建設機械の排気装置
【課題】燃料を無駄に消費することなく、排ガス後処理装置内のフィルタに付着したPM等を効率良く酸化除去して浄化性能を向上させる。
【解決手段】エンジン13の排気系統に排ガス後処理装置19を設置した建設機械の排気装置において、エンジン13と排ガス後処理装置19とを接続する排気通路15の途中に設置されたエアヒータ25と、排ガス後処理装置19に内蔵されたDPF26の入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22と、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの圧力信号に基づきDPF26の目詰まり状態を判断してエアヒータ25を動作制御するコントローラ24とを備え、DPF26が目詰まりを起こす前に、エアヒータ25をオン制御して排気温度を上昇させる。
【解決手段】エンジン13の排気系統に排ガス後処理装置19を設置した建設機械の排気装置において、エンジン13と排ガス後処理装置19とを接続する排気通路15の途中に設置されたエアヒータ25と、排ガス後処理装置19に内蔵されたDPF26の入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22と、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの圧力信号に基づきDPF26の目詰まり状態を判断してエアヒータ25を動作制御するコントローラ24とを備え、DPF26が目詰まりを起こす前に、エアヒータ25をオン制御して排気温度を上昇させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の排気装置に関するものであり、特に、排気中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)等の有害物質を酸化除去することができる建設機械の排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種建設機械においては、エンジンの排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)又は窒化酸素(NOX)等の有害物質を浄化処理するために、排気管やマフラ等の排気系統に排ガス後処理装置が設置される。該排ガス後処理装置には、有害物質を吸着除去するために、白金等の貴金属(金属酸化触媒)やDPF (Diesel Particulate Filter)等のフィルタが内蔵されている。
【0003】
しかし、排ガス後処理装置においてPM等の物質が捕集されると、該PM等の物質は排ガス後処理装置内のフィルタに付着する。そして、PM等の付着量が増加すると、フィルタが目詰まりを起こし、その結果、排ガス後処理装置の排気圧力が上昇して、排ガス後処理装置の浄化性能が低下する。依って、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を酸化除去して、排ガス後処理装置の浄化性能を再生させる必要がある。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記記載の従来技術では、フィルタの目詰まりを把握することができないため、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を適時に酸化除去することができない。そこで、PM等の付着物質を酸化除去すべく、エアヒータでエンジンの排気温度を常時又は定期的に上昇させる方式が考えられる。
【0005】
しかし、前記排気温度上昇方式によれば、排気温度を上昇させる必要がない時、即ち、フィルタが目詰まりを起こしていない時にも、エアヒータで排気温度を必要以上に上昇させるので、燃料が無駄に消費されてエネルギー損失が増加するという問題が生じる。
【0006】
そこで、燃料を無駄に消費することなく、排ガス後処理装置内のフィルタに付着したPM等の物質を効率良く酸化除去して浄化性能を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、エンジンの排気系統に排ガス後処理装置が設置された建設機械の排気装置において、前記エンジンと前記排ガス後処理装置とを接続する排気通路に設置されたエアヒータと、前記排ガス後処理装置に内蔵されたフィルタの入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ及び出口側圧力センサと、該入口側圧力センサ及び出口側圧力センサからの圧力信号に基づき前記フィルタの目詰まり状態を判断して前記エアヒータを動作制御するコントローラとを備え、前記フィルタが目詰まりを起こす前に前記エアヒータをオン制御して排気温度を上昇させるように構成してなる建設機械の排気装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、DPF等のフィルタが目詰まりを起こす前に、エアヒータ(加熱手段)をオン制御して排気温度を上昇させる。これにより、触媒の活性化を促進させつつ、該フィルタに付着したPM等の物質が酸化除去される。
【0009】
請求項2の発明は、上記エンジンの排気系にターボチャージャーが設置され、該ターボチャージャーの出口又は上記排ガス後処理装置の入口に上記エアヒータが設けられていることを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、エアヒータはターボチャージャーの出口又は排ガス後処理装置の入口に設けられているので、エアヒータのオン動作により、ターボチャージャーの機能を損ねることなく、排気温度が効率良く速やかに上昇する。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記コントローラには上記排ガス後処理装置の入口温度を検出する排気温度センサが接続され、前記排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1以下である場合は、該排ガス後処理装置の入口温度が基準設定温度A2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1以下になると、エアヒータがオン動作する。この場合、エアヒータのオン動作は、排ガス後処理装置の入口温度が基準設定温度A2になるまで保持される。依って、排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1に低下しても、排気温度は適正温度に速やかに上昇する。
【0013】
