説明

廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置

【課題】廃蛍光ランプを対象とした大量リサイクルシステムにおける効率的なランプの選択破砕方法及び装置を実現するものである。
【解決手段】破砕機と、破砕機を支持し且つ破砕機で破砕されたガラス片5を受けるガラス受ハウジング6を備え、破砕機3は、ガラス受ハウジング6上に支持された円筒状の破砕チャンバ7と、破砕チャンバ7内で回転する回転軸8と、ハンマ9とを備えており、ハンマ9と破砕チャンバ7との間には、ハンマ9が回転可能である以外の隙間はなく、破砕チャンバ7は、上流端から下流端に向けて下方向に傾斜し、底部には、破砕されたガラスのみが通過するスクリーン15が形成されており、廃蛍光ランプを、ハンマ9によって、圧縮力、摩擦力、引張力及び剪断力を作用させずに、衝撃力のみによって、口金部を破砕することなく、ガラス部分のみを選択的に破砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、廃蛍光ランプのリサイクル対象は直管形や環形である。これらの蛍光ランプは形状が統一されているため、コンベア上に並べられ、両端(直管)あるいは円周の一部(丸管)の口金部分を自動的に切断することでガラス部を回収してきた。
【0003】
ガラスはソーダ石灰ガラスであるが、口金付近だけは鉛ガラスを使用しており、鉛ガラスは口金部と共に回収される。切断後は筒状のガラス開口部より強く空気を吹き込み、ガラス内壁に付着した蛍光体並びに水銀を空気と共に回収する。
【0004】
丸管の場合、製造時加熱して管状に整形するため直管に比べ蛍光体のガラスへの固着力が強く、空気と共にショット剤を吹き込むこともある。
【0005】
一方、近年、急増しているコンパクト形や電球形蛍光ランプは、形状の種類が極めて多く自動処理ができないため、口金切断機への装着を1つずつ手で行っているのが現状である。また、切断後の開口部が1カ所のため、エアブローによる蛍光体・水銀の回収もできない。
【0006】
蛍光ランプの口金を切断するではなく、廃蛍光ランプの全体を破砕する技術としては、主として事業所などの排出元で破砕しその後の運搬効率を高める目的の小型で移動可能な破砕機が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
【0007】
大量処理が可能な廃蛍光ランプの選択破砕技術も紹介されている(特許文献としては、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10参照)が、いずれも形状の揃った直管あるいは丸管を整列させて送りだす機構のもので、多様な形状の電球形やコンパクト形の選択破砕する性能を有していない。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−171553公報
【特許文献2】特開平6−226131公報
【特許文献3】特開平8−150347公報
【特許文献4】特開平10−99712公報
【特許文献5】特開2000−202319公報
【特許文献6】特開2005−305365公報
【特許文献7】特開平10−156330公報
【特許文献8】特開平11−319613公報
【特許文献9】特開平11−319620公報
【特許文献10】特開2002−251961公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜6記載の発明には、口金を残してガラスだけを選択破砕し、運搬後のリサイクルを容易にする機能を有するものもあるが、いずれも直管あるいは丸管を対象としており、多様な形状の電球形やコンパクト形の選択破砕する性能を有していない。また、1度に1個〜3個程度の投入を前提とした小型破砕機であり、大量処理には向かない。
【0010】
そして、特許文献7〜10記載の発明は、いずれも形状の揃った直管あるいは丸管を整列させて送りだす機構のもので、多様な形状の電球形やコンパクト形の選択破砕する性能を有していない。
【0011】
