説明

建設機械におけるエンジンの制御装置

【課題】本願発明は、エンジンの燃費を向上させるための、設定した第1目標回転数よりも低回転域側にある第2目標回転数に基づいて行うエンジン制御を更に改良するものであって、作業を行っていない待機状態から、作業を行う非待機状態への移行時におけるごく短い時間において、油圧ポンプから吐出する流量が微小に不足するのを防止できるエンジンの制御装置を提供することにある。
【解決手段】
待機状態では、第2目標回転数N2の下げ幅を小さくして第3目標回転数N3に基づいてエンジン制御を行い、第3目標回転数N3に基づくエンジン制御を行って、待機状態から非待機状態になったときには、第3目標回転数N3に基づくエンジン制御から第2目標回転数N2に基づくエンジン制御に移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定したエンジンの目標回転数に基づいてエンジンの駆動制御を行う建設機械におけるエンジンの制御装置に関し、特に、エンジンの燃料消費量の改善を図った建設機械におけるエンジンの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車輌では、エンジン負荷がエンジンの定格トルク以下の場合には、トルク線図における高速制御の領域でエンジントルクとのマッチングが行われている。例えば、燃料ダイヤルでの設定に対応してエンジンの目標回転数が設定され、設定された目標回転数に対応した高速制御の領域が定められる。
【0003】
あるいは、燃料ダイヤルでの設定に対応して高速制御の領域が定められ、定められた高速制御の領域に対応してエンジンの目標回転数が設定される。そして、定められた高速制御の領域で、エンジン負荷とエンジントルクとをマッチングさせる制御が行われる。
【0004】
一般的に多くの作業者は、作業量を上げるため、エンジンの目標回転数をエンジンの定格回転数またはその近傍の回転数となるように設定することが多い。ところで、エンジンの燃料消費量が少ない領域、即ち、燃費の良い領域は、通常、エンジンのトルク線図上では中速回転数領域や高トルク領域に存在している。このため、無負荷ハイアイドル回転から定格回転の間で定められる高速制御の領域は、燃費の面からみると効率の良い領域とはなっていない。
【0005】
従来、エンジンを燃費の良い領域で駆動させるため、作業モード毎にエンジンの目標回転数の値とエンジンの目標出力トルクの値とを予め対応付けて設定し、複数の作業モードを選択できるようにした制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この種の制御装置では、作業者が、例えば、第2の作業モードを選択した場合には、第1の作業モードに比べて、エンジンの回転数を低く設定することができ、燃費を改善することができる。
【0006】
しかしながら、上述したような作業モード切換方式を用いた場合には、作業者がモード切換手段を一々操作していかなければ、燃費の改善を行うことができない。また、第2の作業モードを選択したときのエンジン回転数を、第1の作業モードを選択したときのエンジン回転数に対して、一律に下げた回転数の値となるように設定しておいたときには、第2の作業モードが選択されると、次のような問題が起きてしまう。
【0007】
即ち、作業車輌の作業装置(以下、作業機という。)における最大速度は、第1の作業モードを選択した場合に比べて低下してしまう。この結果、第1の作業モードを選択したときの作業量に比べて、第2の作業モードを選択したときの作業量は少なくなってしまう。
【0008】
この問題を解決するためのものとして、エンジンの制御装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載されたエンジンの制御装置では、エンジントルクが低い状態のときには、設定したエンジンの第1目標回転数よりも低回転域側にある第2目標回転数に基づいて、エンジンの駆動制御を行うことができる。また、エンジントルクが高い状態でエンジンを使用するときには、エンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプのポンプ容量又は検出したエンジントルクに対応して、予め設定した目標回転数となるようにエンジンの駆動制御を行うことができる。
【0009】
これによって、作業車輌における作業性能を実質変えることなく、エンジンを燃費効率の良い領域にシフトして使用することが可能となり、エンジンの燃料消費量を低減させることができるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−273919号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/087847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載された発明では、設定したエンジンの第1目標回転数よりも低回転域側にある第2目標回転数に基づいて、エンジンの駆動制御を行うことができるので、エンジントルクが低い状態のときには、エンジンを燃費効率の良い領域にシフトして使用することが可能となる。
【0012】
しかし、前記第2目標回転数に基づくエンジン制御を行いながら作業を中断している待機状態から、作業を行う非待機状態への移行時におけるごく短い時間に関して見ると、ポンプ容量が最小斜板状態から有限の速度で立ち上がることになるため、低回転で高トルクという状態が得られにくくなる。そのため、ごく短時間ではあるが、油圧ポンプから吐出する流量が微小に不足する事態が生じてしまうことになる。
【0013】
