説明

建材用透湿防水シート

【課題】軽量であって、厳しい環境条件を経ても優れた釘穴シール性を維持できて十分に防水できると共に、透湿性にも優れた建材用透湿防水シートを提供する。
【解決手段】この発明の建材用透湿防水シートは、外側不織布層2と、該外側不織布層2の下側に接着された、防水性及び透湿性を有する外側多孔性ポリオレフィンフィルム層3と、該フィルム層3の下側に接着された、膨潤層8を有した中間不織布層4と、該中間不織布層4の下側に接着された、防水性及び透湿性を有する内側多孔性ポリオレフィンフィルム層5と、該フィルム層5の下側に接着された内側不織布層6とを備えることを特徴とする。膨潤層8は吸水性ポリマーを含有してなるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば屋根下地材として使用される透湿性及び防水性に優れた建材用透湿防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家屋の屋根下地材としては、アスファルトを含浸した布帛が多く使用されている。このアスファルトを含浸した布帛は、防水性を有し、寸法安定性が良く、物理的強度が大きく、釘を打設した時の釘軸周りの釘穴シール性が良いという点で優れている。
【0003】
しかし、前記アスファルトを含浸した布帛は、アスファルト含有により20m程度の巻物で30kgを超す重量を有するので、施工時の取り扱い性が非常に悪いという問題があった。また、前記アスファルト含浸布帛は、透湿性が殆どなく、施工後屋根下の湿気が抜けずに野地板が水分を含んで腐食しやすいという問題もあった。また、施工後において寒暖の温度差によりアスファルト含浸布帛の劣化や伸縮を生じやすく、このため時間が経過すると釘軸周りやタッカー部分の釘穴シール性が低下しやすかった。
【0004】
一方、上記従来のアスファルト含浸布帛に代わる屋根下地材として、特許文献1には、布帛の表面に、伸縮性と粘着性を有する樹脂層が積層され、さらにその上に粘着性の少ない樹脂層が積層されてなる屋根下地材が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、防水性及び透湿性を有するポリエチレンフィルムの上面に、防滑層を上面に有する不織布が接着され、前記ポリエチレンフィルムの下面に、上面に高吸水性ポリマーからなる膨潤層を有した不織布が接着されてなる建築用防水シートが記載されている。
【特許文献1】特開平2−269277号公報
【特許文献2】特開2002−316373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の屋根下地材では、表面に樹脂シートが露出しており、傷が付きやすく、基本機能である防水性が損なわれやすかった。また、釘を打設した時の釘穴シール性も十分なものではなかった。更に、夏季の直射日光により表面の樹脂シートの温度が上昇して軟化することにより屋根がずれることが懸念される。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の建築用防水シートでは、釘を打設した状態での透水試験で24時間経過後では水の裏抜けが生じることがなく良好な防水性が維持されるが、寒暖の温度差や湿度の高低差等のより厳しい環境条件が負荷された後では釘穴シール性は必ずしも十分なレベルを維持できるものではなかったことから、より厳しい環境条件下においても十分な釘穴シール性を維持できる建材用透湿防水シートの開発が望まれていた。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、軽量であって、厳しい環境条件を経ても優れた釘穴シール性を維持できて十分に防水できると共に、透湿性にも優れた建材用透湿防水シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]外側不織布層と、
該外側不織布層の下側に接着された、防水性及び透湿性を有する外側多孔性ポリオレフィンフィルム層と、
該外側多孔性ポリオレフィンフィルム層の下側に接着された、膨潤層を有した中間不織布層と、
該中間不織布層の下側に接着された、防水性及び透湿性を有する内側多孔性ポリオレフィンフィルム層と、
該内側多孔性ポリオレフィンフィルム層の下側に接着された内側不織布層とを備えることを特徴とする建材用透湿防水シート。
【0011】
[2]前記外側不織布層の上面に防滑層が積層されている前項1に記載の建材用透湿防水シート。
【0012】
[3]前記膨潤層は、前記中間不織布層の上面に積層されている前項1または2に記載の建材用透湿防水シート。
【0013】
[4]前記膨潤層は、吸水性ポリマーを含有してなる前項1〜3のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【0014】