本発明は、異形蛍光ランプを対象とした大量リサイクルシステムにおけるランプの破砕において、上記従来の問題を解決する廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、破砕機と、該破砕機を支持し且つ破砕機で破砕されたガラス片を受けるガラス受ハウジングを備えて成る廃蛍光ランプの選択破砕装置であって、前記破砕機は、ガラス受ハウジング上に支持された円筒状の破砕チャンバと、該破砕チャンバ内で破砕チャンバの軸心を中心に回転する回転軸と、該回転軸に取り付けられたハンマとを備えており、前記ハンマと破砕チャンバとの間には、ハンマが破砕チャンバ内で回転可能である以外の隙間はない構成とし、前記破砕チャンバの一端から前記破砕チャンバと回転軸の間のスペースに供給された廃蛍光ランプを、前記ハンマによって、圧縮力、摩擦力、引張力及び剪断力を作用させずに、ハンマの衝撃力のみによって、口金部を破砕することなく、ガラス部分のみを選択的に破砕する構成としたことを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕装置を提供する。
【0013】
前記ハンマは、2000MPaから3000MPaの衝撃圧力で、廃蛍光ランプのガラスを破砕することを特徴とする。
【0014】
前記破砕チャンバは、一端から他端に向けて下方向に傾斜しており、底部には、破砕されたガラスのみが通過するスクリーンが形成されていることを特徴とする。
【0015】
前記ハンマの打撃部分が半球形であることを特徴とする。
【0016】
前記ハンマは回転軸に枢着され、バネ、油圧又は圧縮空気により、枢着支点を中心に回転軸の反回転方向に付勢力が作用されており、破砕中、破砕すべき廃蛍光ランプに過剰な荷重がかかった際、前記付勢力の助けにより(前記付勢力が助勢することにより)ハンマを枢着する支点を中心にハンマの反回転方向に揺動可能とすることを特徴とする。
【0017】
本発明は上記課題を解決するために、破砕機と、該破砕機を支持し且つ破砕機で破砕されたガラス片を受けるガラス受ハウジングを備えて成る廃蛍光ランプの選択破砕装置を使用した廃蛍光ランプの選択破砕方法であって、前記破砕機は、円筒状の破砕チャンバと、該破砕チャンバ内で破砕チャンバの軸心を中心に回転する回転軸と、該回転軸に取り付けられたハンマとを備え、前記ハンマと破砕チャンバとの間には、ハンマが破砕チャンバ内で回転可能である以外の隙間はない構成とし、前記破砕チャンバの一端から前記破砕チャンバと回転軸の間のスペースに供給された廃蛍光ランプを、前記ハンマによって、圧縮力、摩擦力、引張力及び剪断力を作用させずに、ハンマの衝撃力のみによって、口金部を破砕することなく、ガラス部分のみを選択的に破砕することを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法を提供する。
【0018】
前記ハンマは、2000MPaから3000MPaの衝撃圧力で、廃蛍光ランプのガラスを破砕することを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【0019】
前記破砕チャンバは、一端から他端に向けて下方向に傾斜しており、底部には、破砕されたガラスのみが通過するスクリーンが形成することで、前記破砕チャンバの一端から前記破砕チャンバと回転軸の間のスペースに供給された廃蛍光ランプを、前記破砕チャンバ内で移動しながらハンマで破砕し、破砕したガラス片をスクリーンを通過させてガラス受ハウジング内に落下させることを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【0020】
前記ハンマの打撃部分が半球形であることを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【0021】
前記ハンマを回転軸に枢着し、バネ、油圧又は圧縮空気により、枢着支点を中心に回転軸の反回転方向に付勢力を作用し、破砕中、破砕すべき廃蛍光ランプに過剰な荷重がかかった際、前記付勢力の助けにより(前記付勢力が助勢することにより)ハンマを枢着する支点を中心にハンマの反回転方向に揺動可能とすることを特徴とした廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の廃蛍光ランプの選択破砕装置は、衝撃力を主体とし、衝撃力以外の力(圧縮力、摩擦力、引張力、剪断力)がなるべくかからないようにして、ガラスを一定の大きさに破砕したら速やかに破砕装置の外に取り出すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0024】
