説明

建物及びその施工方法

【課題】屋内側から外壁パネルを設置するに際して取り回しが容易な建物及び施工方法を提供する。
【解決手段】建物10には、外周下階天井梁16aに沿って延びている外周案内レール部55と、屋内外方向に延びている屋内案内レール部56とが設けられている。外周案内レール部55は複数の外周案内レール57から構成され、屋内案内レール部56は複数の屋内案内レール58から構成されている。下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30の上端部には、外周案内レール部55及び屋内案内レール部56に対して吊り下げ可能な吊り具60が取り付けられている。したがって、屋内において下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30の取り回しを容易とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体に外壁パネルが固定されてなる建物、及びその建物を構築するのに好適な施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸組構造の建物では外壁パネルを取り付け施工する場合、外壁パネルをクレーンによって吊り下げて、屋外側より所定の取り付け位置へ移動させる。そして、建物の周囲には足場を組んでおき、その足場から作業者が外壁パネルを所定の取り付け位置に誘導し、屋外側から外壁パネルを釘等によって固定するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、施工場所の近くまでクレーンが入り込めない環境では、外壁パネルをクレーンにより吊り下げて移動させるのは不可能である。また、隣棟間隔の小さい狭小敷地などでは、仮に施工場所の近くまでクレーンが入り込めたとしても外壁パネルを吊り下げ移動している際に、外壁パネルを隣棟に衝突させるおそれもある。さらには、建物の周囲に足場を設置する空間がないため、屋外側から外壁パネルを誘導したり、外壁パネルを固定したりという作業をすることができない。
【0004】
そこで、上記問題点を解決しようとするものとして、外壁パネルを建物の屋内側から取り付けるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−238609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した屋内側から外壁パネルを取り付ける技術については、外壁パネルが重量物であるため、屋内における取り回しが非常に大変である。
【0006】
本発明は、屋内側から外壁パネルを設置するに際して取り回しが容易な建物及び施工方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物は、外壁パネルが建物外周部に設置されてなる建物であって、前記外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを前記建物外周部に沿って案内する外周案内レールを備え、前記外周案内レールには、前記外壁パネルを屋内側から当該外周案内レールに誘導する誘導部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この第1の発明によれば、外壁パネルを屋内側から誘導部を通じて外周案内レールに誘導することにより、外壁パネルを外周案内レールに対して吊り下げ支持することができ、その後、外壁パネルをその吊り下げ状態で建物外周部に沿って案内することができる。
【0009】
これにより、建物の屋内側から重量物である外壁パネルを所定の位置に設置するに際して、取り回しを容易とすることができる。したがって、外壁パネルをクレーンで吊り下げて所定の位置に移動させるのが困難な隣棟間隔の小さい狭小敷地などにおいても、外壁パネルを容易に所定位置に設置することができるようになる。
【0010】
第2の発明の建物は、前記外壁パネルには、前記外周案内レールに吊り下げられる吊り具が備えられており、前記吊り具は、前記外周案内レールに対する前記外壁パネルの高さ位置を調整する調整手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
本構成によれば、外壁パネルに備えられた吊り具を外周案内レールに吊り下げることにより外壁パネルを吊り下げることができ、また、その吊り下げ状態にある外壁パネルの外周案内レールに対する高さ位置を当該吊り具により調整することがきる。これにより、外壁パネルの下端が床面に接触しないように、外壁パネルを適切な高さ位置で吊り下げることができる。
【0012】
第3の発明の建物は、前記外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを屋内から前記建物外周部へ案内する屋内案内レールを備え、前記屋内案内レールは、前記誘導部を介して前記外周案内レールに前記外壁パネルを誘導する位置に設置されていることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、外壁パネルをまず屋内案内レールに吊り下げて、その吊り下げ状態で屋内から建物外周部付近へ案内することができるとともに、外壁パネルを外周案内レールに誘導部を介して誘導することができる。これにより、外壁パネルを建物の屋内側から所定の取り付け位置に移動させる作業が、より一層容易となる。そのため、屋内側から外壁パネルを施工する際の作業負担をより一層軽減させることができる。
【0014】
第4の発明の建物は、少なくとも前記屋内案内レールの下面位置は、天井板が取り付けられる天井下地材の下面位置と同一高さ位置に設置されており、前記屋内案内レールが複数の天井下地材の一部として利用されていることを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、少なくとも屋内案内レールの下面位置は、天井板が取り付けられる天井下地材の下面位置と同一高さであるため、屋内案内レールは当該天井下地材とともに天井板が取り付けられる天井下地材として利用することができる。したがって、少なくとも屋内案内レール(好ましくは外周案内レールも含めた各案内レール)は外壁パネルの取り付け施工に利用されるだけではなく取り付け施工後は建物の必要部材の一部として利用されるため、案内レールの有効利用を図ることができる。また、案内レールを天井下地材として利用することによって、外壁パネルの取り付け施工後に案内レールを建物から取り外す必要がなくなるため、施工の際の作業量をその分抑制することができる利点もある。
【0016】
第5の発明の建物は、前記外周案内レール及び屋内案内レールは、天井梁に固定されていることを特徴とする。
