説明

建物におけるパネルの結合構造

【課題】パネルの枠体を構成する部材自体の変形を抑止しつつ、隣接する2枚の壁パネルの結合を容易に行うことを可能にする壁パネルの結合構造を提供すること。
【解決手段】雌側側辺116に設けられた結合クリップ118が雄側側辺115側のスタッド111のリップ部111aに係合することで、2枚の壁パネル110の仮結合がされる。結合クリップ118をスタッド111のリップ部111aに係合させる際には、結合クリップ118が弾性変形する。すなわち、壁パネル110の枠体を構成する部材をほとんど変形させることなく、2枚の壁パネル110の仮結合を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁、床等におけるパネルの結合構造に関するものであり、スチールハウスの壁等におけるパネルの結合構造に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
建物の骨格となる構造体に2×4規格を採用し、軽量鉄骨製フレームを用いることで強度と耐久性を高めた枠組壁工法のスチールハウスが広く知られている。スチールハウスでは、規格化、標準化された壁パネルを工場で生産し、建物の施工現場で壁パネルを結合する工法を採用している。スチールハウスにおいては、建物の施工現場での施工効率を上げることが重要な課題であり、そのための壁パネルの結合構造が従来から提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この壁パネルの結合構造について図16に基づいて簡単に説明する。図16は結合される2枚の壁パネルの要部を示す斜視図である。壁パネル910は、枠体の一面側に構造用合板914が固定されて形成されている。なお、この枠体は、リップ溝形鋼製のスタッド911の上端部および下端部を溝形鋼製の上枠ランナー912および下枠ランナー(図示せず)に固定することで形成されている。壁パネル910の左右の両側部には雄側側辺915と雌側側辺916とが形成されている。図16においては、右側に示されている壁パネル910の左側の側辺が雄側側辺915であり、左側に示されている壁パネル910の右側の側辺が雌側側辺916である。雄側側辺915と雌側側辺916とが結合されることにより壁体が構成される。
【0004】
雄側側辺915にはスタッド911が配置されている。雄側側辺915に配置されているスタッド911の上端の右半分は上枠ランナー912で覆われている。また、スタッド911の構造用合板914との接触面における上下方向の右半分は構造用合板914で覆われている。図16には図示されていないが、スタッド911の下端の右半分も下枠ランナーで覆われている。その結果、雄側側辺915においては、そこに配置されているスタッド911の右半分が上枠ランナー912、構造用合板914および下枠ランナーで覆われ、左半分が上枠ランナー912、構造用合板914および下枠ランナーの左端部から突出した突出部917を形成している。一方、雌側側辺916にはスタッド911は配置されておらず、上枠ランナー912、構造用合板914および下枠ランナーの右端部は同位置にある。
【0005】
雄側側辺915に形成された突出部917の上方側面には、小さな窪み918aが設けられている。一方、雌側側辺916における上枠ランナー912の内側面には突起918bが設けられている。また、図16には図示されていないが、雄側側辺915に形成された突出部917の下方側面と雌側側辺916における下枠ランナーの内側面にも、小さな窪みと突起がそれぞれ設けられている。
【0006】
2枚の壁パネル910は、雄側側辺915に形成された突出部917の上端および下端が雌側側辺916の上枠ランナー912および下枠ランナーで覆われ、突出部917の側面が雌側側辺916の構造用合板914端部で覆われるように結合される。さらに、2枚の壁パネル910の結合時には、雌側側辺916に設けられた突起918bが雄側側辺915に設けられた窪み918aに嵌合する。これにより、2枚の壁パネル910を仮結合する際の作業性を向上させている。
【0007】
上述のとおり、図16に示す壁パネル910の結合構造では、窪み918aと突起91
8bとはそれぞれ上枠ランナー912とスタッド911に設けられている。そして、窪み918aと突起918bとは、上枠ランナー912の側面が外方に広がって、もしくはスタッド911側面が内方に狭まって変形することにより、嵌合される。しかしながら、スタッド911および上枠ランナー912は一般に鋼製のものが用いられるため、容易には変形せず、小さな力で2枚の壁パネル910を結合させることは困難である。また、仮に結合できたとしても、壁パネル910の枠体を構成する部材を変形させることになるため、壁パネル910の強度を低下させる原因にもなり、問題がある。
【特許文献1】特開平11−229531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、パネルの枠体を構成する部材自体の変形を抑止しつつも、隣接するパネル間の結合を容易に行うことを可能にするパネルの結合構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0010】
本発明における建物のパネルの結合構造は、枠体、(スタッド111、上枠ランナー112、下枠ランナー113等)に面材(構造用合板114等)を取り付けて形成された第1パネルと第2パネル(壁パネル110等)との隣接する側縁部(雄側側辺115、雌側側辺116等)同士を結合する建物におけるパネルの結合構造であって、前記第1パネルにおける前記第2パネルと隣接する側縁部には前記枠体とは別部材の係合部材(結合クリップ118、上枠ランナージョイント部材622、下枠ランナージョイント部材621等)が設けられており、前記第2パネルにおける前記第1パネルと隣接する側縁部には前記係合部材が係合する被係合部(リップ部111a、クリップ挿入孔420、上枠ランナー612、下枠ランナー513等)が設けられており、前記係合部材と前記被係合部とが係合することにより前記第1パネルと前記第2パネルとが結合されていることを特徴としている。
【0011】
第1パネルに設けられた係合部材が第2パネルの被係合部に係合することで、隣接するパネルの結合がされる。これにより、隣接するパネルの結合を容易に行うことができ、施工効率を向上させることが可能となる。また、係合部材はパネルの枠体を構成する部材とは別の部材として設けられている。これにより、隣接するパネルを結合する際、パネルの枠体を構成する部材の変形を抑制できるため、パネルの強度を低下させる原因を低減することが可能となる。
【0012】
なお、前記係合部材は前記第1パネルにおける側縁部の面材に設けられており、前記第2パネルにおける側縁部では、前記枠体の枠材が前記第2パネルの側縁部に沿って前記第2パネルの面材より前記第1パネル側に突出して配置されるとともに、前記被係合部は前記突出した枠材の前記第1パネル側に設けられていることという構成をとることもできる。
【0013】
前記係合部材(結合クリップ118,218,318)は弾性変形可能であり、当該係合部材は弾性変形を経て前記被係合部に係合することが好ましい。係合部材が被係合部に係合する際には、枠体を構成する部材とは別の部材として設けられている係合部材が弾性
変形するため、パネルの枠体を構成する部材の変形をより抑制できる。これにより、パネルの強度を低下させる原因をより低減することが可能となる。
【0014】
前記第2パネルの突出した枠材はリップ溝形形状であり、そのリップ部は前記第1パネル側に向けて配置されており、当該リップ部により被係合部が形成されていることが好ましい。枠材の形状の一部を利用することで、特別に被係合部を形成する必要がない。これにより、簡易に被係合部を構成することが可能になる。