本発明の廃蛍光ランプの選択破砕装置は、衝撃力を主体とする破砕装置で、衝撃力以外の力(圧縮力、摩擦力、引張力、剪断力)がなるべくかからない機構であり、ガラスが一定の大きさに破砕されたら速やかに破砕装置の外に取り出すことが可能な構造の装置であればよい。加えて、衝撃力の大きさを制御することが可能な構成であればより好ましい。
【実施例1】
【0025】
図2及び図3は、本発明の廃蛍光ランプの選択破砕装置の実施例1を説明する図であり、これらの図によって、本発明の廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置を以下に説明する。
【0026】
この廃蛍光ランプの選択破砕装置1は、廃蛍光ランプ2を破砕機3に供給するホッパ4と、ハンマクラッシャ型の破砕機3と、破砕機3を支持し且つ破砕されたガラス片5を受けるガラス受ハウジング6と、を備えている。
【0027】
破砕機3は、ガラス受ハウジング6上に図3に示すように、一端部(上流部、上端部)から他端部(下流部、下端部)に向けて下方に傾斜して設置されている。そして、破砕機3は、ガラス受ハウジング6上に支持された円筒状の破砕チャンバ7と、この破砕チャンバ7内で破砕チャンバ7の軸心を中心に回転する回転軸8と、回転軸8に固定され互いに回転軸8の軸心に対称的に配置された一対のハンマ9とを備えている。
【0028】
傾斜した破砕チャンバ7の上流部には開口10が形成され、この開口10に面するようにホッパ4が取り付けられている。ホッパ4は、破砕されるべき廃蛍光ランプ2を破砕チャンバ7内に開口10から供給する。
【0029】
ハンマ9は、破砕チャンバ7内に供給された廃蛍光ランプ2を叩いて破砕するものである。ハンマ9と破砕チャンバ7の内壁11との隙間12は、ハンマ9が破砕チャンバ7内で回転可能の範囲で極力小さくし、粉砕中のガラス片5がこの隙間12内に入り込まないような構成とする。
【0030】
要するに、ハンマ9と破砕チャンバ7との間には、ハンマ9が破砕チャンバ7内で回転可能とする隙間12以外の隙間はない構成とする。これにより、ハンマ9は、廃蛍光ランプ2に対し、圧縮力、摩擦力、引張力、剪断力などを作用せずに、ハンマ9の衝撃力のみを作用させて廃蛍光ランプ2の口金部13を破砕せずガラス部分のみを選択的に破砕する。
【0031】
ところで、ハンマ9による廃蛍光ランプ2の破砕において、破砕圧力を一定とすることが好ましい。破砕圧力を一定範囲内とする手段として、回転軸8の駆動モータを制御し、回転数を制御してハンマ9の回転数を制御し、ハンマ9と廃蛍光ランプ2との衝突速度を制御する構成とするとよい。
【0032】
しかし、さらに厳密に、破砕圧力を一定とするためには、ハンマ9と被粉砕物(蛍光ランプ)との接触面積を一定にする必要がある。通常のハンマ9クラッシャ等ではハンマ9の打撃面は平面であり(これによって破砕圧力が一定となる場合にはそれでも良いが)、これでは、衝撃を受ける被粉砕物の形状によって接触面積が変わってしまう。
【0033】
そこで、本発明では、ハンマ9の打撃面に、図2に示すような1個の半球部14を設けたので、廃蛍光ランプ2の形状を問わず、点で接触するため、ハンマ9と廃蛍光ランプ2の材料特性(ヤング率、ポアソン比)に依存した一定の接触面積を保つことが可能となる。ハンマ9の打撃面を、図示はしないが、多数の半球形からなる形状にしても、同様の効果が得られる。
【0034】
破砕チャンバ7は、その底部には、スクリーン15が形成されており、破砕されたガラス片5のみガラス受ハウジング6内に向けて落下する構成となっている。また、破砕チャンバ7の下流部には、口金部13を排出する排出口16が形成されている。
【0035】
廃蛍光ランプの選択破砕装置1では、廃蛍光ランプ2の最初の破砕後、口金部13の破壊強度に概ね変化はないが、ガラス片5の破壊強度は著しく低下する。したがって、2打撃目以降ガラスは2000MPa以下の弱い衝撃力で破壊される。
