説明

廃棄物被覆用のキャッピングシートおよびその製造方法

【課題】本発明は、防水透湿性及び耐候性を有すると共に、接合部の防水性及び接合強度にも優れる廃棄物被覆用のキャッピングシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の防水性シートと、前記複数の防水性シートを縫製加工により接合してなる接合部とを有する廃棄物被覆用のキャッピングシートであって、
前記複数の防水性シートの少なくとも一部は、防水透湿性シートが、第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有する防水透湿性積層体であって、
前記接合部の耐水度水位が30cm以上、接合強度が350N/5cm以上であることを特徴とする廃棄物被覆用のキャッピングシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場などで使用されるキャッピングシートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年になって、廃棄物が大量に不法投棄されることが増えている。しかし、大量に不法投棄されている廃棄物を設備の整った処分場へ直ぐに移送することが困難な場合がある。こうした廃棄物をそのまま放置しておくと、廃棄物に雨水などがかかることで汚水が発生し、廃棄物の投棄場所の土壌を汚染する問題があるため、雨水などの浸入を防ぐ目的でこれらの廃棄物をキャッピングシートで被覆することが行われるようになってきている。
【0003】
こうした不法投棄場所の廃棄物は、いつかは処分場へ移送されるため、これらの廃棄物にキャッピングする場合には、キャッピングシート表面に覆土をしないことが一般的である。そのため、こうした箇所へ適用されるキャッピングシートでは、太陽光や風雨に直接曝されることになるため、耐候性に優れることが要求される。また、廃棄物から発生するガスや水蒸気がキャッピングシートで覆われた空間(以下、「キャッピング空間」という)に閉じ込められてしまい、これらガスや水蒸気の膨張圧によってキャッピングシートが破れてしまうことがあるため、透湿性に優れることも要求されている。
【0004】
このようなキャッピングシートとして、例えば、特許文献1には、耐候性及び防水透湿性を有するキャッピングシートが開示されている。
【特許文献1】特開2005−81222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被覆領域が大きい場合は、その大きさに合わせて複数のキャッピングシートを接合する必要が生じる。従来は、シート自体を自動融着機などで融着させ、接合部からの水の浸透を防止する工法が取られていた。しかしながら、熱融着法では、200℃〜300℃の高温で熱処理するため、多孔質樹脂シートが破損してキャッピングシート接合部の防水性が損なわれるという問題があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、防水透湿性および耐候性を有し、且つ接合部の防水性および接合強度にも優れている廃棄物被覆用のキャッピングシートと、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成した本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートは、複数の防水性シートと、前記複数の防水性シートを縫製加工により接合してなる接合部とを有するものであって、前記複数の防水性シートの少なくとも一部は、防水透湿性シートが、第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有する防水透湿性積層体であり、前記接合部の耐水度水位が30cm以上、接合強度が350N/5cm以上であることを特徴とする。本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートは、かかる構成を採用することにより、接合部における水の透過及び外力による接合部の破損が抑えられるため、十分な防水性が維持できる。
【0008】
なお、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法としては、前記複数の防水性シートの端部同士を両面テープで仮止めして積層する工程および、積層された複数の防水性シートの端部同士を縫製して接合部を形成する工程を有することを特徴とする製造方法である。また、前記複数の防水性シートの端部同士を積層する工程、積層された複数の防水性シートの端部同士を熱融着性縫製糸を用いて縫製により接合部を形成する工程および、前記接合部を熱処理して熱融着性縫製糸を溶融させることにより目止めする工程を有することを特徴とする廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法も本発明に含まれる。
【0009】
前記製造方法を採用することにより、熱融着法により多孔質樹脂シートが破損してキャッピングシート接合部の防水性が損なわれることがなく、十分な防水性が維持できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートは、防水透湿性及び耐候性を有すると共に、接合部の防水性及び接合強度にも優れ、前記したような不法投棄された廃棄物のキャッピングに好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートは、複数の防水性シートと、前記複数の防水性シートを縫製加工により接合してなる接合部とを有し、前記複数の防水性シートの少なくとも一部は、防水透湿性シートが、第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有する防水透湿性積層体であって、前記接合部の耐水度水位が30cm以上、接合強度が350N/5cm以上であることを特徴とする。
【0012】
図1は、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシート11の一例を説明する平面説明図である。本発明の廃棄物被覆用キャッピングシートは、複数の防水性シート10’、10”と、前記複数の防水性シートを縫製加工により接合してなる接合部4とを有している。
【0013】
まず、本発明で使用する複数の防水性シートについて説明する。本発明で使用する複数の防水性シートの少なくとも一部は、防水透湿性シートが、第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有する防水透湿性積層体であればよく、例えば、前記防水透湿性積層体と前記防水透湿性積層体以外の他の防水性シートとを使用する態様;複数の防水性シートの全部に前記防水透湿性積層体を使用する態様を挙げることができ、複数の防水性シートの全部に前記防水透湿性積層体を使用することが好ましい。
