説明

平版印刷版原版および平版印刷版の作製方法

【課題】弱アルカリ性〜弱酸性水溶液による簡易現像処理型の平版印刷版原版において、現像により非画像部における顔料を良好に除去することができ、非画像部における残色をなくして検版性を高め、かつ印刷中の汚れも防止することのできる平版印刷版原版およびこれを用いた平版印刷版の作製方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層、及び前記高分子化合物に吸着しない顔料を含有する感光層をこの順に有するpHが2〜11の現像液で現像可能な平版印刷版原版、並びに、該平版印刷版原版をレーザーで画像露光した後、pHが2〜11の現像液の存在下で非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pHが2〜11の水性現像液による現像が可能な平版印刷版原版、特に、汚れと残色に優れた平版印刷版を提供する平版印刷版原版、並びに、当該平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版としては、親水性表面を有する支持体上に感光性樹脂層を設けた構成を有し、その製版方法として、通常は、リスフィルムを介して面露光(マスク露光)した後、非画像部を高pHの現像液により除去することにより所望の印刷版を得ていた。しかし近年のデジタル化技術により、レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報にしたがって版面に走査することで、リスフィルムを介することなく直接版面に露光処理を行うコンピュータートゥプレート(CTP)技術が開発され、またこれに適応した感光性平版印刷版(平版印刷版原版)が開発されている。
このようなレーザー光による露光に適した平版印刷版原版として、重合性感光層を用いた平版印刷版原版を挙げることができる。重合性感光層は光重合開始剤または重合開始系(以下、単に開始剤または開始系ともいう)を選択することで、他の従来の感光層に比べ高感度化が容易である。
レーザー光源としては、405nmあるいは830nmの半導体レーザー、FD−YAGレーザーなどが用いられる。近年、システムコスト、取扱性の観点から、405nmの半導体レーザーを搭載したCTPシステムが普及している。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、上述のような露光の後、不要な画像記録層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を不要化または簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
これに対して、簡易な製版方法の一つとして、弱アルカリ性〜弱酸性水溶液による簡易現像処理が挙げられる。このような現像処理には通常pH11以下の水溶液が用いられる。例えば、特許文献1には、親水性支持体、および、ラジカル重合性エチレン性不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤および赤外吸収染料を含有し、赤外レーザー露光により硬化し、しかも60質量%以上の水を含有しpH2.0〜10.0の水性現像液で現像可能な親油性感熱層からなる平版印刷版原版を赤外レーザーで画像様に露光し、水性現像液で感熱層の未硬化領域を除くことからなる平版印刷版原版の処理方法が記載されている。
【0004】
一方、平版印刷版原版には、画像形成性を確認し易くするために、平版印刷版原版の画像記録層に検版剤(着色剤、染料や顔料)を含有させることが一般的である。
中でも光重合型の平版印刷版原版の画像記録層に含有させる検版剤としては、光重合を阻害しないという利点を有することから顔料がよく用いられている。この顔料の分散性を上げるためにポリマーで被覆したり、酸基、塩基等を顔料表面に置換することが一般的である。しかしながら、弱アルカリ性〜弱酸性水溶液による簡易現像処理型の平版印刷版原版においては、現像により非画像部における顔料を完全に除去することができず、非画像部に残色が生じ、印刷中に汚れを発生するという問題点があった。なお、従来の高pHのアルカリ現像液を用いる平版印刷版原版においては、現像時にアルカリ水溶液によってアルミニウム支持体表面を若干溶解させていること、アルカリ水溶液によって下塗り層が除去されること、の2点によってどのような顔料を使用していても残色や汚れという問題は生じない。したがって、前記問題点は、弱アルカリ性〜弱酸性現像液を用いる平版印刷版原版に特有の現象である。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0013968号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、弱アルカリ性〜弱酸性水溶液による簡易現像処理型の平版印刷版原版において、現像により非画像部における顔料を良好に除去することができ、非画像部における残色をなくして検版性を高め、かつ印刷中の汚れも防止することのできる平版印刷版原版およびこれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、支持体上に、少なくとも支持体吸着性基及び親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層及び前記高分子化合物に吸着しない顔料を含有する感光層をこの順に有しpHが2〜11の現像液で現像可能な平版印刷版原版及びこれを用いた平版印刷版の作製方法により、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
(1) 支持体上に、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層、及び前記高分子化合物に吸着しない顔料を含有する感光層をこの順に有するpHが2〜11の現像液で現像可能な平版印刷版原版。
(2) 前記顔料が、顔料吸着基を有する顔料分散剤で分散された顔料であって、前記親水性基と前記顔料吸着基が、以下の条件1、2の少なくとも何れかを満たすことを特徴とする上記(1)に記載の平版印刷版原版。
条件1:親水性基が中性基であり顔料吸着基が酸性基、中性基又は塩基性基である
条件2:親水性基が塩基性基であり顔料吸着基が酸性基又は中性基である
(3) 前記親水性基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする上記(2)に記載の平版印刷版原版。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、Lは2価の連結基を表し、R〜Rは、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表し、同一官能基内のL、L、R、R、R、R、R、R、Rが互いに結合して環を形成してもよい。nは繰り返し単位の平均値を表す数を表し、Xはカウンターアニオンを表し、Mはカウンターカチオンを表す。
(4) 前記親水性基が、前記一般式(N−1)〜(N−7)、(B−1)から選択される官能基であることを特徴とする上記(3)に記載の平版印刷版原版。
(5) 前記顔料吸着基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする上記(2)に記載の平版印刷版原版。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、R11〜R18は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合
して環を形成してもよい)を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR19を表し、Yは、共有結合、酸素原子、硫黄原子、NR19、COまたはSOを表し、R19はR11と同義である。同一官能基内のL、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18が互いに結合して環を形成してもよい。
(6) 前記顔料吸着基が、前記一般式(PA−2)、(PA−5)、(PN−1)、(PN−2)、(PB−1)、(PB−10)、(PB−11)、(PB−12)から選択される官能基であることを特徴とする上記(5)に記載の平版印刷版原版。
(7) 前記感光層が、更にラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、増感色素、共増感剤及びバインダーポリマーを含有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
(8) 前記感光層の上に保護層を有することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0012】
(9) 支持体上に、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層、及び前記高分子化合物に吸着しない顔料を含有する感光層をこの順に有する平版印刷版原版をレーザーで画像露光した後、pHが2〜11の現像液の存在下で非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
(10) 前記顔料が、顔料吸着基を有する顔料分散剤で分散された顔料であって、前記親水性基と前記顔料吸着基が、以下の条件1、2の少なくとも何れかを満たすことを特徴とする上記(9)に記載の平版印刷版の作製方法。
条件1:親水性基が中性基であり顔料吸着基が酸性基、中性基又は塩基性基である
条件2:親水性基が塩基性基であり顔料吸着基が酸性基又は中性基である
(11) 前記親水性基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする上記(10)に記載の平版印刷版の作製方法。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、Lは2価の連結基を表し、R1〜R7は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表し、同一官能基内のL、L、R、R、R、R、R、R、Rが互いに結合して環を形成してもよい。nは繰り返し単位の平均値を表す数を表し、Xはカウンターアニオンを表し、Mはカウンターカチオンを表す。
(12) 前記親水性基が、上記一般式(N−1)〜(N−7)、(B−1)から選択される官能基であることを特徴とする上記(11)に記載の平版印刷版の作製方法。
(13) 前記顔料吸着基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする上記(10)に記載の平版印刷版の作製方法。
【0015】
【化4】

【0016】
式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、R11〜R18は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR19を表し、Yは、共有結合、酸素原子、硫黄原子、NR19、COまたはSOを表し、
19はR11と同義である。同一官能基内のL、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18が互いに結合して環を形成してもよい。
(14) 前記顔料吸着基が、前記一般式(PA−2)、(PA−5)、(PN−1)、(PN−2)、(PB−1)、(PB−10)、(PB−11)、(PB−12)から選択される官能基であることを特徴とする上記(13)に記載の平版印刷版の作製方法。
(15) 前記感光層が、更にラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、増感色素、共増感剤及びバインダーポリマーを含有することを特徴とする上記(9)〜(14)のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
(16) 前記感光層の上に保護層を有することを特徴とする上記(9)〜(15)のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
(17) 前記レーザーで画像露光した後、70℃以上の温度で加熱してから、pHが2〜11の現像液の存在下で非露光部の感光層を除去することを特徴とする上記(9)〜(16)のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非アルカリ性〜弱酸性水溶液による簡易現像処理型の平版印刷版原版において、現像により非画像部における顔料を良好に除去することができ、非画像部における残色をなくして検版性を高め、かつ印刷中の汚れも防止することのできる平版印刷版原版およびこれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者の検討によれば、簡易現像処理型平版印刷版原版において、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層に、顔料吸着基を用いた顔料分散剤により分散された顔料を含有する感光層を適用した場合、ある特定の条件において残色と汚れが顕著となることが判明した。即ち、これらの顔料吸着基が下塗り層中の(A2)親水性基よりも低い酸性を有するか、下塗り層中の(A2)親水性基の塩基性よりも低い塩基性を有する場合に、残色や汚れが顕著であった。これは、顔料に対する吸着性が顔料分散剤中の顔料吸着基よりも下塗り層中の(A2)親水性基の方が強いために、平版印刷版原版作製時の感光層塗布後に、顔料から顔料分散剤がはずれて下塗り層中の(A2)親水基と置き換わって下塗り層に吸着し、その結果、現像後も顔料が下塗り層の表面に残存し〔下塗り層は(A1)支持体吸着性基が存在するために弱アルカリ性〜弱酸性現像液では除去されない〕、前記残色と汚れの問題を引き起こすものと推測される。本発明の平版印刷版原版においては、下塗り層中の(A2)親水性基を中性基として顔料の吸着を抑制するか、(A2)親水性基と顔料吸着基とを異なる性質とすることにより、顔料の下塗り層への吸着を抑制し、上記問題点を解決することができた。
【0019】
以下、本発明の平版印刷版原版について詳細に説明する。本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層及び前記高分子化合物に吸着しない顔料を含有する感光層をこの順に有するpHが2〜11の現像液で現像できる平版印刷版原版である。
【0020】
〔下塗り層〕
本発明における平版印刷版原版の下塗り層は、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物(以下、単に高分子化合物と称することもある)を必須成分として含有し、必要に応じて界面活性剤、重合禁止剤、開始剤、増感色素、共増感剤等の任意成分を含むことができる。
以下に、下塗り層を形成する各成分について説明する。
【0021】
<高分子化合物>
本発明で用いられる高分子化合物について説明する。
本発明で用いられる高分子化合物とは、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物である。
【0022】
(A1)支持体吸着性基
本発明に用いられる支持体吸着性基は、用いられる支持体によって種々選択することができるが、例えば、平版印刷版原版に従来から好適に使用されているアルミニウム支持体の場合、その表面処理によって具体的な支持体吸着性基は異なるが、リン酸基及びその塩基、ホスホン酸基及びその塩基、アンモニウム基、シロキサン基、β−ジカルボニル基、カルボン酸基及びその塩基等の官能基が挙げられる。好ましくは、リン酸(塩)基、ホスホン酸(塩)基、アンモニウム基、シロキサン基、β−ジカルボニル基、カルボン酸(塩)基である。支持体吸着性は併用することができる。
本発明に用いられる高分子化合物における、支持体吸着性基の導入量としては、0.01mmol/g以上10mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以上5mmol/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以上3mmol/g以下が特に好ましい。
【0023】
(A2)親水性基
本発明に用いられる親水性基は、通常親水性官能基として知られる官能基であれば何れも好適に使用することができるが、中性官能基、若しくは塩基性官能基であることが好ましい。
中性官能基としては、以下の一般式(N−1)〜(N−11)で表される官能基が好ましく、(N−1)〜(N−7)で表される官能基がより好ましい。
【0024】
【化5】