[5]前記膨潤層は、バインダー樹脂10質量部に対して吸水性ポリマー5〜50質量部配合されてなる樹脂組成物が塗布されて形成され、前記吸水性ポリマーの付与量が3〜30g/m2である前項1〜3のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、重量のあるアスファルトを用いないから、軽量性に優れている。また、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリオレフィンフィルム層を外側と内側の2層設けているから、建材用透湿防水シートとして十分な防水性及び透湿性を確保できる。また、外側多孔性ポリオレフィンフィルム層の上面側に外側不織布層が積層されているから、施工時に外側多孔性ポリオレフィンフィルム層が露出して傷付けられるようなことを十分に防止できると共に、内側多孔性ポリオレフィンフィルム層の下面側に内側不織布層が積層されているから、施工時に内側多孔性ポリオレフィンフィルム層が野地板との接触等により傷付けられるようなことを十分に防止できる。更に、中間不織布層は膨潤層を備えているから、打設された釘の釘軸周りの隙間から外側多孔性ポリオレフィンフィルム層の下側に入り込んだ水は、該膨潤層が吸収して膨潤し、該膨潤によって釘軸周りの隙間(釘穴)を塞いでシールすることができて、良好な釘穴シール性を確保できる。また、打設された釘の釘軸周りの隙間から外側多孔性ポリオレフィンフィルム層の下側に入り込んだ水の一部は、膨潤層の下側にまで到達することがあるが、このような場合でも中間不織布層の下側に防水性及び透湿性を有する内側多孔性ポリオレフィンフィルム層が存在することによって、該水が建材用透湿防水シートの下側に抜け出ることを確実に阻止することができる。このように膨潤層を有した中間不織布層の下側に、防水性及び透湿性を有する内側多孔性ポリオレフィンフィルム層が配置されることによって、より優れた釘穴シール性が得られて、従来よりも格段に優れた防止性が得られるものとなる。
【0016】
[2]の発明では、外側不織布層の上面に防滑層が積層されているから、例えば屋根下地材として用いる場合において、施工作業者がこの建材用透湿防水シートの上を歩行しても滑り難く作業安全性を高めることができる。
【0017】
[3]の発明では、膨潤層が、中間不織布層の上面に積層されているから、より優れた釘穴シール性を得ることができる。
【0018】
[4]の発明では、吸水性ポリマーを含有してなる膨潤層を用いており、該吸水性ポリマーは一旦吸収した水を放し難いので、釘穴シール性をさらに向上させることができる。
【0019】
[5]の発明では、膨潤層は、バインダー樹脂10質量部に対して吸水性ポリマー5〜50質量部配合されてなる樹脂組成物が塗布されて形成され、吸水性ポリマーの付与量が3〜30g/m2であるから、良好な透湿性を確保しつつ釘穴シール性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明に係る建材用透湿防水シート(1)の一実施形態を図1に示す。本実施形態の建材用透湿防水シート(1)は、屋根下地材として特に好適に用いられるシートである。この建材用透湿防水シート(1)は、外側不織布層(2)の下面に防水性及び透湿性を有する外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)が接着され、該外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)の下面に、膨潤層(8)を有した中間不織布層(4)が接着され、該中間不織布層(4)の下面に防水性及び透湿性を有する内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)が接着され、さらに前記内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)の下面に内側不織布層(6)が接着された積層シート体からなる。
【0021】
本実施形態では、前記外側不織布層(2)の上面に防滑層(10)が積層されている。また、前記膨潤層(8)は、前記中間不織布層(4)の上面に配置されている。即ち、前記膨潤層(8)は、前記中間不織布層(4)における外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)側の表面に積層配置されている。
【0022】
この発明において、前記外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)は、防水性及び透湿性を有し、建材用透湿防水シート(1)としての防水性及び透湿性を発現させる上で主要な役割を果たすものである。前記外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)としては、特に限定されないが、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリエチレンフィルム又は防水性及び透湿性を有する多孔性ポリプロピレンフィルムで構成されるのが好ましい。中でも、多孔性ポリエチレンフィルムで構成されるのがより好ましく、この場合には加工性が向上すると共に透湿性をより増大させることができる。
【0023】
また、前記内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)は、防水性及び透湿性を有し、建材用透湿防水シート(1)としての防水性及び透湿性を発現させる上で主要な役割を果たすものである。特に、釘を打設した時の釘軸周りの隙間(釘穴)から前記外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)の下側に入り込んだ水を、前記膨潤層(8)が吸収して膨潤することで釘軸周りの釘穴をシールするのであるが、この時、釘軸周りの釘穴から侵入した水の一部は、前記中間不織布層(4)の下側にまで到達することがあるが、このような場合でも前記中間不織布層(4)の下側に前記内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)が存在することによって、該水が建材用透湿防水シート(1)の下側に達する(抜け出る)ことを阻止することができる。
【0024】
