説明

廃タイヤ焼却装置

【課題】不完全燃焼を極めて低減させて燃焼させ、炉内での爆発を防止するとともに、煙の大気への排出も防止でき、さらに焼却残渣物も少ない廃タイヤ焼却装置を提供することにある。
【解決手段】投入自燃部12と、ガスを冷却する冷却部と、排気部と、を含む廃タイヤ焼却装置であり、投入自燃部12は、投入される廃タイヤの収容空間Sを有する耐火構造の閉鎖炉体20と、閉鎖炉体20内に空気を供給する空気供給装置22と、を有し、閉鎖炉体20が、廃タイヤ内孔Hの縦の連通空隙が少なくともその炉内の下部側の中央部に形成されるように複数の廃タイヤT1を横積み上げさせるとともに、横積み上げさせた廃タイヤT1の外周と炉壁(20b)との間に密着状に廃タイヤT2を立てて安定配置しうるように、横断面多角形状で形成されていることを特徴とする廃タイヤ焼却装置10から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内で爆発を生じさせることなく、確実に燃焼させて有害な煙等を大気へ排出することなく廃タイヤを焼却処理する廃タイヤ焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤを廃棄処分する際には、焼却廃棄することが多い。しかし、廃タイヤは焼却すると、不完全燃焼となることが多く、煤等の未燃焼成分を含む黒煙が発生しやすい。この黒煙等を大気中にそのまま排出すると周囲環境や住民の健康に悪影響を及ぼすことから、近年では法規制も厳しくなり、焼却炉の操業停止等の行政処分の対象となる場合がある。このような問題に対し、煙等を大気中に排出させないようにタイヤを焼却する焼却装置の提案が種々されており、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の古タイヤの焼却装置は、開閉自在の蓋を有し無作為に投入させた古タイヤを収容する1次炉と、1次炉に連通した焼却処理室とバーナとを有する2次炉と、を有しており、1次炉で古タイヤを燃焼させて生成ガスを生じさせた後、該生成ガスを2次炉の焼却処理室内に導入して燃焼し、無煙無臭のガスに処理して大気に放出するものであった。
【特許文献1】特開平5−126325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の古タイヤの焼却装置では、1次炉内に投入された古タイヤは、無作為に投入されたタイヤにより炉内へ均一な空気供給が行われず、ほとんどのタイヤが不完全燃焼状態で燃焼し、煤や一酸化炭素等の未燃焼成分が含まれた不完全燃焼ガスが発生するおそれがあった。よって、1次炉内では、不完全燃焼ガスが充満して可燃性ガスや炭素微粉塵等の濃度が爆発下限を超えて上昇することにより、爆発が度々生じる場合があった。大きな爆発音や振動により周囲住民や環境に悪影響を及ぼすとともに、炉体が早期に損傷してしまうという問題があった。さらに、1次炉内でタイヤが不完全燃焼となった場合には、焼却処理後に、該1次炉内には焼却灰中に未燃焼の炭素やゴム等を含む残渣物が多量に残ってしまう。その際、例えば、一旦液化して冷え固まったゴムがスチールワイヤに固着していることも多く、残渣物の後処理作業を別途行う必要があり、煩雑で大きな労力がかかることとなっていた。また、焼却処理中は、2次炉内には不完全燃焼状態の生成ガスが導入されやすいので、常にバーナを起動して生成ガスを焼却処理する必要があり、炉の管理や光熱費を含む運転コストが高くつくものであった。
【0004】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、投入自燃部内で空気を十分に反応させながら廃タイヤを燃焼することにより、不完全燃焼を極めて低減させて燃焼させ、炉内での未燃焼成分の濃度を上昇させることなく爆発を防止するとともに、黒煙の大気への排出も防止でき、さらに焼却残渣物も少ない廃タイヤ焼却装置を提供することにある。さらに、他の目的は、例えば、焼却処理の停止前の炉内温度が低下して不完全燃焼が生じやすい場合のみ、廃タイヤから生じるガスを加熱焼却させることにより、黒煙の大気排出を防止しつつ運転コストの高騰を抑える廃タイヤ焼却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、廃タイヤの投入自燃部12と、投入自燃部12からのガスを冷却する冷却部14と、排気部16と、を含む廃タイヤ焼却装置であり、投入自燃部12は、投入される廃タイヤの収容空間Sを有する耐火構造の閉鎖炉体20と、閉鎖炉体20内に空気を供給する空気供給装置22と、を有し、閉鎖炉体20が、廃タイヤ内孔Hの縦の連通空隙が少なくともその炉内の下部側の中央部に形成されるように複数の廃タイヤT1を横積み上げさせるとともに、横積み上げさせた廃タイヤT1の外周と炉壁(20b)との間に密着状に廃タイヤT2を立てて安定配置しうるように、横断面多角形状で形成されていることを特徴とする廃タイヤ焼却装置10から構成される。立てる廃タイヤは横積み上げさせた廃タイヤT又は炉壁の少なくとも一方に密着させるように立てかけるとよい。
【0006】
また、空気供給装置22は、炉内下部側の横積み上げされた複数の廃タイヤT1の下部炉床側から上方に向けて空気を供給する第1空気供給装置32と、閉鎖炉体20の側壁20bから炉の中央側に向け、少なくとも立てて配置された廃タイヤの内孔Hに空気を供給するように複数個分散して取り付けられた吹出口42を含む第2の空気供給装置32と、を備えたこととしてもよい。第2の空気供給装置32の吹出口42は、規則的に列状に配置されていても良く、ランダムに配置されていても良い。
