説明

平版印刷版用支持体および平版印刷版原版

【課題】得られる平版印刷版が優れた耐刷性および耐汚れ性を有し、低アルカリ性の現像液で現像処理することができる平版印刷版原版、ならびに、この平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体の提供。
【解決手段】アルミニウム板に、少なくとも陽極酸化処理および封孔処理をこの順に施して得られる平版印刷版用支持体であって、
前記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に、熱により体積が増加する物質を有し、
前記封孔処理により、前記マイクロポアの開口部を親水性皮膜により封孔してなる平版印刷版用支持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版用支持体および平版印刷版原版に関する。詳しくは、耐汚れ性および耐刷性のいずれにも優れる平版印刷版原版、ならびに、この平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷法は、水と油が本質的に混じり合わないことを利用した印刷方式であり、これに使用される平版印刷版の印刷版面には、水を受容して油性インキを反撥する領域(以下、この領域を「非画像部」という。)と、水を反撥して油性インキを受容する領域(以下、この領域を「画像部」という。)とが形成される。
【0003】
平版印刷版に用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」ともいう。)の表面は、非画像部を担うように使用されるために親水性および保水性が優れていることや、その上に形成される画像記録層との密着性が優れていることなど、相反する種々の性能が要求される。平版印刷版用支持体は、表面の親水性が低すぎると、印刷時に非画像部にインキが付着するようになり、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する。すなわち、耐汚れ性が悪くなる。また、表面の保水性が低すぎると、印刷時に示し水を多くしないとシャドー部のつまりが発生するなどの不都合が生じる。また、画像記録層との密着性が低すぎると、画像記録層がはがれやすくなり、印刷枚数が多い場合の耐久性(耐刷性)が悪化する。
【0004】
そこで、耐汚れ性や、耐刷性などの各種性能を向上させるために、本出願人は、例えば、「粗面化したアルミニウム板を陽極酸化処理して陽極酸化皮膜を形成する際、該処理液として濃度200〜500g/lの硫酸水溶液を使用することを特徴とする、光重合組成物を用いる直接製版可能なネガ型平版印刷版用支持体の製造方法。」を提案している(特許文献1参照。)。
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載の発明は、マイクロポアの開口径を大きくし、数を増やし、画像記録層をマイクロポア中に僅かに取り込むことで発現するアンカー効果により、平版印刷版用支持体表面と画像記録層との密着性を向上させることを狙っている。
しかしながら、このようなアンカー効果を利用した場合には、耐刷性は向上するものの、非露光部においても画像記録層がマイクロポア中に取り込まれているため、現像後においても非画像部において画像記録層が残存する場合があり、その結果、耐汚れ性が悪くなることがあった。
そのため、上記特許文献1に記載の発明では、非画像部において画像記録層の残存を抑制すべく、アニオン系界面活性剤を含有するpH12以下、より好ましくは8〜11のアルカリ水溶液が現像液として使用される旨が記載されている。
【0006】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。そのため、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−263959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、得られる平版印刷版が優れた耐刷性および耐汚れ性を有し、低アルカリ性の現像液で現像処理することができる平版印刷版原版、ならびに、この平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達するために鋭意検討した結果、陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に熱により体積が増加する物質を有する平版印刷版用支持体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)アルミニウム板に、少なくとも陽極酸化処理および封孔処理をこの順に施して得られる平版印刷版用支持体であって、
上記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に、熱により体積が増加する物質(以下、単に「体積増加物質」という。)を有し、
上記封孔処理により、上記マイクロポアの開口部を親水性皮膜により封孔してなる平版印刷版用支持体。
(2)上記体積増加物質が、熱により分解し、発泡する物質(以下、単に「発泡物質」ともいう。)である上記(1)に記載の平版印刷版用支持体。
(3)上記陽極酸化処理の前に、更に粗面化処理を施して得られる上記(1)または(2)に記載の平版印刷版用支持体。
(4)上記封孔処理が、フッ化ジルコン酸塩を用いたフッ化ジルコン酸処理であり、上記親水性皮膜が、フッ素、ジルコニウムおよびリンを含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、サーマルネガ型感光性組成物からなる画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
(6)上記(5)に記載の平版印刷版原版に、画像様露光により画像を記録させる画像記録工程と、
画像を記録した上記平版印刷版原版に、pHが10以下の溶液を用いて現像を行い平版印刷版を得る現像工程とを具備する平版印刷版の製版方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、得られる平版印刷版が優れた耐刷性および耐汚れ性を有し、低アルカリ性の現像液で現像処理することができる平版印刷版原版、ならびに、この平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体を提供することができる。
このように本発明の平版印刷版原版は、低アルカリ性の現像液で現像処理することができるため現像処理に伴う廃液量を軽減することが可能となり、また、サーマルネガ型の画像記録層を設けているためCTP技術に適応可能であり、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[平版印刷版用支持体]
本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板に、少なくとも陽極酸化処理および封孔処理をこの順に施して得られる平版印刷版用支持体であって、該陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に体積増加物質を有し、該封孔処理により、該マイクロポアの開口部を親水性皮膜により封孔してなるものである。
以下、この体積増加物質について詳述する。
【0013】
〔体積増加物質〕
本発明においては、上記体積増加物質は、露光時の加熱により体積が増加する物質であれば特に限定されない。
しかしながら、上記体積増加物質は、画像記録層の塗布乾燥時の熱などにより100℃近くの温度に曝される可能性あるため、当該物質の分解温度は100℃以上でできるだけ高いことが好ましい。また、レーザーによる画像露光の際に支持体表面が到達する温度として推測される200℃前後と推定されているため、上記体積増加物質の分解温度は、200℃前後以下の温度であるのが好ましい。
【0014】
このような体積増加物質としては、得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版の耐刷性がより良好となる理由から、発泡物質が好適に例示される。
上記発泡物質としては、具体的には、例えば、アジゾカルボンアミド(ADCA:C2442)、ジニトロペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド(OBSH)、5,5′−ビス−1H−テトラゾール(BHT)などの有機系材料;炭酸水素ナトリウムなどの無機炭酸塩を主成分とするもの;等が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0015】
上記で例示する発泡物質の分解温度は、以下のとおりである。
ADCAの分解温度は140〜220℃程度であり、DPTの分解温度は120〜210℃程度であり、OBSHの分解温度は160℃程度であり、炭酸水素ナトリウムの分解温度は150℃である。
一方、BHTは、分解温度(230〜380℃)高いため、発泡助剤と混合し、分解温度を下げることにより用いるのが好ましい。
【0016】
このような発泡物質は、分解に伴ってCO2系またはN2系のガスを発生するものであるが、CO2系のガスを発生する物質であるのが好ましい。
また、このような発泡物質のうち、分解時にホルマリン臭等が生じない理由から、炭酸水素ナトリウムであるのが好ましい。
更に、このような発泡物質は、マイクロポア内部に充填された後、該マイクロポアの開口部が親水性皮膜により封孔されるため、疎水性の高い有機素材であっても使用することができる。
【0017】
本発明の平版印刷版用支持体は、このような発泡物質等の体積増加物質をマイクロポア内に有しているため、該平版印刷版用支持体を用いた本発明の平版印刷版原版が、低アルカリ性の現像液で現像処理することができ、平版印刷版としたときの耐刷性および耐汚れ性に優れる。
ここで、耐刷性が優れる理由は、平版印刷版原版を現像する際の露光時の加熱により画像記録層下部の平版印刷版用支持体表面も加熱され、これによりマイクロポア内で体積増加物質の体積が増加すことによって、露光部、即ち、画像部を形成する部分の画像記録層下部の平版印刷版用支持体表面に、体積増加物質が親水性皮膜を押し上げた凸部が形成され、アンカー効果を発現するためと考えられる。
また、耐汚れ性に優れ、低アルカリ性の現像液で現像処理することができる理由は、非露光部の画像記録層下部の平版印刷版用支持体表面は加熱されず、マイクロポア内の体積増加物質はそのまま保持されるため、非露光部においては上述したアンカー効果が発現せず、現像処理により容易に画像記録層が除去されるためと考えられる。
【0018】
次に、本発明を適用した平版印刷版用支持体の具体的な製造方法について説明する。
【0019】
〔表面処理〕
本発明の平版印刷版用支持体は、その製造方法を特に限定されないが、例えば、後述するアルミニウム板に、少なくとも、陽極酸化処理と、該陽極酸化処理により形成する陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に上記体積増加物質を充填する充填処理と、充填後にマイクロポアの開口部を親水性皮膜で封孔する封孔処理とを、この順に施すことで得られる。
また、本発明の平版印刷版用支持体は、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理、アルカリエッチング処理、親水化処理を施すのが好ましい。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
【0020】
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−024168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
【0021】
また、放電加工、ショットブラスト、レーザ、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザ等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。
また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
【0022】
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
【0023】
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点で好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
【0024】
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
【0025】
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いるのが好適である。
電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1および第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。
この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。
この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
【0026】
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
【0027】
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
【0028】
酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%であるのが好ましく、0.7〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
【0029】
塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
【0030】
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0031】
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図1に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるのが好ましい。1msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
【0032】
台形波交流のduty比(ta/T)は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。
台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
【0033】
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図2に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図2において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
【0034】
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
【0035】
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2であるのが好ましく、50〜300C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2であるのが好ましい。
また、例えば、15〜35質量%の高濃度の硝酸電解液を用いて30〜60℃で電解を行ったり、0.7〜2質量%の硝酸電解液を用いて80℃以上の高温で電解を行ったりすることで、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
【0036】
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2であるのが好ましく、20〜70C/dm2であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2であるのが好ましい。
【0037】
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜2000C/dm2と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能である。この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。
【0038】
本発明においては、第1の電解粗面化処理として、上述した硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸電解)を行い、第2の電解粗面化処理として、上述した塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)を行うのが好ましい。
【0039】
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1および第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2、より好ましくは5〜30C/dm2で行われる。陰極電気量が3C/dm2未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dm2を超えると、スマット付着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。また、電解液は上記第1および第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
【0041】
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、上記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
【0042】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/m2であるのが好ましく、1〜5g/m2であるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m2未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/m2であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
【0043】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2であるのが好ましく、5〜15g/m2であるのがより好ましい。エッチング量が3g/m2未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/m2を超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