本願発明は、特許文献2に記載された発明のような、設定したエンジンの第1目標回転数よりも低回転域側にある第2目標回転数に基づいて行うエンジン制御を更に改良するものであって、前記待機状態から前記非待機状態への移行時におけるごく短い時間において、油圧ポンプから吐出する流量が微小に不足するのを防止できるエンジンの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、請求項1〜請求項6に記載したエンジンの制御装置の発明により、達成することができる。
即ち、本願発明の建設機械におけるエンジンの制御装置では、エンジンによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの吐出圧油により駆動される油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから吐出した圧油を制御して前記油圧アクチュエータに給排する制御弁と、可変に指令できる指令値の中から一つの指令値を選択して指令する指令手段と、前記指令手段で指令された指令値に応じてエンジンの第1目標回転数を設定し、設定した前記第1目標回転数に基づいて、前記第1目標回転数よりも低い回転数である第2目標回転数を設定する第1設定手段と、を備え、
前記第2目標回転数に基づいて、エンジン制御が行われるエンジンの制御装置であって、
前記制御弁が中立位置である待機状態であるか否かを検出する待機状態検出手段と、前記待機状態検出手段が前記待機状態であることを検出したとき、前記第2目標回転数の下げ幅を小さくする手段と、を備え、
前記待機状態検出手段が前記待機状態であることを検出したときは、前記下げ幅を小さくする手段で下げ幅を小さくした第3目標回転数に基づいてエンジン制御が行われ、前記第3目標回転数に基づくエンジン制御を行なっているときに、前記待機状態検出手段が前記待機状態ではないことを検出したときは、前記第3目標回転数に基づくエンジン制御から、前記第2目標回転数に基づくエンジン制御に移行することを最も主要な特徴となしている。
【0015】
また、本願発明の建設機械におけるエンジンの制御装置では、前記待機状態検出手段は、エンジントルクを検出して、その値が予め設定したエンジントルク用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記エンジントルク用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを主要な特徴となしている。
【0016】
更に、本願発明の建設機械におけるエンジンの制御装置では、前記待機状態検出手段は、前記制御弁を操作するパイロット圧を検出して、その値が予め設定したパイロット圧用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記パイロット圧用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを主要な特徴となしている。
【0017】
更にまた、本願発明の建設機械におけるエンジンの制御装置では、前記待機状態検出手段は、前記油圧ポンプのポンプ容量を検出して、その値が予め設定したポンプ容量用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記ポンプ容量用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを主要な特徴となしている。
【0018】
また、本願発明の建設機械におけるエンジンの制御装置では、前記待機状態検出手段は、前記油圧ポンプからのポンプ吐出圧を検出して、その値が予め設定したポンプ吐出圧用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記ポンプ吐出圧用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを主要な特徴となしている。
【0019】
更に、本願発明の建設機械におけるエンジンの制御装置では、検出した前記油圧ポンプのポンプ容量及び検出したエンジントルクと、前記エンジン制御として目標回転数を連続的に変化させることができるエンジン制御時の目標回転数との対応関係をそれぞれ設定する第2設定手段を更に備え、
目標回転数を連続的に変化させることができる前記エンジン制御において、前記第3目標回転数に基づいてエンジン制御が行われたとき、検出した前記油圧ポンプのポンプ容量の値又は検出したエンジントルクの値に対応して、前記第2設定手段から求めた目標回転数となるように制御することを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0020】
本発明におけるエンジンの制御装置では、指令手段からの指令値に応じて、エンジンの第1目標回転数を設定し、設定した第1目標回転数に基づいて低回転域側に第2目標回転数を設定することができる。そして、エンジン制御は行われているが作業を中断している状態である待機状態、例えば、エンジントルクが予め設定した所定値以下の領域においては、第2目標回転数よりも高回転数側にあるエンジンの第3目標回転数に基づいてエンジン制御を行うことができる。
【0021】
これにより、待機状態においては、エンジン回転数を第2目標回転数よりも高回転数側にある第3目標回転数に高めておくことができるので、油圧ポンプからの吐出流量を増やしておくことができる。これにより、制御弁が中立位置にある状態のときから、アクチュエータに対する操作開始の流量を確保しておくことができる。そして、待機状態から前記アクチュエータによる作業を行う非待機状態に移るごく短時間の間であったとしても、油圧ポンプから吐出する流量が微小に不足してしまうことを防止することができる。
