説明

建設機械の制御装置

【課題】 ブームシリンダBCのピストン側室の戻り油を効率よく利用するとともに、その戻り油の一部をロッド側室に再生する。
【解決手段】ブームシリンダBCのビストン側室25に連通する一方の通路24に、下降時におけるブームシリンダBCのピストン側室25の戻り油を回生流量として上記油圧モータに導く回生流量制御弁26と、必要に応じて戻り油を再生流量として上記他方の通路に合流させてブームシリンダのロッド側室30に導く再生流量制御弁32とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブームシリンダの戻り油を回生流量および再生流量とする建設機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブームシリンダの戻り油を利用して油圧モータを回転するとともに、この油圧モータの回転力で発電機を回す制御装置は、特許文献1に示すように従来から知られている。この従来の装置は、ブームシリンダのピストン側室と操作弁とを接続する通路過程に回生流量制御弁を設けるとともに、この回生流量制御弁を油圧モータに接続している。
【0003】
そして、上記回生流量制御弁で回生流量を制御しながら、ブームシリンダの下降速度を制御するとともに、ブームシリンダの戻り油で上記回生流量以外の流量は、操作弁を経由してブームシリンダのロッド側室に一部再生するとともにタンクに戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−081550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにした従来の制御装置では、操作弁を経由して再生流量を、ブームシリンダのロッド側室に一部戻すようにしているが、回生流量が操作弁を流れなくなったので、十分な再生流量を確保できない。このように再生流量を十分に確保できないとブームシリンダのロッド側室が負圧になって、スムーズな作動が損なわれるとともに、その作動中に音を発生するという問題があった。
この発明の目的は、ブームシリンダの下降速度を制御しながら十分な再生流量を確保できる建設機械の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、メインポンプと、このメインポンプに接続した複数の操作弁を備えた回路系統と、これら複数の操作弁のうち特定の操作弁に接続したブームシリンダと、この特定の操作弁とブームシリンダのピストン側室とを連通する一方の通路と、上記特定の操作弁とブームシリンダのロッド側室とを連通する他方の通路と、ブームシリンダのピストン側室からの戻り油の作用で回転する油圧モータと、この油圧モータの回転力で発電する発電機と、この発電機の発電電力を蓄電するバッテリーとを備えている。
【0007】
そして、第1の発明は、上記ブームシリンダのピストン側室に連通する一方の通路に、下降時におけるブームシリンダのピストン側室の戻り油を回生流量として上記油圧モータに導くとともに、必要に応じて戻り油を再生流量として上記他方の通路に合流させてブームシリンダのロッド側室に導くバルブ機構を設けている。
【0008】
第2の発明は、上記バルブ機構が、上記特定の操作弁を操作してブームシリンダを下降させる下降制御時において、上記操作弁の操作量に応じて油圧モータへの供給流量を制御する制御機能を備えている。
【0009】
第3の発明のバルブ機構は、上記特定の操作弁を操作してブームシリンダを下降させる下降制御時において、上記ブームシリンダの下降速度指令が設定速度以上になったときブームシリンダの戻り油を再生流量として当該ブームシリンダのロッド側室に供給する構成にしている。
【0010】
第4の発明のバルブ機構は、パイロット室とこのパイロット室と対向する側にスプリングのばね力を作用させるとともに、上記パイロット室には比例電磁弁を介してパイロット圧源を接続する一方、上記比例電磁弁の開度をコントローラで制御する構成にしている。
【0011】
第5の発明のバルブ機構は、上記一方の通路を開放して油圧モータとの連通を遮断するノーマル位置および一方の通路を絞り制御しつつ油圧モータへの連通を開放する切換位置に切換可能にした回生流量制御弁と、ブームシリンダのピストン側室とロッド側室とを連通させる再生通路過程に設けるとともにノーマル位置で閉状態を保ち、切換位置で開状態を保つ再生流量制御弁とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、ブームシリンダの下降速度を制御しながらその戻り油を油圧モータに供給するとともに、必要に応じてロッド側室にも供給できるので、ブームシリンダの下降時に負圧を発生させることなく油圧モータを作動させることができる。