【0025】
式中、Lは高分子主鎖に連結するための2価の連結基を表し、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子、珪素原子、水素原子、ハロゲン原子および硼素原子から選択された1種以上によって形成される。Lは2価の連結基を表し、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子、珪素原子、水素原子、ハロゲン原子および硼素原子から選択された1種以上によって形成される。L及びLの具体例としては、以下のユニットを組み合わせて形成される2価の連結基が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
【化6】

【0027】
〜Rは、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表す。
【0028】
アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基は置換基を有していてもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ノルボルニル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、2-クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N-シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N-フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N-メチルベンゾイルアミノプロピル基、2-オキソエチル基、2-オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N-メチルカルバモイルエチル基、N,N-ジプロピルカルバモイルメチル基、N-(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N-メチル-N-(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N-エチルスルファモイルメチル基、N,N-ジプロピルスルファモイルプロピル基、N-トリルスルファモイルプロピル基、N-メチル-N-(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1-プロペニルメチル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、2-メチルプロペニルメチル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等が挙げらる。
【0029】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェ
ニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N-フェニルカルバモイルフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等が挙げられる。
【0030】
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、シンナミル基、2-クロロ-1-エテニル基等が挙げられる。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0031】
〜Rとしては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子が好ましく、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−NRR’、−COOR、−CONRR’、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子がより好ましく、アルキル基、水素原子が特に好ましく、炭素数4以下のアルキル基、水素原子が最も好ましい。
【0032】
同一官能基内に存在するL、L、R、R、R、R、R、R、Rは、任意の2種が互いに結合して環を形成してもよい。
【0033】
nは繰り返し単位の平均値を表す数であり、以下の式に従って算出される値である。
【0034】
【数1】

【0035】
例えば、繰り返し単位が2の官能基が20モル、3の官能基が30モル、4の官能基が30モル、5の官能基が15モル、6の官能基が5モルの場合、以下の計算式によりnは3.55となる。
n=(2×20+3×30+4×30+5×15+6×5)/(20+30+30+15+5)=3.55。
nは1〜100の数であることが好ましく、2〜70の数であることがより好ましく、3〜60の数であることが特に好ましい。
【0036】
で表されるカウンターアニオンの具体例としては、ハロゲンアニオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニオン、カルボン酸(酢酸、安息香酸、酪酸、トリフルオロ酢酸等)アニオン、スルホン酸(メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)アニオン、硫酸アミドアニオン(シクロヘキシルアミド硫酸アニオン等)、BF、PF、テトラアリールボレートアニオン(テトラフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート等)、イミドアニオン(サッカリンアニオン等)、リン酸モノエステルアニオン、リン酸ジエステルアニオン、ホスホン酸(メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等)アニオン等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。Xで表されるカウンターアニオンとしては、ハロゲンアニオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニ
オン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、硫酸アミドアニオン、BF、PF、テトラアリールボレートアニオン、イミドアニオンが好ましく、ハロゲンアニオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、硫酸アミドアニオンがより好ましく、ハロゲンアニオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、スルホン酸アニオンが特に好ましい。
【0037】
で表されるカウンターカチオンの具体例としては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、3A族金属カチオン、4A族金属カチオン、5A族金属カチオン、6A族金属カチオン、7A族金属カチオン、8族金属カチオン、1B族金属カチオン、2B族金属カチオン、3B族金属カチオン、4B族金属カチオン、アンモニウムカチオン(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等)、ホスホニウムカチオン(テトラフェニルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等)、スルホニウムカチオン(トリフェニルスルホニウム、トリスクロロフェニルスルホニウム等)、ヨードニウムカチオン(ジフェニルヨードニウム等)、ピリジニウムカチオン(N−メチルピリジニウム等)、アジニウムカチオン(O−メチルアジニウム等)、ジアゾニウムカチオン等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。Mで表されるカウンターカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、3A族金属カチオン、4A族金属カチオン、5A族金属カチオン、6A族金属カチオン、7A族金属カチオン、8族金属カチオン、1B族金属カチオン、2B族金属カチオン、3B族金属カチオン、4B族金属カチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンが好ましく、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオンがより好ましく、アルカリ金属カチオン、総炭素数16以下のアンモニウムカチオンが特に好ましい。中性官能基は併用することができる。
【0038】
塩基性官能基としては、以下の一般式(B−1)で表されるアミノ基が好ましい。
【0039】
【化7】

【0040】
式中、R、Rは、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表す。アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基は置換基を有していてもよい。アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基の具体例は上記の通りである。また、RとRで環を形成しても良い。R、Rとしては、水素原子、炭素数10以下の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、−NRR’、−N=R、複素環基が好ましく、水素原子、炭素数8以下の、アルキル基、−NRR’、−N=R、アルケニル基、アルキニル基がより好ましく、水素原子、炭素数6以下の、アルキル基、アルケニル基が特に好ましい。塩基性官能基は併用することができる。
【0041】
本発明に用いられる高分子化合物における、親水性基の導入量としては、0.01mmol/g以上10mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以上7.5mmo
l/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以上5mmol/g以下が特に好ましい。
【0042】
(その他官能基)
本発明に用いられる高分子化合物は、上記(A1)支持体吸着性基、(A2)親水性基の他に、感光層と相互作用しうる官能基を有することが好ましい。感光層と相互作用しうる官能基としては、(A3)エチレン性不飽和二重結合基、(A4)水素結合形成基、(A5)疎水性基が挙げられる。以下これら官能基について説明する。
【0043】
(A3)エチレン性不飽和二重結合基
本発明の高分子化合物に用いられるエチレン性不飽和二重結合基としては、ラジカルによって重合反応を起こすエチレン性不飽和二重結合を含む基であれば何れも好適に使用することができるが、下記一般式(c1)〜(c3)で表される官能基が特に好ましい。
【0044】
【化8】

【0045】
一般式(c1)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
としては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、−CHQ基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
Qとしては、ハロゲン原子、シアノ基、−OR14基、−OCOR14基、−OCONR1415基、−OCOOR14基、−OSO14基、−OPO(OR14)(OR15)基、−OPOR14(OR15)基、−NR1415基、−NR14COR15基、−NR14COOR15基、−NR14CONR1516基、−NR14SO15基、−N(SO14)(SO15)基、−N(COR14)(COR15)基、−SR14基、−SOR14基、−SO14基、−SO14基、−SONR1415基、−PO(OR14)(OR15)基が挙げられ、ハロゲン原子、シアノ基、−OR14基、−OCOR14基、−OCONR1415基、−OCOOR14基、−NR1415基、−NR14COR15基、−NR14COOR15基、−NR14CONR1516基、−SR14基が特に好ましい。
ここで、R14〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基、置換基を有していても良いアルキニル基、置換基を有していても良いアルケニル基を表す。
【0046】
、Rとしては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性の高いことからより好ましい。
【0047】
Xは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R12)−を表し、R12は、水素原子、または
1価の有機基を表す。ここで、R12における1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。なかでもR12としては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基が、ラジカル反応性が高いことから好ましい。
ここで、導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0048】
【化9】

【0049】
一般式(c2)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
〜Rは、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がより好ましい。導入し得る置換基としては、一般式(c1)において記載のものと同様のものが例示される。
Yは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R12)−を表す。R12は、一般式(c1)のR12と同義であり、好ましい例も同様である。
【0050】
【化10】

【0051】
一般式(c3)において、R〜R11は、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
の1価の有機基としては、好ましくは、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。なかでも、Rとしては、水素原子、メチル基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
10、R11としては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性の高いことから
より好ましい。ここで、導入し得る置換基としては、一般式(c1)において記載のものと同様のものが例示される。
【0052】
Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13)−、または置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R13としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基が、ラジカル反応性が高いことから好ましい。
エチレン性不飽和二重結合基が高分子化合物中に含有される場合、1種のみを含有しても良いし、1種を2つ以上含有していても良いし、2種以上を含有しても良い。
本発明に用いられる高分子化合物における、エチレン性不飽和二重結合基の導入量としては、0.01mmol/g以上10mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以上5mmol/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以上3mmol/g以下が特に好ましい。
【0053】
(A4)水素結合形成基
本発明に用いられる水素結合形成基は、感光層に含まれる成分によって適宜選択することができるが、-[(CR11R12)nO]m-R13(R11、R12は夫々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基を表し、R13は水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルアシル基、アリールアシル基、アルキルアミノアシル基、アリールアミノアシル基、アルキルスルホン基、アリールスルホン基を表し、n、mは夫々独立して自然数を表す)で表されるアルキレンオキサイド基、−NR11R12(R11、R12は前記と同様である)で表されるアミノ基、−CO−で表されるカルボニル基、−N=構造を有する含窒素複素環基等の水素受容性基や、−COOHで表されるカルボン酸基、−OHで表される水酸基、−NH−で表される水素原子を有する窒素原子を含む官能基、−SHで表されるチオール基、−SO3Hで表されるスルホン酸基、−OPO(OR11)(OH)(R11は前記と同様である)で表されるリン酸基、−PO(OR11)(OH)(R11は前記と同様である)で表されるホスホン酸基等の水素供与性基が挙げられる。水素結合形成基として好ましいのは、アルキレンオキサイド基、アミノ基、カルボニル基、−N=構造を有する含窒素複素環基、カルボン酸基、水酸基、−NH−で表される水素原子を有する窒素原子を含む官能基であり、アルキレンオキサイド基、アミノ基、カルボニル基、カルボン酸基、水酸基、−NH−で表される水素原子を有する窒素原子を含む官能基がより好ましい。
【0054】
水素結合形成基は、高分子化合物中に1種のみを含有しても良いし、2種以上を含有しても良い。異なる2種の水素結合形成基を用いる場合は、水素受容性基同士か水素供与性基同士を併用することが好ましい。
本発明に用いられる高分子化合物における、水素結合性基の導入量としては、0.01mmol/g以上10mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以上5mmol/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以上3mmol/g以下が特に好ましい。
【0055】
(A5)疎水性基
本発明に用いられる疎水性基は、炭素数8以上の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。中でも炭素数8以上の、アルキル基、アリール基が好ましく、炭素数10以上の、アルキル基、アリール基がより好ましく、炭素数12以上の、アルキル基、アリール基が特に好ましい。
疎水性基は、高分子化合物中に1種のみを含有しても良いし、2種以上を含有しても良い。
本発明に用いられる高分子化合物における、疎水性基の導入量としては、0.01mmol/g以上20mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以上15mmol/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以上10mmol/g以下が特に好ましい

