説明

廃プラスチックを用いた焼成品の製造方法

【課題】廃プラスチックをロータリーキルン等の焼成炉の燃料として用いて、生石灰または焼成ドロマイト等の焼成品を製造する際に、廃プラスチックの輸送安定性、キルン内での燃焼安定性を向上させることのできる、廃プラスチックを用いた焼成品の製造方法を提供すること。
【解決手段】焼成炉内の原料を燃料の燃焼により加熱して焼成品を製造する際に、アスペクト比が4以上である固形燃料Bを廃プラスチックAとともに造粒し、得られた造粒物Cを燃料として用いること特徴とする焼成品の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来あまり燃料として使用されてない廃プラスチックを、生石灰、焼成ドロマイト、ポルトランドセメント等の焼成品を製造するロータリーキルン等の焼成炉に吹き込むことにより燃焼させて、燃料として利用する際の、廃プラスチックを用いた焼成品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みのプラスチックである廃プラスチックは高い熱量を有する熱源として使用可能であるが、従来埋め立て処理および焼却処理されていた。しかしながら、廃プラスチックは嵩密度が小さいため埋め立て処分場が早期に逼迫してくる問題、あるいは廃プラスチックを焼却した際の有害成分の発生等による環境上の問題が発生してきている。そこで、廃プラスチックのリサイクル利用の要請が高まり、例えば鉄鋼業においては、高炉、コークス炉で廃プラスチックを炭材として使用することにより、廃プラスチックの大量リサイクルを行なっている。
【0003】
廃プラスチックが高い熱量を有する熱源として使用可能なことに着目した技術としては、廃プラスチックを利用したセメントクリンカーの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、廃プラスチックを、セメントクリンカーを製造するロータリーキルン内の原料に添加することによって安価にセメントクリンカーを製造できるとしているが、具体的な廃プラスチックの添加方法は不明である。
【0004】
従来、生石灰、焼成ドロマイト、ポルトランドセメント等がロータリーキルンを用いて製造されていることは良く知られている。ロータリーキルンは装入物に対して燃焼ガスの通過する空間が比較的大きいため、種々の燃料を燃焼するために好都合である。
【0005】
ロータリーキルンにおいて、生石灰、焼成ドロマイトは、石灰石、ドロマイト原石をサイロから原石を予熱するためのグレートプレヒーターに供給し、予めロータリーキルンからの排ガスによって予熱し、その後、ロータリーキルンに装入して製造される。ロータリーキルンは円形の鉄皮に耐火物が内張りされた円筒状の加熱炉であって、一定の速度で円筒の軸の回りに回転している。装入された石灰石等は回転した炉内を通過し、出口方向へ移動する。原料の装入口は出口方向に対して3/100〜4/100上向きに傾斜しており、装入された石灰石等は焼成されながら炉内を回転しつつ、出口方向に移動する。
【0006】
出口においては、燃料を供給する装置が備えられており、ノズルを介して炉内に吹き込まれ、空気により燃焼して、炉内を1000℃以上の高温に保持する。この燃焼熱により石灰石、ドロマイト原石は焼成されて生石灰または焼成ドロマイトに変化する。
【0007】
燃料燃焼のための空気は生石灰、焼成ドロマイトと熱交換を行い、高温空気としてロータリーキルンの中に吹き込まれ、燃料を燃焼する。ロータリーキルン内の温度は出口側が約600℃前後、燃料が燃焼する火炎のある部分は部分的には1500℃以上となり、石灰石、ドロマイトの分解反応に伴って温度が低下し、ガスの排出口側においては1000℃程度まで温度が低下する。この1000℃程度の高温排ガスは石灰石、ドロマイトの予熱に使用される。
【0008】