【0007】
また、閉鎖炉体20は、少なくとも多角形の一辺に対応する横幅を有する廃タイヤの初期投入用開閉蓋24が設けられていることとしてもよい。例えば、作業者が出入でき、炉内で廃タイヤ積み上げの初期投入作業が行える大きさの初期投入用開閉蓋24を設けるとよい。
【0008】
また、閉鎖炉体20は、廃タイヤの収容空間Sの上部から廃タイヤTaを投入しうるように、閉鎖炉体20の上部に設けられた廃タイヤの追加投入用開閉蓋26が設けられていることとしてもよい。
【0009】
また、投入自燃部12と冷却部14との中間位置に、投入自燃部12と冷却部14の双方に連通し、投入自燃部12からのガスを加熱焼却する加熱焼却部18が設けられていることとしてもよい。
【0010】
また、閉鎖炉体20内の自燃状態を感知する燃焼感知器(58)と、閉鎖炉体20内の燃焼状態に対応して空気供給装置22及び加熱焼却部18の駆動を制御する制御部60と、を有し、投入自燃部12の閉鎖炉体内温度が設定温度以上であり、かつ、温度変化が負の変化で、しかも時間当たりの温度の変化度合いが所定値以上の値を示すときに不完全燃焼状態と判断して加熱焼却部18を駆動させることとしてもよい。時間当たりの温度の変化度合いは、例えば、時間当たりの温度差や時間当たりの温度変化率等その他任意のものを適用するとよい。
【0011】
また、投入自燃部12の閉鎖炉体内設定温度が500℃以上であることとしてもよい。すなわち、設定温度は500℃以上であれば任意でよく、例えば、500〜700℃の任意の温度で設定される。
【0012】
また、加熱焼却部の加熱燃焼駆動が維持されて、閉鎖炉体内温度が500℃以下でさらにそれよりも十分に低い設定温度以下となるときに、廃タイヤ燃焼後に残る残渣物が燃焼する微燃焼状態として、加熱焼却部18の加熱燃焼駆動を停止させることとしてもよい。
【0013】
また、加熱焼却部18の加熱燃焼駆動を停止させると同時に、該微燃焼状態を維持するような低圧で閉鎖炉体20内に長時間空気供給させることとしてもよい。空気供給装置22からの空気供給する圧力を、例えば、焼却灰や残渣物が風圧で舞い上がらない程度に設定される。
【0014】
また、加熱焼却部18と排気部16との間に、加熱焼却部18から排気部16側に流れるガスを冷却する冷却部14が設けられ、該冷却部14は、加熱焼却部18からのガスを複数に分岐させて通流させる分岐管78と、該分岐管78の外表面に向けて外気を送る送風機80と、を含む空冷装置(70)からなることとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の廃タイヤ焼却装置によれば、廃タイヤの投入自燃部と、投入自燃部からのガスを冷却する冷却部と、排気部と、を含む廃タイヤ焼却装置であり、投入自燃部は、投入される廃タイヤの収容空間を有する耐火構造の閉鎖炉体と、閉鎖炉体内に空気を供給する空気供給装置と、を有し、閉鎖炉体が、廃タイヤ内孔の縦の連通空隙が少なくともその炉内の下部側の中央部に形成されるように複数の廃タイヤを横積み上げさせるとともに、横積み上げさせた廃タイヤの外周と炉壁との間に密着状に廃タイヤを立てて安定配置しうるように、横断面多角形状で形成されていることから、閉鎖炉体内の低部に、燃焼対象物である廃タイヤ自体がやぐら状に組み付け、あるいは積み付けられて堅牢な燃焼基礎部を構築し、同時に炉体中央部を縦に連通する空隙と側壁から内部に空気を導入させる空隙とを形成して着火後の立ち上がり及びそれに続く初期燃焼時に堅牢なやぐら状燃焼基礎部に十分な空気供給を行う結果、廃タイヤの初期燃焼時の完全燃焼状態を短時間で形成させ、閉鎖炉体内での廃タイヤの自燃状態で、黒煙や煤等が極めて発生しにくく、不完全燃焼ガスの濃度上昇による爆発も防止できる。また、やぐら状の燃焼基礎部を形成しているから、廃タイヤの追加投入により早期に燃焼中の燃焼物の形状が崩壊して空気閉塞部分を形成して黒煙や煤等が出るようなことを防止し、安定した燃焼状態を維持することができる。
【0016】
また、空気供給装置は、炉内下部側の横積み上げされた複数の廃タイヤの下部炉床側から上方に向けて空気を供給する第1空気供給装置と、閉鎖炉体の側壁から炉の中央側に向け、少なくとも立てて配置された廃タイヤの内孔に空気を供給するように複数個分散して取り付けられた吹出口を含む第2の空気供給装置と、を備えることにより、廃タイヤの内孔を介して、閉鎖炉体内に効率良く空気を供給でき、廃タイヤと空気とを十分に反応させ、閉鎖炉内での良好に廃タイヤを完全燃焼させうる構成を具現できる。
【0017】
また、閉鎖炉体は、少なくとも多角形の一辺に対応する横幅を有する廃タイヤの初期投入用開閉蓋が設けられている構成とすることにより、廃タイヤにより構築されたやぐら状燃焼基礎部の周囲側の立てて配置させる廃タイヤを横断面多角形形状の一辺に対応させて密着状に配置させて、閉鎖炉体内の限られたスペースに効率良く、かつ安定的に堅牢なやぐら状燃焼基礎部を構築させることができる。また、初期投入用開閉蓋を介して廃タイヤの投入作業をスムーズに行える。
【0018】
また、閉鎖炉体は、廃タイヤの収容空間の上部から廃タイヤを投入しうるように、閉鎖炉体の上部に設けられた廃タイヤの追加投入用開閉蓋が設けられていることにより、やぐら状燃焼基礎部として構築させた初期投入の廃タイヤの燃焼中に、簡単に閉鎖炉体内に追加投入することができる構成を具体的に実現できる。
【0019】