【0014】
図2は、本発明で使用する防水透湿性積層体9の態様を例示する断面説明図である。この態様では、防水透湿性シート2が第1繊維シート1と第2繊維シート3との間に積層一体化されている。
【0015】
前記防水透湿性積層体を構成する防水透湿性シートは、前記防水透湿性積層体に透湿性および防水性を付与するものである。
【0016】
前記防水透湿性シートの防水性としては、JIS L 1092の耐水度試験A法の規定に従って測定される耐水度水位が100cm以上であることが好ましく、200cm以上であることがより好ましく、500cm以上であることがさらに好ましい。このような耐水度水位の防水透湿性シートを用いることで、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートを構成する防水透湿性積層体の防水性を確保することができる。
【0017】
前記防水透湿性シートの透湿性としては、JIS L 1099 A−1法の規定に従って測定される透湿度が100g/m・24hr以上であることが好ましく、1000g/m・24hr以上であることがより好ましく、5000g/m・24hr以上であることがさらに好ましい。このような透湿度の防水透湿性シートを用いることで、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートを構成する防水透湿性積層体の透湿性を確保することができる。
【0018】
また、前記防水透湿性シートでは、透湿性を確保する観点から、多孔質であることが推奨される。例えば、樹脂に炭酸カルシウムなどの無機微粒子を混合してシート状とし、これを延伸するなどにより微小な空隙を形成した多孔質シートが挙げられる。特に、インフレーション法により製造される多孔質シートを前記防水透湿性シートとして用いることが好ましい。経験により、インフレーション法により製造される多孔質シートは、後述する第1繊維シートと第2繊維シートとの接着性が良いため、作製される防水透湿性積層体の防水性が高くなるからである。
【0019】
前記インフレーション法により製造される防水透湿性シートは、80℃での縦横の収縮率の平均値が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。80℃での縦横の収縮率の平均値が前記範囲にあると、防水透湿性シートが適度な伸度を有すると共に経時的に収縮しにくいため、廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部において防水透湿性シートの収縮により防水性の経時的低下を防止することができる。
【0020】
前記防水透湿性シートを構成する素材としては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)などのポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。このような防水透湿性シートとしては、例えば、日東電工株式会社製のミクロテックスや、ドナルドソン株式会社製のテトラテックスなどの市販品を用いることができ、また、フラッシュ紡不織布や極細繊維を用いたSMS不織布を使用することも可能である。
【0021】
敷設時の外力による防水透湿性シートに破損が生じることを防ぐため、特に廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部において前記防水透湿性シートに破損が生じることを防ぐため、前記防水透湿性積層体を構成する防水透湿性シートは、適度な破断伸び率及び引裂強度を有するものであることが好ましい。
【0022】
前記防水透湿性シートは、JIS L 1906の規定に従って測定される破断伸び率が250%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましく、400%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
前記防水透湿性シートは、JIS K 7128 1法の規定に従って測定される引裂強度が0.75N以上であることが好ましく、1.0N以上であることがより好ましく、2.0N以上であることがさらに好ましい。
【0024】
防水透湿性シートの破断伸び率または引裂強度が前記下限値以上であると、敷設時の外力による防水透湿性シートに破損が生じにくいため、特に廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部において前記防水透湿性シートに破損が生じにくいため、廃棄物被覆用のキャッピングシートは、高い防水性を維持できる。
【0025】
また、前記防水透湿性シートの厚みは、前記防水性と透湿性を確保できれば特に制限されないが、50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。前記防水透湿性シートの厚みを前記範囲とすることが、特性、コスト、施工性のバランスの面から推奨される。
【0026】
前記防水透湿性シートの目付は、特に限定されないが、50g/m以上であることが好ましく、80g/m以上であることがより好ましく、200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい。前記防水透湿性シートの目付を前記範囲とすることが、適切な透湿性および経時耐久性の面から推奨される。
【0027】
前記防水透湿性積層体を構成する第1繊維シートは、前記防水透湿性シートの表面側に積層されるものである。第1繊維シートを用いることによって、紫外線を遮断して前記防水透湿性シートの劣化を抑制することができる。
【0028】
前記第1繊維シートは、JIS L 1055 A法の規定に従って測定される遮光率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。第1繊維シートの遮光率が前記下限値以上であれば、第1繊維シートを外側(廃棄物の反対側)にして施工をすれば、防水透湿性シートが紫外線に曝されることを防止できるため、前記防水透湿性シートの劣化を高度に抑制することができる。
【0029】
前記第1繊維シートは、繊維で構成されたシートであって、前記遮光率を満足できるものであれば特に限定されなく、例えば、公知の各種繊維から構成される織布、不織布、編布、割布などを用いることができるが、作業の易しさ(滑りにくさ)の面から、不織布を用いることが好ましい。
【0030】
