説明

廃棄物溶融炉および廃棄物溶融炉の操業方法

【課題】廃棄物溶融炉から発生するダストをコークス使用量を増加させることなく、羽口から吹き込み溶融処理できるようにし、重金属溶出防止処理が必要なダスト量を低減し、埋立処分量を削減できる廃棄物溶融炉とその操業方法を提供することを目的とする。
【解決手段】炉下部に高温燃焼帯が形成されて該高温燃焼帯の上方に廃棄物層が形成され、投入された廃棄物を熱分解すると共に残渣を溶融する廃棄物溶融炉1であって、前記高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口13と、廃棄物溶融炉1から排出されて回収されたダストと炭素材とを羽口13から吹込むダスト・炭素材吹込み手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解して残渣を溶融する廃棄物溶融炉及びその操業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を処理する技術として、都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を熱分解して可燃性ガスを発生させ、その熱分解残渣を溶融しスラグにして排出するガス化溶融処理がある。
この処理方法は廃棄物をガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、残渣を溶融して埋立処分など最終処分量を減容することができる利点を有している。
このような処理を行なう溶融炉には幾つかの方式によるものがあるが、その一つとして、シャフト式廃棄物ガス化溶融炉がある。
このシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉底部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス上へ廃棄物を投入して、熱分解させてガス化し、次いでその熱分解残渣を溶融してスラグにする処理を行なう方式の炉である(特許文献1参照)。
【0003】
このようなシャフト式廃棄物ガス化溶融炉においては、炉体の機能が大別して縦方向に3つに区分されている。すなわち、炉底部にコークスを堆積させた高温燃焼帯が設けられ、この高温燃焼帯の上に廃棄物堆積層が設けられ、炉体の上部に大きな空間を有するフリーボード部が設けられている。
【0004】
そして、上記各部では酸素含有ガスの吹き込みが行われる。高温燃焼帯には主羽口が設けられ、投入されて堆積されたコークスを燃焼させて廃棄物の熱分解残渣を溶融するための酸素富化空気が吹き込まれる。また、廃棄物堆積層には副羽口が設けられ、投入されて堆積された廃棄物を部分燃焼させると共に廃棄物を緩やかに流動させながら熱分解させるための空気が吹き込まれる。また、フリーボード部には三段羽口が設けられ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)を部分燃焼させて内部を所定温度に維持するための空気が吹き込まれる。
【0005】
このようにシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、廃棄物を、一つの炉で熱分解ガス化溶融処理する設備である。投入した廃棄物は熱分解され、ガスと残渣に分離される。ガスは可燃性ガスを多量に含み二次燃焼炉で燃焼され、ボイラやエコノマイザで熱回収された後、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、減温装置で冷却され、有害ガスが除去され集塵機で除塵処理され放散される。また、熱分解残渣は、炉内を下方に移動し、炉下部のコークス高温燃焼帯で溶融され、スラグとメタルとして排出される。
【0006】
ガス化溶融炉で発生したガスが二次燃焼炉、ボイラ、サイクロン、減温装置を経て集塵機へ到達するまでの間において、ガス中のダストのうち、比較的粗い粒子がそれぞれの装置内に落下する。このため、ガス化溶融炉と集塵機の間に配置された各装置内に落下したダスト(落下灰という)の抜出しが行なわれ、抜き出された落下灰は埋立処分されている。
【0007】
