説明

平面発光モジュール

【課題】発光面の色むらおよび照度むらの少ない平面発光モジュールを実現する。
【解決手段】反射膜17が施された基板12上に複数の発光素子18が実装される。第1透明樹脂層24は、発光素子18を封止するように配置される。第2透明樹脂層26は、第1透明樹脂層24との間に空気層25を挟んで配置される。第1および第2透明樹脂層内には、発光素子18からの放射光を波長変換する蛍光体が分散配置されており、第2透明樹脂層26を外部から見たときに擬似白色光が観察されるように、蛍光体が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型の平面発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明用の灯具として蛍光灯や電球が多く用いられてきた。近年、このような灯具の代替として、消費電力や寿命の観点から発光ダイオードを用いた白色発光装置が種々開発されている。
【0003】
発光ダイオードが発する光は指向性が強く発光面積も小さい。そのため、単独の発光ダイオードによって広範囲を均一な明るさで照らすことは困難である。そこで、複数の発光ダイオードを並べた灯具が考えられるが、発光ダイオードの直上と周辺部で大きな輝度むらが生じていると、そのことが照度むらを引き起こしてしまう。そこで、照度むらを低減するために、発光ダイオードの出射面の上方に拡散レンズまたは拡散シートを設けることが行われている。しかし、このような拡散レンズまたは拡散シートは、光量の低下を招く上に灯具のコストも増加させるという問題がある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、光源からの光を導光するためのレンズを具備し、光源から放射された光が光源の主光軸線となす角度を増加させるための空気層を、レンズの入射面と発光面としての外側表面との間に配置した照明装置が開示されている。光源から放射された光を空気層によって広い領域に到達させることができるので、発光面を均一に発光させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−287448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、光源から放射された光はレンズを透過するだけなので、発光面の照度むらは改善されるものの色むらは解消されないと考えられる。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光ダイオード等の発光素子を使用する薄型の平面発光モジュールにおいて、発光面の色むらおよび照度むらを低減して擬似白色光の照明を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様の平面発光モジュールは、反射膜が施された平面状の基板と、基板の反射膜側に実装された発光素子と、少なくとも発光素子を封止するように配置された第1透明樹脂層と、第1透明樹脂層との間に空気層を挟んで配置された第2透明樹脂層と、を備える。第1および第2透明樹脂層内に、発光素子からの放射光を波長変換する蛍光体が分散配置されており、第2透明樹脂層を外部から見たときに擬似白色光が観察されるように蛍光体が選択される。
【0009】
この態様によると、第1および第2透明樹脂層の間に空気層を介在させることで、発光素子から放射された光を広範囲に拡散させて、照度むらの少ない平面発光モジュールを実現することができる。また、蛍光体の分散された透明樹脂層を2層設けることで、色むらの少ない擬似白色光で照明することができる。
【0010】
第2透明樹脂層を外部から見たときに略均一な輝度の擬似白色光が観察されるように、第1および第2透明樹脂層の厚み、第1透明樹脂層と第2透明樹脂層との間に配置された空気層の厚み、ならびに蛍光体の濃度が設定されてもよい。
【0011】
発光素子は紫外光または短波長の可視光を放射し、蛍光体は、発光素子からの放射光を黄色光に変換する第1蛍光体と、発光素子からの放射光を青色光に変換する第2蛍光体と、を含んでもよい。
【0012】
可視光に対して透明または半透明であるカバーをさらに備えてもよい。第2透明樹脂層がカバーの基板側表面に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発光ダイオード等の発光素子を使用する薄型の平面発光モジュールにおいて、発光面の色むらおよび照度むらを低減して擬似白色光の照明を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る平面発光モジュールの概略断面図である。