【0013】
第2の発明によれば、油圧モータに作動油を供給しながら、ブームシリンダの下降速度を制御できる。
第3の発明によれば、ブームシリンダの下降速度が設定速度以上になったとき、ブームシリンダの戻り油を再生させるようにしたので、油圧モータを効率よく回転させることができる。
【0014】
第4の発明によれば、コントローラによって制御できるので、その制御が正確にできるようになる。
第5の発明によれば、回生流量制御弁と再生流量制御弁とを個別に設けたので、それら個々の制御が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態を示す回路図である。
【図2】第2実施形態を示す回路図である。
【図3】第3実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示した第1実施形態は、可変容量型の第1,2メインポンプMP1,MP2を備えるとともに、第1メインポンプMP1は第1切換弁V1を介して第1回路系統に接続し、第2メインポンプMP2は第2切換弁V2を介して第2回路系統に接続している。
上記第1切換弁V1は、4ポート2位置の切換弁で、その一方にパイロット室を設けるとともに、このパイロット室と対向する側にスプリングのばね力を作用させ、通常はこのばね力の作用で図示のノーマル位置を保持する。
【0017】
上記第1切換弁V1が、図示のノーマル位置にあるとき、供給通路および合流通路が開き、上記供給通路を介して第1メインポンプMP1の吐出油を第1回路系統に導くとともに、上記合流通路およびチェック弁を介して、可変容量型のアシストポンプAPの吐出油を第1メインポンプMP1の吐出油と合流させる。
また、上記パイロット室にパイロット圧が作用して第1切換弁V1が図面右側である切換位置に切り換わると、上記合流通路が閉ざされるので、第1メインポンプMP1の吐出油のみが第1回路系統に供給される。
【0018】
上記第2切換弁V2は、6ポート3位置の切換弁で、その両側にパイロット室を設けるとともにセンタリングスプリングを備え、このセンタリングスプリングのばね力で通常は図示のノーマル位置を保つ。そして、このノーマル位置においては、第1切換弁V1と同様に供給通路および合流通路が開くが、これら供給通路と合流通路との間に設けた回生流路を閉じる構成にしている。なお、この回生流路は第2メインポンプMP2の吐出油を可変容量型の油圧モータMに接続している。
上記のように第2切換弁V2がノーマル位置にあれば、アシストポンプAPの吐出油は上記合流通路およびチェック弁を介して第2メインポンプMP2の吐出油と合流して、第2回路系統に導かれる。
【0019】
また、第2切換弁V2が図面右側である第1切換位置に切り換わると、上記供給通路のみが開き、第2メインポンプMP2の吐出油のみが第2回路系統に供給される。
第2切換弁V2が図面左側位置である第2切換位置に切り換わると、上記回生流路のみが開くので、第2メインポンプMP2の吐出油全量が上記油圧モータMに供給される。
【0020】
なお、図中符号1は、第1切換弁V1のパイロット室をパイロット油圧源PPに連通したり、その連通を遮断したりする電磁弁で、それが図示のノーマル位置にあるとき、パイロット油圧源PPと第1切換弁V1のパイロット室との連通を遮断し、当該電磁弁1のソレノイドを励磁して切換位置に切り換えられたとき、パイロット油圧源PPのパイロット圧を上記パイロット室に導くものである。
【0021】
また、符号2aは第2切換弁V2の一方のパイロット室とパイロット油圧源PPとを連通させたりその連通を遮断したりする電磁弁、符号2bは第2切換弁V2の他方のパイロット室とパイロット油圧源PPとを連通させたりその連通を遮断したりする電磁弁で、上記図示のノーマル位置で、上記パイロット室とパイロット油圧源PPとの連通を遮断し、切換位置に切り換えられたとき、上記パイロット室とパイロット油圧源PPとを連通させるものである。