【0056】
本発明に用いられる高分子化合物の質量平均分子量は、5000以上500000以下が好ましく、10000以上250000以下がより好ましく、20000以上150000以下が特に好ましい。この範囲において、良好な耐汚れ性と耐刷性を得ることができる。
【0057】
本発明に用いられる高分子化合物は、上記支持体吸着性基、親水性基などの官能基を有するモノマーを適宜組み合わせて、常法に従い製造することが出来る。
【0058】
以下に本発明に用いられる高分子化合物の具体例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
上記高分子化合物P−1〜P−19の質量平均分子量を以下に示す。
P−1: 8万
P−2: 10万
P−3: 5万
P−4: 11万
P−5: 11万
P−6: 9万
P−7: 8万
P−9: 10万
P−11: 10万
P−12: 9万
P−13: 9万
P―14: 10万
P−15: 8万
P−16: 7万
P−17: 6万
P−18: 7万
P−19: 8万
【0062】
本発明の下塗り層に用いられる高分子化合物の含有率は、下塗り層全固形分に対して50質量%以上100質量%以下が好ましく、60質量%以上100質量%以下がより好ましく、70質量%以上100質量%未満が特に好ましい。
【0063】
<界面活性剤>
本発明の平版印刷版原版に用いられる下塗り層には、塗布性を改善するために界面活性剤を含有しても良い。下塗り層に含有される界面活性剤としては、後述する感光層に用いられる界面活性剤を好適に使用することができる。
本発明の下塗り層に用いられる界面活性剤の含有率は、下塗り層全固形分に対して5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上1質量%未満が特に好ましい。
【0064】
<重合禁止剤>
本発明の平版印刷版原版に用いられる下塗り層には、平版印刷版原版の安定性を改善するために重合禁止剤を含有しても良い。下塗り層に含有される重合禁止剤としては、後述する感光層に用いられる重合禁止剤を好適に使用することができる。
本発明の下塗り層に用いられる重合禁止剤の含有率は、下塗り層全固形分に対して5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上3質量%未満が特に好ましい。
【0065】
<開始剤>
本発明の平版印刷版原版に用いられる下塗り層には、平版印刷版原版の感度を改善するために開始剤を含有しても良い。下塗り層に含有される開始剤としては、後述する感光層に用いられるラジカル重合開始剤を好適に使用することができる。
本発明の下塗り層に用いられる開始剤の含有率は、下塗り層全固形分に対して5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上3質量%未満が特に好ましい。
【0066】
<増感色素>
本発明の平版印刷版原版に用いられる下塗り層には、平版印刷版原版の感度を改善するために増感色素を含有しても良い。下塗り層に含有される増感色素としては、後述する感光層に用いられる増感色素を好適に使用することができる。
本発明の下塗り層に用いられる増感色素の含有率は、下塗り層全固形分に対して5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上3質量%未満が特に好ましい。
【0067】
<共増感剤>
本発明の平版印刷版原版に用いられる下塗り層には、平版印刷版原版の感度を改善するために共増感剤を含有しても良い。下塗り層に含有される共増感剤としては、後述する感光層に用いられる共増感剤を好適に使用することができる。
本発明の下塗り層に用いられる共増感剤の含有率は、下塗り層全固形分に対して5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上3質量%未満が特に好ましい。
【0068】
<下塗り層の形成>
本発明の下塗り層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、塗布液を塗布して形成される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは0.05〜50質量%、より好ましくは0.1〜25質量%である。
【0069】
本発明の下塗り層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散または溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の下塗り層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.001〜0.5g/m2が好ましく、0.003〜0.25g/m2がより好ましく、0.005〜0.1g/m2が特に好ましい。この範囲内で、良好な感度と耐汚れ性と耐刷性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0070】
〔感光層〕
本発明における平版印刷版原版の感光層は、pHが2〜11の現像液の存在下で未露光部が除去可能な感光層であり、必須成分として、前記下塗り層の高分子化合物に吸着しない顔料を含有する。好適な形態として、感光層には、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、増感色素、共増感剤、バインダーポリマーが添加される。また、感光層は、必要に応じて、着色剤や他の任意成分を含むことができる。
感光層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対する現像液の浸透速度の制御は、バインダーポリマーを使用する方法に加えて、常法により行うことができ、例えば、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加が有用である。
【0071】
本発明における平版印刷版原版には、露光を大気中で行うために、感光層の上に、更に、保護層(オーバーコート層とも呼ばれる)を設けてもよい。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光を可能とする。
以下に、本発明に係る平版印刷版原版の感光層を構成する各成分について説明する。
【0072】
<顔料>
本発明に用いられる顔料は、下塗り層の高分子化合物に吸着しない顔料であれば何れも好適に使用することができるが、少なくとも(a)顔料に吸着する官能基(顔料吸着基)と(b)有機溶剤分散性を付与する官能基(分散基)を有する化合物(以下、顔料分散剤とも称する)で分散された顔料であることが好ましい。顔料分散剤としては、少なくとも(a)顔料吸着基を有する単位と(b)分散基を有する単位とからなる化合物であることが好ましい。
本発明に用いられる顔料分散剤における官能基(顔料吸着基または分散基)を有する単位は、官能基を含む低分子化合物(分子量1000以下)からなる単位である。この低分子化合物としては、官能基を有する単量体が挙げられ、官能基と重合性二重結合基は直接または連結鎖を介して結合している。連結鎖は任意のものでよく、通常、炭素原子、酸素
原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子、珪素原子、水素原子、ハロゲン原子および硼素原子から選択された1種以上によって形成される。
【0073】
本発明に用いられる(b)分散基としては、顔料に有機溶剤分散性を付与する基であり、このような機能を有する限り何れの官能基も好適に使用することができる。(b)分散基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基が挙げられる(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成しても良い)。
【0074】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素原子数が30以下の直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素原子数が30以下の直鎖状、分枝状、または環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素原子数が30以下のアルキニル基が挙げられる。
【0075】
アリール基の具体例としては、1個から4個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と不飽和五員環とが縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としてはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、ピレニル基等の炭素原子数が30以下のアリール基が挙げられる。また、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含むヘテロアリール基も挙げることができ、ヘテロアリール基の具体例としては、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チアナフテン、ジベンゾチオフェン、インダゾールベンズイミダゾール、アントラニル、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、アクリジン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキザリン、ナフチリジン、フェナントロリン、プテリジン等のヘテロ環から誘導される基が挙げられる。
【0076】
上記アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基は任意の置換基によって1個以上置換されていてもよい。置換基としては水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0077】
本発明の顔料に使用される顔料分散剤の分散基としては、炭素数6以上の炭化水素(アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル)基を有する官能基、ポリアルキレンオキサイド基が好ましく、炭素数9以上の炭化水素基を有する官能基、ポリアルキレンオキサイド基がより好ましい。分散基は、1種類のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。分散基は、顔料分散剤1gあたり0.05mmol以上存在することが好ましく、0.1mmol以上存在することがより好ましい。
【0078】
本発明に用いられる(a)顔料に吸着する官能基としては、顔料の種類によって種々選択することが可能である。顔料表面が酸性官能基によって置換されている場合は、アミノ基、アニリノ基等の塩基性官能基が好ましく、塩基性官能基によって置換されている場合には、カルボキシル基、燐酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、硫酸基等の酸性官能基が好ましい。また、顔料が金属を含む場合、これらの金属に配位する官能基や、顔料と類似の構造を有し、π-π相互作用等により吸着する官能基が挙げられる。これら官能基の中でも、官能基の顔料に対する吸着量が、0.01mmol/g以上であることがより好ましい。ここで言う顔料に対する吸着量とは、以下の方法によって求められた値である。
即ち、当該官能基を有する低分子化合物(分子量1000以下)を適当な溶媒に溶解させ溶液1を調製し、溶液1に使用する顔料1gを加えて室温にて4時間攪拌後フィルター濾過して溶液2を調製する。溶液1と溶液2に含まれる該官能基を有する低分子化合物をHPLCにて定量し、その減少量から顔料1gに吸着した低分子化合物量を求める方法である。
【0079】
顔料吸着基のうち、本発明に用いられる顔料吸着基は、以下の条件1、2のいずれかを満たすことが特に好ましい。
条件1:親水性官能基が中性基であり顔料吸着基が酸性基、中性基、及び塩基性基である条件2:親水性官能基が塩基性基であり顔料吸着基が酸性基、中性基である
【0080】
本発明に用いられる顔料吸着基としては、上述の如き官能基であれば何れも好適に使用されるが、酸性基としては以下の一般式(PA−1)〜(PA−5)で表される官能基が好ましい。中でも、(PA−2)、(PA−5)で表される官能基が特に好ましい。
【0081】
【化13】

【0082】
式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子、珪素原子、水素原子、ハロゲン原子および硼素原子から選択された1種以上によって形成される。Lの具体例としては、前記高分子化合物における親水性基に関して記載した2価の連結基の具体例が挙げられる。
塩基性基としては、以下の一般式(PB−1)〜(PB−12)で表される官能基が好ましい。中でも、(PB−1)、(PB−10)、(PB−11)、(PB−12)で表される官能基が特に好ましい。
【0083】
【化14】

【0084】
式中、R11〜R18は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表す。アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基は置換基を有していてもよい。R11〜R18の具体例は、前述の高分子化合物における親水性基に関して記載したR〜Rの具体例が挙げられる。R11〜R18としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、水素原子、ハロゲン基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−NRCOR’、水素原子、ハロゲン基がより好ましく、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、水素原子、ハロゲン基が特に好ましい。
Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子、珪素原子、水素原子、ハロゲン原子および硼素原子から選択された1種以上によって形成される。Lの具体例としては上記酸性基におけるLの具体例が挙げられる。
【0085】
Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR19を表し、R19はR11と同じ定義である。Xとしては、酸素原子、硫黄原子、NR19が好ましく、酸素原子、NR19が特に好ましい。
Yは、共有結合、酸素原子、硫黄原子、NR19、COまたはSOを表し、R19はR11と同じ定義である。Yとしては、共有結合、酸素原子、NR19、COが好ましく、共有結合、酸素原子、COがより好ましい。
【0086】
また、同一官能基内のL、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18が互いに結合しによって環を形成してもよい。即ち、式(PB−1)におけるL
とR11、式(PB−2)におけるLとR11とR12、式(PB−3)におけるLとR11、式(PB−4)におけるLとR11とR12、式(PB−5)におけるLとR11とR12、式(PB−6)におけるLとR11とR12とR13、式(PB−7)におけるLとR11とR12とR13、式(PB−8)におけるLとR11とR12とR13、式(PB−9)におけるLとR11とR12とR13、式(PB−10)におけるLとXとRR11とR12とR13とR14、式(PB−11)におけるLとYとR11とR12とR13とR14とR15とR16とR17とR18、式(PB−12)におけるLとR11とR12の任意の2つによって環を形成してもよい。
【0087】
中性基としては、以下の一般式(PN−1)、(PN−2)で表される官能基が好ましい。
【0088】
【化15】

【0089】
式中、R11、R12は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表す。アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基は置換基を有していてもよい。アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基の具体例は前述のR11〜R18の場合と同様である。R11、R12としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水素原子、ハロゲン基、−OR、−NRR’、−SRが好ましく、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水素原子、−OR、−NRR’がより好ましく、アルキル基、アリール基、水素原子、−OR、−NRR’が特に好ましい。
【0090】
Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、燐原子、珪素原子、水素原子、ハロゲン原子および硼素原子から選択された1種以上によって形成される。Lの具体例は上記酸性基におけるLの場合と同様である。
また、LとR11とR12の任意の2つによって環を形成してもよい。
【0091】
顔料吸着基は、1種類のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。顔料吸着基は、顔料分散剤1gあたり0.05mmol以上存在することが好ましく、0.1mmol以上存在することがより好ましい。
【0092】
以下に本発明に用いられる顔料分散剤の具体例を記載する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
【化16】

