説明

建設機械の油圧回路

【課題】アキュムレータの蓄圧状態に応じてシーケンス弁の作動を自動制御し、無駄な圧損、発熱を防止する。
【解決手段】リモコン弁12からのパイロット圧により油圧パイロット式のコントロールバルブ13を作動させて油圧アクチュエータ14の作動を制御する主回路Cと、この主回路Cの油圧源としての油圧ポンプ11と、この油圧ポンプ11から吐出された圧油の一部を減圧弁17を介してアキュムレータ18に蓄圧しリモコン弁12にパイロット一次圧として供給するパイロット回路Dと、このパイロット回路Dの油圧源として必要なパイロット源圧力を確保するシーケンス弁19と、このシーケンス弁19を制御するシーケンス弁制御回路21とを備え、このシーケンス弁制御回路21は、アキュムレータ圧力が一定値以下のときにシーケンス弁19を作動させてパイロット源圧力を発生させ、アキュムレータ圧力が一定値以上のときにシーケンス弁19を開くように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械において、主回路の油圧ポンプをパイロット油圧源として共用するポンプ共用型の油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のポンプ共用型の油圧回路を図4に示す。
【0003】
この回路は、基本的には、油圧源としての油圧ポンプ1に主回路Aとパイロット回路Bとがパラレルに接続されて構成される。
【0004】
主回路Aは、オペレータにより手動操作されるリモコン弁2からのパイロット圧(パイロット二次圧)によって切換わり作動する油圧パイロット式のコントロールバルブ3と、このコントロールバルブ3によって作動の方向と速度を制御される油圧アクチュエータ4とから成る。
【0005】
図中、5は油圧ポンプ1と主回路Aとを結ぶ主ポンプ管路、6は油圧ポンプ1とパイロット回路Bとを結ぶ圧油導入管路、Tはタンクである。
【0006】
なお、油圧ショベル等の建設機械では、通常、複数の油圧アクチュエータ4が設けられ、リモコン弁2及びコントロールバルブ3も、油圧アクチュエータ5に対応して複数ずつ(コントロールバルブ3については複数のバルブの集合体としてのバルブブロックとして)設けられるが、ここでは説明をわかり易くするためにいずれも単一のものとして図示している。
【0007】
この点は図1〜図3に示す本発明の実施形態においても同じである。
【0008】
パイロット回路Bは、圧油導入管路6によって導入される圧油(油圧ポンプ1から吐出された圧油の一部)を減圧する減圧弁7と、この減圧弁7の二次圧を蓄圧してリモコン弁2にパイロット一次圧として供給するアキュムレータ8とから成っている。
【0009】
また、主ポンプ管路5にシーケンス弁9が設けられている。
【0010】
このシーケンス弁9は、圧力設定用のバネ9aと、主ポンプ管路5の圧力(=ポンプ圧力)をバネ9aに対抗するパイロット圧として取り込むパイロットポート9bとを有し、このシーケンス弁9により、ポンプ圧が立たない(立っても低い)状況で、パイロット回路Bのパイロット圧源として必要な圧力(パイロット一次圧以上の圧力=パイロット源圧力)が確保される。
【0011】
図4中、Drは減圧弁7及びシーケンス弁9のドレン管路である。
【0012】
この油圧回路そのものを示す技術文献は見当たらないが、シーケンス弁によってパイロット圧源を確保する技術として特許文献1に示されたものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−263304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、図4に示す公知技術によると、アキュムレータ8の蓄圧状態に関係なく、ポンプ運転中、ポンプ圧が低ければ常にシーケンス弁9が作動する構成、すなわち、アキュムレータ8が十分に蓄圧され、それによってパイロット圧源が確保された状態でも、シーケンス弁9によって圧力が立つ構成であるため、無駄な圧損(エネルギー損失)が大きく、余分な発熱が生じるという問題があった。
【0015】
そこで本発明は、アキュムレータの蓄圧状態に応じてシーケンス弁の作動を自動制御し、無駄な圧損、発熱を防止することができる建設機械の油圧回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明においては、リモコン弁からのパイロット圧により油圧パイロット式のコントロールバルブを作動させて油圧アクチュエータの作動を制御する主回路と、この主回路の油圧源としての油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油の一部を減圧弁を介してアキュムレータに蓄圧し上記リモコン弁にパイロット一次圧として供給するパイロット回路と、上記パイロット回路の油圧源として必要なパイロット源圧力を確保するシーケンス弁と、このシーケンス弁を制御するシーケンス弁制御回路とを備え、このシーケンス弁制御回路は、上記アキュムレータの圧力が一定値以下のときに上記シーケンス弁を作動させて上記パイロット源圧力を発生させ、アキュムレータ圧力が一定値以上のときに上記シーケンス弁を開くように構成したものである。
