説明

建設機械の油圧制御装置

【課題】差圧調整部に油圧アクチュエータの操作状況に応じて生成される外部信号を導入してオペレータに操作上の違和感を可及的に少なくできるようにした建設機械の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】スプール28aは、3つの径大部D1、D2、D3を有する。ばね28bを収納する油室RM1には、ポートPT1を介して油圧アクチュエータ側の検出圧力Psが導かれる。油室RM2に設けられたポートPT5には、ポートPT5を介してポンプ22の吐出口側の圧力Pdが導かれている。油室RM3に隣接して設けられたポートPT2には、操作指令圧力Xが導かれている。さらに、スプールの左端面は油室RM5に臨んでおり、この油室には外部信号生成部32からの外部信号Zが与えられる。外部信号生成部へは油電変換部32aで電気信号に変換された操作指令圧力Xが入力される。外部信号Zを与えることによりばねの付勢力を等価的に増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧制御装置に係り、特に建設機械の各油圧アクチュエータに圧油を供給する可変容量型ポンプのポジコン制御に関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量型ポンプのポジコン制御は、一般に図4(特許文献1の図15に対応する)に示されるように、センターバイパス通路100を有する切換弁V1、V2、V3にポンプ吐出容量調整機構102を有する可変容量ポンプPMの吐出油を供給し、当該可変容量型ポンプPMの吐出容量を前記切換弁の操作信号(a1、b1)、(a2、b2)、(a3、b3)にて調整し、各切換弁の操作量の増加に従い、当該可変容量型ポンプPMの吐出流量を増加するよう構成するものである。
【0003】
このポジコンシステムの場合、切換弁の中立および操作途中では、可変容量ポンプPMの吐出油の一部をセンターバイパス通路100からタンクTへ放出しているのでネガコンシステムの場合と同様、操作性においては良好であるもののシステム効率および複合操作時の操作性等においては、問題点を有する。特に可変容量型ポンプPMの吐出容量はセンターバイパス通路100の開度如何にかかわらず、切換弁の操作信号に対応して一義的に定まるので、センターバイパス通路100の開度とシリンダポートへの開口通路との面積およびタイミング調整が難しく、ポンプ供給ラインには異常高圧または供給圧力の立ち遅れ等の問題が生ずる恐れがある。なお、可変容量型ポンプPMの吐出容量は、前記切換弁の操作信号と並行して出力される信号により調整されるのでシステムの応答性は比較的良好である。
【0004】
次に、ネガコンシステムの油圧回路図を図5(特許文献1の図14に対応する)に示す。
【0005】
このシステムでは、センターバイパス100を有する切換弁V3のセンターバイパス出口に圧力発生手段104を設け当該圧力発生手段104の上流側圧力を可変容量ポンプPMの吐出容量調整機構102へ信号圧力Pnとして作用させ、且つ当該吐出流量調整機構102は前記信号圧力の低下に応じて吐出容量を増加するよう構成されている。本システムは切換弁からポンプへフィードバックされる信号が低圧であることや、ポンプ吐出油の一部をブリードオフしつつ油圧アクチュエータへ圧油を供給するので、人が操作する油圧ショベル等には操作性に優れており多用されている。しかし、この場合、可変容量ポンプPMから切換弁へ供給される圧油は、その切換弁が中立又は操作途中では一部がセンターバイパス通路100を経てタンクへ放出されるので、この分のエネルギーが熱に変換され捨てられている。特に、切換弁に接続された油圧アクチュエータの負荷が大きい場合には始動までの切換弁の操作量が大きく、この間に絞り捨てされる圧油は、当該圧油によってポンプPMの吐出容量は小容量に維持されてはいるが、依然としてエネルギーを無駄に捨てている点において問題がある。
【0006】
一方、このセンターバイパス通路100から放出される油量を例えば、切換弁のセンターバイパス通路100を小さくして、比較的小容量とすることは可能であるが、当該シリンダポートへの開口通路との適切な面積およびタイミング調整が非常に困難であり、加工精度や切換弁の操作によってはポンプ吐出油が供給ライン封入されて異常高圧が発生し、却ってエネルギー効率の悪化を招く恐れがある。又、油圧ショベルにおける油圧制御システムでは複数の油圧アクチュエータを同時に操作した場合の操作性つまり可変容量ポンプPMからの各油圧アクチュエータへの流量配分特性が極めて重要であるが、この特性は一般には所定のポンプ回転数における流量に対して各切換弁における開口面積によって一義的に定まるものであり、従って、エンジン回転数や負荷圧力が変化した場合には、良好な操作性が維持されない恐れがあるという問題がある。
