要な修正を計算する制御ブロック;
アンテナの方向を変える少なくとも1つのモータ;
所望する方向にアンテナを動かすモータを駆動する、駆動電子機器;
電子ビーム方向付け用ブロック;
システムの全ブロックに対して電源を提供するために、車両の電気ネットワークの電圧を適当な値へ変換する電源ブロック。
【0011】
アンテナパネルに固定されたデカルト座標系の軸の1つに、それぞれ平行に取り付けられた、角速度用の3つのセンサを用いるのが望ましい。
【0012】
この場合には、方位角、およびアンテナビームの仰角の必要な修正を得るためのフォワード座標変換、およびジャイロスコープオフセットの修正を得るためのリバース座標変換を実行するのが望ましい。
【0013】
追跡システムの特定の変形では、2つのジャイロスコープの軸は仰角平面上にあり、第3ジャイロスコープの軸は仰角平面と直交している。
【0014】
アンテナパネルは、アンテナビームを偏向させる1つの軸で、小さな角度だけ機械的に移動し、一方、アンテナビームは、電子制御により他の軸上の固定位置に位置決めされ、さらに、衛星に向く方向に近い2つ以上の位置で測定される信号強度は、ジャイロスコープオフセットの修正の計算、およびアンテナビームの方向の調整に使用されるのが望ましい。
【0015】
この場合には、アンテナビームは、衛星に向く方向に最も近い固定位置で、より長期間留まり続ける方法で制御されるのが望ましく、一方、それが遥かに短い間隔で隣接する固定位置へ切り換えられ、その結果、平均信号強度ができるだけ高く保たれることになる。
【0016】
オフセットの追加補償は、水平あるいは水平面に近い軸のジャイロスコープに対して実行されるのが望ましい。
【0017】
こうした補償を実行する可能な変形の1つは、所与の時間間隔の間、軸が水平あるいは水平面に近いジャイロスコープセンサのうちの、どの1つの出力値を積分することであり、その結果が正であるなら、対応するジャイロスコープのオフセットは正の方向に修正され、その結果が負であるなら、そのオフセットは負の方向に修正される。
【0018】
こうした補償の他の可能な変形は、両方のジャイロスコープの出力信号を水平面上にある角速度ベクトルへ変換することであり、両方のジャイロスコープの軸の傾斜角を得るためにセクターが積分され、さらに、その角度が言及されたジャイロスコープの軸の傾斜角を測定する2つの傾斜センサ(傾斜計)の出力信号と比較され、さらにこの比較の結果が、言及されたジャイロスコープの推定されたオフセットを調整するために使われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従う追跡システムの利点は、以下の通りである:安価なセンサを使用すること、追跡エラーへのジャイロスコープエラーの影響力の軽減、アンテナと機械のみによるビーム運動とを比較した受信信号の測定強度を用いる、ジャイロスコープエラーの修正速度の改善、長期間アンテナビームが衛星に向く方向に近く保たれていることによる平均信号-ノイズ比(SNR)の改善。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1には、本発明に従う追跡システムを実現する、1つの可能な変形が示されている。これは角速度用センサ(ジャイロスコープ)1、傾斜センサ2、制御ブロック3、駆動ブロック4、モーター7、電子ビーム制御用ブロック5、電子ビーム方向付けを伴うアンテナパネル8、ダウンコンバータ9、方向性結合器10、解読ブロック11、およびRF検出器6を含んでいる。
【0021】
ジャイロスコープセンサ1の出力、および傾斜センサ2の出力は、RF検出器6および受信信号の解読用ブロック11の出力と同様に、制御ブロック3へ供給される。制御ブロック3の出力の1つは電子ビーム制御用ブロック5の入力へ供給され、他の出力は駆動ブロック4の入力に供給され、さらに、その出力はアンテナパネル8を動かすモータ7へ供給される。アンテナパネル8の出力はダウンコンバータ9の入力へ供給され、その出力は、方向性結合器10を通して、RF検出器6および解読ブロック11の入力へ接続されている。
【0022】
角速度センサは、例えば、クォーツ、圧電性結晶、MEMS、または他の技術に基づく、ソリッドステートのジャイロスコープであってもよい。これらはアンテナパネル8に固定され、特定の軸の周りの回転速度に比例する信号を提供する。本実施例では、アンテナパネル8に固定されたデカルト座標系Oxyzの軸と共直線性の3つのジャイロスコープ1a、1b、1c(図2)が使用されている。