【図2】(a)、(b)は、基板上の発光素子の配置を示す図である。
【図3】平面発光モジュールの発光モデルを模式的に示す図である。
【図4】(a)、(b)は、発光素子を封止する第1透明樹脂層の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る平面発光モジュール10の概略断面図である。平面発光モジュール10は、基板12上に複数対の電極14(陽極)および電極16(陰極)が形成されている。各電極14上には、発光素子18がマウント部材20により固定されている。発光素子18と電極14はマウント部材20により導通されており、発光素子18と電極16はワイヤー22により導通されている。
【0016】
基板12の上には、複数の発光素子18を一体的に覆う第1透明樹脂層24が設けられている。第1透明樹脂層24は、発光素子18の光出射面18aに対する垂直方向の厚みLが均一になるように形成される。第1透明樹脂層24内には、発光素子18から発せられた光によって励起され、互いに補色関係にある光を発する二種類の蛍光体が分散されている。
【0017】
複数の発光素子18は、図2(a)に示すように基板12上に格子状に配列されてもよいし、図2(b)に示すように基板12上に千鳥状に配列されてもよい。発光素子18同士の間隔は、例えば2〜15mmである。
【0018】
図1に戻り、基板12上のうち、前述の電極14、16および発光素子18が設けられていない領域には、反射膜17が形成されている。反射膜17の形成方法としては以下の方法がある。はじめに、基板12上に電極部分を形成し、その電極部分にマスクをした状態でその上に白色のアクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系またはアクリル・シリコーン系の反射塗装を施す。その後、マスクを外して発光素子18をマウントする。こうすると、発光素子18から上方に発せられた光によって励起された蛍光体が発する光が基板12に向かったとしても、反射膜17により再度上方に反射される。これにより、蛍光体から生ずる光のうち、基板12側へと向かう光についても照明に活用できるため、光取り出し効率の向上が図られる。なお、反射膜17はアルミニウム、銀などの金属膜であってもよく、蒸着、スパッタリング、めっき等の手段により反射膜17を形成してもよい。
【0019】
基板12は、導電性を有しないが熱伝導性は高い材料によって形成されることが好ましく、例えば、セラミック基板(窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、ムライト基板、ガラスセラミック基板)やガラスエポキシ基板等を用いることができる。なお、電極14、16の下に絶縁層を形成すれば、金属基板(好ましくは、アルミニウム、銅、真鍮等の熱伝導率の高い材質)、SiC基板、カーボン基板、金属とカーボンの複合基板等を用いることができる。
【0020】
電極14および電極16は、金や銅等の金属材料によって形成された導電層である。
【0021】
発光素子18としては、例えば、紫外線または短波長可視光を発光するLEDやLD等を用いることができる。具体例として、InGaN系の化合物半導体を挙げることができる。InGaN系の化合物半導体は、Inの含有量によって発光波長域が変化する。Inの含有量が多いと発光波長が長波長となり、少ない場合は短波長となる傾向を示すが、ピーク波長が400nm付近となる程度にInが含有されたInGaN系の化合物半導体が発光における量子効率が最も高いことが確認されている。本実施の形態に係る発光素子18は、380〜420nmの波長域にピーク波長を有する紫外線または短波長可視光を発するものが好適である。
【0022】
マウント部材20は、例えば銀ペースト等の導電性接着剤または金錫共晶はんだ等であり、発光素子18の下面を電極14に固定し、発光素子18の下面側電極と基板12上の電極14を電気的に接続する。
【0023】
ワイヤー22は、金ワイヤー等の導電部材であり、例えば超音波熱圧着等により発光素子18の上面側電極および電極16に接合され、両者を電気的に接続する。
【0024】
第1透明樹脂層24は、後述する各蛍光体が分散されたバインダー部材によって複数の発光素子18を含む基板12の上面を一体的に封止している。
【0025】