前記第1繊維シートを構成する繊維の素材も特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド;アラミドなどの芳香族ポリアミド;ポリエチレンなどのポリオレフィンなどが一般的である。また、全芳香族ポリエステル、所謂超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトンなどの樹脂も、前記繊維の素材として使用可能である。これらの素材は単独で使用してもよく、本発明の効果を損なわない範囲で2種以上を混合して用いても構わない。中でも、コストや耐候性などの面で、前記例示の各ポリエステルを素材とする繊維が好ましい。
【0031】
前記第1繊維シートは、前記遮光率を確保するために、着色されたものが好ましい。使用する色素として、紡糸の際に劣化し難いものが好ましい。具体的には、カーボンブラックや無機顔料などが挙げられる。
【0032】
色合いについては特に制限はないが、通常、この色素によって着色された第1繊維シート側が最表面となるため、本発明のキャッピングシートが適用される場所に応じて好適な色となるような色素を選択すればよい。よって、色素は単独で使用してもよく、色合いを調整するために複数種を混合して用いても構わない。
【0033】
また、前記第1繊維シートに、磨耗耐久性を確保するため、エンボス加工を行うことが好ましい。
【0034】
前記第1繊維シートの厚みは、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。第1繊維シートの厚みが前記範囲にあると、複数の防水性シートを縫製加工により接合して廃棄物被覆用のキャッピングシートを作製する際に、接合部における水の透過が最小限に抑えられ、接合後に十分な防水性が維持できる。また、後記粘着テープを使う場合に、粘着テープの層が食い込みやすいので、接合部の耐水性が改善できる。
【0035】
前記第1繊維シートの目付は、特に限定されないが、70g/m以上であることが好ましく、100g/m以上であることがより好ましく、300g/m以下であることが好ましく、200g/m以下であることがより好ましい。第1繊維シートの目付を前記範囲にすることで、施工性、柔軟性および、十分な補強効果を確保することができる。第1繊維シートの目付が前記範囲を下回ると、キャッピングシートの強度を向上させる効果が不十分となる場合がある。他方、第1繊維シートの目付が前記範囲を超えると、経済的に不利である上に、キャッピングシートが硬くなってしまい、施工性が低下する傾向にある。
【0036】
また、好ましくは第1繊維シートに、該シートを構成する繊維の直径の10倍以上の繊維を部分的に接合して防滑層を形成することも好ましい。上面に土層を形成する場合に斜面でも土がずり落ちにくくなる。
【0037】
不法投棄された廃棄物には注射針の如き廃棄物が含まれる場合もある。このような不法投棄場所に廃棄物被覆用のキャッピングシートを施すと、キャッピングシートに穴や破れが生じて防水性が損なわれるおそれがある。そのため、本発明では、保護層として、前記防水透湿性シートの廃棄物側に、第2繊維シートを積層してなる構成を採用することにより、このような懸念がある不法投棄場所に適用する場合でも、廃棄物被覆用のキャッピングシートの防水性を有効に保持し得る。
【0038】
前記第2繊維シートは、ASTM D 4833の規定に従って測定される貫入抵抗が200N以上であることが好ましく、300N以上であることがより好ましい。貫入抵抗が200N以上である第2繊維シートを含む構成を採用することにより、シート敷設時に廃棄物被覆用のキャッピングシートの防水性を有効に保持し得る。
【0039】
また、前記第2繊維シートとしては、前記貫入抵抗を有すると共に、本発明で使用する防水透湿性積層体の後記透湿度を確保できるものであれば特に限定されず、例えば、長繊維不織布、短繊維不織布、織編物などが挙げられる。第2繊維シートは、第1繊維シートと同じものであってもよいが、この繊維シート側は内側(廃棄物側)になるため、遮光機能は不要である。
【0040】
前記第2繊維シートの厚みは、特に制限されないが、0.2mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、10.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましい。前記第2繊維シートの厚みを前記範囲にすることで、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部における防水性を維持することができ、キャッピングシートの適切な柔軟性や取り扱い性も良好とすることができる。
【0041】
前記第2繊維シートの目付は、特に制限されないが、50g/m以上であることが好ましく、150g/m以上であることがより好ましく、1000g/m以下であることが好ましく、500g/m以下であることがより好ましい。第2繊維シートの目付を前記範囲にすることで、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部における防水性を保持しやすくすることができる。
【0042】
本発明で使用する防水透湿性積層体は、前述した防水透湿性シートを第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化してなる少なくとも3層の積層構造を有する。
【0043】
前記防水透湿性積層体の好ましい態様としては、破断伸び率250%以上、引裂強度0.75N以上の防水透湿性シートが、厚み0.3〜1.0mmの第1繊維シートと、第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造からなる防水透湿性積層体が挙げられる。かかる構成を採用することにより、後記の製造方法により接合部の防水性及び接合強度に優れる廃棄物被覆用のキャッピングシートが得られる。
【0044】
前記防水透湿性積層体は、その防水性を確保する観点から、JIS L 1092の耐水度試験A法の規定に従って測定される耐水度水位が30cm以上であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましく、2000cm以上であることがさらに好ましい。耐水度水位が前記下限値以上である防水透湿性積層体を採用する廃棄物被覆用のキャッピングシートであれば、廃棄物などのキャッピングに使用されても、雨水などが廃棄物側へ浸透することを十分に防止でき、廃棄物下の土壌の汚染を抑制することができる。
【0045】