【0094】
【化17】

【0095】
【化18】

【0096】
本発明においては、下塗り層高分子化合物に用いられる親水基と感光層顔料の顔料分散剤に用いられる顔料吸着基の組み合わせが重要である。下塗り層高分子化合物に用いられる親水基が中性基である場合、顔料吸着基としては、酸性基、塩基性基または中性基を用いることが出来る。下塗り層高分子化合物に用いられる親水基が塩基性基である場合、顔料吸着基としては、酸性基または中性基を用いることができる。
【0097】
本発明に用いられる顔料分散剤の質量平均分子量は、1000以上1000000以下が好ましく、2000以上500000以下がより好ましく、5000以上200000以下が更に好ましい。
顔料分散剤の添加量は顔料に対し、10〜200質量%が好ましく、更に好ましくは30〜100質量%である。
【0098】
本発明に用いられる顔料(以下、本発明の顔料とも称する)としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版 顔料便覧(日本顔料技術協会
編)(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料及び金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、例えば無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄並びに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。これらの中で画像露光に使用するレーザーに対応した増感色素の吸収波長域に実質的に吸収のない顔料を添加することが好ましく、具体的には、レーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。
【0099】
また、現在光重合型の平版印刷版原版で主流となっているアルゴンレーザー、SHG−YAGレーザーまたはバイオレットレーザーを使用する場合には、上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後可視画性の観点から紫色顔料、青色顔料を用いることが好ましく、このようなものとしては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーファーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジゴ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBCなどを挙げることができる。これらの中でより好ましくは、フタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0100】
本発明の顔料は、表面処理を施して使用しても、また、表面処理を施さずに使用しても良い。表面処理の方法としては、例えば特開平3−69949号公報に記載されているような樹脂、ワックス、界面活性剤、その他カップリング剤等による処理を行っても良い。
また、本発明の顔料の感光層中での平均粒径としては、0.05μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。上記の範囲に設定することで耐刷性の向上が図られ、また支持体上に地汚れが生じることもない。しかしながら粒径が0.05μmより小さいと、耐刷性の向上に寄与しないばかりか、親水性の施された支持体表面への目詰まりとなり、それによる地汚れの生じる可能性があり好ましくない。また粒径が1.5μmより大であると、時として感光層の乾燥膜厚より大となり、本発明の効果を有効に奏しえないことがあり、同様に好ましくない。
【0101】
本発明の顔料の平均粒径を測定する方法としては、透過型電子顕微鏡での測定が挙げられる。本発明において、顔料の1次平均粒径とは、顔料を単一溶剤に分散した後の顔料分散物溶液を親水化処理済みカーボン支持膜付き200メッシュに0.1mg滴下し、スピンコーターで塗布乾燥したサンプルの平均粒径をいい、また層中での粒径とは、PETフィルム上に3g/m2となるように固形分10%の感光液を95℃で塗布乾燥して作製したサンプルの表面に室温硬化型のエポキシ樹脂を塗布乾燥硬化した後、ミクロトームにより超薄切り片(切片厚:150nm)を作製し、親水化処理済みカーボン支持膜付き200メッシュに乗せ観察した顔料凝集体の平均粒径をいう。この際の測定は、透過型電子顕微鏡(JEM−2000FX 日本電子株式会社製)を用い、また測定条件は、加速電圧:200kVで行った。
【0102】
本発明の顔料は、上記顔料の1次平均粒径と感光層中での顔料の粒径との比が1:1以上1:15以下であることが好ましい。上記の比の意味するところは、感光層中での顔料の平均粒径が1次平均粒径に限りなく近い方が好ましいということであり、顔料が微細、均一かつ安定に感光層中に分散されている。上記の比が1:15を越えると、顔料が肥大化し好ましくない。
【0103】
本発明の顔料の感光層中での粒径を0.05μm以上1.5μm以下にする方法として
は、例えば、顔料を単一溶剤中にて分散を行い、且つ溶剤を、感光層を形成するための溶液の主溶剤として使用する方法が挙げられる。上記顔料の分散の際に使用される溶剤としては有機溶剤が必須であり、これらの溶剤は、分散安定性の観点から、上述した如く単一溶剤で用いることが好ましい。好ましい有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶剤、トルエン、ヘキサン、キシレン等の炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶剤、ジメチルスルホキシド等の既存の溶剤を使用することができるが、溶解度パラメーター値(SP値)が9以上10.5以下の範囲のケトン系有機溶剤が好ましく、例えばシクロヘキサノン(9.9)、メチルエチルケトン(MEK)(9.3)、シクロペンタノン(10.4)、メチルシクロヘキサノン(9.3)等が挙げられ、この中で最も好ましいものとしてはメチルエチルケトン、シクロヘキサノンである。
【0104】
顔料を分散する際、溶剤として上記有機溶剤の使用は、感光層組成物中に上記の顔料分散物を添加した際の分散安定性に大きく影響を及ぼす。また、溶剤を、感光層を形成するための溶剤に溶解した溶液の主溶剤として使用することも同様にして分散安定性への寄与が大きい。
この様にして、有機溶剤に分散された本発明の顔料は、感光層中での平均粒径を0.05以上1.5μm以下に設定することができ、非常に微細で均一かつ安定に分散された顔料粒子の分散物を調製することができる。
分散に際しては、上述の溶剤中に顔料及び顔料分散剤を10〜30質量%の濃度になるように添加し、ペイントシェーカー等で分散するのが一般的であるが、その他公知の分散方法も好適に使用することができる。
顔料分散剤により分散された顔料の感光層中における含有量は、特に限定されないが、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜15質量%であり、さらに好ましくは、0.1〜10質量%である。
【0105】
<ラジカル重合性化合物>
本発明における感光層に用いるラジカル重合性化合物(以下、重合性化合物とも称する)は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの共重合体、またはそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0106】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0107】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0108】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0109】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0110】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレン
ビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0111】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0112】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
【0113】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0114】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に記載の光硬化性モノマーおよびオリゴマーものも使用することができる。
【0115】
重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体や後述の保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も考慮され得る。
【0116】
重合性化合物は、感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好まし
くは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で使用される。
【0117】
<ラジカル重合開始剤>
本発明の感光層に用いられるラジカル重合開始剤(以下、重合開始剤、開始剤化合物とも称する)は増感色素の電子励起状態に起因する電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用をうけて、化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基から選択される少なくとも1種を生成する化合物である。以下、このようにして生じたラジカル、酸、塩基を単に活性種と呼ぶ。開始剤化合物が存在しない場合や、開始剤化合物のみを単独で用いた場合には、実用上十分な感度が得られない。増感色素と開始剤化合物を併用する一つの態様として、これらを、適切な化学的方法(増感色素と開始剤化合物との化学結合による連結等)によって単一の化合物として利用することも可能である。
【0118】
通常これらの開始剤化合物の多くは、次の(1)から(3)に代表される初期化学プロセスをへて、活性種を生成するものと考えられる。即ち、(1)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(2)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(3)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解である。個々の開始剤化合物が(1)から(3)のどのタイプに属するかに関しては、不明確な場合も多いが、本発明においては、これら何れのタイプの開始剤化合物と組み合わせても非常に高い増感効果が得られる。
【0119】
本発明における開始剤化合物としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、鉄アレーン錯体が挙げられる。なかでも、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩化合物、トリハロメチル化合物およびメタロセン化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましい。
重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
【0120】
ヘキサアリールビイミダゾール系化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号の各公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、350〜450nmに極大吸収を有する増
感色素と併用して用いられることが特に好ましい。
【0121】
本発明において好適に用いられるオニウム塩(本発明においては、酸発生剤としてではなく、イオン性の重合開始剤として機能する)は、下記一般式(RI−I)〜(RI−II
I)で表されるオニウム塩である。
【0122】
【化19】

【0123】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数2〜12のジアルキルアミノ基、炭素数2〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数6〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11-は1価の陰イオンを表し、具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオンおよびスルフィン酸イオンが好ましい。
【0124】
式(RI−II)中、Ar21およびAr22は、各々独立に置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアル
キル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数2〜12のジアルキルアミノ基、炭素数2〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数6〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21-は1価の陰イオンを表す。具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0125】
式(RI−III)中、R31、R32およびR33は、各々独立に置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。中でも反応性、安定性の面から好ましいのは、アリール基である。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数2〜12のジアルキルアミノ基、炭素数2〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数6〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31-は1価の陰イオンを表
す。具体例としては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
オニウム塩は、750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤と併用して用いられることが特に好ましい。
【0126】
その他の重合開始剤としては、特開2007-171406号、特開2007-206216号、特開2007-206217号、特開2007-225701号、特開2007-225702号、特開2007-316582号、特開2007-328243号の各公報に記載の重合開始剤を好ましく用いることができる。
【0127】
本発明における重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
本発明における感光層中の重合開始剤の使用量は感光層全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0質量%〜10質量%である。
【0128】
<増感色素>
本発明の感光層には、増感色素、例えば350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素、500〜600nmの波長域に極大吸収を有する増感色素、750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤を添加することで、各々、当業界で通常用いられている405nmのバイオレットレーザ、532nmのグリーンレーザ、803nmのIRレーザに対応した高感度な平版印刷版原版を提供することができる。
まず、350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素について説明する。この様な増感色素としては、例えば、メロシアニン色素類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、等を挙げることができる。
【0129】
360nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(IX)で表される色素である。
【0130】
【化20】

【0131】
(一般式(IX)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環基またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子またはN−(R3)をあらわす。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、AとR1またはR2とR3はそれぞれ互いに結合して
、脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。)
【0132】
一般式(IX)について更に詳しく説明する。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に
、一価の非金属原子団であり、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もし
くは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
【0133】
次に、一般式(IX)におけるAは置換基を有してもよい芳香族環基またはヘテロ環基を表し、置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環の具体例としては、一般式(IX)中のR1、R2およびR3で記載した置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基と同様のものが挙げられる。
【0134】
このような増感色素の具体例としては特開2007−58170号公報の[0047]〜[0053]に記載の化合物が挙げられる。
【0135】
さらに、下記一般式(V)〜(VII)で示される増感色素も用いることができる。
【0136】
【化21】

【0137】
【化22】

【0138】
式(V)中、R1〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ
基又はハロゲン原子を表す。但し、R1〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコ
キシ基を表す。
式(VI)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
【0139】
【化23】

【0140】
式(VII)中、R1、R2およびR3は各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリー
ル基、アラルキル基、−NR45基または−OR6基を表し、R4、R5およびR6は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、k、mおよびnは各々0〜5の整数を表す。
【0141】
また、特開2007-171406号、特開2007-206216号、特開2007-206217号、特開2007-225701号、特開2007-225702号、特開2007-316582号、特開2007-328243号の各公報に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
350〜450nmの波長域に極大吸収を持つ増感色素の好ましい添加量は、感光層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、最も好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0142】
続いて、本発明にて好適に用いられる750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素について詳述する。
このような増感色素は、赤外線吸収剤を包含し、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、感光層中に併存する重合開始剤に作用して、重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させるものと推定されている。いずれせよ、750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素を添加することは、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザ光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
【0143】
赤外線吸収剤は、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料または顔料であることが好ましい。
【0144】
染料としては、市販の染料および例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0145】
【化24】

