説明

建設機械の油圧駆動装置

【課題】第1,第2油圧アクチュエータの複合動作時において第1油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保と第2油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保とを両立できるとともに第1油圧アクチュエータの動作速度を安定させることができ、さらに、過剰なエンジン出力を有効に利用することができる建設機械の油圧駆動装置の提供。
【解決手段】エンジン25により第1油圧ポンプ13A,13Bを駆動し、電動機45により第2油圧ポンプ30を駆動するようにした。また、エンジン25により発電機41を駆動し、発電機41により発電される電気エネルギから第2油圧ポンプ30の駆動に必要な電気エネルギを差引いた電気エネルギをバッテリ40に蓄えておき、発電機41により発電される電気エネルギのみでは第2油圧ポンプ30の駆動に必要な電気エネルギが賄えないときに、バッテリ40から得られる電気エネルギを使用するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに供給する圧油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧アクチュエータよりも使用頻度の少ない別の油圧アクチュエータと、この別の油圧アクチュエータに供給する圧油を吐出する別の油圧ポンプとを備える建設機械の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械の油圧駆動装置、例えば油圧ショベルの油圧駆動装置として特許文献1に示されるものがある。この油圧駆動装置は、1以上の第1油圧アクチュエータ、例えばブームシリンダおよびアームシリンダと、第1油圧アクチュエータとは別の油圧アクチュエータであって第1油圧アクチュエータよりも使用頻度の少ない第2油圧アクチュエータ、例えば旋回モータとを備えている。また、ブームシリンダとアームシリンダに供給する圧油を吐出する1以上の第1油圧ポンプ、例えば2つの第1油圧ポンプと、この第1油圧ポンプとは別の油圧ポンプであって旋回モータに供給する圧油を吐出する第2油圧ポンプとを備えている。さらに、第1,第2油圧ポンプを駆動する1つのエンジンを備えている。
【0003】
第1油圧ポンプの吐出流量は、2つの第1油圧ポンプの吐出圧のいずれか高い方が所定の圧力値以上の状態において、その高い方の吐出圧の上昇に連動して減少し、その高い方の吐出圧の低下に連動して増加するようになっている。さらに、第1油圧ポンプの吐出流量は、第2油圧ポンプの吐出圧が所定の圧力値以上の状態において、第2油圧ポンプの吐出圧の変動が反映し、第2油圧ポンプの吐出圧の上昇に連動して減少し、第2油圧ポンプの吐出圧の低下に連動して増加するようになっている。
【0004】
第2油圧ポンプの吐出流量は、第2油圧ポンプ自身の吐出圧が所定の圧力値以上の状態において、第2油圧ポンプの吐出圧の上昇に連動して減少し、第2油圧ポンプの吐出圧の低下に連動して増加するようになっている。なお、前述したように第1油圧ポンプの吐出流量については第2油圧ポンプの吐出圧の変動が反映するようになっているが、第2油圧ポンプの吐出流量については第1油圧ポンプの吐出圧の変動が反映しないようになっている。
【0005】
このように構成された油圧駆動装置は次のように動作する。
【0006】
旋回モータが動作していない状態でブームシリンダとアームシリンダが動作する場合、ブームシリンダやアームシリンダの負荷に対抗する2つの第1油圧ポンプの吐出圧のうちの高い方が所定の圧力値以上の状態では、その高い方の吐出圧の上昇に連動して第1油圧ポンプの吐出流量が減少し、その高い方の吐出圧の低下に連動して第1油圧ポンプの吐出流量が増加する。これにより、ブームシリンダやアームシリンダの駆動圧が確保された状態で、2つの第1油圧ポンプの吸収トルクの合計がエンジントルクとほぼ同値に維持される。
【0007】
ブームシリンダとアームシリンダと旋回モータとが複合動作する場合、旋回モータの動作開始時に慣性モーメントによって旋回モータの負荷が上昇し、第2油圧ポンプの吐出圧が所定の圧力値以上に上昇する。すると、第1油圧ポンプの吐出流量が第2油圧ポンプの吐出圧の上昇に連動して減少し、第1油圧ポンプの吸収トルクが低下する。これにより、第1油圧ポンプに対するエンジントルクの割当てが減少し、この割当ての減少分が第2油圧ポンプに割当てられて、第1,第2油圧ポンプの吸収トルクの合計がエンジントルク以下に抑えられる。この結果、旋回モータの駆動力と動作速度が確保される。
【特許文献1】特開2002−24294公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来の油圧ショベルの油圧駆動装置は、旋回モータが動作していない状態においては第1油圧ポンプに割当てられていたエンジントルクの一部を、ブームシリンダとアームシリンダと旋回モータとの複合動作時においては第2油圧ポンプに割当てている。つまり、ブームシリンダやアームシリンダの駆動力および動作速度を低下させることと引換えに、旋回モータの駆動力および動作速度を確保している。しがって、ブームシリンダやアームシリンダの駆動力および動作速度の確保と旋回モータの駆動力および動作速度の確保とを両立させることができない。このため、ブームシリンダとアームシリンダと旋回モータとの複合動作時におけるブームシリンダとアームシリンダの動作による作業の能率が、旋回モータが動作していないときよりも低くなるという問題があった。
【0009】