【0022】
制御弁が中立位置にあるアイドル回転時には、もともと燃料消費量が少なくなっており、制御弁が中立位置にあるときにエンジンの低回転化を行っても、燃料消費量に対する低減効果はそれ程大きくはなかった。そのため、制御弁が中立位置にあるときには、エンジン回転数を第2目標回転数にまで下げずに、第3目標回転数としておいても、燃料消費量としては、ほとんど悪化することはない。
【0023】
逆に、制御弁が中立位置にあるときに、エンジン回転数を第2目標回転数にまで下げずに、第3目標回転数としておくことができるので、可変容量型油圧ポンプからの吐出流量を増やしておくことができる。このため、制御弁に対する操作レバーの操作を開始した直後においても、操作レバーの操作量に対応した可変容量型油圧ポンプから吐出する圧油流量の応答性が向上する。
【0024】
これによって、燃料低減効果を大きく損なうことなく、アクチュエータに対する操作性の悪化を防止することができる。また、待機状態からの作業開始時には、第2目標回転数よりも高回転数側にある第3目標回転数にエンジンの目標回転数を高めておくことができるので、急負荷時における回転ダウンを減らすことができ、回転ダウンによってエンスト防止用のトルク制限の条件にかかり、流量不足が生じてしまうのを防止できる。
【0025】
また、本願発明では、エンジンの目標回転数を第3目標回転数にした状態において、作業を行わない待機状態から作業を行う非待機状態になったときには、エンジンの目標回転数を第3目標回転数としたエンジン制御から、第2目標回転数に基づいたエンジン制御に移行させることができる。これによって、作業車輌における作業性能を実質変えることなく、エンジンを燃費効率の良い領域にシフトした状態で使用することが可能となり、エンジンの燃料消費量を低減させることができる。
【0026】
更に、本願発明では、第2目標回転数が、操作レバーの操作位置、ポンプ吐出圧、エンジントルク、ポンプ容量やこれらの組み合わせに応じて連続的に可変であるようなエンジン制御に対しても、好適に適用することができる。
【0027】
このように、待機状態において奏することのできる本願発明の効果とともに、目標回転数を連続的に変化させることができるエンジン制御によってもたらされる各種効果をそのまま奏させることができる。
【0028】
そして、目標回転数を連続的に変化させることができるエンジン制御によってもたらされる効果としては、例えば、エンジンの回転音が不連続に変化してしまうのを防止することや、エンジン回転音による違和感の発生を防止することができる。本願発明では、目標回転数をアクチュエータに対する操作状況やアクチュエータにおける負荷状況に応じて適切に変化させることができるので、燃費を大きく向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係わる油圧回路図である。(実施例)
【図2】エンジンのトルク線図である。(説明例)
【図3】エンジン出力トルクを増加させるときのトルク線図である。(実施例)
【図4】急負荷時の回転ダウンを示す説明図である。(実施例)
【図5】エンジンのトルク線図である。(実施例)
【図6】操作レバーの操作時における可変容量型油圧ポンプの状態を示す図である。(実施例)
【図7】他のエンジンのトルク線図である。(実施例)
【図8】待機状態か否かの検出についての説明図である。(実施例)
【図9】待機状態か否かの検出についての他の説明図である。(実施例)
【図10】待機状態か否かの検出についての別の説明図である。(実施例)
【図11】待機状態か否かの検出についての更に別の説明図である。(実施例)
【図12】待機状態における制御を示すフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本発明のエンジンの制御装置は、油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダなどの作業車輌に搭載されるディーゼルエンジンを制御する制御装置として好適に適用することができるものである。
【0031】
また、本発明のエンジンの制御装置としては、以下で説明する形状、構成以外にも本発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係わるエンジンの制御装置における油圧回路図である。エンジン2はディーゼルエンジンであり、そのエンジン出力トルクの制御は、エンジン2のシリンダ内に噴射する燃料の量を調整することによって行われる。この燃料の調整は、コントローラ7からの制御信号によって、従来から公知の燃料噴射装置3を制御することで行うことができる。
【0033】
エンジン2の出力軸5には可変容量型油圧ポンプ6(以下、単に油圧ポンプ6という。)が連結されており、出力軸5が回転することにより油圧ポンプ6が駆動される。油圧ポンプ6の斜板16aにおける傾転角は、ポンプ制御装置8によって制御され、斜板16aの傾転角が変化することで油圧ポンプ6のポンプ容量D(cc/rev)が変化する。
【0034】
ポンプ制御装置8は、斜板16aの傾転角を制御するサーボシリンダ12と、ポンプ圧とアクチュエータ10の負荷圧との差圧に応じて制御されるLS弁(ロードセンシング弁)17と、から構成されている。サーボシリンダ12は、斜板16aに作用するサーボピストン14を備えており、油圧ポンプ6からの吐出圧は、油路27a、27bによって取り出すことができる。油路27aで取り出した吐出圧とパイロット油路28で取り出したアクチュエータ10の負荷圧との差圧に応じて、LS弁17が作動し、LS弁17の作動によってサーボピストン14を制御する構成となっている。