そして、上記電磁弁1,2a,2bのソレノイドはコントローラCに接続されているが、このコントローラCはオペレータが入力する信号に応じて、上記電磁弁1,2a,2bのソレノイドを励磁したり非励磁にしたりする。
【0022】
上記のようにした第1,2切換弁V1,V2に接続した第1,2メインポンプMP1,MP2は、図示していない回転数センサーを備えたエンジンEを駆動源として同軸回転するものである。
なお、図中符号3はエンジンEに設けたジェネレータで、エンジンEの余力を利用して発電機能を発揮するものである。
【0023】
上記第1メインポンプMP1は上記したように第1切換弁V1を介して第1回路系統に接続しているが、この第1回路系統は、その上流側から順に、旋回モータを制御する操作弁4、アームシリンダを制御する操作弁5、ブームシリンダBCを制御するブーム2速用の操作弁6、予備用アタッチメントを制御する操作弁7および左走行用のモータを制御する操作弁8を接続している。
【0024】
上記各操作弁4〜8のそれぞれは、中立流路9およびパラレル通路10及び第1切換弁V1を介して第1メインポンプMP1に接続している。
上記中立流路9であって、左走行モータ用の操作弁8の下流にはパイロット圧を生成するためのパイロット圧制御用の絞り11を設けている。この絞り11はそこを流れる流量が多ければ、その上流側に高いパイロット圧を生成し、その流量が少なければ低いパイロット圧を生成するものである。
【0025】
また、上記中立流路9は、上記操作弁4〜8のすべてが中立位置もしくは中立位置近傍にあるとき、第1メインポンプMP1から第1回路系統に供給された油の全部または一部を、絞り11を介してタンクTに導くが、このときには絞り11を通過する流量も多くなるので、上記したように高いパイロット圧が生成される。
【0026】
一方、上記操作弁4〜8がフルストロークの状態で切り換えられると、中立流路9が閉ざされて流体の流通がなくなる。したがって、この場合には、絞り11を流れる流量がなくなり、パイロット圧はゼロを保つことになる。
ただし、操作弁4〜8の操作量によっては、ポンプ吐出量の一部がアクチュエータに導かれ、一部が中立流路9からタンクTに導かれることになるので、絞り11は、中立流路9に流れる流量に応じたパイロット圧を生成する。言い換えると、絞り11は、操作弁4〜8の操作量に応じたパイロット圧を生成することになる。
【0027】
また、上記中立流路9であって、操作弁8と絞り11との間にはパイロット流路12を接続しているが、このパイロット流路12は、電磁切換弁13を介して、第1メインポンプMP1の傾転角を制御するレギュレータ14に接続している。
上記レギュレータ14は、パイロット流路12のパイロット圧と逆比例して第1メインポンプMP1の傾転角を制御し、その1回転当たりの押し除け量を制御する。したがって、操作弁4〜8をフルストロークして中立流路9の流れがなくなり、パイロット圧がゼロになれば、第1メインポンプMP1の傾転角が最大になり、その1回転当たりの押し除け量が最大になる。
【0028】
また、上記電磁切換弁13はパイロット油圧源PPに接続しているが、この電磁切換弁13が図示のノーマル位置である通常制御位置では、レギュレータ14がパイロット流路12に連通し、電磁切換弁13のソレノイドが励磁して切換位置に切り換わるとレギュレータ14がパイロット油圧源PPに連通する。そして、この電磁切換弁13のソレノイドは上記したコントローラCに接続しているが、コントローラCは、オペレータから信号が入力したとき、上記電磁切換弁13のソレノイドを励磁して上記切換位置に切り換え、その信号が入力しない限りソレノイドを非励磁にして、当該電磁切換弁13を上記通常制御位置に保持する。
なお、この電磁切換弁13は、すべての操作弁4〜8を中立位置に保っているときに、第1メインポンプMP1の吐出量を通常の中立時よりも少なくする。例えばロスを少なくしたい暖機運転時などに切り換えるものである。
【0029】
一方、上記第2メインポンプMP2は第2回路系統に接続しているが、この第2回路系統は、その上流側から順に、右走行用モータを制御する操作弁15、バケットシリンダを制御する操作弁16、ブームシリンダBCを制御する操作弁17およびアームシリンダを制御するアーム2速用の操作弁18を接続している。
【0030】
上記各操作弁15〜18は、中立流路19および第2切換弁V2を介して第2メインポンプMP2に接続するとともに、操作弁16,17はパラレル通路20および第2切換弁V2を介して第2メインポンプMP2に接続している。