また、従来の油圧ショベルの油圧駆動装置は、ブームシリンダとアームシリンダと旋回モータとの複合動作時において、第2油圧ポンプにエンジントルクを割当てるために、第1油圧ポンプの吐出流量を第2油圧ポンプの吐出圧の変動に連動させて変動させる。このため、旋回モータの動作開始時に旋回モータの負荷が上昇すると、ブームシリンダやアームシリンダの動作速度が遅くなり、旋回モータの動作が等速状態になって旋回モータの負荷が低下すると、ブームシリンダやアームシリンダの動作速度が速くなる。つまり、従来の建設機械の油圧駆動装置には、ブームシリンダとアームシリンダと旋回モータとの複合動作時において、ブームシリンダやアームシリンダの動作速度が不安定になり、ブームシリンダやアームシリンダの操作性が低下するという問題がある。
【0010】
また、従来の油圧ショベルの油圧駆動装置は、1つのエンジンにより第1,第2油圧ポンプを駆動するので、第1,第2油圧ポンプに入力されたエンジン出力のうちのブームシリンダ、アームシリンダおよび旋回モータのいずれの駆動にも使用されない過剰なエンジン出力は、第1,第2油圧ポンプから吐出された圧油を作動油タンクに排出することにより無駄に消費される。このため、過剰なエンジン出力を有効に利用することによって省エネを実現することが要望されていた。
【0011】
本発明は、上述の実状を考慮してなされたものであり、その目的は、第1,第2油圧アクチュエータの複合動作時において第1油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保と第2油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保とを両立できるとともに第1油圧アクチュエータの動作速度を安定させることができ、さらに、過剰なエンジン出力を有効に利用することができる建設機械の油圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔1〕 本発明は、前述の目的を達成するために、1以上の第1油圧アクチュエータと、この第1油圧アクチュエータに供給する圧油を吐出する1以上の第1油圧ポンプと、前記第1油圧アクチュエータよりも使用頻度の少ない第2油圧アクチュエータと、前記第1油圧ポンプとは別の油圧ポンプであって前記第2油圧アクチュエータに供給する圧油を吐出する第2油圧ポンプとを備える建設機械の油圧駆動装置において、前記第1油圧ポンプを駆動するエンジンと、このエンジンにより駆動されて発電する発電機と、この発電機が発電した電気エネルギを蓄える蓄電部と、前記発電機および前記蓄電部の少なくとも一方から得られる電気エネルギより駆動されて前記第2油圧ポンプを駆動する電動機とを備えることを特徴とする。
【0013】
このように構成した本発明は、エンジンにより第1油圧ポンプを駆動し、電動機により第2油圧ポンプを駆動するので、第1油圧ポンプの吸収トルクと第2油圧ポンプの吸収トルクとを互いの変動に関係なく個別に設定することができる。これにより、第1,第2油圧アクチュエータの複合動作時において、第1油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保と第2油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保とを両立させることができるとともに、第1油圧アクチュエータの動作速度を安定させることができる。
【0014】
また、本発明は、発電機と蓄電部から得られる電気エネルギにより電動機を駆動する。電動機により第2油圧ポンプを駆動する際、第2油圧ポンプの駆動に必要な電気エネルギが発電機により発電された電気エネルギよりも小さい場合には、発電機により発電された電気エネルギから第2油圧ポンプの駆動に必要な電気エネルギを差引いた電気エネルギを、蓄電部に充電する。そして、第2油圧ポンプの駆動に必要な電気エネルギが発電機により発電された電気エネルギよりも大きくなった場合には、発電部が発電する電気エネルギと蓄電部に蓄えられた電気エネルギの両方により電動機を駆動して第2油圧ポンプを駆動する。つまり、過剰なエンジン出力を蓄えておき、第2油圧ポンプを駆動するために使用することができるので、過剰なエンジン出力を有効に利用することができる。
【0015】
〔2〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記第2油圧アクチュエータを駆動させる旨の指令の有無を判定する判定手段と、前記指令がないという判定が前記判定手段によりなされたときに、前記電動機の回転速度を所定値まで低下させる制御を行う低回転制御手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
このように構成した本発明は、第2油圧アクチュエータの駆動が指令されていないという判定を、すなわち第2油圧アクチュエータが動作していないという判定を判定手段により行ったときに、低回転制御手段により電動機の回転速度を所定の回転数まで低下させる。これにより、第2油圧アクチュエータが動作していないときにおける電動機の消費電力を低減することができる。
【0017】
〔3〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記第2油圧アクチュエータと作動油タンクとを連絡するメータアウト通路に設けられる油圧モータと、この油圧モータにより駆動され、前記蓄電部に充電する電気エネルギを発電する発電機とを備えることを特徴とする。
【0018】
このように構成した本発明は、第2油圧アクチュエータから作動油タンクに排出される圧油により油圧モータを駆動し、この油圧モータにより発電機を駆動し、この発電機により発電して、発電した電気エネルギを充電池に充電する。これにより、第2アクチュエータから排出される圧油のエネルギを蓄えておき、第2油圧ポンプを駆動するために使用することができる。
【0019】
〔4〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記建設機械が油圧ショベルからなり、前記第1油圧アクチュエータが、前記油圧ショベルの作業機を駆動する油圧シリンダからなり、前記第2油圧アクチュエータが、前記油圧ショベルの旋回体を駆動する油圧モータからなることを特徴とする。