また、投入自燃部と冷却部との中間位置に、投入自燃部と冷却部の双方に連通し、投入自燃部からのガスを加熱焼却する加熱焼却部が設けられている構成とすることにより、例えば、着火当初や、廃タイヤが焼却減量して自燃状態の衰退による温度低下等の条件で投入自燃部で発生しやすい不完全燃焼ガスを、大気へ排出する前に加熱焼却することができ、無害な状態でガスを大気への排出できる。
【0020】
また、閉鎖炉体内の自燃状態を感知する燃焼感知器と、閉鎖炉体内の燃焼状態に対応して空気供給装置及び加熱焼却部の駆動を制御する制御部と、を有し、投入自燃部の閉鎖炉体内温度が設定温度以上であり、かつ、温度変化が負の変化で、しかも時間当たりの温度の変化度合いが所定値以上の値を示すときに不完全燃焼状態と判断して加熱焼却部を駆動させる構成とすることにより、不完全燃焼ガスが生じるおそれが高い場合を予め設定し、その場合の際に制御部で自動的に判断して加熱焼却部を駆動させるので、不完全燃焼ガスの濃度上昇による爆発を防止しつつ、黒煙の大気への排出を確実に防止できる。また、必要時のみ比較的短時間だけ加熱焼却部を駆動させることで、加熱焼却部の燃料費、管理費を低減し、運転コストの低廉化を図れる。また、閉鎖炉体の温度で管理する構成であるので、構成を簡単にでき、低コストで製造できる。
【0021】
また、投入自燃部の閉鎖炉体内設定温度が500℃以上であることとすることにより、閉鎖炉体内で煙の発生するおそれが高い閉鎖炉体内温度を具体的に設定でき、制御部による加熱焼却部の制御を実現できる。
【0022】
また、加熱焼却部の加熱燃焼駆動が維持されて、閉鎖炉体内温度が500℃以下でさらにそれよりも十分に低い設定温度以下となるときに、廃タイヤ燃焼後に残る残渣物が燃焼する微燃焼状態として、加熱焼却部の加熱燃焼駆動を停止させる構成とすることにより、廃タイヤ燃焼後の燃焼物の量が極めて少なく、ガスの発生量も少ない微燃焼状態では、加熱焼却部の加熱燃焼駆動を停止して、運転コストを節約できる。
【0023】
また、加熱焼却部の加熱燃焼駆動を停止させると同時に、該微燃焼状態を維持するような低圧で閉鎖炉体内に長時間空気供給させる構成とすることにより、残渣物中に含まれる未燃焼成分を略完全に燃焼させて焼却処理することができるとともに、長時間の熱利用が可能である。また、低圧で空気供給するので、運転コストも安くてすむ。
【0024】
また、加熱焼却部と排気部との間に、加熱焼却部から排気部側に流れるガスを冷却する冷却部が設けられ、該冷却部は、加熱焼却部からのガスを複数に分岐させて通流させる分岐管と、該分岐管の外表面に向けて外気を送る送風機と、を含む空冷装置からなることにより、ガスを分岐管で分岐させて熱交換面となる管との接触面積を大きく確保することができ、短時間で高温のガスを低温に冷却できる。さらに、冷却部を簡単な構成で、低コストで製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下添付図面を参照しつつ本発明の廃タイヤ焼却装置について説明する。本発明の廃タイヤ焼却装置は、煙を大気に排出させることがないとともに、爆発を起こすこともなく良好にタイヤを燃焼処理する装置である。
【0026】
図1、図2は、本発明の廃タイヤ焼却装置の一実施形態を示している。本実施形態において、図1、図2に示すように、廃タイヤ焼却装置10は、廃タイヤの投入自燃部12と、投入自燃部12からのガスを冷却する冷却部14と、排気部16と、を含む。さらに、本実施形態では、投入自燃部12と冷却部14との中間位置に加熱焼却部18が設けられている。
【0027】
投入自燃部12は、廃タイヤを投入収容して焼却する部位であり、廃タイヤに着火した後は、外部からの強制的な加熱を行うことなく廃タイヤ自身で燃焼を継続する。投入自燃部12は、投入される廃タイヤの収容空間Sを有する耐火構造の閉鎖炉体20と、閉鎖炉体20内に空気を供給する空気供給装置22と、を有する。
【0028】
図3、図4にも示すように、閉鎖炉体20は、本実施形態では、例えば、ステンレス等の耐火性金属、合金で設けられた略直方体状の閉鎖箱体からなり、矩形状の底壁20aと、該底壁20aのそれぞれの各辺に対応した4つの側壁20bと、天壁20cと、を有している。すなわち、閉鎖炉体20は、横断面矩形状に設けられ、さらに各壁により閉鎖されて収容空間Sが形成される。閉鎖炉体20の底部側は炉床となっており、廃タイヤを載置させながら上下に空気を通させる間隙を有する載置部21が設けられている。この載置部21上に、予め底壁部20a上に燃焼対象物である複数の廃タイヤT1、T2をやぐら状に組み付けて堅牢な燃焼基礎部を構築して初期投入される。具体的には、図3,4に示すように、廃タイヤ内孔Hの縦に連通させて炉内の中央部に複数の廃タイヤT1を横積み上げるとともに、その横積み上げさせた廃タイヤT1の外周と閉鎖炉体の側壁20bとの間に廃タイヤT2を立てて配置される。すなわち、閉鎖炉体20は、廃タイヤT1の内孔Hの縦の連通空隙が少なくともその炉内の中央部に形成されるように複数の廃タイヤT1を積み上げ配置させるとともに、立てて配置される廃タイヤT2が横積み廃タイヤT1と側壁20bとの間に密着状に配置されて、立てた状態で縦に積み上げても安定配置されうるよう横断面形状で各壁が構成されている。炉体中央部を縦に連通する空隙と側壁から内部に空気を導入させる空隙とを形成して堅牢なやぐら状燃焼基礎部に十分な空気供給を行うことができる。また、廃タイヤの追加投入により早期に燃焼中の燃焼物の形状が崩壊して空気閉塞部分を形成して黒煙や煤等が出るようなことを防止し、安定した燃焼状態を維持することができる。なお、図4に示すように、横積み上げ廃タイヤT1の外周と一つの側壁との間に立てて配置される廃タイヤT2は側壁の横幅に対応した大きさのものを断面視で一個ずつ配置しているが、2つ以上の複数個配置することとしてもよい。例えば、立てて配置する廃タイヤT2の径の大きさ等により配置態様を変更するとよい。また、横積み上げした廃タイヤT1の上に、例えば、径の小さな別の廃タイヤを1個ないし数個載置してもよい。また、閉鎖炉体20は、横断面矩形状の横断面五角形、六角形その他横断面多角形状に形成してもよく、上述のような安定した廃タイヤの積み上げが行えるように設けるとよい。