【0015】
前記被係合部は前記第2パネルの突出した枠材に設けられた孔により形成され、前記係合部材は前記孔に挿入されて係合していることが好ましい。これにより、被係合部を孔という簡易なもので構成することが可能になる。
【0016】
前記係合部材が前記第2パネルの枠材の所定位置に当接することにより、前記第1パネルの面材と前記第2パネルの面材との間隔が規定されることが好ましい。これにより、隣接するパネルの面材の最小間隔を規定することができ、パネルの接続時に面材同士が接触することを抑止できる。
【0017】
なお、前記第2パネルの突出した枠材として、リップ部が前記第1パネル側に向けて配置されたリップ溝形形状のものを用いた場合には、前記係合部材が前記第2パネルの枠材のリップ部における前記第1パネル側の面に当接することにより、前記第1パネルの面材と前記第2パネルの面材との間隔が規定されるという構成をとることが可能である。また、前記係合部材が前記第2パネルの枠材の溝部底面に当接することにより、前記第1パネルの面材と前記第2パネルの面材との間隔が規定されるという構成をとることも可能である。
【0018】
前記第1パネルの面材の端部と前記係合部材との間に、前記第2パネルの突出した枠材が配置されるように、前記係合部材が前記被係合部に係合していることが好ましい。これにより、第2パネルの突出した枠材が第1パネルの面材の端部と係合部材との間に挟み込まれた状態となる。その結果、壁を構成するパネルの結合構造に本発明を用いた場合、本固定前においてもパネルが安定し、一方のパネルが倒れるのを抑止することが可能になる。
【0019】
前記第1パネルにおける側縁部の面材の端部が、前記第2パネルの突出した枠材に固定されていることが好ましい。これにより、隣接するパネルの結合部において、枠材を共用することができるので、枠体を構成する枠材を低減することができ、コストの削減が可能となる。
【0020】
なお、前記枠体はスタッド(スタッド511,611)と前記スタッドの上下両端部を被覆する溝形形状のランナー(上枠ランナー512,612、下枠ランナー513,613)とからなり、前記係合部材(上枠ランナージョイント部材622、下枠ランナージョイント部材521,621)は、前記第1パネルのランナーの端部から前記第2パネルへ向けて突出するように当該第1パネルのランナーに設けられており、前記被係合部は、前記第2パネルにおけるランナーの前記第1パネル側の端部により形成されているという構成をとることもできる。これにより、ランナー内に係合部材を係合させた状態で、パネルの間隔を調整することが可能となる。
【0021】
前記係合部材および前記係合部は前記第1パネルおよび第2パネルにおける一方のランナーに設けられており、前記第2パネルの側縁部では、前記第2パネルの他方ランナーおよび前記面材より前記スタッドが第1パネル側に突出して配置されており、前記第1パネルの側縁部における他方のランナーの端部は、前記第2パネルの突出して配置されたスタ
ッドの端部を被覆を被覆していることが好ましい。これにより、第2パネルの側縁部において突出して配置されたスタッドの端部が第1パネルのランナーの両側面で挟まれた状態となる。その結果、壁を構成するパネルの結合構造に本発明を用いた場合、本固定前においてもパネルが安定し、一方のパネルが倒れるのを抑止することが可能になる。
【0022】
前記第1パネルのランナーの端部から前記第2パネルへ向けて突出する係合部材は、前記第1パネルの両ランナーに設けられており、前記第2パネルにおける両ランナーの前記第1パネル側の端部に前記被係合部が形成されていることが好ましい。係合部材とランナーとの係合が両ランナーでなされるため、パネル間の結合をより安定した状態とすることが可能となる。また、両ランナー内に両係合部材が係合された状態で、パネルの間隔を調整することが容易になる。これにより、施工の現場において、建物のパネル間隔の調整が容易となるとともに、結合後のパネル全体の長さ調整を容易に行うことが可能となり、建物長さの精度を向上することが可能となる。
【0023】
前記係合部材は、前記第1パネルのランナーの端部に回動可能に設けられていることが好ましい。これにより、隣接するパネルを接近させた後に係合部材を回動することで、ランナーに係合部材を係合することが可能になる。これにより、係合部材をランナーの端部に係合する際の作業性を向上することが可能となる。
【0024】
前記第1パネルの側縁部における前記ランナーの端部には、前記第2パネルの側縁部に当接することにより前記第1パネルの前記面材と前記第2パネルの前記面材との間隔を規定する突起(突起513a)が設けられていることが好ましい。これにより、隣接するパネルの面材の最小間隔を規定することができ、パネル間の接続時に面材同士が接触することを抑止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下に、本発明を具体化した第1の実施の形態について図1および図2を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部斜視図である。図2(a)から(c)は本実施形態における結合される2枚の壁パネルの結合過程を示す要部断面図である。
【0026】
図1に示す壁パネル110は、スチールハウスの壁面に用いられるものである。壁パネル110は、枠体に面材が固定されて形成されている。本実施形態では、枠体は2本のリップ溝形鋼製のスタッド111、溝形鋼製の上枠ランナー112および下枠ランナー113から形成されている。
【0027】
枠体を構成するスタッド111は、上下方向に延びた状態で平行に配置されている。上枠ランナー112は2本のスタッド111の上端を被覆するように配置されている。また、下枠ランナー113も2本のスタッド111の下端を被覆するように配置されている。なお、一方のスタッド111については、その上端および下端の半分のみが上枠ランナー112および下枠ランナー113の端部で被覆されている。また、他方のスタッド111については、その上端および下端の全体が上枠ランナー112および下枠ランナー113の端部よりも内方において被覆されている。その結果、上枠ランナー112および下枠ランナー113の一方の端部からは、スタッド111の端部の半分が被覆されずに露出した状態となっている。また、上枠ランナー112および下枠ランナー113の他方の端部には、スタッド111が配置されていない状態となっている。この状態で、スタッド111と上枠ランナー112および下枠ランナー113とが固定されることにより、枠体が形成されている。
【0028】
この枠体の一方側には、面材としての構造用合板114がビスで固定されている。構造用合板114の縦方向の長さはスタッド111の長さと等しく、横方向の長さは上枠ランナー112および下枠ランナー113の長さと等しく設定されている。そして、構造用合板114の縦横それぞれの端部を、上枠ランナー112および下枠ランナー113の端部に位置を合わせるように枠体に固定されている。
【0029】
上述のように形成された壁パネル110は、その一方の側縁部においては、スタッドが上枠ランナー112、下枠ランナー113および構造用合板114の端部から突出した突出部117を形成している。このように、構造用合板114の端部からスタッド111が突出している壁パネル110の側縁部を、本明細書では便宜上、雄側側辺115と呼ぶこととする。なお、本実施形態においては、雄側側辺115に配置されたスタッド111は、リップ部111aが壁パネル110の内方側になるように配置されている。
【0030】