【0020】
このように構成した本発明は、作業機と旋回体との複合動作時において、作業機の駆動力および動作速度の確保と旋回体の駆動力および動作速度の確保とを両立することができるとともに作業機の動作速度を安定させることができる。
【0021】
〔5〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記第1油圧ポンプを2つ、前記第2油圧ポンプを1つ備えることを特徴とする。
【0022】
このように構成した発明は、2つの第1油圧ポンプの吸収トルクの合計と、第2油圧ポンプの吸収トルクとを互いの変動に関係なく個別に設定することができる。
【発明の効果】
【0023】
前述のように、本発明によれば、第1,第2油圧アクチュエータの複合動作時において、第1油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保と第2油圧アクチュエータの駆動力および動作速度の確保とを両立させることができるので、第1,第2油圧アクチュエータの複合動作時における第1油圧アクチュエータの動作による作業の能率の向上に貢献できる。
【0024】
また、第1,第2油圧アクチュエータの複合動作時において、第1油圧アクチュエータの動作速度を安定させることができるので、第1,第2油圧アクチュエータの複合動作時における第1油圧アクチュエータの操作性の向上に貢献できる。
【0025】
また、過剰なエンジン出力を有効に利用することができるので、建設機械の駆動に係るエネルギの省エネに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の建設機械の油圧駆動装置を油圧ショベルに適用した場合の実施形態について説明する。
【0027】
<1> 油圧ショベルの構成
後述する第1実施形態が適用される油圧ショベルの構成について図1を用いて説明する。図1は第1実施形態が適用される油圧ショベルの側面図である。
【0028】
図1に示すように、油圧ショベル1は、不図示の一対の走行モータ(油圧モータ)、すなわち左走行モータおよび右走行モータの動力により走行する走行体2を備えている。この走行体2上には、運転室4や機械室5を有し不図示の旋回モータ(油圧モータ)の動力により旋回する旋回体3を設けてある。この旋回体3には、作業機6を設けてある。この作業機6は、一端が旋回体3にピン結合され旋回体3に対して上下方向へ回動可能なブーム7と、このブーム7の他端部に一端部がピン結合されブーム7に対して上下方向へ回動可能なアーム8と、このアーム8の他端部にピン結合されてアーム8に対して上下方向へ回動可能なバケット9とを有する。ブーム7、アーム8およびバケット9はそれぞれブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12の伸縮によって駆動されるようにしてある。
【0029】
<2> 第1実施形態
第1実施形態について図1〜6を用いて説明する。図2は第1実施形態の構成を示す油圧回路図、図3は第1実施形態における第1油圧ポンプの吐出圧−吐出流量特性線図、図4は第1実施形態における第2油圧ポンプの吐出圧−吐出流量特性線図、図5は第1実施形態におけるエンジントルクと第1油圧ポンプの吸収トルクの合計と発電機の吸収トルクとの関係を示す積み上げ図、図6は第1実施形態におけるエンジントルクと第1油圧ポンプの吸収トルクの合計と第2油圧ポンプの吸収トルクとの関係を示す積み上げ図である。
【0030】
<2.1> 第1実施形態の構成
第1実施形態は図2に示すように構成してある。なお、図2において、前述したブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、旋回モータ、走行モータ、および操作パイロット系のそれぞれの図は、省略してある。
【0031】
第1実施形態は、1以上の第1油圧アクチュエータ、例えば前述したブームシリンダ10およびアームシリンダ11と、これら第1油圧アクチュエータよりも使用頻度の少ない第2油圧アクチュエータ、例えば前述した不図示の旋回モータを備えている。
【0032】
また、第1実施形態は、ブームシリンダ10およびアームシリンダ11に供給する圧油を吐出する1以上、例えば2つの第1油圧ポンプ13A,13Bと、旋回モータに供給する圧油を吐出する第2油圧ポンプ30とを備えている。
【0033】
また、第1実施形態は、第1油圧ポンプ13Bに接続される主管路15Bに設けられ、第1油圧ポンプ13Bからブームシリンダ10に供給される圧油の流れを制御する第1ブーム用方向切換弁23と、第1油圧ポンプ13Aに接続される主管路15Aに設けられ、第1油圧ポンプ13Aからブームシリンダ10に供給される圧油の流れを制御する第2ブーム用方向切換弁20を備えている。また、主管路15Aに設けられ、第1油圧ポンプ13Aからアームシリンダ11に供給される圧油の流れを制御する第1アーム用方向切換弁19と、主管路15Bに設けられ第1油圧ポンプ13Bからアームシリンダ11に供給される圧油の流れを制御する第2アーム用方向切換弁22とを備えている。さらに、第2油圧ポンプ30に接続される主管路32に設けられ第2油圧ポンプ30から旋回モータに供給される圧油の流れを制御する旋回用方向切換弁35を備えている。
【0034】
また、第1実施形態は、左走行モータと、右走行モータと、第1油圧ポンプ13Aの主管路15Aに設けられ第1油圧ポンプ13Aから一方の走行モータ例えば左走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行左用方向切換弁18と、第1油圧ポンプ13Bの主管路15Bに設けられ第1油圧ポンプ13Bから他方の走行モータすなわち右走行モータに供給される圧油の流れを制御する走行右用方向切換弁21を備えている。
【0035】
また、第1実施形態は、バケットシリンダ12と、第1油圧ポンプ13Bの主管路15Bに設けられ第1油圧ポンプ13Bからバケットシリンダ12に供給される圧油の流れを制御するバケット用方向切換弁24とを備えている。
