説明

廃棄物処理設備における被処理水利用装置

【課題】廃棄物処理設備における廃棄物である有機質系廃棄物を用いることによって、この廃棄物処理設備から生じる被処理水が、この廃棄物処理設備の内部で有効に利用されるようにする。
【解決手段】廃棄物処理設備における被処理水利用装置は、廃棄物処理設備1に収集された廃棄物2のうち、有機質系廃棄物10を乾留して可燃性ガス17を生成する乾留装置14と、可燃性ガス17の燃焼により、廃棄物処理設備1から生じる被処理水19を蒸留して蒸留水22を生成する蒸留装置20と、蒸留水22を上記廃棄物処理設備1に用水23として供給する蒸留水供給装置24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備に収集された廃棄物のうち、有機質系廃棄物(バイオマス)の乾留により生成された可燃性ガスを利用して、廃棄物処理設備から生じて処理されるべき被処理水をこの廃棄物処理設備のための用水として利用できるようにした廃棄物処理設備における被処理水利用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理設備には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、上記有機質系廃棄物である木質資源を乾留して可燃性ガスと炭化物とを生成する乾留装置と、上記可燃性ガスの燃焼熱により蒸気を生成し、この蒸気により発電をする発電装置とが設けられている。
【0003】
つまり、上記廃棄物処理設備によれば、廃棄物である木質資源が有効利用されて、発電装置により電力が得られるようになっている。
【特許文献1】2004−239162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、廃棄物処理設備における最終処分場では、広大な土地に大きく拡がる露天状の凹所が構築される。この凹所の底面に遮水シートが敷設され、この凹所内に廃棄物が貯留されるようになっている。この場合、上記凹所の底部には、主に雨水である多量の水が自然発生的に溜まることとなって好ましくない。そこで、従来、上記水は、処理されるべき水、つまり被処理水として、活性汚泥法などの水処理装置によって浄化され、かつ、活性炭による水処理装置によって濾過された後、清水として一般河川などに放流されている。
【0005】
一方、上記廃棄物処理設備では、焼却炉や焙焼炉の冷却用などとして多量の用水が使用されるが、これら用水は、主に地下水を汲み上げることにより調達されている。
【0006】
従って、前記したように、従来の技術では、廃棄物処理設備における廃棄物のうち、有機質系廃棄物は発電のために利用されて有益である。しかし、その一方、上記廃棄物処理設備では、多量の用水が主に地下水の汲み上げにより調達されているにもかかわらず、この廃棄物処理設備から生じる被処理水は、何ら利用されることなく煩雑な水処理作業を経て廃棄物処理設備の外部に排出されている。このため、上記廃棄物処理設備の内部において、上記被処理水をより有効に利用することにつき改善の余地が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、廃棄物処理設備における廃棄物である有機質系廃棄物を用いることによって、この廃棄物処理設備から生じる被処理水が、この廃棄物処理設備の内部で有効に利用されるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、廃棄物処理設備1に収集された廃棄物2のうち、有機質系廃棄物10を乾留して可燃性ガス17を生成する乾留装置14と、上記可燃性ガス17の燃焼により、上記廃棄物処理設備1から生じる被処理水19を蒸留して蒸留水22を生成する蒸留装置20と、上記蒸留水22を上記廃棄物処理設備1に用水23として供給する蒸留水供給装置24とを備えたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記廃棄物処理設備1が、廃棄物2の焼却炉3と焙焼炉6とのうち少なくともいずれか一方の炉を備え、この炉に対し、その冷却用の用水23として上記蒸留水供給装置24により上記蒸留水22を供給するようにしたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明に加えて、上記可燃性ガス17の燃焼熱により発電用の用水28を加熱して蒸気29を生成するボイラー30と、上記蒸気29により駆動される蒸気タービン発電機31とを備えたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明に加えて、上記発電用の用水28として、上記蒸留水22を用いるようにしたものである。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、廃棄物処理設備に収集された廃棄物のうち、有機質系廃棄物を乾留して可燃性ガスを生成する乾留装置と、上記可燃性ガスの燃焼により、上記廃棄物処理設備から生じる被処理水を蒸留して蒸留水を生成する蒸留装置と、上記蒸留水を上記廃棄物処理設備に用水として供給する蒸留水供給装置とを備えている。
【0015】