【0029】
本実施形態では、閉鎖炉体20の図3上、右側となる側壁20bの上部側には、廃タイヤの燃焼で発生するガスの炉体からの排気口となる排気路23が設けられている。正面側となる側壁20bには、該側壁20bの横幅に対応した横幅の初期投入用開閉蓋24が設けられており、開閉自在に設けられている。初期投入用開閉蓋24は、少なくとも作業者が出入りできる程度の大きさで設けられており、上記のような積み上げ状態で閉鎖炉体内に初期投入される廃タイヤT1、T2の積み上げ作業を円滑に行える。さらに図3上、左側となる他の側壁20bの上部側には、廃タイヤの追加投入口が設けられており、該追加投入口を開閉する追加投入用開閉蓋26が設けられている。追加投入用開閉蓋26を介して、焼却処理中に、廃タイヤの収容空間Sの上部、すなわち、上記のようにやぐら状に構築した燃焼基礎部となる廃タイヤの上部、から廃タイヤTaを追加投入できるので、長時間連続して焼却しうる。
【0030】
なお、閉鎖炉体20の外周囲には、該閉鎖炉体の初期投入用開閉蓋が設けられる側壁を除く側壁及び天壁を覆うように水ジャケット28が設けられている。水ジャケット28は、冷却用の水が貯留されるとともに、後述するように冷却部14の水ジャケット75及び排気部16の水ジャケット88と導水管90を介して内部連通接続されており、必要に応じてポンプ92を介して強制的に水を循環させ、閉鎖炉体内での焼却で発生する熱を冷却する。また、閉鎖炉体で発生する熱を、他の機関、装置の熱源、発電等に有効に利用できる。
【0031】
本実施形態では、空気供給装置22は、図3、図4に示すように、第1の空気供給装置30と、第2の空気供給装置32と、を含む。第1の空気供給装置30は、閉鎖炉体20内の底部側から上方に向けて(図上、矢視W1方向に)空気を供給する。具体的には、第1の空気供給装置30は、閉鎖炉体20内の下部側の横積み上げされた複数の廃タイヤT1の下部側すなわち炉床側から上方に向けて空気を供給するように設けられており、本実施形態では、少なくとも該廃タイヤT1の内孔H内に空気を送る供給するようになっている。炉床側には、載置部21と底部との間に空気の通る空間が設けられており、この空気供給装置30による空気供給が良好に行われ、燃焼が促進し、最終残渣物を減少できる。第1の空気供給装置30は、閉鎖炉体20内のタイヤ載置部21すなわち炉床の下方の底部側に配置された吹出部34を有しており、高圧で空気を圧送する高圧ブロワ36と、低圧で空気を送る低圧ブロワ38と、にそれぞれ制御弁40を介して接続されている。高圧、低圧ブロワ36,38の駆動切り替えにより、閉鎖炉体内への空気吹出圧を変更できる。なお、高圧、低圧ブロワ36,38及び制御弁40は、後述の制御部60によって制御される。また、一つのブロワを吹出し圧力を調整できるように構成し、制御部60の制御により高圧、低圧を変更するようにしてもよい。
【0032】
第2の空気供給装置32は、閉鎖炉体の側壁20bから炉の中央側に向けて(図上、矢視W2方向に)空気を供給する空気供給手段であり、該側壁20b側に複数個分散して取り付けられた吹出口42を含む。吹出口42は、少なくとも立てて配置された廃タイヤT2の内孔Hに空気を供給するようになっており、この実施形態では、複数の吹出口42は、側壁20bの高さ方向及び水平方向に列状に配置されている。本実施形態では、第2の空気供給装置32は、高圧ブロワ36に制御弁44を介して接続された空気圧送管46を、閉鎖炉体20を覆う水ジャケット28の外周壁面に沿うように配置させたものを、縦方向に複数個配置させている。そして、各空気圧送管46に互いに所定の間隔で離隔させながら、該空気圧送管と内部連通した吹出管48を水ジャケットを貫通させつつ、一端を周壁に接続し、該接続部に設けられる周壁の孔を吹出口42として形成されている。制御弁44は、制御部により開閉制御される。このように、空気供給装置22を構成及び上述のような廃タイヤの積み上げ態様とすることで、閉鎖炉体内で廃タイヤと空気とを良好に反応させることができ、該閉鎖炉体内での完全燃焼を促進できる。よって、閉鎖炉体内での不完全燃焼ガスの発生又は濃度上昇を極めて低減でき、煙の発生及び炉内での爆発を防止できる。
【0033】
なお、本実施形態では、空気供給装置22は、閉鎖炉体の上方側から下方又は斜め下方W3に向けて空気を供給する第3の空気供給装置50を備えている。第3の空気供給装置50は、高圧ブロワ36に制御弁45を介して接続された上方空気圧送管を水ジャケット28及び閉鎖炉体の天壁を縦方向に貫通させて炉内に突出させ、その貫通させた圧送管の下方側に複数の吹出口が設けられている。なお、制御弁45は、制御部60に開閉制御される。閉鎖炉体内に上方からも廃タイヤに向けて空気を供給することにより、閉鎖炉体20では、廃タイヤの燃焼で生じるガスが空気とより混合されやすいとともに、該閉鎖炉体内で該ガスが燃焼され、完全燃焼を促進する。
【0034】