【0007】
また、図6(特許文献1の図16に対応する)に示されるように、ロードセンシングシステムにおいては、油圧アクチュエータ106への供給油量は切換弁V1、V2が操作された時、当該切換弁のメータイン側の差圧が一定となる様、可変容量ポンプPMの吐出容量が調整される。従って、ネガコンシステムやポジコンシステムの様に絞り捨てされる油がないのでその分、システム効率は改善される。
【0008】
しかし、ポンプ吐出容量を適切に調整するためには前記メータイン側の差圧はある程度、例えば20bar程度以上維持しなければならず、その結果、各切換弁V1、V2を通過する毎に通過油量に関らず圧力損失が生じ、システム効率上は依然として問題がある。
【0009】
さらには、ポンプ吐出容量の調整に関して、先ず切換弁を操作し、その結果としてポンプ容量が調整されるため、応答遅れが生ずる等の問題がある。
【0010】
こうした問題を解消する方法として、図7(特許文献1の図1に対応する)のブロック線図に示されるように、可変容量型ポンプの吐出流量を吐出容量調整部により制御することが開示されている。この可変容量型ポンプから供給される圧油は、1つまたは複数の切換弁およびその周辺油圧回路を含む切換弁ユニットを介して1つまたは複数の油圧アクチュエータへ与えられる。
【0011】
オペレータ操作指令部からは前記各油圧アクチュエータの駆動方向および駆動量が前記切換弁ユニットにパイロット圧油として指令される。さらに、オペレータ操作指令部からは信号圧力としての調整信号Xが調整量修正部に与えられている。この調整信号Xは切換弁ユニットの切換弁に与えられるパイロット圧油の中で最高圧が選択される。
【0012】
一方、前記切換弁ユニットを挟んで、可変容量型ポンプの吐出油圧力Pdと油圧アクチュエータへ供給される圧油の圧力Psが検出され、その差圧が差圧生成部で形成される。差圧生成部から信号圧力として出力される調整信号Yは前記調整量修正部に与えられている。調整量修正部では前記調整信号Xに対し調整信号Yを作用させて調整信号Xを低減させるようになっている。そして、調整量修正部の出力が前記吐出流量調整部に与えられている。
【0013】
即ち、切換弁への駆動信号の最高圧が差圧(Pd−Ps)に対応して修正され、吐出流量調整部に与えられるようになっている。(特許文献1)
【0014】
しかしながら、前記図7において、調整量修正部の機能は、オペレータ操作指令部からの調整信号Xは差圧生成部からの信号Yにより修正するものである。すなわち、この機能を切換弁スプールの開口特性の点から考察すると、油圧アクチュエータの圧力とポンプ吐出圧力との差圧が一定となるように当該差圧により切換弁スプールの開口特性を見かけ上変化させるものではあるが、この差圧によりオペレータ操作指令部からの調整信号Xを修正する機能だけでは、オペレータの油圧アクチュエータに対する操作性の点からは違和感がある。
【0015】
例えば、図8のQ2に示されるように、オペレータが操作量(Pm)を増加させていく場合、操作量Pm1まではポンプの理論吐出量に対し相対的に少ない流量が供給され、操作量Pm1より大きい範囲では相対的に大きい流量が供給されるよう油圧アクチュエータを駆動させたい場合がある。こうした要求を満たすためには、Q1で示されるように、単に差圧により操作量(Pm)を修正するだけでは実現できない。こうした切換弁スプールの開口特性を修正するために、スプール外周にノッチなどの切り欠きを設けてその特性を変化させることも行われているが、こうした対策は熟練を要し、ノウハウとして扱われ、明確でなかった。また、特定の切り欠きを形成したものを変更しようとしても再加工することは事実上不可能であり、同一のスプールが複数の開口特性を備えるようなことはできない。
【0016】
【特許文献1】特開2004−28333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者等は、上述した点に鑑み、建設機械の油圧制御装置におけるスプールの開口特性に柔軟性を持たせるべく種々検討した結果、前記差圧調整部に対し、差圧信号とは別の油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号を与えることにより前述した問題が基本的に解決できることを見出した。
【0018】