請求項4記載の発明は、上記排気温度センサは上記排ガス後処理装置の入口温度を設定時間毎に検出し、該入口温度に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項3記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、排気温度センサは排ガス後処理装置の入口温度を設定時間毎に検出して、該入口温度信号をコントローラに送信する。そして、コントローラは該入口温度信号に基づきエアヒータをオン/オフ動作(スイッチング動作)を制御する。この場合、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、入口温度に応じた最適な回数に可変制御される。
【0015】
請求項5記載の発明は、上記フィルタの入口圧力が設定圧力P1以上である場合は、該入口圧力が基準設定圧力P2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、フィルタの入口圧力が設定圧力P1を越えると、エアヒータがオン動作する。この場合、エアヒータのオン動作は、フィルタの入口圧力が基準設定圧力P2に低下するまで保持される。これにより、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質は確実に酸化除去される。
【0017】
請求項6記載の発明は、上記入口側圧力センサは上記排ガス後処理装置の入口圧力を設定時間毎に検出し、該入口圧力に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0018】
この構成によれば、入口側圧力センサは排ガス後処理装置の入口圧力を設定時間毎に検出して、該入口圧力信号をコントローラに送信する。そして、コントローラは該入口圧力信号に基づきエアヒータをオン/オフ動作を制御する。この場合、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、入口圧力に応じた最適な回数に可変制御される。
【0019】
請求項7記載の発明は、上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P3が設定圧力差P4以上である場合は、該圧力差P3が基準設定圧力差P5になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差(圧損)P3が設定圧力差P4を越えると、エアヒータがオン動作する。この場合、エアヒータのオン動作は、前記圧力差P3が基準設定圧力差P5に低下するまで保持される。これにより、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質が確実に酸化除去される。
【0021】
請求項8記載の発明は、上記コントローラは上記入口側圧力センサ及び上記出口側圧力センサからの圧力信号に基づき、上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、該圧力差P6に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0022】
この構成によれば、コントローラは上記入口側圧力センサ及び上記出口側圧力センサからの圧力信号に基づき、排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、そして、該算出した圧力差P6に基づきエアヒータをオン/オフ動作を制御する。この場合、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、前記圧力差P6に応じた最適な回数に可変制御される。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明は、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を酸化除去できるので、フィルタの目詰まりを未然に防止して浄化性能が向上する。又、前記PM等を酸化除去する時のみエアヒータをオン制御するので、燃料の無駄な消費を抑制することができる。即ち、排気温度を上昇させるために、燃料を必要以上に消費しないので、大きな省エネルギー効果が期待できる。
【0024】
請求項2記載の発明は、エアヒータのオン動作により、ターボチャージャーの機能を良好に維持しつつ、排気温度を上昇させることができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、ターボチャージャー付きエンジンの燃焼効率及び排ガス後処理装置の浄化性能を向上させることができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1に低下しても、エアヒータのオン動作により、排気温度が適正範囲まで速やかに上昇するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、排ガス後処理装置の浄化性能を安定して維持することができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置の入口温度に応じて適切に変化するので、請求項3記載の発明の効果に加えて、排ガス後処理装置の入口温度が変化した場合でも、排気温度を適正範囲に常に制御できるので、排ガス後処理装置の浄化性能を一層向上させることができる。
【0027】
請求項5記載の発明は、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質をより効率良く酸化除去できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、フィルタが目詰まり状態になることを一層確実に防止できる。
【0028】
請求項6記載の発明は、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置の入口圧力に応じて変化するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、排ガス後処理装置の入口圧力が変化した場合でも、排気温度が適正範囲になるように常に制御でき、以て、排ガス後処理装置の浄化性能を一層向上させることができる。
【0029】
請求項7記載の発明は、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質をより効率良く酸化除去できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、フィルタが目詰まり状態になることを一層確実に防止できる。
【0030】