加熱焼却部18は、投入自燃部12と冷却部14との中間位置に、投入自燃部12と冷却部14の双方に連通し、投入自燃部12からのガスを大気に放出する前に加熱焼却する強制焼却部であり、例えば、特に廃タイヤが不完全燃焼している時に加熱燃焼駆動される。本実施形態では、加熱焼却装置18は、図1、図2、図3に示すように、閉鎖炉体の排気路23に内部連通しつつその内部を外部から隔離閉鎖したガス閉鎖炉体52と、該ガス閉鎖炉体内でガスを加熱焼却する強制焼却手段としてのバーナ装置54と、を有している。ガス閉鎖炉体52は、1対の対向壁のみを開口させた全体として略直方体の耐火性金属からなる中空箱体からなる。ガス閉鎖炉体52は、一つの開口により排気路23と連通接続され、他の開口は冷却部14に連通接続されており、閉鎖炉体からのガスはガス閉鎖炉体52内を通って冷却部14に導入される。バーナ装置54は、ガス閉鎖炉体52の側壁に一体的に取り付けられている。バーナ装置54は、燃料、酸素等の供給管(図示せず)に接続されており、ガス閉鎖炉体の中空内部に向けて火炎を放射するようになっている。バーナ装置54は、制御部60により駆動、停止制御される。なお、ガス閉鎖炉体の出口には、温度センサ56が設置されている。温度センサ56は、制御部60に接続され信号を送るようになっている。
【0035】
本実施形態では、閉鎖炉体20内の燃焼状態に対応して上述の第1、第2、第3の空気供給装置30、32、50並びにバーナ装置54の駆動が制御される。すなわち、廃タイヤ装置10は、閉鎖炉体20内の自燃状態を感知する燃焼感知器(58)と、閉鎖炉体20内の燃焼状態に対応して空気供給装置22及び加熱焼却部18の駆動を制御する制御部60と、を有している。
【0036】
燃焼感知器は、例えば、閉鎖炉体20内の温度(廃タイヤの燃焼で発生するガスの温度)を計測する温度センサ58からなり、閉鎖炉体20内の排気口近傍に温度感知部を配置されるとともに制御部60に接続されており、該制御部に信号を送る。
【0037】
図5は、制御部60の構成の一部を概略示している。図5に示すように、制御部60は、時間を計る計時部61と、設定温度や温度変化率の所定値を保持する記憶部62と、設定温度と温度センサ58から送られてくる温度との比較、及び時間当たりの温度変化率並びに該温度変化率と所定値とを比較等の種々の演算処理を行う演算処理部63と、各ブロワや制御弁等に制御信号を送る制御信号処理部64と、を含む。制御部60は、本実施形態では、計時部60による時間の経過及び温度センサ58からの信号を受けて演算処理部63により演算された処理結果を基に、制御信号処理部64を介して、高圧ブロワ36、低圧ブロワ38の駆動・停止制御、制御弁40、44、45の開閉制御及びバーナ装置54の駆動・停止制御を行う。
【0038】
本実施形態では、制御部60は、投入自燃部12の運転を開始、すなわち、初期投入した廃タイヤに着火と同時に高圧ブロワ36とバーナ装置54を駆動制御するとともに、第1、第3の空気供給装置30,50の制御弁40,45を開く。所定時間後、例えば5分後には、バーナ装置54を停止制御する。着火当初は、不完全燃焼ガスが発生しやすく、この間だけバーナ装置54を駆動することにより、不完全燃焼ガスを加熱焼却させる。また、制御部60は、第2の空気供給装置32の複数の吹出口42からの空気供給を、閉鎖炉体20の高さ位置が異なる部位で異ならせている。例えば、本実施形態では、上方位置から下方位置の吹出口の順に時間差をつけて空気の供給タイミングを制御する。具体的には、例えば、運転開始から25分後に上部側の吹出口に対応する制御弁44aを開制御し、その10分後に中間位置の吹出口に対応する制御弁44bを開制御し、さらにその10分後に下部側の吹出口に対応する制御弁44cを開制御する。本実施形態では、初期投入で積み上げた廃タイヤの上部から着火され、燃焼が下方に進むにつれて、時間差で吹出口42から空気を供給する。
【0039】
さらに制御部60は、閉鎖炉体20内の温度と設定温度との比較、時間当たり(Δt)の温度の度合いを常に演算処理する。時間あたりの温度の変化度合いとは、例えば、時間当たりの温度差、時間当たりの温度変化率等であり、本実施形態では、制御部60は、時間当たりの温度差を演算している。そして、制御部60は、閉鎖炉体20内の温度が設定温度以上であり、かつ、温度変化が負の変化で、しかも時間当たりの温度の変化度合いが所定値以上の値を示すときに不完全燃焼状態と判断してバーナ装置54を駆動させる。例えば、図7のグラフに示すように、閉鎖炉体20内で燃焼処理中には、閉鎖炉体20内の廃タイヤの燃焼が進むことによる廃タイヤ燃料の減少、又は追加投入等により、複数回温度の降下、上昇が確認される。さらに廃タイヤの燃焼が進み、廃タイヤがほとんど燃えてしまった燃焼後期になると廃タイヤ燃料の減少により閉鎖炉体内の温度が急激に低下する。本実施形態では、図7の矢視F部分では、例えば、閉鎖炉体内温度が5分間で約156℃降下している。よって、例えば、所定値を5分間あたりの温度差が150℃程度に設定しておくことにより、制御部60は、高温での焼却状態での温度の上下変動と、燃焼終了間近の不完全燃焼が生じやすい状態と、を判別して、バーナ装置54を加熱燃焼駆動させる。この所定値は、炉体の容積、廃タイヤの燃焼投入量等の諸条件等により任意に設定するとよい。また、本実施形態では、設定温度は、例えば、500℃で設定されている。後述のように500℃以下の温度となった際に、煙(不完全燃焼ガス)が発生しやすいことが確認されており、設定温度を500℃以上の温度で設定しておくことで、煙の発生しやすい温度域で確実にバーナ装置を駆動させることができる。また、燃焼後期では、廃タイヤ燃料が減少しているので空気供給量も比較的少なくてよく、殆ど閉鎖炉体の下部側にあるので、制御部60は、バーナ装置54の駆動とともに、制御弁44,45を閉じて第2、第3の空気供給装置32,50からの空気供給を停止させ、第1の空気供給装置30の吹出口34からのみ空気供給を行わせるように制御するようになっている。なお、制御部60は、閉鎖炉体20内の温度が設定温度以下の際に、加熱焼却部を駆動することとしてもよい。