【0044】
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/m2であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。
電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
【0045】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0046】
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
【0047】
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
【0048】
<デスマット処理>
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
【0049】
<陽極酸化処理>
本発明においては、以上のように必要に応じて処理されたアルミニウム板に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0051】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
【0052】
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
【0053】
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
【0054】
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
【0055】
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2 以下になるように行うのが好ましい。
【0056】
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図3に示す装置が好適に用いられる。図3は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図3中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。上記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、上記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0057】
図3の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
【0058】
<充填処理>
本発明においては、上記陽極酸化処理により形成する陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に、上述した体積増加物質を充填する充填処理が施される。
マイクロポアの内部に上述した体積増加物質を充填する方法は特に限定されないが、例えば、上述した体積増加物質を溶解した溶液を上記陽極酸化処理後のアルミニウム板表面に塗布する方法;上述した体積増加物質を溶解した溶液に上記陽極酸化処理後のアルミニウム板を浸漬する方法;等が挙げられる。
【0059】
また、上記陽極酸化処理により形成する陽極酸化皮膜は、非常に高活性であるため、乾燥し、空気に触れた状態で放置すると、疎水性に変化し、充填を阻害する場合がある。
そのため、本発明においては、上述した体積増加物質を充填する充填処理は、陽極酸化後速やかに行われることが好ましい。具体的には、アルミウェブの状態で陽極酸化処理された後、連続的に充填処理が行われるのが好ましい。
【0060】
<封孔処理>
本発明においては、上記充填処理により上述した体積増加物質をマイクロポアに充填した後に、マイクロポアの開口部を親水性皮膜で封孔する封孔処理が施される。
封孔処理は、例えば、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。具体的には、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
【0061】
また、他の封孔処理の方法としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)法が挙げられる。この方法においては、平版印刷版用支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるかまたは電解処理される。
更に、特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムや、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
更に、特開2000−213741号公報、特開2000−291851号公報、特開2001−194249号公報、特開2001−194298号公報、特開2003−331342、特開2003−329951に開示されているようなフッ素化合物とリン化合物の混合系処理も用いられる。
【0062】
本発明においては、上記封孔処理は、マイクロポアの開口部を親水性皮膜で封孔できる処理であれば、上記で例示した処理に限られず、例えば、充填処理後のアルミニウム板表面の親水性化合物による被覆処理、末端架橋性グラフとポリマーによる被覆処理であってもよく、後述する親水化処理等であってもよい。
【0063】
親水性化合物による被覆としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの樹脂やコロイダルシリカなどの薄層による被覆が好適に挙げられる。また、親水性化合物による被覆としては、平版印刷版の親水性層として提案されている被覆はいずれも使用可能である。
一方、末端架橋性グラフトポリマーで被覆すると、保水性も付与され、平版印刷版としての耐汚れ性がより向上するために好ましい。
【0064】
このような封孔処理のうち、フッ化ジルコン酸処理であるのが好ましい。フッ化ジルコン酸処理は、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム等のフッ化ジルコン酸塩を用いて行われる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウムを用いるのが好ましい。これにより、平版印刷版原版の現像性(感度)が優れたものとなる。フッ化ジルコン酸処理に用いられるフッ化ジルコン酸溶液の濃度は、0.01〜2質量%であるのが好ましく、0.1〜0.3質量%であるのがより好ましい。
また、フッ化ジルコン酸塩溶液は、リン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。リン酸二水素ナトリウムの濃度は、0.01〜3質量%であるのが好ましく、0.1〜0.3質量%であるのがより好ましい。
更に、フッ化ジルコン酸塩溶液は、アルミニウムイオンを含有していてもよい。その場合、フッ化ジルコン酸塩溶液のアルミニウムイオン濃度は、1〜500mg/Lであるのが好ましい。
このようなフッ化ジルコン酸処理のうち、フッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムを含有するフッ化ジルコン酸塩溶液を用いるのが、形成される親水性皮膜がフッ素、ジルコニウムおよびリンを含有し、柔軟性が高い理由から好ましい。
【0065】
封孔処理の温度は、20〜90℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのがより好ましい。
封孔処理の時間(溶液中への浸せき時間)は、1〜20秒であるのが好ましく、5〜15秒であるのがより好ましい。
【0066】
封孔処理により形成される親水性皮膜の膜厚は、1〜50nmであるのが好ましく、5〜20nmであるのがより好ましい。膜厚がこの範囲であると、上述したアンカー効果の発現が阻害されず、耐刷性がより良好となるため好ましい。
【0067】
<親水化処理>
本発明においては、上記封孔処理の後、親水化処理を行ってもよい。
親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号明細書に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
【0068】
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
【0069】
本発明においては、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
【0070】
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0071】
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
【0072】
また、本発明においては、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている方法等により、親水化処理を行うことができる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
【0073】
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0074】
次に、本発明の平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム板について説明する。
【0075】
〔アルミニウム板(圧延アルミ)〕
本発明の平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム板は、公知のアルミニウム板を用いることができる。また、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる、純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
【0076】
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。上記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
【0077】
このように本発明の平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
【0078】
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
【0079】
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
【0080】
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
【0081】
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
【0082】
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
【0083】
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
【0084】
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
【0085】
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
【0086】
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
【0087】
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
【0088】
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
【0089】
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
【0090】
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
【0091】
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
【0092】
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
【0093】
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
【0094】
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
【0095】
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
【0096】
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
【0097】
本発明においては、このようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
【0098】
本発明の平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
【0099】
本発明の平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1mm〜0.6mm程度であり、0.15mm〜0.4mmであるのが好ましく、0.2mm〜0.3mmであるのがより好ましい。この厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
【0100】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、上述した本発明の平版印刷版用支持体上に、サーマルネガ型感光性組成物からなる画像記録層(以下、「サーマルネガ型画像記録層」ともいう。)を設けてなる平版印刷版原版である。
以下、このサーマルネガ型感光性組成物について詳述する。
【0101】
〔サーマルネガ型感光性組成物〕
サーマルネガ型感光性組成物は、硬化性組成物と光熱変換物質とを含有し、画像露光に受けた光熱変換物質から発生した熱により硬化性組成物が硬化し、表面がインク受容性となる画像記録層を形成するものであれば特に限定されない。
ここで、硬化性化合物としては、具体的には、例えば、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する重合系硬化性組成物;熱により酸を発生する化合物(熱酸発生剤)と、酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する酸架橋系硬化性組成物;熱により融着硬化する疎水性熱溶融性微粒子ポリマーを含有する硬化性組成物;これらの硬化性組成物をマイクロカプセルに内包させた硬化性組成物;疎水性化前駆体および媒質を併用するゾルゲル変換系の硬化性組成物(例えば、特開2003−118258号公報に記載されたもの);等が挙げられる。
このようなサーマルネガ型感光性組成物からなるサーマルネガ型画像記録層は、CTPに有用な赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の画像記録層である。
【0102】
サーマルネガ型感光性組成物に含まれる光熱変換物質は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、この電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などにより、併存するラジカル発生剤、熱酸発生剤、疎水性熱溶融性微粒子ポリマーに作用し、化学変化を生起させる。
ラジカル発生剤に作用する場合、ラジカルを生成することになるが、このラジカルの生成機構としては、例えば、光熱変換物質の光熱変換機能により発生した熱が、後述するラジカル発生剤(例えば、スルホニウム塩等)が熱分解しラジカルを発生する機構;光熱変換物質が発生した励起電子が、ラジカル発生剤(例えば、活性ハロゲン化合物等)に移動しラジカルを発生する機構;励起した光熱変換物質に、ラジカル発生剤(例えば、ボレート化合物等)から電子移動してラジカルを発生する機構;等が挙げられる。このような機構により生成したラジカルにより、後述するラジカル重合性化合物が重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部となる。
一方、熱酸発生剤に作用する場合は、熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、露光部が硬化して画像部となる。
また、疎水性熱溶融性微粒子ポリマーに作用する場合は、熱により微粒子ポリマーが溶融し、融着することにより、露光部が硬化して画像部となる。
【0103】
サーマルネガ型感光性組成物が光熱変換物質を含有することにより、本発明の平版印刷版原版は、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザー光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
【0104】
次に、サーマルネガ型感光性組成物に用いることができる各成分について説明する。
【0105】
<硬化性化合物>
(ラジカル発生剤)
重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル発生剤は、後述するラジカル重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有するものであって、例えば、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤;赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤;励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤;等のエネルギーを付与することでラジカルを生成させるものである。
具体的には、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが挙げられる。これら複数の異なるラジカル発生機構を有する化合物を併用して用いてもよい。
これらのうち、感度と生保存性との両立といった観点からオニウム塩が好ましく、中でも、スルホニウム塩が特に好ましい。
【0106】
本発明において好適に用いることができるスルホニウム塩ラジカル発生剤としては、下記一般式(I)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【0107】
【化1】

