説明

建設機械の油圧回路

【課題】簡単な構成で、アクチュエータ非操作時にメインポンプの吐出量を低下させて省エネを図る。
【解決手段】容量可変型のメインポンプ21と、該メインポンプ21の吐出量を設定するレギュレータ44と、操作レバー27の操作量を検出するネガコン圧センサP1とを備えた建設機械の油圧回路において、前記操作レバー27にオペレータの把持状態を検出するタッチセンサ41を設け、オペレータが操作レバー27を把持したことを前記タッチセンサ41が検出したときは、前記レギュレータ44に対して、メインポンプ21の吐出量をアクチュエータ26の応答性を確保する最低のスタンバイ流量とする指令信号を出力し、一方、オペレータが操作レバー27を把持しないことを前記タッチセンサ41が検出したときは、前記レギュレータ44に対して、メインポンプ21の吐出量を前記スタンバイ流量よりさらに少ない最低流量とする指令信号を出力するコントローラ40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の油圧回路に関するものであり、特に、容量可変型のメインポンプの吐出量を低減して省エネを図る油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は此種建設機械の一般的な油圧回路図であり、エンジンEの動力で駆動される可変容量型のメインポンプ21の吐出回路22には、メインポンプ21から吐出される圧油を一定圧に制御するリリーフ弁23が設けられてタンク24に接続されている。該吐出回路22の途中にはコントロール弁25が設けられ、油圧シリンダや油圧モータなどのアクチュエータ26に接続されている。また、操作レバー27を備えたリモコン弁28を設け、該リモコン弁28の2次側ポートは、パイロット回路29a,29bを介して前記コントロール弁25のパイロットポート30a,30bに接続されている。
【0003】
前記メインポンプ21の吐出回路22は、コントロール弁25のセンターバイパス25aを通り、ネガコン絞り31を介してタンク24に接続され、該ネガコン絞り31と並列にネガコンリリーフ弁32が設けられている。また、ネガコン絞り31の手前からネガコン回路33が分岐して設けられ、該ネガコン回路33はメインポンプ21の傾転角を調整するレギュレータ34に接続されている。
【0004】
図示したように、操作レバー27が未操作で、コントロール弁25が中立位置にあるときは、メインポンプ21から吐出された圧油はコントロール弁25のセンターバイパス25aを通り、前記ネガコン絞り31からタンク24に戻る。このとき、ネガコン回路33にネガコン圧が発生し、該ネガコン圧が前記レギュレータ34に作用して、メインポンプ21の吐出量はスタンバイ流量(アクチュエータ26の応答性を確保する最低流量)に低下する。
【0005】
このほか、コントロール弁が中立位置のときに、圧力センサの検出信号に基づきコントローラから電磁弁に制御信号を出力し、電磁弁を低圧位置から高圧位置に切換える。これにより高圧の制御圧が発生し、この制御圧によってエンジンガバナーをアイドル回転位置に調整するとともに、切換弁を連通位置に切換えて絞りによる圧力損失を解消し、メインポンプの吐出量を最小にする装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−167104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3の構成は、アクチュエータ26が作動していないときにメインポンプ26の吐出量をスタンバイ流量まで低下させて省エネを図るものである。しかし、スタンバイ流量はアクチュエータ26の応答性を確保するために、ある程度の吐出量(例えば、約20cc/rev)が必要であり、エネルギー損失が発生している。
【0007】
特許文献1記載の発明は、コントロール弁が中立位置のときに、絞りによる圧力損失を解消するとともに、メインポンプの吐出量を最小にできる。しかし、コントローラで電磁弁を制御して高圧を発生させるため、構成が複雑となりコストアップの要因となる。
【0008】
そこで、簡単な構成で、アクチュエータ非操作時にメインポンプの吐出量を低下させて省エネを図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、容量可変型のメインポンプと、該メインポンプの吐出量を設定する吐出量設定手段とを備えた建設機械の油圧回路において、前記操作レバーにオペレータの把持状態を検出する把持検出手段を設け、オペレータが操作レバーを把持したことを前記把持検出手段が検出したときは、前記吐出量設定手段に対して、メインポンプの吐出量をアクチュエータの応答性を確保する最低のスタンバイ流量とする指令信号を出力し、一方、オペレータが操作レバーを把持しないことを前記把持検出手段が検出したときは、前記吐出量設定手段に対して、メインポンプの吐出量を前記スタンバイ流量よりさらに少ない最低流量とする指令信号を出力する制御手段を設けたことを特徴とする建設機械の油圧回路を提供する。
【0010】
この構成によれば、オペレータが操作レバーを把持したことを把持検出手段が検出すると、制御手段は吐出量設定手段に対して指令信号を出力し、メインポンプの吐出量をスタンバイ流量にする。一方、オペレータが操作レバーを把持しないことを把持検出手段が検出すると、制御手段は吐出量設定手段に対して指令信号を出力し、メインポンプの吐出量をスタンバイ流量よりさらに低い最低流量にする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、オペレータが操作レバーを把持したか否かを把持検出手段で検出し、把持していないときはメインポンプの吐出量をスタンバイ流量よりもさらに低い流量にするので、アクチュエータが動作していない未作業時における無駄なエネルギー消費をなくすことができる。また、オペレータが作業を開始しようとして操作レバーを把持したときは、操作レバーを操作する前に通常のスタンバイ流量に復帰するので、アクチュエータの応答性を悪化させることがなく省エネに寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の油圧回路について、好適な実施例をあげて説明する。