一方、壁パネル110の他の側縁部においては、スタッド111は配置されていない。このような壁パネル110の側縁部、本明細書では便宜上、雌側側辺116と呼ぶこととする。雌側側辺116における構造用合板114の端部には、係合部材としての結合クリップ118が上下方向に所定の間隔で3個設けられている。結合クリップ118は、雄側側辺115に配置されたスタッド111の被係合部としてのリップ部111aに係合することで、隣接する2枚の壁パネル110を仮結合するためのものである。なお、この結合クリップ118は、施工現場で壁パネル110に固定されるものではなく、壁パネル110を製造する工場であらかじめ設けられている。
【0031】
結合クリップ118は薄い金属板で形成されており、固定部118a、位置決め部118bおよび係合部118cからなる。固定部118aは構造用合板114の壁パネル110内面側と面接触してビス119で固定されている部位である。位置決め部118bは固定部118aの雌側側辺116端部側から構造用合板114と反対側に金属板を折り返して形成されている。この位置決め部118bは隣接する壁パネル110の雄側側辺115と結合される際に2枚の壁パネル110における構造用合板114間の距離を規定するための部位である。係合部118cは位置決め部118bの固定部118aと反対側端部を構造用合板114側に折り返して形成されている。この係合部118cは隣接する壁パネル110の雄側側辺115と結合される際に、雄側側辺115に配置されているスタッド111のリップ部111aと係合する部位である。
【0032】
結合クリップ118は、位置決め部118bと係合部118cとの間の折り返しから雌側側辺116端部までの距離が雄側側辺115の突出長さより小さくなるように、構造用合板114に固定されている。固定部118aと位置決め部118bとの間の角度は約100度に形成されており、位置決め部118bを形成する面は水平方向を向いている。また、位置決め部118bの長さはスタッド111のリップ部111aのリップ幅よりも長く設定されている。位置決め部118bと係合部118cとの間の角度は約20度に形成されており、係合部118cを形成する面も水平方向を向いている。また、係合部118cの長さは、位置決め部118bの長さと係合部118cの長さとの差がリップ部111aのリップ幅よりも大きくなるように設定されている。また、各部位間の角度が上記のように設定されている状態において、係合部118cの先端から構造用合板114までの距離がリップ部111aのリップ幅よりも若干短くなるように設定されている。
【0033】
2枚の壁パネル110は結合前に、雄側側辺115と雌側側辺116とを対向させた状態に配置される。そして、2枚の壁パネル110は、雄側側辺115に形成された突出部117の上端および下端が雌側側辺116の上枠ランナー112および下枠ランナー113で覆われ、突出部117の側面が雌側側辺116の構造用合板114端部で覆われるように結合される。この際、雌側側辺116に設けられた結合クリップ118が雄側側辺1
15のスタッド111のリップ部111aにかみ合うように係合する。
【0034】
この点につき、図2を参照しつつさらに詳述する。なお、説明の便宜上、図2の左側に示されている壁パネル110は、さらにその左側に配置されている壁パネル(図示せず)とすでに結合されているものとする。まず、図2(a)に示されているように、結合しようとする壁パネル110の雌側側辺116とその結合先の壁パネル110の雄側側辺115とを対向させて配置する。
【0035】
そして、図2(a)の矢印の向きに壁パネル110を接近させていく。所定の位置まで壁パネル110を接近させると、結合クリップ118の係合部118c先端が雄側側辺115におけるスタッド111のリップ部111aに接触する。その後、さらに壁パネル110を接近させると、図2(b)に示されているように、薄い金属板で形成されている結合クリップ118は、固定部118aと位置決め部118bとの間の角度および位置決め部118bと係合部118cとの間の角度が小さくなるように弾性変形する。
【0036】
固定部118aと位置決め部118bとの間の角度が小さくなるように結合クリップ118が弾性変形していくと、位置決め部118bと係合部118cとの間の折り曲げ部の位置は構造用合板114から離れる方向に移動する。その結果として、係合部118cの先端も構造用合板114から離れる方向に移動する。そして、係合部118cの先端がスタッド111のリップ部111aよりも構造用合板114から離れる方向に移動すると、係合部118cの先端とリップ部111aとの接触が解ける。それとともに、結合クリップ118を弾性変形させる力も解除され、結合クリップ118が元の状態に復元する。その結果、図2(c)に示されているように、スタッド111のリップ部111aが雌側側辺116の構造用合板114端部と結合クリップ118との間に挟まれるように配置されるとともに、リップ部111aの先端が係合部118cと位置決め部118bとの間に位置することとなる。この状態になると、2枚の壁パネル110を離す方向に力を加えても、結合クリップ118の係合部118cがリップ部111aに係合しているため、容易には2枚の壁パネル110は離れない。すなわち、2枚の壁パネル110が仮結合された状態となる。その後、雌側側辺116の構造用合板114端部と雄側側辺115のスタッド111とがビス119で固定され、2枚の壁パネル110が本固定される。
【0037】
以上詳述した本実施の形態は、以下の優れた効果を有する。本実施形態においては、雌側側辺116に設けられた結合クリップ118が雄側側辺115におけるスタッド111のリップ部111aにかみ合うように係合することで、2枚の壁パネル110の仮結合がされている。これにより、2枚の壁パネル110の仮結合を容易に行うことができ、施工効率を向上させることが可能となる。特に、本実施形態の結合クリップ118は薄い金属板で形成され、壁パネル110の枠体を構成する部材とは別の部材として設けられている。これにより、結合クリップ118をスタッド111のリップ部111aに係合させる際には、薄い金属板で形成された結合クリップ118が弾性変形するため、鋼製のスタッド111の変形は実際上極めて小さい。すなわち、壁パネル110の枠体を構成する部材をほとんど変形させることなく、2枚の壁パネル110の仮結合を行うことができる。その結果、壁パネル110の枠体を構成する部材の変形を抑制できるため、壁パネル110の強度を低下させる原因を低減することが可能となる。
【0038】
本実施形態では、結合クリップ118に位置決め部118bが設けられている。結合クリップ118がリップ部111aに係合した後、さらに2枚の壁パネル110を接近させる方向に力が加わると、位置決め部118bがリップ部111aに接触する。これにより、所定の位置を越えて2枚の壁パネル110の構造用合板114が接近することを抑制できる。
【0039】
本実施形態では、結合クリップ118に係合部118cが設けられている。これにより、2枚の壁パネル110が仮結合された後に、容易に2枚の壁パネル110が離れることを抑止できる。また、本実施形態では、結合クリップ118はスタッド111のリップ部111aに係合している。スタッド111の一部に係合部118を係合させることで、結合クリップ118の被係合部を特別に配設する必要がない。これにより、簡易に被係合部を構成することが可能になる。
【0040】
本実施形態では、雄側側辺115に形成された突出部117の上端および下端が雌側側辺116における上枠ランナー112および下枠ランナー113で覆われている。すなわち、雌側側辺116における上枠ランナー112および下枠ランナー113の両側面により雄側側辺115のスタッド111端部が挟み込まれた状態となっている。また、スタッド111のリップ部111aも結合クリップ118と構造用合板114とで挟み込まれた状態となっている。これにより、本固定前においても、壁パネル110が安定し、仮結合後に一方の壁パネル110が倒れることを抑止することも可能になる。