上記中立流路19であって、操作弁18の下流側にはパイロット圧制御用の絞り21を設けているが、この絞り21は、第1回路系統の絞り11と全く同様に機能するものである。
【0031】
そして、上記中立流路19であって、最下流の操作弁18と上記絞り21との間には、パイロット流路22を接続しているが、このパイロット流路22は、第2メインポンプMP2の傾転角を制御するレギュレータ23に接続している。
【0032】
上記レギュレータ23は、パイロット流路22のパイロット圧と逆比例して第2メインポンプMP2の傾転角を制御し、その1回転当たりの押し除け量を制御する。したがって、操作弁15〜18をフルストロークして中立流路19の流れがなくなり、パイロット圧がゼロになれば、第2メインポンプMP2の傾転角が最大になり、その1回転当たりの押し除け量が最大になる。
【0033】
上記ブームシリンダBCを制御する操作弁17は、その一方のアクチュエータポートを一方の通路24を介してピストン側室25に連通しているが、その連通過程における上記通路24には、この発明のバルブ機構を構成する回生流量制御弁26を設けている。この回生流量制御弁26は、その一方の側にパイロット室26aを設けるとともに、このパイロット室26aに対向する側にスプリング26bを設けている。
上記のようにした回生流量制御弁26は、上記スプリング26bのばね力で図示のノーマル位置を保つが、パイロット室26aにパイロット圧が作用すると、図面右側である切換位置に切り換わる。
【0034】
そして、回生流量制御弁26が図示のノーマル位置にあるときには、操作弁17の一方のアクチュエータポートとピストン側室25とを連通させる主流路26cを全開させるとともに、ピストン側室25と上記油圧モータMとを連通させる回生流路26dを閉じる。
なお、図中符号27は、上記回生流路26dと油圧モータMを連通させる通路で、その通路過程には、回生流路26dから油圧モータMへの流通のみを許容するチェック弁28を設けている。
【0035】
ブームシリンダBCを制御する操作弁17の他方のアクチュエータポートは、他方の通路29を介して当該ブームシリンダBCのロッド側室30に連通させている。そして、この他方の通路29と上記ピストン側室25とを再生通路31を介して接続するとともに、この再生通路31には、この発明のバルブ機構を構成する再生流量制御弁32を設けている。この再生流量制御弁32は、その一方の側にパイロット室32aを設けるとともに、このパイロット室32aに対向する側にスプリング32bを設けている。
【0036】
上記のようにした再生流量制御弁32は、上記スプリング32bのばね力で図示のノーマル位置を保つが、このノーマル位置においては再生流路32cを閉じる一方、パイロット室32aにパイロット圧が作用すると、図面右側である切換位置に切り換わって、再生流路32cを切り換え量に応じた絞り開度に維持する。
なお、図中符号33は再生通路31に設けたチェック弁で、ピストン側室25から他方の通路29への流通のみを許容するものである。
【0037】
上記回生流量制御弁26および再生流量制御弁32のそれぞれのパイロット室26a,32aは、比例電磁弁34を介してパイロット油圧源PPに接続している。この比例電磁弁34は、その一方にコントローラCに接続したソレノイド34aを設け、このソレノイド34aとは反対側にスプリング34bを設けている。
【0038】
このようにした比例電磁弁34は、スプリング34bのばね力で図示のノーマル位置を保つが、オペレータの入力信号に応じてコントローラCがソレノイド34aを励磁すると切り換わるとともに、その励磁電流に応じて開度が制御される構成にしている。
したがって、回生流量制御弁26および再生流量制御弁32のパイロット室26a,32aに作用するパイロット圧は、コントローラCによって制御できる。
ただし、回生流量制御弁26のスプリング26bに対して、再生流量制御弁32のスプリング32bのばね力の方を大きくし、同じパイロット圧でも再生流量制御弁32の開くタイミングが遅くなる設定にしている。
【0039】
また、回生流量制御弁26の回生流路26dに連通した油圧モータMは、上記アシストポンプAPと同軸回転するとともに、電動モータ兼発電機35に連係している。この電動モータ兼発電機35は、油圧モータMが回転することによって発電機能を発揮するとともに、この電動モータ兼発電機35で発電された電力は、インバータ36を介してバッテリー37に充電されるようにしている。そして、このバッテリー37はコントローラCに接続し、バッテリー37の蓄電量をコントローラCが把握できるようにしている。