請求項8記載の発明は、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6に応じて変化するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、前記圧力差P6が変化した場合でも、排気温度が適正範囲になるように常に制御でき、以て、排ガス後処理装置の浄化性能をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、燃料を無駄に消費することなく、フィルタに付着したPM等の物質を効率良く酸化除去して浄化性能を向上させるという目的を達成するために、エンジンの排気系統に排ガス後処理装置が設置された建設機械の排気装置において、前記エンジンと前記排ガス後処理装置とを接続する排気通路に設置されたエアヒータと、前記排ガス後処理装置に内蔵されたフィルタの入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ及び出口側圧力センサと、該入口側圧力センサ及び出口側圧力センサからの圧力信号に基づき前記フィルタの目詰まり状態を判断して前記エアヒータを動作制御するコントローラとを備え、前記フィルタが目詰まりを起こす前に前記エアヒータをオン制御して排気温度を上昇させるように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図3に従って説明する。図1は本発明を適用した建設機械としての油圧ショベル1を示す。同図において、下部走行体2上には上部旋回体3が旋回自在に搭載され、該上部旋回体3の前方一側部にキャブ4が載置されている。また、上部旋回体3の前方他側部には作業機が搭載され、該作業機はブーム5,アーム6,バケット7並びに各種駆動用シリンダ8,9,10により構成されている。
【0033】
更に、キャブ4の後方にはエンジンル−ム(機械室)11が設けられ、該エンジンルーム11はエンジンカバー12により被蔽されている。又、エンジンルーム11内にはエンジン13、例えば、電子噴射制御方式のディーゼルエンジンが設けられている。
【0034】
図2は、本発明に係る排気装置の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、エンジン13には吸気管14及び排気管15が接続され、該吸気管14の上流側にはエアクリーナ16が装着されている。又、吸気管14の下流側と排気管15の上流側との間にはターボチャージャー17が介設されている。
【0035】
更に、排気管15の下流側にはマフラ18が設けられ、該マフラ18には排ガス後処理装置19が搭載されている。該排ガス後処理装置19は、排ガス中に含まれている炭化水素、一酸化炭素又は窒化酸素等の有害物質を吸着除去して浄化処理するものであり、排ガス後処理装置19内には白金等の金属酸化触媒並びにDPF26が装着されている。
【0036】
上記排ガス後処理装置19は、PM等の有害物質の吸着によってDPF26の目詰まり状態が進行する。そして、DPF26が目詰まりを起こした場合は、排気圧力が上昇して浄化性能及びエンジン13の燃焼効率が低下する。そこで、本発明の排気装置は、DPF26の目詰まり度合を把握することにより、DPF26が許容状態を越える目詰まり状態になる前に、排気温度を上昇させることにより、触媒を活性化しつつPM等の有害物質を燃焼処理(酸化除去)するように構成されている。
【0037】
即ち、本発明の排気装置では、排ガス後処理装置19の入口及び出口に夫々、目詰まり検出手段である入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22が取り付けられ、該入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22は、排ガス後処理装置19の入口圧力及び出口圧力を夫々検出する。
【0038】
更に、排ガス後処理装置19の入口には排気温度センサ23が設置され、該排気温度センサ23は、排ガス後処理装置19の入口温度を検出する。又、排気温度センサ23、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22は、エンジンコントローラ(機械コントローラ)24に電気的に接続され、該エンジンコントローラ24に排気温度センサ23、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22の検出信号が送信されるように構成されている。
【0039】
更に、ターボチャージャー17と排ガス後処理装置19とを接続する排気管15の途中にはエアヒータ25が設けられている。エアヒータ25はターボチャージャー17の出口又は排ガス後処理装置19の入口に設置することが好ましい。又、エアヒータ25のオン動作又はオフ動作はエンジンコントローラ24により制御される。
【0040】
即ち、エンジンコントローラ24は、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの検出信号に基づき、排ガス後処理装置19に内蔵したDPF26の目詰まり状態を判断する。その結果、例えば、前記DPF26が許容できない目詰まり状態に進行している場合には、エンジンコントローラ24はエアヒータ25をオン動作に制御する。
【0041】
エンジンコントローラ24は、図3に示すように、入力部24A、演算処理部24B、比較部24C、目詰まり状態判断部24D及び出力部24E等からなり、入口側圧力センサ21で検出された入口圧力と、出口側圧力センサ22で検出された出口圧力との圧力差(圧損)を算出し、該圧力差を予め設定された閾値(許容できない限界値)と比較する。そして、前記圧力差が閾値を越えた場合には、DPF26の目詰まり度合が許容できない状態に進行していると判断して、エアヒータ25にオン動作指令信号を送信して、該エアヒータ25をオン制御する。その結果、エアヒータ25の熱により、排気温度が最適温度まで速やかに上昇する。
【0042】
以上の如く本発明によると、排ガス後処理装置19のDPF26にPM等が付着して、DPF26が目詰まりを起こす前に、エンジンコントローラ24は、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの検出信号に基づき、エアヒータ25をオンに動作制御する。
【0043】
従って、エアヒータ25をオン制御して、排気管15内の排気温度を適正温度まで上昇させることにより、該DPF26に付着したPM等の有害物質を酸化除去できる。斯くして、DPF26の目詰まりが未然に防止され、加えて、触媒の活性化が促進されるので、DPF26による浄化性能が著しく向上する。
【0044】
又、DPF26が許容状態を越える目詰まり度合まで進行した時、即ち、前記PM等を酸化除去する必要がある時のみ、エアヒータ25が自動的にオン動作し、不必要な時にはオン動作しない。依って、エアヒータ25における無駄な燃料消費が抑制される。即ち、排気温度を上昇させるために、燃料が必要以上に消費されないので、顕著な省エネルギー効果を奏することができる。
【0045】
更に、ターボチャージャー17の出口又は排ガス後処理装置19の入口にエアヒータ25を設けた場合には、エアヒータ25のオン動作により、ターボチャージャー17の機能を損ねることなく排気温度が効率良く上昇する。依って、ターボチャージャー17付きエンジン13の燃焼効率及び排ガス後処理装置19の浄化性能が大幅に改善される。
【0046】