前記防水透湿性積層体は、その透湿性を確保する観点から、JIS L 1099 A−1法の規定に従って測定される透湿度が100g/m・24hr以上であることが好ましく、1000g/m・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m・24hr以上であることがさらに好ましい。前記透湿度は大きいほど透湿性が良好であるが、実用上の上限は、10000g/m・24hrであり、より好ましくは8000g/m・24hrである。透湿度が前記下限値以上である防水透湿性積層体を採用する廃棄物被覆用のキャッピングシートであれば、廃棄物よりガスや水蒸気などの発生によるキャッピング空間の圧力上昇による膨れあがりを抑制し、廃棄物被覆用のキャッピングシートの破れなどを防止することができる。
【0046】
前記防水透湿性シートを第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層した後に、積層構造を一体化させる方法としては、特に制限はなく、公知の方法、例えば熱融着ラミネート法、接着剤を用いる方法などが採用することができる。接着剤を用いる場合には、透湿性が損なわれないように配慮する必要があり、例えば、ホットメルトパウダーや、ホットメルト繊維タイプの接着剤などを用いて部分的に熱接着することが推奨される。また、前記方法において、熱融着温度又は熱接着温度は、60℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、200℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。熱融着温度又は熱接着温度が前記範囲にあれば、高温により防水透湿性シートに破損が起こりにくい。
【0047】
本発明で使用する防水透湿性積層体として、さらに前記第1繊維シートの表面側に、第3シートを積層したものを使用することも好ましい態様である。前記第3シートとしては、ASTM D 4833の規定に従って測定される貫入抵抗が200N以上、より好ましくは250N以上、さらに好ましくは300N以上のものが推奨される。貫入抵抗が200N以上の第3シートを含む構成を採用する廃棄物被覆用のキャッピングシートであれば、耐水度の経時低下が起こりにくく、その上に歩く作業者がいる場合の破損及び重機により土砂を覆せる時のダメージが少ない。
【0048】
前記第3シートとしては、前記貫入抵抗を有すると共に本発明で使用する防水透湿性積層体の前記透湿度を確保できるものであれば特に限定されず、例えば、前記例示した第1繊維シートに用いる素材から構成される長繊維不織布、短繊維不織布などが使用可能である。また、この第3シート側は外側になる場合もあるため、遮光性を有するものが好ましく、例えば、第1繊維シートと同様に着色したものを採用することが推奨される。
【0049】
前記第3シートの厚みは、特に制限されないが、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、3.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。前記第3シートの厚みを前記範囲にすることで、その上に歩く作業者がいる場合の破損及び重機による破壊を防止することができる。
【0050】
前記第3シートの目付は、特に制限されないが、50g/m以上であることが好ましく、100g/m以上であることがより好ましく、3000g/m以下であることが好ましく、2000g/m以下であることがより好ましい。第3繊維シートの目付を前記範囲にすることで、適切な機械的強度および耐久性を保持できる。
【0051】
前記第3シートを第1繊維シートと接合する方法は特に限定されず、前記防水透湿性シートと第1繊維シートと第2繊維シートの積層構造を一体化させる方法として前記した公知の各種方法が採用可能である。この場合は、第3シートは第1繊維シートに全面貼り付けるのではなく、縫製箇所付近は接合されておらず、縫製時はめくりあげて縫製を実施し、完了後かぶせることが好ましい。
【0052】
本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートに用いる前記防水透湿性積層体以外の他の防水性を有するシートとしては、特に制限されなく、例えば、塩化ビニルシート、ポリエチレンシートなどを使用することができる。これらの防水性を有するシートを廃棄物被覆用のキャッピングシートの一部に使用することで、接合コストの低減や施工時間の短縮ができる場合がある。
【0053】
次に、前記複数の防水性シートを縫製加工により接合してなる接合部について説明する。
【0054】
本発明における複数の防水性シートを接合してなる接合部は、複数の防水性シートの端部同士を縫製により接合してなる。接合部を縫製加工により形成することにより、過度の加熱による接合部の破損が抑制される。
【0055】
接合部における縫製の態様としては、必要な接合強度を満足できれば、特に限定されるものではなく、例えば、図3及び図4に例示されている縫製態様が挙げられる。図3は、防水性シート10’、10”の端部同士6’、6’’を積層してなる長方形状の接合部4の長手方向と平行に2箇所縫製する態様を例示する平面説明図である。図4は、防水性シート10’、10”の端部同士6’、6”を積層してなる長方形状の接合部4の対角線状に縫製する態様を例示する平面説明図である。なお、本発明の接合部における縫製の態様は、図3及び図4に示した態様に限定されず、縫製ミシンの性能などに応じて適宜に調節することができる。
【0056】
また、本発明では、前記接合部の十分な防水性を確保するために、縫製による針穴を目止め処理することが好ましい態様である。目止め処理する態様としては、例えば、熱融着性縫製糸を用いて、複数の防水性シートの端部同士を縫製により接合し、縫製後に熱処理を行って縫製糸を融着させることにより目止め処理する態様;複数の防水性シートの端部同士を両面テープで仮止めして縫製により接合し、両面テープの粘着剤により目止め処理する態様;接合部の表面に粘着テープ又は接着剤を設ける態様などを挙げることができる。なお、これらの態様を組み合わせた態様も本発明の好ましい態様である。
【0057】
前記縫製加工に用いる縫製糸としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル系の高強力ミシン糸、ナイロン系のミシン糸などを用いることができる。特に、熱融着性縫製糸としては、その溶融温度が150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。溶融温度が150℃以下である熱融着性縫製糸であれば、後記熱処理により容易に溶融し、前記防水透湿性積層体を構成する防水透湿性シートを破損することなく、目止め処理することができる。