【0023】
傾斜センサ2は、ソリッドステート、液体ベース、あるいは水平面へ向くアンテナパネルの傾きの電子測定を可能にする、他の原則に基づく装置であってもよい。本変形では、アンテナパネル8に固定された2つの傾斜センサ2a、2bが使用されている。また、水平面に向く2つのアンテナパネル軸の傾きを測定する、2軸センサを使用可能である(図3)。これが制御ブロックによりデータ処理を簡素化するので、これらの軸は、2つのジャイロスコープ1a、1bの軸と同じであることが望ましい。
【0024】
図5は、衛星追跡中に制御ブロックにより実行される、データ処理のブロック図である。ジャイロスコープ1aからの出力信号は減算ブロック12の第1入力へ供給され、その第2入力へオフセットメモリωx013からの出力信号が供給される。ジャイロスコープ1bからの出力信号は減算ブロック14の第1入力へ供給され、その第2入力へオフセットメモリωy015からの出力信号が供給される。ジャイロスコープ1cからの出力信号は減算ブロック16の第1入力へ供給され、その第2入力へオフセットメモリωz017からの出力信号が供給される。減算ブロック12、14、16からの出力信号は、フォワード座標変換用ブロック18の入力へ供給される。フォワード座標変換用ブロック18の第1出力は、加算器19の第1入力へ供給され、その第2入力はスケーリングブロック20の出力へ供給される。フォワード座標変換用ブロック18の第2出力は、加算器21の第1入力へ供給され、その第2入力はスケーリングブロック22の出力へ供給される。加算器19の出力は積分器23の入力へ供給され、その出力は減算ブロック24の第1入力へ供給される。減算ブロック24の第2入力は、方位角スキャニングブロック25の出力へ供給される。減算ブロック24の出力はモータ制御ブロック26の入力へ供給され、その出力は駆動ブロック4の入力へ供給される。加算器21の出力は積分器27の入力へ供給され、その出力はビーム選択ブロック28の入力へ供給される。ビーム選択ブロック28の出力は電子ビーム制御用ブロック5の入力へ供給される。
【0025】
RF検出器6からの信号は、スイッチ29の入力、信号低下検出器30の入力、および符号反転器ブロック31の入力へ供給される。スイッチ29の第1出力は第1ビームメモリ32の入力へ供給され、一方、その第2出力は第2ビームメモリ33の入力へ供給される。第1ビームメモリ32の出力は計算ブロック34の第1入力へ供給され、その第2入力は第2ビームメモリ33の出力へ供給される。計算ブロック34の出力は減算ブロック35の第1出力へ供給され、その第2入力は積分器27の出力へ供給される。減算ブロック35の出力は、リバース座標変換用ブロック36の第1入力へ供給される。
【0026】
符号反転器ブロック31の出力は積分器37の入力へ供給され、その出力はメモリブロック38の入力へ供給される。メモリブロック38の出力は、リバース座標変換用ブロック36の第2入力へ供給される。リバース座標変換用ブロック36の第1出力は符号検出ブロック39の入力へ供給され、その出力はスケーリングブロック40の入力へ供給される。リバース座標変換用ブロック36の第2出力は符号検出ブロック41の入力へ供給され、その出力はスケーリングブロック42の入力へ供給される。リバース座標変換用ブロック36の第3出力は符号検出ブロック43の入力へ供給され、その出力はスケーリングブロック44の入力へ供給される。
【0027】
スケーリングブロック40の出力は減算ブロック45の第2入力へ供給され、その第1入力はオフセットメモリωx013の出力へ供給される。減算ブロック45の出力は、オフセットメモリωx013の入力へ供給される。スケーリングブロック42の出力は減算ブロック46の第2入力へ供給され、その第1入力はオフセットメモリωy015の出力へ供給される。減算ブロック46の出力は、オフセットメモリωy015の入力へ供給される。スケーリングブロック44の出力は減算ブロック47の第2入力へ供給され、その第1入力はオフセットメモリωz017の出力へ供給される。減算ブロック47の出力は、オフセットメモリωz017の入力へ供給される。
【0028】
