説明

建設機械のキャブ

【課題】連結部材等の追加に伴う部品点数の増加を回避しつつ、柱部材と梁部材とを強固に接合してキャブの剛性を向上させることが可能な建設機械のキャブを提供する。
【解決手段】建設機械のキャブにおいて、左右後柱部材33の上端部分に左右前柱部材の梁部分31b等の先端部分が接合されている。梁部分31b等と左右後柱部材33との接合部分には、キャブの室内空間側から突き当てるようにして横桟部材36が溶接により接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧ショベル等の建設機械に搭載されたキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械に搭載されるキャブの柱部材として、内部が空洞のパイプ材を用いて構成されたキャブ構造が採用されている。
このような建設機械に搭載されたキャブ構造では、柱部材として用いられるパイプにも所定値以上の強度が要求される。しかしながら、強度を向上させるためにパイプの肉厚を上げたのでは、材料費や加工費等が増大してコストアップの要因となる。このため、強度面とコスト面との問題をともに解決可能なパイプの補強構造が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、柱部材と梁部材との接合部分に連結部材を配置し、この連結部材を介して柱部材と梁部材とを互いに接合する構造を有するキャブについて開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の建設機械のキャブでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された建設機械のキャブでは、柱部材と梁部材との接合部分に、互いの接合を補助するための連結部材を設ける必要がある。このため、キャブを構成する部品点数の増加につながってしまう。
【0005】
本発明の課題は、連結部材等の追加に伴う部品点数の増加を回避しつつ、柱部材と梁部材とを強固に接合してキャブの剛性を向上させることが可能な建設機械のキャブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る建設機械のキャブは、柱部材と、梁部材と、横桟部材と、を備えている。柱部材は、略鉛直方向に沿って配置されている。梁部材は、柱部材の上端部分に対して接合され、略鉛直方向に交差する方向に沿って配置されている。横桟部材は、左右一対の柱部材間あるいは梁部材間をつなぐように配置されており、柱部材と梁部材との接合部分に対して室内空間側から端部を当接させた状態で接合されている。
【0007】
ここでは、柱部材と梁部材との接合部分に対して、左右一対の柱部材間、あるいは梁部材間をつなぐ横桟部材の端部を当接させるようにして接合させた構成を採用している。
ここで、上記横桟部材は、柱部材および梁部材の双方に対して交差する方向に沿って、左右一対の柱部材の間、あるいは梁部材の間に配置されている。また、柱部材と梁部材との接合部分については、例えば、柱部材の上端部分の一部を切り欠いた部分に梁部材を載せて接合したり、単に柱部材の上端部分に梁部材を載せた状態で接合したりしてもよい。なお、上記横桟部材が接合部分に対して当接する室内空間側とは、キャブ内に形成される室内空間を意味している。
これにより、例えば、建設機械の転倒時等においてキャブの側面に対して大きな負荷が付与された場合でも、キャブの室内空間側から横桟部材によって接合部分を支持することができる。この結果、簡素な構成であっても、キャブの剛性を向上させることができる。
【0008】
第2の発明に係る建設機械のキャブは、第1の発明に係る建設機械のキャブであって、柱部材と梁部材とを互いに接合させる接合補助部材を、さらに備えている。
【0009】
ここでは、接合補助部材を介して、柱部材と梁部材とを接合させる。
ここで、接合補助部材は、例えば、柱部材の側面に先端を当接させ、梁部材の中空部分に外周部が挿入されるパイプ材等が含まれる。
これにより、柱部材と梁部材との接合部分を複雑な形状に加工することなく、互いに強固に接合することができる。
【0010】
第3の発明に係る建設機械のキャブは、第1または第2の発明に係る建設機械のキャブであって、横桟部材は、柱部材と梁部材との接合部分に形成された段差部に合わせて形成された切欠き部を有している。
ここでは、上述した柱部材と梁部材とを接合した部分に形成される段差部の形状に合わせて、横桟部材の接合部分を切り欠いて切欠き部を形成している。
これにより、横桟部材は、柱部材および梁部材を側面から支持するだけでなく、柱部材を前後方向においても支持することができる。この結果、キャブ側面からの負荷に加えて、キャブ背面からの負荷に対しても強度的に優れたキャブを構成することができる。
【0011】
第4の発明に係る建設機械のキャブは、第3の発明に係る建設機械のキャブであって、柱部材と梁部材との接合部分において、切欠き部に沿って接合された溶接部をさらに備えている。
【0012】
ここでは、柱部材と梁部材との接合部分の段差部の形状に合わせて形成された切欠き部に沿って溶接接合を行う。
これにより、例えば、幅が異なる柱部材と梁部材とを接合し、接合部分において段差部を形成した場合でも、横桟部材によって切欠き部を中心として溶接部の長さを十分に確保して、接合部分の強度を向上させることで、剛性に優れたキャブを構成することができる。
【0013】
第5の発明に係る建設機械のキャブは、第1から第4の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブであって、横桟部材は、室内空間に設置される各種機器が取り付けられる取付部を有している。