以上が生石灰または焼成ドロマイトを製造する場合のロータリーキルン設備の概要である。従来、ロータリーキルンでは燃料として主に微粉炭を利用し、一部として重油も利用している。しかしながら、これらの燃料は何れもコスト高である。高発熱量を有する廃プラスチックを燃料として利用することで、生石灰または焼成ドロマイトをより安価に製造することができ、燃料削減ならびに環境問題の解決につながることが期待される。
【0009】
ロータリーキルンにおいて、廃プラスチックを主燃料と共にロータリーキルン内に吹き込み、燃焼させることを目的とし、(a)廃プラスチック粒子を細束流とする工程と、(b)前記廃プラスチック粒子の細束流を主燃料の吹き込み位置の上側から前記ロータリーキルン内に燃料として吹き込み、燃焼させる工程、を有するロータリーキルンにおける廃プラスチックの燃焼方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2においては、ロータリーキルン内に細束流として吹き込んだ廃プラスチック粒子の炉内における着地範囲が、主燃料の火炎長さの1/10〜2/3の範囲にあるように吹き込むことが好ましいとされている。
【0010】
一方で、吹込み燃料等として用いる廃プラスチックは、造粒して用いることが好適なことが知られている。特に好ましい廃プラスチックの造粒方法として、フィルム状プラスチックと固形状プラスチックとを、圧縮成型装置を用いて造粒する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。フィルム状プラスチックを造粒した場合に十分な強度を有する粒状プラスチック成型物が得られないことから、粒の強度を保つのに有効な“核”として固形状プラスチックの少なくとも一部を半溶融又は溶融化させることなく残存させるような造粒を行うことにより、粒状プラスチック成型物の強度が飛躍的に高まり、空気輸送や吹き込みなどの際の崩壊を効果的に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭47−39124号公報
【特許文献2】特開平8−283053号公報
【特許文献3】特開2001−341131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
廃プラスチックを石灰焼成炉等に吹き込む際には廃プラスチックを気流輸送可能な粒径に粉砕する必要がある。粉砕後のプラスチックの形状は元のプラスチックの性状にもよるが、粒径範囲が広く、その形状もフィルム状のものあるいは固形状ものと種々雑多である。そのため、その形状を整えるために、例えば、リングダイ造粒装置等を用いた圧縮成形造粒方法により造粒して造粒物とする方法を用いることができる。しかしながら、前記造粒方法は表面のみを溶融して造粒する方法のため、気流輸送中に衝撃等により造粒物が崩壊して粉化し、配管内で閉塞しやすい。また、焼成炉内に吹き込んだ際には粉化したプラスチックがキルン内のガス流れにのってキルン入口側まで輸送されてしまい、石灰石予熱部の充填層内で閉塞する。さらには、廃プラスチックの燃焼位置がキルン入口から石灰石充填層に移行し、キルン入口部の赤熱等設備的なトラブルの要因となる。
【0013】
また、特許文献2においては、廃プラスチック粒子をロータリーキルンの中で完全に燃焼させるために、吹込み方法、粒径の規定がなされているが、廃プラスチックには多くの場合、塩素含有合成樹脂が含まれているという問題がある。
【0014】
廃プラスチックに含まれている塩素含有合成樹脂はロータリーキルン内の250℃以上の雰囲気で、脱塩化水素反応により塩化水素を生成する。生成した塩化水素は石灰石、生石灰、ドロマイト、焼成ドロマイトと反応し、塩化カルシウム(CaCl2)や塩化マグネシウム(MgCl2)となり、製品に混入する。これらハロゲン化物の混入した生石灰、焼成ドロマイトは塩素含有濃度により、利用方法が限定される。生石灰は製鉄所において製銑用原料、製鋼用原料として利用されており、塩素の混入は使用過程において設備腐食をもたらす可能性がある。従って、用途によっては、事前に廃プラスチックより、塩素含有合成樹脂等を除去する必要が生じる。
【0015】