【0058】
複数の防水性シートの仮止めに用いる両面テープとしては、接合部の位置決めやシワ防止などの効果を有すると共に、縫製加工により生じた針穴の目止め処理を兼ねるものが好ましい。両面テープに使用する接着剤は特に限定されないが、例えば、アクリル系接着剤やブチルゴム系接着剤などを使用することが好ましい。前記両面テープの幅は、接合部をカバーできれば、特に限定されないが、50mm以上であることが好ましく、より好ましくは75mm以上である。前記両面テープの具体例としては、日東電工株式会社製の両面テープNo.541を挙げることができる。
【0059】
前記接合部は、JIS L 1092の耐水度試験A法の規定に従って測定される耐水度水位が30cm以上であることが好ましく、50cm以上であることがより好ましい。接合部の耐水度水位が30cm以上であると、廃棄物被覆用のキャッピングシートは、接合界面を通じる水の透過が抑えられるため、接合部においても十分な防水性が維持できる。
【0060】
前記接合部は、JIS L 1906の規定に準拠して測定される接合強度が350N/5cm以上であることが好ましく、500N/5cm以上であることがより好ましい。接合部の接合強度が350N/5cm以上であると、廃棄物被覆用のキャッピングシートは、外力による接合部の破損が最小限に抑えられる。
【0061】
以下、本発明の接合態様について、図面を参照しながら説明するが、本発明の接合態様は、図面に示した態様に限定されるものではない。
【0062】
図5は、両面テープを用いて形成した接合部の断面構造を説明する断面説明図である。複数の防水性シート10’、10”の端部同士6’、6”が両面テープ5で仮止めされて、縫製糸7により接合されている。前記両面テープは、接合部の位置決めやシワ防止などの効果を有すると共に、両面テープの粘着剤層は、縫製による針穴を目止めする作用を兼ねている。
【0063】
図6は、熱融着性繊維を用いて形成した接合部の断面構造を説明する断面説明図である。複数の防水性シート10’、10”の端部同士6’、6”が、熱融着性の縫製糸を用いて縫製された後、接合部を熱処理して縫製糸を融着させること(図6には示していない)により、縫製による針穴が目止め処理されている。
【0064】
また、図7及び図8は、それぞれ図5及び図6に例示されている態様の接合部表面に、さらに粘着テープ8を被覆してなる接合部の断面構造を説明する断面説明図である。粘着テープは、縫製糸が直接曝露されて劣化されるのを防ぎ、縫製糸による防水性を維持できると共に、接合強度を一層に高めることができる。また、粘着テープが防水性を有する場合は、粘着テープを用いることにより、廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部の防水性を一層に高めることもできる。
【0065】
前記粘着テープは、シートの片面に粘着剤層を形成してなるものである。前記粘着テープを構成するシートの素材や形成法は特に限定されるものではなく、例えば、第1繊維シートについて例示した素材や形成法が採用可能であるが、作業性(滑りにくさ)の面から、前記粘着テープを構成するシートは不織布であることが好ましい。また、前記粘着テープを構成するシートは、目付が150g/m以上であることが好ましい。このような目付のシートであれば、粘着剤層への紫外線の露光をある程度抑制でき、粘着剤の劣化を抑え得る。こうした観点から、粘着テープのシートも、前記第1繊維シートと同様に着色されたものであることが推奨される。着色の詳細は、第1繊維シートについて前記した通りである。さらに、粘着テープのシートは第1繊維シートと同じ素材及び同じ色であることが好ましい。なお、粘着剤層を形成するための粘着剤も特に制限はなく、例えば、ブチルゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、公知の布製テープに適用されている粘着剤などが使用できる。前記粘着テープを形成する方法として、特に限定されなく、例えば、樹脂製シートの片面に粘着剤層を塗布する方法などが挙げられる。
【0066】
なお、接合部の表面が接着剤により被覆されていることも好適である。接合部の表面を接着剤により被覆することによって、接合部の防水性および強度を高めることができる。前記接着剤は、耐水性を有するものであれば、特に限定されなく、例えば、コニシ株式会社製のボンド木工用#10135などの市販品を使用することができる。
【0067】
以下、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法について説明する。本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートは、廃棄物投棄場所(廃棄物処分場を含む)の被覆を要する領域の面積に合わせて、複数の防水性シートを縫製により接合して作製する。縫製による接合は、予め工場などでなされる場合もあるが、被覆を要する面積が大きい場合には、廃棄物投棄場所においてなされることが多い。複数の防水性シートを縫製加工する方法としては、例えば、電動ミシンを用いて縫製する方法を挙げることができる。
【0068】
また、複数の防水性シートの端部同士を積層する部分の幅(接合部の幅)は特に限定されないが、実用的には、50mm以上150mm以下であることが好ましい。縫製部は接合された防水性シートの近い端部への距離が特に限定されないが、実用上には、10mm以上75mm以下であることが好ましい。
【0069】
本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法は、前記複数の防水性シートの端部同士を両面テープで仮止めして積層する工程および、積層された複数の防水性シートの端部同士を縫製して接合部を形成する工程を有することを特徴とする。両面テープで仮止めする方法としては、特に限定されないが、目止め処理を兼ねるため、縫製予定のところにおいて挟み込まれていることが好ましい。
【0070】
また、前記複数の防水性シートの端部同士を積層する工程、積層された複数の防水性シートの端部同士を熱融着性縫製糸を用いて縫製加工により接合部を形成する工程および、前記接合部を熱処理して熱融着性縫製糸を溶融させることにより目止めする工程を有することを特徴とする廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法も本発明に含まれる。熱融着性縫製糸を用いた目止め処理により、接合部の経時的な耐水度水位の劣化が小さくなる。接合部を熱処理する方法は特に限定されなく、例えば、熱風送風機(高温ドライヤー)やアイロンなどによる熱処理をする方法が挙げられる。熱処理温度は、接合部において、前記防水透湿性積層体を構成する防水透湿性シートに破損を与えない程度の温度であれば、特に限定されないが、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