【0040】
なお、図中符号38はバッテリーチャージャーで、ジェネレータ3で発電された電力をバッテリー37に充電するためのものであるが、この実施形態では、バッテリーチャージャー38を、家庭用の電源などの別系統の電源39にも接続している。
【0041】
また、上記油圧モータMはレギュレータ40でその傾転角が制御される。そして、レギュレータ40はコントローラCに接続され、コントローラCからの信号に応じて上記傾転角が制御されるようにしている。
上記アシストポンプAPも可変容量型であって、そのレギュレータ41で傾転角が制御されるとともに、レギュレータ41はコントローラCに接続されている。
【0042】
したがって、油圧モータMが電動モータ兼発電機35を回しているときには、アシストポンプAPの傾転角を最小にして、その負荷が油圧モータMにほとんど作用しない状態に設定できる。また、電動モータ兼発電機35を電動モータとして機能させれば、その駆動力で上記アシストポンプAPが回転してポンプ機能を発揮させることができる。
【0043】
上記のようにした第1実施形態において、電磁弁1,2a,2bを非励磁にし、第1,2切換弁V1,V2を図示のノーマル位置に保った状態で、第1,2メインポンプMP1,MP2から作動油を吐出させれば、それらの吐出油は第1,2回路系統に供給される。
このときにアシストポンプAPからも作動油を吐出させれば、その吐出油は、上記第1,2メインポンプMP1,MP2の吐出油と合流して第1,2回路系統に供給される。
【0044】
そして、上記のようにアシストポンプAPを回転させるためには、電動モータ兼発電機35をバッテリー37に蓄電した電力で電動モータとして回転させその回転力をアシストポンプAPの駆動源とすることができる。この場合には、油圧モータMの傾転角を最少にしてその負荷を小さくし、電動モータとして機能する電動モータ兼発電機35の出力損失を最小にする。
また、油圧モータMの回転力でアシストポンプAPを回すこともできるが、油圧モータMを駆動源にする場合については後で説明する。
【0045】
なお、上記第1,2メインポンプMP1,MP2のレギュレータ14,23に導かれる圧力を検出する圧力センサー42,43を設け、その圧力信号がコントローラCに入力される構成にしている。そして、コントローラCは、この圧力センサー42,43の圧力信号に応じてアシストポンプAPの傾転角をあらかじめ設定された角度に維持するが、それは上記圧力信号に応じて、最も効率的なアシスト出力が得られるように設定されている。
【0046】
また、第1切換弁V1を図面右側の切換位置に切りかえるとともに、第2切換弁V2を図面右側の第1切換位置に切りかえると、第1,2メインポンプMP1,MP2の吐出油のみが第1,2回路系統に供給される。
さらに、第2切換弁V2を図面左側の第2切換位置に切りかえると、第2メインポンプMP2の吐出油が油圧モータMに供給される。したがって、第2回路系統に接続したアクチュエータを作動させていないときに、オペレータが第2切換弁V2を第2切換位置に切り換えれば、油圧モータMを回転して電動モータ兼発電機35に発電機能を発揮させることができる。このようにして電動モータ兼発電機35で発電された電力はインバータ36を介してバッテリー37に充電される。
【0047】
なお、上記のように油圧モータMで電動モータ兼発電機35を回しているときには、アシストポンプAPの傾転角を最小に保って発電効率を上げることができる。
また、コントローラCはバッテリー37の蓄電量を検出し、その蓄電量に応じて油圧モータMの回転数を制御する機能を備えている。
【0048】
一方、上記油圧モータMは、ブームシリンダBCの下降時にピストン側室25から排出される戻り油によっても回転させることができる。すなわち、コントローラCはブームシリンダBCを操作する操作レバー(図示していない)の操作方向に応じて、当該ブームシリンダBCが上昇するのか下降するのかを判定する。そして、ブームシリンダBCが下降するときには、その操作レバーの操作量に応じて、言い換えるとオペレータが意図したブームシリンダBCの下降速度に応じて、コントローラCは比例電磁弁34のソレノイド34aの励磁電流を制御する。したがって、比例電磁弁34は、オペレータが意図した下降速度が大きければ大きいほどその開度が大きくなる。