ここでは、柱部材と梁部材との接合部分を側面から支持する横桟部材に対して、室内空間に設置される、例えば、スピーカ等の機器を取り付ける。
【0014】
これにより、スピーカ等の各種機器を取り付けるための部材を別途設けることなく、横桟部材の機能をさらに追加して、部品点数をさらに減らすことができる。
【0015】
第6の発明に係る建設機械のキャブは、第1から第5の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブであって、横桟部材は、パイプ材である。
ここでは、横桟部材として、パイプ材を用いている。
これにより、横桟部材の重量を削減しつつ、先端部分に切欠き部等を形成する際の加工性を向上させ、横桟部材として強度的に優れた部材を用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る建設機械のキャブによれば、部品点数の増加を回避しつつ、十分な強度を備えたキャブの構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの全体構成を示す側面図。
【図2】図1の油圧ショベルに搭載されたキャブの構成を示す斜視図。
【図3】図2のキャブの背面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】図2〜図4のキャブの後方における各部材の接合構造を示す斜視図。
【図6】図2〜図4のキャブの後方における各部材の接合構造を示す斜視図。
【図7】(a)は、図2等のキャブを構成する左前柱部材の全体構成を示す側面図。(b)は、Y方向から見た断面図。
【図8】(a)は、図2等のキャブを構成する左後柱部材の断面形状を示す断面図。(b)は、その全体構成を示す側面図。
【図9】図2等のキャブを構成する横桟部材の全体構成を示す正面図。
【図10】(a)は、左前柱部材の梁部分と左後柱部材との接合部分の構成を示す平面図。(b)は、接合部分に使用された接合補助部材を示す正面図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るキャブ後方の構成を示す拡大斜視図。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係るキャブ後方の構成を示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る油圧ショベル(建設機械)1のキャブ10について、図1〜図10を用いて説明すれば以下の通りである。
[油圧ショベル1の構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、旋回フレーム3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10と、を備えている。
【0019】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前後進させるとともに、上面側に旋回フレーム3を旋回可能な状態で搭載している。
旋回フレーム3は、下部走行体2上において任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10と、を搭載している。
【0020】
作業機4は、ブームと、ブームの先端に取り付けられたアームと、アームの先端に取り付けられたバケットとを含むように構成されており、油圧シリンダによってアームやバケット等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回フレーム3の後部に配置されている。
【0021】
エンジン6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための駆動源であって、カウンタウェイト5に隣接する位置に配置されている。
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回フレーム3上における作業機4の取り付け部分の側方となる左側前部に配置されている。なお、このキャブ10の構造については、後段にて詳述する。
【0022】
[キャブ10の構造]
本実施形態のキャブ10は、図2〜図4に示すように、5本の柱部材31〜35や横桟部材36、蓋部材41、背面窓部W等を含むように構成されている。なお、以下の説明では、左右前柱部材31,32および左右後柱部材33,34について、左前柱部材31および左後柱部材33のみを、図7(a)および図8(b)等に示して説明しているが、右前柱部材32および右後柱部材34についても左右対称に配置された同様の構成を有しているものとする。
【0023】
柱部材31〜35は、左前柱部材31と、右前柱部材32と、左後柱部材33と、右後柱部材34と、左中柱部材35と、を含むように構成されている。
左前柱部材31および右前柱部材32は、図2に示すように、キャブ10における左右の前方に配置されており、いわゆるAピラーと呼ばれる柱として使用されている。左前柱部材31は、図5および図6に示すように、梁部分31bのそれぞれの先端部分が左右後柱部材33の上端部側面に対して、接合補助部材42を介して溶接接合される。また、左右前柱部材31は、図7(b)に示すように、内部が中空の異形断面を有している。そして、左右前柱部材31は、図7(a)に示すように、中央部付近において屈曲して、キャブ10の前方において床面から立設される柱の部分(柱部分31a)と天井面を構成する梁の部分(梁部分(梁部材)31b)とを含んでいる。なお、上記異形断面とは、円管状のパイプを除く、例えば、断面が略四角形や複雑な形状のものを意味する。また、右前柱部材32側についても同様に、柱部分や梁部分等を有しているものとする。