【0108】
一般式(I)中、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を表す。好ましい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基等が挙げられる。
また、Z11-は、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオンおよびスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表す。好ましい対イオンとしては、例えば、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、カルボキシレートイオン、アリールスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0109】
以下に、上記一般式(I)で表されるオニウム塩の具体例([OS−1]〜[OS−12])を挙げるが、オニウム塩はこれらに限定されるものではない。
【0110】
【化2】

【0111】
【化3】

【0112】
その他のスルホニウム塩ラジカル発生剤としては、特開2002−148790公報、特開2002−148790公報、特開2002−350207公報、特開2002−6482公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に例示される。ただし、これらの中でも、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
【0113】
このようなスルホニウム塩ラジカル発生剤を用いることにより、ラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。そのため、後述する水溶性保護層の高い酸素遮断機能とあいまって、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性がより向上する。
また、スルホニウム塩ラジカル発生剤はそれ自体が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生が効果的に抑制されるという利点をも有することになる。
【0114】
また、上記重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル発生剤は、上記スルホニウム塩ラジカル発生剤以外に、他のラジカル発生剤を用いることができる。
他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物等が挙げらる。中でも、オニウム塩が、高感度であるため好ましい。
【0115】
スルホニウム塩以外の他のオニウム塩は、酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能し、その具体例としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等が挙げられる。
ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩のラジカル発生剤としては、それぞれ、下記一般式(II)および(III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【0116】
【化4】

【0117】
一般式(II)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を表す。好ましい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基等が挙げられる。
また、Z21-は、上述した一般式(I)中のZ11-と同義の対イオンを表す。
【0118】
一般式(III)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基等が挙げられる。
また、Z31-は、上述した一般式(I)中のZ11-と同義の対イオンを表す。
【0119】
以下に、一般式(II)で表されるオニウム塩の具体例([OI−1]〜[OI−10])、および、一般式(III)で示されるオニウム塩の具体例([ON−1]〜[ON−5])を挙げるが、オニウム塩はこれらに限定されるものではない。
【0120】
【化5】