前記内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)としては、特に限定されないが、防水性及び透湿性を有する多孔性ポリエチレンフィルム又は防水性及び透湿性を有する多孔性ポリプロピレンフィルムで構成されるのが好ましい。中でも、多孔性ポリエチレンフィルムで構成されるのがより好ましく、この場合には加工性が向上すると共に透湿性をより増大させることができる。
【0025】
前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)(5)の厚さは20〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで施工時の釘の打設により釘とフィルムとの間に生じる隙間(釘穴)を埋めようとする弾性力が十分に得られて釘穴シール性が十分に得られると共に、100μm以下であることで十分な軽量性を確保できる。
【0026】
また、前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)(5)のヤング率は1〜30kg/mm2であるのが好ましく、この場合にはより優れた釘穴シール性が得られる。中でも、前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)(5)のヤング率は2〜25kg/mm2であるのがより好ましい。
【0027】
また、前記多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)(5)の透湿度は1000g/m2・24hr以上であるのが好ましく、この場合には建材用透湿防水シート(1)として十分な透湿性を確保することができて野地板が水分を含んで腐食するようなことを十分に防止できる。
【0028】
前記外側不織布層(2)は、前記外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)等を補強すると共に、建材用透湿防水シート(1)に加えられる衝撃を吸収して建材用透湿防水シート(1)の破損を防止する等の役割を果たすものである。前記外側不織布層(2)としては、特に限定されるものではないが、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布が好ましい。中でも、ポリエステルまたはポリプロピレンからなるスパンボンド不織布又はニードルパンチ不織布がより好ましい。また、前記外側不織布層(2)の目付は20〜100g/m2に設定するのが好ましい。このような範囲に設定することにより、施工時に外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)が露出して傷付けられるようなことを十分に防止できるし、建材用透湿防水シート(1)として軽量性、保温性、防音性、緩衝性に優れたものとなる。
【0029】
前記防滑層(10)を形成する防滑剤としては、防滑性を有し、且つ粘着性のないものが良く、例えば樹脂やゴム等が挙げられる。具体的には、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、合成ゴム、アスファルト類等が挙げられる。前記防滑剤の付与方法としては、特に限定されるものではないが、例えばコーティング法、グラビアロール法、凸版印刷法、スクリーン捺染法等が挙げられる。中でも、前記防滑剤に有機系または無機系の発泡剤を加えたものを前記外側不織布層(2)の上面に付与して防滑層(10)を形成するのが好ましく、この場合には防滑効果をさらに向上させることができる利点がある。なお、前記防滑剤は、通気性を損なわなければ、前記外側不織布層(2)の上面の全面に塗布されても良いし、或いは防滑効果が発揮され得る範囲で部分的に塗布されても良い。
【0030】
また、前記内側不織布層(6)は、前記内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)等を補強すると共に、建材用透湿防水シート(1)に加えられる衝撃を吸収して建材用透湿防水シート(1)の破損を防止する等の役割を果たすものである。前記内側不織布層(6)としては、特に限定されるものではないが、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布が好ましい。中でも、ポリエステルまたはポリプロピレンからなるスパンボンド不織布又はニードルパンチ不織布がより好ましい。また、前記内側不織布層(6)の目付は20〜100g/m2に設定するのが好ましい。このような範囲に設定することにより、施工時に内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)が野地板との接触等により傷付けられるようなことを十分に防止できるし、建材用透湿防水シート(1)として軽量性、保温性、防音性、緩衝性に優れたものとなる。
【0031】
また、前記中間不織布層(4)は、前記外側多孔性ポリオレフィンフィルム層(3)および前記内側多孔性ポリオレフィンフィルム層(5)等を補強すると共に、建材用透湿防水シート(1)に加えられる衝撃を吸収して建材用透湿防水シート(1)の破損を防止する等の役割を果たすものである。前記中間不織布層(4)としては、特に限定されるものではないが、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布が好ましい。中でも、ポリエステルまたはポリプロピレンからなるスパンボンド不織布又はニードルパンチ不織布がより好ましい。また、前記中間不織布層(4)の目付は10〜100g/m2に設定するのが好ましい。
【0032】