【0041】
本実施形態では、雌側側辺116の構造用合板114端部と雄側側辺115のスタッド111とがビス119で固定され、2枚の壁パネル110が本固定されている。隣接して結合されている壁パネル110間で、1本のスタッド111を共用することにより、使用するスタッド111の本数を低減することができ、コストを削減することが可能となる。
【0042】
[第2実施形態]
次に本発明を具体化した第2の実施形態について、図3および図4を用いて説明する。図3(a)から(c)は本実施形態における結合される2枚の壁パネルの結合過程を示す要部断面図である。また、図4は本実施形態における壁パネルの結合クリップの周辺を示す斜視図である。
【0043】
本実施形態においては、結合クリップ218の形状が第1実施形態と異なるが、他の構成は第1実施形態と同一である。本実施形態の結合クリップ218も薄い金属板で形成されており、固定部218aと位置決め部218bと係合部218cとから構成されている。そして固定部218aについては第1実施形態と同様に構造用合板214と面接触してビス219で固定されている。
【0044】
位置決め部218bは第1位置決め部218dと第2位置決め部218eとからなる。第1位置決め部218dは、固定部218aの雌側側辺216端部側から構造用合板214と反対側に構造用合板214と直交するように折り返され、第1位置決め部218dを形成する面が水平方向に向くように形成されている。第2位置決め部218eは、第1位置決め部218dから雌側側辺216端部側に折り返され、第2位置決め部218eを形成する面が構造用合板214に対し平行となるように形成されている。係合部218cは第2位置決め部218eの端部から構造用合板214側に折り返され、その先端部が第1位置決め部218dの近傍に位置するように形成されている。
【0045】
結合クリップ218は、第1位置決め部218dから雌側側辺116端部までの距離が雄側側辺115の突出長さより小さくになるように、構造用合板114に固定されている。上述ように、固定部218aと第1位置決め部218dとは直交しており、第1位置決め部218dと第2位置決め部218eとも直交している。また、第2位置決め部218eと係合部218cとの間の角度は10度程度に形成されている。第1位置決め部218dの構造用合板214と直交する方向の長さはスタッド211のリップ部211aのリップ幅よりも若干長く設定され、第2位置決め部218eの水平方向の長さはスタッド211のリップ部211a外側から溝部底面までの長さよりも若干長く設定されている。また、係合部218cの長さは、スタッド211のリップ部211a内側から溝部底面までの
長さよりも若干短く設定されている。
【0046】
この第2実施形態においても、図3(a)に示されているように、結合しようとする壁パネル210の雌側側辺216とその結合先の壁パネル210の雄側側辺115とを対向させて配置する。そして、図3(a)の矢印の向きに壁パネル210を接近させていく。所定の位置まで壁パネル210を接近させると、リップ部211aの先端が結合クリップ218の係合部218cに接触する。その後、さらに壁パネル210を接近させると、構造用合板214と反対の方向にリップ部211aの先端から係合部218cに力が加わる。そして、薄い金属板で形成されている結合クリップ218は、図3(b)に示されているように、第1位置決め部218dと第2位置決め部218eとの間の角度が大きくなり、第2位置決め部218eと係合部218cとの間の角度が小さくなるように弾性変形する。
【0047】
さらに、図3(b)の矢印の向きに壁パネル210を接近させていき、係合部218cの先端がスタッド211のリップ部211aよりも内方に移動すると、係合部218cとリップ部211aとの接触が解ける。それとともに、結合クリップ218を弾性変形させる力も解除され、結合クリップ218が元の状態に復元する。その結果、図2(c)に示されているように、スタッド211のリップ部211aが雌側側辺216の構造用合板214端部と第2位置決め部218eとの間に挟まれるように配置されるとともに、スタッド211のリップ部211aが係合部218cの先端と第1位置決め部218dとの間に位置することとなる。この状態になると、2枚の壁パネル210を離す方向に力を加えても、結合クリップ218の係合部218cがリップ部211aに係合しているため、容易には2枚の壁パネル210は離れない。すなわち、2枚の壁パネル210が仮結合された状態となる。その後、第1実施形態と同様、雌側側辺216の構造用合板214端部と雄側側辺215のスタッド211とがビスで固定され、2枚の壁パネル210が本固定される。
【0048】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の優れた効果を有する。すなわち、本実施形態でも2枚の壁パネル210を結合する際、雄側側辺215におけるスタッド211のリップ部211aに雌側側辺216の結合クリップ218が係合することで、2枚の壁パネル210の仮結合がされている。これにより、2枚の壁パネル210の仮結合を容易に行うことができ、施工効率を向上させることが可能となる。また、第1実施形態と同様、結合クリップ218は薄い金属板で形成され、壁パネル210の枠体を構成する部材とは別の部材として設けられている。これにより、壁パネル210の枠体を構成する部材をほとんど変形させることなく、2枚の壁パネル210の仮結合を行うことができる。その結果、壁パネル210の枠体を構成する部材の変形を抑制できるため、壁パネル210の強度を低下させる原因を低減することが可能となる。
【0049】
本実施形態では、結合クリップ218に第2位置決め部218eが設けられている。結合クリップ218がリップ部211aに係合した後、さらに2枚の壁パネル210を接近させる方向に力が加わると、第2位置決め部218eの係合部218c側先端がスタッド211の溝部底面に接触する。これにより、所定の位置を越えて2枚の壁パネル210の構造用合板214が接近することを抑制できる。
【0050】
本実施形態でも、結合クリップ218に係合部218cが設けられている。これにより、2枚の壁パネル210が仮結合された後に、容易に2枚の壁パネル210が離れることを抑止できる。
【0051】
本実施形態でも、雌側側辺216の上枠ランナー(図示せず)および下枠ランナー213の両側面により雄側側辺215のスタッド211端部が挟み込まれた状態となっている
。また、スタッド211のリップ部211aも結合クリップ218の第2位置決め部218eと構造用合板114とで挟み込まれた状態となっている。これにより、仮結合後に一方の壁パネル210が倒れることを抑止することも可能になる。
【0052】
[第3実施形態]
次に本発明を具体化した第3の実施形態について、図5および図6を用いて説明する。図5(a),(b)は本実施形態における2枚の壁パネルの結合前後の状態を示す要部断面図である。また、図6は本実施形態における壁パネルの結合クリップの周辺を示す斜視図である。
【0053】
本実施形態においても、結合クリップ318の形状が第1実施形態と異なるが、他の構成は第1実施形態と同一である。本実施形態の結合クリップ318も薄い金属板で形成されており、固定部318a、位置決め部318b、係合部318cおよび接続部318dから構成されている。そして固定部318aについては第1実施形態と同様に構造用合板314と面接触してビス319で固定されている。
【0054】