【0035】
サーボピストン14の制御によって、油圧ポンプ6における斜板16aの傾転角が制御される。また、操作レバー装置11に設けた操作レバー11aの操作量に応じて制御弁9が制御されることで、アクチュエータ10に供給する流量が制御されることになる。このポンプ制御装置8は、公知のロードセンシング制御装置によって構成することができる。
【0036】
油圧ポンプ6から吐出された圧油は、吐出油路25を通って制御弁9に供給される。制御弁9は、5ポート3位置に切換えることのできる切換弁として構成されており、制御弁9から出力する圧油を油路26a、26bに対して選択的に供給することで、アクチュエータ10を作動させることができる。
【0037】
尚、アクチュエータとしては、例示した油圧シリンダ型のアクチュエータに限定されて解釈されるものではなく、油圧モータでもよく、また、ロータリー型のアクチュエータとして構成することもできる。また、制御弁9とアクチュエータ10との組を1組だけ例示しているが、制御弁9とアクチュエータ10との組を複数組構成しておくことも、1つの制御弁で複数のアクチュエータを操作するように構成しておくこともできる。
【0038】
即ち、例えば作業車輌として油圧ショベルを例に挙げてアクチュエータを説明すれば、ブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、バケット用油圧シリンダ、左走行用油圧モータ、右走行用油圧モータ及び旋回モータ等が、アクチュエータとして用いられることになる。図1ではこれらの各アクチュエータのうちで、例えば、ブーム用油圧シリンダを代表させて示していることになる。
【0039】
操作レバー11aを中立位置から操作したとき、操作レバー11aの操作方向及び操作量に応じて、操作レバー装置11からはパイロット圧(PPC圧)が出力される。出力されたパイロット圧は、制御弁9の左右のパイロットポートのいずれかに加えられることになる。これにより、制御弁9は、中立位置である(II)位置から左右の(I)位置又は(III)位置に切換えられる。
【0040】
制御弁9が(II)位置から(I)位置に切換えられると、油圧ポンプ6からの吐出圧油を、油路26bからアクチュエータ10のボトム側に供給することができ、アクチュエータ10のピストンを伸長させることができる。このとき、アクチュエータ10のヘッド側における圧油は、油路26aから制御弁9を通ってタンク22に排出されることになる。油圧ポンプ6からの吐出圧は、圧力センサ36により検出することができる。
【0041】
同様に、制御弁9が(III)位置に切換えられると、油圧ポンプ6からの吐出圧油は油路26aからアクチュエータ10のヘッド側に供給することができ、アクチュエータ10のピストンを縮小させることができる。このとき、アクチュエータ10のボトム側における圧油は、油路26bから制御弁9を通ってタンク22に排出されることになる。
【0042】
吐出油路25の途中からは、油路27cが分岐しており、油路27cにはアンロード弁15が配設されている。アンロード弁15はタンク22に接続しており、油路27cを遮断する位置と連通する位置とに切換えることができる。油路27cにおける油圧は、アンロード弁15を連通位置に切換える押圧力として作用する。
【0043】
また、アクチュエータ10の負荷圧を取り出しているパイロット油路28のパイロット圧及び一定差圧を付与するバネのバネ力は、アンロード弁15を遮断位置に切換える押圧力として作用する。そして、アンロード弁15は、パイロット油路28のパイロット圧及びバネのバネ力と、油路27cにおける油圧との差圧によって制御されることになる。
【0044】
作業者が指令手段としての燃料ダイヤル4を操作して、可変に指令できる指令値の中から一つの指令値を選択すると、選択した指令値に対応したエンジン2の目標回転数を設定することができる。このようにして設定した目標回転数に応じて、エンジン負荷とエンジン出力トルクとをマッチングさせる高速制御の領域を設定することができる。
【0045】
以下では、図1〜図3を用いて、設定した目標回転数に応じて、エンジン負荷とエンジン出力トルクとをマッチングさせる高速制御の領域を設定して行う、エンジン制御について説明する。このエンジン制御に関しては、上述した特許文献2(国際公開WO2008/087847号公報)に詳述されている。
【0046】
燃料ダイヤル4の指令値に対応してエンジンの最大目標回転数である第1目標回転数Nh(N´h)が設定され、第1目標回転数Nh(N´h)に対応して定格点K1を通る高速制御の領域Faを設定することができる。また、燃料ダイヤル4の操作に応じて、エンジンの最大目標回転数よりも低い目標回転数である第1目標回転数Nb(N´b)が設定されると、図2で示すように、第1目標回転数Nb(N´b)に応じた高速制御の領域Fbが選択されることになる。このとき、エンジン2の目標回転数は、第1目標回転数Nb(N´b)となる。
【0047】
尚、エンジン2の目標回転数N´bは、エンジンの目標回転数を第1回転数Nbに制御するときにおける、無負荷時のエンジンの摩擦トルクと油圧系のロストルクとの合計値とエンジン出力トルクとがマッチングする点として定まることになる。そして、実際のエンジン制御においては、目標回転数N´bとマッチング点Psとを結んだ線を、高速制御の領域Fbとして設定することになる。
【0048】
以下では、目標回転数N´bが第1目標回転数Nbよりも高回転側にある例を用いて説明を行うが、目標回転数N´bと第1目標回転数Nbとを一致させることも、目標回転数N´bを第1目標回転数Nbよりも低回転側に持ってくるように構成することもできる。また、以下の説明において、例えば第1目標回転数Nc(N´c)のように、ダッシュ付きの回転数N´cを記載するが、ダッシュ付きの回転数N´cは、上述した説明によるところのものである。