集塵機で捕集されるダスト(以下集塵灰という)(本明細書では落下灰と集塵灰の両方を含む場合を単にダストという。)は、廃棄物に由来する重金属類を含んでいるため、重金属安定剤などにより溶出防止処理をされて、落下灰とともに埋立処分されている。
【0008】
しかしながら、重金属溶出防止処理には費用がかかるし、また、埋立処分場の負荷軽減のため埋立処分量を削減するという要望もある。
そこで、このような重金属溶出防止処理費用がかかるという問題や、埋立処分量を削減する要望に対して、発生ダストをガス化溶融炉の羽口から吹き込み溶融してスラグ化することが試みられている。(特許文献2、特許文献3参照)
【0009】
特許文献2では、ガス化溶融炉から飛散するダストをサイクロンなどの除塵機で捕集し、捕集したダストを羽口から炉内へ吹き込むようにしている。また、特許文献3では、ダスト(落下灰と集塵灰)を羽口より吹き込む際に、石灰粉などの塩基度調整剤を添加してダストの塩基度(CaO/SiO2重量比)を調整し、羽口先で形成される溶融物の流動性を維持して滞留させずに円滑に炉外へ排出されるようにしている。
【特許文献1】特開平9−60830号公報
【特許文献2】特開平8−285250号公報
【特許文献3】特開平11−101430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2のダスト処理方法によれば、ガス化溶融炉から飛散するダストのうち粗いダストに関しては捕集され溶融処理可能であるが、バグフィルタなどのろ過式集塵機で捕集される細かいダストについては、対応できず、重金属溶出防止処理費用がかかるという問題や、埋立処分量を削減するという要望の十分な解決を期待できない。
【0011】
特許文献3のダスト処理方法では、廃棄物の種類や量によってダストの性状や量が変動するため、それに対応して塩基度を調整する必要があり、操業管理が煩雑になるという問題がある。
また、ダストを吹き込んだ羽口先で形成される溶融物の流動性を塩基度調整だけにより調整するには限界があり、ダストの発生量が多い廃棄物をガス化溶融処理する場合には、問題が生じる。すなわち、ダスト吹き込み量を増大させると羽口の周辺部の温度が低下するため、高温燃焼帯の状況を正常に維持するため、羽口に吹き込む酸素富化空気の酸素濃度を高めたり、送風量を増加する必要がある。この場合にはコークスの消費も増大するためコークス使用量が増加し、運転費が増大するという問題が生じる。
【0012】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、廃棄物溶融炉から発生するダストをコークス使用量を増加させることなく、羽口から吹き込み溶融処理できるようにし、重金属溶出防止処理が必要なダスト量を低減し、埋立処分量を削減できる廃棄物溶融炉とその操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る廃棄物溶融炉は、炉下部に高温燃焼帯が形成されて該高温燃焼帯の上方に廃棄物層が形成され、投入された廃棄物を熱分解すると共に残渣を溶融する廃棄物溶融炉であって、前記高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口と、前記廃棄物溶融炉から排出されて回収されたダストと炭素材とを前記羽口から吹込むダスト・炭素材吹込み手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、ダスト・炭素材吹込み手段は、廃棄物溶融炉から排出されて回収されたダストと炭素材の供給を受けて、該ダストと該炭素材の混合物を羽口に連通する送風配管に供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
(3)また、上記(1)または(2)に記載のものにおいて、廃棄物溶融炉に接続された二次燃焼炉、ボイラ、サイクロン及び減温装置のうち少なくとも一つから落下灰を回収する手段と、及び/又は集塵機で捕集した集塵灰の少なくとも一部を回収する手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のものにおいて、羽口から吹込む酸素含有ガスの送風圧力及び/又は送風量を計測する手段と、計測された前記送風圧力及び/又は送風量に基づいて、前記羽口に吹込む炭素材量を調整する手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