【0071】
前記製造方法を採用することにより、熱融着法により多孔質樹脂シートが破損して廃棄物被覆用のキャッピングシート接合部の防水性が損なわれることがなく、接合部において十分な防水性が維持できる。
【0072】
また、接合部の表面は、粘着テープまたは接着剤層により被覆されていることが望ましい。接合部の表面とは、廃棄物被覆用のキャッピングシートの外側、即ち、廃棄物被覆用のキャッピングシートの廃棄物側と反対する側である。
【0073】
前記粘着テープを作製する方法として、特に限定されなく、例えば、樹脂製シートの片面に粘着剤を塗布して、接合部の表面に貼る方法などが挙げられる。粘着テープは、縫製部から最上層の防水性シートの近い端部にかける領域を被覆することが推奨される。粘着テープの幅は、前記の領域を被覆できれば、特に限定されなく、例えば、50mm以上であることが好ましい。より好ましくは75mm以上、さらに好ましくは100mm以上である。
【0074】
本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートは、防水透湿性積層体の第1繊維シート面を外側として(第3シートを有する場合は、第3シート面を外側として)廃棄物の投棄場所を被覆し、公知の方法(ピン止めなど)で固定する。また、複数の前記防水性シートを、前記領域を覆った後に、前記製造方法により接合し廃棄物被覆用のキャッピングシートを製造しても構わない。廃棄物被覆用のキャッピングシートをピンなどで固定するためにキャッピングシートに設けられた固定孔の部分にも、前記粘着テープを適用することが望ましい。
【0075】
本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートを、例えば不法投棄された廃棄物について、不法投棄場所での一時的なキャッピングに用いる場合には、前記理由から、通常、廃棄物の被覆後に表面覆土は行わない。本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートはこのような施工法が適用された場合でも、高度な耐候性を有しており、防水性を長期間に亘って保持し得る。
【0076】
なお、本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートは、前記の如き不法投棄場所での一時的なキャッピングのみならず、設備が整っており、半永久的に廃棄物が埋め立てられる廃棄物処分場でのキャッピングにも好適である。この場合は、通常、表面覆土が行われる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。本発明で用いた測定法は以下の通りである。
【0078】
<目付>
JIS L 1906の規定に従って測定する。
【0079】
<破断伸び率>
JIS L 1906の規定に従って測定する。
【0080】
<引裂強度>
JIS K 7128 1法の規定に従って測定する。
【0081】
<熱収縮率>
JIS L 1906の規定に準拠して測定する。15cm角のサンプルを切り出し、80℃のオーブンに10分間置いた後の、縦横の辺の長さの変化率を測定し、その平均値を採用する。
【0082】
<遮光率>
JIS L 1055 A法の規定に従って測定する。
【0083】
<貫入抵抗>
ASTM D−4833の規定に従って測定する。
【0084】
<透湿度>
JIS L 1099 A−1法の規定に従って測定する。
【0085】
<耐水度水位>
JIS L 1092の耐水度試験A法の規定に従って測定する。サンプルを固定ホルダーより一回り大きい円形に切り出し、端部を溶融パラフィンにつけてシートの末端封鎖を行い、隙間のありそうなところにはシリコン系シール材を塗って固化し、その後ホルダーにセットし、目視により水滴が浮き上がった際の水頭を測定する。n=5点測定し、その中で最も値の低いものを採用する。
【0086】
<接合強度>
JIS L 1906の規定に準拠して測定する。接合部が上下の固定チャックの中間に来るようにセットして測定を行う。
【0087】
<膨れの有無>
下述の施工から6か月経過後のキャッピングシートについて、施工された状態で、直径が200mm以上且つ高さが5cm以上の大きさで、地面から浮き上がる部分が存在する場合を、膨れ有りと判定する。
【0088】
実施例1
第1繊維シートとして、黒色に着色されたポリエステル製の部分熱接着長繊維不織布(目付100g/m、厚み0.4mm、遮光率99.8%以上)を用いた。この第1繊維シートの上に、防水透湿性シートとして、ポリエチレンをインフレーション法により製膜した防水透湿フィルム(トクヤマ株式会社製の「ポーラム」高耐候高伸度タイプ:目付100g/m、厚み100μm、破断伸び率530%、引裂強度2.1N、80℃での縦横の熱収縮率の平均値16%)を積層した。さらに、第2繊維シートとして、ポリエステル製ニードルパンチ不織布(目付500g/m、厚み5mm)を防水透湿性シートの第1繊維シートの反対面側に積層した。また、第1繊維シートと防水透湿性シートとの積層および、防水透湿性シートと第2繊維シートとの積層には、アクリル系粘着剤(サイデン化学株式会社製のサイビノールTC−K3樹脂)を塗布することにより、三つの積層を一体し、防水透湿性積層体1(幅2m、長さ10m)を作製した。防水透湿性積層体1について、耐水度水位及び透湿度を前記手法によって測定した。結果を表1に示す。
【0089】
5枚の防水透湿性積層体1で、重ね部(幅10cm)を設けつつ、周辺部を錘により仮固定した後、シートの仮接着に日東電工株式会社製の両面テープNo.541(幅30mm)を挟み込み、ポリエステルマルチフィラメントからなる0番手(3330dtex)の縫製糸を用いて、ミシン縫製加工により重ね部を接合し、廃棄物被覆用のキャッピングシート1を作製した。廃棄物被覆用のキャッピングシート1について、接合部の耐水度水位及び接合強度を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
廃棄物被覆用のキャッピングシート1を用い、第1繊維シートを表面側とし、10m角の領域を被覆するように施工した。施工した廃棄物被覆用のキャッピングシート1の中央部を、上部から15cmの釘にワッシャーを挟んで固定し、該固定部の孔も、粘着テープ(幅75mm、黒色に着色されたポリエステル製長繊維不織布に50〜100μmの厚さで、アクリル系粘着剤であるサイデン化学株式会社製のサイビノールTC−K3樹脂を塗布して得た粘着テープ)で目張りした。施工から6ヶ月経過後の廃棄物被覆用のキャッピングシート1について、膨れの有無を判定すると共に、耐水度水位、接合部の耐水度水位及び接合強度を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