【0017】
この構成によれば、アキュムレータの圧力(蓄圧力)が一定値以下のときに限りシーケンス弁が作動してパイロット源圧力を立て、それ以外はシーケンス弁を開いてポンプ吐出油をアンロードさせるため、シーケンス弁での無駄な圧損、発熱を防止することができる。
【0018】
また本発明においては、上記シーケンス弁に、ポンプ圧を導入する第1のパイロットポートに加えて第2のパイロットポートを設け、この第2のパイロットポートとアキュムレータとをパイロットラインにより接続して上記シーケンス弁制御回路を構成するのが望ましい(請求項2,3)。
【0019】
この構成によれば、アキュムレータ圧力によってシーケンス弁19を直接制御することができる。従って、電気制御系が不要であるため、制御回路の構成が簡単でコストが安くてすみ、制御の信頼性も高くなる。
【0020】
この場合、上記パイロットラインと、上記アキュムレータの圧力を上記シーケンス弁の第2パイロットポートに対して導通/遮断する電磁切換弁と、上記アキュムレータの圧力に基づいて上記切換弁を切換制御するコントローラとによって上記シーケンス弁制御回路を構成するのが望ましい(請求項3)。
【0021】
この構成によれば、電磁切換弁の切換圧力を自由に設定でき、シーケンス弁が作動する圧力と開く圧力とに差を持たせることができるため、一定のしきい値を境としてシーケンス弁を制御する場合と比較して、アキュムレータへの蓄圧を確実に行わせることができる。
【0022】
さらに本発明においては、油圧アクチュエータ及びコントロールバルブが複数ずつ設けられて上記主回路が構成されるとともに、この主回路の油圧源として複数の油圧ポンプが設けられる場合に、一つの油圧ポンプと主回路とを結ぶ主ポンプ管路に上記シーケンス弁を設け、かつ、各油圧ポンプから高圧選択された圧油を上記減圧弁の一次側に導く圧油導入管路を設けるのが望ましい(請求項4)。
【0023】
こうすれば、シーケンス弁が設けられたポンプ回路の作動停止時に、他のポンプから高圧選択された圧油を減圧弁の一次側に導いてパイロット源圧力を確保する一方、シーケンス弁が設けられたポンプ回路のポンプ吐出油はアンロードさせることができる。
【0024】
このため、シーケンス弁での無駄な圧損及び発熱を防止する点の効果が高くなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、シーケンス弁によってパイロット源圧力を確保する構成をとりながら、シーケンス弁での無駄な圧損、発熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態を示す回路構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す回路構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す回路構成図である。
【図4】従来技術を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1実施形態(図1参照)。
【0028】
図1に第1実施形態の回路構成を示す。
【0029】
この回路の基本構成は、図4に示す従来回路と同じである。
【0030】
すなわち、油圧源としての油圧ポンプ11に主回路Cとパイロット回路Dとがパラレルに接続されている。
【0031】
主回路Cは、オペレータによって手動操作されるリモコン弁12と、このリモコン弁12からのパイロット圧(パイロット二次圧)によって切換わり作動する油圧パイロット式のコントロールバルブ13と、このコントロールバルブ13によって作動の方向と速度を制御される油圧アクチュエータ14とから成る。
【0032】
図中、15は油圧ポンプ11と主回路Cとを結ぶ主ポンプ管路、16は油圧ポンプ11とパイロット回路Dとを結ぶ圧油導入管路、Tはタンクである。
【0033】
パイロット回路Dは、圧油導入管路16によって導入される圧油(油圧ポンプ11から吐出された圧油の一部)を減圧する減圧弁17と、この減圧弁17の二次圧を蓄圧してリモコン弁12にパイロット一次圧として供給するアキュムレータ18とから成っている。
【0034】
また、主ポンプ管路15にシーケンス弁19が設けられている。
【0035】
このシーケンス弁19は、圧力設定用のバネ19aと、このバネ19aに対抗するパイロット圧を取り込む第1及び第2のパイロットポート19b,19cとを備え、第1のパイロットポート19bに主ポンプ管路15の圧力(=ポンプ圧力)が取り込まれる。