第1透明樹脂層24は、例えば、液状またはゲル状のバインダー部材に蛍光体を混入した蛍光体ペーストを作製した後、その蛍光体ペーストを基板12の上面に板状に塗布し、その後に蛍光体ペーストのバインダー部材を硬化することにより形成される。バインダー部材としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ゾル−ゲルシリカ、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、塩化ビニル樹脂等を使用することができる。本実施形態の平面発光モジュールは、励起光源として紫外線または短波長可視光を用いるので、耐光性に優れたシリコーン樹脂を使用することが最も望ましい。
【0026】
第1透明樹脂層24の基板12と反対側の領域には、空気層25を介在させて、可視光に対して透明または半透明である樹脂製またはガラス製の板状カバー28が配置される。空気層は、例えば1〜5mmの間で選択される。板状カバー28の基板12側の表面には、第2透明樹脂層26が塗布形成されている。
【0027】
第2透明樹脂層26にも、第1透明樹脂層24と同様に、発光素子18から発せられた光によって励起され互いに補色関係にある光を発する二種類の蛍光体が分散されている。但し、第2透明樹脂層26は第1透明樹脂層24と比べて非常に薄い膜であり、図1では誇張して描かれている。
【0028】
図3は、本実施形態に係る平面発光モジュール10の発光モデルを模式的に示した図である。本実施形態では、第1の蛍光体は発光素子18から発せられる紫外線または短波長可視光によって励起され黄色光を放射し、第2の蛍光体は紫外線または短波長可視光によって励起され青色光を放射するように、後述する素材が選択される。
【0029】
図3に示すように、発光素子18から出射された紫外線または短波長可視光は、ほとんどが第1透明樹脂層24内に分散された第1の蛍光体または第2の蛍光体に吸収され、それぞれにおいてランバーシアンな発光をする。したがって、発光素子からの指向性の強い光を拡散する効果が高い。また、第1の蛍光体は青色光をほとんど吸収しないことから、蛍光体を含有する樹脂層の厚さが変動しても発光色は変わりにくい。その結果、発光色の色度分布のばらつきが抑制される。
【0030】
第1透明樹脂層24と第2透明樹脂層26との間に空気層25を介在させると、透明樹脂の屈折率に比べて空気の屈折率が小さいため、図1に矢印Rで示すように、発光素子18から放射される光を周囲に拡散させることができる。したがって、拡散レンズや拡散シートを用いなくても、発光素子と発光素子の間にある部分にも光が広がり、発光面28aにおける照度の均一性を高めることができる。空気層25の厚さは、基板12上の発光素子18の密度に基づき、各発光素子から発せられる光をどの程度の範囲に拡散させるかを考慮して決定すればよい。
【0031】
第2透明樹脂層26でも、第1透明樹脂層24と同様の作用が発生する。すなわち、第1透明樹脂層24内の蛍光体に吸収されなかった紫外線または短波長可視光が、第2透明樹脂層26内の蛍光体によって黄色光または青色光に変換される。このように、発光面28aに近い第2透明樹脂層26内の蛍光体によっても黄色光または青色光を放射することで、発光面28aにおける色度のばらつき、すなわち色むらをさらに小さくすることができる。
【0032】
本実施形態では、第2透明樹脂層26を外側、すなわち発光面28aから観察したときに、略均一な照度の擬似白色光が観察されるように、第1透明樹脂層24および第2透明樹脂層26の厚み、空気層25の厚み、および蛍光体の濃度が調整されている。一例では、第1透明樹脂層24の厚みは1〜5mm、第2透明樹脂層26の厚みは40〜200μmであり、蛍光体の濃度は共に0.5〜10.0体積パーセントに調整される。
【0033】
以下、本実施形態の平面発光モジュールに用いられる各蛍光体について詳述する。
【0034】
〔第1の蛍光体〕
第1の蛍光体は、紫外または短波長可視光により励起され可視光を発光する蛍光体であり、一般式が(M,M,M(2/n)(ここで、MはSi、Ge、Ti、ZrおよびSnからなる群より選ばれる少なくともSiを含む1種以上の元素、MはCa、Mg、BaおよびZnからなる群より選ばれる少なくともCaを含む1種以上の元素、MはSr、Mg、BaおよびZnからなる群より選ばれる少なくともSrを含む1種以上の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、Mは希土類元素およびMnからなる群より選ばれる少なくともEu2+を含む1種以上の元素を示す。また、mは1≦m≦4/3、nは5≦n≦7の範囲であってもよい。また、x、y、zは、x+y+z=1、0<x<0.99、0<y<0.99、0.01≦z≦0.3を満たす範囲であってもよい。)で表される蛍光体である。また、第1の蛍光体は、560〜600nmの波長域にピーク波長を有する可視光を発光する蛍光体である。