位置決め部318bは、固定部318aの雌側側辺316端部側から構造用合板314と反対側に構造用合板114と直交するように折り返され、位置決め部318bを形成する面が水平方向に向くように形成されている。接続部318dは固定部318aと係合部318cとを接続するためのものであり、固定部318aの位置決め部318bと反対側の端部を弓なりに180度曲げて形成されている。係合部318cは、接続部318dの端部を構造用合板114側に折り返して形成されており、その先端部が位置決め部318bの近傍に位置するように形成されている。
【0055】
上述ように、固定部318aと位置決め部318bとは直交している。接続部318dのうち固定部318aから180度曲げて形成された面は固定部318aと所定の間隔を隔てて平行に配置されている。また、接続部318dと係合部318cとの間の角度は30度程度に形成されている。
【0056】
結合クリップ318は、位置決め部318bから雌側側辺316端部までの距離が雄側側辺315の突出長さより小さくなるように、構造用合板314に固定されている。位置決め部318bの構造用合板114と直交する方向の長さはスタッド311のリップ部311aのリップ幅よりも短く設定されている。平行に配置されている固定部318aと接続部318dとの間の距離はスタッド311のリップ部311aのリップ幅よりも大きく設定されている。係合部318cの接続部318d側端部は固定部318aより雌側側辺316端部側に位置している。また、係合部318cの接続部318d側端部と固定部318aとの間の構造用合板314に沿った方向の距離は、係合部318cの水平方向の長さよりも大きくなるように設定されている。
【0057】
この第3実施形態においても、図5(a)に示されているように、結合しようとする壁パネル310の雌側側辺316とその結合先の壁パネル310の雄側側辺315とを対向させて配置する。そして、図5(a)の矢印の向きに壁パネル310を接近させていくと、リップ部311aの先端が結合クリップ318の係合部318cに接触する。その後、結合クリップ318の弾性変形を経て、図5(b)に示されているように、スタッド311のリップ部311aが雌側側辺316の構造用合板314端部と接続部318dとの間に挟まれるように配置される。それとともに、スタッド311のリップ部311aが係合部318cの先端と位置決め部318bとの間に位置することとなる。このようにして2枚の壁パネル310が仮結合される。
【0058】
本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様、2枚の壁パネル310の仮結
合を容易に行うことができ、施工効率を向上させることが可能となる。また、壁パネル310の枠体を構成する部材をほとんど変形させることなく、2枚の壁パネル310の仮結合を行うこともできる。
【0059】
本実施形態でも、結合クリップ318に位置決め部318bが設けられている。結合クリップ318がリップ部311aに係合した後、さらに2枚の壁パネル310を接近させる方向に力が加わると、位置決め部318bがリップ部111aに接触する。これにより、所定の位置を越えて2枚の壁パネル310の構造用合板314が接近することを抑制できる。
【0060】
本実施形態でも、結合クリップ318に係合部318cが設けられている。これにより、2枚の壁パネル310が仮結合された後に、容易に2枚の壁パネル310が離れることを抑止できる。
【0061】
本実施形態でも、雌側側辺316における上枠ランナー(図示せず)および下枠ランナー313の両側面により雄側側辺315のスタッド311端部が挟み込まれた状態となっている。また、スタッド311のリップ部311aも結合クリップ318と構造用合板314とで挟み込まれた状態となっている。これにより、仮結合後に一方の壁パネル210が倒れることを抑止することも可能になる。
【0062】
[第4実施形態]
次に本発明を具体化した第4の実施形態について、図7および図8を用いて説明する。図7(a),(b)は本実施形態における2枚の壁パネルの結合前後の状態を示す要部断面図である。また、図8(a),(b)は本実施形態における2枚の壁パネル110の結合前後の状態を示す斜視断面図である。
【0063】
本実施形態においては、壁パネル410の雄側側辺415に配置されているスタッド411は、リップ部411aを壁パネル410の内方に向けて配置されている。すなわち、本実施形態の雄側側辺415においては、上枠ランナー(図示せず)、下枠ランナー413および構造用合板414の端部からスタッド411の溝部底面側の約半分を突出させるようにスタッド411が配置されている。また、隣接する雌側側辺416側に突出したスタッド411の溝部底面には、後述する結合クリップ418の係合部418cを挿入するためのクリップ挿入孔420が形成されている。
【0064】
本実施形態においても、雌側側辺416には結合クリップ418が設けられている。本実施形態の結合クリップ418はL字型の薄い金属板を折り曲げて形成され、固定部418aと位置決め部418bと係合部418cとから構成されている。固定部418aは構造用合板414と面接触してビス419で固定されている部分である。固定部418aは、L字型の金属板における一の直線部を壁パネル410の横方向に延びるように構造用合板414に配置して形成されている。なお、L字型の金属板における他の直線部は前記一の直線部の雌側側辺416側で下方に延びるように配置されている。
【0065】
位置決め部418bは、L字型の金属板における前記一の直線部の中ほどにを構造用合板414と反対側に折り返して形成されている。そして、位置決め部418bを形成する面は、構造用合板414と直交し、かつ、水平方向に向くように形成されている。
【0066】
係合部418cは、第1係合部418dと第2係合部418eとからなる。第1係合部418dは、L字型の屈曲部における位置決め部418bの下部を、雌側側辺416端部側上方に90度折り返して形成されている。第2係合部418eは、第1係合部418dの端部を下方に90度折り返して形成されている。
【0067】
結合クリップ418は、位置決め部418bから雌側側辺416端部までの距離が雄側側辺415の突出長さより小さくなるように、構造用合板414に固定されている。固定部418aの長さは、結合クリップ418が構造用合板414に固定されるために必要な程度であれば任意に設定可能である。位置決め部418bの構造用合板414と直行する方向の長さは、位置決め部418bの構造用合板414側端部から第1係合部418dの水平方向の中心までの長さがスタッド411の幅の半分になるように設定されている。第1係合部418dの構造用合板414と平行な方向の長さは、スタッド411を形成する鋼板の板厚よりも若干大きく設定されている。第2係合部418eの上下方向の長さは、雄側側辺415のスタッド411に形成されているクリップ挿入孔420の上下方向の長さよりも若干小さく設定されている。
【0068】
クリップ挿入孔420は、雄側側辺415に配置されたスタッド411の溝部底面に長方形の孔として形成されている。クリップ挿入孔420の縦横の長さは、第2係合部418eの縦横の長さよりもそれぞれ若干大きく形成されている。このクリップ挿入孔420は、結合クリップ418と同じ間隔で同数設けられている。また、このクリップ挿入孔420は、2枚の壁パネル410が結合された状態において、第1係合部418dがそれに対応するクリップ挿入孔420の内部に位置するような高さにそれぞれ設けられている。
【0069】