また、その他の焼成品を製造する場合にも、塩化物は蒸気圧が高いため揮発による製品歩留の低下や、ダストが増加するという問題がある。
【0016】
したがって本発明の目的は、廃プラスチックをロータリーキルン等の焼成炉の燃料として用いて、生石灰または焼成ドロマイト等の焼成品を製造する際に、廃プラスチックの輸送安定性、キルン内での燃焼安定性を向上させることのできる、廃プラスチックを用いた焼成品の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、廃プラスチックに塩素含有合成樹脂が含まれている場合であっても、焼成品の塩素濃度を低減することのできる廃プラスチックを用いた焼成品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)焼成炉内の原料を燃料の燃焼により加熱して焼成品を製造する際に、アスペクト比が4以上である固形燃料を廃プラスチックとともに造粒し、得られた造粒物を前記燃料として用いること特徴とする焼成品の製造方法。
(2)燃焼により水分が生成し、塩素を含有しない固形燃料を用いることを特徴とする(1)に記載の焼成品の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、焼成炉の燃料として廃プラスチックを用いる際に、廃プラスチックにアスペクト比の高い固形燃料を混合し、押出し成型することで、極めて硬い造粒物を製造することができ、気流輸送性ならびに焼成炉内での燃焼位置も安定的制御できる。また、燃焼により水分が生成し、塩素を含有しない固形燃料を用いることで、造粒物中の塩素濃度を低減することができ、すなわち燃焼により生成する水分の塩素に対する比率を高くすることができ、焼成品の塩素濃度を極めて低位に制御することができる。このため、焼成品の用途を限定することなく、焼成品を安価に製造することができる。
【0019】
これにより廃プラスチックの焼成炉の燃料としての利用が容易となり、廃プラスチックのリサイクル利用が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)プラスチック造粒物、(b)プラスチック、固形燃料造粒物のイメージを示す説明図。
【図2】本発明の一実施形態を示す処理フロー。
【図3】圧縮成型造粒方法で用いる造粒装置の一例の概略図(リングダイ造粒装置)。
【図4】粒子平均強度指数の測定方法を示す図。
【図5】プラスチック、固形燃料造粒物の平均強度指数の変化を示すグラフ。
【図6】プラスチック、固形燃料造粒物吹き込み時のキルン出口排ガス温度、生石灰中塩素濃度を示すグラフ。
【図7】アスペクト比と平均強度指数の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、廃プラスチックの造粒物を燃料として焼成品を製造する際に、アスペクト比が4以上である固形燃料を廃プラスチックとともに造粒する。造粒過程で溶融しないアスペクト比の大きい固形物を混合することで、造粒物内のプラスチック粒子間を架橋し、粒子の細粒化を防止することができる。図1に、このようなプラスチック造粒物のイメージ図を示す。図1(a)は、従来の廃プラスチック造粒物の断面の一例であり、フィルム状のプラスチック21の層の間に固形状のプラスチック22の粒子が存在している。図1(b)は、本発明で用いる廃プラスチック粒状物であり、フィルム状のプラスチック21間を高いアスペクト比の固形燃料23が架橋している。これにより造粒物の強度が増加するとともに、造粒物に衝撃が加わった際にも造粒物が崩壊しにくく、細粒化を防止でき、造粒物が安定した気流輸送性、焼成炉内での燃焼性を有することを見出し本発明を完成した。
【0022】
固形燃料のアスペクト比は、大きいほど造粒物内のプラスチック粒子間を架橋する効果が大きく、好ましい。アスペクト比が4未満では造粒物の強度が増加する効果が小さい。
【0023】