本実施例においては、排ガス後処理装置19の入口温度が設定温度A1以下、即ち、触媒の浄化機能を維持できる温度以下になると、エアヒータ25がオン動作する。この場合、前記入口温度が、浄化処理に適した基準設定温度A2(>A1)になるまで、エアヒータ25のオン動作が保持される。従って、排ガス後処理装置19の入口温度が設定温度A1以下に低下しても、排気温度は適正温度に速やかに上昇するので、排ガス後処理装置19の浄化性能を安定して維持することができる。
【0047】
又、排気温度センサ23は排ガス後処理装置19の入口温度を設定時間毎に検出して、該入口温度信号をエンジンコントローラ24に送信する。そして、エンジンコントローラ24は、排ガス後処理装置19の入口温度に基づきエアヒータ25のオン/オフ動作を(スイッチング動作)を制御する。例えば、オン動作:T1秒かつオフ動作:T2秒を1回とするスイッチング動作をX回繰り返すように制御する。
【0048】
この場合、エアヒータ25のオン/オフ動作の繰り返し回数は、前記入口温度に応じた最適な回数に制御される。従って、排ガス後処理装置19の入口温度が変化した場合でも、排気温度が適正範囲内になるように常時制御されるので、排ガス後処理装置19の浄化性能が一層向上する。
【0049】
更に、前記DPF26の入口圧力が設定圧力P1、即ち、目詰まりの許容値(閾値)に対応する圧力を越えると、エアヒータ25がオン動作する。この場合、DPF26の入口圧力が基準設定圧力(目詰まり状態が解消する時の圧力)P2(<P1)になるまで、エアヒータ25のオン動作が継続する。これにより、DPF26が目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を確実に燃焼除去できるので、DPF26が目詰まり状態になることを未然に防止できる。
【0050】
更に又、入口側圧力センサ21は排ガス後処理装置19の入口圧力を設定時間毎に検出して、該入口圧力信号をエンジンコントローラ24に送信する。そして、エンジンコントローラ24は、該入口圧力信号に基づきエアヒータ25のオン/オフ動作をスイッチング制御する。
【0051】
この場合、エアヒータ25のオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置19の入口圧力に応じた最適な回数になるように可変制御される。従って、排ガス後処理装置19の入口圧力が変化した場合でも、排気温度が適正範囲になるように自動的に制御されるので、排ガス後処理装置19の浄化性能が一層向上する。
【0052】
本実施例では、エンジンコントローラ24は、排ガス後処理装置19の入口圧力と出口圧力との圧力差P3が設定圧力差P4を越えると、エアヒータ25をオンに動作制御する。この場合、前記圧力差P3が基準設定圧力差P5(<P4)になるまで、エアヒータ25のオン動作が継続する。これにより、DPF26が目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を燃焼除去できるので、DPF26が目詰まり状態になることを一層確実に防止できる。
【0053】
又、エンジンコントローラ24は、上記入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの圧力信号に基づき、排ガス後処理装置19の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、そして、該算出した圧力差P6に基づきエアヒータ25のオン/オフ動作を制御する。
【0054】
この場合、エアヒータ25のオン/オフ動作の繰り返し回数は、前記算出した圧力差P6に応じた最適な回数に制御される。例えば、オン動作:T1秒かつオフ動作:T2秒を1回とするスイッチング動作をX回繰り返すように制御する。斯くして、前記圧力差P6が変化した場合でも、排気温度が適正範囲に自動的に維持されるので、排ガス後処理装置19の浄化性能がより一層向上する。
【0055】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例を示し、排気装置を備えた油圧ショベルの側面図。
【図2】本発明に係る排気装置の構成例を示すブロック図。
【図3】本発明に係る排気装置のコントローラの構成例を説明するブロック図。
【符号の説明】
【0057】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 上部旋回体
13 エンジン
14 吸気管
15 排気管(排気通路)
16 エアクリーナ
17 ターボチャージャー
18 マフラ
19 排ガス後処理装置
21 入口側圧力センサ(目詰まり検出手段)
22 出口側圧力センサ(目詰まり検出手段)
23 排気温度センサ
24 エンジンコントローラ(機械コントローラ)
24D 目詰まり状態判断部
26 DPF(フィルタ)
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の排気装置に関するものであり、特に、排気中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)等の有害物質を酸化除去することができる建設機械の排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種建設機械においては、エンジンの排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)又は窒化酸素(NOX)等の有害物質を浄化処理するために、排気管やマフラ等の排気系統に排ガス後処理装置が設置される。該排ガス後処理装置には、有害物質を吸着除去するために、白金等の貴金属(金属酸化触媒)やDPF (Diesel Particulate Filter)等のフィルタが内蔵されている。
【0003】
しかし、排ガス後処理装置においてPM等の物質が捕集されると、該PM等の物質は排ガス後処理装置内のフィルタに付着する。そして、PM等の付着量が増加すると、フィルタが目詰まりを起こし、その結果、排ガス後処理装置の排気圧力が上昇して、排ガス後処理装置の浄化性能が低下する。依って、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を酸化除去して、排ガス後処理装置の浄化性能を再生させる必要がある。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記記載の従来技術では、フィルタの目詰まりを把握することができないため、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を適時に酸化除去することができない。そこで、PM等の付着物質を酸化除去すべく、エアヒータでエンジンの排気温度を常時又は定期的に上昇させる方式が考えられる。
【0005】
しかし、前記排気温度上昇方式によれば、排気温度を上昇させる必要がない時、即ち、フィルタが目詰まりを起こしていない時にも、エアヒータで排気温度を必要以上に上昇させるので、燃料が無駄に消費されてエネルギー損失が増加するという問題が生じる。