【0017】
外周案内レール及び屋内案内レールを建物躯体の一部である天井梁に固定することにより、外周案内レール及び屋内案内レールを撓みにくくすることができる。これにより、重量物である外壁パネルが吊り下げられても外周案内レール及び屋内案内レールの下方への撓みは抑制されるため、外壁パネルの吊り下げ移動を円滑に行うことができるし、安定した状態で外壁パネルを建物外周部に設置することができる。
【0018】
第6の発明の建物は、前記外周案内レールには前記屋内案内レールによる外壁パネルの吊り下げ位置よりも下方位置にて当該外壁パネルを吊り下げる部分を備え、その部分に配置された外壁パネルにより、当該外壁パネルの下方にある止水材を弾力に抗して圧縮状態にされた状態で当該外壁パネルが建物外周部にて固定されていることを特徴とする。
【0019】
外周案内レールによる外壁パネルの吊り下げ位置は屋内案内レールによる外壁パネルの吊り下げ位置より低いため、外壁パネルを屋内案内レールから外周案内レールに移動させることにより外壁パネルをその下方にある止水材の上に落下させ、止水材を圧縮することができる。また、この落下により外壁パネルは所定の固定位置に配置されるため、外壁パネルの配置と同時に外壁パネル下端部の止水を行うことができる。したがって、通常は外壁パネルの施工の際に屋外側から行う止水作業を省略することができるため、施工時における作業量の軽減を期待できるばかりか、屋外側からの作業が不可能な状況であっても上記部分の止水を行うことができる。
【0020】
第7の発明の施工方法は、外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを建物外周部に沿って案内し、さらに外壁パネルを屋内側から誘導する誘導部が設けられている外周案内レールを設置するレール設置工程と、前記誘導部を介して外壁パネルを前記外周案内レールに吊り下げ、当該外周案内レールに沿って外壁パネルを取り付け位置まで移動させる吊り下げ移動工程とを備えたことを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、外壁パネルを吊り下げ支持するとともに外壁パネルを建物外周部に沿って案内し、さらに外壁パネルを屋内側から誘導する誘導部が設けられている外周案内レールを設置し、その後、この外周案内レールに外壁パネルを屋内側から誘導部を介して吊り下げ、外周案内レールに沿って取り付け位置まで移動させることができる。これにより、建物の屋内側から重量物である外壁パネルを所定の取り付け位置に設置するに際して、取り回しを容易とすることができる。したがって、隣棟間隔の小さい狭小敷地などにおいても外壁パネルを容易に所定位置に設置することができるようになる。
【0022】
第8の発明の施工方法は、前記レール設置工程は、前記外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを屋内から前記建物外周部へ案内する屋内案内レールを設置する工程を含み、前記吊り下げ移動工程は、前記屋内案内レールに外壁パネルを吊り下げた後に、当該屋内案内レールに沿って外壁パネルを誘導部まで移動させ、前記誘導部に外壁パネルを受け渡す工程を含むことを特徴とする。
【0023】
本構成によれば、外壁パネルを吊り下げ支持するとともに外壁パネルを屋内から建物外周部へ案内する屋内案内レールを設置し、この屋内案内レールに外壁パネルを吊り下げ、その吊り下げ状態で外壁パネルを誘導部まで移動させ、この誘導部に外壁パネルを受け渡すことができる。そのため、屋内側から外壁パネルを施工する際の作業負担をより一層軽減させることができる。
【0024】
第9の発明の施工方法は、前記吊り下げ移動工程の後に行われ、前記屋内案内レールの下面に天井材を取り付ける天井取り付け工程をさらに備えることを特徴とする。
【0025】
本構成によれば、外壁パネルを屋内案内レール及び外周案内レールに吊り下げて所定の取り付け位置に移動させた後、屋内案内レールの下面に天井材を取り付けることができる。これにより、屋内案内レールは外壁パネルの取り付け施工に利用された後は、天井材の下地材として利用されるため、有効利用を図ることができる。また、本構成にすれば、外壁パネルの取り付け施工後に屋内案内レールを建物から取り外す必要がなくなるため、施工時における作業量の低減を期待できる。
【0026】
第10の発明の施工方法は、前記吊り下げ移動工程の外壁パネルの移動は、前記吊り下げ状態にある外壁パネルの下端を、当該外壁パネルの支持位置を高さ調整する機能を有した搬送台車によって支持することにより行われることを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、外壁パネルを屋内案内レール又は外周案内レールに対して吊り下げて移動させる際には、吊り下げ状態にある外壁パネルの下端を搬送台車により支持することができる。外壁パネルを屋内案内レール又は外周案内レールに対する吊り下げのみにより支持する構成とすると、外壁パネルの重量によって屋内案内レール又は外周案内レールが下側に撓み、外壁パネルの下端が床面に接触するおそれがある。この点、本構成のようにすれば、外壁パネルの下端は搬送台車により支持されるため、搬送台車側すなわち床側にもパネル重量の一部を負担させることができ、そのようなおそれがなくなる。また、本構成によれば搬送台車により支持されている外壁パネルの支持位置を高さ調整することができる。これにより、搬送台車による適切なパネル下端支持を実現することができるし、案内レールと床面との間隔の変化にも追従することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は一実施形態の建物の一部を示す側面図、図2は図1の要部側面図、図3は屋内案内レールの斜視図、図4は外周案内レールの斜視図、図5は屋内案内レール及び外周案内レールの配置を示す底面図、図6は外壁パネルの吊り下げ構成を示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の建物10は、基礎11上に形成された下階部分としての一階部分12と、一階部分12の上方に連続して形成された上階部分としての二階部分13と、二階部分の上方に設けられた屋根14とを備えている。建物10は、横架材としての下階天井梁(上階床梁)16や上階天井梁17等の梁と、下階柱や上階柱等の柱とを含む軽量鉄骨を組み立ててなる軸組構造(建物躯体)を有する。そして、この軸組構造の外周には、下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30を含む外壁パネルが複数設置されており、下階外壁パネル20の一部にはシャッタ装置25が備えられている。また、一階部分12においては、基礎11上に床仕上げ材21や床面下地材22からなる床材23が敷設され、下階天井梁16等によって天井材24が支持されている。一方、二階部分13においては、下階天井梁16上に設置された床根太19の上方に床材23が敷設され、上階天井梁17等によって天井材24が支持されている。