固形燃料としては、焼成炉で燃料として利用可能な物質からなり、造粒過程で溶融等により形状が変化しないものが好ましい。より具体的には、廃木材などのバイオマス類の破砕物を用いることが好ましい。バイオマス類はその構造上繊維質であり、破砕、粉砕した場合、高アスペクト比の破砕物となる。固形燃料のアスペクト比は、固形燃料の長径と短径の比率(長径/短径)と定義される。長径は固形燃料の最も長いところの径であり、短径は長径と直角方向の投影面積の円相当径と定義する。廃プラスチックとともに造粒する固形燃料のアスペクト比は、固形燃料の破砕物より、任意に100粒子を抽出し、アスペクト比を測定し、平均化して求めることができる。
【0024】
固形燃料の廃プラスチックに対する混合割合は10mass%以上であればよい。30mass%以上であれば安定した気流輸送性、燃焼安定性を確保できるので、より好ましい。
【0025】
また、固形燃料としては、燃焼により水分が生成し、塩素を含有しない物質を用いることが好ましい。塩素を含まない固形燃料を用いることで、造粒物の塩素濃度を低減できるとともに、燃焼過程で生成する水分が、生石灰中等に生成した塩化カルシウムの脱塩化水素反応(酸化カルシウムの生成)にも寄与し、極めて塩素濃度の低い生石灰および焼成ドロマイト等を製造可能である。廃木材などのバイオマス類の破砕物は、この点でも本発明の固形燃料として好適である。
【0026】
本発明において使用する焼成炉とは、原料と燃料とを容器内で加熱することにより原料を焼成する炉であり、具体的にはロータリーキルンやメルツ炉等があげられる。以下、ロータリーキルンを用いて本発明を説明する。また、焼成炉の燃料の一部として使用する廃プラスチックとは、使用済みプラスチックであり、通常異物や複数種類のプラスチックの混合状態からなるものである。一般家庭からの廃棄物である一般廃棄物プラスチックは異物の混入が多く、通常リサイクルに用いる際に前処理が必要であるが、産業廃棄物プラスチックは一般には異物の混入が少なく、多種類のプラスチックの混合状態ではない場合もある。塩素含有合成樹脂とは、PVC(ポリ塩化ビニル)及びPVDC(ポリ塩化ビニリデン)等であり、本発明で用いる廃プラスチックは、このような塩素含有合成樹脂が含まれている廃プラスチックである。
【0027】
次に、図2を用いて、具体的な廃プラスチックを用いた焼成炉(ロータリーキルン)での焼成品の製造方法を説明する。廃プラスチックAおよび固形燃料Bは破砕手段1および破砕手段2により、造粒機4に投入可能な粒径まで破砕処理され、混合機3で混合される。混合された廃プラスチックAと固形燃料Bを造粒機4に供給し、焼成炉に気流輸送可能な粒度に造粒して造粒物Cとする。造粒物Cは吹込み手段5(気流輸送装置)にて、吹込み手段6にて供給される主燃料Dとともに、空気Eにより焼成炉7内に供給され、石灰石Fの焼成用燃料として用いられ、これにより生石灰石Gが製造される。
【0028】
次に、廃プラスチックと固形燃料との造粒方法について詳しく説明する。
【0029】
吹き込まれる廃プラスチックは吹き込み可能な粒径に、公知の方法を用いて造粒する。造粒物は、性状が一定(粒径範囲が狭く、品質も安定)であり、焼成炉への吹込み燃料として好適である。廃プラスチックは破砕後、予め磁選、風選等を用いた異物除去と水による洗浄等を行ない、プラスチック以外の異物を可能な限り除去した後に、造粒物に加工することが好ましい。造粒は通常の廃プラスチックを造粒する際に用いる公知の方法を用いれば良く、例えば以下に示す圧縮成型造粒方法のような造粒方法を用いることができる。圧縮成型造粒方法は、特にフィルム状の廃プラスチックの造粒に好適である。
【0030】
圧縮成型造粒方法では、廃プラスチック、固形燃料の混合物を、全周に複数のダイス孔が貫設されたリングダイの孔から圧縮押出しして造粒する。たとえば、全周に複数のダイス孔が貫設されたリングダイと、このリングダイの内側にリングダイ内周面と接するようにして回転自在に配置された転動ローラとを備えた圧縮成型装置を用いるものであり、リングダイの内部に投入された廃プラスチックを固形燃料とともに、転動ローラによってリングダイ内周面との間で圧縮・圧潰しつつリングダイのダイス孔に押し込み、ダイス孔内を通過してリングダイ外面側に押し出されたプラスチック成型物を切断又はリングダイ外面から掻き落とすことにより、炉吹き込み原料となる粒状成型物を得るものである。主としてダイス孔内において廃プラスチックの少なくとも一部が摩擦熱によって半溶融又は溶融化し、その後固化することによりプラスチック、固形燃料混合物成型物(造粒物)が得られる。