【0006】
そこで、燃料を無駄に消費することなく、排ガス後処理装置内のフィルタに付着したPM等の物質を効率良く酸化除去して浄化性能を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、エンジンの排気系統に排ガス後処理装置が設置された建設機械の排気装置において、前記エンジンと前記排ガス後処理装置とを接続する排気通路に設置されたエアヒータと、前記排ガス後処理装置に内蔵されたフィルタの入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ及び出口側圧力センサと、該入口側圧力センサ及び出口側圧力センサからの圧力信号に基づき前記フィルタの目詰まり状態を判断して前記エアヒータを動作制御するコントローラとを備え、前記フィルタが目詰まりを起こす前に前記エアヒータをオン制御して排気温度を上昇させるように構成してなる建設機械の排気装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、DPF等のフィルタが目詰まりを起こす前に、エアヒータ(加熱手段)をオン制御して排気温度を上昇させる。これにより、触媒の活性化を促進させつつ、該フィルタに付着したPM等の物質が酸化除去される。
【0009】
請求項2の発明は、上記エンジンの排気系にターボチャージャーが設置され、該ターボチャージャーの出口又は上記排ガス後処理装置の入口に上記エアヒータが設けられていることを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、エアヒータはターボチャージャーの出口又は排ガス後処理装置の入口に設けられているので、エアヒータのオン動作により、ターボチャージャーの機能を損ねることなく、排気温度が効率良く速やかに上昇する。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記コントローラには上記排ガス後処理装置の入口温度を検出する排気温度センサが接続され、前記排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1以下である場合は、該排ガス後処理装置の入口温度が基準設定温度A2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1以下になると、エアヒータがオン動作する。この場合、エアヒータのオン動作は、排ガス後処理装置の入口温度が基準設定温度A2になるまで保持される。依って、排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1に低下しても、排気温度は適正温度に速やかに上昇する。
【0013】
請求項4記載の発明は、上記排気温度センサは上記排ガス後処理装置の入口温度を設定時間毎に検出し、該入口温度に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項3記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、排気温度センサは排ガス後処理装置の入口温度を設定時間毎に検出して、該入口温度信号をコントローラに送信する。そして、コントローラは該入口温度信号に基づきエアヒータをオン/オフ動作(スイッチング動作)を制御する。この場合、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、入口温度に応じた最適な回数に可変制御される。
【0015】
請求項5記載の発明は、上記フィルタの入口圧力が設定圧力P1以上である場合は、該入口圧力が基準設定圧力P2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、フィルタの入口圧力が設定圧力P1を越えると、エアヒータがオン動作する。この場合、エアヒータのオン動作は、フィルタの入口圧力が基準設定圧力P2に低下するまで保持される。これにより、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質は確実に酸化除去される。
【0017】
請求項6記載の発明は、上記入口側圧力センサは上記排ガス後処理装置の入口圧力を設定時間毎に検出し、該入口圧力に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0018】
この構成によれば、入口側圧力センサは排ガス後処理装置の入口圧力を設定時間毎に検出して、該入口圧力信号をコントローラに送信する。そして、コントローラは該入口圧力信号に基づきエアヒータをオン/オフ動作を制御する。この場合、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、入口圧力に応じた最適な回数に可変制御される。
【0019】
請求項7記載の発明は、上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P3が設定圧力差P4以上である場合は、該圧力差P3が基準設定圧力差P5になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差(圧損)P3が設定圧力差P4を越えると、エアヒータがオン動作する。この場合、エアヒータのオン動作は、前記圧力差P3が基準設定圧力差P5に低下するまで保持される。これにより、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質が確実に酸化除去される。
【0021】
請求項8記載の発明は、上記コントローラは上記入口側圧力センサ及び上記出口側圧力センサからの圧力信号に基づき、上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、該圧力差P6に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置を提供する。
【0022】
この構成によれば、コントローラは上記入口側圧力センサ及び上記出口側圧力センサからの圧力信号に基づき、排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、そして、該算出した圧力差P6に基づきエアヒータをオン/オフ動作を制御する。この場合、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、前記圧力差P6に応じた最適な回数に可変制御される。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明は、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を酸化除去できるので、フィルタの目詰まりを未然に防止して浄化性能が向上する。又、前記PM等を酸化除去する時のみエアヒータをオン制御するので、燃料の無駄な消費を抑制することができる。即ち、排気温度を上昇させるために、燃料を必要以上に消費しないので、大きな省エネルギー効果が期待できる。