実施例2
実施例1で作製した廃棄物被覆用のキャッピングシート1を用いて、第1繊維シート側の接合部に、さらに実施例1で使用した前記粘着テープを上から接合繋ぎ面に貼り、廃棄物被覆用のキャッピングシート2を作製した。廃棄物被覆用のキャッピングシート2について、実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例3
両面テープを使わず、低融点ナイロン樹脂繊維(融点110℃)30%およびポリエステル70%を含む熱融着性マルチフィラメントからなる糸を縫製糸として使用した他は、実施例1と同様に、複数の防水透湿性積層体1を縫製することにより接合した。さらに、縫製部を150℃の熱風で熱処理し、熱融着性の縫製糸を溶融させることにより縫製穴の目止めを実施し、この後、コニシ株式会社製のボンド木工用#10135を縫製部の上から接着剤が盛り上がる量で塗布して、廃棄物被覆用のキャッピングシート3を作製した。廃棄物被覆用のキャッピングシート接合物3について、実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
比較例1
実施例1で作製した防水透湿性積層体1を用いて、複数の防水透湿性積層体1をライスター(加工温度280℃、加工速度約2.2m/min)を用いて熱融着法により接合し、廃棄物被覆用のキャッピングシート4を作製した。廃棄物被覆用のキャッピングシート4について、実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
比較例2
第1繊維シートとして使用するポリエステル製の部分熱接着長繊維不織布をポリエステル製ニードルパンチ不織布(目付500g/m、厚み5mm、遮光率99.8%以上)に変更し、防水透湿性シートとして使用するポリエチレンをインフレーション法により製膜した透湿防水性フィルムを、同じ原料を用いて同じ製法で得られた異なる性質のもの(目付40g/m、厚み40μm、破断伸び率480%、引裂強度2.1N、80℃での縦横の熱収縮率の平均値18%)に変更した他は、実施例1と同様の方法で防水透湿性積層体2及び廃棄物被覆用のキャッピングシート5を作製した。防水透湿性積層体2について、耐水度水位及び透湿度を実施例1と同様に測定した。また、廃棄物被覆用のキャッピングシート5について、実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
比較例3
防水透湿性シートとして使用するポリエチレンをインフレーション法により製膜した透湿防水性フィルムを、ポリエチレンを2軸延伸法により製膜したもの(目付40g/m、厚み40μm、破断伸び率220%、引裂強度0.7N、80℃での縦横の熱収縮率の平均値3%)に変更した他は、実施例1と同様の方法で防水透湿性積層体3及び廃棄物被覆用のキャッピングシート6を作製した。防水透湿性積層体3について、耐水度水位及び透湿度を実施例1と同様に測定した。また、廃棄物被覆用のキャッピングシート6について、実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
比較例4
防水透湿性シートとして使用するポリエチレンをインフレーション法により製膜した防水透湿フィルムを、ポリプロピレンを2軸延伸法により製膜したもの(目付100g/m、厚み100μm、破断伸び率55%、引裂強度0.1N、80℃での縦横の熱収縮率の平均値1%)に変更した他は、実施例1と同様の方法で防水透湿性積層体4及び廃棄物被覆用のキャッピングシート7を作製した。防水透湿性積層体4について、耐水度水位及び透湿度を実施例1と同様に測定した。また、廃棄物被覆用のキャッピングシート7について、実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例1〜3では、防水透湿性積層体はそれぞれ、厚みが0.3〜1.0mmの第1繊維シートと、良好な防水透湿性及び適度な破断伸び率、引裂強度などを備えた防水透湿性シートと、第2繊維シートとを有する構成を採用し、また、廃棄物被覆用のキャッピングシートは、この構成を有する防水透湿性積層体を用いて縫製加工により作製された。このため、実施例1〜3での廃棄物被覆用のキャッピングシートは、施工時/施工から6ヶ月経過後においても、優れた防水透湿性を兼ね備えると共に、接合部の耐水性及び接合強度も優れていた。
【0099】
また、実施例2での廃棄物被覆用のキャッピングシートは、実施例1で作製した廃棄物被覆用のキャッピングシートを用い、接合部にさらに粘着テープを張ってなるものである。粘着テープは防水層としての作用を有するため、実施例2での廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部の耐水度は、施工時/施工から6ヶ月経過後においても、接合部の耐水性が特に優れていた。
【0100】
なお、実施例3での廃棄物被覆用のキャッピングシートは、熱融着性の縫製糸を用いて、縫製加工後に熱処理で縫製糸を融着させることにより目止め処理を行った後、接合部にさらに防水層を張った。こうして形成した廃棄物被覆用のキャッピングシートは、非融着性の縫製糸を用いて両面テープを目止め処理手段とした実施例1及び2での廃棄物被覆用のキャッピングシートに比べて、接合部の耐水性が劣るが、経時的な耐水性の劣化が小さいことが分かった。
【0101】
これらに対して、実施例1〜3と同一な構成を有する防水透湿性積層体を使っても、熱融着法を接合方法とした比較例1で作製した廃棄物被覆用のキャッピングシートでは、接合部における防水透湿性シートがライスターにより破損して、接合部の防水性が損なわれたため、施工時/施工から6ヶ月経過後において、接合部の耐水性が極めて劣った。
【0102】
なお、厚さが1.0mm超の第1繊維シートを用いた比較例2で作製した廃棄物被覆用のキャッピングシートでは、接合部における水の透過が抑えられなかったため、施工時/施工から6ヶ月経過後において、接合部の耐水性が極めて劣った。また、破断伸び率が250%不満、引裂強度が0.75N不満である防水透湿性シートを用いた比較例3及び4の廃棄物被覆用のキャッピングシートでは、敷設時に外力による接合部の破損が起こったため、施工時/施工から6ヶ月経過後において、接合部の耐水性が極めて劣った。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの平面説明図である。