【0031】
圧縮成型造粒方法で用いる造粒装置としては、たとえば、全周に複数のダイス孔が貫設され、装置本体に回転可能に支持されるとともに駆動装置により回転駆動するリングダイと、装置本体に回転自在に支持されるとともに、前記リングダイの内側にリングダイ内周面と接するようにして配置される1又は2以上の転動ローラとを備えたものが知られており、廃プラスチックを、前記転動ローラによってリングダイ内周面との間で圧縮・圧潰しつつリングダイのダイス孔内に押し込み造粒する。
【0032】
圧縮成型造粒方法で用いる造粒装置の一例の概略図を図3に示す。このプラスチック圧縮成型装置は、全周に複数のダイス孔10が貫設されたリングダイ11と、このリングダイ11の内側にリングダイ内周面と接するようにして回転自在に配置された転動ローラ12a、12bと、リングダイ11の外側に配置されたカッター13とを備えている。
【0033】
前記リングダイ11は適当な幅を有するリング体により構成され、図示しない装置本体に回転可能に支持されるとともに、同じく図示しない駆動装置により回転駆動する。このリングダイ11の周方向及び幅方向には複数のダイス孔10が設けられている。これらのダイス孔10は、リングダイ11の径方向に沿ってリングダイ11の内側(内周面)と外側(外周面)間を貫通して設けられている。ダイス孔10の孔径(直径)は造粒すべき粒状プラスチック成型物の大きさ(径)に応じて決められるが、通常2〜15mm程度である。また、ダイス孔10の長さ(リングタイ5の厚さ)は通常30〜150mm程度である。
【0034】
前記転動ローラ12a、12bは装置本体に回転自在に支持されるとともに、リングダイ11の内側に180°対向した状態に配置されている。これら転動ローラ12a、12bは無駆動のフリーのローラ体であり、リングダイ11の内周面と接しているためその内周面との摩擦によりリングダイ11の回転に伴って回転する。なお、この転動ローラ12の数は任意であり、1個又は3個以上設けてもよい。
【0035】
前記カッター13は、その刃先がリングダイ11の外周面に接するか又は外周面の近傍に位置するように設けられ、前記ダイス孔10からリングダイ11の外側に棒状に押し出されるプラスチック成型物を適当な長さに切断する(又はリングダイ外周面から掻き落す)ものである。
【0036】
以上のような圧縮成型装置では、リングダイ11が図中矢印方向に回転駆動し、これに随伴して転動ローラ12a、12bも回転している状態で、投入口14からリングダイ11の内部に廃プラスチックAと固形燃料Bの混合物が投入され、この投入された廃プラスチックAと固形燃料Bは、リングダイ11内で混合され、転動ローラ12a、12bによってリングダイ11内周面との間で圧縮・圧潰されつつリングダイ11のダイス孔10内に押し込まれる。ダイス孔10内に押し込まれた廃プラスチックは、ダイス孔内を通過してリングダイ11の外面側に棒状に成型された状態で順次押し出され、このプラスチック成型物が前記カッター13により適当な長さに切断されることにより、円柱形状のプラスチック、固形燃料造粒物15が得られる。16は排出口である。
【0037】
造粒に使用される固形燃料は通常破砕処理されたものであり、その破砕径はリングダイのダイス孔と同等か、それより若干大きめでも可能である。破砕された固形燃料は廃プラスチックと混合され、造粒され、造粒物の強度を向上させる。また、造粒に用いる破砕固形燃料の長径はダイス径と同等以上であることが好ましく、アスペクト比は4以上とする。但し、短径がダイス径の1/3以上では造粒機の運転が難しい。
【0038】