【0024】
左後柱部材33および右後柱部材34は、図2に示すように、キャブ10における左右の後方に配置されており、いわゆるCピラーと呼ばれる柱として利用されている。左右後柱部材33,34は、図8(a)に示すように、内部が中空の略四角形の異形断面を有している。そして、左右後柱部材33,34は、ほぼ直線状の柱としてキャブ10の後方において床面から立設されている。また、左右後柱部材33,34は、図2および図3に示すように、その上端部付近同士を横桟部材36によって互いに接合されている。さらに、左右後柱部材33,34は、図8(a)および図8(b)に示すように、上端部の端部開口を塞ぐように、後述する蓋部材41が溶接接合されている。
【0025】
また、左右前柱部材31,32の梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分には、図6等に示すように、キャブ10の幅方向における寸法が、梁部分31b等の方が左右後柱部材33,34よりも小さいため、段差部Yが形成されている。
さらに、左右前柱部材31,32の梁部分31b等と左右後柱部材33,34の上端部との接合部分は、図5に示すように、キャブ10の側面に相当する面において、梁部分31bの下部平面31bbと左後柱部材33の外側面とがほぼフラットになるように接合されている。そして、このほぼフラットな外側面には、図示しない窓ガラスが取り付けられる。
【0026】
左中柱部材35は、いわゆるBピラーと呼ばれる柱として使用されており、左前柱部材31の梁部分31bと床面との間に立設される。
横桟部材36は、図9に示すように、内部が中空のパイプ材を用いて形成されており、図2等に示すように、左右後柱部材33,34の上端部付近同士の間を溶接接合する。また、横桟部材36は、図5および図6に示すように、上述した左右前柱部材31,32の梁部分31b等と左右後柱部材33,34の上端部分との接合部分に対して、両端部を突き当てるようにして当接させた状態で溶接接合される。さらに、横桟部材36は、図9に示すように、両端部分に切欠き部36a,36aを有している。このため、図5および図6に示すように、梁部分31b等と左右後柱部材33,34の上端部分との接合部分に形成される段差部Y(図6参照)の形状に合わせて当接させた状態を形成し、梁部分31b等の側面を支持することができる。さらに、横桟部材36は、図9に示すように、背面窓部Wの窓枠の上方に設置されるスピーカ等の電装品が取り付けられる取付部36b,36bを有している。
【0027】
蓋部材41は、図5および図6に示すように、左右後柱部材33,34の上端部における端部開口を覆うように溶接接合される板状の部材であって、左右後柱部材33,34の端部開口の形状に合わせた形状に加工されている。このように、左右後柱部材33,34の上端部における開口端部内に蓋部材41を溶接接合することで、梁部分31b等が溶接接合される左右後柱部材33,34上部の断面強度を向上させることができる。
【0028】
接合補助部材42は、図5、図10(a)および図10(b)に示すように、左右後柱部材33,34に対して突き当てられる梁部分31b等の開口内にその一端が挿入された状態で溶接接合されている。一方、接合補助部材42の他端は、左右後柱部材33,34の外周面に沿って当接した状態で溶接接合されている。これにより、接合補助部材42を介して、左右前柱部材31,32(梁部分31b等)と、左右後柱部材33,34とを強固に溶接接合することができる。
【0029】
<キャブ10後方における各部材の接合構造>
本実施形態では、上述した各部材を用いて以下のように溶接接合し、キャブ10側面側や背面側からの負荷に対して剛性の高いキャブ構造を得ることができる。
具体的には、キャブ10では、図5および図6に示すように、左右後柱部材33,34の上端部分に対して、接合補助部材42を介して左右前柱部材31,32の梁部分31b等が溶接接合される。そして、これらの接合部分に対して、キャブ10の室内空間側(図5のS側)から突き当てるようにして、横桟部材36が溶接接合される。これにより、上記接合部分は、横桟部材36の両端部においてそれぞれ支持されるため、キャブ10の側方からの負荷に対して、キャブ10の剛性を向上させることができる。
【0030】
また、上記接合部分には、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との幅の違いによって段差部Y(図6参照)が形成されている。そして、横桟部材36は、その両端部にそれぞれ切欠き部36a,36aを有している。これにより、段差部Yに合わせて切欠き部36aを突き当てるようにして当接させた状態で、上記接合部分に対して横桟部材36を溶接接合することで、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分を側方から強固に支持することができる。
また、左右後柱部材33,34の上端部では、端部開口を塞ぐように蓋部材41が溶接接合されている。このように、梁部分31b等が溶接接合される左右後柱部材33,34の上端部の開口端部を覆うように蓋部材41を設けたことで、左右後柱部材33,34の断面強度を向上させることができる。
【0031】
[本キャブ10の特徴]
(1)