本実施形態においても、図7(a)および図8(a)に示されているように、結合しようとする壁パネル410の雌側側辺416とその結合先の壁パネル410の雄側側辺415とを対向させて配置する。そして、雌側側辺416に設けられた結合クリップ418の第2係合部418eを、対応する雄側側辺415のクリップ挿入孔420に向けて接近させていく。壁パネル410を所定の位置まで接近させると、図7(b)に示されているように、第2係合部418eがクリップ挿入孔420に挿入されるとともに、位置決め部418bがスタッド411に当接する。この状態で、結合クリップ418が設けられている側の壁パネル410を下方に移動する。これにより、図8(b)に示されているように、スタッド411が雌側側辺416の構造用合板414端部と第1係合部418dとの間に挟まれるように配置される。それとともに、第2係合部418eがクリップ挿入孔420の下部と係合する。この状態で、2枚の壁パネル410が仮結合される。
【0070】
本実施形態においても、第1から第3実施形態と同様、2枚の壁パネル410の仮結合を容易に行うことができ、施工効率を向上させることが可能となる。また、壁パネル410の枠体を構成する部材をほとんど変形させることなく、2枚の壁パネル410の仮結合を行うこともできる。
【0071】
本実施形態でも、結合クリップ418に位置決め部418bが設けられている。結合クリップ418の第2係合部418eがクリップ挿入孔420に挿入された後、さらに2枚の壁パネル410を接近させる方向に力が加わると、位置決め部418bがスタッド411に接触する。これにより、所定の位置を越えて2枚の壁パネル410の構造用合板414が接近することを抑制できる。また、本実施形態では、孔という簡易な構成で被係合部を構成することが可能になる。
【0072】
本実施形態でも、結合クリップ418に第2係合部418eが設けられている。これにより、2枚の壁パネル410が仮結合された後に、容易に2枚の壁パネル410が離れることを抑止できる。また、2枚の壁パネル410の仮結合後には、スタッド411が雌側側辺416の構造用合板414端部と第1係合部418dとの間に挟まれるように配置されている。これにより、仮結合後に一方の壁パネル210が倒れることを抑止することも可能になる。
【0073】
[第5実施形態]
次に本発明を具体化した第5の実施形態について、図9から図12を用いて説明する。図9は本実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部斜視図であり、図10は、本実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部上面図である。また、図11は図9における下枠ランナー上方における2枚の壁パネルの要部断面図であり、図12は図9における下枠ランナー周辺における正面図である。
【0074】
本実施形態の壁パネル510の雄側側辺515においては、第4実施形態の壁パネル410と同様、スタッド511はリップ部511aを壁パネル510の内方に向けて配置されている。そして、上枠ランナー512および構造用合板514の端部からスタッド511の溝部底面側の約半分を突出させるようにスタッド511が配置されている。
【0075】
上枠ランナー512および下枠ランナー513の長さは、構造用合板514の横方向の長さと等しく設定されている。そして、上枠ランナー512の両端は構造用合板514の横方向の両端に位置を合わせて配置されている。一方、下枠ランナー513の端部は雄側側辺515側において構造用合板514の端部よりも所定の長さ(例えば100mm程度)突出させて配置されている。その結果、雌側側辺516においては、下枠ランナー513の端部は構造用合板514の端部よりも壁パネル510の内方側に配置されていることとなる。また、下枠ランナー513の雌側側辺516側端部には、位置決めのための突起513aが設けられている。
【0076】
本実施形態においては、雌側側辺516の下枠ランナー513端部には、係合部材としての下枠ランナージョイント部材521が設けられている。この下枠ランナージョイント部材521は、雄側側辺515において突出して配置されている下枠ランナー513と係合することにより、隣接する2枚の壁パネル510を仮結合するためのものである。
【0077】
下枠ランナージョイント部材521は、リップ溝形形状であって、その外幅が下枠ランナー513の内幅よりもわずかに小さく設定されている。そして、下枠ランナージョイント部材521の一方の端部は下枠ランナー513内の端部に配置されて、両側面から回動可能に下枠ランナー513に固定されている。下枠ランナージョイント部材521の長さは、下枠ランナージョイント部材521を回動させて下枠ランナーに沿って延びた状態でその端部が構造用合板514の端部から突出しない長さに設定されている。なお、下枠ランナージョイント部材521の下枠ランナー113と固定される側の端部は、回動時に下枠ランナー513と干渉しないように、角部が落とされた形状となっている。
【0078】
図10に示されているように、2枚の壁パネル510の結合時には、雄側側辺515のスタッド511の上部は雌側側辺516における上枠ランナー512の両側面で挟まれるようにして覆われている。また、図11および図12に示されているように、下枠ランナー513の雌側側辺516側端部に設けられた突起513aにより、2枚の壁パネル510における構造用合板514間の最小距離が規定されている。
【0079】
雄側側辺515のスタッド511の上部が雌側側辺516の上枠ランナー512で覆われた際、2枚の壁パネル510の下部においては、雄側側辺515側の突出した下枠ランナー513と雌側側辺516側の下枠ランナー513とが対向配置されている。この状態で、下枠ランナージョイント部材521を回動させて、雄側側辺515の下枠ランナー513に下枠ランナージョイント部材521を係合させる。これにより、図11および図12に示されているように、2枚の壁パネル510が一体化され、2枚の壁パネル110の仮結合がされた状態となる。この後、雌側側辺516の構造用合板514端部と雄側側辺515のスタッド511とがビスで固定され、2枚の壁パネル510が本固定される。
【0080】
本実施形態においては、雄側側辺515におけるスタッド511の上部を雌側側辺516における上枠ランナー512の端部で覆うとともに、下枠ランナージョイント部材521を雄側側辺515の下枠ランナー513に係合させることで、2枚の壁パネル510の仮結合がされる。これにより、2枚の壁パネル510の仮結合を容易に行うことができ、施工効率を向上させることが可能となる。また、2枚の壁パネル510の結合は、雌側側辺516の下枠ランナー513に別部材として設けられた下枠ランナージョイント部材521が雄側側辺515の下枠ランナー513に係合することによりなされる。これにより、壁パネル510の枠体を構成する部材をほとんど変形させることなく、2枚の壁パネル510の仮結合を行うことができる。その結果、壁パネル510の枠体を構成する部材の変形を抑制できるため、壁パネル510の強度を低下させる原因を低減することが可能となる。
【0081】
本実施形態でも、2枚の壁パネル510を仮結合する際、雄側側辺515のスタッド511上部に雌側側辺516の上枠ランナー512が被せられている。すなわち、雌側側辺516における上枠ランナー512の両側面により雄側側辺515のスタッド511が挟み込まれた状態となっている。これにより、本固定前においても、壁パネル510が安定し、壁パネル510が倒れることを抑止することも可能になる。
【0082】
本実施形態では、雌側側辺516側の下枠ランナー513端部に突起513aが設けられている。これにより、2枚の壁パネル510における構造用合板514間の最小距離が規定され、所定の位置を越えて2枚の壁パネル510の構造用合板514が接近することを抑制できる。
【0083】