【0035】
第1の蛍光体は、例えば、次のようにして得ることができる。第1の蛍光体は、原料として下記組成式(1)〜(4)で表される化合物を用いることができる。
(1)M’(M’はSi、Ge、Ti、Zr、Sn等の4価の元素を示す。)
(2)M’O(M’はMg、Ca、Ba、Zn等の2価の元素を示す。)
(3)M’(M’はMg、Sr、Ba、Zn等の2価の元素、Xはハロゲン元素を示す。)
(4)M’(M’はEu2+等の希土類元素および/またはMnを示す。)
【0036】
組成式(1)の原料として、例えば、SiO、GeO、TiO、ZrO、SnO等を用いることができる。組成式(2)の原料として、例えば、2価の金属イオンの炭酸塩、酸化物、水酸化物等を用いることができる。組成式(3)の原料として、例えば、SrCl、SrCl・6HO、MgCl、MgCl・6HO、BaCl、BaCl・2HO、ZnCl、MgF、SrF、BaF、ZnF、MgBr、SrBr、BaBr、ZnBr、MgI、SrI、BaI、ZnI等を用いることができる。組成式(4)の原料として、例えば、Eu、Eu(CO、Eu(OH)、EuCl、MnO、Mn(OH)、MnCO、MnCl・4HO、Mn(NO・6HO等を用いることができる。
【0037】
組成式(1)の原料としては、M’が少なくともSiを含んでいることが好ましい。また、Siを、Ge、Ti、ZrおよびSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で一部置き換えたものでもよい。この場合、M’に占めるSiの割合が80mol%以上である化合物が好ましい。組成式(2)の原料としては、M’が少なくともCaを含んでいることが好ましい。また、Caを、Mg、BaおよびZn等からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で一部置き換えたものでもよい。この場合、M’に占めるCaの割合が60mol%以上である化合物が好ましい。組成式(3)の原料としては、M’が少なくともSrを含んでいることが好ましい。また、Srを、Mg、BaおよびZn等からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で一部置き換えたものでもよい。この場合、Srが30mol%以上である化合物が好ましい。また、組成式(3)の原料としては、Xが少なくともClを含んでいることが好ましい。また、Clを、他のハロゲン元素で一部置き換えたものでもよい。この場合、Clの割合が50mol%以上である化合物が好ましい。組成式(4)の原料としては、M’が2価のEuを必須とする希土類元素であることが好ましく、MnまたはEu以外の希土類元素等を含んでもよい。
【0038】
組成式(1)〜(4)の原料のモル比を、(1):(2)=1:0.1〜1.0、(2):(3)=1:0.2〜12.0、(2):(4)=1:0.05〜4.0、好ましくは、(1):(2)=1:0.25〜1.0、(2):(3)=1:0.3〜6.0、(2):(4)=1:0.05〜3.0、より好ましくは(1):(2)=1:0.25〜1.0、(2):(3)=1:0.3〜4.0、(2):(4)=1:0.05〜3.0の割合で秤量し、秤量した各原料をアルミナ乳鉢に入れ約30分粉砕混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をアルミナ坩堝に入れ、還元雰囲気の電気炉で、所定の雰囲気(H:N=5:95)、温度700℃以上1100℃未満で3〜40時間焼成し、焼成物を得る。この焼成物を温純水で丹念に洗浄し、余剰の塩化物を洗い流すことにより第1の蛍光体を得ることができる。第1の蛍光体は、紫外線または短波長可視光により励起され可視光を発光する。
【0039】
なお、組成式(3)の原料(2価の金属ハロゲン化物)については、化学量論比以上の過剰量を秤量することが好ましい。これは、焼成中にハロゲン元素の一部が気化蒸発してしまうことを考慮したものであり、ハロゲン元素の不足に起因する蛍光体の結晶欠陥の発生を防止するためである。また、過剰に加えられた組成式(3)の原料は、焼成温度では液化し、固相反応の融剤として働き、固相反応の促進および結晶性を向上させる。