【0049】
作業者が燃料ダイヤル4を操作して、最初に選択した目標回転数Nb(N´b)とは異なる低い目標回転数Nc(N´c)を設定すると、図2に示すように、高速制御の領域としては低回転域側における高速制御の領域Fcが設定されることになる。このとき設定された目標回転数Nc(N´c)が第1目標回転数となる。
【0050】
図3のトルク線図において最大トルク線Rで規定される領域が、エンジン2が出し得る性能を示している。最大トルク線R上の定格点K1でエンジン2の出力(馬力)が最大になる。Mはエンジン2の等燃費曲線を示しており、等燃費曲線の中心側が燃費最小領域となっている。
【0051】
以下では、燃料ダイヤル4の指令値に対応してエンジンの最大目標回転数である第1目標回転数Nh(N´h)が設定され、第1目標回転数Nh(N´h)に対応して定格点K1を通る高速制御の領域F1が設定された場合を例に挙げて説明する。即ち、第1目標回転数Nh(N´h)が設定された場合について、図1、図3を用いて、エンジン負荷とエンジン出力トルクとをマッチングさせながら行うエンジン制御を説明する。
尚、図3は、エンジン出力トルクが増大していくときの様子を示している。
【0052】
図1に示すコントローラ7が燃料ダイヤル4の指令値を読み取ると、コントローラ7は第1設定手段30を用いて、読み取った燃料ダイヤル4の指令値に応じて、エンジン2の第1目標回転数Nh(N´h)を設定し、設定した第1目標回転数Nh(N´h)に基づいて高速制御の領域F1を設定する。
【0053】
図3で示すように、第1目標回転数Nh(N´h)及び高速制御の領域F1が設定されると、コントローラ7は、第1設定手段30を用いて、第1目標回転数Nh(N´h)、高速制御の領域F1に対応して予め設定してある低回転域側にある第2目標回転数N2(N´2)、第2目標回転数N2(N´2)に対応した高速制御の領域F2を決定する。
【0054】
尚、図3において、最大目標回転数Nhのハイアイドル点N´hと定格点K1とを結ぶ線を高速制御の領域F1として示している。このハイアイドル点N´hは、図2を用いた高速制御の領域Fbの説明において既に説明したように、エンジンの目標回転数を最大目標回転数Nhに制御するときにおける、無負荷時のエンジンの摩擦トルクと油圧系のロストルクとの合計値とエンジン出力トルクとがマッチングする点として定めることができる。
【0055】
高速制御の領域F2としては、例えば、油圧ショベルの操作レバー11aを操作したときに、高速制御の領域F1で制御した場合に比べても、ロードセンシング制御によって操作速度が殆ど低下することのない高速制御の領域として予め設定しておくことができる。即ち、目標回転数と油圧ポンプ6のポンプ容量との対応関係、及び目標回転数とエンジントルクとの対応関係を設定する第2設定手段31から求めた目標回転数となるように、高速制御の領域F2が設定されることになる。
【0056】
操作レバー11aが操作されると、図3の細かい点線で示すように、コントローラ7はエンジン負荷とエンジン出力トルクとのマッチングが高速制御の領域F2上で行われるように、燃料噴射装置3の制御を行うことになる。そして、作業者が操作レバー11aを操作することで、油圧ショベルの作業機速度を増速させる制御が行われる。
【0057】
ここで、作業者が操作レバー11aを大きく操作して、油圧ショベルの作業機速度を増速させようとした場合について更に説明を行う。操作レバー11aが大きく操作され、これによって制御弁9が例えば(I)位置に切り換えられると、制御弁9の(I)位置における開口面積9aは増大し、吐出油路25におけるポンプ吐出圧とパイロット油路28における負荷圧との差圧は低下する。このとき、ロードセンシング制御装置として構成されているポンプ制御装置8は、油圧ポンプ6のポンプ容量を増大する方向に作動する。
【0058】
油圧ポンプ6のポンプ容量が最大ポンプ容量状態にまで増大すると、高速制御の領域F2において油圧ポンプ6からの吐出量は、高速制御の領域F2において油圧ポンプ6から吐出し得る最大の吐出量となることができる。このようにして、エンジン負荷とエンジン出力トルクとをマッチングさせながらエンジン制御を行うことができる。
【0059】
エンジンの目標回転数を第1目標回転数Nhから第2目標回転数N2に下げて、制御弁9を中立位置にして作業を中断している待機状態からエンジン制御を行った場合について、図4、図5を用いて説明する。尚、以下で説明する図4、図5及び図7では、ダッシュ付きの回転数であるN´2、N´hなどについての記載は省略している。
【0060】
図4には、エンジンのトルク線図を示しており、縦軸にエンジントルク、横軸にエンジン回転数を示している。エンジン回転数を低速側の目標回転数、例えば第2目標回転数N2に下げた状態で、待機状態から作業を始めて、高速制御の領域F2に基づくエンジン制御を行うと、エンジン2には急な負荷が加わることになり、図4に示すように、エンジン2の回転数は減少する。
【0061】
そして、図4に示すように、制御弁9を中立位置にして作業を中断している待機状態から、作業を行う非待機状態への移行を第2目標回転数N2から始めた場合では、第2目標回転数N2よりも高い回転数側にある第3目標回転数N3から始めた場合に比べて、エンジントルクがエンスト防止のトルク制限ライン34に早く到達してしまうことになる。
【0062】