図6は、水平面の近くに軸があるジャイロスコープ1aのうちの1つの、追加的補償のための1つの変形のブロック図を示している。同様の補償は、第2ジャイロスコープ1b用に使用される。ジャイロスコープ1aの出力信号は減算ブロック48の第1入力へ供給され、その第2入力はオフセットメモリωx013の出力へ供給される。減算ブロック48の出力は積分器49の信号入力へ供給され、そのリセット入力はタイマブロック50の第1出力へ供給される。積分器49の出力は符号検出器ブロック51の入力へ供給され、その出力はスケーリングブロック52の入力へ供給される。スケーリングブロック52の出力はスイッチ53の信号入力へ供給され、その制御入力はタイマブロック50の第2出力へ供給される。スイッチ53の出力は加算器54の第1入力へ供給され、その第2入力はオフセットメモリωx013の出力へ供給される。加算器54の出力は、オフセットメモリωx013の入力へ供給される。
【0029】
図7は、水平面の近くに軸があるジャイロスコープ1a、1bの追加補償のための、別の変形のブロック図を示している。ジャイロスコープ1aの出力ωは減算ブロック55の第1入力へ供給され、その第2入力はオフセットメモリωx013の出力へ供給される。減算ブロック55の出力は座標変換用第1ブロック56の第1入力へ供給され、その第2入力は積分器57の出力へ供給される。座標変換用第1ブロック56の出力は加算器58の第1入力へ供給され、その第2入力はスケーリングブロック59の出力へ供給される。加算器58の出力は積分器60の入力へ供給される。減算ブロック61の第1入力は傾斜計2bの出力へ供給され、一方、その第2入力は積分器60の出力へ供給される。減算ブロック61の出力は、スケーリングブロック59、62の入力へ供給される。減算ブロック63の第1入力はオフセットメモリωx013の出力へ供給され、一方、その第2入力はスケーリングブロック62の出力へ供給される。減算ブロック63の出力はオフセットメモリωx013の入力へ供給される。
【0030】
ジャイロスコープ1bの出力ωは減算ブロック64の第1入力へ供給され、その第2入力はオフセットメモリωy015の出力へ供給される。減算ブロック64の出力は座標変換用第2ブロック65の第1入力へ供給され、その第2入力は積分器60の出力へ供給される。座標変換用第2ブロック65の出力は加算器66の第1入力へ供給され、その第2入力はスケーリングブロック67の出力へ供給される。加算器66の出力は、積分器57の入力へ供給される。減算ブロック68の第1入力は傾斜計2aの出力へ供給され、一方、その第2入力は積分器57の出力へ供給される。減算ブロック68の出力は、スケーリングブロック67、69の入力へ供給される。減算ブロック70の第1入力はオフセットメモリωy015の出力へ供給され、一方、その第2入力はスケーリングブロック69の出力へ供給される。減算ブロック70の出力はオフセットメモリωy015の入力へ供給される。
【0031】
本発明に従う追跡システムの動作は以下の通りである:
制御ブロック3は2つのモード―獲得モードおよび追跡モードで動作する。獲得モードの間、モータ7は、アンテナパネル8を、縦軸の周りに特定の速度で回転させるよう命令される。同時に、電子ビーム制御用ブロック5は、アンテナの全視野をカバーするために、アンテナビームを連続して切り換え、RF検出器6は受信信号の強度を測定する。説明された動作は、信号強度の極大が見つかるまで続けられる。その後に、解読ブロック11は、受信信号の移送ストリームから、制御ブロック3により定義された値と比較される識別データを読み出す。受信データが定義された値にマッチしない場合、制御ブロック3は獲得モードを継続する。識別データが内部の値にマッチすると、制御ブロック3は追跡モードに入る。このモードでは、制御ブロック3は、衛星方向へ向くアンテナパネルの方向付けの変化の計算に、ジャイロスコープブロック1とRF検出器6からの信号を用い、さらに、アンテナビームを常に衛星へ向けておくよう、駆動ブロック4および電子ビーム制御用ブロック5に必要な制御信号を提供する。
【0032】
動作の詳述は以下の通りである:
オフセットメモリωx013のコンテンツは、第1ジャイロスコープ1aの信号値ωから減算される。オフセットメモリωx013内に含まれる初期値は、静止状態中にジャイロスコープ信号の測定で取得することができ、あるいは特定のジャイロスコープのオフセットに依存した温度を定義する、予め準備されたテーブルから読み出すことができる。同じ動作は、ジャイロスコープ1b、1cの出力信号ω、ωに対しても実行される。結果として得られる補償信号は、ω’、ω’、ω’とラベル付けられた、デカルト座標系Oxyz(図4)の3本の軸に向かうアンテナパネルの角速度に対応している。これらの3つの値は、フォワード座標変換用ブロック18により、座標系Oxszの軸に共線な角速度に変換される。ここで、sは衛星に向かうベクトルである。その結果、仰角軸ωθ上、および方位角軸ωφ上の、両方の角速度が得られる。積分器23、27によるこれらの積分により、衛星への方向と、方位角φ、および仰角θによる、アンテナパネル軸との間の偏角が得られる。方位角スキャニングブロック25は、小振幅かつ低周波数の正弦信号を作り、それは、方位角φから減算される。結果として得られる差信号は、モータ制御ブロック26により、方位角φが方位角スキャニングブロック25の出力信号とほぼ等しく保たれる方法で処理される。その結果、モータ7は、アンテナパネルを、予想された衛星方位角の周りでゆっくり振動するように駆動する。
【0033】
符号反転器ブロック31は、RF検出器6からの信号を変化がないまま伝えるか、または、正弦信号が負であるときはRF検出器6の信号の極性を逆にし、正弦信号が正であるときは、変化なく通過させるような方法で、方位角スキャニングブロック25により形成される正弦信号と同期するよう、その極性を逆にする。符号反転器ブロック31の出力で結果として得られる信号は、方位角スキャニングブロック25の信号に対する1つの正弦期間に、積分器37により積分される。正弦期間の終わりに、積分の結果はメモリ38に格納され、積分器37の値がリセットされる。メモリ38に格納された結果は、アンテナパネルεφの方向での方位角エラーとして使用される。それは、スケーリングブロック20内で何らかの係数によりスケーリングされ、さらに方位角速度ωφに加えられる。
【0034】
ビーム選択ブロック28は、推定される仰角θの最も近くにある2つのビームを決定する。推定される仰角θに対する最小距離を有するビームは、主ビームとして考慮され、他方は二次ビームとして考慮される。ビーム選択ブロック28は、主ビームが長期にわたって選択されるよう、電子ビーム制御用ブロック5へ命令を発し、一方、二次ビームは、その方向への信号強度を測定するために十分な程度に、短い時間だけ選択される。ビーム選択ブロック28は、主ビームの信号強度が第1ビームメモリ32に格納され、一方、二次ビームの信号強度が第2ビームメモリ33に格納されるよう、ビームの切り換えにスイッチ29を同期させる。両ビームメモリ32、33内に格納された値は、計算ブロック34により、アンテナパネルに向かう衛星の本当の仰角θRSSIの計算に使用される。減算ブロック35は、θRSSIと、ジャイロスコープ測定により得られた仰角θとの間の差を生成し、仰角エラーεθをその結果として与える。それは、スケーリングブロック22で何らかの係数によりスケーリングされ、仰角角速度ωθに加えられる。
【0035】
両エラーは、それぞれデカルト座標系Oxyz(図4)の軸Ox、Oy、Ozに対して共線的である3つの成分に変換する、リバース座標変換用ブロック36により使用される。これらの全ては、対応する成分が正であるなら+1の結果を与え、成分が負であるなら−1の結果を与える、対応する符号検出器(それぞれ39、41、43)により処理される。3つの符号検出器39、41、43からの出力値は、対応するスケーリングブロック40、42、44でスケーリングされ、その結果、3つのジャイロスコープε、ε、εのオフセットに適用される必要がある修正を提供する。全ての修正は、それぞれのオフセットメモリ13、15、17のコンテンツから、それぞれのブロック45、46、47を引くことにより減算される。減算の結果は、同じオフセットメモリに戻され、格納される。
【0036】
信号ドロップ検出器30は、受信信号の強度をチェックする。信号強度が指定された閾値より降下すると、それは、アンテナと衛星との間の何らかの障害物による、信号受信の中断の間に検出される信号のノイズに起因して、ωx0、ωy0、ωz0、φ、θが変化してしまうのを防ぐために、εφおよびεθエラーをクリアする。この場合、アンテナビームの方向は、ジャイロスコープ信号のみにより制御される。
【0037】
説明されたアルゴリズムは、衛星への推定された方向の周りの異なるポイントの信号強度の測定値に基づいて、2つの独立エラー値εφ、εθを計算可能である。しかしながら、リバース座標変換では、特定の3つのジャイロスコープla、1b、1cの修正ε、ε、εに対する単一の解決策は全くない。この不明確さを解消するために、軸が水平面の近くにあるジャイロスコープ1a、1bのオフセットの追加修正が適用される。