【0040】
なお、前述した原料混合物の焼成後においては、前述の過剰添加された組成式(3)の原料は、製造された蛍光体の中で不純物として存在する。そこで、純度および発光強度が高い蛍光体を得るためには、これらの不純物を温純水で洗い流すとよい。本実施の形態の第1の蛍光体の一般式に示された組成比は、不純物を洗い流した後の組成比であり、上記のように過剰添加され不純物となった組成式(3)の原料はこの組成比において加味されていない。
【0041】
〔第2の蛍光体〕
第2の蛍光体は、その発光色が第1の蛍光体の発光色と補色関係である430〜480nmにピーク波長を有する蛍光体である。このような第2の蛍光体は、近紫外または短波長可視光を効率的に吸収し、ドミナント波長が440〜470nmの光を放射する。第2の蛍光体として用いることができる蛍光体として、特に組成の限定はないが、例えば下記の一般式で表される蛍光体(1)〜(4)の中から選択できる。
【0042】
(1)一般式がM(M:Re(ここで、MはCa、Sr、Ba、Mg、Zn、Cd、K、AgおよびTlからなる群より選ばれる少なくともCa、Sr、Baのいずれかを含む1種以上の元素、MはP、V、Si、As、Mn、Co、Cr、Mo、WおよびBからなる群より選ばれる少なくともPを含む1種以上の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、Reは希土類元素およびMnからなる群より選ばれる少なくともEu2+を含む1種以上の元素を示す。また、aは4.2≦a≦5.8、bは2.5≦b≦3.5、cは0.8<c<1.4、dは0.01<d<0.1の範囲である)で表されている蛍光体。
【0043】
(2)一般式がM1−aMgAl1017:Eu2+(ここで、MはCa、Sr、BaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素を示す。また、aは0.001≦a≦0.5の範囲である)で表されている蛍光体。
【0044】
(3)一般式がM1−aMgSi:Eu2+(ここで、MはCa、Sr、BaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素を示す。また、aは0.001≦a≦0.8の範囲である)で表されている蛍光体。
【0045】
(4)一般式がM2−a(B)X:Re(ここで、MはCa、Sr、BaおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素を示す。また、aは0.001≦a≦0.5の範囲である)で表されている蛍光体。
【0046】
第2の蛍光体の一例である(Ca,Mg)(POCl:Eu2+は、例えば、次のようにして得ることができる。第2の蛍光体は、原料としてCaCO、MgCO、CaCl、CaHPO、およびEuを用い、これらの原料をモル比がCaCO:MgCO:CaCl:CaHPO:Eu=0.05〜0.35:0.01〜0.50:0.17〜2.50:1.00:0.005〜0.050となるよう所定の割合で秤量し、秤量した各原料をアルミナ乳鉢に入れ約30分粉砕混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をアルミナ坩堝に入れ、2〜5%のHを含むN雰囲気中で、温度800℃以上1200℃未満で3時間焼成し、焼成物を得る。この焼成物を温純水で丹念に洗浄し、余剰の塩化物を洗い流すことにより第2の蛍光体を得ることができる。第2の蛍光体は、第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する。
【0047】
なお、前述の原料混合物を得る際のCaCl2の秤量(モル比)については、製造される第2の蛍光体の組成比に対して、その化学量論比よりも0.5mol以上の過剰量を秤量することが好ましい。これにより、Clの不足に起因する第2の蛍光体の結晶欠陥の発生を防止することができる。
【0048】
上記の第1および第2の蛍光体の具体例については、同一出願人による特願2010−046130号、特願2010−113139号に開示されている。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る平面発光モジュールでは、第1および第2透明樹脂層の間に空気層を介在させることで、発光素子から放射された光を広範囲に拡散させて、照度むらの少ない平面発光モジュールを実現することができる。また、蛍光体の分散された透明樹脂層を2層設けることで、色むらの少ない擬似白色光で照明することができる。