【0121】
【化6】

【0122】
【化7】

【0123】
その他のオニウム塩ラジカル発生剤としては、特開2001−133696号公報に記載されたオニウム塩等も好適に例示される。ただし、これらの中でも、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
【0124】
本発明においては、上記重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル発生剤は、極大吸収波長が400nm以下であるのが好ましく、360nm以下であるのがより好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0125】
また、本発明においては、上記重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上のラジカル発生剤を併用する場合は、例えば、好適に用いることができるスルホニウム塩ラジカル発生剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩ラジカル発生剤と他のラジカル発生剤を併用してもよい。
スルホニウム塩ラジカル発生剤と他のラジカル発生剤とを併用する場合の含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
【0126】
更に、本発明においては、上記重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル発生剤の総含有量は、感度および印刷時の非画像部に汚れの発生の観点から、画像記録層を構成する全固形分に対して、0.1〜50質量%であるのが好ましく、0.5〜30質量%であるのがより好ましく、1〜20質量%であるのが更に好ましい。
また、ラジカル発生剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0127】
(ラジカル重合性化合物)
重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物である。
本発明においては、ラジカル重合性化合物としては、本発明の技術分野において従来公知のものを用いることができる。また、ラジカル重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体およびオリゴマー、ならびに、これらの混合物およびこれらの共重合体等の化学的形態を有する。
【0128】
ここで、モノマーおよびその共重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、そのアミド類等が挙げられる。
具体的には、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類等が好適に挙げられる。
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸のエステル類またはアミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類またはエポキシ類との付加反応物あるいは単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に挙げられる。
更に、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸のエステル類またはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物;ハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸のエステル類またはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物;等も好適に挙げられる。
更に、その他の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群も使用することも可能である。
【0129】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
【0130】
アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0131】
メタクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が挙げられる。
【0132】
イタコン酸エステルとしては、具体的には、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
また、クロトン酸エステルとしては、具体的には、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
更に、イソクロトン酸エステルとしては、具体的には、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
更に、マレイン酸エステルとしては、具体的には、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
【0133】
その他のエステルとしては、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類;特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの;特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの;等も好適に挙げられる。
【0134】
本発明においては、このようなエステルのモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0135】
一方、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーとしては、具体的には、例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の好ましいアミド系のモノマーの例としては、特公昭54−21726号公報に記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0136】
また、上記重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル重合性化合物としては、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適に例示される。
ウレタン系付加重合性化合物としては、具体的には、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(1)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物;特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類等が挙げられる。
【0137】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (1)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
【0138】
更に、上記重合系硬化性組成物に用いることができるラジカル重合性化合物としては、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類も例示される。分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物を用いることにより、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0139】
その他のラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。
更に、所望に応じて、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する化合物も用いることができる。
更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも用いることができる。
【0140】
本発明においては、このようなラジカル重合性化合物について、構造、単独使用または併用、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。
例えば、次のような観点から選択される。
感光スピードの観点から、1分子あたりの不飽和基の含有量が多い構造であるのが好ましく、2官能以上であるのが好ましい。
画像部の強度を高くする観点から、1分子あたりの不飽和基の基数は、3官能以上のものであるのが好ましい。
感光性と強度の両方を調節する観点から、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用する方法も有効である。
感光スピードや膜強度の観点から、大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物が好ましいが、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。
サーマルネガ型感光性組成物中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性の観点から、特に、重合化合物の選択、その使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
平版印刷版用支持体や後述する水溶性保護層等の密着性の観点から、特定の構造を選択することもあり得る。
【0141】
重合系硬化性組成物中のラジカル重合性化合物の含有量は、感度、相分離の発生、画像記録層の粘着性、更には、現像液からの析出性の観点から、重合系硬化性組成物中の固形分に対して、5〜80質量%であるのが好ましく、40〜75質量%であるのがより好ましい。
また、ラジカル重合性化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
更に、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
更に、本発明の平版印刷版原版では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
【0142】
(熱酸発生剤)
酸架橋系硬化性組成物に用いることができる熱酸発生剤としては、具体的には、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
【0143】
(架橋剤)
酸架橋系硬化性組成物に用いることができる架橋剤としては、具体的には、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
【0144】
(アルカリ可溶性高分子化合物)
酸架橋系硬化性組成物に用いることができるアルカリ可溶性高分子化合物としては、具体的には、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
【0145】
<光熱変換物質>
上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができる光熱変換物質としては、吸光度が0.3×103cm-1以上、好ましくは1×103cm-1以上、より好ましくは1×104cm-1以上で、かつ、吸収光が実質的に蛍光や燐光に変換されない物質であるのが好ましい。
なお、吸光度は、透過濃度を厚みで除した値である。また、染料のように媒質中に実質的に分子分散している場合は、媒質の光吸収係数が上記の値である。
いうまでもなく、多くの物質は多少とも光を吸収し、光を吸収すればそれによって励起したその物質のエネルギー準位は、基底準位に戻るときに蛍燐光を発しないかぎり、熱の放出となるので、厳密には殆どの物質がたとえ僅かではあっても光熱変換作用を有しているといえる。
そのため、光熱変換性の物質という場合には、目的とする熱変化をもたらすことができる大きさの光吸収特性を有する物質を指すのが適切である。
したがって、本発明においては、光熱変換物質は、その目的から少なくとも上記の吸光度を有しているのが好ましく、具体的には、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等の金属化合物、非金属単体および化合物、炭素単体、赤外線吸収剤(顔料および染料)のいずれであってもよい。
以下、これらの光熱変換物質について詳述する。
【0146】
(光熱変換性の金属化合物微粒子)
上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができる光熱変換性の金属化合物微粒子は、それ自体が疎水性の物質からなるものも、親水性の物質からなるものも、またその中間のもののいずれでもよい。
【0147】
この種の好ましい金属化合物は、遷移金属の酸化物、周期律表の2〜8族の金属元素の硫化物および周期律表の3〜8族の金属の窒化物である。
遷移金属酸化物としては、具体的には、例えば、鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ビスマス、ルテニウム、バナジウムなどの酸化物が挙げられる。また、必ずしも遷移金属に含めない分類法もあるが、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、水銀、カドミウム、銀、銅の酸化物も本発明に用いることができる。
具体的には、FeO、Fe2 3 、Fe3 4 、CoO、Cr2 3 、MnO2 、ZrO2、Bi2 3 、CuO、CuO2 、AgO、PbO、PbO2 、VOx (x=1〜5)が好適に例示される。なお、VOx には、黒色のVO、V2 3 、VO2 や褐色のV2 5 が挙げられる。
【0148】
その他の例としては、TiOx (x=1.0〜2.0)、SiOx (x=0.6〜2.0)、AlOx (x=1.0〜2.0)も挙げることができる。
TiOx (x=1.0〜2.0)には、黒色のTiO、黒紫色のTi2 3 、結晶形と狭雑物によって種々の色を呈するTiO2 類がある。
また、SiOx (x=0.6〜2.0)には、SiO、Si3 2 、無色あるいは共存物質によって紫、青、赤などの色を示すSiO2 が挙げられる。
更に、AlOx (x=1.5)には、無色あるいは共存物質によって赤、青、緑などに呈色するコランダムなどが挙げられる。
【0149】
金属酸化物が多価金属の低次酸化物の場合は、光熱変換物質であって、かつ自己発熱型の空気酸化反応物質でもある場合がある。このような場合、光吸収したエネルギーのほかに自己発熱反応の結果発生した熱エネルギーも利用できるため好ましい。
これらの多価金属の低次酸化物は、Fe、Co、Niなどの低次酸化物が挙げられる。具体的には、酸化第一鉄、四三酸化鉄、一酸化チタン、酸化第一錫、酸化第一クロムなどが挙げられる。その中でも酸化第一鉄、四三酸化鉄および一酸化チタンが好ましい。
【0150】
ここで、自己発熱反応が起こるかどうかは、示差熱天秤(TG/DTA)により容易に確認することができる。具体的には、示差熱天秤に、自己発熱反応物質を挿入して、温度を一定速度で上昇させていくと、ある温度で発熱ピークが出現して発熱反応が起こったことが観測される。金属または低次酸化金属の酸化反応を自己発熱反応として用いた場合、発熱ピークが現れるとともに、熱天秤では重量が増えることも同様に観測される。繰り返しになるが、光・熱変換機構に加えて自己発熱反応エネルギーを利用することにより、従来よりも単位輻射線量当たり、より多くの熱エネルギーを、しかも持続的に利用することができ、そのために感度を向上させることができる。
【0151】
光熱変換性の金属化合物微粒子が金属硫化物からなる場合、好ましい金属硫化物は、遷移金属などの重金属硫化物である。
具体的には、鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ストロンチウム、錫、銅、銀、鉛、カドミウム等の硫化物が好適に例示され、中でも、硫化銀、硫化第一鉄および硫化コバルトが好ましい。
【0152】
光熱変換性の金属化合物微粒子が金属窒化物からなる場合、好ましい金属窒化物は、金属のアジド化合物である。特に、銅、銀および錫のアジド化物が好ましい。これらのアジド化合物は、光分解によって発熱する自己発熱性化合物でもある。
その他の好ましい金属窒化物としては、例えば、TiNx (x=1.0〜2.0)、SiNx (x=1.0〜2.0)、AlNx (x=1.0〜2.0)等が挙げられる。
具体的には、TiNx (x=1.0〜2.0)としては、青銅色のTiNや褐色のTiNx (x=1.3)が例示され、SiNx (x=1.0〜2.0)としては、Si2 3、SiN、Si3 4 等が例示され、AlNx (x=1.0〜2.0)としては、AlN等が例示される。
【0153】
上記の各金属酸化物、硫化物および窒化物は、いずれも公知の製造方法によって得られる。また、チタンブラック、鉄黒、モリブデン赤、エメラルドグリーン、カドミウム赤、コバルト青、紺青、ウルトラマリンなどの名称で市販されているものも多い。
【0154】
これらの金属化合物の粒子サイズは、粒子を構成する物質の屈折率や吸光係数によって最適サイズが異なるが、一般に0.005〜5μmであり、0.01〜3μmであるのが好ましい。粒子サイズが、微小に過ぎると光散乱により、粗大に過ぎると粒子界面反射により、光吸収の非効率化が起こる。
【0155】
(光熱変換性の金属微粒子)
上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができる金属微粒子の多くは、光熱変換性であってかつ自己発熱性でもあって光吸収によって熱を発生させた上にその熱をトリガーとする発熱反応によってさらに多量の熱を供給する。
【0156】
金属微粒子としては、具体的には、例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb等が挙げられる。
これらの金属微粒子は、光熱変換性であると同時に自己発熱性でもある。中でも、吸収光の光熱変換によって得た熱エネルギーにより、酸化反応等の発熱反応を容易に起こすものが好ましく、具体的には、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、In、Sn、Wが好ましい。その中でも、特に、輻射線の吸光度が高く、自己発熱反応熱エネルギーの大きい理由から、Fe、Co、Ni、Cr、Ti、Zrが好ましい。
【0157】
また、これらの金属は、単体粒子のみでなく、2成分以上の合金で構成されていてもよく、また、金属と前記した金属酸化物、窒化物、硫化物および炭化物等で構成された粒子でもよい。金属単体の方が酸化等の自己発熱反応熱エネルギーは大きいが、空気中での取り扱いが煩雑で、空気に触れると自然発火する危険があるものもある。そのような金属粉体は、表面から数nmの厚みは金属の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等で覆われている方が好ましい。これらの粒子の粒径は、10μm以下であるのが好ましく、0.005〜5μmであるのがより好ましく、0.01〜3μmであるのが更に好ましい。0.01μm以下では、粒子の分散が難しく、10μm以上では、印刷物の解像度が悪くなる。
【0158】
(光熱変換性の非金属単体)
上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができる非金属単体および非金属化合物の光熱変換性微粒子としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、骨炭(ボーンブラック)などの単体粒子のほか各種の有機、無機顔料が挙げられる。
【0159】
(赤外線吸収剤)
上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができる赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、上記重合開始剤に作用して、該重合開始剤に高感度で化学変化を生起させてラジカルを生成させるのに有用である。
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができる赤外線吸収剤は、波長750nm〜1400nmに吸収極大を有する染料または顔料であり、中でも、カチオン性染料であることが好ましい。赤外線吸収剤として対イオンを有する構造の化合物(カチオン性染料)を用いる場合には、該対イオンがハロゲンイオンでないものを選択することが好ましい。
【0160】
染料としては、例えば、市販の染料および例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、ポリメチン色素、ジインモニウム色素、トリアリールメタン色素、金属ジチオレン等の染料が挙げられる。
【0161】
また、染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号などの各公報、英国特許第434,875号明細書に記載のシアニン染料;特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号などの各公報に記載のメチン染料;特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号などの各公報に記載のナフトキノン染料;特開昭58−112792号などの公報に記載のスクワリリウム色素;等が好適に例示される。
【0162】
更に、染料としては、例えば、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いることができ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩;特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩;特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載のピリリウム系化合物;特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素;米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩;特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に記載のピリリウム化合物;等も好適に用いることができる。
更にまた、染料としては、例えば、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料も好適に用いることができる。
【0163】
染料のその他の例としては、コバルトグリーン(C.I.77335)、エメラルドグリーン(C.I.77410)、フタロシアニンブル−(C.I.74100)、銅フタロシアニン(C.I.74160)、ウルトラマリン(C.I.77007)、紺青(C.I.77510)、コバルト紫(C.I.77360)、パリオジェン赤310(C.I.71155)、パーマネントレッドBL(C.I.71137)、ペリレン赤(C.I.71140)、ローダミンレーキB(C.I.45170:2)、ヘリオボルドーBL(C.I.14830)、ライトファーストレッドトーナーR(C.I.12455),ファーストスカーレットVD、リゾールファーストスカーレットG(C.I.12315)、パーマネントブラウンFG(C.I.12480)、インダンスレンブリリアントオレンジRK(C.I.59300)、赤口黄鉛(C.I.77601)、ハンザイエロー10G(C.I.11710)、チタンイエロー(C.I.77738)、亜鉛黄(C.I.77955)、クロムイエロー(C.I.77600)、以下に例示するような特願2001−6326号明細書、特願2001−237840号明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0164】
【化8】