【0049】
上記のようにして比例電磁弁34が開くと、パイロット油圧源PPからのパイロット圧が回生流量制御弁26のパイロット室26aと再生流量制御弁32のパイロット室32aとに導かれる。
ただし、上記したように回生流量制御弁26のスプリング26bの方が、再生流量制御弁32のスプリング32bのばね力よりも小さいので、回生流量制御弁26が先に切換位置に切り換わる。そして、このときの回生流量制御弁26の切り換え量は上記パイロット圧に比例したものになる。
【0050】
上記のようにして回生流量制御弁26が切換位置に切り換われば、ブームシリンダBCのピストン側室25からの戻り油は、回生流量制御弁26の切り換え量に応じて、一方の通路24に戻る流量と油圧モータMに供給される流量とに配分される。
なお、このときコントローラCは、ブームシリンダBCが目的の下降速度を維持するために、油圧モータMやアシストポンプAPの傾転角を制御して、それらモータMおよびアシストポンプAPの負荷を制御する。
【0051】
そして、オペレータが意図する下降速度が大きくなれば、比例電磁弁34の開度も大きくなるので、その分、上記パイロット室26a、32aに作用するパイロット圧も大きくなる。このようにパイロット圧が大きくなれば、再生流量制御弁32が切換位置に切り換わり、そのパイロット圧に比例した分だけ再生流路32cを開く。
このように再生流路32cが開けば、ブームシリンダBCのピストン側室25からの戻り油の一部が再生通路31および他方の通路29を経由してブームシリンダBCのロッド側室30に供給される。
【0052】
上記のようにブームシリンダBCの下降速度が大きくなったときに、ピストン側室25の戻り油をロッド側室30に再生させたのは、ロッド側室30が負圧になって異音が発生しないようにするためである。
そして、再生流量制御弁32が開くタイミングとその開度は、比例電磁弁34の開度とスプリング32bのばね力などによって決まるが、それはブームシリンダBCに求められる特性などによってあらかじめ設定される。
【0053】
なお、上記油圧モータMの回転力でアシストポンプAPの回転力をアシストすることもできるが、油圧モータMに流入する圧力は第2メインポンプMP2の吐出圧よりも低いことが考えられる。しかし、この実施形態では、圧力が低くてもアシストポンプAPに高い吐出圧を維持させるために、油圧モータMおよびアシストポンプAPによって増圧機能を発揮させるようにしている。
【0054】
すなわち、上記油圧モータMの出力は、1回転当たりの押しのけ容積Qとそのときの圧力Pの積で決まる。また、アシストポンプAPの出力は1回転当たりの押しのけ容積Qと吐出圧Pの積で決まる。そして、この実施形態では、油圧モータMとアシストポンプAPとが同軸回転するので、Q×P=Q×Pが成立しなければならない。そこで、例えば、油圧モータMの上記押しのけ容積Qを上記アシストポンプAPの押しのけ容積Qの3倍すなわちQ=3Qにしたとすれば、上記等式が3Q×P=Q×Pとなる。この式から両辺をQで割れば、3P=Pが成り立つ。
したがって、アシストポンプAPの傾転角を変えて、上記押しのけ容積Qを制御すれば、油圧モータMの出力で、アシストポンプAPに所定の吐出圧を維持させることができる。言い換えると、ブームシリンダBCからの油圧を増圧してアシストポンプAPから吐出させることができる。
【0055】
図2に示した第2実施形態は、回生流量制御弁26と再生流量制御弁32とを2位置4ポート弁としたもので、実質的には再生流量制御弁32のみを第1実施形態と相違させたものである。つまり、第1実施形態における再生流量制御弁32は、2位置2ポート弁であるが、この第2実施形態の再生流量制御弁32は上記したように2位置4ポート弁としている。ただし、第2実施形態の再生流量制御弁32の機能は第1実施形態の再生流量制御弁と同じである。すなわち、そのノーマル位置において、再生流路32cを閉じるとともに、その切換位置において再生流路32cを開くようにしたものである。
【0056】
上記のように第2実施形態において再生流量制御弁32を2位置4ポート弁にしたのは、回生流量制御弁26と再生流量制御弁32とのポート数を同じにしておけば、それらのバルブ本体を共通化できるメリットがあるからである。
【0057】