本実施形態のキャブ10では、図5および図6に示すように、左右後柱部材33,34の上端部分に左右前柱部材31,32の梁部分31b等の先端部分が接合されている。梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分には、図5および図6に示すように、キャブ10の室内空間側から突き当てるようにして当接させた状態で横桟部材36が溶接接合される。
【0032】
これにより、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分を、横桟部材36によって側面から支持することで、例えば、キャブ10の側面側等からの負荷に対して、梁部分31b等と左右後柱部材33,34の上端部との接合を、従来よりも強固なものとすることができる。この結果、簡素な構成によってキャブ10の剛性を向上させることができる。
【0033】
(2)
本実施形態のキャブ10では、図5、図10(a)および図10(b)に示すように、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合を、接合補助部材42を用いて行っている。
これにより、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分に、切欠き部等の特別な加工を施すことなく、強固に接合することができる。
【0034】
(3)
本実施形態のキャブ10では、図5および図6に示すように、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分に対して端部を突き当てるようにして接合される横桟部材36は、梁部分31b等と左右後柱部材33,34の双方の側面を支持するように接合される。
これにより、上記接合部分を、横桟部材36によって確実に支持することができる。よって、キャブ10の側方からの負荷に対するキャブ10の剛性を向上させることができる。
【0035】
(4)
本実施形態のキャブ10では、図6等に示すように、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分には、段差部Yが形成される。
これにより、段差部Yに対して側方から横桟部材36を突き当てるようにして当接させた状態で接合することで、側方からの負荷に対するキャブ10の剛性を向上させることができる。
【0036】
(5)
本実施形態のキャブ10では、図6等に示すように、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分に形成された段差部Yに対して、端部に切欠き部36aが形成された横桟部材36を当接させた状態で接合される。
これにより、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分に段差部Yがある場合でも、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との双方の側面を、横桟部材36の端部において支持することができる。
【0037】
(6)
本実施形態のキャブ10では、図6に示すように、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分では、横桟部材36の両端に形成された切欠き部36a,36aに沿って溶接部Xが形成される。
これにより、梁部分31b等と左右後柱部材33,34と横桟部材36との接合部分において、十分な長さの溶接部分を設けることができる。よって、上記接合部分の接合強度を従来よりも向上させることができる。
【0038】
(7)
本実施形態のキャブ10では、図9に示すように、梁部分31b等と左右後柱部材33,34との接合部分に対して両端を当接させた状態で接合される横桟部材36に、スピーカ等の電装品が装着される取付部36b,36bを設けている。
これにより、横桟部材36を用いることで、キャブ10の室内空間にスピーカ等の電装品を設置することができる。
【0039】
(8)
本実施形態のキャブ10では、図9に示すように、パイプ材によって構成された横桟部材36を用いている。
これにより、切欠き部36a,36aや取付部36b,36b等を形成する際の加工性を向上させるとともに、軽量かつ強度的に優れた部材とすることができる。
【0040】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
(A)
上記実施形態では、横桟部材36によって、左前柱部材31の梁部31bと左後柱部材33との接合部分の段差部Yに沿ってそれぞれの部材を側面から支持する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
つまり、柱部材と梁部材との接合部分における室内空間側には、必ずしも段差部が形成されている必要はない。
例えば、図11に示すように、左後柱部材33と梁部分131bとの接合部分に段差がない場合には、突き当てられる横桟部材136の先端部の形状をフラットにして、そのまま接合すればよい。この場合でも、柱部材および梁部材をそれぞれ側面から支持することができるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0042】
(B)
上記実施形態では、左前柱部材31の梁部分31bと左後柱部材33との接合を、接合補助部材42を介して行った例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
接合補助部材については必ずしも必要ではなく、例えば、図12に示すように、左後柱部材233の上端部の一部を切り欠いて、その切欠き部分に梁部分231bの先端部分を載置した状態で接合した構成であってもよい。