【0165】
これらの染料のうち、赤外線領域に強い吸収域をもつ染料が好ましく、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素、フタロシアニン染料、ポリメチン色素、ジインモニウム色素、トリアリールメタン色素、金属ジチオレンであるのが好ましい。中でも、シアニン色素、インドレニンシアニン色素、ポリメチン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム色素、ジインモニウム色素、フタロシアニン染料、がより好ましく、下記一般式(a)で示されるシアニン色素が更に好ましい。
【0166】
【化9】

【0167】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。
【0168】
【化10】

【0169】
ここで、X2は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環またはヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。なお、ここで、ヘテロ原子は、N、S、O、ハロゲン原子またはSeを示すものである。
また、Xa-は、後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基またはハロゲン原子を表す。
【0170】
上記一般式(a)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示し、それぞれが互いに結合し、環を形成していてもよい。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0171】
上記一般式(a)中、Ar1およびAr2は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。芳香族炭化水素基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環が好適に例示される。また、置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が好適に例示される。
1およびY2は、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
3およびR4は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が好適に例示される。
5、R6、R7およびR8は、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよく、原料の入手性から、水素原子であるのが好ましい。
また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で表されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。このようなZa-としては、具体的には、例えば、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、スルホン酸イオンであるのが好ましく、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、アリールスルホン酸イオンであるのがより好ましい。
【0172】
本発明において、上記式(a)で表されるシアニン色素としては、具体的には、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものが好適に例示される。
また、上記式(a)で表されるシアニン色素の他の例としては、具体的には、特願平2001−6326号明細書、特願平2001−237840号明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。ただし、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
【0173】
一方、赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料および例えばカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0174】
顔料の種類としては、例えば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。
このような顔料としては、具体的には、例えば、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラックが好ましい。
【0175】
また、このような顔料は、表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法としては、具体的には、例えば、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。この表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0176】
顔料の粒径は、0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、0.1〜1μmの範囲にあることが特に好ましい。顔料の粒径がこの範囲であると、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
【0177】
また、顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造などに用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、具体的には、例えば、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。この分散方法および分散機は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0178】
これらの光熱変換物質は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0179】
本発明においては、このような赤外線吸収剤は、画像記録層中における均一性や画像記録層の耐久性の観点から、画像記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%であるがの好ましく、0.1〜10質量%であるのがより好ましい。なお、染料の場合は、0.5〜10質量%であるのが特に好ましく、顔料の場合は、0.1〜10質量%であるのが特に好ましい。ただし、本発明における赤外線吸収剤の添加量は、対イオンを有し、該対イオンがハロゲンイオンある場合には、画像記録層中における均一性や感光層の耐久性や感度と、感光層中のハロゲンイオンの濃度と、を考慮して調整する必要がある。
【0180】
また、上記の金属化合物、金属粉体、非金属単体あるいは染料(顔料)などの光熱変換物質の画像記録層における含有量は、複合粒子の固形の構成成分の1〜95質量%であるのが好ましく、3〜90質量%であるのがより好ましく、5〜80質量%であるのが更に好ましい。1質量%以下では発熱量が不足し、95質量%以上では膜強度が低下する。
【0181】
上記の金属化合物、金属粉体、非金属単体、顔料などの各光熱変換物質が粒子状の場合、それらの粒子はそれ自体の表面が疎水性、親水性あるいは中間的な性質のいずれであってもよい。表面疎水性の場合は、大抵の例では疎水性化前駆体と共存できるが、表面親水性の光熱変換物質や疎水性であっても分散性改良などのために必要であれば、粒子の表面に、界面活性剤による表面処理、脱気後水蒸気存在下でプラズマ照射を行う水酸基導入処理や、テトラエトキシシランなどによるシリケート処理を施すなどの公知の方法によって表面の親水性・疎水性の程度を調節してもよい。
【0182】
<その他の任意成分>
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物は、必要に応じて、その他の任意成分として、例えば、バインダーポリマー、着色剤等が挙げられる。
【0183】
(バインダーポリマー)
本発明においては、上記重合系硬化性組成物は、膜性向上の観点からバインダーポリマーを含有するのが好ましい。
バインダーポリマーとしては、具体的には、例えば、アクリル系バインダー、スチレン系バインダー、ブチラール系バインダー、ウレタン系バインダー等が挙げられる。
【0184】
中でも、後述する、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有する基および/または分子内にアルカリ可溶性基を有するバインダーポリマーであるのが好ましい。
このような好ましい2種の基を有するバインダーポリマーは、これらの基を共重合成分として同一分子内に有するものであってもよく、それぞれ独立に別の分子として有するものを併用するするものであってもよい。具体的には、エチレン性不飽和二重結合を有する基に加えて、さらに、アルカリ可溶性基を有する構造単位を共重合成分として含むバインダーポリマーが好ましい。
【0185】
(エチレン性不飽和二重結合を有する基)
バインダーポリマーに含まれるエチレン性不飽和二重結合を有する基としては、ラジカルにより重合することが可能な基であれば特に限定されないが、その具体例としては、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CH2Z)=CH2、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられる。中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
また、バインダーポリマー中のエチレン性不飽和二重結合の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度と保存性との両立の観点からは、バインダーポリマー1gあたり、0.1〜10.0mmolであるのが好ましく、1.0〜7.0mmolであるのがより好ましく、2.0〜5.5mmolであるのが更に好ましい。
【0186】
(アルカリ可溶性基)
バインダーポリマーに含まれるアルカリ可溶性基としては、バインダーポリマーのアルカリ性現像液に対する溶解性の観点から、下記(1)〜(6)からなる群より選択されるアルカリ可溶性基が好ましく挙げられる。
【0187】
(1)フェノール性水酸基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO32
【0188】
上記(1)〜(6)中、Arは、置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0189】
上記(1)〜(6)からなる群より選択されるアルカリ可溶性基(酸性基)を有する構造単位は、1種のみである必要はなく、同一の酸性基を有し、互いに異なる2種以上の構造単位を共重合させたものであってもよく、互いに異なる酸性基を有する構造単位を2種以上共重合させたものであってもよい。
【0190】
バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、現像カスの発生防止および耐刷性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、0.1〜3.0mmolであるのが好ましく、0.2〜2.0mmolであるのがより好ましく、0.45〜1.0mmolであるのが更に好ましい。
【0191】
バインダーポリマーにアルカリ可溶性基を導入する態様としては、ポリマー中に、下記一般式(i)で表される構造単位を含む態様が挙げられる。
【0192】
【化11】

【0193】
一般式(i)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その原子数が2〜82である連結基を表す。
また、Aは、酸素原子または−NR3−を表し、R3は、水素原子または炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
【0194】
一般式(i)中、R1は、メチル基であるのが好ましい。
また、一般式(i)におけるR2で表される連結基の原子数は、2〜50であるのが好ましく、2〜30であるのがより好ましい。なお、ここで示す原子数は、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。
具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(i)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子または原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子または原子団を指す。そのため、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0195】
より具体的には、R2としては、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレン等が挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造も好適に例示することができる。
【0196】
これらのうち、一般式(i)におけるR2で表される連結基は、炭素原子数3〜30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。
具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。
ここで、脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置換されていてもよい。
また、R2は、置換基を含めて炭素数3〜30であることが好ましい。
【0197】
一方、R2は、耐刷性の点で、縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合または連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
【0198】
2で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、環状構造を有するものが好ましい。
【0199】
2で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、具体的には、例えば、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基およびその共役塩基基;
【0200】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基;アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基およびその共役塩基基;N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))およびその共役塩基基;N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(aryl))およびその共役塩基基;N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))およびその共役塩基基;
【0201】
N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(aryl))およびその共役塩基基;アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)およびその共役塩基基;ホスホノ基(−PO32)およびその共役塩基基;ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))およびその共役塩基基;モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))およびその共役塩基基;ホスホノオキシ基(−OPO32)およびその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))およびその共役塩基基;モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))およびその共役塩基基;シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl)2)、ジアリールボリル基(−B(aryl)2)、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH)2)およびその共役塩基基;アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))およびその共役塩基基;アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))およびその共役塩基基;アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0202】
本発明の平版印刷版原版では、画像記録層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、または置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
【0203】
一般式(i)におけるAが、NR3-である場合のR3は、水素原子または炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このR3で表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。ただし、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
【0204】
一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子または−NH−であることが好ましい。
一般式(i)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で1であるのが好ましい。
【0205】
以下に、一般式(i)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0206】
【化12】