そこで、本発明では、待機状態においては、第2目標回転数N2の下げ幅を小さくして第3目標回転数N3でエンジン制御を行い、待機状態から作業を行う非待機状態になったときには、高速制御の領域F2に移行して、高速制御の領域F2への移行後は、高速制御の領域F2に基づくエンジン制御を行わせるようにした。
【0063】
また、コントローラ7に設けた待機状態検出手段33による待機状態か否かの判断を、エンジントルクが所定値T1よりも小さいか否かで行わせるようにした。例えば、図5に示すように、待機状態においては、第2目標回転数N2の下げ幅を小さくして第3目標回転数N3でエンジン制御を行い、エンジントルクが所定値T1よりも大きくなって、待機状態でなく作業を行う非待機状態になったと判断したときには、高速制御の領域F2に移行して、高速制御の領域F2への移行後は、高速制御の領域F2に基づくエンジン制御を行わせるようにした。
【0064】
尚、待機状態検出手段33による待機状態か否かの判断を行うのに、上述したようにエンジントルクを検出することによって判断する以外にも、制御弁9を操作するパイロット圧を検出することによっても、油圧ポンプ6のポンプ容量を検出することによっても、あるいは、油圧ポンプ6からのポンプ吐出圧を検出することによっても、それぞれ判断することができる。
【0065】
上述した目標回転数を切り替えるエンジントルクの所定値としては、例えば、油圧ポンプ6で作動するアクチュエータが作動を開始するときのエンジントルクを実験的に求めて、この求めた値を上述した所定値として設定しておくことができる。一例を挙げて説明すれば、操作レバー11aが中立位置にあるとき、即ち、エンジンがアイドリング状態にあるときには、エンジントルクとしては2〜3kgmの値を示していることが多い。そして、エンジントルクが5kgmの値を示す頃になると、アクチュエータは作動を開始し始め、6kgmの値を示す頃からは、アクチュエータは本格的な作動を開始することになる。
【0066】
そこで、上述した例の場合では、例えば、エンジントルクの所定値T1として5kgmを設定し、高速制御の領域F2への移行を完了したときのエンジントルクの値T2として6kgmを設定しておくことができる。そして、エンジントルクが5kgm以下の範囲では、第3目標回転数N3でエンジン制御を行い、エンジントルクが5kgmよりも大きくなったときには、高速制御の領域F2への移行を行って、エンジントルクが6kgm以上となって高速制御の領域F2への移行後は、高速制御の領域F2に基づくエンジン制御を行わせることができる。
【0067】
本願発明では、このようなエンジン制御を行っており、エンジン制御としては図5に示すような制御を行うことができる。即ち、燃料ダイヤル4の指令値に応じて、エンジン2の第1目標回転数Nhを設定し、第1目標回転数Nhに対応した第2目標回転数N2を設定する。そうして、エンジントルクが所定値以下の範囲において、第2目標回転数N2の下げ幅を小さくする手段32(図1参照)によって、第2目標回転数N2の下げ幅を小さくして第3目標回転数N3を設定し、エンジントルクが上述したような所定値T1以下の範囲では、エンジン2の目標回転数を第3目標回転数N3としてエンジン制御を行う。
【0068】
エンジントルクが上述したような所定値T1よりも大きくなったときには、エンジン2の目標回転数を第3目標回転数N3としていた状態から、第2目標回転数N2に基づく高速制御の領域F2に移行させる。そして、高速制御の領域F2への移行後は、高速制御の領域F2に基づくエンジン制御を行っている。
【0069】
エンジン制御を行う時における様子及び本願発明によって奏される効果について、図6を用いて説明する。図6は,操作レバー11aが中立位置にある待機状態から操作が開示されて、高速制御の領域F2で安定したエンジン制御が行われるまでの様子を、横軸に時間軸をとって示したものである。図6の一番上には、縦軸をエンジン回転数N(rpm)としてエンジン回転数の状態を示しており、中段には、縦軸をポンプ流量Q(L/min)として油圧ポンプ6からの吐出流量を示しており、下段には、縦軸をポンプ容量D(cc/rev)として油圧ポンプ6のポンプ容量を示している。
【0070】
図6において、太線は、エンジンの回転数を低速側に下げずにエンジン制御を行った場合(以下、制御Aという。)、即ち、図3の高速制御の領域F1上でのエンジン制御を行った場合を示している。太線の点線は、本願発明による制御を行った場合、即ち、エンジントルクがT1(図5参照)以下の範囲においては、第3目標回転数N3でエンジン制御を行い、エンジントルクがT1よりも大きくなったときには、高速制御の領域F2に移行して、エンジントルクがT2(図5参照)以上となって高速制御の領域F2への移行後は、高速制御の領域F2に基づくエンジン制御を行った場合(以下、制御Bという。)について示している。細線は、第2目標回転数N2から高速制御の領域F2に基づくエンジン制御を行った場合(以下、制御Cという。)について示している。
【0071】
操作レバー11aが中立位置にあるときには、図6の下段に示すポンプ容量についてみると、制御Aと制御Bと制御Cとの間に、エンジン2の目標回転数に差があっても、ポンプ容量としてはどちらも最小状態となっている。尚、図6の下段には参考のため、操作レバー11aが中立位置にあるときに、制御B及び制御Cの場合であっても、制御Aの場合と同じ流量を吐出させることができるポンプ容量を、仮想の線として細線の点線で示している。
【0072】
操作レバー11aが中立位置にあるとき、図6の上段に示すエンジン2の目標回転数についてみると、制御Aではエンジン2の第1目標回転数Nhが他の制御B、Cにおける第2目標回転数N2,第3目標回転数N3に比べて高く設定されているので、エンジン2の回転数としても他の制御B、Cにおける制御時に比べて高くなる。そして、エンジン2の回転数としては、次に制御Bにおけるエンジン回転数の方が、制御Cにおけるエンジン回転数よりも高くなっている。