【0038】
図6には、追加センサを使用しない、こうした修正の1つの変形が示されている。ジャイロスコープ1aの1つの出力信号から、オフセットメモリ13に格納された値ωx0が減算され、その結果、修正された信号ω’が提供される。タイマ50で決定された期間、それは積分器49によりさらに積分される。積分の結果が正であるときは、符号検出器51は出力信号として+1を生成し、結果が負であるときは、−1を生成する。結果として得られる値は、スケーリングブロック52において特定の係数を乗算され、さらに積分期間の終わりに、スイッチ53により加算器54へ供給され、そこでオフセットメモリ13に格納されている値に加えられる。加算の結果は、オフセットメモリ13に戻されて、格納される。積分期間の終わりに、タイマ50は積分器49の値をリセットする。説明された動作の結果、格納されたオフセット値ωx0は、積分器出力での正の値を伴う期間の数が、負の値を伴う期間の数と等しくなるまで、上下方向へ更新される。同じ動作は、ジャイロスコープ1bに対して適用される。
【0039】
図7には、傾斜計を用いる、軸が水平面の近くにあるジャイロスコープ1a、1bのオフセット修正の他の変形が示されている。ジャイロスコープ1aの1つの出力信号から、オフセットメモリ13に格納された値ωx0が減算され、その結果、修正された信号ω’が提供される。ブロック56により実行される座標変換を用いて、信号は、ベクトルが傾斜計2bの検出軸に対して共線的であり、水平面に向かう軸Oyの傾きを測定する角速度に変換される。さらに、変換された角速度は、積分器60により積分される。積分の結果は、減算ブロック61において、傾斜計2bからの信号と比較される。差の値は、スケーリングブロック59、62において、特定の係数により乗算される。スケーリングブロック59からの結果は、加算器58によるブロック56での座標変換からの結果の修正に使用され、一方、スケーリングブロック62からの結果は、減算ブロック63により、オフセットメモリ13に格納された値から減算される。
【0040】
同じ手順は、ジャイロスコープ1bの信号に適用される。その出力信号から、オフセットメモリ15に格納された値ωy0が減算され、結果として、修正された信号ω’が提供される。ブロック65により実行される座標変換を用いて、信号は、ベクトルが傾斜計2aの検出軸に対して共線的であり、水平面に向かう軸Oxの傾きを測定する角速度に変換される。さらに、変換された角速度は、積分器57により積分される。積分の結果は、減算ブロック61において、傾斜計2bからの信号と比較される。差の値は、スケーリングブロック67、69において、特定の係数により乗算される。スケーリングブロック67からの結果は、加算器66によるブロック65での座標変換からの結果の修正に使用され、一方、スケーリングブロック69からの結果は、減算ブロック70により、オフセットメモリ15に格納された値から減算される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に従う追跡システムのブロック図である。
【図2】アンテナパネルに固定されたデカルト座標系における、ジャイロスコープの方向を示す図である。
【図3】アンテナパネルに固定されたデカルト座標系の軸に対して傾いたセンサの方向と、水平面上への投影を示す図である。
【図4】アンテナパネルに固定されたデカルト座標系の軸に対応する、角速度ベクトルを示す図である。
【図5】本発明に従う追跡システムの制御ブロックを実現する変形を表す図である。
【図6】軸が水平面の近くであるジャイロスコープの1つのオフセット値の補償を実行する、他の変形のブロック図である。
【図7】軸が水平面の近くであるジャイロスコープのオフセット値の補償を実行する、他の変形のブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
1 角速度用センサ、2 傾斜センサ、3 制御ブロック、4 駆動ブロック、5 電子ビーム制御用ブロック、7 モーター、8 アンテナパネル、9 ダウンコンバータ、10 方向性結合器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦なモバイルアンテナのための追跡システムであって、
その軸の周りのアンテナの回転を検出する、角速度センサ(1)と、
縦軸に向くアンテナの傾きを測定するセンサ(2)と、