【0036】
一方、第2のパイロットポート19cは、パイロットライン20によってアキュムレータ18に接続され、アキュムレータ圧力がこのパイロットポート19cにシーケンス弁開き方向のパイロット圧として取り込まれる。
【0037】
すなわち、この第2のパイロットポート19cとパイロットライン20とによってシーケンス弁制御回路21が構成されている。
【0038】
図1中、Drは減圧弁17及びシーケンス弁19のドレン管路である。
【0039】
この構成において、シーケンス弁19は、アキュムレータ18の蓄圧状態が不十分でアキュムレータ圧力が低い状態では、従来と同様に作動し、ポンプ主管路15に圧力を立てる。
【0040】
このとき、ポンプ圧は、シーケンス弁19の設定圧力とアクチュエータ駆動圧力のうち高い方の圧力となり、これが圧油導入管路16及び減圧弁7経由でアキュムレータ8に供給され、このアキュムレータ圧力がリモコン弁12にパイロット一次圧として供給される。
【0041】
これによりアキュムレータ圧力が上昇し、一定値(減圧弁17の二次圧についての設定値)に達すると、シーケンス弁19が開き、アンロード状態となる。このため、シーケンス弁19の内部に無駄な圧損と発熱が発生しない。
【0042】
なお、シーケンス弁19が開いたアンロード状態でも、アクチュエータ圧力が上昇すれば、そしてアキュムレータ圧力が低ければアキュムレータ18への蓄圧が行われる。
【0043】
また、アキュムレータ圧力が洩れ等によって徐々に低下し、予め設定された値に達すると、バネ19aによってシーケンス弁19が閉じ側に作動し、再び圧力を立てる作用が行われる。
【0044】
このように、この油圧回路によると、シーケンス弁19での無駄な圧損、発熱を防止することができる。
【0045】
また、シーケンス弁19に、ポンプ圧を導入する第1のパイロットポート19bに加えて第2のパイロットポート19cを設け、この第2のパイロットポート19cとアキュムレータ18とをパイロットライン20により接続してシーケンス弁制御回路21を構成したから、アキュムレータ圧力によってシーケンス弁19を直接制御することができる。
【0046】
従って、電気制御系が不要であるため、制御回路の構成が簡単でコストが安くてすみ、制御の信頼性も高くなる。
【0047】
第2実施形態(図2参照)
以下の第2、第3両実施形態については第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0048】
第2実施形態においては、第1実施形態の構成を前提として、アキュムレータ圧力をシーケンス弁19の第2のパイロットポート19cに対して導通/遮断する電磁切換弁22と、アキュムレータ圧力を検出する圧力センサ23と、この圧力センサ23によって検出されるアキュムレータ圧力に基づいて電磁切換弁22を切換制御するコントローラ24とによってシーケンス弁制御回路25が構成されている。
【0049】
コントローラ24は、アキュムレータ圧力が低いときには電磁切換弁22を図のオフ位置イにセットし、アキュムレータ圧力が高くなるとオン位置ロに切換え、アキュムレータ圧力をシーケンス弁19に導入してこれをアンロード状態とする。
【0050】
この構成によると、電磁切換弁22の切換圧力を自由に設定でき、シーケンス弁19が作動する圧力と開く圧力とに差を持たせることができるため、一定のしきい値を境としてシーケンス弁19を制御する場合と比較して、アキュムレータ18への蓄圧を確実に行わせることができる。
【0051】
第3実施形態(図3参照)
第3実施形態においては、実際の建設機械(油圧ショベルの場合で説明する)の油圧回路に即した構成として、油圧アクチュエータ14を複数(たとえば3つ。以下、この例で説明する)のグループに分け、グループごとに別々の油圧ポンプ(図の左側から第1、第2、第3ポンプ)11a,11b,11cによって駆動する回路構成において、うち一つの油圧ポンプ(たとえば第3ポンプ)11cの主ポンプ管路15cにシーケンス弁19が設けられている。
【0052】
このシーケンス弁19そのものの構成、及びシーケンス弁制御回路21の構成は第1実施形態と同じである。
【0053】
ここで、第3油圧ポンプ11cは、たとえば、
(i) 掘削作業時には、ほぼ常にシーケンス弁19の設定圧力を上回るポンプ圧が立ち、
(ii) 走行時には逆に無負荷状態となる
状況で使用されるポンプとする。
【0054】
この条件下では、シーケンス弁19は、掘削作業中はほとんど機能する必要がないためアンロード状態となって圧損もほとんど発生しない一方、走行時には圧力を立ててパイロット源圧力を確保する状態となる。
【0055】