【0036】
前述した第1油圧ポンプ13A,13Bは、1回転当たりの吐出流量(押し退け容積)を可変にする押し退け容積可変機構部14A,14Bを有する可変容量型油圧ポンプからなる。押し退け容積可変機構部14A,14Bは、共通の第1レギュレータ17によって制御されるようにしてある。この第1レギュレータ17は、第1油圧ポンプ13Aの主管路15Aから管路16Aを介して付与される吐出圧と、第1油圧ポンプ13Bの主管路15Bから管路16Bを介して付与される吐出圧とを平均した圧力(以下「第1油圧ポンプ平均吐出圧P1」という)により駆動されるようにしてある。
【0037】
第1レギュレータ17は、図3に示す吐出圧−吐出流量特性に従って、第1油圧ポンプ13A,13Bの吐出流量(以下「第1油圧ポンプ吐出流量Q1」という)を制御するよう設定してある。
【0038】
つまり、第1油圧ポンプ平均吐出圧P1が0から所定の圧力値P1s以下の状態では、第1油圧ポンプ吐出流量Q1が、最大吐出量Q1maxに維持されるようにしてある。また、第1油圧ポンプ平均吐出圧P1が所定の圧力値P1s以上の状態では、第1油圧ポンプ吐出流量Q1が第1油圧ポンプ平均吐出圧P1の上昇に連動して減少し、第1油圧ポンプ平均吐出圧P1の低下に連動して増加するようにしてある。これにより、図5の斜線部Aで示すように、ブームシリンダ10やアームシリンダ11の駆動に必要な第1油圧ポンプ平均吐出圧P1が確保された状態で、第1油圧ポンプ13A,13Bの吸収トルクの合計(以下「第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1」という)が予め設定された吸収トルクの上限値T1maxに維持されるようにしてある。
【0039】
前述した第2油圧ポンプ30も、第1油圧ポンプ13A,13Bと同様に可変容量型油圧ポンプからなる。この第2油圧ポンプの押し退け容積可変機構部31は、第2レギュレータ34によって制御されるようにしてある。この第2レギュレータ34は、第2油圧ポンプ30の主管路32から管路33介して付与される第2油圧ポンプ30の吐出圧(以下「第2油圧ポンプ吐出圧P2」という)により駆動されるようにしてある。
【0040】
この第2レギュレータ34は、図4に示す吐出圧−吐出流量特性に従って、第2油圧ポンプ30の吐出流量(以下「第2油圧ポンプ吐出流量Q2」という)を制御するよう設定してある。
【0041】
つまり、第2油圧ポンプ吐出圧P2が0から所定の圧力値P2s以下の状態では、第2油圧ポンプ吐出流量Q2が、最大吐出流量Q2maxに維持されるようにしてある。また、第2油圧ポンプ吐出圧P2が所定の圧力値P2s以上の状態では、第2油圧ポンプ吐出流量Q2が第2油圧ポンプ吐出圧P2の上昇に連動して減少し、第2油圧ポンプ吐出圧P2の低下に連動して増加するようにしてある。これにより、図6の点部Bで示すように、旋回モータの駆動に必要な第2油圧ポンプ吐出圧P2が確保された状態で、第2油圧ポンプ30の吸収トルク(以下「第2油圧ポンプ吸収トルクT2」)が予め設定した上限値T2maxに維持されるようにしてある。なお、上限値T2maxは、後述する電動機45の最大出力トルクTMmaxとほぼ同値に設定してある。
【0042】
また、図6に示すように、第2油圧ポンプ吸収トルクT2の上限値T2maxと、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1の上限値T1maxとの合計は、エンジントルクTEよりも大きな値に設定してある。なお、説明を簡単にするために、所定の圧力値P2sは前記所定の圧力値P1sと同値(P2s=P1s)にしてある。
【0043】
また、第1実施形態は、第1油圧ポンプ13A,13Bおよびパイロットポンプ101を駆動するエンジン25と、エンジン25により駆動されて発電する発電機41と、この発電機41が発電した電気エネルギを蓄える蓄電部すなわちバッテリ40と、発電機41およびバッテリ40の少なくとも一方からの電気エネルギにより駆動されて第2油圧ポンプ30を駆動する電動機45とを備えている。
【0044】
電動機45は、エンジントルクTEから第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1の上限値T1maxを差引いた値よりも大きい最大出力トルクTMmaxを出力しつつ、予め設定された回転速度で回転可能な電動機である。
【0045】
発電機41とバッテリ40を接続する電気回路43には、発電機41の負荷、すなわち発電機41が発電する電力を制御するコンバータ44を設けてある。また、コンバータ44およびバッテリ40と電動機45とを接続する電気回路47には、電動機45の出力トルク(以下「電動機出力トルクTM」という)、すなわち電動機45に供給する電力を制御するインバータ48を設けてある。
【0046】
また、第1実施形態は、発電機41の回転速度を検出し、検出した回転速度に相応する発電機回転速度信号を出力する発電機用回転速度検出器42と、電動機45の回転速度を検出し、検出した回転速度に相応する電動機回転速度信号を出力する電動機用回転速度検出器46を備えている。さらに、発電機回転速度信号の変動に応じてコンバータ44の制御を行うとともに、電動機回転速度信号の変動に応じてインバータ48の制御を行うコントローラ49(マイコン)とを備えている。
【0047】
コントローラ49は、発電機回転速度信号を受入れ、この発電機回転速度信号に応じてコンバータ44に与える目標値を算出して、目標値に相応する制御信号をコンバータ44に出力するよう設定してある。コントローラ49によるコンバータ44の制御では、発電機41により発電される電力が、発電機回転速度に対応する予め設定された電力に制御されるようにしてある。
【0048】