【0036】
一方、破壊されたガラス片5は小さい片となり、元の蛍光ランプのガラス球に比べて重量が減じているため、ハンマ9から受ける衝撃力も低下するため、これにより過粉砕を防止することが可能である。
【0037】
(作用)
以上の構成から成る本発明の廃蛍光ランプの選択破砕装置1の作用及び選択破砕装置を利用した廃蛍光ランプ2の選択破砕方法を、以下に説明する。
【0038】
廃蛍光ランプ2はホッパ4から破砕機3の破砕チャンバ7内に供給される。破砕チャンバ7内に供給された廃蛍光ランプ2は、傾斜した破砕チャンバ7と回転軸8との間のスペース17を自重で下方に移動しながら、ハンマ9により破砕される。
【0039】
破砕された廃蛍光ランプ2のガラス片5は、スクリーン15を通過してガラス受ハウジング6内に落下し、収集される。廃蛍光ランプ2の破砕されない口金部13は、破砕チャンバ7の下流部の排出口15から装置外に排出される。
【0040】
(選択粉砕条件)
以上、本発明の実施例1について構成、作用を説明したが、本発明の破砕機3では、ハンマ9を、その接触部の形状を半球部14に形成し、ハンマの重量、回転数、回転半径を適宜設定することで、最適な選択破砕条件を得ることができる。なお、ハンマの重量、回転数、回転半径等を制御できる構成とすれば、破砕対象物の形状、寸法、量等に応じて、最適な選択破砕条件を適宜設定することが可能となる。以下に、選択粉砕条件の例を説明する。
【0041】
図4は、選択粉砕条件についての計算上の例を示す。ハンマ9の回転数(回転軸8の回転数)100rpm、ハンマ9接触部の半球部の直径100mmで、回転半径0.8〜1.0m(図2のA〜B)とすれば、重量40g〜200gの廃蛍光ランプ2の最初の衝撃力が2000〜3000MPaとなり、ガラスだけを選択的に破壊することが可能である。
【0042】
(実験例)
本発明に関連して、いくつかの実験を行ったので、この実験例を以下に説明する。
【0043】
ガラス部の強度が高く口金部13の強度が弱いタイプのコンパクト形と、ガラス部の強度の弱く口金部13の強度が高いタイプのグローブレスの電球形の蛍光ランプに対し、ガラス部および口金部13の破壊強度を調べた。
【0044】
まず、コンパクト形に対する「圧縮試験」の結果では一例を上げれば、破壊強度は85MPaに対し口金部13の破壊強度は45MPaであり、ガラス部より先に口金部13が破壊される場合がしばしば起こる。したがってこの作用力により破砕してもガラス部のみを破砕することはできない。
【0045】
一方、図1に示すように、蛍光ランプのガラス球体の落下による「衝撃試験」では、2000MPa以上でコンパクト形及び電球形ともガラス部の破壊が可能であるが、3000MPa以下では口金部13の破壊は起きない。
【0046】
すなわち、ハンマ9などの衝撃力を主体とした破砕機3において、圧縮力、摩擦力、引張力、剪断力など他の破砕力が作用しないようハンマ9と破砕室内壁との隙間12をなくし、かつ回転半径や回転数を制御して、およそ2000MPa〜3000MPa、特に2000MPa〜2500MPaの破砕圧力で破砕すれば、多くの電球形、コンパクト形蛍光ランプに対して、ガラス部のみが選択的に破砕される。
【0047】
この際、一定以下の粒径になったならば、直ちに破砕機3外に排出されるように破砕機3に図2、3に示すように、スクリーン15等の機構を備えれば、ガラス片5と口金部13の分離が完了する。また、この方法によれば、ガラス部の過破砕を避けることができられため、ガラスの再資源化時に有効である。スクリーン15の径は、コンパクト形および電球形の口金部13のサイズ以下、通常10mmから30mm程度であればよい。
【実施例2】
【0048】
図5は、本発明の廃蛍光ランプの選択破砕装置及び選択破砕方法の実施例2を説明する図であり、この図によって、実施例2の廃蛍光ランプ及び装置を以下に説明する。この実施例2は、実施例1とほぼ同じであるが、相違する構成を中心に説明する。
【0049】
この実施例2の廃蛍光ランプの選択破砕装置21のハンマ9は、実施例1と同様に、廃蛍光ランプに衝突する半球部14を備えている。ハンマ9は回転軸8の外周面近くに支点22を中心にして枢着されており、図5に示すように、支点22を中心にして点線の位置と実線の位置に揺動可能である。