【0030】
下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30は、いずれも建物10の屋外側に露出する外壁板27とその背面側(屋内側)に固定された壁下地フレーム28とから構成されている。外壁板27は、建物10の外観を決定付けるものであって、意匠性を高めるべく表面に凹凸模様等が施され、かつ耐候性に優れた素材で形成されている。
【0031】
壁下地フレーム28は、例えばスチール等の高剛性金属からなる。壁下地フレーム28は、下階外壁パネル20の幅方向両端部及びそれらの中間において上下方向に延びる縦フレーム部28aと、各縦フレーム部28aの上端部に連結されるとともに幅方向に延びる上フレーム部28bと、各縦フレーム部28aの下端部に連結されるとともに幅方向に延びる下フレーム部28cとから構成されている。そして、壁下地フレーム28は、その剛性の高さによって外壁パネル20,30自身の強度を高めるとともに、建物10の骨組の一部を構成する天井梁16,17や基礎11に対し所定の金具を介して連結されている。
【0032】
次に、下階外壁パネル20の取り付け構造の詳細について、図1及び図2に基づいて説明する。
【0033】
図2に示すように、基礎11の天端にはL型のパネル下部固定板29がボルトによって固定されており、そのパネル下部固定板29の屋外側端部である鉛直面には外壁面を形成する下階外壁下パネル31が取り付けられている。
【0034】
下階外壁下パネル31は、建物10の屋外側に露出する下階下部外壁板32と、その背面側(屋内側)に固定された下階下部フレーム33とから構成されている。下階下部外壁板32は、外壁板27と同じ素材で形成されており、外観上の統一が図られている。また、下階下部フレーム33は、例えばスチール等の高剛性金属からなる。そして、下階下部フレーム33は縦断面が略コ字状であり、その開口部を下方に向けながら下階下部外壁板32の幅方向に延びている。
【0035】
下階外壁パネル20は、図1及び図2に示すように、この下階外壁下パネル31の上方に設置されている。そして、下階外壁パネル20と下階外壁下パネル31との間には、弾性を有する止水材34が圧縮された状態で介在されている。より詳しくは、下階外壁パネル20の下フレーム部28cと、下階外壁下パネル31の下階下部フレーム33との間に、止水材34は介在されている。下階外壁パネル20の下フレーム部28cは、下階下部フレーム33の上端面に当接された下側水平板部63と、その屋外側端部が上方に折り曲げられ、さらにその上端部において屋外側に折り曲げられて外壁板27裏面まで延びる上側水平板部64とを有している。そのため、上側水平板部64と下階下部フレーム33の上端面との間には、所定の隙間が形成されている。そして、これらの間の間隙距離は止水材34の厚みより小さく設定されており、この隙間に止水材34は圧縮状態で介在されている。これにより、下階外壁パネル20と下階外壁下パネル31との間に形成される目地からの雨水等の浸入を防止している。
【0036】
また、下階下部フレーム33上端部の水平部下面側には固定手段を構成する下側ウェルドナット36が固定されている。そして、下階外壁パネル20の下フレーム部28cの下側水平板部63と下階下部フレーム33上端の水平部とを介して、上側から固定手段を構成するボルト35を下側ウェルドナット36に螺合させることにより下階外壁パネル20の下端部は固定されている。
【0037】
下階外壁パネル20の裏側上部に設けられた上フレーム部28bの屋内側鉛直面には、パネル上部固定板37が取り付けられている。パネル上部固定板37は、上フレーム部28bに取り付けられる取り付け部としての鉛直板部37aと、その鉛直板部37aの上端が屋内側に折り曲げられて形成された水平板部37bとを有する略L字状の板材であり、下階外壁パネル20の幅方向に沿って延びている。この鉛直板部37aがボルト38及びナット39によって、上フレーム部28bに締結されている。なお、鉛直板部37aに形成されたボルト38が挿通される挿通孔40(図6参照)は上下方向に延びる縦長孔であり、これによりパネル上部固定板37は縦長孔により制限される範囲内で上下方向に位置変更できるようになっている。
【0038】
パネル上部固定板37の上方には、下階天井梁16のうち建物10の外周部に位置する外周下階天井梁16a(なお、建物10の外周部に位置する上階天井梁17は、以下、外周上階天井梁17aという)が設けられている。パネル上部固定板37と外周下階天井梁16aとの間には外周案内レール部55(その詳細については後述する)が外周下階天井梁16aの長手方向に沿って延びており、パネル上部固定板37の上端及び外周下階天井梁16aの下端はそれぞれ外周案内レール部55に当接されている。また、外周下階天井梁16a下端部の水平部上面側には、固定手段を構成する梁下側ウェルドナット41が固定されている。そして、パネル上部固定板37の水平板部37bの下側より水平板部37b、外周案内レール部55及び外周下階天井梁16a下端部の水平部を貫通して、固定手段を構成するボルト43を梁下側ウェルドナット41に螺合させることによりパネル上部固定板37の水平板部37bは外周下階天井梁16aに固定されている。これにより、下階外壁パネル20の上端部は固定されている。
【0039】
下階外壁パネル20の上方には、上階外壁下パネル44が設置されている。上階外壁下パネル44は、建物10の屋外側に露出する上階下部外壁板45と、その背面側(屋内側)に固定された上階下部フレーム46とから構成されている。上階下部外壁板45は、外壁板27と同じ素材で形成されており、外観上の統一が図られている。上階下部フレーム46は、例えばスチール等の高剛性金属からなる。上階下部フレーム46は、上階下部外壁板45の上下両端部において幅方向に延びる縦断面コ字状の横フレーム部46aを有しており、横フレーム部46aはその開口部を内側に向けた状態で上階下部外壁板45に取り付けられている。
【0040】
上側の横フレーム部46aの屋内側端面には、下パネル固定板47が取り付けられている。下パネル固定板47は、上側の横フレーム部46aに取り付けられる取り付け部としての鉛直板部47aと、その鉛直板部47aの上端が屋内側に折り曲げられて形成された水平板部47bとを有する略L字状の板材であり、上階外壁下パネル44の幅方向に沿って延びている。そして、下パネル固定板47の鉛直板部47aがボルト等の固定手段によって、上階外壁下パネル44の上側の横フレーム部46aに固定されている。