また、コントローラ49は、電動機回転速度信号を受入れ、電動機回転速度信号の変動量を算出し、変動量に応じてインバータ48に与える目標値を算出して、目標値に相応する制御信号をインバータ48に出力するよう設定してある。コントローラ49によるインバータ48の制御では、電動機45の回転速度が予め設定された回転速度に維持されるよう電動機出力トルクTM、すなわち電動機45に供給される電力が制御されるようにしてある。
【0049】
<2.2> 第1実施形態の動作
第1実施形態は次のように動作する。
【0050】
第1油圧ポンプ13A,13Bはエンジン25により駆動される。第1油圧ポンプ13A,13Bが吐出する圧油は、第1ブーム用方向切換弁23および第2ブーム用方向切換弁20により流れを制御されてブームシリンダ10に供給されるとともに、第1アーム用方向切換弁19および第2アーム用方向切換弁22により流れを制御されてアームシリンダ11に供給される。
【0051】
この間、ブームシリンダ10やアームシリンダ11の負荷の変動に伴う第1油圧ポンプ平均吐出圧P1の変動によって第1レギュレータ17が動作し、第1油圧ポンプ吐出流量Q1、すなわちブームシリンダ10およびアームシリンダ11に供給される圧油の流量が制御される。
【0052】
ブームシリンダ10やアームシリンダ11の負荷に対抗する第1油圧ポンプ平均吐出圧P1が0からP1s以下の状態では、第1レギュレータ17は第1油圧ポンプ吐出流量Q1を最大吐出流量Q1maxに維持する。この状態では、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1は、上限値T1max以下である。
【0053】
また、ブームシリンダ10やアームシリンダ11の負荷に対抗する第1油圧ポンプ平均吐出圧P1が所定の圧力値P1s以上の状態では、第1レギュレータ17は第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1が上限値T1maxに維持されるよう第1油圧ポンプ吐出流量Q1を制御する。この状態では、ブームシリンダ10やアームシリンダ11の駆動圧が確保された状態で、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1が上限値T1maxに維持される。
【0054】
また、第2油圧ポンプ30は電動機45により駆動される。第2油圧ポンプ30が吐出される圧油は、旋回用方向切換弁35により流れを制御され、旋回モータに供給される。
【0055】
この間、旋回モータの負荷の変動に伴う第2油圧ポンプ平均吐出圧P2の変動によって第2レギュレータ34が動作し、第2油圧ポンプ吐出流量Q2、すなわち旋回モータに供給される圧油の流量が制御される。
【0056】
旋回モータの負荷に対抗する第2油圧ポンプ吐出圧P2が0からP2s以下の状態では、第2レギュレータ34は第2油圧ポンプ吐出流量Q2を最大吐出流量Q2maxに維持する。この状態では、第2油圧ポンプ吸収トルクT2は上限値T1max以下である。
【0057】
旋回モータの負荷に対抗する第2油圧ポンプ吐出圧P2が所定の圧力値P2s以上の状態では、第2レギュレータ34は第2油圧ポンプ吸収トルクT2が上限値T2maxに維持されるよう第2油圧ポンプ吐出流量Q2を制御する。この状態では、旋回モータの駆動圧が確保された状態で、第2油圧ポンプ吸収トルクT2が電動機45の最大出力トルクTMmax(=T2max)に維持される。
【0058】
また、発電機41はエンジン25により駆動される。発電機吸収トルクTGは、図5において縦線部Cで示すように、エンジントルクTEから第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1を差引いた値となる。つまり、発電機41は、第1油圧ポンプ13A,13Bが吸収しないエンジントルク(TE−T1)を割当てられて発電する。なお、図5において、説明を簡単にするためにパイロットポンプ101の吸収トルクは0と仮定してある。
【0059】
発電機41が発電を行っている間、発電機用回転速度検出器42が発電機41の回転速度を検出して発電機回転速度信号をコントローラ49に出力する。すると、コントローラ49は、発電機回転速度に応じた制御信号をコンバータ44に出力する。これにより、発電機41により発電される電力が、そのときの発電機41の回転速度に対応する予め設定された電力に制御される。
【0060】
また、この間、電動機用回転速度検出器46が電動機45の回転速度を検出し、電動機回転速度信号をコントローラ49に出力する。すると、コントローラ49は、電動機回転速度の変動量を算出し、その変動量に応じてインバータ48に制御信号を出力する。これにより、インバータ48は、発電機41からコンバータ44を介して得られる電気エネルギと、バッテリ40から得られる電気エネルギとから、インバータ48が電動機45の回転速度を予め設定された回転速度に維持するのに必要な電力を生成し、電動機45に供給する。このとき、電動機45の回転速度を維持するのに必要な電気エネルギが発電機41により発電される電気エネルギよりも小さい場合には、電動機45が発電した電気エネルギから電動機45の駆動に必要な電気エネルギを引いた電気エネルギが、コンバータ44を介してバッテリ40に充電される。
【0061】
例えば、旋回モータが回転を開始するときは、慣性モーメントによる旋回モータの負荷の上昇に伴って、第2油圧ポンプ吸収トルクT2が上限値T2maxに達する。このとき、電動機45の回転速度を維持するのに必要な電気エネルギが発電機41が発電する電気エネルギを越える。したがって、インバータ48は、電動機45の回転速度を維持するために必要な電力を、コンバータ44を介して発電機41から得られる電気エネルギとバッテリ40から得られる電気エネルギとの両方を使用して電力を生成し、電動機45に供給する。これにより、図6に示すように、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1と第2油圧ポンプ吸収トルクT2との合計がエンジントルクTEを越えた状態で、第1,第2油圧ポンプ13A,13B,30を稼働させることが可能になる。