【0050】
ハンマ9 の背面(回転方向と反対側の面)には、湾曲棒23の基端が取り付けられている。回転軸8には、湾曲棒23がその先端から挿入し湾曲棒23をガイドすることが可能な湾曲ガイド孔24が形成されている。湾曲棒23の先端には、引っ張りコイルバネ25の基端が装着されており、引っ張りコイルバネ25は、その先端から湾曲ガイド孔24に装入されている。
【0051】
回転していない状態では、図5に示す右側のハンマ9のように背面側(回転方向と反対側)から引っ張りコイルバネ25による付勢力が作用し、ハンマの支点22を中心に半回転方向に倒れた状態にある。また、回転した状態ではハンマ9に遠心力が作用し、図5に示す右側のハンマ9は点線の位置、すなわち左側のハンマ9の位置まで起きあがり、この姿勢で実施例1と同様に、廃蛍光ランプの破砕を行うことができる。
【0052】
ところで、特異的に質量の大きな被粉砕物が投入されたり、多数の蛍光ランプが折り重なって全く同時にハンマ9に衝突すると、被粉砕物の重量が過大となり、回転半径や回転数の制御によりハンマ9と被粉砕物との衝突速度を制御したとしても、被粉砕物に対するハンマ9の衝撃荷重が大きくなって、破砕圧力が一定範囲を超える可能性が生じる。
【0053】
このような場合、実施例2の廃蛍光ランプの選択破砕装置のハンマ9は、一定以上の荷重がかかると、図5の右側のハンマ9のように、圧縮コイルバネ25の付勢力の助けにより(付勢力が助勢することにより)、支点を中心にハンマ9の反回転方向に揺動する(力を逃がす)ことができる。
【0054】
これにより、特異的(あるいは一時的)に大きな重量をもつ被粉砕物に対し、被粉砕物に過剰な荷重をかけることがなくなり、厳密に破壊圧力を一定範囲とする制御が可能となる。
【0055】
なお、実施例2では、ハンマ9の付勢手段として圧縮コイルバネ25を利用したが、油圧機器、空気圧機器等の付勢手段を利用してもよい。
【実施例3】
【0056】
図6は、本発明の廃蛍光ランプの選択破砕装置の実施例3を説明する図であり、この図によって、実施例3の廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置を以下に説明する。この実施例3は、実施例1とほぼ同じであるが、相違する構成を中心に説明する。
【0057】
実施例3の廃蛍光ランプの選択破砕装置31では、破砕チャンバ32の外形は、下流側に向けて大径となる円錐台(円錐形底面と平行な面で切断した形状)の形状である。そして、この破砕チャンバ32と同軸で回転する全体の外形が円錐台状の回転筒33が形成されている。
【0058】
この回転筒33は、破砕チャンバ32の上流から下流に向けて、前段筒34、中段筒35、後段筒36から成り、互いに、独立して回転するように構成されている。そして、前段筒34、中段筒35、後段筒36には、それぞれ実施例1と同様のハンマ9が取り付けられている。
【0059】
回転軸39の内部には同じ回転軸中心をなす回転軸38が、また回転軸38の内部には回転軸39、38と同じ回転軸中心をなす回転軸37が設けられている同芯多軸機構43をなし、回転軸39は前段筒34に、回転軸38は中断筒35に、回転軸37は後段筒36にそれぞれ接続されている。また、この回転軸37、38、39はそれぞれ独立した駆動用モータ40、41、42に接続されている。
【0060】
即ち、駆動用モータ40、41、42によって、前段筒34、中段筒35、後段筒36は回転軸37、38、39を介して、それぞれ独立した回転数を実現できるよう構成されている。
【0061】
実施例3の廃蛍光ランプの選択破砕装置31は、このような構成であるから、例えば、
[前段筒34の回転速度]<[中段筒35の回転速度]<[後段筒36の回転速度]で、それぞれ回転させることが可能である。ホッパ4から破砕チャンバ32内に供給された廃蛍光ランプは、前段筒34のハンマから後段筒36のハンマに向けて、ハンマの回転半径が増大するとともにハンマの回転速度も増大するので、ハンマと被粉砕物との衝突速度が増大して、破壊力を増すことができる。
【0062】