【0040】
制御部60は、燃焼後期からさらに閉鎖炉体内での焼却処理が進行し、閉鎖炉体内温度が500℃以下となった際も、バーナ装置54の加熱燃焼駆動を維持する。そして、さらにそれよりも十分に低い設定温度以下、例えば、本実施形態では200度以下となったときに、廃タイヤ燃焼後に残る残渣物が燃焼する微燃焼状態として、バーナ装置54の加熱燃焼駆動を停止させる。さらに、本実施形態では、制御部60は、バーナ装置54の加熱燃焼駆動を停止させると同時に高圧ブロワ38を停止させ、低圧ブロワ38を駆動させ、該微燃焼状態を維持するような低圧で吹出部34から閉鎖炉体20内に長時間空気供給させる。低圧で空気を供給することにより、未燃焼物を含む焼却残渣物が閉鎖炉体中に吹き上がり拡散したり、わずかな未燃焼物が早期に燃え尽きてしまうことがなく、微燃焼状態を長時間維持することができる。その結果、残渣物中の未燃焼物を略完全に焼却処理できるとともに、長時間水ジャケット28内水を加温又は保温でき、熱を有効に利用できる。また、低圧で駆動させるので、長時間の稼動コストも安くてすむ。
【0041】
本実施形態では、冷却部14は、冷却装置70を含む。図1、図2に示すように、冷却部14は、冷却装置の前に集塵機72が設けられており、ガス閉鎖炉体52からの高温ガスはまず集塵機72を通過した後、冷却装置70で冷却されるようになっている。集塵機72は、例えば、サイクロン集塵機からなる。集塵機は、円筒状の中空胴部をガス閉鎖炉体52と内部を連通して接続されており、中空胴部内にガスを導入し、該ガスを円筒躯体内で渦巻状に回転させることにより、ガス中の細かな焼却灰等の粉塵を分離する。集塵機72の上部には、粉塵と分離したガスを排気させる排気筒74が設けられており、ガスを排気部16側へ導入するように横方向に架設された断面矩形状のガス流路管76に接続されている。ガスと分離された粉塵は胴部の底部側に残り、集塵機の側面に設けられた粉塵取り出し用開閉蓋77を介して取り出される。なお、集塵機72の胴部の周囲には、外部から覆うように水ジャケット75が設けられている。
【0042】
本実施形態では、冷却装置70は、排気筒74と排気部16との間のガス流路管76の流路方向中間位置に配置されている。冷却装置70は、図6に示すように、ガスを複数に分岐させて通流させる分岐管78と、該分岐管78の外表面に向けて外気を送る送風機80と、を含む空冷装置からなる。分岐管78は、管径が比較的小さい金属管部材78aの複数を並列状に配置させ、ガス流路管76と同じ断面形状の金属製筐体79内に固定されている。筐体79の分岐管78の入口及び出口側には、管の開口以外の部分を閉鎖する隔壁79aが設けられており、ガス流路76を流れるガスは該分岐管78内のみを分岐して流れる。送風機76は、例えば、モータ駆動するファン装置からなる。送風機80は、該筐体79の側面の両側に配置され、該筐体内に内部連通した断面円形で両端開口の筒部材79b内に配置されている。送風機80は、分岐管78の流路方向とは直交する方向に送風する。なお、筐体79の上面側には、開口81が設けられている。図6上、矢視W3、W4に示すように、ファン装置からの風は分岐管に当たりつつ開口81を介して上方に排出される。これにより、ガスの熱交換面となる管との接触面積が大きく、効率的に短時間でガスを冷却できる。なお、本実施形態では、ガス流路管76の出口側には温度センサ82が設けられており、制御部60に接続されている。ファン装置は、制御部60により、ガス流路管の出口温度が上限温度(例えば、215℃)以上になった際に駆動され、下限温度(例えば、200℃)以下となった際に停止されるようになっている。
【0043】
排気部16は、閉鎖炉体で廃タイヤを燃焼した際に生じるガスを大気に排出させる部分である。本実施形態では、排気部16には、ガス中から粉塵を分離する集塵機84と、該集塵機84の上部に設けられ該集塵機84からガスを大気に排気する煙突86と、が設けられている。集塵機84は、例えば、冷却部14の集塵機72と同様に、サイクロン集塵機からなり、中空胴部内にガスを導入し、該ガスを円筒躯体内で渦巻状に回転させることにより、ガス中の細かな焼却灰等の粉塵を分離させるとともに、ガスは大気へ放出される。ガスと分離された粉塵は躯体の底部側に残り、集塵機の側面に設けられた取出し用開閉蓋87を介して取り出される。集塵機84の胴部の周囲には、外部から覆うように水ジャケット88が設けられている。水ジャケット88には、水温を計る温度センサ89が設けられている。
【0044】
図1、図2に示すように、本実施形態では、閉鎖炉体20、冷却部14の集塵機72、排気部16の集塵機84をそれぞれ被覆している水ジャケット28,75,88は、導水管90を介して互いに接続されており、ポンプ92を介して内部の水を強制的に循環され、冷却効率を高めている。排気部16の水ジャケット88は、温水を貯留する貯留タンク94に接続されており、必要に応じて温水の利用を図れる。また、閉鎖炉体の水ジャケット28には、自動給水装置96が設けられており、貯留タンク94側への温水供給により循環する水の量が減少した際に、自動でジャケット内に給水する。
【0045】