【0041】
上階外壁下パネル44は、この下パネル固定板47の水平板部47bを外周下階天井梁16a上面に取り付けることにより、固定されている。外周下階天井梁16a上端部の水平部下面側には、固定手段を構成する梁上側ウェルドナット48が固定されている。この梁上側ウェルドナット48にボルト49を、下パネル固定板47の水平板部47bの上側より下パネル固定板47の水平板部47bと外周下階天井梁16a上端の水平部とを貫通して螺合させることにより、下パネル固定板47の水平板部47bは外周下階天井梁16aに固定されている。
【0042】
また、本実施形態では、上階外壁下パネル44の上階下部外壁板45と下階外壁パネル20の外壁板27との間に形成された所定の隙間から雨水等が侵入するのを防止するために、既存の止水構造により止水を図っている。したがって、止水構造に関しての詳細な説明は省略する。本実施形態では、化粧胴差としての止水カバー51が上階下部外壁板45と外壁板27とを跨ぐように取り付けられており、止水カバー51の裏面に貼り付けられたシール材が止水カバー51と外壁板27又は上階下部外壁板45との間で圧縮されることにより、雨水等が侵入するのを防止している。
【0043】
次に、上階外壁パネル30の取り付け構造の詳細について説明する。上階外壁パネル30の取り付け構造は、基本的には、下階外壁パネル20の取り付け構造と同一であるので、同一である部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0044】
上階外壁パネル30は、図1及び図2に示すように、上階外壁下パネル44の上方に設置されている。上階外壁パネル30の下端部付近の構成は下階外壁パネル20の下端部付近の構成と略同様であり、下階外壁パネル20の下方には下階外壁下パネル31が設置されていたのに対し、上階外壁パネル30の下方には上階外壁下パネル44が設置されているだけの相違である。したがって、上階外壁パネル30と上階外壁下パネル44との間にも止水材34が圧縮された状態で介在されている。また、上階外壁下パネル44の上側の横フレーム部46a上端の水平部下面側には、下側ウェルドナット36が固定されており、上階外壁パネル30の下フレーム部28cの上側から、下フレーム部28cと横フレーム部46aとを貫通して、下側ウェルドナット36にボルト35を螺合させることにより上階外壁パネル30の下端部は固定されている。
【0045】
一方、上階外壁パネル30の上端部付近の構成も下階外壁パネル20の上端部付近の構成と基本的には同様であり、下階外壁パネル20の上端部は外周下階天井梁16aに固定されていたのに対し、上階外壁パネル30の上端部は外周上階天井梁17aに固定されている点が相違するだけである。
【0046】
また、上階外壁パネル30の上方には、屋根14下において外壁面を形成する上階外壁上パネル52が設置されている。上階外壁上パネル52は、上階外壁下パネル44と基本的には同様の構成であり、その取り付け構成についても上階外壁下パネル44の取り付け構成と同様である。ただ、上階外壁下パネル44は外周下階天井梁16aに固定されているのに対し、上階外壁上パネル52は外周上階天井梁17aに固定されている点が相違するだけである。なお、上階外壁パネル30と上階外壁上パネル52との間に形成される目地には、既存の止水処理が施されている。
【0047】
次に、下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30を吊り下げた状態で案内するレール部50についての詳細を図3乃至図5に基づいて説明する。
【0048】
一階部分12及び二階部分13における天井部には、外壁パネル20、30を吊り下げて案内するためのレール部50が設けられている。外壁パネル20、30は、詳しくは、外壁パネル20、30の上端部に取り付けられた吊り具60をレール部50に対して吊り下げることにより、吊り下げられている。そして、外壁パネル20、30は、その吊り下げ状態のまま、吊り具60をレール部50に沿ってスライドさせながら移動する。
【0049】
レール部50は、図5に示すように、外周天井梁16a、17aに沿って延びる外周案内レール部55と、屋内外方向に沿って延びる一対の屋内案内レール部56とからなる。外周案内レール部55は、金属製等の板材からなる複数の外周案内レール57から構成されている。外周案内レール57は、外周天井梁16a、17aに沿って延びる長尺状のレールである。そして、この外周案内レール57が複数、互いに当接又は近接した位置関係で直列に連なった状態で、各外周案内レール57はボルト溶接等により外周天井梁16a、17aの下面に固定されている。これにより、外周案内レール部55は構成されている。
【0050】
一方、屋内案内レール部56は、金属製等の板材からなる複数の屋内案内レール58から構成されている。屋内案内レール58は、屋内外方向に延びている長尺状のレールである。そして、この屋内案内レール58が複数、互いに当接又は近接した位置関係で直列に連なった状態で、各屋内案内レール58は屋内外方向に延びる天井梁16、17である屋内下階天井梁16b、屋内上階天井梁17bの下面にボルトにより固定されている。これにより、屋内案内レール部56は構成されている。
【0051】
本実施形態では、屋内案内レール部56は所定の間隔をおいて一対設けられており、各屋内案内レール部56の屋外側端部はそれぞれ外周案内レール部55と近接又は当接された位置関係にある。
【0052】
次に、外周案内レール57及び屋内案内レール58の詳細について、図3及び図4に基づいて説明する。
【0053】
外周案内レール57は、図4に示すように、その下端部分である支持水平部57aと、その支持水平部57aの屋内側端部が上方に折り曲げられて形成された段差起立部57bと、その段差起立部57bの上端が屋内側に折り曲げられて形成された中間水平部57cと、中間水平部57cの屋内側端部が上方に折り曲げられて形成された屋内側起立板部57dと、屋内側起立板部57dの上端が屋外側に折り曲げられて形成された上端水平部57eと、上端水平部57eの屋外側端部が下方に折り曲げられて支持水平部57aの屋外側端部まで延びる屋外側起立板部57fとを有する。
【0054】
屋内側起立板部57dには、その長手方向の略中央部において、吊り具60を屋内案内レール部56から外周案内レール部55へ誘導するための開口部である誘導口59が形成されている。誘導口59は横長の長方形状の開口部であり、その上端及び下端はそれぞれ上端水平部57eの下面及び中間水平部57cの上面となっている。また、支持水平部57aには、その短手方向の略中央部においてスリットが、外周案内レール57の長手方向に沿ってかつ長手方向の全域に渡って、所定のスリット幅で形成されている。以下、このスリットを長手スリットS1という。そして、長手スリットS1の長手方向の略中央部において長手スリットS1から分岐された別のスリットが屋内側に向かって延びており、このスリットを以下、短手スリットS2という。短手スリットS2は支持水平部57a、段差起立部57b及び中間水平部57cに連続して形成されており、その屋内側端部において誘導口59と一体となっている。より詳しくは、短手スリットS2は、誘導口59の下端中央で誘導口59とつながっている。なお、短手スリットS2のスリット幅は、長手スリットS1のスリット幅と同一となっている。