即ち、上記廃棄物処理設備における廃棄物である有機質系廃棄物から可燃性ガスが生成され、上記廃棄物処理設備から生じる被処理水は、上記可燃性ガスの燃焼熱により蒸留水とされ、この蒸留水が廃棄物処理設備における各種用水として利用される。このため、廃棄物処理設備における有機質系廃棄物を用いることによって、廃棄物処理設備から生じる被処理水がこの廃棄物処理設備の内部で有効に利用されることとなる。この結果、第1に、上記廃棄物処理設備における用水のために、例えば、地下水を汲み上げる、という煩雑な作業は、より確実に不要となり、また、第2に、上記被処理水を、この廃棄物処理設備の外部に放流しないで済むことから、この廃棄物処理設備の周辺の環境に負荷を与えないようにできて、有益である。
【0016】
請求項2の発明は、上記廃棄物処理設備が、廃棄物の焼却炉と焙焼炉とのうち少なくともいずれか一方の炉を備え、この炉に対し、その冷却用の用水として上記蒸留水供給装置により上記蒸留水を供給するようにしている。
【0017】
即ち、上記蒸留水は、上記焼却炉と焙焼炉とのうち、少なくともいずれかの炉の用水として利用される。このため、上記冷却用の用水のために、例えば、地下水を汲み上げる、という煩雑な作業は、より確実に不要となって有益である。
【0018】
請求項3の発明は、上記可燃性ガスの燃焼熱により発電用の用水を加熱して蒸気を生成するボイラーと、上記蒸気により駆動される蒸気タービン発電機とを備えている。
【0019】
このため、上記可燃性ガスは、発電のためにも利用され、よって、上記廃棄物処理設備における廃棄物が有効に利用される。
【0020】
請求項4の発明は、上記発電用の用水として、上記蒸留水を用いるようにしている。
【0021】
即ち、上記蒸留水は、発電のために利用される。よって、上記発電用の用水のために、例えば、地下水を汲み上げる、という煩雑な作業は、より確実に不要となって有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の廃棄物処理設備における被処理水利用装置に関し、廃棄物処理設備における廃棄物である有機質系廃棄物を用いることによって、この廃棄物処理設備から生じる被処理水が、この廃棄物処理設備の内部で有効に利用されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0023】
即ち、上記被処理水利用装置は、廃棄物処理設備に収集された廃棄物のうち、有機質系廃棄物を乾留して可燃性ガスを生成する乾留装置と、上記可燃性ガスの燃焼により、上記廃棄物処理設備から生じる被処理水を蒸留して蒸留水を生成する蒸留装置と、上記蒸留水を上記廃棄物処理設備に用水として供給する蒸留水供給装置とを備えている。
【実施例】
【0024】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0025】
図中符号1は廃棄物処理設備である。この廃棄物処理設備1に収集される廃棄物2は、一般廃棄物、産業廃棄物であり、これには廃プラスチック、廃タイヤ、および木質系廃棄物である建築廃木材、間伐材、木屑などが含まれる。
【0026】
上記廃棄物処理設備1は、上記廃棄物2を焼却する焼却炉3と、この焼却炉3から排出される燃え殻4を焙焼し、焼成品5を焼成する焙焼炉6と、上記廃棄物処理設備1内における閉回路方式の被処理水利用装置7とを備えている。上記燃え殻4を焼成する場合、これを1200−1300℃に加熱すると、ガラス状に溶融する。そこで、その直前の1000−1100℃、好ましくは、ほぼ1050℃まで加熱して焼成する。
【0027】
上記被処理水利用装置7において用いられる廃棄物2は、バイオマスといわれる有機質系廃棄物10であり、より具体的には木質系廃棄物である。上記被処理水利用装置7は有機質系廃棄物10を破砕して木材チップ11にする破砕機12と、コンベア13により送り込まれる上記木材チップ11を600−650℃で乾留する乾留装置14とを備えている。この乾留装置14は熱分解ガス化炉(間接加熱式キルン)である。この乾留装置14により、上記木材チップ11から無害である炭化物16と可燃性ガス17とが生成される。上記炭化物16は、例えば建材の構成材として利用される。
【0028】
上記被処理水利用装置7は、上記可燃性ガス17の一部分の燃焼熱により、上記廃棄物処理設備1から水処理装置を通して生じる約300Ton/Dの被処理水19を蒸留する蒸留装置20を備えている。この蒸留装置20は、上記被処理水19の蒸留により無害である塩21と蒸留水22とを生成する。上記塩21は例えば融雪材として利用される。
【0029】
上記蒸留水22の一部分を上記廃棄物処理設備1の焼却炉3および焙焼炉6に対し、これらの冷却用の用水23として供給する蒸留水供給装置24が設けられている。この蒸留水供給装置24は、上記蒸留装置20により生成された蒸留水22をフィルタ25を通し上記焼却炉3および焙焼炉6に供給する水ポンプ26を備えている。上記焼却炉3および焙焼炉6を冷却した後の用水23は、上記廃棄物処理設備1から生じる被処理水19の一部として上記蒸留装置20に送り込まれ、再び蒸留される。なお、上記焼却炉3と焙焼炉6とのうち、一方の炉のみに上記蒸留水22を供給するようにしてもよい。
【0030】
上記被処理水利用装置7は、上記可燃性ガス17の他部分の燃焼熱により発電用の用水28を加熱して蒸気29を生成するボイラー30と、上記蒸気29により駆動されて約1400kw/Hの発電をする蒸気タービン発電機31を備えている。上記用水28として上記蒸留水22の他部分が用いられる。この蒸留水22の他部分は、上記蒸留水供給装置24によって上記ボイラー30に供給される。上記発電機31により発電された電力の少なくとも一部分は、上記廃棄物処理設備1の各装置において消費される。