この発明において、前記中間不織布層(4)は膨潤層(8)を有している。本実施形態では、この膨潤層(8)は、前記中間不織布層(4)の上面に積層されているが、特にこのような態様に限定されるものではなく、例えば中間不織布層(4)の下面に積層されていても良いし、或いは中間不織布層(4)の厚さ方向の中央領域に積層されていても良い。ただ、より優れた釘穴シール性を確保する観点から、前記膨潤層(8)は、中間不織布層(4)の上面に積層されるのが好ましい。
【0033】
前記膨潤層(8)を形成するための膨潤剤としては、吸水して膨潤する機能を有するものであれば特に限定されず、例えば吸水性ポリマー等が挙げられる。前記吸水性ポリマーとしては、例えばポリアクリル酸塩架橋物、澱粉−ポリアクリル酸塩、ポビニルアルコール−ポリアクリル酸塩、イソブチレン−マレイン酸塩等が挙げられ、これらを2種以上混合して用いても良い。
【0034】
前記膨潤剤は、通常、バインダー樹脂によって前記中間不織布層(4)に固着される。前記バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂等が挙げられる。中でも、加工時の取り扱い性の良さやコスト面から、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。前記吸水性ポリマーとバインダー樹脂の混合割合(固形分での混合割合)は、バインダー樹脂10質量部に対して吸水性ポリマー5〜50質量部とするのが好ましい。
【0035】
前記吸水性ポリマーの付着量は3〜30g/m2に設定されるのが好ましい。3g/m2以上であることで十分な釘穴シール性が得られ、30g/m2以下であることで良好な透湿性が得られるものとなる。中でも、前記吸水性ポリマーの付着量は5〜20g/m2に設定されるのがより好ましく、特に好ましいのは7〜15g/m2である。
【0036】
前記膨潤層(8)を形成する膨潤剤の中間不織布層(4)への付与方法としては、特に限定されるものではないが、例えばコーティング法、グラビアロール法、凸版印刷法、スクリーン捺染法等が挙げられる。中でも、グラビアロール法は、全面に付与したり、格子状に付与することが可能であり、通気性が損なわれないように中間不織布層(4)の形態、素材に応じた加工ができることから、好ましく採用される。
【0037】
各層間の接着手法としては、通気性を確保しつつ接着できるものであれば特に限定されず、例えばドライラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法等の各種接着法が用いられる。接着剤の種類も特に限定されない。
【実施例】
【0038】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
目付30g/m2のポリエステル不織布からなる外側不織布(2)の片面の全面にアクリル系樹脂をコーティング法により固形分で40g/m2塗布して乾燥させることによって防滑層(10)を有する外側不織布(2)を得た。また、目付15g/m2のポリエステル不織布からなる中間不織布(4)の片面に、澱粉−ポリアクリル酸塩(高吸水性ポリマー)50質量部およびアクリル系バインダー樹脂50質量部からなる樹脂組成物をグラビアロールにて10g/m2塗布することによって片面に膨潤層(8)を有する中間不織布(4)を得た。
【0040】
次に、前記外側不織布(2)と、透湿度が7000g/m2・24hrである防水性及び透湿性を有する厚さ30μmの外側多孔性ポリエチレンフィルム(3)と、前記膨潤層(8)を有した中間不織布(4)と、透湿度が7000g/m2・24hrである防水性及び透湿性を有する厚さ30μmの内側多孔性ポリエチレンフィルム(5)と、目付30g/m2のポリエステル不織布からなる内側不織布(6)とがこの順で重ね合わされるように各層間をドライラミネート法により接着一体化して、図1に示す建材用透湿防水シート(1)を得た。この時、防滑層(10)が最外層になるように、かつ中間不織布(4)における外側多孔性ポリエチレンフィルム(3)側に膨潤層(8)が配置されるように積層した(図1参照)。
【0041】
<実施例2>
前記外側多孔性ポリエチレンフィルム(3)および内側多孔性ポリエチレンフィルム(5)として、透湿度が15000g/m2・24hrである防水性及び透湿性を有する多孔性ポリエチレンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして建材用透湿防水シートを得た。
【0042】
<実施例3>
澱粉−ポリアクリル酸塩(高吸水性ポリマー)の付着量が20g/m2となるように樹脂組成物の塗布量を調整した以外は実施例1と同様にして建材用透湿防水シートを得た。
【0043】
<実施例4>
澱粉−ポリアクリル酸塩(高吸水性ポリマー)の付着量が30g/m2となるように樹脂組成物の塗布量を調整した以外は実施例1と同様にして建材用透湿防水シートを得た。
【0044】
<実施例5>
澱粉−ポリアクリル酸塩(高吸水性ポリマー)の付着量が2g/m2となるように樹脂組成物の塗布量を調整した以外は、実施例1と同様にして建材用透湿防水シートを得た。
【0045】
<実施例6>
澱粉−ポリアクリル酸塩(高吸水性ポリマー)の付着量が50g/m2となるように樹脂組成物の塗布量を調整した以外は、実施例1と同様にして建材用透湿防水シートを得た。
【0046】
<比較例1>
目付30g/m2のポリエステル不織布の片面の全面にアクリル系樹脂をコーティング法により固形分で40g/m2塗布して乾燥させることによって防滑層を有する外側不織布を得た。また、目付15g/m2のポリエステル不織布の片面に、澱粉−ポリアクリル酸塩(高吸水性ポリマー)50質量部およびアクリル系バインダー樹脂50質量部からなる樹脂組成物をグラビアロールにて10g/m2塗布することによって片面に膨潤層を有する内側不織布を得た。