【0073】
このため、操作レバー11aが中立位置にあるときには、図6の中段に示すように、油圧ポンプ6から吐出する流量としては、制御Aのときが一番多く、制御Cのときが一番少ない。そして、制御Bのときが、制御Aのときと制御Cのときとの中間となっている。
【0074】
時刻t1において、操作レバー11aの操作が開始されると、制御A及び制御Cでは、それぞれのエンジン2の第1目標回転数Nh及び第2目標回転数N2は変わらないが、制御Bにおけるエンジン2の目標回転数は、エンジントルクが所定値以下の範囲では、第3目標回転数N3となり、エンジントルクが所定値よりも大きくなると、第2目標回転数N2となるように制御される。
【0075】
これによって、図6の下段に示したポンプ容量の時間的変化で示すように、制御B及び制御Cでは、仮想の線で示したポンプ容量の状態に早く到達することができる。しかも、ポンプ容量としては、制御Aの場合に比べて制御B及び制御Cの場合の方が大きくすることができるので、制御Aに比べてエンジン回転数が小さい状態であっても、制御Aと同じ吐出流量を油圧ポンプ6から吐出させることができる。
【0076】
そして、図6の中段に示す油圧ポンプ6からの吐出流量としては、制御Bでは制御Cに比べたら、速やかに制御Aにおける吐出流量と同じ流量を油圧ポンプ6から吐出させることができる。これにより、操作レバー11aによる操作性を損なうことなく、燃費の向上を図れ、しかも、制御Aにおける操作レバー11aの操作と遜色のないエンジン制御を行うことができる。
【0077】
上述した説明では、図5に示すように、高速制御の領域F2が、略高速制御の領域F1と略平行な状態のものについて説明を行ったが、例えば、図7に示すような高速制御の領域F3に沿ったエンジン制御を行うものに対しても、本願発明は好適に適用することができる。図5において説明したと同様に、図7においても、エンジントルクが所定値T1以下の範囲では、第3目標回転数N3をエンジン2の目標回転数として、エンジン2の回転制御を行い、エンジントルクが所定値T1を超えたときには、エンジン2の目標回転数を第3目標回転数N3から第2目標回転数N2に滑らかに移行させることができる。
【0078】
エンジントルクがT2以上になって、エンジン2の目標回転数が第2目標回転数N2になった後は、高速制御の領域F3に沿ったエンジン制御を行うことができる。
【0079】
エンジン2の目標回転数を第3目標回転数N3から第2目標回転数N2に変更させる基準となる待機状態か否かの検出は、次の図8〜図12で示すように、各種の方法で求めることができる。図8には、エンジン2で駆動される油圧ポンプ6が複数設けられている構成を示している。
【0080】
一般に、油圧ポンプの吐出圧Pと吐出容量D(ポンプ容量D)とエンジントルクTとの関係は、T=P・D/200πとして表せることができる。この関係式から、図8に示すように可変容量型油圧ポンプ6a,6b(以下では、油圧ポンプ6a,6bとする。)が複数設けられている場合には、エンジントルクT=(油圧ポンプ6aにおけるポンプ圧P1×油圧ポンプ6aのポンプ容量D1+油圧ポンプ6bにおけるポンプ圧P2×油圧ポンプ6bのポンプ容量D2+・・・)/200πとして求めることができる。
【0081】
即ち、エンジン2に接続されている各油圧ポンプにおけるポンプ圧とポンプ容量との積の総和を200πで割った値として求めることができる。各油圧ポンプの吐出圧Pは、各油圧ポンプ6a、6bの吐出路に設けた圧力センサ36a、36b・・・によって検出することができ、各油圧ポンプ6a、6bのポンプ容量Dは、それぞれ斜板角センサ37a,37b・・・によって検出することができる。
【0082】
尚、油圧ポンプ6が一つだけの場合には、油圧ポンプ6aに関してだけエンジントルクの演算を行うことができる。また、油圧ポンプ6が複数ある場合には、各油圧ポンプに対して演算したそれぞれのトルクを合計して求めた値を、エンジントルクとして求めることができる。
【0083】
エンジントルクTの値としては、上述したように、直接油圧ポンプ6の吐出圧Pと吐出容量D(ポンプ容量D)とから求める代わりに、例えば、コントローラ7の内部に保持されているエンジン出力トルクの指令値を用いることもできる。
【0084】
また、図9に示すように、各アクチュエータをそれぞれ操作する各操作レバー38a、38b、38c、38d、・・・に、各操作レバー38a、38b、38c、38d・・・におけるそれぞれの操作量をパイロット圧として検出して、検出したパイロット圧のどれか一つでも、予め設定した所定値を超えたとき、あるいは、各パイロット圧の合計値が、予め設定した所定値を超えたときには、待機状態でなく非待機状態になったものとすることができる。各操作レバー38a、38b、38c、38d・・・におけるパイロット圧は、圧力センサ39a、39b、39c、39dによって検出することができる。
【0085】
更に、図10に示すように、エンジン2で駆動される各油圧ポンプ6a、6b、・・・におけるポンプ圧が、どれか一つでも予め設定した所定値を超えたとき、あるいは、各ポンプ圧の平均値が、予め設定した所定値を超えたときに、待機状態でなく非待機状態になったものとすることができる。
【0086】
更にまた、図11に示すように、エンジン2で駆動される各油圧ポンプ6a、6b、・・・におけるそれぞれの斜板角を検出する斜坂角センサ37a、37b・・・によって、各油圧ポンプ6a、6b、・・・のポンプ容量が、どれか一つでも予め設定した所定値を超えたとき、あるいは、各油圧ポンプ6a、6b、・・・のポンプ容量の合計値が、予め設定した所定値を超えたときに、待機状態でなく非待機状態になったものとすることができる。