【0024】
請求項2記載の発明は、エアヒータのオン動作により、ターボチャージャーの機能を良好に維持しつつ、排気温度を上昇させることができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、ターボチャージャー付きエンジンの燃焼効率及び排ガス後処理装置の浄化性能を向上させることができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1に低下しても、エアヒータのオン動作により、排気温度が適正範囲まで速やかに上昇するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、排ガス後処理装置の浄化性能を安定して維持することができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置の入口温度に応じて適切に変化するので、請求項3記載の発明の効果に加えて、排ガス後処理装置の入口温度が変化した場合でも、排気温度を適正範囲に常に制御できるので、排ガス後処理装置の浄化性能を一層向上させることができる。
【0027】
請求項5記載の発明は、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質をより効率良く酸化除去できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、フィルタが目詰まり状態になることを一層確実に防止できる。
【0028】
請求項6記載の発明は、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置の入口圧力に応じて変化するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、排ガス後処理装置の入口圧力が変化した場合でも、排気温度が適正範囲になるように常に制御でき、以て、排ガス後処理装置の浄化性能を一層向上させることができる。
【0029】
請求項7記載の発明は、フィルタが目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質をより効率良く酸化除去できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、フィルタが目詰まり状態になることを一層確実に防止できる。
【0030】
請求項8記載の発明は、エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6に応じて変化するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、前記圧力差P6が変化した場合でも、排気温度が適正範囲になるように常に制御でき、以て、排ガス後処理装置の浄化性能をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、燃料を無駄に消費することなく、フィルタに付着したPM等の物質を効率良く酸化除去して浄化性能を向上させるという目的を達成するために、エンジンの排気系統に排ガス後処理装置が設置された建設機械の排気装置において、前記エンジンと前記排ガス後処理装置とを接続する排気通路に設置されたエアヒータと、前記排ガス後処理装置に内蔵されたフィルタの入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ及び出口側圧力センサと、該入口側圧力センサ及び出口側圧力センサからの圧力信号に基づき前記フィルタの目詰まり状態を判断して前記エアヒータを動作制御するコントローラとを備え、前記フィルタが目詰まりを起こす前に前記エアヒータをオン制御して排気温度を上昇させるように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図3に従って説明する。図1は本発明を適用した建設機械としての油圧ショベル1を示す。同図において、下部走行体2上には上部旋回体3が旋回自在に搭載され、該上部旋回体3の前方一側部にキャブ4が載置されている。また、上部旋回体3の前方他側部には作業機が搭載され、該作業機はブーム5,アーム6,バケット7並びに各種駆動用シリンダ8,9,10により構成されている。
【0033】
更に、キャブ4の後方にはエンジンル−ム(機械室)11が設けられ、該エンジンルーム11はエンジンカバー12により被蔽されている。又、エンジンルーム11内にはエンジン13、例えば、電子噴射制御方式のディーゼルエンジンが設けられている。
【0034】
図2は、本発明に係る排気装置の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、エンジン13には吸気管14及び排気管15が接続され、該吸気管14の上流側にはエアクリーナ16が装着されている。又、吸気管14の下流側と排気管15の上流側との間にはターボチャージャー17が介設されている。
【0035】
更に、排気管15の下流側にはマフラ18が設けられ、該マフラ18には排ガス後処理装置19が搭載されている。該排ガス後処理装置19は、排ガス中に含まれている炭化水素、一酸化炭素又は窒化酸素等の有害物質を吸着除去して浄化処理するものであり、排ガス後処理装置19内には白金等の金属酸化触媒並びにDPF26が装着されている。
【0036】
上記排ガス後処理装置19は、PM等の有害物質の吸着によってDPF26の目詰まり状態が進行する。そして、DPF26が目詰まりを起こした場合は、排気圧力が上昇して浄化性能及びエンジン13の燃焼効率が低下する。そこで、本発明の排気装置は、DPF26の目詰まり度合を把握することにより、DPF26が許容状態を越える目詰まり状態になる前に、排気温度を上昇させることにより、触媒を活性化しつつPM等の有害物質を燃焼処理(酸化除去)するように構成されている。
【0037】
即ち、本発明の排気装置では、排ガス後処理装置19の入口及び出口に夫々、目詰まり検出手段である入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22が取り付けられ、該入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22は、排ガス後処理装置19の入口圧力及び出口圧力を夫々検出する。
【0038】
更に、排ガス後処理装置19の入口には排気温度センサ23が設置され、該排気温度センサ23は、排ガス後処理装置19の入口温度を検出する。又、排気温度センサ23、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22は、エンジンコントローラ(機械コントローラ)24に電気的に接続され、該エンジンコントローラ24に排気温度センサ23、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22の検出信号が送信されるように構成されている。