【0062】
また、例えば旋回モータが動作していないときや、ほぼ一定の速度で回転しているときなどは、第2油圧ポンプ吸収トルクT2が最低または比較的低いので、インバータ48は、電動機45の回転速度を維持するのに必要な電力を、コンバータ44を介して得られる発電機41からの電気エネルギのみを使用して電力を生成し、電動機45に供給する。これにより、電動機45が発電した電気エネルギから電動機45が消費する電気エネルギを差引いた電気エネルギが、コンバータ44を介してバッテリ40に充電される。
【0063】
<2.3> 第1実施形態によれば次の効果を得られる。
【0064】
第1実施形態は、エンジン25により第1油圧ポンプ13A,13Bを駆動し、電動機45により第2油圧ポンプ30を駆動するので、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1と第2油圧ポンプ吸収トルクT2とを互いの変動に関係なく個別に設定することができる。これにより、ブームシリンダ10とアームシリンダ11と旋回モータとの複合動作時において、ブームシリンダ10およびアームシリンダ11の駆動力および動作速度の確保と旋回モータの駆動力および動作速度の確保とを両立させることができるとともにブームシリンダ10およびアームシリンダ11の動作速度を安定させることができる。この結果、作業機6と旋回体3との複合動作時において、作業機6による作業の効率の向上に貢献できるとともに、作業機6の操作性の向上に貢献できる。
【0065】
また、第1実施形態は、過剰なエンジン出力を発電機41により電気エネルギに変換してバッテリ40に蓄えておき、その電気エネルギを使用して電動機45、すなわち第2油圧ポンプ30を駆動するので、過剰なエンジン出力を有効に利用することができる。この結果、油圧ショベル1の駆動に係るエネルギの省エネに貢献できる。
【0066】
また、第1実施形態は、図6に示すように、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1が上限値T1maxに維持された状態であって、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1と第2油圧ポンプ吸収トルクT2をとの合計がエンジントルクTEを越えた状態で、第1油圧ポンプ13A,13Bと第2油圧ポンプ30を駆動することができる。これにより、作業機6と旋回体3の複合動作による作業の能率の向上に貢献できる。
【0067】
なお、第1実施形態は、2つの第1油圧ポンプ13A,13Bを備える例であったが、本発明はこれに限るものではなく、第1油圧ポンプを1だけ備えるものでも3以上備えているものでもよい。
【0068】
また、第1実施形態は、可変容量型油圧ポンプからなる第2油圧ポンプ30を備える例であったが、本発明はこれに限るものではなく、第2油圧ポンプ30を固定容量型油圧ポンプにしてもよい。
【0069】
また、第1実施形態は、電動機45の回転速度を予め設定された回転速度に維持するようインバータ48を制御する例であったが、本発明はこれに限るものではなく、旋回モータが動作していないときには電動機45の回転速度が低下するようインバータ48を制御するようにてもよい。
【0070】
このようにインバータ48を制御するには、図7に示すように、旋回用方向切換弁35に入力されるパイロット圧を検出し、パイロット圧に相応する圧力信号を出力する圧力検出器50A,50Bを設ける。そして、コントローラ49が旋回モータを駆動させる旨の指令の有無を前記圧力信号から判定する判定手段として機能し、この判定手段により前記指令がないという判定がなされたときに電動機45の回転速度を所定値まで低下させるようインバータ48を制御する低回転制御手段として機能するようコントローラ49の動作をプログラムすればよい。
【0071】
このように構成したものは、旋回モータが動作しないときに、電動機45が消費する電気エネルギを低減することができ、同時にバッテリ40に充電する電気エネルギを増加させることができる。また、旋回モータが動作しないときでも電動機45を駆動させておくことによって、旋回モータの動作を円滑に開始させることができる。
【0072】
<3> 第2実施形態
第2実施形態について図8を用いて説明する。図8は、第2実施形態の構成を示す油圧回路図である。なお、図8において、図2に示すものと同等のものには図2に付した符号と同じ符号を付してある。
【0073】
<3.1> 第2実施形態の構成
第2実施形態は次のように構成してある。次に説明する構成以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0074】
第2実施形態は、図8に示すように、旋回モータ70と作動油タンク100を連絡するメータアウト通路に設けられる油圧モータ、例えば固定容量型の油圧モータ61と、この油圧モータ61により駆動されバッテリ40に充電する電気エネルギを発電する回生用発電機62とを備えている。前記メータアウト通路は、旋回モータ70と作動油タンク100を、旋回用方向切換弁35内に形成される通路35aまたは35bを介して連絡してなる。
【0075】
図8において、80は、旋回モータ70を操作する操作レバー装置である。この操作レバー装置80は、パイロットポンプ101と接続してあり、操作レバー80aを左方向に傾倒させると旋回用方向切換弁35の弁体を左方向に移動させるパイロット圧Plを生成し、操作レバー80aを右方向に傾倒させると旋回用方向切換弁35の弁体を右方向に移動させるパイロット圧Prを生成するようにしてある。そして、旋回用方向切換弁35の弁体がパイロット圧Plを与えられて左位置に切換わると、旋回モータ70が左方向に回転するようにしてある。逆に、旋回用方向切換弁35の弁体がパイロット圧Prを与えられて右位置に切換わると、旋回モータ70は右方向に回転するようにしてある。