【0207】
【化13】

【0208】
【化14】

【0209】
【化15】

【0210】
【化16】

【0211】
【化17】

【0212】
【化18】

【0213】
【化19】

【0214】
【化20】

【0215】
【化21】

【0216】
【化22】

【0217】
【化23】

【0218】
一般式(i)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。このような構造単位を含むポリマーを、以下、適宜、特定バインダーポリマーと称する。
【0219】
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができるバインダーポリマーは、上記一般式(i)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常は、この特定の繰り返し単位と、他の共重合成分とを組み合わせてコポリマーとして使用される。
また、バインダーポリマーに一般式(i)で表される繰り返し単位を導入する際の総含有量は、その構造や、感光層組成物の設計等によって適宜決められるが、ポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%であるのが好ましく、5〜40モル%であるのがより好ましく、5〜20モル%であるのが更に好ましい。
【0220】
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0221】
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができるバインダーポリマーは、上記特定のバインダーポリマーのみを用いてもよいし、特定ポリマーと他の公知のバインダーポリマーとを併用して、混合物として用いてもよく、また、特定ポリマーを含まない公知のバインダーポリマーを1種以上用いてもよい。
上記一般式(i)で表される構造単位を併用する場合、同時に用いられる他のバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し、1〜60質量%の範囲で用いられるのが好ましく、1〜40質量%であるのがより好ましく、1〜20質量%であるのが更に好ましい。
併用できる他のバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本技術分野においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー、スチレン主鎖バインダー等、従来公知のバインダーポリマーを併用することもできる。
このような場合であっても、バインダーポリマー総重量1gあたりのエチレン性不飽和二重結合の総含有量は前記した範囲と同様であることが好ましい。即ち、0.1〜10.0mmolであるのが好ましく、1.0〜7.0mmolであるのがより好ましく、2.0〜5.5mmolであるのが更に好ましい。
また、このようなバインダーポリマー総重量1gあたりの総酸価は0.45〜3.6mmolの範囲であることが好ましい。
【0222】
また、上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができるバインダーポリマーの質量平均分子量は、皮膜性(耐刷性)や、塗布溶剤への溶解性の観点から、2,000〜1,000,000であるのが好ましく、10,000〜300,000であるのがより好ましく、20,000〜200,000の範囲であるのが更に好ましい。
【0223】
更に、上記サーマルネガ型感光性組成物に用いることができるバインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、保存安定性、耐刷性、および感度の観点から、70〜300℃であるのが好ましく、80〜250℃であるのがより好ましく、90〜200℃の範囲であるのが更に好ましい。
バインダーポリマーのガラス転移点を高めるため手段としては、その分子中に、アミド基やイミド基を含有することが好ましく、特に、メタクリルアミドメタクリルアミド誘導体を含有することが好ましい。
【0224】
上記サーマルネガ型感光性組成物中でのバインダーポリマーの合計量(総量)は、適宜決めることができるが、サーマルネガ型感光性組成物中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
【0225】
(着色剤)
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物は、その着色を目的として、染料、顔料等の着色剤を含有することができる。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。
着色剤としては、具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料;エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料;等が挙げられ、中でも、カチオン性染料が好ましい。
着色剤として対イオンを有する構造の化合物(カチオン性染料)を用いる場合には、該対イオンがハロゲンイオンでないものを選択することが好ましい。
着色剤としての染料および顔料の添加量は、サーマルネガ型感光性組成物中の不揮発性成分に対して、約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0226】
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物は、更に、その用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
【0227】
(重合禁止剤)
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物は、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。
熱重合禁止剤としては、具体的には、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分の質量に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。このような高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0228】
(可塑剤等)
本発明においては、上記サーマルネガ型感光性組成物は、更に、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等が挙げられる。この可塑剤は、上述した重合性化合物とバインダーポリマーとの合計質量に対し、一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。
また、上記サーマルネガ型感光性組成物は、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
【0229】
本発明においては、上述した硬化性組成物および光熱変換物質ならびにバインダーポリマー等のその他の構成成分をサーマルネガ画像記録層に含有させる方法として、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載されているような、上記構成成分の一部をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に添加する方法が好適に例示される。また、画像記録層を形成する上記構成成分の全部がマイクロカプセルに内包されていてもよい。
本発明においては、マイクロカプセルを用いる場合、各構成成分はマイクロカプセル内および外に、任意の比率で含有させることが可能である。
【0230】
画像記録層構成成分をマイクロカプセルに内包させる他の方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば、米国特許第2800457号、同第2800458号の各明細書に記載のコアセルベーションを利用した方法;米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報に記載の界面重合法による方法;米国特許第3418250号、同第3660304号の各明細書に記載のポリマーの析出による方法;米国特許第3796669号明細書に記載のイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法;米国特許第3914511号明細書に記載のイソシアナート壁材料を用いる方法;米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書に記載の尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法;米国特許第4025445号明細書に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法;特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報に記載のモノマー重合によるin situ法;英国特許第930422号、米国特許第3111407号の各明細書に記載のスプレードライング法;英国特許第952807号、同第967074号の各明細書に記載の電解分散冷却法;等が挙げられる。
【0231】
このようなマイクロカプセルは、その壁が3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。そのため、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種で形成されるのが好ましく、ポリウレアおよび/またはポリウレタンであるのがが特に好ましい。
また、マイクロカプセル壁に、上記の非水溶性高分子に導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0232】
本発明においては、マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0μmであるのが特に好ましい。マイクロカプセルの平均粒径がこの範囲であると、良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0233】
また、本発明においては、マイクロカプセルを含有する画像記録層には、現像性の向上、マイクロカプセルの分散安定性の向上等の観点から、親水性ポリマーを含有させることができる。
【0234】
親水性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリ
ル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
【0235】
また、親水性ポリマーは、重量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。親水性ポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよい。
親水性ポリマーの画像記録層への含有量は、画像記録層全固形分の20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0236】
このようなサーマルネガ型感光性組成物からなるサーマルネガ型画像記録層は、上述したように、CTPに有用な赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の画像記録層である。
そのため、本発明の平版印刷版原版は、露光を大気中で行う観点から、露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の画像記録層への混入を防止する目的で、画像記録層の上に、以下に示す水溶性保護層を設けるのが好ましい。
【0237】
また、このようなサーマルネガ型感光性組成物からなるサーマルネガ型画像記録層は、通常上記サーマルネガ型感光性組成物を溶媒に溶かして、平版印刷版用支持体上に塗布することにより製造することができる。
ここで、使用する溶媒としては特に限定されるものではなく、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができる。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0238】
本発明において、サーマルネガ型画像記録層には、現像性の促進および塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0239】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0240】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポ
リオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0241】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0242】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0243】
また、好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。
このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0244】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜15質量%であるのが好ましく、0.01〜12質量%であるのがより好ましい。
【0245】
塗布、乾燥後に得られる平版印刷版用支持体上の塗布量(固形分)は、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0246】
サーマルネガ型画像記録層の膜厚は、好ましくは0.001g/m2〜10g/m2、より好ましくは0.01g/m2〜5g/m2である。塗布、乾燥後に得られるサーマルネガ型画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的な平版印刷版用原板についていえば、0.5〜5.0g/m2が好ましく、0.5〜2.0g/m2がより好ましい。この範囲内において、親水性の効果が良好に発揮し得るとともに、平版印刷版用支持体との密着性も良好であり、十分な耐刷性が得られる。
【0247】
〔水溶性保護層〕
上記水溶性保護層は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことを要し、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
このような水溶性保護層に関して、従来より種々の工夫がなされおり、具体的には、米国特許第3、458、311号明細書、特公昭55−49729号公報に記載されている手法を採用することができる。
また、水溶性保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが挙げられるが、中でも、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与えるため好ましい。
【0248】
上記水溶性保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテルおよびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。