【0146】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0147】
【化25】

【0148】
1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0149】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個
以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-
は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましい
Za-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフ
ルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。尚、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
【0150】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
【0151】
また、特に好ましい他の例としてさらに、特開2002−278057号に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0152】
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0153】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0154】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0155】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な感光層が得られる。
【0156】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0157】
赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0158】
赤外線吸収剤は、感光層中における均一性や感光層の耐久性の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
【0159】
<共増感剤>
本発明の感光層には、感度を一層向上させるまたは酸素による重合阻害を抑制する等の
作用を有する連鎖移動剤または共増感剤などと呼ばれる公知の化合物を加えてもよい。
【0160】
この様な化合物の例としては、アミン類、例えばM. R. Sander他著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号、特開昭51−82102号、特開昭52−134692号、特開昭59−138205号、特開昭60−84305号、特開昭62−18537号、特開昭64−33104号、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、N−フェニルグリシン、N−フェニルアスパラギン酸、およびp−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等のN,N−ジアルキルアニリン誘導体等が挙げられる。
【0161】
連鎖移動剤として作用する別の例としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
本発明の感光層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類、等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
なかでも、下記一般式(I)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。連鎖移動剤としてこのチオール化合物を用いることによって、臭気の問題、および感光層から蒸発や他の層への拡散による感度減少を回避し、保存安定性に優れ、さらには高感度で高耐刷の平版印刷版原版が得られる。
【0162】
【化26】

【0163】
一般式(I)中、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環または6員環のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有してもよい。
【0164】
さらに好ましくは下記一般式(IA)または一般式(IB)で表されるものが使用される。
【0165】
【化27】

【0166】
一般式(IA)および式(IB)中、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0167】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0168】
【化28】

【0169】
【化29】

【0170】
【化30】

【0171】
【化31】

【0172】
【化32】

【0173】
チオール化合物等の連鎖移動剤の使用量は感光層の全固形分に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
【0174】
<バインダーポリマー>
本発明の感光層に用いられるバインダーポリマーは、感光層の皮膜形成剤として機能するポリマーであり、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような線状有機高分子重合体としては、公知のものを使用することができる。
バインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子が好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。ここで「アクリル樹脂」とは、アクリル酸誘導体を(共)重合成分として有するアクリル系ポリマーのことをいう。「ポリウレタン樹脂」とは、イソシアネート基を2つ有する化合物とヒドロキシル基を2つ以上有する化合物の縮合反応により生成されるポリマーのことをいう。
【0175】
さらに、バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性をもたせることができる。
バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0176】
ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合
基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(1)〜(3)で表される官能基が特に好ましい。
【0177】
【化33】

【0178】
一般式(1)において、Rl〜R3はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。R1としては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0179】
Xは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R12)−を表し、R12は、水素原子、または1価の有機基を表す。R12の1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。なかでも、R12としては水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0180】
導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0181】
【化34】

【0182】
一般式(2)において、R4〜R8は、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。R4〜R8としては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水
素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
【0183】
導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。Yは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R12)−を表す。R12は、一般式(1)のR12と同義であり、好ましい例も同様である。
【0184】
【化35】

【0185】
一般式(3)において、R9〜R11は、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。R9としては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。R10、R11としては、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0186】
導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−または置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R12は、一般式(1)のR12と同義であり、好ましい例も同様である。
上記の中でも、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル酸共重合体およびポリウレタンがより好ましい。
【0187】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0188】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
【0189】
平版印刷版原版の製版工程において感光層の非画像部が良好に除去されるよう、用いられるバインダーポリマーは現像処理の態様に対応して適宜選択される。下記に詳細を記す。
【0190】
(D−1)アルカリ可溶性バインダーポリマー
現像処理がアルカリ現像液を用いて行われる態様においては、バインダーポリマーはアルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性である有機高分子化合物が好ましく使用される。
アルカリ水に可溶性である為に、バインダーポリマーはアルカリ可溶性基を有することが好ましい。アルカリ可溶性基は酸基であることが好ましく、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基などが挙げられる。これらのうち、被膜性・対刷性・現像性の両立という観点から、カルボキシル基を有するバインダーポリマーが特に好ましい。
さらに、アルカリ可溶性バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、上記のように架橋性をもたせることができる。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0191】
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーの含有量は、感光層の全固形分に対して、通常5〜90質量%であり、10〜70質量%のが好ましく、10〜60質量%がより好ましい。この範囲内で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
【0192】
(D−2)親水基を有するバインダーポリマー
本発明の感光層のバインダーポリマーとしては、現像液に対する現像性を向上させる為に、親水基を有するバインダーポリマーを用いてもよい。特に酸性〜弱アルカリ性の現像液を用いる場合にはこのバインダーポリマーが好ましく用いられる。
親水基としては、一価又は二価以上の親水性基から選ばれ、例えば、ヒドロキシ基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、スルホニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、アミド基、エーテル基、またはカルボン酸、スルホン酸、リン酸などの酸基を中和した塩が好ましく、特に第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、アミド基、ヒドロキシ基、−CH2CH2O−繰り返し単位、−CH2CH2NH−繰り返し単位が好ましく、第三級アミノ基、酸基をアミノ基含有化合物で中和した塩、アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基が最も好ましい。
【0193】
親水基含有バインダーポリマーは共重合体であることが好ましく、共重合体の全共重合成分に占める前記のような親水性基を有する共重合成分の割合は、現像性の観点から、1〜70%が好ましい。現像性と耐刷性の両立を考慮すると、1〜50%がより好ましく、1〜30%が特に好ましい。
親水基含有バインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれるポリマーが好ましい。なかでも、なかでも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0194】
本発明に用いられる親水基含有バインダーポリマーは上記のような架橋性基を有することが好ましい。親水基含有バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、親水基含有バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.01〜10.0mmol、より好ましくは0.05〜5.0mmol、最も好ましくは0.1〜2.0mmolである。
さらに耐刷性向上という観点から、架橋性基は親水性基の近傍にあることが望ましく、親水性基と架橋性基が同一の重合単位上にあってもよい。
【0195】
本発明に用いられる親水基含有バインダーポリマーは、上記親水性基を有するユニット、架橋性基を有するユニット、親水性基および架橋性基を有するユニットの他に、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルのユニットを有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、メチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0196】
親水基含有バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
親水基含有バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよい。
親水基含有バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。親水基含有バインダーポリマーの含有量は、良好な画像部の強度と画像形成性の観点から、感光層の全固形分に対して、5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%であるのが更に好ましい。
【0197】
また、重合性化合物及びバインダーポリマーの合計含有量は、感光層の全固形分に対して、80質量%以下であることが好ましい。80質量%を超えると、感度の低下、現像性の低下を引き起こす場合がある。より好ましくは35〜75質量%である。
【0198】
以下に本発明に用いる親水基含有バインダーポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各バインダーポリマーの分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量(Mw)である。
【0199】
【化36】