【0050】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0051】
第1透明樹脂層24および第2透明樹脂層26には、蛍光体以外の種々の物性を有する物質が混入されていてもよい。バインダー部材よりも屈折率の高い物質、例えば、金属酸化物、フッ素化合物、硫化物等が透明樹脂層24、26に混入されることにより、透明樹脂層24、26の屈折率を高めることができる。これにより、発光素子18から発生する光が透明樹脂層24、26へ入射する際に生ずる全反射が低減され、透明樹脂層24、26への励起光の取り込み効率を向上させるという効果が得られる。さらに、混入する物質の粒子径をナノサイズにすることで、透明樹脂層24、26の透明度を低下させることなく屈折率を高めることができる。また、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン等の平均粒径0.3〜3μm程度の白色粉末を光散乱剤として透明樹脂層24、26に混入することができる。これにより、発光面内の輝度、色度むらを防止することができる。透明樹脂層24、26は、発光素子18を覆う光透過層であって、後述する第1の蛍光体や第2の蛍光体が分散されている光透過部材として機能する。また、数nm〜数百nmのサイズのSiOを混合してもよい。このような透明微粒子を混合することで蛍光体ペーストのチクソ性が高くなり、塗布した蛍光体ペーストの形状維持や硬化層における蛍光体の沈降を防止することができる。
【0052】
実施の形態では、基板12の全体を第1透明樹脂層により均一厚みで封止することを述べたが、基板12上の発光素子以外の部分は封止する必要はない。例えば、図4(a)に示すように、基板上の発光素子18を一列ずつ第1透明樹脂層24’で封止するようにしてもよいし、図4(b)に示すように、基板上の発光素子18を一つずつ第1透明樹脂層24”で封止するようにしてもよい。いずれの場合も、広範囲にわたって照度むらの少ない照明が得られるように、各発光素子18の光出射面から第1透明樹脂層の表面までの距離が、実施の形態で述べた距離Lと同程度であることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
10 平面発光モジュール、 12 基板、 17 反射膜、 18 発光素子、 24 第1透明樹脂層、 25 空気層、 26 第2透明樹脂層、 28 板状カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射膜が施された平面状の基板と、
前記基板の反射膜側に実装された発光素子と、
少なくとも前記発光素子を封止するように配置された第1透明樹脂層と、
前記第1透明樹脂層との間に空気層を挟んで配置された第2透明樹脂層と、
を備え、
前記第1および第2透明樹脂層内に、前記発光素子からの放射光を波長変換する蛍光体が分散配置されており、前記第2透明樹脂層を外部から見たときに擬似白色光が観察されるように前記蛍光体が選択されることを特徴とする平面発光モジュール。
【請求項2】
前記第2透明樹脂層を外部から見たときに略均一な輝度の擬似白色光が観察されるように、前記第1および第2透明樹脂層の厚み、第1透明樹脂層と第2透明樹脂層との間に配置された空気層の厚み、ならびに前記蛍光体の濃度が設定されることを特徴とする請求項1に記載の平面発光モジュール。
【請求項3】
前記発光素子は紫外光または短波長の可視光を放射し、
前記蛍光体は、前記発光素子からの放射光を黄色光に変換する第1蛍光体と、前記発光素子からの放射光を青色光に変換する第2蛍光体と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の平面発光モジュール。
【請求項4】
可視光に対して透明または半透明であるカバーをさらに備え、
前記第2透明樹脂層が前記カバーの基板側表面に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の平面発光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−12536(P2013−12536A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143266(P2011−143266)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】