【0055】
屋内案内レール58は、その下端部分である支持水平部58aと、その支持水平部58aの短手方向における両端部がそれぞれ上方に折り曲げられて形成された起立板部58bと、これらの起立板部58bの上端部がそれぞれ同じ高さ位置で内側に折り曲げられることにより一体となって形成されている上端水平部58cとを有する。支持水平部58aには、その短手方向の略中央部においてスリットS3が、屋内案内レール58の長手方向に沿ってかつ長手方向の全域に渡って、所定の幅で形成されている。このスリットS3のスリット幅は、長手スリットS1及び短手スリットS2のスリット幅と同一となっている。
【0056】
一対の屋内案内レール部56は、誘導口59が設けられている位置にそれぞれ配設されており、本実施形態では隣接する一対の外周案内レール57の誘導口59に対してそれぞれ配設されている。より詳しくは、各屋内案内レール部56は、屋内案内レール58のスリットS3が外周案内レール57の短手スリットS2と直列に連続する位置に配設されている。
【0057】
下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30の上端部背面側には、案内手段を構成する一対の吊り具60が取り付けられている。本実施形態では、吊り具60として吊りボルトを使用しているが、吊りボルト以外のものを使用してもよい。外壁パネル20、30の上フレーム部28bの上端水平部には一対の吊り具用ウェルドナット61が下面側に固定されている。そして、吊り具60を吊り具用ウェルドナット61に螺合させることにより、吊り具60は外壁パネル20、30に取り付けられている。吊り具60は、このように吊り具用ウェルドナット61に対する螺合により取り付けられているため、吊り具60の締め込み量を増減させることにより吊り具60の上フレーム部28b上端からの出代寸法を調整することができる。
【0058】
吊り具60は、その頭部に、レール部50に対してスライド移動可能な吊り部60aを備えている。吊り部60aは金属製の円板状の回転体であり、吊り具60の中心軸を回動中心としてボルト部分(吊り部60a以外の部分)に対して回動可能に構成されている。なお、吊り部60aとしてローラを用いてもよい。また、吊り部60aは、その外径寸法が外周案内レール57の段差起立部57bと屋外側起立板部57fとの離間距離より小さく、かつ、屋内案内レール58の起立板部58b同士の離間距離より小さくなるように形成されており、さらに、その高さ寸法が外周案内レール57の中間水平部57cと上端水平部57eとの離間距離より小さく、かつ、屋内案内レール58の支持水平部58aと上端水平部58cとの離間距離より小さくなるように形成されている。それに対して吊り具60のボルト部分は、その外径寸法が外周案内レール57及び屋内案内レール58に形成された各スリットS1、S2及びS3のスリット幅より小さくなるように形成されている。以上により、吊り具60は、そのボルト部分を外周案内レール57の長手スリットS1又は短手スリットS2に挿通させ、吊り部60aを外周案内レール57の支持水平部57aに載置させた状態でスライド移動させることができる。また、屋内案内レール58に対しても同様に、吊り具60は、そのボルト部分を屋内案内レール58のスリットS3に挿通させ、吊り部60aを屋内案内レール58の支持水平部58aに載置させた状態でスライド移動させることができる。
【0059】
本実施形態では、外周案内レール57の中間水平部57cの上面位置と屋内案内レール58の支持水平部58aの上面位置とは高さ位置が同一となっている。そして、屋内案内レール58の起立板部58bの内側面は、誘導口59の幅方向の端部より内側に設定されている。したがって、吊り部60aを誘導口59を介して屋内案内レール58の支持水平部58aから外周案内レール57の中間水平部57cにスライド移動させることにより受け渡すことができるため、吊り具60は屋内案内レール部56から外周案内レール部55にスライド移動させることができる。
【0060】
また、吊り具60と螺合される一対の吊り具用ウェルドナット61は、外壁パネル20、30の幅方向に所定の間隔をおいて固定されている。具体的には、一対の吊り具用ウェルドナット61は、これらの中心間距離がレール部50に形成された一対のスリットS3の長手方向に沿った中心線間距離と等しくなるように設定されている。したがって、一対の吊り具用ウェルドナット61に螺合することより取り付けられている一対の吊り具60も上記間隔と同一の間隔をおいて取り付けられているため、一対の吊り具60を一対の屋内案内レール部56に吊り下げることにより外壁パネル20、30を吊り下げることができるようになっている。
【0061】
天井梁16、17等には、天井下地材としての野縁受け67が屋内案内レール部56と平行に所定間隔で、複数、釘等により固定されている。本実施形態では、屋内案内レール部56の厚さは野縁受け67の厚さと等しくなっている。そのため、屋内案内レール部56の下面は、野縁受け67の下面と同じ高さとなっている。また、屋内案内レール部56と野縁受け67の下面には、天井下地材としての天井野縁68が野縁受け67と直交する向きで複数、所定の間隔をおいて釘等により固定されている。そして、これらの天井野縁68の下面には、天井材24が固定されている。
【0062】
次に、上記のように構成される建物10の施工手順について、下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30の施工手順を中心に、図7に基づいて説明する。
【0063】
まず、基礎11の天端上に下階天井梁16、上階天井梁17等の梁や下階柱、上階柱等の柱を含む軽量鉄骨を、基礎11側から順に組み立てていき、軸組構造を構築する。そして、この軸組構造に対して、一階部分12においては基礎11上に床面下地材22を敷設し、二階部分13においては下階天井梁16上に床根太19を設置してから床根太19の上に床面下地材22を敷設する。
【0064】
次に、下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30の取り付け施工に入る。
【0065】