【0039】
更に、ターボチャージャー17と排ガス後処理装置19とを接続する排気管15の途中にはエアヒータ25が設けられている。エアヒータ25はターボチャージャー17の出口又は排ガス後処理装置19の入口に設置することが好ましい。又、エアヒータ25のオン動作又はオフ動作はエンジンコントローラ24により制御される。
【0040】
即ち、エンジンコントローラ24は、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの検出信号に基づき、排ガス後処理装置19に内蔵したDPF26の目詰まり状態を判断する。その結果、例えば、前記DPF26が許容できない目詰まり状態に進行している場合には、エンジンコントローラ24はエアヒータ25をオン動作に制御する。
【0041】
エンジンコントローラ24は、図3に示すように、入力部24A、演算処理部24B、比較部24C、目詰まり状態判断部24D及び出力部24E等からなり、入口側圧力センサ21で検出された入口圧力と、出口側圧力センサ22で検出された出口圧力との圧力差(圧損)を算出し、該圧力差を予め設定された閾値(許容できない限界値)と比較する。そして、前記圧力差が閾値を越えた場合には、DPF26の目詰まり度合が許容できない状態に進行していると判断して、エアヒータ25にオン動作指令信号を送信して、該エアヒータ25をオン制御する。その結果、エアヒータ25の熱により、排気温度が最適温度まで速やかに上昇する。
【0042】
以上の如く本発明によると、排ガス後処理装置19のDPF26にPM等が付着して、DPF26が目詰まりを起こす前に、エンジンコントローラ24は、入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの検出信号に基づき、エアヒータ25をオンに動作制御する。
【0043】
従って、エアヒータ25をオン制御して、排気管15内の排気温度を適正温度まで上昇させることにより、該DPF26に付着したPM等の有害物質を酸化除去できる。斯くして、DPF26の目詰まりが未然に防止され、加えて、触媒の活性化が促進されるので、DPF26による浄化性能が著しく向上する。
【0044】
又、DPF26が許容状態を越える目詰まり度合まで進行した時、即ち、前記PM等を酸化除去する必要がある時のみ、エアヒータ25が自動的にオン動作し、不必要な時にはオン動作しない。依って、エアヒータ25における無駄な燃料消費が抑制される。即ち、排気温度を上昇させるために、燃料が必要以上に消費されないので、顕著な省エネルギー効果を奏することができる。
【0045】
更に、ターボチャージャー17の出口又は排ガス後処理装置19の入口にエアヒータ25を設けた場合には、エアヒータ25のオン動作により、ターボチャージャー17の機能を損ねることなく排気温度が効率良く上昇する。依って、ターボチャージャー17付きエンジン13の燃焼効率及び排ガス後処理装置19の浄化性能が大幅に改善される。
【0046】
本実施例においては、排ガス後処理装置19の入口温度が設定温度A1以下、即ち、触媒の浄化機能を維持できる温度以下になると、エアヒータ25がオン動作する。この場合、前記入口温度が、浄化処理に適した基準設定温度A2(>A1)になるまで、エアヒータ25のオン動作が保持される。従って、排ガス後処理装置19の入口温度が設定温度A1以下に低下しても、排気温度は適正温度に速やかに上昇するので、排ガス後処理装置19の浄化性能を安定して維持することができる。
【0047】
又、排気温度センサ23は排ガス後処理装置19の入口温度を設定時間毎に検出して、該入口温度信号をエンジンコントローラ24に送信する。そして、エンジンコントローラ24は、排ガス後処理装置19の入口温度に基づきエアヒータ25のオン/オフ動作を(スイッチング動作)を制御する。例えば、オン動作:T1秒かつオフ動作:T2秒を1回とするスイッチング動作をX回繰り返すように制御する。
【0048】
この場合、エアヒータ25のオン/オフ動作の繰り返し回数は、前記入口温度に応じた最適な回数に制御される。従って、排ガス後処理装置19の入口温度が変化した場合でも、排気温度が適正範囲内になるように常時制御されるので、排ガス後処理装置19の浄化性能が一層向上する。
【0049】
更に、前記DPF26の入口圧力が設定圧力P1、即ち、目詰まりの許容値(閾値)に対応する圧力を越えると、エアヒータ25がオン動作する。この場合、DPF26の入口圧力が基準設定圧力(目詰まり状態が解消する時の圧力)P2(<P1)になるまで、エアヒータ25のオン動作が継続する。これにより、DPF26が目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を確実に燃焼除去できるので、DPF26が目詰まり状態になることを未然に防止できる。
【0050】
更に又、入口側圧力センサ21は排ガス後処理装置19の入口圧力を設定時間毎に検出して、該入口圧力信号をエンジンコントローラ24に送信する。そして、エンジンコントローラ24は、該入口圧力信号に基づきエアヒータ25のオン/オフ動作をスイッチング制御する。
【0051】
この場合、エアヒータ25のオン/オフ動作の繰り返し回数は、排ガス後処理装置19の入口圧力に応じた最適な回数になるように可変制御される。従って、排ガス後処理装置19の入口圧力が変化した場合でも、排気温度が適正範囲になるように自動的に制御されるので、排ガス後処理装置19の浄化性能が一層向上する。
【0052】
本実施例では、エンジンコントローラ24は、排ガス後処理装置19の入口圧力と出口圧力との圧力差P3が設定圧力差P4を越えると、エアヒータ25をオンに動作制御する。この場合、前記圧力差P3が基準設定圧力差P5(<P4)になるまで、エアヒータ25のオン動作が継続する。これにより、DPF26が目詰まりを起こす前に、PM等の付着物質を燃焼除去できるので、DPF26が目詰まり状態になることを一層確実に防止できる。
【0053】
又、エンジンコントローラ24は、上記入口側圧力センサ21及び出口側圧力センサ22からの圧力信号に基づき、排ガス後処理装置19の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、そして、該算出した圧力差P6に基づきエアヒータ25のオン/オフ動作を制御する。
【0054】
この場合、エアヒータ25のオン/オフ動作の繰り返し回数は、前記算出した圧力差P6に応じた最適な回数に制御される。例えば、オン動作:T1秒かつオフ動作:T2秒を1回とするスイッチング動作をX回繰り返すように制御する。斯くして、前記圧力差P6が変化した場合でも、排気温度が適正範囲に自動的に維持されるので、排ガス後処理装置19の浄化性能がより一層向上する。
【0055】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例を示し、排気装置を備えた油圧ショベルの側面図。