次に本実施形態に係る廃タイヤ焼却装置10の作用について説明する。初期投入用開閉蓋24を開き、作業者が閉鎖炉体20内に入り、初期投入となる複数の廃タイヤT1,T2を図3、図4に示すように、中央に横積みし、その外周と側壁との間に立てて配置し、開閉蓋24を閉める。例えば、新聞紙等に火を着け、追加投入用開閉蓋から炉内に投げ入れて、廃タイヤに着火させる。この際、制御部60は、第1、第3の空気供給装置30,50を駆動させるとともに、加熱焼却部のバーナ装置54を加熱燃焼駆動させる。これにより着火当初に発生しやすい不完全燃焼ガスを加熱焼却できる。5分後には、バーナ装置54を停止制御する。制御部60は、運転開始から例えば25分後に第2の空気供給装置32の複数の吹出口を上部側から空気を供給させ、以後10分ごとに下方に向けて順次供給させる。また、必要に応じて、追加投入用開閉蓋を介して廃タイヤTaを追加投入して、焼却処理を継続する。投入自燃部では、上記のような態様で廃タイヤの積み上げ、空気を供給することで、廃タイヤの内孔等を介して閉鎖炉体内全体で該廃タイヤと空気とが良好に反応できる。よって、完全燃焼を促進でき、閉鎖炉体内での不完全燃焼ガスの発生又は濃度上昇を極めて低減でき、煙の発生及び炉内での爆発を防止できる。閉鎖炉体内で発生したガスは、加熱焼却部を通過し、冷却部14へ導入される。冷却部14では、集塵機72でガス中の粉塵等が分離された後、冷却装置70の分岐管78へ導入される。分岐管78には送風機から送られる風が当たって熱交換され、ガスは分岐管を通過する際に冷却されて排気される。冷却部14からのガスは排気部16において、再び集塵機88に導入されて、ガス中の粉塵等が分離された後、無害な状態で大気に排出される。
【0046】
所定時間後に、閉鎖炉体内での廃タイヤの燃焼が進み、廃タイヤがほとんど燃えてしまった燃焼後期になると廃タイヤ燃料の減少により閉鎖炉体内の温度が急激に低下する(図7の矢視F参照)。この際、制御部60は、不完全燃焼状態として、バーナ装置54を加熱燃焼駆動させるとともに、第2、第3の空気供給装置32,50からの空気供給を停止させ、第1の空気供給装置30の吹出口34からのみ空気供給を行わせるように制御する。これにより、閉鎖炉体内で発生する不完全燃焼ガスをバーナ装置54で加熱焼却して、無害な状態でガスを大気へ放出することができる。図7に示すように、廃タイヤ燃料の減少により閉鎖炉体内の温度が下がり、例えば、200度以下となった際に、制御部60は、バーナ装置54の加熱燃焼駆動を停止させると同時に高圧ブロワ38を停止させ、低圧ブロワ38を駆動させて、低圧で閉鎖炉体20内に長時間空気供給させる。これにより、残渣物中の未燃焼物を略完全に焼却処理できるとともに、長時間、水ジャケット28内水を加熱又は保温でき、閉鎖炉体から発生する熱を熱源、発電等に有効に利用できる。
【実施例1】
【0047】
次に、図7ないし図12を参照しつつ、上記実施形態に係る廃タイヤ焼却装置を用いて廃タイヤを焼却した際の実施例と比較例について説明する。
【0048】
「実施例」:閉鎖炉体内に20kgの廃タイヤ12本、その上に7kgの廃タイヤを2本を図9、図10のように積み上げて載置して廃タイヤを初期投入し、着火後、表1のタイミングで追加投入を行いながら焼却処理を行った。図7は、時間に対する閉鎖炉体内温度、加熱焼却部の温度、排気部側の水ジャケットの水温の温度変化を示すグラフである。
【0049】
【表1】

【0050】
着火開始から観測終了までに排気部からの煙の排出及び閉鎖炉体内での爆発は観測されなかった。この実施例では合計457kgの大量の廃タイヤを焼却処理できた。また、焼却処理終了後の閉鎖炉体内には、残渣物の量が少なく、ゴム等の黒い燃え残りをほとんど含まない白色の灰とスチールワイヤのみが残っていた。
【0051】
「比較例」:比較として、閉鎖炉体内に7kgの廃タイヤ13本、9kgの廃タイヤ4本を、図11、図12のように中央の下側に廃タイヤを立てて、その上に横済みし、その周囲と側壁の間に立てて積み上げ配置させて初期投入し、着火後、表2のタイミングで追加投入を行いながら焼却処理を行った。図8は、その際の時間に対する閉鎖炉体内温度、加熱焼却部の温度、排気部側の水ジャケットの水温の温度変化を示すグラフである。なお、この比較例では、焼却残渣物が燃焼する微燃焼状態で、閉鎖炉体内に低圧での空気供給を行わなかった。
【0052】
【表2】

【0053】
着火開始から観測終了までに排気部からの煙の排出が数回、閉鎖炉体内での爆発が一回観測され、表3のような結果となった。また、閉鎖炉体内の温度が500℃以下に低下すると煙が多量に発生していることも確認される。この比較例では、合計203kgの廃タイヤを焼却処理した。さらに、焼却処理終了後の閉鎖炉体内には、黒い燃え残りを多量に含む残渣物が多く残っており、タイヤの金属ワイヤーとゴムが引っ付いた状態となっていた。
【0054】
【表3】

【0055】
以上のように、実施例のように初期投入時に図9、図10に示すような廃タイヤを炉の中央に横積み上げし、その外周にさらに廃タイヤを立てて配置させる態様とした方が、廃タイヤを完全燃焼させるのに有効であることがわかる。また、実施例は初期投入量、追加投入量が多くても、確実に完全燃焼処理することができ、処理能力、燃焼効率も高いとともに、燃焼残渣物を低減できることがわかる。
【0056】
以上説明した本発明の廃タイヤ焼却装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の廃タイヤ焼却装置は、自動車等の解体やタイヤ交換等で廃棄される廃タイヤを焼却処理するのに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る廃タイヤ焼却装置の概略構成を示す正面説明図である。