実施例1の項で説明したとおり、廃蛍光ランプの選択破砕装置31では、廃蛍光ランプ2の最初の破砕後、口金部13の破壊強度に概ね変化はないが、ガラス片5の破壊強度は著しく低下する。一方、破壊されたガラス片5は小さい片となり、元の廃蛍光ランプ2のガラス球に比べて重量が減じているため、ハンマ9から受ける衝撃力も低下する。
【0063】
もし、破壊されたガラス片5の破壊強度の低下に比べ、重量低減によるハンマ9からの衝撃力の低下の方が勝ると、2打撃目以降ガラスが全く破壊されなくなる場合が生じる。このような場合を想定すると、実施例3の廃蛍光ランプの選択破砕装置31は、前段筒34に比べ後段筒36の回転半径ならびに回転速度が大きくなるので、前段筒34のハンマ9に較べて後段筒36のハンマ9の回転速度は大きく、被粉砕物との衝突速度が増大して、破壊力を増すことができるので、有用である。
【0064】
なお、実施例3では、破砕チャンバ32の直径を後段に向けて大きくし、前段筒34から後段筒36に向けて大径としたが、破砕チャンバ32の直径を変化させることなく、また前段筒34、中段筒35及び後段筒36を同径とし、同芯多軸機構43のみで、速度を変化させる構成としてもよいし、同芯多軸機構43をしようせず、前段筒34から後段筒36に向けて大径とする構成でも良い。
【0065】
さらに、もし、ガラス片5の重量低減によるハンマ9からの衝撃力の低下に比べ、破壊されたガラス片5の破壊強度の低下の方が勝ると、2打撃目以降ガラスが瞬時に微粉化してしまい過粉砕を招く場合が生じる。
【0066】
このような場合を想定すると、破砕チャンバ32の直径を後段に向けて小さくして前段筒34から後段筒36に向けて小径とするか、同芯多軸機構43を利用するかの片方あるいは両方の利用により、前段筒34のハンマ9に較べて後段筒36のハンマ9の回転速度を減じて、前段筒34から後段筒36に向けて被粉砕物との衝突速度の減少で破壊力を減ずることができるので、有用である。
【0067】
以上、本発明に係る廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、以上のような構成であるから、廃蛍光管のリサイクル分野に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明による蛍光ランプの衝撃破壊試験結果を示す図である。
【図2】本発明の廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置の実施例1を説明する図である。
【図3】本発明の廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置実施例1を説明する図である。
【図4】本発明の選択粉砕条件の一例を示す図である。
【図5】本発明の廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置の実施例2を説明する図である。
【図6】本発明の廃蛍光ランプの選択破砕方法及び装置の実施例3を説明する図である。
【符号の説明】
【0070】
1 廃蛍光ランプの選択破砕装置(実施例1)
2 廃蛍光ランプ
3 破砕機
4 ホッパ
5 ガラス片
6 ガラス受ハウジング
7 破砕チャンバ
8 回転軸
9 ハンマ
10 開口
11 破砕チャンバの内壁
12 ハンマと破砕チャンバの内壁との隙間
13 口金部
14 ハンマの半球部
15 スクリーン
16 排出口
17 スペース
21 廃蛍光ランプの選択破砕装置(実施例2)
22 支点
23 湾曲棒
24 湾曲ガイド孔
25 引っ張りコイルバネ
31 廃蛍光ランプの選択破砕装置(実施例3)
32 破砕チャンバ
33 回転筒
34 前段筒
35 中段筒
36 後段筒
37、38、39 回転軸
40、41、42 駆動用モータ
43 同芯多軸機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕機と、該破砕機を支持し且つ破砕機で破砕されたガラス片を受けるガラス受ハウジングを備えて成る廃蛍光ランプの選択破砕装置であって、
前記破砕機は、ガラス受ハウジング上に支持された円筒状の破砕チャンバと、該破砕チャンバ内で破砕チャンバの軸心を中心に回転する回転軸と、該回転軸に取り付けられたハンマとを備えており、