(5)本発明に係る廃棄物溶融炉の操業方法は、炉下部に高温燃焼帯が形成されて該高温燃焼帯の上方に廃棄物層が形成され、前記高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、投入された廃棄物を熱分解すると共に残渣を溶融する廃棄物溶融炉の操業方法であって、前記廃棄物溶融炉から排出されたダストを回収するダスト回収工程と、該ダスト回収工程で回収されたダストと炭素材とを前記羽口から吹込むダスト・炭素材吹込み工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0018】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、ダスト回収工程は、廃棄物溶融炉に接続された二次燃焼炉、ボイラ、サイクロン及び減温装置のうち少なくとも一つから落下灰を回収する工程と、及び/又は集塵機で捕集した集塵灰の少なくとも一部を回収する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0019】
(7)また、上記(5)又は(6)に記載のものにおいて、羽口から吹込む酸素含有ガスの送風圧力及び/又は送風量を計測し、計測された前記送風圧力及び/又は送風量に基づいて、前記羽口に吹込む炭素材量を調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、廃棄物溶融炉から排出されて回収されたダストと炭素材とを羽口から吹込むようにしたので、コークス使用量を増加させることなく、廃棄物ガス化溶融炉から発生するダストを溶融処理することができる。さらに、重金属溶出防止処理が必要なダスト量を低減し、埋立処分するダスト量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の一実施の形態に係る廃棄物ガス化溶融炉の説明図である。
ガス化溶融炉1は、前述したように、炉底部にコークスを堆積させ、このコークスの層に酸素富化空気を吹き込んで燃焼させることにより高温燃焼帯を形成し、この高温燃焼帯の上へ廃棄物を投入して熱分解させ残渣を溶融させるようになっている。
【0022】
このようなガス化溶融炉1は、以下のような構造になっている。
全体形状は、竪型で円筒形状に形成され、上部が拡径された形状になっている。この上部の拡径された部分はフリーボード部3である。そして、炉の上端部には廃棄物装入口5が設けられ、該廃棄物装入口5の近傍には、コークスを装入するコークス装入口7、溶融スラグ性状調整剤である石灰石を装入する石灰石装入口8が設けられている。
炉の上端部近くにはガス出口9が設けられ、炉の下部には溶融スラグ排出口11が設けられている。
【0023】
炉下部の高温燃焼帯が形成される位置にはコークスを燃焼させる空気又は酸素富化空気を吹込むための主羽口13が設けられている。主羽口13には送風配管15が接続され、送風配管15には主羽口13へ空気又は酸素富化空気を送風する送風機17(後述する図2参照)が接続されている。
高温燃焼帯の上に存在する廃棄物の位置には投入された廃棄物を流動化させる空気を吹込むための副羽口19が設けられている。また、フリーボード部3には炉下部で生成した熱分解ガス(可燃性ガス)を部分燃焼させる空気を吹き込むための三段羽口21が設けられている。
【0024】
ガス出口9の下流側にはガス化溶融炉1から排出された可燃性ガスを燃焼させる二次燃焼炉23が設置され、二次燃焼炉23の下流側には熱回収装置であるボイラ25が設置されている。さらに、ボイラ25の下流側には、同じく熱回収装置であるエコノマイザ27が設置され、エコノマイザ27の下流側には、排ガス中の比較的粗いダストを除去するサイクロン28が設置され、その下流側には熱回収された排ガスを排ガスの浄化処理に適する温度まで冷却するためのガス冷却器である減温塔29が設置されている。また、減温塔29の下流側にはバグフィルタ31が設置されている。
【0025】