従って、本発明の目的は、ロードセンシングを採用した可変容量型ポンプのポジコン制御における差圧調整部に油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号を導入してオペレータに操作上の違和感を可及的に少なくできるようにした建設機械の油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明による建設機械の油圧制御装置は、可変容量型ポンプの吐出流量を操作弁の操作量に応じて与えられる流量調整信号に応じて調整し、油圧アクチュエータ圧力を検出し、切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧を予め定めた所定値以下に維持すると共に、建設機械の油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号により調整されるよう構成した差圧調整手段を有する建設機械の油圧制御装置において、前記予め定められた差圧を調整する差圧調整手段Cを設けたことを特徴とする。
【0020】
又は、前記差圧調整手段は、内部にスプールを収納した弁体構造であって、前記スプールの一端部側に形成され前記油圧アクチュエータの負荷検出圧力が導かれると共に前記スプールを他端部の方へ付勢するばねを備えた第1油室(RM1)と、同第1油室に対向するよう前記スプール他端部側に配置され前記メータイン側ポンプ圧力が導かれた第2油室(RM2)と、前記第1、第2油室とそれぞれ第1、第2のスプール径大部により区画されさらにその中央部に設けられたもうひとつの第3のスプール径大部とによって区画されると共に、前記操作弁の高圧側流量調整信号用ポートに接続された第3油室(RM3)ならびに、タンクポートに接続された第4油室(RM4)と、前記第1油室側のスプール端面に臨み前記外部信号が供給される第5油室(RM5)と、前記可変容量型ポンプの斜板調整機構の油室と接続され前記第3の径大部外周面に臨むよう形成された斜板用ポートとからなる。
【0021】
その場合、前記外部信号は、前記操作弁の操作量に応じて与えられる流量調整信号を油電変換した電気信号の関数値として与える関数発生手段により生成されるよう構成することができる。
【0022】
またその場合、前記外部信号は、前記操作弁の中間操作の範囲で増加させるよう構成することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載された本発明によれば、可変容量型ポンプの吐出流量を操作弁の操作量に応じて与えられる流量調整信号に応じて調整し、油圧アクチュエータ圧力を検出し、切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧を予め定めた所定値以下に維持すると共に、建設機械の油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号により調整されるよう構成した差圧調整手段を有する建設機械の油圧制御装置において、前記差圧調整手段は、内部にスプールを収納した弁体構造であって、前記スプールの一端部側に形成され前記油圧アクチュエータの負荷検出圧力が導かれると共に前記スプールを他端部の方へ付勢するばねを備えた第1油室(RM1)と、同第1油室に対向するよう前記スプール他端部側に配置され前記メータイン側ポンプ圧力が導かれた第2油室(RM2)と、前記第1、第2油室とそれぞれ第1、第2のスプール径大部により区画されさらにその中央部に設けられたもうひとつの第3のスプール径大部とによって区画されると共に、前記操作弁の高圧側流量調整信号用ポートに接続された第3油室(RM3)ならびに、タンクポートに接続された第4油室(RM4)と、前記第1油室側のスプール端面に臨み前記外部信号が供給される第5油室(RM5)と、前記可変容量型ポンプの斜板調整機構の油室と接続され前記第3の径大部外周面に臨むよう形成された斜板用ポートとからなるよう構成したので、オペレータの操作上の違和感を可及的に少なくすることができるとともに、差圧調整手段を単一の弁体構造として構成することができ、さらに、前記外部信号は第1油室に備えたばねの付勢力を増大させるよう作用するので、差圧の変化に対するスプールの移動を緩慢にし、それにより負荷の変動に対し安定した操作感をオペレータに与えることができる。
【0024】
また、請求項2に記載された本発明によれば、前述の効果に加え、前記外部信号は、前記操作弁の操作量に応じて与えられる流量調整信号を油電変換した電気信号の関数値として与える関数発生手段により生成されるよう構成したので、オペレータは、予め、または操作中において、より違和感の少ない関数発生手段の1つを指定することができる。
【0025】