前記ハンマと破砕チャンバとの間には、ハンマが破砕チャンバ内で回転可能である以外の隙間はない構成とし、
前記破砕チャンバの一端から前記破砕チャンバと回転軸の間のスペースに供給された廃蛍光ランプを、前記ハンマによって、圧縮力、摩擦力、引張力及び剪断力を作用させずに、ハンマの衝撃力のみによって、口金部を破砕することなく、ガラス部分のみを選択的に破砕する構成としたことを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕装置。
【請求項2】
前記ハンマは、2000MPaから3000MPaの衝撃圧力で、廃蛍光ランプのガラスを破砕することを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕装置。
【請求項3】
前記破砕チャンバは、一端から他端に向けて下方向に傾斜しており、底部には、破砕されたガラスのみが通過するスクリーンが形成されていることを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕装置。
【請求項4】
前記ハンマの打撃部分が半球形であることを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕装置。
【請求項5】
前記ハンマは回転軸に枢着され、バネ、油圧又は圧縮空気により、枢着支点を中心に回転軸の反回転方向に付勢力が作用されており、破砕中、破砕すべき廃蛍光ランプに過剰な荷重がかかった際、前記付勢力の助けによりハンマを枢着する支点を中心にハンマの反回転方向に揺動可能とすることを特徴とした廃蛍光ランプの選択破砕装置。
【請求項6】
破砕機と、該破砕機を支持し且つ破砕機で破砕されたガラス片を受けるガラス受ハウジングを備えて成る廃蛍光ランプの選択破砕装置を使用した廃蛍光ランプの選択破砕方法であって、
前記破砕機は、円筒状の破砕チャンバと、該破砕チャンバ内で破砕チャンバの軸心を中心に回転する回転軸と、該回転軸に取り付けられたハンマとを備え、前記ハンマと破砕チャンバとの間には、ハンマが破砕チャンバ内で回転可能である以外の隙間はない構成とし、
前記破砕チャンバの一端から前記破砕チャンバと回転軸の間のスペースに供給された廃蛍光ランプを、前記ハンマによって、圧縮力、摩擦力、引張力及び剪断力を作用させずに、ハンマの衝撃力のみによって、口金部を破砕することなく、ガラス部分のみを選択的に破砕することを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【請求項7】
前記ハンマは、2000MPaから3000MPaの衝撃圧力で、廃蛍光ランプのガラスを破砕することを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【請求項8】
前記破砕チャンバは、一端から他端に向けて下方向に傾斜しており、底部には、破砕されたガラスのみが通過するスクリーンが形成することで、前記破砕チャンバの一端から前記破砕チャンバと回転軸の間のスペースに供給された廃蛍光ランプを、前記破砕チャンバ内で移動しながらハンマで破砕し、破砕したガラス片をスクリーンを通過させてガラス受ハウジング内に落下させることを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【請求項9】
前記ハンマの打撃部分が半球形であることを特徴とする廃蛍光ランプの選択破砕方法。
【請求項10】
前記ハンマを回転軸に枢着し、バネ、油圧又は圧縮空気により、枢着支点を中心に回転軸の反回転方向に付勢力を作用し、破砕中、破砕すべき廃蛍光ランプに過剰な荷重がかかった際、前記付勢力の助けによりハンマを枢着する支点を中心にハンマの反回転方向に揺動可能とすることを特徴とした廃蛍光ランプの選択破砕方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−72686(P2009−72686A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243562(P2007−243562)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】