センサ(1、2)の出力、および駆動ブロック(4)および電子ビーム制御用ブロック(5)の入力に接続される、アンテナビームの方向の必要な修正を計算する制御ブロック(3)と、
アンテナの方向を変え、さらに駆動ブロック(4)の出力およびアンテナパネル(8)に接続される少なくとも1つのモータ(7)と、
アンテナパネル(8)に接続された、電子ビーム制御用ブロック(5)と、
車両の電気ネットワークの電圧を、システムの全ブロックに電源を提供する適当な値へ変換する電源ブロックとを含んでいるシステム。
【請求項2】
アンテナパネル(8)に固定されたデカルト座標系の軸に共線的である、3つの角速度センサ(la、1b、および1c)が使用されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
センサ(1a、1b、1c)からの情報を用いて、角速度センサ(1a.1b、1c)のオフセットの修正を適用するリバース座標変換と同様に、アンテナパネル(8)の方位角および仰角の必要な修正を得るために、フォワード座標変換が実行される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
アンテナパネル(8)のビームが傾いている平面内に、角速度センサの2つの軸があり、一方、第3角速度センサの軸がこの平面と直交している、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
アンテナパネル(8)が1つの軸で機械的スキャニングを実行し、一方、アンテナビームは、電子制御により他の軸の固定位置に位置決めされ、さらに、衛星に向く方向に近い2つ以上の位置の信号強度が、角速度センサ(la、1b、1c)のオフセットの修正の計算、および電子ビーム制御用ブロック(5)によるアンテナビームの方向の微調整に使用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
電子ビーム制御用ブロック(5)が、最大許容時間の間ビームを現在の衛星の方向の最も近くに維持し、一方、受信信号の平均強度の減少を最小限にする最短時間の間、ビームを隣接する位置へ維持する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
水平面に対して同一平面あるいは同一平面に近い平面内に軸がある、角速度センサ(la、1b)のオフセットの追加修正が適用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
水平面に対して同一平面あるいは同一平面に近い平面内に軸がある、角速度センサ(la、1b)の出力値が、一定の時間間隔で積分され、さらに、積分の結果が正であるときは、対応するセンサ(1a、1b)のオフセットが特定のステップにより正の方向へ修正され、積分の結果が負であるときは、対応するセンサ(1a、1b)のオフセットが特定のステップにより負の方向へ修正される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
水平面に対して同一平面あるいは同一平面に近い平面内に軸がある、角速度センサ(la、1b)の出力値が、角速度に変換され、そのベクトルが水平面内にあり、前記角速度センサの軸の傾斜角を得るためにこの角速度が積分され、さらに、取得された傾斜角が水平面に向く前記軸の傾きを感知する傾斜計(2)の測定値と比較され、さらに、この比較の結果が、前記角速度センサ(1a,1b)のオフセットを調整するために使われる、請求項7に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−521044(P2006−521044A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504048(P2006−504048)
【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際出願番号】PCT/BG2004/000004
【国際公開番号】WO2004/079859
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505334721)レイサット・サイプラス・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】RAYSAT CYPRUS LIMITED
【Fターム(参考)】