【図2】本発明に係る排気装置の構成例を示すブロック図。
【図3】本発明に係る排気装置のコントローラの構成例を説明するブロック図。
【符号の説明】
【0057】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 上部旋回体
13 エンジン
14 吸気管
15 排気管(排気通路)
16 エアクリーナ
17 ターボチャージャー
18 マフラ
19 排ガス後処理装置
21 入口側圧力センサ(目詰まり検出手段)
22 出口側圧力センサ(目詰まり検出手段)
23 排気温度センサ
24 エンジンコントローラ(機械コントローラ)
24D 目詰まり状態判断部
26 DPF(フィルタ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系統に排ガス後処理装置が設置された建設機械の排気装置において、前記エンジンと前記排ガス後処理装置とを接続する排気通路に設置されたエアヒータと、前記排ガス後処理装置に内蔵されたフィルタの入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ及び出口側圧力センサと、該入口側圧力センサ及び出口側圧力センサからの圧力信号に基づき前記フィルタの目詰まり状態を判断して前記エアヒータを動作制御するコントローラとを備え、前記フィルタが目詰まりを起こす前に、前記エアヒータをオン制御して排気温度を上昇させるように構成したことを特徴とする建設機械の排気装置。
【請求項2】
上記エンジンの排気系統にターボチャージャーが設置され、該ターボチャージャーの出口又は上記排ガス後処理装置の入口に上記エアヒータが設けられていることを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項3】
上記コントローラには上記排ガス後処理装置の入口温度を検出する排気温度センサが接続され、前記排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1以下である場合は、該入口温度が基準設定温度A2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項4】
上記排気温度センサは上記排ガス後処理装置の入口温度を設定時間毎に検出し、該入口温度に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項3記載の建設機械の排気装置。
【請求項5】
上記フィルタの入口圧力が設定圧力P1以上である場合は、該入口圧力が基準設定圧力P2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項6】
上記入口側圧力センサは上記排ガス後処理装置の入口圧力を設定時間毎に検出し、該入口圧力に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項7】
上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P3が設定圧力差P4以上である場合は、該圧力差P3が基準設定圧力差P5になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項8】
請求項8記載の発明は、上記コントローラは上記入口側圧力センサ及び上記出口側圧力センサからの圧力信号に基づき、上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、該圧力差P6に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項1】
エンジンの排気系統に排ガス後処理装置が設置された建設機械の排気装置において、前記エンジンと前記排ガス後処理装置とを接続する排気通路に設置されたエアヒータと、前記排ガス後処理装置に内蔵されたフィルタの入口圧力及び出口圧力を夫々検出する入口側圧力センサ及び出口側圧力センサと、該入口側圧力センサ及び出口側圧力センサからの圧力信号に基づき前記フィルタの目詰まり状態を判断して前記エアヒータを動作制御するコントローラとを備え、前記フィルタが目詰まりを起こす前に、前記エアヒータをオン制御して排気温度を上昇させるように構成したことを特徴とする建設機械の排気装置。
【請求項2】
上記エンジンの排気系統にターボチャージャーが設置され、該ターボチャージャーの出口又は上記排ガス後処理装置の入口に上記エアヒータが設けられていることを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項3】
上記コントローラには上記排ガス後処理装置の入口温度を検出する排気温度センサが接続され、前記排ガス後処理装置の入口温度が設定温度A1以下である場合は、該入口温度が基準設定温度A2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項4】
上記排気温度センサは上記排ガス後処理装置の入口温度を設定時間毎に検出し、該入口温度に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項3記載の建設機械の排気装置。
【請求項5】
上記フィルタの入口圧力が設定圧力P1以上である場合は、該入口圧力が基準設定圧力P2になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項6】
上記入口側圧力センサは上記排ガス後処理装置の入口圧力を設定時間毎に検出し、該入口圧力に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項7】
上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P3が設定圧力差P4以上である場合は、該圧力差P3が基準設定圧力差P5になるまで上記エアヒータをオン制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【請求項8】
請求項8記載の発明は、上記コントローラは上記入口側圧力センサ及び上記出口側圧力センサからの圧力信号に基づき、上記排ガス後処理装置の入口圧力と出口圧力との圧力差P6を設定時間毎に算出し、該圧力差P6に応じて上記エアヒータのオン/オフ動作の繰り返し回数を可変制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2010−169070(P2010−169070A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14777(P2009−14777)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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