【0200】
【化37】

【0201】
【化38】

【0202】
【化39】

【0203】
【化40】

【0204】
【化41】

【0205】
【化42】

【0206】
【化43】

【0207】
【化44】

【0208】
<マイクロカプセル>
本発明においては、上記の感光層構成成分および後述のその他の構成成分を感光層に含有させる方法として、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の一部をマイクロカプセルに内包させて感光層に添加することができる。その場合、各構成成分はマイクロカプセル内および外に、任意の比率で含有させることが可能である。
【0209】
感光層構成成分をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0210】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、上記のバインダーポリマーに導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0211】
マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0212】
<その他の感光層成分>
本発明の感光層には、さらに、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、現像性の促進および塗布面状を向上させるための界面活性剤、現像性の向上やマイクロカプセルの分散安定性向上などのための親水性ポリマー、画像部と非画像部を視認するための着色剤や焼き出し剤、感光層の製造中または保存中のラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するための高級脂肪誘導体、画像部の硬化皮膜強度向上のための無機微粒子、現像性向上のための親水性低分子化合物、感度向上の為の共増感剤や連鎖移動剤、可塑性向上のための可塑剤等が挙げられる。これの添加剤はいずれも公知のものを使用でき、例えば、特開2007-171406号、特開2007-206216号、特開2007-206217号、特開2007-225701号、特開2007-225702号、特開2007-316582号、特開2007-328243号に記載の化合物を使用することができる。
【0213】
<感光層の形成>
本発明の感光層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、塗布して形成される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の感光層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0214】
塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲内で、良好な感度と感光層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0215】
[保護層]
本発明の平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、感光層上に保護層(酸素遮断層)が設けられることが好ましい。本発明に用いられる保護層は25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(mL/m2・d
ay)であることが好ましい。酸素透過性Aが1.0(mL/m2・day)未満で極端
に低い場合は、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。逆に、酸素透過性Aが20(mL/ m2・day)を超えて高すぎる場合は感度の低下を招く。酸素透過性Aは、より好
ましくは1.5≦A≦12(mL/m2・day)、更に好ましくは2.0≦A≦10.
0(mL/m2・day)の範囲である。また、保護層に望まれる特性としては、上記酸
素透過性以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害しないこと、感光層との密着性に優れること、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。この様な保護層に関する工夫が従来なされており、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0216】
保護層のバインダーとしては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0217】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。ポリビニルアルコールの具体例としては加水分解度が71〜100モル%、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。好ましい態様としてはポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95質量%、より好ましくは、30〜90質量%である。
【0218】
また、公知の変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、更にはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0219】
ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としてはポリビニルピロリドンまたはその変性物が酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中の含有率が3.5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
【0220】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。ポリビニルアルコール(PVA)等バインダーの分子量は、2000〜1000万の範囲のものが使用でき、好ましくは2万〜300万範囲のものが適当である。
【0221】
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等をバインダーに
対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤をバインダーに対して数質量%添加すること
ができる。
【0222】
また、感光層との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。すなわち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改良すべく種々の提案がなされている。例えば米国特許出願番号第292,501号、米国特許出願番号第44,563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0223】
さらに、本発明の平版印刷版原版における保護層には、酸素遮断性や感光層表面保護性を向上させる目的で、無機質の層状化合物を含有させることも好ましい。
ここで無機質の層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式
A(B,C)2-5410(OH,F,O)2
〔ただし、AはK,Na,Caの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライ
ト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、りん酸ジルコニウムなどが挙げられる。
本発明においては、上記の無機質の層状化合物の中でも、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性合成雲母が特に有用である。
本発明の無機質の層状化合物のアスペクト比は、好ましくは20以上であり、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0224】
本発明で使用する無機質の層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0225】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0226】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
【0227】
保護層に用いる無機質層状化合物の分散方法は、特開2007-171406号、特開2007-206216号、特開2007-206217号、特開2007-225701号、特開2007-225702号、特開2007-316582号、特開2007-328243号等に記載の方法が用いられる。
【0228】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.05〜10g/m2 の範囲であることが好ましく、無機質の層状化合物を含有する場合には、0.1〜0.5g/m2の範囲
であることがさらに好ましく、無機質の層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/m2の範囲であることがさらに好ましい。
【0229】
[支持体]
本発明の平版印刷版原版の支持体は、表面が親水性であれば如何なるものでも使用され得るが、寸度的に安定な板状物が好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、また、例えばアルミニウム(アルミニウム合金も含む。)、亜鉛、銅等のような金属またはその合金(例えばケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルとの合金)の板、更に、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等のようなプラスチックのフィルム、上記の如き金属または合金がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。これらの支持体のうち、アルミニウム板は寸度的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。更に、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。通常その厚さは0.05mm〜1mm程度である。
【0230】
また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、後述する砂目立て処理、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは隔極酸化処理等の表面処理がなされていることが好ましい。
<砂目立て処理>
砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的砂目立て、化学的エッチング、電解グレイン等がある。更に塩酸または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て方法、およびアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法の
ような機械的砂目立て法を用いることができ、上記砂目立て方法を単独あるいは組み合わせて用いることもできる。
その中でも本発明において有用に使用される表面粗さを作る方法は、塩酸または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化学的方法であり、適する電流密度は100C/dm2〜400C/dm2の範囲である。さらに具体的には、0.1〜50%の塩酸または硝酸を含む電解液中、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2
400C/dm2の条件で電解を行うことが好ましい。
【0231】
このように砂目立て処理されたアルミニウム支持体は、酸またはアルカリにより化学的にエッチングされる。酸をエッチング剤として用いる場合は、微細構造を破壊するのに時間がかかり、工業的に本発明を適用するに際しては不利であるが、アルカリをエッチング剤として用いることにより改善できる。
本発明において好適に用いられるアルカリ剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃であり、アルミニウムの溶解量が5〜20g/m3となるような条件が好ましい。
エッチングの後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸としては、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が挙げられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度で15〜65質量%の硫酸と接触させる方法、および、特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。
尚、本発明において好ましいアルミニウム支持体の表面粗さ(Ra)は、0.3〜0.7μmである。
【0232】
<陽極酸化処理>
以上のようにして処理されたアルミニウム支持体は、さらに陽極酸化処理を施してもよい。
陽極酸化処理は、当該技術分野において従来から行われている方法で行うことができる。
具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルフォン酸等あるいはこれらの二種以上を組み合わせて、水溶液または非水溶液中でアルミニウムに直流または交流を流すと、アルミニウム支持体表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液の濃度が1〜80%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60アンペア/dm2、電圧1〜100V、電解時間10〜100秒の範囲が適当である。
これらの陽極酸化処理のうちでも特に英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中、高電流密度で陽極酸化する方法、および、米国特許第3,511,661号明細書に記載されているリン酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。
本発明においては、陽極酸化皮膜は1〜10g/m2であることが好ましく、1g/m2未満であると版に傷が入りやすく、10g/m2を超えると製造に多大な電力が必要とな
り、経済的に不利である。好ましくは、1.5〜7g/m2であり、更に好ましくは、2
〜5g/m2である。
【0233】
更に、本発明においては、支持体は、砂目立て処理および陽極酸化後に、封孔処理を施されてもよい。かかる封孔処理は、熱水および無機塩または有機塩を含む熱水溶液への基板の浸漬並びに水蒸気浴などによって行われる。また本発明で使用される支持体には、アルカリ金属珪酸塩によるシリケート処理以外の処理、たとえば弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理などの表面処理が施されてもよい。
【0234】
[バックコート層]
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(OC3 7 4 、Si(OC4 9 4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0235】
[平版印刷版の作製方法]
次に本発明に係る平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法について詳細に説明する。本発明の平版印刷版の作製方法は、基本的に、平版印刷版原版をレーザーで画像露光する工程(露光工程)並びに、pH2〜11の現像液の存在下で非露光部の感光層を除去する工程(現像工程)からなる。必要により、上記露光工程と現像工程の間及び/又は現像工程の後に、平版印刷版原版を全面露光及び/又は加熱する工程を設けてもよい。また、上記現像工程の後に乾燥工程(自然乾燥を含む)を設けてもよい。
【0236】
<露光>
平版印刷版原版の画像露光は、デジタルデータによるレーザー光走査する方法等で行なわれる。画像露光に用いられる光源波長の好ましい一例としては、350nm〜450nmが挙げられる。
【0237】
具体的には、ガスレーザとして、Arイオンレーザ(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザ(356nm、351nm、10mW〜1W)、He−Cdレーザー(441nm、325nm、1mW〜100mW)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm、10mW)、半導体レーザー系として、KNbO3リング共振器(430nm、30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)、その他、パルスレーザとしてN2レーザ(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)。特にこの中でAlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
【0238】
画像露光に用いられる光源波長の他の好ましい例としては、750nm〜1400nmが挙げられる。具体的には、固体レーザーおよび半導体レーザーが好ましく用いられる。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。露光のエネルギーが低すぎると感光層の硬化が十分に進行しない。また、露光のエネルギーが高すぎると感光層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することがある。
【0239】
本発明における画像露光では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWH
M/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
【0240】
走査露光方式の平版印刷版原版露光装置に関しては、露光機構としては内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式のいずれでもよく、光源としては上記光源の中で連続発振可能なものが好ましく利用できる。
【0241】
<現像>
本発明における平版印刷版原版を画像露光した後、現像液により非露光部の感光層を除去し、画像を形成することができる。本発明では従来用いられていた強アルカリ現像液よりもマイルドなpH2〜11の現像液を用いる。特に好ましいpHは3〜10.5であり、より好ましくは、4〜10.5である。
本発明で使用する現像液は界面活性剤を含有することが好ましい。用いられる界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性のいずれを含有してもよい。
【0242】
アニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0243】
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0244】
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0245】
本発明においては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、ソルビトールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。
【0246】
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、ノニオン系界面活性剤としては、HLB(Hydorophile−Lipophile Balance)値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等の界面活性剤も同様に使用することができる。
【0247】
両性界面活性剤は、界面活性剤の分野においてよく知られているように、アニオン性部位とカチオン性部位を同一分子内に持つ化合物であり、アミノ酸系、ベタイン系、アミンオキシド系等の両性界面活性剤が含まれる。本発明で使用する現像液に用いられる両性界面活性剤としては、下記式<1>で表される化合物及び下記式<2>で表される化合物が好ましい。
【0248】
【化45】

【0249】
式<1>中、R8はアルキル基を表し、R9及びR10は各々水素原子又はアルキル基を表し、R11はアルキレン基を表し、Aはカルボン酸イオン又はスルホン酸イオンを表す。
式<2>中、R18、R19およびR20は、各々水素原子またはアルキル基を表す。但し、R18、R19およびR20のすべてが、水素原子であることはない。
【0250】
上記式<1>において、R8、R9又はR10で表されるアルキル基及びR11で表されるアルキレン基は、直鎖でも分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、更に、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<1>で示される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解が困難となる。この場合、有機溶剤、例えば、アルコール等の溶解助剤を添加することにより、良化はするが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない場合がある。従って、R8〜R11の炭素数の総和は好ましくは、8〜25であり、より好ましくは11〜21である。
【0251】
上記式<2>において、R18、R19又はR20で表されるアルキル基は、直鎖でも
分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、更に、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<2>で示される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解が困難となる。この場合、有機溶剤、例えば、アルコール等の溶解助剤を添加することにより、良化はするが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない場合がある。従って、R18〜R20の炭素数の総和は好ましくは、8〜22であり、より好ましくは10〜20である。
【0252】
両性界面活性剤の総炭素数は、感光層に用いる材料、とりわけバインダーポリマーの性質により影響をうけることがある。親水度の高いバインダーポリマーを用いる場合、総炭素数は比較的小さいものが好ましく、用いるバインダーポリマーの親水度の低い場合には、総炭素数が大きいものが好ましい傾向にある。
【0253】
現像液に用いられる両性界面活性剤の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0254】
【化46】

【0255】
【化47】

【0256】
界面活性剤は単独もしくは組み合わせて使用することができる。界面活性剤の現像液中における含有量は0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0257】
本発明で使用する現像液には、さらにpH緩衝剤を含ませることができる。
本発明のpH緩衝剤としては、pH2〜11において緩衝作用を発揮する緩衝剤であれば特に限定なく用いることができる。本発明においてはアルカリ性の緩衝剤が好ましく用いられ、例えば(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオン、及びそれらの併用などが挙げられる。このような緩衝剤を用いることにより、現像液においてpH緩衝作用が発揮され、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。特に好ましくは、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせである。
【0258】
(a)炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭
酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属は単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0259】
(b)ホウ酸イオンを現像液中に存在させるには、ホウ酸あるいはホウ酸塩を現像液に加えた後、アルカリを用いて、あるいはアルカリと酸とを用いて、pHを調整することで、適量のホウ酸イオンを発生させる。
ここで用いるホウ酸あるいはホウ酸塩は、特に限定されないが、ホウ酸としてオルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、中でもオルトホウ酸及び四ホウ酸が好ましい。また、ホウ酸塩としてアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられ、オルトホウ酸塩、二ホウ酸塩、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩、八ホウ酸塩などが挙げられ、中でもオルトホウ酸塩、四ホウ酸塩、特にアルカリ金属の四ホウ酸塩が好ましい。好ましい四ホウ酸塩として、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム及び四ホウ酸リチウムなどが挙げられ、中でも四ホウ酸ナトリウムが好ましい。ホウ酸塩を2種以上併用してもよい。
本発明で使用するホウ酸あるいはホウ酸塩として、特に好ましいのは、オルトホウ酸、四ホウ酸あるいは四ホウ酸ナトリウムである。現像液にホウ酸及びホウ酸塩を併用してもよい。
【0260】
(c)水溶性のアミン化合物のイオンは、水溶性アミン化合物の水溶液において発生させることができ、水溶性アミン化合物の水溶液にさらにアルカリ又は酸を加えてもよく、また、もともとアミン化合物の塩になっている化合物を添加することにより水溶液中に含有させることができる。
水溶性のアミン化合物は、特に限定されないが、水溶性を促進する基を有している水溶性アミン化合物が好ましい。水溶性を促進する基としてカルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、水酸基などが挙げられる。水溶性のアミン化合物は、これらの基を複数有していても良い。
アミン化合物の水溶性をカルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基により促進する場合は、水溶性のアミン化合物は、アミノ酸に該当する。アミノ酸は水溶液中で平衡状態にあり、酸基が例えばカルボン酸基であるとき、平衡状態は下記のように表される。本発明におけるアミノ酸とは、下記のBの状態をいい、アミノ酸のイオンとは、Cの状態を意味する。Cの状態におけるカウンターイオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
【0261】
【化48】

【0262】
カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基を持つ水溶性のアミン化合物の具体例として、グリシン、イミノ二酢酸、リシン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、パラヒドロキシフェニルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、アラニン、アントラニル酸、
トリプトフアン等のアミノ酸、スルファミン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、タウリン等の脂肪酸アミンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸等の脂肪酸アミンスルフィン酸などがある。これらの中で、グリシン及びイミノ二酢酸が好ましい。
【0263】
ホスホン酸基(ホスフィン酸基も含む)を持つ水溶性のアミン化合物の具体例として、2−アミノエチルホスホン酸、1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸、1−アミノ−1−フエニルメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ジメチルアミノエタン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミノペンタメチレンホスホン酸などがある。特に2−アミノエチルホスホン酸が好ましい。
【0264】
水溶性を促進する基として水酸基を持つ水溶性のアミン化合物は、アルキル基に水酸基を有するアルキルアミンを意味し(下記状態B)、これらのイオンとは、アミノ基のアンモニウムイオンを意味する(下記状態A)。
【0265】
【化49】