上記より得られる造粒物の硬さは、造粒機の運転条件により異なる。より硬いものを得るためには造粒機の充填量を増やし、処理速度を低下させれば良いが、生産性の低下をきたす。また、さらに処理速度を低下させた場合には造粒機内で廃プラスチックが溶融し、造粒機を停止せざるを得ない状況が発生する場合もある。一方、プラスチック、固形燃料造粒物は同一処理条件においてプラスチックのみの造粒に比較して、極めて硬い(平均強度指数)ものが製造可能である。ロータリーキルンへ燃料として吹き込む場合は通常、気流輸送方式が取られるが、上記方法で造粒されたプラスチックを安定的に気送し、ロータリーキルン内に供給するためにはある程度以上の圧縮強度を有することが好ましい。
【0039】
造粒物の圧縮強度は、平均強度指数δを用いて評価することが好ましい。なお、平均強度指数δは、径の長さdに分布を持つ粒状物について、各径の粒状物について、円柱形状粒子の場合、粒子の長さ方向の側面に垂直な荷重(速度2mm/min一定)を加えたときの荷重(N)と偏位(mm)との比(N/mm)に質量分率を掛け算したものの総和であり、下記(w)式で定義する全てのdiについてのδiとωiの積の総和である。
δ=Σδiωi・・・(w)
但し、δi:径の長さdiの円柱形状の造粒物の側面に垂直な荷重(速度2mm/min一定)を加えたときの荷重(N)と変位(mm)との比(N/mm)、ωi:径の長さdiの造粒物の質量分率である。
【0040】
造粒物の強度は、例えば、図4に示すような装置を用いて測定する。図4は圧縮試験方法を示す模式図であり、図4(a)は圧縮試験装置である。圧縮試験装置20を用いて円柱形状の造粒物15の長さ方向の側面に圧縮速度2mm/minでW(N)の荷重を加え、図4(b)に示すような荷重W(N)と圧縮距離L(mm)との関係である圧縮特性を測定する。圧縮特性から造粒物の強度δを、δ≡ΔW/ΔLとして求めると、各di(粒径)を有する造粒物について図4(c)に示すようなグラフが得られる。また、図4(c)は造粒物の粒径と強度との関係を示し、粒径が大きいほど、高強度を有していることが分かる。平均強度指数δは、各粒径(円柱形状の円形部分の平均直径)diを有する造粒物の強度と質量分率の積の総和であり、上記(w)式で定義される。
【0041】
上記のような方法により製造した廃プラスチック、固形燃料の造粒物を、生石灰や焼成ドロマイト製造用ロータリーキルン等で燃料の一部として利用する。燃料として利用する方法としては、通常の気流輸送方式により、ランスあるいは専用バーナーを用いてロータリーキルン内に廃プラスチック、廃木材造粒物を吹き込めばよい。
【0042】
上記のように製造した廃プラスチック、固形燃料の造粒物をロータリーキルンの燃料の一部として吹き込み利用する場合に、燃焼により水分が生成し、塩素を含有しない固形燃料を用いた際の、焼成品から塩化カルシウム(CaCl2)の除去は以下の反応式により説明できる。CaCl2は以下の反応式(x)、(y)により生成し、(z)により脱塩化水素される。
CaCO3+2HCl=CaCl2+CO2+H2O・・・(x)
CaO+2HCl=CaCl2+H2O・・・(y)
CaCl2+H2O(燃焼により生成した)=CaO+2HCl・・・(z)
【実施例】
【0043】
[実施例1]
図3に示したものと同様の造粒装置(リングダイ造粒装置)を用いて廃プラスチックと廃木材を造粒し、プラスチック、廃木材成型物(造粒物)を得て、図2のフローに従いロータリーキルンを用いて石灰石の焼成を行なった。
【0044】
使用した廃プラスチックは一般家庭からの廃棄物であり、複数種類のプラスチックと異物とが混合された状態で、ポリエチレン32mass%、ポリプロピレン31mass%、ポリスチレン22mass%、ポリ塩化ビニル4mass%、その他(紙など)11mass%であり、塩素を1.32mass%含有するものであった。表1に廃プラスチックの化学組成を示す。また、廃木材は10mm以下(アスペクト比=5.5)に粉砕したもので、表1に化学組成を併せて示す。