このようなポリビニルアルコールとしては、例えば、71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものを挙げることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0249】
上記水溶性保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。
一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。
しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また、画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。更に、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。
これに対し、これら2層間の接着性を改善すべく種々の提案がなされている。例えば、米国特許出願番号第292,501号公報、米国特許出願番号第44,563号公報には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。
【0250】
本発明においては、上記水溶性保護層に対して、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。また、このような水溶性保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている方法を採用することができる。
【0251】
また、本発明においては、接着力、感度、不要なカブリの観点から、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを併用することが好ましい。添加量比(質量比)は、ポリビニルアルコール:ポリビニルピロリドンの比率が3:1以下、即ち、PVAに対するPVPの混合比が1/3以下であることが好ましい。
【0252】
更に、本発明においては、上記水溶性保護層に含まれる主成分、即ち、水溶性保護層中に50質量%以上含有される水溶性高分子化合物のI/O値の、後述するバックコート層に含まれる有機ポリマーのI/O値に対する比率が、2.0以上であることを要する。一般的には、PVAをはじめとする水溶性ポリマーが使用されるため、両者のI/O値の比率の調整は、主としてバックコート層中の主成分である有機ポリマーの構造を選択することで行われることが多い。
また、水溶性保護層の乾燥後の塗布重量としては、1.0g/m2〜3.0g/m2であることが好ましい。
【0253】
〔表面保護層〕
本発明の平版印刷用原板の表面は、親水性であるので、使用前の取り扱い中に環境の雰囲気の影響によって疎水性化したり、温湿度の影響を受けたり、機械的な傷または汚れなどの影響を受けやすい。
そのため、通常、製版工程で版面に整面液(ガム液)を塗布して保護作用を行うが、本発明においては、平版印刷版原版の作製の際に、保護液を塗布しておくと製造直後からこのような保護作用が得られ、製版工程において新たに整面液を塗布する手間が省けて作業性が向上することなどの利点があるため、表面保護層を設けるのが好ましい。なお、表面保護層の組成は整面液の組成と実質的に同じである。
【0254】
〔下塗り層〕
本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、平版印刷版用支持体とサーマルネガ型画像記録層との間に、下塗り層を設けることができる。
【0255】
下塗り層としては、親水性結合剤およびシリカを含有する層であるのが好ましい。
親水性結合剤としては、通常、蛋白質、好ましくはゼラチンを使用できる。ここで、ゼラチンは一部または全面的に合成、半合成または天然重合体で置換できる。
ゼラチンに対する合成代替物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびそれらの誘導体、それらの共重合体等が挙げられる。
ゼラチンに対する天然代替物としては、例えば、他の蛋白質、具体的には、ゼイン、アルブミンおよびカゼイン、セルロース、サッカライド、澱粉、アルギネート等が挙げられる。
ゼラチンに対する半合成代替物としては、例えば、変性天然生成物、具体的には、ゼラチンをアルキル化剤またはアシル化剤で変換することにより、または、ゼラチンに重合性単量体をグラフトすることによって得られるゼラチン誘導体;ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、フタロイルセルロース、セルロースサルフェートなどのセルロース誘導体;等が挙げられる。
【0256】
シリカとしては、アニオン系の二酸化ケイ素であるのが好ましく、コロイドシリカであるのが好ましい。
【0257】
コロイダルシリカは、その表面積が100m2/g以上であるのが好ましく、300m2/g以上であるのがより好ましい。
コロイドシリカの表面積は、J.Amer.Chem.Soc.60巻(1938年)の309〜312頁にS.Brunauer,P.H.EmmettおよびE.Tellerによって発表されたBET値法により測定する。
【0258】
シリカは、KIESELSOL 100、KIESELSOL 300およびKIESELSOL500(「KIESELSOL」はドイツ国レファークゼンのFarbenfabriken Bayer AGの登録商標であり、数字はm/gでの表面積を表す。)の商品名で市販されているものを用いることができる。
【0259】
下塗層中でのシリカに対する親水性結合剤の質量比は、1未満であるのが好ましい。下限はそれ程重要ではないが、少なくとも0.2であるのが好ましい。シリカに対する親水性結合剤の質量比は0.25〜0.5であるのが更に好ましい。
【0260】
下塗層の被覆量は、200mg/m2超であることが好ましく、750mg/m2未満であることが好ましい。更に好ましくは250mg/m2〜500mg/m2である。
【0261】
下塗層の被覆は、例えば、親水性結合剤およびシリカを含有する分散液を用いて行うのが好ましい。
このような分散液は、所望により界面活性剤を添加してもよく、また、例えば、アルミニウム塩、安定剤、殺菌剤等も添加してもよい。
【0262】
〔バックコート〕
本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、バックコートを設けることができる。
バックコートとしては、特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号公報に記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC25)4、Si(OC37)4、Si(OC49)4等のケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が親水性に優れており特に好ましい。
【0263】
このような構成を具備する本発明の平版印刷版原版は、低アルカリ性の現像液で現像処理することができ、平版印刷版としたときの耐刷性および耐汚れ性に優れる。
これは、本発明の平版印刷版用支持体を用いているためである。具体的には、上述したように、平版印刷版原版を現像する際の露光時の加熱により画記録層下部の平版印刷版用支持体表面も加熱され、これによりマイクロポア内で体積増加物質の体積が増加すことによって、露光部、即ち、画像部を形成する部分の画像記録層下部の平版印刷版用支持体表面に、体積増加物質が親水性皮膜を押し上げた凸部が形成され、アンカー効果を発現するために耐刷性が優れると考えられ、また、非露光部の画像記録層下部の平版印刷版用支持体表面は加熱されず、マイクロポア内の体積増加物質はそのまま保持されるため、非露光部においては上述したアンカー効果が発現せず、現像処理により容易に画像記録層が除去されるため耐汚れ性に優れ、低アルカリ性の現像液で現像処理することができると考えられる。
【0264】
[製版方法(平版印刷版の製造方法)]
本発明の平版印刷版原版は、画像記録工程と現像工程とを経て、平版印刷版とされる。
【0265】
〔画像記録工程〕
上記画像記録工程は、平版印刷版原版に、画像様露光により画像を記録させる工程である。
具体的には、本発明の平版印刷版原版に対して、線画像、網点画像等を有する透明原画を通して露光するか、デジタルデータによりレーザ走査露光することにより、画像様に露光される。
画像用露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。本発明においては、特に、760〜1200nmの範囲の赤外線を放射する固体レーザおよび半導体レーザが好ましい。レーザを用いる場合は、デジタルデータに従って、画像様に走査露光することが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いるのが好ましい。
【0266】
〔現像工程〕
上記現像工程は、上記画像記録工程の後、平版印刷版を得る工程であり、現像液を用いて現像するのが好ましい。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできるが、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液であるのが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
【0267】
本発明においては、上記現像工程は、pHが10以下の溶液を用いて現像を行いて現像することができる。これは、本発明の平版印刷版原版の画像記録層にサーマルネガ型感光性組成物を用い、かつ、上述したアンカー効果の発現のために平版印刷版用支持体の陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に体積増加物質を充填しているため、非画像部下部のマイクロポア内に画像記録層が残存することがないためであると考えられる。
また、上記現像工程は、特開2006−65321号公報に記載されているノニオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤を含むpH2〜10の水溶液で現像する方法;特開2003−255527号公報に記載されているような所謂ゴム液で現像する方法;等により行うのが好ましい。
【0268】
また、本発明においては、上記現像工程は、上記画像記録工程の後、それ以上の処理なしに印刷機に装着し、湿し水とインキを供給し、更に紙を供給する通常の印刷開始操作によって現像される、いわゆる機上現像によるものあってもよい。即ち、印刷をスタートすると、湿し水、インキ、紙との接触およびシリンダーの回転に伴う擦りによって、ネガ型であれば平版印刷画像形成層の未露光部(加熱されていない部分)が除去され、ポジ型であれば平版印刷画像形成層の露光部(加熱されている部分)が除去される機上現像を経て製版され、本格的印刷が始まる。
【0269】
更に、本発明においては、本発明の平版印刷版用原版は、日本特許第2938398号に記載されているように、印刷機シリンダー上に取り付けた後に、印刷機に搭載されたレーザにより露光し、その後に湿し水および/またはインクをつけて機上現像することも可能である。また、これらの平版印刷版用原版は、水または適当な水溶液を現像液とする現像をした後、印刷に用いることもできる。
【実施例】
【0270】
(実施例1、比較例1および2)
【0271】
(1)平版印刷版用支持体A〜Cの作製
<アルミニウム板の製造>
Al:99.5質量%以上、Fe:0.30質量%、Si:0.10質量%、Ti:0.02質量%、Cu:0.013質量%を含有し、残部は不可避不純物のJIS A1050アルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理としては、溶湯中の水素等の不要なガスを除去するために脱ガス処理し、更に、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊の表面を10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。
次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中、500℃で60秒間、中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、厚さ0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均粗さRa を0.2μmに制御した。
その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。得られたアルミニウム板を、以下に示す表面処理に供した。
【0272】
<表面処理>
まず、得られたアルミニウム板の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した。
次いで、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いてアルミニウム表面を砂目立てした後、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
その後、アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチング処理を施し、更に水洗した後、60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬してデスマット処理を施し、更に水洗した。
【0273】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電解粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。
また、交流電源波形には、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用い、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。
また、補助アノードには、フェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0274】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電解粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0275】
次に、電解粗面化後のアルミニウム板を15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
乾燥後、中心線平均粗さRaを直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0276】
(充填処理)
次に、陽極酸化皮膜の表面に、2g/lの濃度に調整した炭酸水素ナトリウム水溶液を10番バーを用いて塗布し、60℃で5分間乾燥させ、マイクロポア中に炭酸水素ナトリウムを充填した。
なお、比較例1については、第1表に示すように、炭酸水素ナトリウムの充填は行わなかった。
【0277】
(封孔処理)
次に、90℃に加熱したフッ化ジルコン酸ナトリウム0.1質量%/リン酸2水素ナトリウム1質量%の水溶液中に10sec間浸漬し、封孔処理皮膜(親水性皮膜)を表面に形成し、実施例1、比較例1および2の平版印刷版用支持体として、それぞれ、支持体A〜Cを作製した。
なお、比較例1および2については、第1表に示すように、封孔処理を行わずに平版印刷版用支持体を作製した。
【0278】
【表1】