【0076】
また、71は、旋回モータ70の回転速度(以下「旋回速度」ともいう)を検出し、旋回速度に相応する旋回速度信号を出力する旋回速度検出器である。81は、操作レバー80aの傾倒角度を検出し、傾倒角度に相応する傾倒角度信号を出力する傾倒角度検出器である。64は、回生用発電機62とバッテリ40を接続する電気回路63に設けられ、回生用発電機62が発電する電力を制御するとともに回生用発電機62が発電した交流の電力を直流の電力に変換するコンバータである。
【0077】
コントローラ65は、第1の実施形態のコントローラ49と同様にコンバータ44およびインバータ48を制御するよう設定してあるとともに、傾倒角度検出器81が出力する傾倒角度信号と、旋回速度検出器71が出力する旋回速度信号とを受入れ、傾転角度信号に対応する旋回速度を旋回速度信号に対応する旋回速度から差引いた値に基づいてコンバータ64に与える目標値を算出し、目標値に相応する制御信号をコンバータ64に出力するよう設定してある。
【0078】
コントローラ65によるコンバータ64の制御では、操作レバー80aにより指令された指令旋回速度から実際の旋回速度を差引いた値、すなわち「指令旋回速度−実旋回速度」が0以上の値ときは、回生用発電機62の負荷が最小になるようにしてある。一方、「指令旋回速度−実旋回速度」が負の値のときは、「指令旋回速度−実旋回速度」の値が小さいほど(絶対値が大きいほど)回生発電機62の負荷が大きくなり、「(指令旋回速度−実旋回速度)」が大きいほど回生発電機62の負荷が小さくなるようにしてある。
【0079】
<3.2> 第2実施形態の動作
第2実施形態は次のように動作する。前述の第1実施形態と同様の構成による第2実施形態の動作については説明を省略する。
【0080】
操作レバー80aが例えば左方向に傾倒されると、旋回用方向切換弁35の弁体が中立位置よりも左位置側の任意の位置へ移動する。これに伴い、第2油圧ポンプ30からから吐出される圧油が、旋回用方向切換弁35の通路35cにより旋回モータ70へ導かれ、旋回モータ70を駆動する。そして、旋回モータ70から排出された圧油は、旋回用方向切換弁35の通路35aおよび油圧モータ61を介して作動油タンク100へ戻される。
【0081】
このようにして旋回モータ70が駆動される際、傾倒角度検出器81は、左方向への傾倒する操作レバー80aの傾倒角度を検出して傾倒角度信号をコントローラ65に出力し、また、旋回速度検出器71は実際の旋回速度を検出して旋回速度信号をコントローラ49に出力する。これに伴い、コントローラ49は、指令旋回速度から実際の旋回速度を差引いた値、すなわち「指令旋回速度−実旋回速度」を算出し、その値に対応する制御信号をコンバータ64に出力する。
【0082】
操作レバー80aの左方向への傾倒角度に対応する位置に旋回用方向切換弁35が移動した当初、すなわち旋回モータ70の起動時には、旋回モータ70に対して静止状態を維持しようとする慣性モーメントが作用するので、実際の旋回速度が指令旋回速度よりも遅い状態、すなわち「指令旋回速度−実旋回速度」が0よりも大きい値となっている。この状態では、コンバータ64によって回生用発電機62の負荷が最小値に設定され、これに伴い、油圧モータ61の吸収トルクが最小値に設定される。また、「指令旋回速度−実旋回速度」が0の状態、すなわち旋回モータ70の回転速度が指令旋回速度に達して一定になった状態でも、回生用発電機62の負荷が最小値に設定されて、油圧モータ61の吸収トルクが最小値に設定される。
【0083】
操作レバー80aが中立方向に傾倒されると、傾倒角度検出器81は、減少する操作レバー80aの傾倒角度を検出して傾倒角度信号をコントローラ65に出力し、また、旋回速度検出器71は実際の旋回速度を検出して旋回速度信号をコントローラ49に出力する。これに伴い、コントローラ49は、「指令旋回速度−実旋回速度」を算出し、その値に対応する制御信号をコンバータ64に出力する。
【0084】
操作レバー80aの中立方向への傾倒に伴って旋回用方向切換弁35が操作レバー80aの傾倒角度に対応する位置に移動した当初は、旋回モータ70に対して回転状態を維持しようとする慣性モーメントが作用するので、実際の旋回速度が指令旋回速度よりも速い状態、すなわち「指令旋回速度−実旋回速度」が負の値となっている。この状態では、「指令旋回速度−実旋回速度」が小さいほど、すなわち「指令旋回速度−実旋回速度」の絶対値が大きいほど、コンバータ64を介して回生用発電機62の負荷が増大され、油圧モータ61の吸収トルクが上昇する。この結果、旋回モータ70の慣性モーメントが大きいほど、旋回モータ70の回転に対抗するブレーキ圧が増大して、旋回モータ70の回転速度が、操作レバー80aの傾倒角度に対応する回転速度まで減速する。
【0085】
<3.3> 第2実施形態の効果
第2実施形態によれば次の効果を得られる。
【0086】
また、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、エンジン25により第1油圧ポンプ13A,13Bを駆動し、電動機45により第2油圧ポンプ30を駆動するので、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1と第2油圧ポンプ吸収トルクT2とを互い変動に関係なく個別に設定することができる。これにより、ブームシリンダ10とアームシリンダ11と旋回モータとの複合動作時において、ブームシリンダ10およびアームシリンダ11の駆動力および動作速度の確保と旋回モータの駆動力および動作速度の確保とを両立させることができるとともにブームシリンダ10およびアームシリンダ11の動作速度を安定させることができる。この結果、作業機6と旋回体3との複合動作時において、作業機6による作業の効率の向上に貢献できるとともに、作業機6の操作性の向上に貢献できる。
【0087】