【図2】図1の廃タイヤ装置の一部省略平面説明図である。
【図3】図1の廃タイヤ装置の投入自燃部の内部及び、廃タイヤの初期投入状態を概略示す説明図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】冷却部の要部断面説明図である。
【図6】制御部の一部構成を示す説明図である。
【図7】実施例での、時間に対する閉鎖炉体内の温度変化、加熱焼却部の温度変化、水ジャケット内の温度変化を示すグラフである。
【図8】比較例での、時間に対する閉鎖炉体内の温度変化、加熱焼却部の温度変化、水ジャケット内の温度変化を示すグラフである。
【図9】実施例での、廃タイヤの積み上げ態様を示す正面説明図である。
【図10】実施例での、廃タイヤの積み上げ態様を示す平面説明図である。
【図11】比較例での、廃タイヤの積み上げ態様を示す正面説明図である。
【図12】比較例での、廃タイヤの積み上げ態様を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0059】
10 廃タイヤ焼却装置
12 投入自燃部
14 冷却部
16 排気部
18 加熱焼却部
20 閉鎖炉体
22 空気供給装置
24 初期投入開閉蓋
26 追加投入用開閉蓋
30 第1の空気供給装置
32 第2の空気供給装置
42 吹出口
58 温度センサ
60 制御部
70 冷却装置
78 分岐管
80 送風機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤの投入自燃部と、投入自燃部からのガスを冷却する冷却部と、排気部と、を含む廃タイヤ焼却装置であり、
投入自燃部は、投入される廃タイヤの収容空間を有する耐火構造の閉鎖炉体と、閉鎖炉体内に空気を供給する空気供給装置と、を有し、
閉鎖炉体が、廃タイヤ内孔の縦の連通空隙が少なくともその炉内の下部側の中央部に形成されるように複数の廃タイヤを横積み上げさせるとともに、横積み上げさせた廃タイヤの外周と炉壁との間に密着状に廃タイヤを立てて安定配置しうるように、横断面多角形状で形成されていることを特徴とする廃タイヤ焼却装置。
【請求項2】
空気供給装置は、炉内下部側の横積み上げされた複数の廃タイヤの下部炉床側から上方に向けて空気を供給する第1空気供給装置と、
閉鎖炉体の側壁から炉の中央側に向け、少なくとも立てて配置された廃タイヤの内孔に空気を供給するように複数個分散して取り付けられた吹出口を含む第2の空気供給装置と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項3】
閉鎖炉体は、少なくとも多角形の一辺に対応する横幅を有する廃タイヤの初期投入用開閉蓋が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項4】
閉鎖炉体は、廃タイヤの収容空間の上部から廃タイヤを投入しうるように、閉鎖炉体の上部に設けられた廃タイヤの追加投入用開閉蓋が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項5】
投入自燃部と冷却部との中間位置に、投入自燃部と冷却部の双方に連通し、投入自燃部からのガスを加熱焼却する加熱焼却部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項6】
閉鎖炉体内の自燃状態を感知する燃焼感知器と、閉鎖炉体内の燃焼状態に対応して空気供給装置及び加熱焼却部の駆動を制御する制御部と、を有し、
投入自燃部の閉鎖炉体内温度が設定温度以上であり、かつ、温度変化が負の変化で、しかも時間当たりの温度の変化度合いが所定値以上の値を示すときに不完全燃焼状態と判断して加熱焼却部を駆動させることを特徴とする請求項5記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項7】
投入自燃部の閉鎖炉体内設定温度が500℃以上であることを特徴とする請求項6記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項8】
加熱焼却部の加熱燃焼駆動が維持されて、閉鎖炉体内温度が500℃以下でさらにそれよりも十分に低い設定温度以下となるときに、廃タイヤ燃焼後に残る残渣物が燃焼する微燃焼状態として、加熱焼却部の加熱燃焼駆動を停止させることを特徴とする請求項7記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項9】
加熱焼却部の加熱燃焼駆動を停止させると同時に、該微燃焼状態を維持するような低圧で閉鎖炉体内に長時間空気供給させることを特徴とする請求項8記載の廃タイヤ焼却装置。
【請求項10】
加熱焼却部と排気部との間に、加熱焼却部から排気部側に流れるガスを冷却する冷却部が設けられ、
該冷却部は、加熱焼却部からのガスを複数に分岐させて通流させる分岐管と、該分岐管の外表面に向けて外気を送る送風機と、を含む空冷装置からなることを特徴とする請求項5ないし9のいずれかに記載の廃タイヤ焼却装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−315658(P2007−315658A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144867(P2006−144867)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(506178357)株式会社 フジアルファ (1)
【Fターム(参考)】