二次燃焼炉23、ボイラ25、エコノマイザ27、サイクロン28、及び減温塔29ではガス化溶融炉からの排ガス中の粗いダストが落下し落下灰としてそれぞれ抜き出される。また、バグフィルタ31では集塵灰が集塵される。抜き出された落下灰と、集塵された集塵灰の一部は、ダスト・炭素材供給装置33に投入される。ダスト・炭素材供給装置33に投入された落下灰、集塵灰には炭素材が混合されて、主羽口13を介してガス化溶融炉1に吹き込まれる。
炭素材とは、例えば、粉炭、微粉炭、粉コークス、建築廃材やRDFなどを乾留した炭化物であって、炭素重量比率が50%以上で灰分が少ない粉状のものをいう。
【0026】
落下灰、集塵灰に炭素材を混合する理由を以下に説明する。
ダストだけを主羽口13から吹き込み主羽口先で溶融処理しようとした場合、特にダスト供給量が多いときなどには、ダストの溶融に必要な熱量が多く消費される。そのため、温度が低下して高粘度の溶融物が主羽口先の燃焼空間(レースウェイ)奥に蓄積、滞留し、主羽口先のガス流れを阻害することが発生する。特に、集塵灰はバグフィルタの手前で塩化水素を除去するために吹き込まれた消石灰粉などを含んでいるため、塩基度が1.5以上と高く融点が高い。そのため、従来の羽口吹込み方法では溶融しにくく流動性が悪く、集塵灰の溶融処理には制約があった。
そこで、ダストとともに炭素材を主羽口13から吹き込むことにより、炭素材がレースウェイで燃焼して主羽口先の温度低下を防ぎ、主羽口先の温度を集塵灰の溶融に適した温度にすることができるので、溶融物の滞留を防ぎ円滑に排出させるので、主羽口先のガス流れを阻害することがない。
【0027】
このようにダストとともに炭素材を主羽口13から吹き込むことにより、高温燃焼帯の燃焼と溶融の状況を安定して操業できるので、多くのダストを吹き込んでも羽口に吹き込む酸素含有ガスの酸素濃度を高めたり、送風量を増加させたりする必要がなく、その結果コークス使用量を増加させることなく、廃棄物ガス化溶融炉から発生するダストを溶融処理することができる。
【0028】
図2は、ダスト及び炭素材をガス化溶融炉1に吹き込む装置の詳細を示したものであり、この装置は、図2に示されるように、ダスト・炭素材供給装置33と、ダスト・炭素材供給装置33に炭素材を供給する炭素材供給装置35と、炭素材供給装置35からダスト・炭素材供給装置33へ供給する炭素材量を調整する炭素材供給量制御装置37から構成されている。
ダスト・炭素材供給装置33は、落下灰、集塵灰を貯留するダスト貯留槽38と、ダスト貯留槽38からダストを切り出すロータリーバルブ39と、切り出されたダストを送風管15に供給するシュート41と、シュート41に設けられたゲート弁43と、を備えている。
【0029】
また、炭素材供給量制御装置37は、送風配管15に設けられて主羽口に吹き込まれる酸素含有ガスの送風圧力を計測する送風圧力計45と、送風量を計測する送風流量計47とを備え、これら送風圧力計45と送風流量計47の計測値に基づいて炭素材供給装置35からダスト・炭素材供給装置33に供給する炭素材量を調整する。
なお、炭素材供給量制御装置37は送風圧力計45と送風流量計47の両方の計測値に基づいて炭素材量の調整を行ってもよいし、いずれか一方の計測値に基づいて炭素材量の調整を行ってもよい。
また、炭素材供給量制御装置37による炭素材量の調整は、各主羽口毎に単独で制御を行ってもよいし、一つの送風配管15に設けられた送風圧力計45と送風流量計47の計測値に基づいて全主羽口に対する制御を行うようにしてもよい。さらに、各主羽口13に連通する送風配管15に分岐する前の上流側にある図示しない送風配管に送風圧力計45と送風流量計47を設けて、これらの計測値に基づいて全主羽口に対する制御を行うようにしてもよい。
【0030】
上記のように構成された廃棄物ガス化溶融炉における廃棄物のガス化溶融処理は次のように行なわれる。
都市ごみや産業廃棄物或いは廃棄物焼却残渣などの廃棄物と、コークスと、石灰石とがそれぞれ計量され、ガス化溶融炉1内へ投入される。ガス化溶融炉1へ投入されたもののうち、コークスは炉底部に堆積し、ここに主羽口13から空気又は酸素富化空気(以下酸素含有ガスという)の熱風が吹き込まれる。
この酸素含有ガスの吹き込みによりコークスが燃焼し、高温燃焼帯が形成される。投入された廃棄物は高温燃焼帯の上方で、副羽口19から吹き込まれる空気によって流動しながら滞留して流動化層を形成する。廃棄物は流動化している間に予熱され、熱分解して可燃性ガスを発生する。