【0279】
(2)露光によるアンカー形成の確認
画像記録層を塗布した後では発泡によるアンカー形成が確認できないため、実施例1で作製した平版印刷版用支持体A上に、光熱変換層としてTi蒸着皮膜を表面に設けた。
ここで、Ti蒸着は、光学濃度が0.6になるよう調整して行った。
このように蒸着した基板に対し、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、解像度2400dpiの条件で露光した。外面ドラム回転数を50、100、150、210rpm、の4通り変えることで版面エネルギーを変化させて露光した。
露光後の外観変化(露光により画像が描けたか否か)を目視により確認し、マイクロポア部分の形状変化(膨張の有無)をFE−SEMにより確認した。その結果を第2表に示す。
【0280】
ここで、第2表中、外観変化に関し、「描画可能(細線○)」とは、画像(細線)が描け、目視のより十分に確認できた状態の評価であり、「描画可能(細線○△)」とは、画像(細線)が描け、細線が連続していることが確認できる状態の評価であり、「描画可能(細線△)」とは、画像(細線)が描け、細線が存在するものの不連続である状態の評価である。
また、形状変化に関し、「有り」とは、体積増加物質である炭酸水素ナトリウムの膨張による凸部の形成がTi蒸着皮膜表面上から確認できたことを表し、「無し」とは、体積増加物質の膨張による凸部の形成がTi蒸着皮膜表面上から確認できなかったことを表す。なお、「一部破裂」とは、封孔処理皮膜の一部が体積増加物質の過剰な発泡(体積膨張)により破れている状態をいい、「膨張確認」とは、封孔処理皮膜が体積増加物質の発泡(体積膨張)により隆起していることが観察できる状態をいう。
【0281】
【表2】

【0282】
第2表に示す結果から、いずれの条件による露光でも画像が形成されることが分かった。また、回転数が速い場合、レーザの照射時間が短くなるが、210rpmでは炭酸水素ナトリウムが膨張しないためか、形状変化が無いことが分かった。一方、50rpmでは、回転数が低いところだと、封孔処理皮膜が一部破裂してしまうことが分かった。
【0283】
(実施例2および3、比較例3〜5)
【0284】
(3)平版印刷版原版の作製
上記(1)で作製した平版印刷版用支持体A〜C上に、下記組成の下塗り液(1)を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は30mg/m2であった。
【0285】
<下塗り液(1)>
・下塗り化合物(1) ユニケミカル(株) 製ホスマーPE 0.005g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
【0286】
【化24】

【0287】
次に、下記組成の画像記録層塗布液(1)を調製し、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、この画像記録層塗布液(1)を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.0g/m2になるよう塗布し、100℃、60秒でオーブン乾燥させて画像記録層を形成させ、平版印刷版原版を得た。なお、比較例5においては、第3表に示すように下記赤外吸収剤(1)を用いなかった。
なお、画像記録層塗布液(1)は、下記感光液(1)およびマイクロカプセル液(1)を塗布直前に混合し、撹拌することにより得た。
【0288】
<画像記録層塗布液(1)>
感光液(1)
・下記バインダーポリマー(1) 0.162g
・下記重合開始剤(1) 0.100g
・下記赤外吸収剤(1) 0.020g
・重合性モノマー、アロニックスM−215(東亜合成(株)製) 0.385g
・下記フッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシー2−プロパノール 8.609g
【0289】
マイクロカプセル液(1)
・下記の通り合成したマイクロカプセル(1) 2.640g
・水 2.425g
【0290】
【化25】

【0291】
【化26】

【0292】
【化27】

【0293】
【化28】

【0294】
マイクロカプセル(1)の合成
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、下記の赤外線吸収剤(2)0.35g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成(株)製ODB)1g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分として、PVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。
油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分撹拌後、40℃で3時間撹拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。
【0295】
【化29】

【0296】
(4)露光および印刷
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、第3表に示す外面ドラム回転数、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。この露光済みの原版を用いて、下記の方法で機上現像性、耐刷性および汚れ性を評価した。結果を第3表に示す。
【0297】
(機上現像性)
得られた露光済み平版印刷版原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(IF102(富士写真フイルム社製エッチ液)/水/=4/96(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。印刷物の非画像部の汚れを観察して機上現像性の評価を行い、非画像部の汚れがなくなるまでの印刷枚数で評価した。
【0298】
(耐刷性)
更に印刷を継続し、印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下する印刷枚数を、比較例4の印刷版を用いた場合を100%として指数で表示し、耐刷性を評価した。0.1低下するまでの枚数が多い方が耐刷性に優れることを示す。
【0299】
(耐汚れ性)
上記と同様の露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(IF102(富士写真フイルム社製エッチ液)/水/=4/96(容量比))とTRANS−G(N)紅インキ(大日本インキ化学工業社製)/ワニス=90/10とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。
いずれの平版印刷版原版を用いた場合も、100枚以内で非画像部の汚れのない印刷物が得られた。
その後、湿し水を絞り、版面をインクで全面汚した後、再び湿し水を供給し、完全に非画像部からインクが払われ、良好な印刷物が得られるまでの枚数を測定し、汚れ性の評価とした。枚数が少ないことは、非画像部の親水性、保水性が優れ、耐汚れ性に優れた印刷版であることを示す。
【0300】
【表3】

【0301】
第3表から明らかなように、実施例2および3で作製した平版印刷版原版は、従来の平版印刷版原版を用いた比較例3に比べて、機上現像性および耐汚れ性を維持しつつ、耐刷性に極めて優れていることが分かった。また、比較例4と比較すると、親水性皮膜を有していることから、耐汚れ性に優れていることが分かった。更に、比較例5は、感光性組成物に光熱変換物質を含有しないためサーマルポジ型の画像記録層とはならず、画像部が殆ど硬化せず、耐刷性が著しく悪くなることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0302】
【図1】本発明の平版印刷版原版の作製における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図2】本発明の平版印刷版原版の作製における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【図3】本発明の平版印刷版原版の作製における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【符号の説明】
【0303】
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板に、少なくとも陽極酸化処理および封孔処理をこの順に施して得られる平版印刷版用支持体であって、
前記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に、熱により体積が増加する物質を有し、
前記封孔処理により、前記マイクロポアの開口部を親水性皮膜により封孔してなる平版印刷版用支持体。
【請求項2】
前記熱により体積が増加する物質が、熱により分解し、発泡する物質である請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
【請求項3】
前記陽極酸化処理の前に、更に粗面化処理を施して得られる請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
【請求項4】
前記封孔処理が、フッ化ジルコン酸塩を用いたフッ化ジルコン酸処理であり、前記親水性皮膜が、フッ素、ジルコニウムおよびリンを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、サーマルネガ型感光性組成物からなる画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
【請求項6】
請求項5に記載の平版印刷版原版に、画像様露光により画像を記録させる画像記録工程と、
画像を記録した前記平版印刷版原版に、pHが10以下の溶液を用いて現像を行い平版印刷版を得る現像工程とを具備する平版印刷版の製版方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−261173(P2007−261173A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91268(P2006−91268)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】