まず、下階外壁パネル20をレッカー車等により建物10の屋内に荷降ろしする。そして、図7(a)に示すように、下階外壁パネル20をその外壁面を上側に向けた状態で床面上に寝かせ、この状態でシャッタ装置25を下階外壁パネル20の外壁面上の所定位置にボルト等の固定手段により取り付ける。また、吊り具60を、下階外壁パネル20の上フレーム部28bに固定された吊り具用ウェルドナット61に螺合させることにより、下階外壁パネル20に取り付ける。この際、下階外壁パネル20を適切な高さ位置で吊り下げられるように、吊り具60の締め込み量を増減させることにより吊り具60の下階外壁パネル20上端に対する出寸法の調整も合わせて行う。なお、パネル上部固定板37は、この段階においてはボルト38及びナット39により仮固定しておく。
【0066】
次に、各外周案内レール57を外周下階天井梁16aの下面にボルトにより固定し、外周案内レール部55を構築する。そして、各屋内案内レール58を屋内下階天井梁16bの下面にボルト溶接等により固定し、屋内案内レール部56を構築する。これにより、レール部50が構築される。
【0067】
次に、図7(b)に示すように、下階外壁パネル20を吊り具60が上側を向くように、かつ、外壁面が屋外側を向くようにして直立に起こす。そして、吊り具60の吊り部60aを屋内案内レール部56の屋内側端部の開口部より屋内案内レール部56の内側領域に挿し込む。具体的には、吊り具60のボルト部分をスリットS3に挿通させて吊り部60aを屋内案内レール58の支持水平部58a上に載置させる。これにより、下階外壁パネル20は屋内案内レール部56に対して吊り下げられる。なお、下階外壁パネル20は一対の吊り具60により吊り下げられるため、吊り下げ状態にある場合でも回転することなく安定した状態で吊り下げられる。
【0068】
下階外壁パネル20の吊り下げ後、下階外壁パネル20の下端部を支持手段を構成する搬送台車62により支持する。搬送台車62は、四辺形リンク機構を利用した支持高さ調整手段を備えており、これにより、搬送台車62により支持された下階外壁パネル20の高さ位置を調整することが可能となっている。搬送台車62により下階外壁パネル20を支持する際には、この調整手段を使って下階外壁パネル20の支持高さを適切な位置に調整する。
【0069】
次に、吊り具60を屋内案内レール部56に沿ってスライドさせながら、下階外壁パネル20を屋外側につまり外周案内レール部55側に移動させる。移動の際には、下階外壁パネル20を搬送台車62により押しながら移動させる。なお、下階外壁パネル20の移動は、例えば下階外壁パネル20にロープを連結して当該ロープを引っ張ることにより行ってもよい。下階外壁パネル20を屋外側に移動させると、やがて吊り具60の吊り部60aは屋内案内レール部56を通過し、通過とともに誘導口59から外周案内レール部55の内側領域に入る。そして、吊り具60が外周案内レール部55の内側領域に入る頃には、搬送台車62は床面の屋外側端部に達しているため、ここで下階外壁パネル20の下端部から搬送台車62を抜き取る。そして、さらに下階外壁パネル20を屋外側に移動させると、吊り部60aが中間水平部57cから支持水平部57aに落下し、それに伴い下階外壁パネル20も下方に落下する。
【0070】
下階外壁パネル20の落下後は、下階外壁パネル20を外周案内レール部55に沿って所定の取り付け位置に移動させる。移動させた後は下階外壁パネル20の下部を屋外側に押すことにより下階外壁パネル20を傾け、この傾けた状態で下階外壁下パネル31をパネル下部固定板29に取り付け、下階外壁下パネル31上端の所定位置に止水材34を載せる。そして、傾けた状態にある下階外壁パネル20を直立させながら少し上方に持ち上げてから、下階外壁パネル20を下階外壁下パネル31の上方に設置する。これにより、止水材34は圧縮され、下階外壁パネル20と下階外壁下パネル31との間の止水がなされる。
【0071】
次に、下階外壁パネル20の固定作業に入る。まず、ボルト35を下階外壁下パネル31の下階下部フレーム33に設けられた下側ウェルドナット36に螺合させることにより下階外壁パネル20の下端部を固定する。そして、パネル上部固定板37を仮固定していたボルト38及びナット39を緩めて、パネル上部固定板37を上方へスライド移動させる。なお、このスライド移動範囲は挿通孔40の上下方向の長さによって規定されている。その移動によってパネル上部固定板37の上端部を外周案内レール57に当接させる。そして、その当接状態においてボルト43を外周下階天井梁16aに設けられた梁下側ウェルドナット41に螺合させることによりパネル上部固定板37を固定する。さらに、前記手順において緩めたボルト38とナット39を締結させることにより、パネル上部固定板37を下階外壁パネル20に対して固定する。これにより、下階外壁パネル20の上端部は固定される。以上により、下階外壁パネル20の固定作業は完了する。
【0072】
以上説明した手順で、各下階外壁パネル20を一対の屋内案内レール部56を挟んだ両側に外側から順番に設置し、固定していく。なお、屋内案内レール部56の屋外側に設置される下階外壁パネル20のみ、この段階においては設置作業を行わないでおく。
【0073】
各下階外壁パネル20の設置及び固定が完了した後、設置作業を行わないで残しておいた、一対の屋内案内レール部56の屋外側に設置される下階外壁パネル20を設置する作業を行う。まず、下階外壁下パネル31を所定の位置に固定し、下階外壁下パネル31の上端の所定位置に止水材34を載せる。そして、前述した手順により下階外壁パネル20を屋内案内レール部56に沿って外周案内レール部55に導き、その後、図7(c)に示すように、下階外壁パネル20をさらに屋外側に移動させることにより下方に落下させる。そうすると、下階外壁パネル20は、下階外壁下パネル31上の所定の取り付け位置に落下する。この落下により止水材34は圧縮され、下階外壁パネル20と下階外壁下パネル31との間の止水がなされる。そして、その後、前述した手順により下階外壁パネル20の固定作業を行う。
【0074】
以上により、全ての下階外壁パネル20の設置及び固定が完了する。
【0075】
次に、上階外壁下パネル44の取り付け作業に入る。上階外壁下パネル44に下パネル固定板47を予めボルトにより取り付けた後、ボルト49を外周下階天井梁16aに設けられた梁上側ウェルドナット48に螺合させることにより下パネル固定板47を外周下階天井梁16a上面に固定する。これにより、上階外壁下パネル44は、外周下階天井梁16aに対して固定される。そして、その後、下階外壁パネル20の外壁板27と上階外壁下パネル44の上階下部外壁板45との間に形成される隙間部に止水カバー51を取り付ける。これにより、下階外壁パネル20と上階外壁下パネル44との間の止水がなされる。
【0076】