また、本実施形態においては、下枠ランナージョイント部材521を雄側側辺515の下枠ランナー513に係合させて、2枚の壁パネル510を一体化している。これにより、下枠ランナージョイント部材521を雄側側辺515の下枠ランナー513に係合させた状態で、下枠ランナージョイント部材521の長さの範囲内で、隣接する壁パネル510の間隔を調整することが可能になる。この結果、結合後のパネル全体の長さ調整を容易に行うことが可能となり、建物長さの精度を向上することが可能となる。
【0084】
本実施形態では、下枠ランナージョイント部材521が回動可能に設けられている。これにより、隣接する2枚の壁パネル510を接近させた後に下枠ランナージョイント部材521を回動することで、雄側側辺515側において突出して配置された下枠ランナー513に下枠ランナージョイント部材521を係合することが可能になる。これにより、下枠ランナージョイント部材521を下枠ランナー513の端部に係合する際の作業性を向上することが可能となる
[第6実施形態]
次に本発明を具体化した第6の実施形態について、図13から図15を用いて説明する。図13は本実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部斜視図、図14は、本実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部正面図、図15は図13における下枠ランナー上方における2枚の壁パネルの要部断面図である。
【0085】
本実施形態の壁パネル610の雄側側辺615においては、構造用合板614の端部からスタッド611の約半分を突出させるようにスタッド611が配置されている。また、上枠ランナー612および下枠ランナー613の長さは、構造用合板614の横方向の長さと等しく設定されている。そして、上枠ランナー612および下枠ランナー613の端部は雄側側辺615側に所定の長さ(例えば100mm程度)突出させて配置されている。その結果、雌側側辺616においては、構造用合板614の端部が上枠ランナー612および下枠ランナー613の端部よりも突出させて配置されることとなる。
【0086】
雄側側辺615の上枠ランナー612および下枠ランナー613の各端部には、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材621がそれぞれ設けられている。これらは、第5実施形態において下枠ランナー513に設けられていた下枠ランナージョイント部材521と同様のものである。
【0087】
2枚の壁パネル610の結合時には、まず、雄側側辺615の上枠ランナー612および下枠ランナー613の側面に雌側側辺616の構造用合板614端部を当接させて配置する。次に、雄側側辺615の上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材621を図13の矢印の向きにそれぞれ回動させて雌側側辺616の上枠ランナー612および下枠ランナー613に係合させる。これにより、図14および図15に示されているように、2枚の壁パネル610が一体化され、2枚の壁パネル610の仮結合がされた状態となる。その後、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材621を雌側側辺616の上枠ランナー612および下枠ランナー613に係合させた状態で、2枚の壁パネル610の間隔を調整する。2枚の壁パネル610の間隔を適切に調整した後、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材621を雌側側辺616の上枠ランナー612および下枠ランナー613にそれぞれ固定する。
【0088】
本実施形態においても、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材621を雌側側辺616の上枠ランナー612および下枠ランナー613に係合させることで2枚の壁パネル610の仮結合がなされる。これにより、隣接する壁パネル610の仮結合を容易に行うことができ、施工効率を向上させることが可能となる。また、壁パネル610の枠体を構成する部材をほとんど変形させることなく、隣接する壁パネル610の仮結合を行うことができる。
【0089】
本実施形態でも、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材621を雌側側辺616における上枠ランナー612および下枠ランナー613に係合させた状態で、2枚の壁パネル610の間隔を調整することができる。これにより、施工の現場において、建物のパネル間隔の調整が容易となる。そして、結合後のパネル全体の長さ調整を容易に行うことが可能となり、建物長さの精度を向上することが可能となる。また、本実施形態では、隣接する2枚の壁パネル610の仮結合が、上枠ランナー612側および下枠ランナー613側の双方においてなされている。これにより、仮結合時の壁パネル610をより安定した状態とすることが可能となる。
【0090】
[他の実施形態]
上記各実施形態においては、1枚の壁パネルの端部に雄側側辺と雌側側辺とをそれぞれ設け、2枚の壁パネルの接続をした。しかし、1枚の壁パネルの両端部を雄側側辺としたものと、1枚の壁パネルの両端部を雌側側辺としたものを交互に配置して接続する構成としてもよい。
【0091】
上記第1から第4の実施形態において、結合クリップ118、218、318、418は薄い金属板で形成した。しかし、結合クリップ118、218、318、418を形成する材料は金属に限定されるものではなく、プラスチック等を用いてもよい。この場合でも、ある程度の強度があり、弾性変形が可能であれば、上記第1から第4の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
上記第2実施形態では、第2位置決め部218eの係合部118c側先端で壁パネル210の位置決めがされた。しかし、第2位置決め部218eの水平方向の長さをスタッド211のリップ部211a外側から溝部底面までの長さよりも短く設定し、第1位置決め部218dがスタッド211のリップ部211aに当接することで、位置決めをする構成
としてもよい。
【0093】
上記第4実施形態では、クリップ挿入孔420は結合クリップ418の第2係合部418eに対応した大きさの長方形状とした。しかし、クリップ挿入孔420はスタッド411に設けられている円形の配線孔等を利用する構成としてもよい。この場合でも、結合クリップ418の第2係合部418eの大きさを円形の配線孔等に挿入可能な大きさとすることで、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0094】
上記第5実施形態では、下枠ランナージョイント部材521は、雌側側辺516の下枠ランナー513端部に設けられた。また、上記第6実施形態では、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材621は、雄側側辺615の上枠ランナー612および下枠ランナー613の各端部に設けられた。しかし、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材521,621が設けられる側辺は上記に限定されるものではない。すなわち、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材521,621が設けられる側辺と隣接するパネルの側辺において、上枠ランナージョイント部材622および下枠ランナージョイント部材521,621と係合するランナーが側辺から突出している構成であれば、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0095】