【0031】
廃棄物の熱分解残渣は高温燃焼帯で溶融され、炉底部の溶融スラグ排出口11から抜き出される。
一方、廃棄物の熱分解により生成した可燃性ガスは、フリーボード部3において、三段羽口21から空気が吹込まれて部分燃焼し、ガス出口9から排出される。
ガス出口9から排出されたガスは、二次燃焼炉23で二次燃焼用空気が吹き込まれて燃焼した後、ボイラ25及びエコノマイザ27へ送られて熱回収される。熱回収された排ガスはサイクロン28で排ガス中の比較的粗いダストが除去され、さらに減温塔29で水が噴霧されて200℃以下程度に冷却される。
次いで、排ガス中へ、塩化水素を除去するための消石灰粉やダイオキシン類を吸着して除去するための活性炭などの有害物除去剤が吹き込まれ、バグフィルタ31へ送られて集塵処理される。
【0032】
ガス化溶融炉1から排出されたガスがバグフィルタ31へ到達するまでの間に、落下灰が落下するので、二次燃焼炉23、ボイラ25、エコノマイザ27、サイクロン28及び減温塔29から落下灰を抜き出し、図示しない貯留槽で貯留する。落下灰とバグフィルタ31で集塵された集塵灰の一部をダスト・炭素材供給装置33へベルトコンベアや空気搬送機などにより搬送し、炭素材供給装置35から供給された炭素材と混合する。ダストと炭素材の混合物を、ロータリーバルブ39により所定量切出し、シュート41とゲート弁43を介して主羽口13に酸素含有ガスを供給する送風配管15に供給し、主羽口13から高温燃焼帯へ吹き込む。
【0033】
ガス化溶融炉1の炉内状況は、ガス化溶融炉で処理する廃棄物の種類や量によって変動する。このような炉内状況の変動に対応してダストを主羽口13から円滑に吹き込み溶融処理するための制御方法を以下に説明する。
【0034】
炉内状況が変動すると高温燃焼帯のガス流れが変動するので、これを検知することにより、炉内状況の変動を把握することができる。
溶融物の滞留が発生するなど溶融状況の変動により羽口先のガス流れが変動すると、羽口から吹き込む酸素含有ガスの送風圧、送風量が変動する。この送風圧や送風量は、送風圧力計45や送風流量計47で計測され、この計測値の信号が炭素材供給量制御装置37に入力されると、炭素材供給量制御装置37は、送風圧力計測値または送風量計測値に基づき、炭素材供給装置35へ炭素材供給量を適切な量に調整する信号を送る。
【0035】
高温燃焼帯での溶融状況が悪く、羽口先のガス流れが阻害されている場合には、羽口から吹き込まれる酸素含有ガスの送風圧力が増加し、送風量が低下する。この状況に対しては炭素材供給量を増加して羽口先での炭素材の燃焼を増大させて温度を上昇させ、溶融状況を適切にする。
【0036】
なお、炉内状況の変動を、複数の主羽口13に送風される酸素含有ガスの送風量のバランスの変化を計測して、このバランス変化に基づいて検知して炭素材供給量を調整するようにしてもよい。
【0037】
主羽口13から高温燃焼帯へ吹き込まれたダストは、溶融して熱分解残渣の溶融物とともに炉底部の溶融スラグ排出口11から抜き出される。
集塵灰の一部を主羽口13から吹き込むことにより集塵灰に含まれる灰分と重金属類の一部は溶融処理されて生成したスラグ中に不溶出な形態で含有される。そのため、重金属類溶出防止処理を施し埋立処分する集塵灰量を削減できる。
なお、バグフィルタで回収された集塵灰の20〜25%を溶融処理するようにすることが、上記のプロセスにそって操業するのに好ましい。
【0038】
なお、主羽口13に吹き込むダスト量に対する炭素材量を増加させることにより、高温燃焼帯で燃焼させるコークスの代替として炭素材を用いることができ、コークス使用量を低減できる効果がある。コークスにくらべて安価な炭素材を使用することにより、ガス化溶融炉の運転費を低減できる。
図3は、炭素材中の炭素量とダストとの重量比(C/D比)と、ダストと炭素材を吹き込まない時と比較したコークス使用量比との関係をグラフで示したものであり、横軸がC/D比(%)、縦軸がコークス使用量比(%)をそれぞれ示している。
【0039】