また、請求項3に記載された本発明によれば、前述の効果に加え、前記操作弁の中間操作の範囲で増加させるよう構成したので、特に、オペレータが操作の違和感を感じる中間操作領域で負荷の変動があっても指令操作通りに油圧アクチュエータを操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に基づく実施例について添付図面の図1乃至図3を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明のコンセプトを説明する制御ブロック図である。同図において、建設機械の油圧アクチュエータ10には可変容量型ポンプ22からの圧油が切換制御弁20を介して供給される。オペレータ操作指令部14からは切換制御弁20および差圧調整手段28に操作圧信号Xが与えられる。破線で示すように、差圧調整手段28にはポンプ22の吐出圧力Pdと油圧アクチュエータ10の圧力Psが与えられている。さらに、差圧調整手段28には外部信号生成部32からの圧油信号である外部信号Zが与えられている。差圧調整手段28の出力は可変容量型ポンプの斜板角度を調整する吐出流量調整機構26に与えられるようになっている。外部信号生成部32は、油圧アクチュエータ10の操作状況応じて生成される外部信号Zを生成する。
【0028】
図2Aは、図1に示したコンセプトを可変容量型ポンプのポジコン制御系に適用した油圧回路の模式図である。同図において、参照符号20は旋回油圧モータ用の切換制御弁を模式的に示し、ΔPはスプールの開口特性に関係する絞りの程度に応じた差圧である。参照符号Qacは図示してない前記油圧モータへの供給流量を示す。参照符号22は可変容量型ポンプであって、その斜板24の角度は吐出流量調整機構26のばね26bの弾発力に対抗する油室26aへの供給圧力Pmによって一義的に定められる。図示の例では供給圧力Pmが大きくなるとポンプ22の理論吐出量Qthは増大する関係となっている。
【0029】
参照符号28は差圧調整手段であって、その全体が1つの弁体構造で形成されている。同差圧調整手段28において、参照符号28aは弁内部に形成した開口Hに摺動可能に挿入されているスプールであって、その中間部に3つの径大部D1、D2、D3が設けられている。径大部D1の左側の油室RM1にはばね28bが収納されている。また、同油室RM1には、破線のラインL1で示すように、ポートPT1を介して油圧モータを含む複数の油圧アクチュエータ側の最高検出負荷圧力Psが導かれている。一方、径大部D2の右側には油室RM2が設けられており、同油室RM2に設けられたポートPT5には、破線のラインL2で示すように、ポートPT5を介してポンプ22の吐出口側の圧力Pdが導かれている。
【0030】
径大部D3の左側には油室RM3が設けられており、同油室RM3に隣接して設けられたポートPT2には、破線のラインL3で示すように、ポートPT2を介してオペレータの指令による操作弁からの操作指令圧力Xすなわち、高圧選択手段30により選択された最大圧力Pmaxが導かれている。さらに、径大部D3の右側には油室RM4が設けられており、同油室RM4に隣接して設けられたポートPT4はタンクラインTに導かれている。スプール28aの左端面は油室RM5に臨んでおり、この油室RM5には、外部信号Zが与えられており、さらにスプール28aの左方向の停止位置を定めるストッパー28cが設けられている。
【0031】
参照符号32は外部信号生成部であって、同外部信号生成部32へは油電変換部32aで電気信号に変換された前記操作弁からの操作指令圧力Xが入力されている。また、外部信号生成部32の出力は電油変換部32bで圧油信号に変換され前記の外部信号Zとなる。
【0032】
図3は、図2Aの外部信号生成部32の機能を模式的に示すグラフである。同図において、関数の波形f1、f2、f3は操作指令圧力Xに対応する電気信号Einの値に対する各関数の値Eoutの変化の様子を示す。例えば、関数f1では、Einの変化に対するEoutは上に凸の変換特性を有する。これに対し関数f2は、Einの増加の途中まではEoutは緩慢な増加にとどまり、ある値以降の増加に対しEoutは比較的急激に増加する場合である。
【0033】
さらに、関数f3は、Einの増加の途中まではEoutは急激に増加し、それ以降の増加に対しEoutは比較的緩慢な増加にとどまる場合である。なお、関数f0は、Eoutが常時ゼロであり、外部信号Zがない場合である。参照符号34は各関数波形を選択する押しボタンを示す。なお、オペレータがボタン選択を瞬時、正確におこなえるよう記号f0〜f3の代わりに、波形特性そのものや、絵文字などで表示することができる。またその場合、選択ボタンは変換波形そのものではなく、オペレータが要求する操作特性を表示するようにすることが好ましい。さらにその場合、選択操作の代わりに音声で選択するようにしてもよい。
【0034】
図3ではアナログ信号Ein、Eoutによる関数を例示したが、A/D変換器、D/A変換器によりデジタル処理を行うことも可能である。その場合には、関数f0〜f3はそれぞれ対応するメモリテーブルとして与えられる。
【0035】
次に図2Aを参照して作用を説明する。
【0036】
まず、関数f0が選択されており、したがって、油室RM5には圧油が供給されない場合を説明する。
【0037】