【0045】
【表1】

【0046】
廃プラスチックおよび廃木材(10mm以下)混合物を1.0t/hの条件で造粒装置に供給して造粒した。造粒装置はリングダイ内径840mm、幅240mm、リングダイ厚み(ダイス長さ)60mm、転動ローラ径405mmで、ダイス径6mmの穴1万個であり、直径約6mm、長さ約10〜20mmの円筒形の粒状物を製造した。図5に廃木材混合割合を変化させた場合の、造粒物の平均強度指数を示す。
【0047】
これら造粒物(廃木材0、10、20、30、50、66mass%)を、ロータリーキルン出口の主燃料バーナー上部に設置した吹き込みランスから、500t/日の生石灰生産量の石灰焼成ロータリーキルンに吹き込んだ。吹込みランス出口でのキャリアガス速度を20m/s(=造粒物の吹込み速度)とし、造粒物のキルン内での落下位置をキルン出口より約15mとした。ロータリーキルンへの造粒物の吹き込みは0.54t/hとし、その発熱量に応じて重油の吹き込み量(発熱量:9800kcal/kg)を調整した。キルン出口での排ガス温度(予熱炉入口)および製品生石灰中の塩素濃度を図6に示す。キルン排ガス温度は廃木材割合30mass%以上で変動幅が小さくなり、安定した造粒物の燃焼が可能となる。また、廃木材混合割合が30mass%以上とすることで、生石灰中の塩素濃度を100ppm以下とすることができる。
【0048】
本発明方法を用いることで、造粒物のキルン内での燃焼が安定し、生石灰の塩素含有濃度が低下し、廃プラスチック中に含まれる塩素濃度の制約を受けず、生石灰を様々な用途に使用することが可能となった。
【0049】
[実施例2]
実施例1と同様に、廃木材は8mm以下(アスペクト比=4.1)に粉砕したものを用いて、廃木材10mass%、33mass%、50mass%の円筒形の粒状物を製造した。平均強度指数は各々、220、230、370N/mmとなり、廃木材を混合しないで造粒したものより、強度の高い造粒物を得た。
【0050】
[実施例3]
実施例1と同様に、廃木材は6mm以下(アスペクト比=3.1)、3mm以下(アスペクト比=1.7)に粉砕したものを用いて、それぞれについて廃木材10mass%、33mass%の円筒形の粒状物を製造し、平均強度指数を測定した。アスペクト比と平均強度指数の関係を、実施例1、2の結果も併せて図7に示す。アスペクト比が3.1、1.7の造粒物は強度が低く、気流輸送後に粉化するものが観察された。
【符号の説明】
【0051】
1 破砕手段
2 破砕手段
3 混合機
4 造粒機
5 吹き込み手段
6 吹込み手段
7 焼成炉
10 ダイス孔
11 リングダイ
12a、12b 転動ローラ
13 カッター
14 投入口
15 プラスチック、固形燃料造粒物
16 排出口
20 圧縮試験装置
21 フィルム状プラスチック
22 固形状プラスチック
23 高アスペクト比固形燃料
A 廃プラスチック
B 固形燃料
C 造粒物
D 主燃料
E 空気
F 石灰石
G 生石灰石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成炉内の原料を燃料の燃焼により加熱して焼成品を製造する際に、廃木材を廃プラスチックとともに造粒し、得られた造粒物を前記燃料として用いることを特徴とする焼成品の製造方法。
【請求項2】
前記廃木材が、アスペクト比が4以上であることを特徴とする請求項1に記載の焼成品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−41542(P2012−41542A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206901(P2011−206901)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2007−105865(P2007−105865)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】