説明

建築用金具

【課題】安価でしかも施工も容易な建築用金具と、この建築用金具を備えた建築構造を提供する。
【解決手段】建築用金具1は、亜鉛・アルミニウム・マグネシウム合金めっきされた鋼よりなり、且つカチオン塗装膜によって全面が被覆されている。建築用金具1は、背面を柱や胴縁に当て、ビス孔12を通してビス打ちするか、又は釘孔14を通して釘打ちすることにより柱や胴縁に留め付けられる。建築用金具1は、全面がカチオン塗装膜によって被覆されているため、柱や胴縁が防腐・防蟻剤で処理されていても電蝕を受けることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅外壁材留付金具など、建築躯体に当接するように用いられる建築用金具に係り、特に電蝕が防止されるよう構成された建築用金具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅外壁材留付金具は、従来ステンレス製のものが主に用いられていたが、近年ステンレス価格が上昇してきているところから、安価なめっき鋼製金具の使用が検討されている。特開2004−332388号の第0016段落には、防食用めっきが施された鉄よりなる壁材取付具が記載されている。
【0003】
このめっき鋼は、ステンレスよりも耐食性が劣る。特に、建築躯体が銅を含有した防腐・防蟻剤で処理されていると、めっき鋼は電蝕により腐食し易くなる。このような銅を含有した防腐・防蟻剤としては、クロム・銅・ひ素化物系、銅・アルキルアンモニウム化合物系、銅・ほう素・アゾール系、ナフテン酸銅系などのものが用いられている。
【0004】
実開昭52−90915号には、外壁パネルを建築物鋼材にボルト留めするに際し、該鋼材と外壁パネルとの直接の接触を防ぐように電気絶縁性のスペーサ(補助具)を用いることが記載されている。
【特許文献1】実開昭52−90915号
【特許文献2】特開2004−332388号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実開昭52−90915号のように電気絶縁性のスペーサを用いると、外壁パネルの留め付け作業が相当に煩雑になり、施工効率が低下する。また、留付部材とは別個の電気絶縁性スペーサを製造ないし購入し、保管、運搬する必要があるため、資材コストも高くつくことになる。
【0006】
本発明は、安価でしかも施工も容易な建築用金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の建築用金具は、銅系の防腐又は防蟻処理された建築躯体に当接する当接面を有する金属製建築用金具において、該当接面の少なくとも一部が有機質絶縁層で被覆されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の建築用金具は、請求項1において、該金属は亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムを含む合金でめっきされた鋼であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の建築用金具は、請求項1又は2において、前記有機質絶縁層はカチオン塗装膜よりなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の建築用金具は、建築躯体との当接面が有機質絶縁層で被覆されているため、防腐・防蟻剤で処理された建築躯体に当接しても電蝕を受けることがない。従って、金属として、亜鉛・アルミニウム・マグネシウム合金めっきされた鋼などの安価な材料を用いることが可能となる。
【0011】
また、この建築用金具は、電気絶縁性スペーサなど別体の部材を用いることなく建築躯体に取り付けることができ、留付け施工も容易である。
【0012】
上記の有機質絶縁層としてはカチオン塗装膜が堅牢であり、三次元に塗装可能であり、端部まで塗膜を作成することができ、欠損部を生じないため好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は実施の形態に係る建築用金具の斜視図である。この建築用金具1は、建築躯体の柱や縦胴縁などにビス等によって取り付けられるものであり、この建築用金具1によって壁材としてのサイディング20が支持・取り付けされる。
【0015】
この建築用金具1は、略々長方形状のベース部2を有し、このベース部2から上向きL字形の支承片3,3と下向きL字形の支承片4とが前面側へ切り起こすことにより設けられている。ベース部2の上辺に沿って裏側へ後退した低所5が左右に延設され、この低所5の上辺に沿ってリブ部7が前方へ屈曲突設されている。このリブ部7の上辺に沿って、裏側へ後退した低所8が左右方向に延設されている。
【0016】
ベース部2の左右側辺からは後方へ起立片9が折り立てられており、下辺からは後方へ起立片10が折り立てられている。ベース部2の下部の左側及び右側には、舌片状の延出片11が設けられている。この延出片11の先端は前方に向って折り立てられた爪部11aとなっている。
【0017】
上記ベース部2と低所5にそれぞれビス孔12が設けられている。ベース部2のビス孔12の周囲は、裏側に向って凹陥した低所13となっている。この低所13の裏面と、低所5及び前記低所8の裏面と、起立片9,10の先端面とは、いずれも面一となっている。符号14は釘孔を示す。
【0018】
この建築用金具1は、亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムを含む合金でめっきされた鋼よりなり、且つカチオン塗装膜によって全面が被覆されている。
【0019】
亜鉛・アルミニウム・マグネシウム合金めっきとしては、アルミニウム4〜10重量%、マグネシウム1〜5重量%、残部亜鉛(必要に応じ、さらにケイ素を含む)の組成が好適であり、最も好適なものはZn−Al(6)−Mg(3)なる組成のめっきである。
【0020】
上記のカチオン塗装膜としてはエポキシ系、アクリル系などのカチオン塗装膜が好適である。カチオン塗装膜の厚みは5〜50μm特に20〜22μm程度が好適である。このカチオン塗装膜は、導電性のある水溶性塗料を入れたタンクに建築用金具と電極を浸漬し、該電極に正、該建築用金具に負の電圧を印加し、塗料を電気的に塗着させた後、硬化させる電着塗装により形成される。
【0021】
このようにカチオン塗装膜によって被覆されてなる建築用金具1は、背面を柱や胴縁に当て、ビス孔12を通してビス打ちするか、又は釘孔14を通して釘打ちすることにより柱や胴縁に留め付けられる。
【0022】
この建築用金具1によってサイディング20を柱や胴縁に取り付けるには、サイディング20の下端に設けられた雌実21を支承片3に載せ、この際、スリット22を支承片3の上向き部分と嵌合させる。また、サイディング20の上端に形成された雄実23を支承片4の裏側とベース部2との間に差し込む。
【0023】
この建築用金具1は、全面がカチオン塗装膜によって被覆されているため、柱や胴縁が防腐・防蟻剤で処理されていても電蝕を受けることがない。因みに、建築用金具1がカチオン塗装膜で被覆されていないと、柱や胴縁に直に強く押し付けられるビス孔12の周囲及び5,8,13の低所が電蝕を受け易いが、カチオン塗装膜によりこの電蝕が十分に防止される。
【0024】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の建築用金具である水切材、見切り材、ジョイナー等にも適用できる。また、カチオン塗装膜は建築用金具のうち柱や胴縁と接する部分にのみ施されてもよい。カチオン塗装膜以外の有機質絶縁層が設けられてもよい。なお、有機質絶縁層が撥水性を有すると、金具の腐食防止効果が高いものとなる。本発明の建築用金具は、窯業系サイディング、金属系サイディングなどのサイディングの他、タイル・レンガなどの取り付けにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態に係る建築用金具の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 建築用金具
2 ベース部
3,4 支承片
5,8,13 低所
12 ビス孔
14 釘孔
20 サイディング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅系の防腐又は防蟻処理された建築躯体に当接する当接面を有する金属製建築用金具において、該当接面の少なくとも一部が有機質絶縁層で被覆されていることを特徴とする建築用金具。
【請求項2】
請求項1において、該金属は亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムを含む合金でめっきされた鋼であることを特徴とする建築用金具。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記有機質絶縁層はカチオン塗装膜よりなることを特徴とする建築用金具。

【図1】
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【公開番号】特開2006−233625(P2006−233625A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51192(P2005−51192)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】