図3に示されるように、炭素材を吹き込まずにダストを吹き込む時にはコークス使用量比は3%増加するが、C/D比が5%になるように炭素材を吹き込むことにより、コークス使用量の増加をなくすことができる。さらに、C/D比を増加させるように炭素材の吹き込み量を増加させると、コークス使用量を低減することができる。例えばC/D比を30%にすると、コークス使用量を10%低減でき、C/D比40%にすると、コークス使用量を14%低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係る廃棄物ガス化溶融炉の説明図である。
【図2】図1の一部を詳細に説明する説明図である。
【図3】炭素材中の炭素量とダストとの重量比(C/D比)と、ダストと炭素材を吹き込まない時と比較したコークス使用量比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1 ガス化溶融炉
5 廃棄物装入口
9 ガス出口
13 主羽口
23 二次燃焼炉
25 ボイラ
29 減温塔
33 ダスト・炭素材供給装置
35 炭素材供給装置
37 炭素材供給量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉下部に高温燃焼帯が形成されて該高温燃焼帯の上方に廃棄物層が形成され、投入された廃棄物を熱分解すると共に残渣を溶融する廃棄物溶融炉であって、
前記高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口と、前記廃棄物溶融炉から排出されて回収されたダストと炭素材とを前記羽口から吹込むダスト・炭素材吹込み手段と、を備えたことを特徴とする廃棄物溶融炉。
【請求項2】
ダスト・炭素材吹込み手段は、廃棄物溶融炉から排出されて回収されたダストと炭素材の供給を受けて、該ダストと該炭素材の混合物を羽口に連通する送風配管に供給するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物溶融炉。
【請求項3】
廃棄物溶融炉に接続された二次燃焼炉、ボイラ、サイクロン及び減温装置のうち少なくとも一つから落下灰を回収する手段と、及び/又は集塵機で捕集した集塵灰の少なくとも一部を回収する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物溶融炉。
【請求項4】
羽口から吹込む酸素含有ガスの送風圧力及び/又は送風量を計測する手段と、計測された前記送風圧力及び/又は送風量に基づいて、前記羽口に吹込む炭素材量を調整する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の廃棄物溶融炉。
【請求項5】
炉下部に高温燃焼帯が形成されて該高温燃焼帯の上方に廃棄物層が形成され、前記高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、投入された廃棄物を熱分解すると共に残渣を溶融する廃棄物溶融炉の操業方法であって、
前記廃棄物溶融炉から排出されたダストを回収するダスト回収工程と、該ダスト回収工程で回収されたダストと炭素材とを前記羽口から吹込むダスト・炭素材吹込み工程と、を備えたことを特徴とする廃棄物溶融炉の操業方法。
【請求項6】
ダスト回収工程は、廃棄物溶融炉に接続された二次燃焼炉、ボイラ、サイクロン及び減温装置のうち少なくとも一つから落下灰を回収する工程と、及び/又は集塵機で捕集した集塵灰の少なくとも一部を回収する工程と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の廃棄物溶融炉の操業方法。
【請求項7】
羽口から吹込む酸素含有ガスの送風圧力及び/又は送風量を計測し、計測された前記送風圧力及び/又は送風量に基づいて、前記羽口に吹込む炭素材量を調整することを特徴とする請求項5又は6に廃棄物溶融炉の操業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−82564(P2008−82564A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259914(P2006−259914)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(593141481)JFE環境ソリューションズ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】