【0266】
水酸基を持つ水溶性のアミン化合物の具体例として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどがある。これらの中で、トリエタノールアミン及びジエタノールアミンが好ましい。アンモニウムイオンのカウンターイオンとしてはクロルイオンが好ましい。
【0267】
上述のpHの調整に用いることができるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、有機アルカリ剤、及びそれらの組み合わせなどを用いることができる。また、酸として、無機酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。
【0268】
pH緩衝剤を使用する場合、現像液のpHは、好ましくは8.5〜10.8の範囲にある。pHが8.5以上であると非画像部の現像性を良好にすることができ、一方pHが10.8以下であれば、空気中の炭酸ガスの影響を受け難く、炭酸ガスの影響による処理能力の低下を抑制できる。より好ましくはpH8.8〜10.2の範囲、特に好ましくはpH9.0〜10.0の範囲である。
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的にアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることが
できる。これらの補助的なアルカリ剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0269】
pH緩衝剤として(a)炭酸イオンと炭酸水素イオンの組み合わせを採用するとき、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの総量は、水溶液の全質量に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。総量が0.05mol/L以上であると現像性、処理能力が低下せず、5mol/L以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0270】
pH緩衝剤として(b)ホウ酸イオンを採用するとき、ホウ酸イオンの総量は、水溶液の全質量に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。ホウ酸塩の総量が0.05mol/L以上であると現像性、処理能力が低下せず、一方5mol/L以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時の中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0271】
pH緩衝剤として(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオンを採用するとき、水溶性のアミン化合物とそのアミン化合物のイオンの総量は、水溶液の全質量に対して0.01〜1mol/Lが好ましく、0.03〜0.7mol/Lがより好ましく、0.05〜0.5mol/Lが特に好ましい。水溶性のアミン化合物とそのアミン化合物のイオンの総量がこの範囲にあると現像性、処理能力が低下せず、一方廃液処理が容易である。
【0272】
本発明で使用する現像液には上記の成分の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機溶剤、無機酸、無機塩、水溶性樹脂などを含有させることができる。
【0273】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。一般に、湿潤剤は現像液の全質量に基づいて0.1〜5質量%の量で使用される。
【0274】
防腐剤としては、フェノールまたはその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液に対して0.01〜4質量%の範囲が好ましい。
【0275】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。キレート剤は処理液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量は現像液に対して0.001〜1、0質量%が好適である。
【0276】
消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLBの5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型および可溶化等がいずれも使用できる。消泡剤の含有量は、現像液に対して0.001〜1.0質量%の範囲が好適である。
【0277】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)あるいはガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
【0278】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0279】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0280】
無機酸および無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は現像液の全質量に基づいて0.01〜0.5質量%の量が好ましい。
【0281】
水溶性樹脂としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)およびその変性体、プルラン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。水溶性樹脂の好ましい酸価は、0〜3.0meq/gである。
【0282】
大豆多糖類としては、従来知られているものが使用でき、例えば市販品としてソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0283】
変性澱粉としては、例えば下記一般式(III)で示されるものがある。変性澱粉の製造に用いられる澱粉としては、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等のいずれの澱粉も使用できる。澱粉の変性は、酸または酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で行うことができる。
【0284】
【化50】

【0285】
式(III)中、エーテル化度(置換度)はグルコース単位当たり0.05〜1.2の範囲で、nは3〜30の整数を示し、mは1〜3の整数を示す。
【0286】
変性澱粉及びその誘導体の例として、ブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリンおよびシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉および無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉およびカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体などがある。
【0287】
水溶性樹脂の中でも好ましいものとして、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
水溶性樹脂は2種以上を併用することもできる。水溶性樹脂の現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0288】
現像液の温度は、通常60℃以下、好ましくは15〜40℃程度である。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
【0289】
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号、特開昭60−59351号に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版をシリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0290】
本発明に使用する回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチックまたは金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号、特開平3−100554号に記載のものや、実公昭62−167253号に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属またはプラスチックの溝型材を芯となるプラスチックまたは金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20〜400μm、毛の長さは5〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
【0291】
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去がさらに確実となる。さらに、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0292】
現像工程が行われた後、自然乾燥にて現像液を乾燥させてもよいが、温風などによる乾燥工程を設けることが好ましい。
本発明の平版印刷版の作製方法においては、必要に応じ、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。この様な加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化といった利点が生じ得る。
【0293】
加熱の条件はこれら効果のある範囲で適宜設定することができる。加熱手段としては、慣用の対流オーブン、IR照射装置、IRレーザー、マイクロ波装置、ウィスコンシンオーブン等を挙げることができる。例えば、版面到達温度が70〜150℃の範囲で、1秒〜5分間の間で保持することにより行なうことができる。好ましくは80℃〜140℃で5〜1分間、より好ましくは90℃〜130℃で10〜30秒間である。この範囲であると上記の効果を効率よく得られ、また熱による印刷版の変形などの悪影響が無い点で好ましい。
加熱処理に用いられる加熱処理手段は、露光工程に用いられるプレートセッタおよび現像処理工程に使用される現像装置とお互いに接続されて、自動的に連続処理されることが好ましい。具体的にはプレートセッタと、現像装置がコンベアなどの運搬手段によって結合されている製版ラインが挙げられる。プレートセッタと現像装置の間に加熱処理手段が
入っていても良く、加熱手段と現像装置は一体の装置となっていてもよい。
【0294】
使用する平版印刷版原版が作業環境における周囲の光の影響を受け易い場合は、上記の製版ラインがフィルタまたはカバーなどで遮光されていることが好ましい。
また、現像後の印刷版に対して、紫外線光などの活性光線で全面露光を行い、画像部の硬化促進を行ってもよい。全面露光時の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀灯、ガリウム灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、各種レーザー光などが挙げられる。十分な耐刷性を得るためには露光量としては少なくとも10mJ/cm2以上が好ましく、より好ましくは100mJ/cm2以上である。
全面露光時に同時に加熱を行ってもよく、加熱を行うことによりさらに耐刷性の向上が認められる。加熱装置としては、慣用の対流オーブン、IR照射装置、IRレーザー、マイクロ波装置、ウィスコンシンオーブン等を挙げることができる。このとき版面温度は30℃〜150℃であることが好ましく、より好ましくは、35〜130℃であり、さらに好ましくは、40〜120℃である。具体的には、特開2000-89478号公報に記載の方法を利用することができる。
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、通常200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0295】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0296】
〔実施例1〜19及び比較例1〜4〕
[有機顔料分散物の製造]
<有機顔料分散物(1)〜(6)>
下記組成からなる有機顔料組成物を攪拌して粗分散液を得た。得られた粗分散液を0.8mmφのガラスビーズを充填したサンドミルで、周速15m/秒で30分間分散して有機顔料分散物(1)〜(6)を得た。
【0297】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 17.5質量部
シクロヘキサノン 17.5質量部
メトキシプロパノール 40.0質量部
表A記載の顔料分散剤 10.0質量部
シアン顔料(東洋インキ製No.700-10-FGCYブルー) 15.0質量部
【0298】
<有機顔料分散物(7)〜(10)>
下記組成からなる有機顔料組成物を攪拌して粗分散液を得た。得られた粗分散液を0.8mmφのガラスビーズを充填したサンドミルで、周速15m/秒で30分間分散して有機顔料分散物(7)〜(10)を得た。
【0299】
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 17.5質量部
シクロヘキサノン 17.5質量部
メトキシプロパノール 40.0質量部
表A記載のの顔料分散剤 10.0質量部
シアン顔料(Ciba製Irgalite Blue GLVO) 15.0質量部
【0300】
[アルミニウム支持体1の作製]
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質: JIS A1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0301】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
このようにして得たアルミニウム支持体1の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
更に、下記下塗り液(1)をバー塗布した後、80℃、10秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量が10mg/mの下塗り層を有する支持体を作製した。
【0302】
<下塗り液(1)>
・表A記載の高分子化合物 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
【0303】
[平版印刷版原版(1)〜(23)の作製]
上記の下塗り層を付与した支持体上に、下記組成の感光層塗布液1をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.1g/m2の感光層を形成し、この上に下記組成よりなる保護層塗布液1を、乾燥塗布量が0.75g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃、70秒間乾燥して平版印刷版原版(1)〜(23)を得た。
【0304】
<感光層塗布液1>
・下記バインダーポリマー(1)(質量平均分子量:8万、酸価0meq/g)
0.54g
・重合性化合物 0.40g
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート
(東亜合成(株)製、アロニックスM−315)
・重合性化合物
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート 0.08g
(日本化薬(株)製、SR9035、EO付加モル数15、分子量1000)
・下記増感色素(1) 0.06g
・下記重合開始剤(1) 0.18g
・下記共増感剤(1) 0.07g
・表A記載の有機顔料分散物 0.40g
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・下記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1.1万) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.04g
(旭電化工業(株)製、プルロニックL44)
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0305】
【化51】

【0306】
【化52】

【0307】
<保護層塗布液1>
ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500) 40g
ポリビニルピロリドン(質量平均分子量:5万) 5g
ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1))(質量平均分子量:7万)0.5g
界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.5g
水 950g
【0308】
(1)露光、現像および印刷
上記平版印刷版原版(1)〜(23)各々について、出力100mWの405nm半導体レーザーを用いて、50%の網点画像を、版面露光量300μJ/cm2、100lpiの条件で画像様露光を行った。
その後、下記組成の現像液(1)を用い、図1に示すような構造の自動現像処理機にて、現像処理を実施して平版印刷版を作製した。自動現像処理機は、回転ブラシロールを2本有する自動処理機であり、回転ブラシロールとしては、1本目のブラシロールに、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径90mmのブラシロールを用い、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.94m/sec)させ、2本目のブラシロールには、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径60mmのブラシロールを用い、搬送方向と反対方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.63m/sec)させた。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度100cm/minで行った。
【0309】
現像液は、循環ポンプによりスプレーパイプからシャワーリングして、版面に供給した。現像液のタンク容量は、10リットルであった。
【0310】
一方、上記平版印刷版原版(1)〜(23)各々について、60℃のオーブン中に3日間放置して強制保存した後、上記と同様の現像処理を行い、平版印刷版を作製した。
【0311】
現像液(1)
・水 100.00g
・ベンジルアルコール 1.00g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル
(オキシエチレン平均数n=13) 1.00g
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 0.50g
・アラビアガム 1.00g
・エチレングリコール 0.50g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム塩 0.05g
リン酸と水酸化ナトリウムを用いて現像液のpHが7.0となるように調整
【0312】
得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0313】
(2)評価
強制保存を行わない平版印刷版原版から作製した平版印刷版を用いて、着色性、残色性、汚れ性及び耐刷性を、強制保存行った平版印刷版原版から作製した平版印刷版を用いて残色性と汚れ性を下記のように評価した。結果を表Aに示す。なお、以下の表A〜Dにおいて、比較例に使用した下塗り層高分子化合物P−Cの構造を以下に示す。
【0314】
【化53】

【0315】
<着色性>
露光前の平版印刷版原版における感光層のシアン濃度をマクベス濃度計により測定し、その濃度の大小により着色性を評価した、数字が大きい程着色性が高いことを示す。
<残色性>
得られた平版印刷版の非画像部のシアン濃度をマクベス濃度計により測定し、その濃度の大小により残色性を評価した。数字が小さい程残色性が良好なことを示す。
<汚れ性>
上記の印刷条件で500枚印刷を行った時に、非画像部に発生したインキ汚れを目視により確認した。全く汚れの無い非画像部が得られた場合を10点、殆どインキが付着していて汚れている場合を1点として10段階で評価した。
<耐刷性>
上記の印刷条件で印刷を行い、印刷用紙におけるインキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。
【0316】
【表1】

【0317】
【表2】

【0318】
表Aの結果から明らかなように、本発明の平版印刷版原版は、pHが7の中性現像液による現像処理にもかかわらず、耐刷性を保持しながら、非画像部における残色及び印刷中の汚れにおいて優れた平版印刷版を作製することができる。また、平版印刷版原版を強制保存した場合にも、これらの特性は良好に維持されることがわかる。
【0319】
〔実施例20〜23及び比較例5〜6〕
[平版印刷版原版(24)〜(29)の作製]
感光層塗布液1を下記感光層層塗布液2に変更した以外は、平版印刷版原版(1)〜(23)の作製と同様にして平版印刷版原版(24)〜(29)を作製した。
【0320】
<感光層層塗布液2>
・下記バインダーポリマー(4)(質量平均分子量:7万) 0.54g
・下記重合性化合物(2) 0.48g
・上記増感色素(1) 0.06g
・上記重合開始剤(1) 0.18g
・上記共増感剤(1) 0.07g
・表B記載の有機顔料分散物 0.40g
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・上記フッ素系界面活性剤(1) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.04g
(旭電化工業(株)製、プルロニックL44)
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0321】
【化54】