【0047】
次に、前記外側不織布と、透湿度が7000g/m2・24hrである防水性及び透湿性を有する厚さ30μmの多孔性ポリエチレンフィルムと、前記膨潤層を有した内側不織布とがこの順で重ね合わされるように各層間をドライラミネート法により接着一体化して、建材用透湿防水シートを得た。この時、防滑層が最外層になるように、かつ内側不織布における多孔性ポリエチレンフィルム側に膨潤層が配置されるように積層した。
【0048】
上記のようにして得られた各建材用透湿防水シートについて下記試験法に基づいて評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0049】
<防水性評価法>
JIS L1092の5.1.1のB法(繊維製品の防水性試験方法)に準拠して、各建材用透湿防水シートの防水性を評価した。
【0050】
<透湿性評価法>
JIS L1099の4.1のA法(繊維製品の透湿度試験方法)に準拠して、各建材用透湿防水シートの透湿度(g/m2・24hr)を求めた。
【0051】
<釘穴シール性評価法>
建材用透湿防水シートを、80℃×20%RH×15.5時間、−40℃×0%RH×7.5時間、80℃×95%RH×15.5時間、−40℃×0%RH×7.5時間の各環境条件下に順に置く工程を1サイクルとし、これを5サイクル繰り返す。
【0052】
次に、12mm厚さの合板の上に、前記5サイクルを経た後の建材用透湿防水シートを防滑層を上にして載置し、コロニアル瓦用釘(長さ30mm、最大直径3.3mm、最小直径2.9mm、最大直径部と最大直径部との間隔1.3mm)を打ち付け、この上に塩化ビニル製のパイプを立ててその底部をシーリング剤で水密状態にシールした後、パイプ内に水を充填し上端開口部をゴム栓で封じて150mmの水頭圧をかけて放置し、24時間経過後のパイプ内の水の減少量(mL)を測定した。水の減少量が1.0mL以下であるものを「合格」とした。なお、各実施例、比較例についてそれぞれ10サンプルづつ試験を行い、その合格割合を表1に示した。例えば、表中「10/10」と記載されたものは10サンプル全数について釘穴シール性試験が合格であったことを示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表から明らかなように、この発明の実施例1〜6の建材用透湿防水シートは、良好な透湿性が得られると共に、防水性も良く、またより厳しい環境条件を経た後でも釘穴シール性が良好であった。特に、実施例1〜4の建材用透湿防水シートは、透湿性および釘穴シール性ともにより一層優れていた。
【0055】
これに対し、従来構成に係る比較例1の建材用透湿防水シートは、より厳しい環境条件を経た後では釘穴シール性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明の建材用透湿防水シートは、例えば建築用下地材として使用され、特に屋根下地材として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明に係る建材用透湿防水シートの一実施形態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…建材用透湿防水シート
2…外側不織布層
3…外側多孔性ポリオレフィンフィルム層
4…中間不織布層
5…内側多孔性ポリオレフィンフィルム層
6…内側不織布層
8…膨潤層
10…防滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側不織布層と、
該外側不織布層の下側に接着された、防水性及び透湿性を有する外側多孔性ポリオレフィンフィルム層と、
該外側多孔性ポリオレフィンフィルム層の下側に接着された、膨潤層を有した中間不織布層と、
該中間不織布層の下側に接着された、防水性及び透湿性を有する内側多孔性ポリオレフィンフィルム層と、
該内側多孔性ポリオレフィンフィルム層の下側に接着された内側不織布層とを備えることを特徴とする建材用透湿防水シート。
【請求項2】
前記外側不織布層の上面に防滑層が積層されている請求項1に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項3】
前記膨潤層は、前記中間不織布層の上面に積層されている請求項1または2に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項4】
前記膨潤層は、吸水性ポリマーを含有してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。
【請求項5】
前記膨潤層は、バインダー樹脂10質量部に対して吸水性ポリマー5〜50質量部配合されてなる樹脂組成物が塗布されて形成され、前記吸水性ポリマーの付与量が3〜30g/m2である請求項1〜3のいずれか1項に記載の建材用透湿防水シート。

【図1】
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【公開番号】特開2007−223046(P2007−223046A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43408(P2006−43408)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【出願人】(000214043)蝶理株式会社 (14)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】