また、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、過剰なエンジン出力を発電機41により電気エネルギに変換してバッテリ40に蓄えておき、その電気エネルギを使用して電動機45、すなわち第2油圧ポンプ30を駆動するので、過剰なエンジン出力を有効に利用することができる。この結果、油圧ショベル1の駆動に係るエネルギの省エネに貢献できる。
【0088】
また、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、図6に示すように、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1が上限値T1maxに維持された状態であって、第1油圧ポンプ合計吸収トルクT1と第2油圧ポンプ吸収トルクT2との合計がエンジントルクTEを越えた状態で、第1油圧ポンプ13A,13Bと第2油圧ポンプ30を駆動することができる。これにより、作業機6と旋回体3の複合動作による作業の能率の向上に貢献できる。
【0089】
特に、第2実施形態では、旋回モータ70から作動油タンク100に排出される圧油が油圧モータ61を駆動し、この油圧モータ61が回生用発電機62を駆動し、この回生用発電機62が発電して、発電された電気エネルギがバッテリ40に充電される。これにより、旋回モータ70から排出される圧油のエネルギを蓄えて第2油圧ポンプ30の駆動に使用することができる。この結果、油圧ショベル1の駆動に係るエネルギの省エネに第1実施形態よりも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の建設機械の油圧駆動装置の実施形態が適用される油圧ショベルの側面図である。
【図2】本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1実施形態の構成を示す油圧回路図のである。
【図3】第1実施形態における第1油圧ポンプの吐出圧−吐出流量特性線図である。
【図4】第1実施形態における第2油圧ポンプの吐出圧−吐出流量特性線図である。
【図5】第1実施形態におけるエンジントルクと第1油圧ポンプの吸収トルクの合計と発電機の吸収トルクとの関係を示す積み上げ図である。
【図6】第1実施形態におけるエンジントルクと第1油圧ポンプの吸収トルクの合計と第2油圧ポンプの吸収トルクとの関係を示す積み上げ図である。
【図7】第1実施形態において旋回モータが動作しない場合に電動機の回転速度を低下させるようにする場合の構成を示す油圧回路図である。
【図8】本発明の建設機械の油圧駆動装置の第2実施形態の構成を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
【0091】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 旋回体
6 作業機
7 ブーム
8 アーム
10 ブームシリンダ(第1油圧アクチュエータ)
11 アームシリンダ(第1油圧アクチュエータ)
13A,13B 第1油圧ポンプ
25 エンジン
30 第2油圧ポンプ
40 バッテリ(蓄電部)
41 発電機
45 電動機
49 コントローラ
44 コンバータ
48 インバータ
50A,50B 圧力検出器
61 油圧ポンプ
62 発電機
64 コンバータ
65 コントローラ
70 旋回モータ(第2油圧アクチュエータ)
80 操作レバー装置
100 作動油タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の第1油圧アクチュエータと、この第1油圧アクチュエータに供給する圧油を吐出する1以上の第1油圧ポンプと、前記第1油圧アクチュエータよりも使用頻度の少ない第2油圧アクチュエータと、前記第1油圧ポンプとは別の油圧ポンプであって前記第2油圧アクチュエータに供給する圧油を吐出する第2油圧ポンプとを備える建設機械の油圧駆動装置において、
前記第1油圧ポンプを駆動するエンジンと、
このエンジンにより駆動されて発電する発電機と、
この発電機が発電した電気エネルギを蓄える蓄電部と、
前記発電機および前記蓄電部の少なくとも一方から得られる電気エネルギより駆動されて前記第2油圧ポンプを駆動する電動機とを備えることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、
前記第2油圧アクチュエータを駆動させる旨の指令の有無を判定する判定手段と、前記指令がないという判定が前記判定手段によりなされたときに、前記電動機の回転速度を所定値まで低下させる制御を行う低回転制御手段とを備えることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の発明において、
前記第2油圧アクチュエータと作動油タンクとを連絡するメータアウト通路に設けられる油圧モータと、
この油圧モータにより駆動され、前記蓄電部に充電する電気エネルギを発電する発電機とを備えることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載の発明において、
前記建設機械が油圧ショベルからなり、
前記第1油圧アクチュエータが、前記油圧ショベルの作業機を駆動する油圧シリンダからなり、
前記第2油圧アクチュエータが、前記油圧ショベルの旋回体を駆動する油圧モータからなることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項1記載の発明において、
前記第1油圧ポンプを2つ、前記第2油圧ポンプを1つ備えることを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−83550(P2006−83550A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267274(P2004−267274)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】