従って、走行時にシーケンス弁19での無駄な圧損と発熱が大きくなる。
【0056】
そこで、このシーケンス弁19の作動を必要最小限に抑える手段として、各ポンプ11a,11b,11cの主ポンプ管路15a,15b,15cの圧油を減圧弁17の一次側に導入する圧油導入管路26a,26b,26c(26cは図1,2の管路16と同じ)が設けられ、この各管路26a〜26cにそれぞれチェック弁27が設けられている。
【0057】
この構成によると、各ポンプ11a〜11cからの圧油のうち高圧選択された圧油が減圧弁17に一次圧として導入され、アキュムレータ18に蓄圧される。
【0058】
従って、走行時には、第1、第2両ポンプ11a,11bからの圧油によってアキュムレータ18が蓄圧され、アキュムレータ圧力が高い状態が維持されるため、シーケンス弁19がアンロード状態となる。
【0059】
このため、シーケンス弁19での無駄な圧損と発熱を抑えることができる。
【0060】
なお、第1ポンプ11aまたは第2ポンプ11bからアキュムレータ18に導入される圧油の量は、減圧弁17からの洩れを補償する程度の少量であるため、走行時の直進性が阻害されるおそれがない。
【0061】
また、上記の効果は、走行時に限らず、第3ポンプ11cは使用せずに第1ポンプ11aまたは第2ポンプ11bのみを使用して行う作業時にも同様に得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
11 油圧ポンプ
C 主回路
D パイロット回路
12 リモコン弁
13 主回路のコントロールバルブ
14 同、油圧アクチュエータ
15 主ポンプ管路
16 圧油導入管路
17 パイロット回路の減圧弁
18 同、アキュムレータ
19 シーケンス弁
19b シーケンス弁の第1のパイロットポート
19c 同、第2のパイロットポート
20 シーケンス弁制御回路を構成するパイロットライン
21 シーケンス弁制御回路
22 切換弁
23 アキュムレータ圧力を検出する圧力センサ
24 コントローラ
25 シーケンス弁制御回路
11a,11b,11c 油圧ポンプ
15a,15b,15c 主ポンプ管路
26a,26b,26c 圧力導入管路
27 チェック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモコン弁からのパイロット圧により油圧パイロット式のコントロールバルブを作動させて油圧アクチュエータの作動を制御する主回路と、この主回路の油圧源としての油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油の一部を減圧弁を介してアキュムレータに蓄圧し上記リモコン弁にパイロット一次圧として供給するパイロット回路と、上記パイロット回路の油圧源として必要なパイロット源圧力を確保するシーケンス弁と、このシーケンス弁を制御するシーケンス弁制御回路とを備え、このシーケンス弁制御回路は、上記アキュムレータの圧力が一定値以下のときに上記シーケンス弁を作動させて上記パイロット源圧力を発生させ、アキュムレータ圧力が一定値以上のときに上記シーケンス弁を開くように構成されたことを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項2】
上記シーケンス弁に、ポンプ圧を導入する第1のパイロットポートに加えて第2のパイロットポートが設けられ、この第2のパイロットポートとアキュムレータとがパイロットラインにより接続されて上記シーケンス弁制御回路が構成されたことを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧回路。
【請求項3】
上記パイロットラインと、上記アキュムレータの圧力を上記シーケンス弁の第2パイロットポートに対して導通/遮断する電磁切換弁と、上記アキュムレータの圧力に基づいて上記電磁切換弁を切換制御するコントローラとによって上記シーケンス弁制御回路が構成されたことを特徴とする請求項2記載の建設機械の油圧回路。
【請求項4】
油圧アクチュエータ及びコントロールバルブが複数ずつ設けられて上記主回路が構成されるとともに、この主回路の油圧源として複数の油圧ポンプが設けられ、うち一つの油圧ポンプと主回路とを結ぶ主ポンプ管路に上記シーケンス弁が設けられ、かつ、各油圧ポンプから高圧選択された圧油を上記減圧弁の一次側に導く圧油導入管路が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−77767(P2012−77767A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220738(P2010−220738)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】