このように、コントローラ7の演算サイクル毎に、図12に示す待機状態か否かの判別とエンジン制御を行うときの目標回転数の設定を行う。
【0087】
本発明における油圧回路としては、図1で示したようなロードセンシングタイプの油圧回路に限定されるものではなく、従来から公知のオープンセンタタイプの油圧回路に対しても本願発明を好適に適用することができる。また、オープンセンタタイプの油圧回路としては、ネガティブコントロールタイプの油圧回路とポジティブコントロールタイプの油圧回路とが知られているが、この両方のタイプの油圧回路に対しても、本願発明は好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、建設機械のディーゼルエンジンに対するエンジン制御に対して、本発明の技術思想を適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
2・・・エンジン、4・・・燃料ダイヤル、6・・・可変容量型油圧ポンプ、7・・・コントローラ、9・・・制御弁、11・・・操作レバー装置、12・・・サーボシリンダ、30・・・第1設定手段、31・・・第2設定手段、32・・・下げ幅を小さくする手段、33・・・待機状態検出手段、F1〜F3・・・高速制御の領域、 Nh・・・定格回転数(第1目標回転数)、 N2・・・第2目標回転数、N3・・・第3目標回転数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの吐出圧油により駆動される油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプから吐出した圧油を制御して前記油圧アクチュエータに給排する制御弁と、
可変に指令できる指令値の中から一つの指令値を選択して指令する指令手段と、
前記指令手段で指令された指令値に応じてエンジンの第1目標回転数を設定し、設定した前記第1目標回転数に基づいて、前記第1目標回転数よりも低い回転数である第2目標回転数を設定する第1設定手段と、
を備え、
前記第2目標回転数に基づいて、エンジン制御が行われるエンジンの制御装置であって、
前記制御弁が中立位置である待機状態であるか否かを検出する待機状態検出手段と、
前記待機状態検出手段が前記待機状態であることを検出したとき、前記第2目標回転数の下げ幅を小さくする手段と、を備え、
前記待機状態検出手段が前記待機状態であることを検出したときは、前記下げ幅を小さくする手段で下げ幅を小さくした第3目標回転数に基づいてエンジン制御が行われ、
前記第3目標回転数に基づくエンジン制御を行なっているときに、前記待機状態検出手段が前記待機状態ではないことを検出したときは、前記第3目標回転数に基づくエンジン制御から、前記第2目標回転数に基づくエンジン制御に移行することを特徴とする建設機械におけるエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記待機状態検出手段は、エンジントルクを検出して、その値が予め設定したエンジントルク用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記エンジントルク用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記待機状態検出手段は、前記制御弁を操作するパイロット圧を検出して、その値が予め設定したパイロット圧用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記パイロット圧用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記待機状態検出手段は、前記油圧ポンプのポンプ容量を検出して、その値が予め設定したポンプ容量用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記ポンプ容量用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記待機状態検出手段は、前記油圧ポンプからのポンプ吐出圧を検出して、その値が予め設定したポンプ吐出圧用の所定値以下の場合は前記待機状態と判断し、前記ポンプ吐出圧用の所定値より大きい場合は前記待機状態ではないと判断することを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるエンジンの制御装置。
【請求項6】
検出した前記油圧ポンプのポンプ容量及び検出したエンジントルクと、前記エンジン制御として目標回転数を連続的に変化させることができるエンジン制御時の目標回転数との対応関係をそれぞれ設定する第2設定手段を更に備え、
目標回転数を連続的に変化させることができる前記エンジン制御において、前記第3目標回転数に基づいてエンジン制御が行われたとき、検出した前記油圧ポンプのポンプ容量の値又は検出したエンジントルクの値に対応して、前記第2設定手段から求めた目標回転数となるように制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の建設機械におけるエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−249105(P2010−249105A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102324(P2009−102324)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】