【図2】本発明の防水透湿性積層体の態様を例示する断面説明図である。
【図3】本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部の縫製状態を例示する平面説明図である。
【図4】本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合部の縫製状態を例示する平面説明図である。
【図5】本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合状態を例示する断面説明図である。
【図6】本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合状態を例示する断面説明図である。
【図7】本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合状態を例示する断面説明図である。
【図8】本発明の廃棄物被覆用のキャッピングシートの接合状態を例示する断面説明図である。
【符号の説明】
【0104】
1:第1繊維シート、2:防水透湿性シート、3:第2繊維シート、4:接合部、5:両面テープ、6’、6”:防水性シートの端部、7、7’:縫製糸、8:粘着テープ、9:防水透湿性積層体、10’、10”: 防水性シート、11:廃棄物被覆用のキャッピングシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の防水性シートと、前記複数の防水性シートを縫製加工により接合してなる接合部とを有する廃棄物被覆用のキャッピングシートであって、
前記複数の防水性シートの少なくとも一部は、防水透湿性シートが、第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有する防水透湿性積層体であって、
前記接合部の耐水度水位が30cm以上、接合強度が350N/5cm以上であることを特徴とする廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項2】
前記防水透湿性積層体は、破断伸び率250%以上、引裂強度0.75N以上の防水透湿性シートが、厚み0.3mm〜1.0mmの第1繊維シートと、第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有し、耐水度水位が30cm以上である請求項1に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項3】
前記接合部は、前記複数の防水性シートの端部同士を両面テープで仮止めして縫製により接合してなる請求項1又は2に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項4】
前記接合部は、熱融着性縫製糸を用いて縫製により接合してなり、縫製後に熱処理を行って縫製糸を融着させることにより目止め処理されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項5】
前記接合部は、表面において粘着テープまたは接着剤により被覆されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項6】
前記防水透湿性シートは、インフレーション法により製造された80℃での縦横の収縮率の平均値が5%〜25%にある多孔質シートであり、厚みが50μm〜200μmである請求項1〜5のいずれか一項に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項7】
前記第1繊維シートは、遮光率が90%以上であり、目付が70g/m〜300g/mである請求項1〜6のいずれか一項に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項8】
前記第1繊維シートは、カーボンブラック或いは無機顔料を少なくとも一種用いて着色されてなるものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項9】
前記第2繊維シートは、厚みが0.2mm〜10.0mmであり、目付が50g/m〜1000g/mである請求項1〜8のいずれか一項に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシート。
【請求項10】
複数の防水性シートと、前記複数の防水性シートを接合してなる接合部とを有する廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法であって、
前記複数の防水性シートの端部同士を両面テープで仮止めして積層する工程、および、積層された複数の防水性シートの端部同士を縫製して接合部を形成する工程を有し、
前記複数の防水性シートの少なくとも一部は、防水透湿性シートが、第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有する防水透湿性積層体であることを特徴とする廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法。
【請求項11】
複数の防水性シートと、前記複数の防水性シートを接合してなる接合部とを有する廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法であって、
前記複数の防水性シートの端部同士を積層する工程、
積層された複数の防水性シートの端部同士を熱融着性縫製糸を用いて縫製により接合部を形成する工程、および、
前記接合部を熱処理して、熱融着性縫製糸を溶融させることにより目止めする工程を有し、
前記複数の防水性シートの少なくとも一部は、防水透湿性シートが、第1繊維シートと第2繊維シートの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造を有する防水透湿性積層体であることを特徴とする廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法。
【請求項12】
前記接合部の表面を粘着テープまたは接着剤により被覆する請求項10又は11に記載の廃棄物被覆用のキャッピングシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−183849(P2009−183849A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25693(P2008−25693)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】