以上により、下階外壁パネル20及びその周辺部の外壁パネルの取り付け施工は完了する。また、上階外壁パネル30の取り付け施工については、下階外壁パネル20と基本的には同様の手順であるので説明は省略する。
【0077】
下階外壁パネル20及び上階外壁パネル30の取り付け施工後は、図7(d)に示すように、野縁受け67を、屋内案内レール部56と平行に所定間隔で複数、天井梁16、17等に対して釘等により固定する。その後、野縁受け67と直交する向きで、天井野縁68を下側から野縁受け67及び屋内案内レール部56に対して釘等により所定間隔で複数固定する。そして、これらの天井野縁68に天井材24を下側からビス等により固定する。さらに、図示しない内壁板の取り付けや床仕上げ材21の敷設等の施工作業をすることで、建物10は完成する。
【0078】
以上、詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0079】
本実施形態では、屋内天井梁16b、17bには一対の屋内案内レール部56を、外周天井梁16a、17aには外周案内レール部55をそれぞれ設け、また、屋内案内レール部56は外周案内レール部55に設けられた誘導口59に合わせて配設した。そして、外壁パネル20、30の上端部背面側には外周案内レール部55及び屋内案内レール部56に吊り下げられる吊り具60を取り付けた。これにより、外壁パネル20、30を屋内案内レール部56に対して吊り下げた状態で建物の屋内側から屋外側へ案内することができる。そして、外壁パネル20、30を誘導口59を介して屋内案内レール部56から外周案内レール部55に移動させることができるので、外壁パネル20、30を所定の取り付け位置に設置することができる。これにより、建物の屋内側から重量物である外壁パネル20、30を所定の位置に設置するに際して、取り回しが容易となる。したがって、隣棟間隔の小さい狭小敷地などにおいても外壁パネル20、30を容易に取り付け施工することができる。また、外部足場を不要とすることができる利点もある。
【0080】
本実施形態では、屋内案内レール部56の厚さが、すなわち屋内案内レール58の厚さが野縁受け67の厚さと同じとなっているため、屋内案内レール58の下面は野縁受け67の下面と同じ高さとなっている。したがって、屋内案内レール58を野縁受け67とともに天井野縁68を固定するための天井下地材として使用することができる。これにより、屋内案内レール58は外壁パネルの取り付け施工に利用することができるだけではなく、取り付け施工後は建物10の一部として利用することができるため、屋内案内レール58の有効利用を図ることができる。また、屋内案内レール58を天井下地材として利用すれば、外壁パネルの取り付け施工後に屋内案内レール58を建物10から取り外す必要がなくなるため、施工の際の作業量をその分抑制することができる。
【0081】
本実施形態では、外壁パネル20、30の取り付け施工前に、シャッタ装置25を外壁パネル20、30の外壁面に取り付けている。これにより、通常は外壁パネル20、30の取り付け施工後に屋外側から行うシャッタ装置25の取り付けを、本構成によれば、外壁パネル20、30の取り付け施工前に、屋内で行うことができる。したがって、従来は足場を組むことができないため屋外側から外壁パネル20、30にシャッタ装置25の取り付けができなかった狭小敷地等においても、外壁パネル20、30にシャッタ装置25を取り付けることが可能となる。
【0082】
本実施形態では、外周案内レール57、屋内案内レール58ともに剛性の高い天井梁16、17に固定されているため、重量物である外壁パネル20、30が吊り下げられても撓みにくくなっている。したがって、外壁パネル20、30の吊り下げ移動時に、外周案内レール57又は屋内案内レール58が下側に撓むことにより外壁パネル20、30の下端が床面に接触して外壁パネル20、30を移動させることができなくなるおそれは減る。
【0083】
外壁パネル20、30を吊り下げる吊り具60は、吊り具用ウェルドナット61に螺合させることにより外壁パネル20、30に取り付けられているため、吊り具60の締め込み量を増減させることにより外壁パネル20、30の吊り下げ高さ位置を調整することができる。これにより、外壁パネル20、30をレール部50に対して吊り下げた状態で移動させる際に、外壁パネル20、30の上端部及び下端部がそれぞれレール部50及び床面に接触しないように、外壁パネル20、30の高さ位置を適切な位置に調整することができる。
【0084】
本実施形態では外壁パネル20、30をレール部50に対して吊り下げて移動させる際には、外壁パネル20、30の下端を搬送台車62により支持することができる。外壁パネル20、30をレール部50に対する吊り下げのみにより支持する構成とすると、外壁パネル20、30の重量が特に大きい場合にはレール部50が固定されている天井梁が下側に撓み、これにより外壁パネル20、30の下端部が床面に接触するおそれがある。しかしながら、本構成のようにすれば外壁パネル20、30の下端部は搬送台車62により支持されるため、そのようなおそれはなくなる。
【0085】
また、搬送台車62は支持高さの位置調整が可能であるため、搬送台車62により支持されている外壁パネル20、30の支持高さ位置を調整することができる。これにより、外壁パネル20、30吊り下げ時に、外壁パネル20、30の上端部がレール部50に接触しないように、外壁パネル20、30の支持高さ位置を適切な位置に調整することができる。
【0086】
本実施形態では、外周案内レール57の支持水平部57aが中間水平部57cより低く設定されているため、下階外壁パネル20を屋外側に移動させると、吊り具60の吊り部60aが中間水平部57cから支持水平部57aに落下する。そして、この落下に伴い下階外壁パネル20は予め設けられた下階外壁下パネル31の上方に落下し、下階外壁下パネル31上端部の所定位置に予め載せられた止水材34を圧縮する。これにより、下階外壁パネル20を所定の位置に設置するのと同時に、下階外壁パネル20と下階外壁下パネル31との間の止水を行うことができる。したがって、施工時において当該部分については止水作業を行う必要がなくなるため、作業量の低減を期待することができる。また、上階外壁パネル30については説明を省略するが、下階外壁パネル20と同様の構成であるため、上階外壁パネル30についても設置と同時に止水を行うことができる。
【0087】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0088】
上記実施形態では、屋内案内レール部56を一対設けたが、屋内案内レール部56は1つにしてもよい。この場合、吊り具60は、外壁パネル20、30上端部の幅方向の略中央に取り付けるのがよい。そうすることで、外壁パネル20、30を安定した直立状態で吊り下げることができる。