上記各実施形態では、壁パネル110の結合構造について説明した。しかし、本発明のパネル結合構造は壁パネルに限定されるものではなく、床等のパネルの結合構造にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第1実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部斜視図。
【図2】第1実施形態における結合される2枚の壁パネルの結合過程を示す要部断面図。
【図3】第2実施形態における結合される2枚の壁パネルの結合過程を示す要部断面図。
【図4】第2実施形態における壁パネルの結合クリップの周辺を示す斜視図。
【図5】第3実施形態における2枚の壁パネルの結合前後の状態を示す要部断面図。
【図6】第3実施形態における壁パネルの結合クリップの周辺を示す斜視図。
【図7】第4実施形態における2枚の壁パネルの結合前後の状態を示す要部断面図。
【図8】第4実施形態における2枚の壁パネルの結合前後の状態を示す斜視断面図。
【図9】第5実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部斜視図。
【図10】第5実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部上面図。
【図11】図9における下枠ランナー上方における2枚の壁パネルの要部断面図。
【図12】図9における下枠ランナー周辺における正面図。
【図13】第6実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部斜視図。
【図14】第6実施形態における結合される2枚の壁パネルの要部正面図。
【図15】図13における下枠ランナー上方における2枚の壁パネルの要部断面図。
【図16】従来における結合される2枚の壁パネルの要部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0097】
110…壁パネル、111…スタッド、112…上枠ランナー、113…下枠ランナー、114…構造用合板、115…雄側側辺、116…雌側側辺、117…突出部、118…結合クリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に面材を取り付けて形成された第1パネルと第2パネルとの隣接する側縁部同士を結合する建物におけるパネルの結合構造であって、
前記第1パネルにおける前記第2パネルと隣接する側縁部には、前記枠体とは別部材の係合部材が設けられており、
前記第2パネルにおける前記第1パネルと隣接する側縁部には、前記係合部材が係合する被係合部が設けられており、
前記係合部材と前記被係合部とが係合することにより前記第1パネルと前記第2パネルとが結合されていることを特徴とするパネルの結合構造。
【請求項2】
前記係合部材は前記第1パネルにおける側縁部の面材に設けられており、
前記第2パネルにおける側縁部では、前記枠体の枠材が前記第2パネルの側縁部に沿って前記第2パネルの面材より前記第1パネル側に突出して配置されるとともに、前記被係合部は前記突出した枠材の前記第1パネル側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のパネルの結合構造。
【請求項3】
前記係合部材は弾性変形可能であり、当該係合部材は弾性変形を経て前記被係合部に係合することを特徴とする請求項1に記載のパネルの結合構造。
【請求項4】
前記第2パネルの突出した枠材はリップ溝形形状であり、そのリップ部は前記第1パネル側に向けて配置されており、当該リップ部により被係合部が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のパネルの結合構造。
【請求項5】
前記被係合部は前記第2パネルの突出した枠材に設けられた孔により形成され、前記係合部材は前記孔に挿入されて係合していることを特徴とする請求項2に記載のパネルの結合構造。
【請求項6】
前記係合部材が前記第2パネルの枠材の所定位置に当接することにより、前記第1パネルの面材と前記第2パネルの面材との間隔が規定されることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載のパネルの結合構造。
【請求項7】
前記係合部材が前記第2パネルの枠材のリップ部における前記第1パネル側の面に当接することにより、前記第1パネルの面材と前記第2パネルの面材との間隔が規定されることを特徴とする請求項4に記載のパネルの結合構造。
【請求項8】
前記係合部材が前記第2パネルの枠材の溝部底面に当接することにより、前記第1パネルの前記と前記第2パネルの面材との間隔が規定されることを特徴とする請求項4に記載のパネルの結合構造。
【請求項9】
前記第1パネルの面材の端部と前記係合部材との間に、前記第2パネルの突出した枠材が配置されるように、前記係合部材が前記被係合部に係合していることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれかに記載のパネルの結合構造。
【請求項10】
前記第1パネルにおける側縁部の面材の端部が、前記第2パネルの突出した枠材に固定されていることを特徴とする請求項2から請求項9のいずれかに記載のパネルの結合構造。
【請求項11】
前記枠体はスタッドと前記スタッドの上下両端部を被覆する溝形形状のランナーとからなり、
前記係合部材は、前記第1パネルのランナーの端部から前記第2パネルへ向けて突出するように当該第1パネルのランナーに設けられており、
前記被係合部は、前記第2パネルにおけるランナーの前記第1パネル側の端部により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパネルの結合構造。
【請求項12】
前記係合部材および前記係合部は前記第1パネルおよび第2パネルにおける一方のランナーに設けられており、
前記第2パネルの側縁部では、前記第2パネルの他方ランナーおよび前記面材より前記スタッドが第1パネル側に突出して配置されており、
前記第1パネルの側縁部における他方のランナーの端部は、前記第2パネルの突出して配置されたスタッドの端部を被覆していることを特徴とする請求項11に記載のパネルの結合構造。
【請求項13】
前記第1パネルのランナーの端部から前記第2パネルへ向けて突出する係合部材は、前記第1パネルの両ランナーに設けられており、
前記第2パネルにおける両ランナーの前記第1パネル側の端部に前記被係合部が形成されていることを特徴とする請求項11に記載のパネルの結合構造。
【請求項14】
前記係合部材は、前記第1パネルのランナーの端部に回動可能に設けられていることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載のパネルの結合構造。
【請求項15】
前記第1パネルの側縁部におけるランナーの端部には、前記第2パネルの側縁部に当接することにより前記第1パネルの面材と前記第2パネルの面材との間隔を規定する突起が設けられていることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれかに記載のパネルの結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−211453(P2007−211453A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31103(P2006−31103)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】