図3に示した第3実施形態は、第1,2実施形態とは次の点で相違する。第1,2実施形態は、この発明のバルブ機構を回生流量制御弁26と再生流量制御弁32との2つのバルブで構成したが、第3実施形態はそれらを1つの合成弁44にした点が相違する。
すなわち、上記合成弁44は、2位置6ポート弁とし、その一方に第1実施例と同じ比例電磁弁34を介してパイロット油圧源PPに接続したパイロット室44aを設け、このパイロット室44aに対向する側にスプリング44bを設けている。また、この合成弁44には、主流路44c,回生流路44dおよび再生流路44eを設けるとともに、当該合成弁44が図示のノーマル位置にあるときには、主流路44cのみを全開状態に維持するようにしている。
【0058】
また、上記回生流路44dおよび再生流路44eは、合成弁44の切換位置において切り換わるが、それは図示していないスプールの移動量に応じて、開くタイミンが異なるようにしている。
以上の点以外は、第1,2実施形態と全く同じなので、その詳細な説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明は、パワーショベルに用いるのに最適である。
【符号の説明】
【0060】
MP1 第1メインポンプ
MP2 第2メインポンプ
M 油圧モータ
4〜8 操作弁
15〜18 操作弁
BC ブームシリンダ
24 一方の通路
25 ピストン側室
26 回生流量制御弁
26a パイロット室
26b スプリング
30 ロッド側室
32 再生流量制御弁
32a パイロット室
32b スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインポンプと、このメインポンプに接続した複数の操作弁を備えた回路系統と、これら複数の操作弁のうち特定の操作弁に接続したブームシリンダと、この特定の操作弁とブームシリンダのピストン側室とを連通する一方の通路と、上記特定の操作弁とブームシリンダのロッド側室とを連通する他方の通路と、ブームシリンダのピストン側室からの戻り油の作用で回転する油圧モータと、この油圧モータの回転力で発電する発電機と、この発電機の発電電力を蓄電するバッテリーとを備えた建設機械の制御装置において、上記ブームシリンダのピストン側室に連通する一方の通路に、下降時におけるブームシリンダのピストン側室の戻り油を回生流量として上記油圧モータに導くとともに、必要に応じて戻り油を再生流量として上記他方の通路に合流させてブームシリンダのロッド側室に導くバルブ機構を設けた建設機械の制御装置。
【請求項2】
上記バルブ機構は、上記特定の操作弁を操作してブームシリンダを下降させる下降制御時において、上記操作弁の操作量に応じて油圧モータへの供給流量を制御する制御機能を備えた請求項1記載の建設機械の制御装置。
【請求項3】
上記バルブ機構は、上記特定の操作弁を操作してブームシリンダを下降させる下降制御時において、上記ブームシリンダの下降速度指令が設定速度以上になったときブームシリンダの戻り油を再生流量として当該ブームシリンダのロッド側室に供給する構成にした請求項1または2記載の建設機械の制御装置。
【請求項4】
上記バルブ機構はパイロット室とこのパイロット室と対向する側にスプリングのばね力を作用させるとともに、上記パイロット室には比例電磁弁を介してパイロット圧源を接続する一方、上記比例電磁弁の開度をコントローラで制御する構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載の建設機械の制御装置。
【請求項5】
上記バルブ機構は、上記一方の通路を開放して油圧モータとの連通を遮断するノーマル位置および一方の通路を絞り制御しつつ油圧モータへの連通を開放する切換位置に切換可能にした回生流量制御弁と、ブームシリンダのピストン側室とロッド側室とを連通させる再生通路過程に設けるとともにノーマル位置で閉状態を保ち、切換位置で開状態を保つ再生流量制御弁とからなる請求項1〜4のいずれか1に記載の建設機械の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−179541(P2011−179541A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42233(P2010−42233)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】