この場合には、左後柱部材233の上端部には、切欠き部分に隣接して突出部233aが形成されており、左後柱部材の切欠き部分等の上に載置された梁部分231bは、側面部分が突出部233a等に当接した状態で左後柱部材233に接合される。ここで、左後柱部材233の上端部分に形成された突出部233aは、左後柱部材233の上端部分において切欠き部分の形成によって残された部分を意味しており、例えば、キャブの室内空間側の一部を言う。
【0044】
(C)
上記実施形態では、接合部分における幅に差がある柱部材(左後柱部材33)と梁部材(左前柱部材31の梁部分31b)とを用いてキャブ10を構成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、互いに接合される柱部材と梁部材とがほぼ同じ幅を有する部材同士を用いて、幅方向においてずらして接合させた構成であってもよい。
ただし、接合部分においてほぼ同じ幅を有する柱部材と梁部材とを用いてキャブを構成する場合でも、幅方向にずらして接合する場合には段差部が形成されることになる。この場合には、上記実施形態のように、段差部の形状に合わせて先端部分が加工された横桟部材を用いて各部材を支持することが好ましい。
【0045】
(D)
上記実施形態では、左右前柱部材31,32の梁部分31b等と左右後柱部材33,34とが交差する接合部分に対して、本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の適用箇所として、上記以外にも、例えば、左中柱部材の上端部分と左前柱部材の梁部材との接合部部分を用いてもよい。
この場合でも、左中柱部材の上端部分に形成された突出部によって梁部材を支持することで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(E)
上記実施形態では、左右前柱部材31,32が、中央部付近において折り曲げられて、キャブ10の前方において床面から立設される柱部分31a等と天井面を構成する梁部分31b等とを含むように構成されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、柱部分と梁部分とが別個独立した部材として構成されていてもよい。
【0047】
(F)
上記実施形態では、本発明の構成を含むキャブが搭載された建設機械として、油圧ショベル1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ホイルローダ等の他の建設機械に搭載されるキャブに対しても、当然に本発明の適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の建設機械のキャブは、部品点数の増加を回避しつつ、十分な強度を備えたキャブの構造を得ることができるという効果を奏することから、油圧ショベルだけでなく、他の建設機械に搭載されるキャブに対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回フレーム
4 作業機
5 カウンタウェイト
6 エンジン
10 キャブ
31 左前柱部材
31a 柱部分
31b 梁部分(梁部材)
31bb 下部平面
32 右前柱部材
33 左後柱部材(柱部材)
34 右後柱部材(柱部材)
35 左中柱部材
36 横桟部材
36a 切欠き部
36b 取付部
41 蓋部材
42 接合補助部材
131b 梁部分
136 横桟部材
231b 梁部分
233 左後柱部材(柱部材)
233a 突出部
P 履帯
W 背面窓部
X 溶接部
Y 段差部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2006−321372号公報(平成18年11月30日公開)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略鉛直方向に沿って配置された柱部材と、
前記柱部材の上端部分に対して接合され、略鉛直方向に交差する方向に沿って配置された梁部材と、
左右一対の前記柱部材間あるいは前記梁部材間をつなぐように配置されており、前記柱部材と前記梁部材との接合部分に対して室内空間側から端部を当接させた状態で接合された横桟部材と、
を備えている建設機械のキャブ。
【請求項2】
前記柱部材と前記梁部材とを互いに接合させる接合補助部材を、さらに備えている、
請求項1に記載の建設機械のキャブ。
【請求項3】
前記横桟部材は、前記柱部材と前記梁部材との接合部分に形成された段差部に合わせて形成された切欠き部を有している、
請求項1または2に記載の建設機械のキャブ。
【請求項4】
前記柱部材と前記梁部材との接合部分において、前記切欠き部に沿って接合された溶接部をさらに備えている、
請求項3に記載の建設機械のキャブ。
【請求項5】
前記横桟部材は、室内空間に設置される各種機器が取り付けられる取付部を有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ。
【請求項6】
前記横桟部材は、パイプ材である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−42800(P2010−42800A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151497(P2009−151497)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】