【0031】
上記構成によれば、廃棄物処理設備1に収集された廃棄物2のうち、有機質系廃棄物10を乾留して可燃性ガス17を生成する乾留装置14と、上記可燃性ガス17の燃焼により、上記廃棄物処理設備1から生じる被処理水19を蒸留して蒸留水22を生成する蒸留装置20と、上記蒸留水22を上記廃棄物処理設備1に用水23として供給する蒸留水供給装置24とを備えている。
【0032】
即ち、上記廃棄物処理設備1における廃棄物2である有機質系廃棄物10から可燃性ガス17が生成され、上記廃棄物処理設備1から生じる被処理水19は、上記可燃性ガス17の燃焼熱により蒸留水22とされ、この蒸留水22が廃棄物処理設備1における各種用水23として利用される。このため、廃棄物処理設備1における有機質系廃棄物10を用いることによって、廃棄物処理設備1から生じる被処理水19がこの廃棄物処理設備1の内部で有効に利用されることとなる。この結果、第1に、上記廃棄物処理設備1における用水23,28のために、例えば、地下水を汲み上げる、という煩雑な作業は、より確実に不要となり、また、第2に、上記被処理水19を、この廃棄物処理設備1の外部に放流しないで済むことから、この廃棄物処理設備1の周辺の環境に負荷を与えないようにできて、有益である。
【0033】
また、前記したように、廃棄物処理設備1が、廃棄物2の焼却炉3と焙焼炉6とのうち少なくともいずれか一方の炉を備え、この炉に対し、その冷却用の用水23として上記蒸留水供給装置24により上記蒸留水22を供給するようにしている。
【0034】
即ち、上記蒸留水22は、上記焼却炉3と焙焼炉6とのうち、少なくともいずれかの炉の用水23として利用される。このため、上記冷却用の用水23のために、例えば、地下水を汲み上げる、という煩雑な作業は、より確実に不要となって有益である。
【0035】
また、前記したように、可燃性ガス17の燃焼熱により発電用の用水28を加熱して蒸気29を生成するボイラー30と、上記蒸気29により駆動される蒸気タービン発電機31とを備えている。
【0036】
このため、上記可燃性ガス17は、発電のためにも利用され、よって、上記廃棄物処理設備1における廃棄物2が有効に利用される。
【0037】
また、前記したように、発電用の用水28として、上記蒸留水22を用いるようにしている。
【0038】
即ち、上記蒸留水22は、発電のために利用される。よって、上記発電用の用水28のために、例えば、地下水を汲み上げる、という煩雑な作業は、より確実に不要となって有益である。
【0039】
なお、以上は図示の例によるが、炭化物16と塩21とは無害であるため、これは最終処分場で単に埋立て処理してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】廃棄物処理設備の全体簡略線図である。
【符号の説明】
【0041】
1 廃棄物処理設備
2 廃棄物
3 焼却炉
4 燃え殻
5 焼成品
6 焙焼炉
7 被処理水利用装置
10 有機質系廃棄物
14 乾留装置
16 炭化物
17 可燃性ガス
19 被処理水
20 蒸留装置
21 塩
22 蒸留水
23 用水
24 蒸留水供給装置
28 用水
29 蒸気
30 ボイラー
31 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処理設備に収集された廃棄物のうち、有機質系廃棄物を乾留して可燃性ガスを生成する乾留装置と、上記可燃性ガスの燃焼により、上記廃棄物処理設備から生じる被処理水を蒸留して蒸留水を生成する蒸留装置と、上記蒸留水を上記廃棄物処理設備に用水として供給する蒸留水供給装置とを備えたことを特徴とする廃棄物処理設備における被処理水利用装置。
【請求項2】
上記廃棄物処理設備が、廃棄物の焼却炉と焙焼炉とのうち少なくともいずれか一方の炉を備え、この炉に対し、その冷却用の用水として上記蒸留水供給装置により上記蒸留水を供給するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理設備における被処理水利用装置。
【請求項3】
上記可燃性ガスの燃焼熱により発電用の用水を加熱して蒸気を生成するボイラーと、上記蒸気により駆動される蒸気タービン発電機とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理設備における被処理水利用装置。
【請求項4】
上記発電用の用水として、上記蒸留水を用いるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の廃棄物処理設備における被処理水利用装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−160205(P2007−160205A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359368(P2005−359368)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(501089601)三重中央開発株式会社 (7)
【Fターム(参考)】