今、油圧アクチュエータへの操作指令圧力Xがゼロとすると、圧力PdとPsとの差圧ΔPもゼロで、ばね28bの弾発力によりスプール28aは図示よりも若干左方の、ストッパー28cによる停止位置にあり、油室RM3とポートPT3は導通している。
【0038】
この状態で、油圧アクチュエータを駆動すべく操作指令圧力XがポートPT2に与えられると、油室RM3からポートPT3を介して吐出流量調整機構26の油室26aへ圧力Xに対応する圧力Pmが与えられ、斜板24が傾転して可変容量型ポンプ22は吐出口から圧油を吐出する。このときの吐出流量Qacにより切換制御弁20内で差圧ΔPが生じる。この差圧によりポートPT5へは吐出圧力Pdが与えられ、ポートPT1へは圧力Psが与えられる。圧力Xが徐々に増加されて流量Qacが増加するにつれ差圧ΔPも増大する。圧力Pdの値が圧力Psとばね28bの弾発力の加算値より大きくなると、スプール28aは左方へ移動し、その結果、ポートPT3と油室RM4とが導通し、直ちに油室26aの圧力が降下して可変容量型ポンプ22の吐出流量を減少させるので、その結果差圧ΔPが小さくなり、スプール28aは右方へ戻り油室RM4とポートPT3は遮断される。
【0039】
このようにして、ある操作指令圧力Xが与えられると、ポートPT1とPT5での差圧(pd−Ps)とばね28bのばね力とがバランスするようにスプール28aの位置が保持される。すなわち、差圧ΔPがばね28bの弾発力と等しくなるようにスプール位置が制御される。
【0040】
次に、予めf0以外の特定の関数fiが選択されており、操作指令圧力Xの関数変換された外部信号Zが油室RM5へ供給される場合について説明する。
【0041】
説明を簡単にするため、今、図2Aに示す状態で操作指令圧力Xが与えられ油圧アクチュエータが駆動中であり、スプール28aが前述したように、バランスした位置にあるとする。
【0042】
その場合、油室RM5に関数fiに基づきある大きさの外部信号圧力Zが与えられているとその圧力Zはスプール28aの左端面に作用しているのでばね28bの弾発力を増大するよう作用しており、したがって、操作指令圧力XがさらにΔX増加指令された場合、それによるポンプ22の流量増加で圧力PdもΔPdだけ増加するよう変化して新たにバランス状態に到る経過は、スプール28aに対しΔPdに前記圧力Zが加算された力が作用するので圧力Zが与えられていない場合と比べ、その間での負荷変動に伴うスプール28aのバランス位置の変化を抑制しつつ、操作指令圧力Xに対しより忠実にバランス位置へ到達させることができる。このことは、見かけ上、ばね28bのばね定数を大きくしたことに対応し、操作指令圧力Xの変化に対し安定した応答性を得られることを意味している。
【0043】
すなわち、上記関数f0の場合のように、切換制御弁内を通過する吐出流量Qacが過大となった時の差圧の増大化を利用してスプール28aを左方へ移動させ、それによりポートPT3とPT4をタンクラインに連通させ油室26aの圧力が減少することで差圧を所定の範囲に保持する場合において、さらに関数fiによる外部信号Zでスプール28aを左方から押圧しているときは、等価的には、切換制御弁内のスプールの開口特性を見かけ上、増大するよう変化させたこととなり、しかもその変化の様子は操作指令圧力Xの指令範囲で圧力Zを可変とすることで任意に設定可能とするものである。
【0044】
図2Bは、こうした作用を説明するグラフである。同図において、横軸Stは切換制御弁20の操作量(スプールストローク量)、縦軸Qは切換制御弁20の流量(開口特性)を示す。q1は外部信号Zを与えない場合で、メータイン側の差圧ΔPが一定となる流量特性を示し、q2は、ポンプへのリモートパイロット圧指令で定まる流量特性すなわち、可変容量ポンプ22自体の流量特性であり、q3は、差圧ΔPを増大させたときのメータイン側の差圧ΔPが一定となるような流量特性を示す。ここで前記特性q3は理論上の特性を示すが、実際に流れる流量はポンプ22の最大吐出流量に対応する特性q2を超えることはない。すなわち、例えば、操作量Stjにおける特性q1上の値Qaに対し、外部信号Zを与え、特性q3上の値Qcとすると、その時の実際の流量はQcとなる。このことは、特性q3で示すように、特性q2よりも大きくなるように外部信号Zを与えると、実際に流れる流量はQbすなわち、操作量Stjに対応するポンプ22の最大流量となり、流量QaからQbへ到達するまでの経過において、負荷等の変動によりスプール28aの位置が影響されることなく安定して到達する。
【0045】
なお、図2Bにおいて、参照符号St1、St2は中間操作の範囲を示す。一般に、この範囲では、オペレータは運転操作中の油圧アクチュエータに対する操作時の違和感を多く感じるため、安定的な、操作指令に忠実な油圧アクチュエータの駆動が求められている。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態に基づく実施例について図面を参照して説明したが、当業者であれば、これらの開示例に基づき種々の変形をすることができる。例えば、図2A、図3では外部信号生成部32は電気的に関数変換処理を行うようにしたが、等価的な変換処理を油圧回路で構成することも可能である。