簡単な構成で、アクチュエータ非操作時にメインポンプの吐出量を低下させて省エネを図るという目的を達成するために、本発明は、容量可変型のメインポンプと、該メインポンプの吐出量を設定する吐出量設定手段とを備えた建設機械の油圧回路において、前記操作レバーにオペレータの把持状態を検出する把持検出手段を設け、オペレータが操作レバーを把持したことを前記把持検出手段が検出したときは、前記吐出量設定手段に対して、メインポンプの吐出量をアクチュエータの応答性を確保する最低のスタンバイ流量とする指令信号を出力し、一方、オペレータが操作レバーを把持しないことを前記把持検出手段が検出したときは、前記吐出量設定手段に対して、メインポンプの吐出量を前記スタンバイ流量よりさらに少ない最低流量とする指令信号を出力する制御手段を設けたことにより実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は建設機械の一例として油圧ショベル10を示し、下部走行体11の上に旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に載置されている。上部旋回体13にはその前方一側部にキャブ14が設けられ、且つ、前方中央部にブーム15が俯仰可能に取り付けられている。更に、ブーム15の先端にアーム16が上下回動自在に取り付けられ、該アーム16の先端にバケット17が取り付けられている。
【0014】
前記ブーム15、アーム16、バケット17等のアタッチメントを駆動する油圧アクチュエータとして、ブームシリンダ18、アームシリンダ19、バケットシリンダ20が夫々設けられており、上部旋回体13に搭載されているエンジンEによりメインポンプ21を駆動して、各油圧シリンダや油圧モータなどのアクチュエータへ作動油を給排する。
【0015】
図2は油圧回路図であり、説明の都合上、図3に示した従来の油圧回路と同一構成部分には同一符号を付して重複説明を省略する。図3と異なる構成部分は、先ず、操作レバー27の把持部分に、オペレータが操作レバー27を把持したことを検出する把持検出手段41を装着してある。該把持検出手段41としては種々のものが考えられるが、例えば、タッチセンサを操作レバー27のグリップに装着して把持検出手段41を構成する。該把持検出手段(以下、タッチセンサという)41の検出信号は、制御手段であるコントローラ40に入力される。
【0016】
また、メインポンプ21の吐出量を制御するための吐出量設定手段であるレギュレータ44は、従来のような油圧制御式ではなく電子制御式の構成とした。したがって、コントローラ40からの指令信号にてレギュレータ44が作動し、メインポンプ21の傾転角を変更して吐出量が制御される。さらに、ネガコン回路33に発生するネガコン圧を検出するためのネガコン圧センサP1を設け、該ネガコン圧センサP1の検出信号が前記コントローラ40に入力される。
【0017】
ここで、オペレータが操作レバー27を把持していないとき、すなわち、作業を中断している状態のときは、前記タッチセンサ41がオフとなり、コントローラ40はレギュレータ44に対して指令信号を送り、メインポンプ21の吐出量をスタンバイ流量よりさらに低い最低流量にする。
【0018】
したがって、作業を中断している状態ではメインポンプ21の吐出量がきわめて少なくなり、アクチュエータ26が動作していない未作業時における無駄なエネルギー消費をなくすことができる。
【0019】
また、オペレータが操作レバー27を把持したときは、前記タッチセンサ41がオンとなり、コントローラ40はレギュレータ44に対して指令信号を送り、メインポンプ21の吐出量をスタンバイ流量に復帰させる。
【0020】
したがって、操作レバー27が操作されずに中立位置であったとしても、直ちにアクチュエータ26を駆動できるように、メインポンプ21の吐出量を確保することができる。
【0021】
操作レバー27を操作すれば、コントロール弁25が中立位置から何れかの作動位置に切り換わり、前記ネガコン圧センサP1が検出するネガコン圧が低下するので、このネガコン圧の低下に基づき、コントローラ40がレギュレータ44を制御して、メインポンプ21の吐出量を増大する。
【0022】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用された油圧ショベルの側面図。
【図2】本発明に係る油圧回路の一例を示す説明図。
【図3】従来の建設機械の一般的な油圧回路図。
【符号の説明】
【0024】
10 油圧ショベル
21 メインポンプ
25 コントロール弁
26 アクチュエータ
27 操作レバー
28 リモコン弁
40 コントローラ(制御手段)
41 タッチセンサ(把持検出手段)
44 レギュレータ(吐出量設定手段)
45 シャトル弁
P1 ネガコン圧センサ(操作量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量可変型のメインポンプと、該メインポンプの吐出量を設定する吐出量設定手段とを備えた建設機械の油圧回路において、
前記操作レバーにオペレータの把持状態を検出する把持検出手段を設け、
オペレータが操作レバーを把持したことを前記把持検出手段が検出したときは、前記吐出量設定手段に対して、メインポンプの吐出量をアクチュエータの応答性を確保する最低のスタンバイ流量とする指令信号を出力し、一方、オペレータが操作レバーを把持しないことを前記把持検出手段が検出したときは、前記吐出量設定手段に対して、メインポンプの吐出量を前記スタンバイ流量よりさらに少ない最低流量とする指令信号を出力する制御手段を設けたことを特徴とする建設機械の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−115201(P2009−115201A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288663(P2007−288663)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】