【0089】
上記実施形態では、外壁パネル20、30をレール部50に対して吊り下げて移動させる際に、搬送台車62により外壁パネル20、30の下端部を支持する構成としたが、搬送台車62は使用しなくてもよい。
【0090】
上記実施形態では、下階外壁パネル20の取り付け施工前に、シャッタ装置25を屋内で下階外壁パネル20の外壁面に取り付ける構成としたが、シャッタ装置25に限らず面格子等の外装部材を屋内で取り付けてもよい。外装部材は一般に足場を組まないと取り付けができないため、足場を組むことができない狭小地においては外壁パネル20、30の取り付け施工後は外装部材の取り付けができないが、予め屋内で外装部材を取り付ける本構成のようにすれば取り付けが可能となる。
【0091】
上記実施形態では、外周案内レール部55及び屋内案内レール部56をそれぞれ複数の外周案内レール57及び屋内案内レール58により構成したが、これをそれぞれ1本の案内レールにより構成してもよい。
【0092】
上記実施形態では、外壁パネル20、30の取り付け施工後、屋内案内レール部56を天井下地材として使用したが、屋内案内レール部56だけではなく外周案内レール部55を天井下地材として使用してもよい。
【0093】
また、屋内案内レール部56及び外周案内レール部55を天井下地材として使用しない構成としてもよい。但し、その場合、外壁パネル20、30の取り付け施工後、屋内案内レール部56及び外周案内レール部55を取り外す作業が入るため、施工時における作業量が増大するおそれがある。したがって、その点を鑑みると、屋内案内レール部56及び外周案内レール部55を天井下地材として使用する構成とした方が望ましい。しかしながら、屋内案内レール部56及び外周案内レール部55を取り外して別の建物で再利用を図ろうとするならば、天井下地材として使用しない構成とするのもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】一実施形態の建物の一部を示す側面図。
【図2】外壁パネル、梁及び各レールとの関係を示す要部側面図。
【図3】屋内案内レールの斜視図。
【図4】外周案内レールの斜視図。
【図5】屋内案内レール及び外周案内レールの配置を示す底面図。
【図6】外壁パネルの吊り下げ構成を示す斜視図。
【図7】建物の施工順序を示す図。
【符号の説明】
【0095】
10…建物、16…下階天井梁、17…上階天井梁、20…下階外壁パネル、27…外壁板、28…フレーム、30…上階外壁パネル、31…下階外壁下パネル、37…パネル上部固定板、44…上階外壁下パネル、50…レール部、52…上階外壁上パネル、55…外周案内レール部、56…屋内案内レール部、57…外周案内レール、58…屋内案内レール、59…誘導部としての誘導口、60…吊り具、62…搬送台車、67…天井下地材としての野縁受け、68…天井下地材としての天井野縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルが建物外周部に設置されてなる建物であって、
前記外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを前記建物外周部に沿って案内する外周案内レールを備え、
前記外周案内レールには、前記外壁パネルを屋内側から当該外周案内レールに誘導する誘導部が設けられていることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記外壁パネルには、前記外周案内レールに吊り下げられる吊り具が備えられており、
前記吊り具は、前記外周案内レールに対する前記外壁パネルの高さ位置を調整する調整手段を備えている請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを屋内から前記建物外周部へ案内する屋内案内レールを備え、
前記屋内案内レールは、前記誘導部を介して前記外周案内レールに前記外壁パネルを誘導する位置に設置されている請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
少なくとも前記屋内案内レールの下面位置は、天井板が取り付けられる天井下地材の下面位置と同一高さ位置に設置されており、
前記屋内案内レールが複数の天井下地材の一部として利用されている請求項3に記載の建物。
【請求項5】
前記外周案内レール及び屋内案内レールは、天井梁に固定されている請求項3又は4に記載の建物。
【請求項6】
前記外周案内レールには前記屋内案内レールによる外壁パネルの吊り下げ位置よりも下方位置にて当該外壁パネルを吊り下げる部分を備え、
その部分に配置された外壁パネルにより、当該外壁パネルの下方にある止水材を弾力に抗して圧縮状態にされた状態で当該外壁パネルが建物外周部にて固定されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物。
【請求項7】
外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを建物外周部に沿って案内し、さらに外壁パネルを屋内側から誘導する誘導部が設けられている外周案内レールを設置するレール設置工程と、
前記誘導部を介して外壁パネルを前記外周案内レールに吊り下げ、当該外周案内レールに沿って外壁パネルを取り付け位置まで移動させる吊り下げ移動工程とを備えた建物の施工方法。
【請求項8】
前記レール設置工程は、前記外壁パネルを吊り下げ支持するとともに当該外壁パネルを屋内から前記建物外周部へ案内する屋内案内レールを設置する工程を含み、
前記吊り下げ移動工程は、前記屋内案内レールに外壁パネルを吊り下げた後に、当該屋内案内レールに沿って外壁パネルを誘導部まで移動させ、前記誘導部に外壁パネルを受け渡す工程を含む請求項7に記載の建物の施工方法。
【請求項9】
前記吊り下げ移動工程の後に行われ、前記屋内案内レールの下面に天井材を取り付ける天井取り付け工程をさらに備える請求項7又は8に記載の建物の施工方法。
【請求項10】
前記吊り下げ移動工程の外壁パネルの移動は、前記吊り下げ状態にある外壁パネルの下端を、当該外壁パネルの支持位置を高さ調整する機能を有した搬送台車によって支持することにより行われる請求項7乃至9のいずれか1項に記載の建物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−203739(P2009−203739A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48239(P2008−48239)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】