【0322】
各平版印刷版原版(24)〜(29)を、出力100mWの405nm半導体レーザーを用いて、50%の網点画像を、版面露光量80μJ/cm2、100lpiの条件で画像様露光を行った後、30秒以内に平版印刷版原版をオーブンに入れ、熱風を吹き付けて平版
印刷版原版の全面を加熱し、110℃で15秒間保持した。その後、30秒以内に、現像液(1)を下記現像液(2)に変更した以外は実施例1と同様にして現像処理して平版印刷版を作製した。実施例1と同様にして評価を行った。結果を表Bに示す。
【0323】
現像液(2)
・水 100.00g
・N−ラウリルジメチルベタイン 10.00g
(竹本油脂(株)製;パイオニンC157K)
・ポリスチレンスルホン酸 1.00g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム塩 0.05g
リン酸を用いて現像液のpHが4.5となるように調整
【0324】
【表3】

【0325】
表Bの結果から明らかなように、本発明の平版印刷版原版は、pHが4.5の弱酸性現像液による現像処理にもかかわらず、耐刷性を保持しながら、非画像部における残色及び印刷中の汚れにおいて優れた平版印刷版を作製することができる。また、平版印刷版原版を強制保存した場合にも、これらの特性は良好に維持されることがわかる。
【0326】
〔実施例24〜27及び比較例7〜8〕
[平版印刷版原版(30)〜(35)の作製]
感光層塗布液1を下記組成の感光層塗布液3に変更し、保護層塗布液1を下記組成の保護層塗布液2に変更した以外は、平版印刷版原版(1)〜(23)の作製と同様にして、平版印刷版原版(30)〜(35)を作製した。
【0327】
<感光層塗布液3>
・下記バインダーポリマー(3)(質量平均分子量:5万) 0.54g
・上記重合性化合物(2) 0.48g
・上記増感色素(1) 0.06g
・上記重合開始剤(1) 0.18g
・上記共増感剤(1) 0.07g
・表3記載の有機顔料分散物 0.40g
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・上記水溶性フッ素系界面活性剤(1) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.04g
(旭電化工業(株)製、プルロニックL44)
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0328】
【化55】


バインダーポリマー(3)
【0329】
<保護層塗布液>
・下記雲母分散液(1) 13.0g
・ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500) 1.3g
・2−エチルヘキシルスルホコハク酸ソーダ 0.2g
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル=1/1)質量平均分子量:7万 0.05g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.05g
・水 133g
【0330】
(雲母分散液(1))
水368gに合成雲母(「ソマシフME−100」:コープケミカル社製、アスペクト比:1000以上)の32gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)0.5μmになる迄分散し、雲母分散液(1)を得た。
【0331】
各平版印刷版原版(30)〜(35)を、現像液(1)を下記現像液(3)に変更した以外は実施例20と同様にして露光、加熱及び現像処理して平版印刷版を作製し、実施例20と同様にして評価した。結果を表Cに示す。
【0332】
現像液(3)
・水 100.00g
・ベンジルアルコール 1.00g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル
(オキシエチレン平均数n=13) 1.00g
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 0.50g
・アラビアガム 1.00g
・エチレングリコール 0.50g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
・炭酸ナトリウム 1.40g
・炭酸水素ナトリウム 0.59g
リン酸と水酸化ナトリウムを用いて現像液のpHが9.8となるように調整
【0333】
【表4】

【0334】
表Cの結果から明らかなように、本発明の平版印刷版原版は、pHが9.8の弱アルカリ性現像液による現像処理にもかかわらず、耐刷性を保持しながら、非画像部における残色及び印刷中の汚れにおいて優れた平版印刷版を作製することができる。また、平版印刷版原版を強制保存した場合にも、これらの特性は良好に維持されることがわかる。
【0335】
〔実施例28〜31及び比較例9〜10〕
[平版印刷版原版(36)〜(41)の作製]
【0336】
[アルミ支持体2の作製]
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A1050)を用い、下記に示す工程(a)〜(k)をこの順序で実施して表面処理した。
【0337】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはΦ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(Φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0338】
(b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2 溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0339】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0340】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8ms、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0341】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%水溶液でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アル
ミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0342】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0343】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0344】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%水溶液でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
硫酸を電解液として用いて陽極酸化処理を行った。電解液の硫酸濃度は170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。電流密度は約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0345】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
アルミニウム板を温度30℃の3号ケイ酸ソーダ1質量%水溶液の処理槽中へ10秒間、浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行うことにより、アルミニウム支持体2を作製した。シリケート付着量は3.6mg/m2であった。
【0346】
(下層の形成)
アルミ支持体2の表面上に、下記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が10mg/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させて下層を形成した。
【0347】
<下塗り層塗布液>
・表D記載の高分子化合物 1g
・メタノール 1000g
【0348】
(感光層の形成)
引き続いて、下記組成の感光層塗布液4をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の感光層を形成した。
【0349】
<感光層塗布液4>
・下記バインダーポリマー(2)(質量平均分子量:8万) 0.50g
・重合性化合物 1.15g
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート
(新中村化学工業(株)製、NKエステルM−315)
・下記重合開始剤(1) 0.20g
・下記赤外線吸収剤(1) 0.05g
・下記マイクロカプセル液(1) 2.00g
・下記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1.1万) 0.05g
・表D記載の有機顔料分散物ノール 0.40g
・1−メトキシ−2−プロパノール 18.00g
【0350】
【化56】

【0351】
<マイクロカプセル液(1)>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、下記の赤外線吸収剤(2)0.35g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製) 0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル溶液の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈してマイクロカプセル液(1)を作製した。平均粒径は0.3μmであった。
【0352】
【化57】

【0353】
(保護層の形成)
上記感光層上に上記保護層塗布液2を乾燥塗布質量が0.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥して保護層を設け、平版印刷版原版(36)〜(41)を作製した。
【0354】
各平版印刷版原版(36)〜(41)を、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で50%の平網画像を露光した後、実施例1と同様にして現像処理を行い平版印刷版を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表Dに示す。
【0355】
【表4】

【0356】
表Dの結果から明らかなように、露光光源を変更した場合でも、本発明の平版印刷版原版は、pHが7の中性現像液による現像処理にもかかわらず、耐刷性を保持しながら、非画像部における残色及び印刷中の汚れにおいて優れた平版印刷版を作製することができる。また、平版印刷版原版を強制保存した場合にも、これらの特性は良好に維持されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0357】
【図1】自動現像処理機の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0358】
61 回転ブラシロール
62 受けロール
63 搬送ロール
64 搬送ガイド板
65 スプレーパイプ
66 管路
67 フィルター
68 給版台
69 排版台
70 現像液タンク
71 循環ポンプ
72 平版印刷版原版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層、及び前記高分子化合物に吸着しない顔料を含有する感光層をこの順に有するpHが2〜11の現像液で現像可能な平版印刷版原版。
【請求項2】
前記顔料が、顔料吸着基を有する顔料分散剤で分散された顔料であって、前記親水性基と前記顔料吸着基が、以下の条件1、2の少なくとも何れかを満たすことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
条件1:親水性基が中性基であり顔料吸着基が酸性基、中性基又は塩基性基である
条件2:親水性基が塩基性基であり顔料吸着基が酸性基又は中性基である
【請求項3】
前記親水性基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版原版。
【化1】

式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、Lは2価の連結基を表し、R〜Rは、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表し、同一官能基内のL、L、R、R、R、R、R、R、Rが互いに結合して環を形成してもよい。nは繰り返し単位の平均値を表す数を表し、Xはカウンターアニオンを表し、Mはカウンターカチオンを表す。
【請求項4】
前記親水性基が、前記一般式(N−1)〜(N−7)、(B−1)から選択される官能基であることを特徴とする請求項3に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記顔料吸着基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版原版。
【化2】

式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、R11〜R18は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR19を表し、Yは、共有結合、酸素原子、硫黄原子、NR19、COまたはSOを表し、R19はR11と同義である。同一官能基内のL、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18が互いに結合して環を形成してもよい。
【請求項6】
前記顔料吸着基が、前記一般式(PA−2)、(PA−5)、(PN−1)、(PN−2)、(PB−1)、(PB−10)、(PB−11)、(PB−12)から選択される官能基であることを特徴とする請求項5に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
前記感光層が、更にラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、増感色素、共増感剤及びバインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
前記感光層の上に保護層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載
の平版印刷版原版。
【請求項9】
支持体上に、少なくとも(A1)支持体吸着性基及び(A2)親水性基を有する高分子化合物を含有する下塗り層、及び前記高分子化合物に吸着しない顔料を含有する感光層をこの順に有する平版印刷版原版をレーザーで画像露光した後、pHが2〜11の現像液の存在下で非露光部の感光層を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項10】
前記顔料が、顔料吸着基を有する顔料分散剤で分散された顔料であって、前記親水性基と前記顔料吸着基が、以下の条件1、2の少なくとも何れかを満たすことを特徴とする請求項9に記載の平版印刷版の作製方法。
条件1:親水性基が中性基であり顔料吸着基が酸性基、中性基又は塩基性基である
条件2:親水性基が塩基性基であり顔料吸着基が酸性基又は中性基である
【請求項11】
前記親水性基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする請求項10に記載の平版印刷版の作製方法。
【化3】

式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、Lは2価の連結基を表し、R1〜R7は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表し、同一官能基内のL、L、R、R、R、R、R、R、Rが互いに結合して環を形成してもよい。nは繰り返し単位の平均値を表す数を表し、Xはカウンターアニオンを表し、Mはカウンターカチオンを表す。
【請求項12】
前記親水性基が、上記一般式(N−1)〜(N−7)、(B−1)から選択される官能基であることを特徴とする請求項11に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項13】
前記顔料吸着基が、以下の一般式で表される官能基から選択されることを特徴とする請
求項10に記載の平版印刷版の作製方法。
【化4】

式中、Lは化合物母核に連結するための2価の連結基を表し、R11〜R18は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−OR、−NRR’、−SR、−COR、−COOR、−CONRR’、−OCOR、−OCONRR’、−OCOOR、−NRCOR’、−NRCOOR’、−NRCONR’R’’、−N=R、−SOR、−SOR、−SONRR’、水素原子、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基(R、R’、R’’は、各々独立してアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基または水素原子を表し、あるいはそれぞれが互いに結合して環を形成してもよい)を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR19を表し、Yは、共有結合、酸素原子、硫黄原子、NR19、COまたはSOを表し、R19はR11と同義である。同一官能基内のL、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18が互いに結合して環を形成してもよい。
【請求項14】
前記顔料吸着基が、前記一般式(PA−2)、(PA−5)、(PN−1)、(PN−2)、(PB−1)、(PB−10)、(PB−11)、(PB−12)から選択される官能基であることを特徴とする請求項13に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項15】
前記感光層が、更にラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、増感色素、共増感剤及びバインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項16】
前記感光層の上に保護層を有することを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項17】
前記レーザーで画像露光した後、70℃以上の温度で加熱してから、pHが2〜11の現像液の存在下で非露光部の感光層を除去することを特徴とする請求項9〜16のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−85765(P2010−85765A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255518(P2008−255518)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】