【0047】
また、信号Einは高圧選択手段30を用いているが、必ずしもこれに限るものではなく、建設機械の操作中、オペレータが高圧選択手段とは別に設けられた電気信号発生装置を操作して信号Einを形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のコンセプトを説明するブロック図である。
【図2A】図1に示したコンセプトを可変容量型ポンプのポジコン制御系に適用した油圧回路の模式図である。
【図2B】図2Aの切換制御弁の流量特性を説明するためのグラフである。
【図3】図2の外部信号生成部の機能を模式的に示すグラフである。
【図4】従来の一般的な可変容量型ポンプのポジコン制御の油圧回路図である。
【図5】従来の一般的な可変容量型ポンプのネガコン制御の油圧回路図である。
【図6】従来の一般的な可変容量型ポンプのロードセンシング制御の油圧回路図である。
【図7】従来の可変容量型ポンプの吐出流量を吐出容量調整部により制御する方式の概念図である。
【図8】従来技術において、オペレータが油圧アクチュエータを操作する際に感じる違和感の存在を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0049】
10 油圧アクチュエータ
14 オペレータ操作指令部
20 切換制御弁
22 可変容量型ポンプ
24 斜板
26 吐出流量調整機構(斜板角度調整機構)
26a 油室
26b ばね
28 差圧調整手段
28a スプール
28b ばね
28c ストッパー
30 高圧選択手段
32 外部信号生成部
32a 油電変換部
32b 電油変換部
34 押しボタン
D1、D2、D3 径大部
H 開口
L1、L2、L3 ライン
Pd 吐出圧力
Ps 最大検出負荷圧力
PT1、PT2、PT3、PT4、PT5 ポート
RM1、RM2、RM3、RM4、RM5 油室
X 操作指令圧力
Z 外部信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型ポンプの吐出流量を操作弁の操作量に応じて与えられる流量調整信号に応じて調整し、油圧アクチュエータ圧力を検出し、切換制御弁のメータイン側ポンプ圧力と油圧アクチュエータ圧力との差圧を予め定めた所定値dP以下に維持すると共に、建設機械の油圧アクチュエータの操作状況応じて生成される外部信号により調整されるよう構成した差圧調整手段を有する建設機械の油圧制御装置において、
前記予め定められた差圧dPを調整する差圧調整手段Cを設けたことを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項2】
前記差圧調整手段は、内部にスプールを収納した弁体構造であって、前記スプールの一端部側に形成され前記油圧アクチュエータの負荷検出圧力が導かれると共に前記スプールを他端部の方へ付勢するばねを備えた第1油室(RM1)と、同第1油室に対向するよう前記スプール他端部側に配置され前記メータイン側ポンプ圧力が導かれた第2油室(RM2)と、前記第1、第2油室とそれぞれ第1、第2のスプール径大部により区画されさらにその中央部に設けられたもうひとつの第3のスプール径大部とによって区画されると共に、前記操作弁の高圧側流量調整信号用ポートに接続された第3油室(RM3)ならびに、タンクポートに接続された第4油室(RM4)と、前記第1油室側のスプール端面に臨み前記外部信号が供給される第5油室(RM5)と、前記可変容量型ポンプの斜板調整機構の油室と接続され前記第3の径大部外周面に臨むよう形成された斜板用ポートとからなることを特徴とする建設機械の油圧制御装置。
【請求項3】
前記外部信号は、前記操作弁の操作量に応じて与えられる流量調整信号を油電変換した電気信号の関数値として与える関数発生手段により生成されることを特徴とする請求項1に記載された建設機械の油圧制御装置。
【請求項4】
前記外部信号は、前記操作弁の中間操作の範囲で増加させるよう構成したことを特徴とする請求項1または2に記載された建設機械の油圧制御装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−108985(P2009−108985A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284619(P2007−284619)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】