説明

建設機械用キャビン

【課題】転倒時のリアピラーの局部座屈を防止できると共にパネルのデザイン性を向上できる建設機械用キャビンを提供する。
【解決手段】キャビンの骨組みを構成するリアピラー12を、一対の中空角パイプ25f、25rで形成すると共にその前後が接するように並べて設けると共に、後方の中空角パイプ25rを前方の中空角パイプ25fに対して幅方向で内側にオフセットさせたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用キャビンに係り、特に、転倒時にキャビンを保護できる建設機械用キャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルなどの建設機械用キャビンの骨組み構造は、図4に示すように、旋回台40上に、左右のフロントピラー41と左右のリアピラー42の上部をルーフサイド43で連結し、左右のフロントピラー41、41をフロントクロスメンバ44で、リアピラー42、42をリアクロスメンバ45で連結して構成される。
【0003】
この骨組み構造を基に、左右のルーフサイド43間にルーフパネル46が取り付けられ、左側のピラー41、42間の乗降口にスライドドア(図示せず)が設けられ、また周囲に適宜ウインドウパネル(図示せず)が取り付けられて建設機械用キャビン50とされる。
【0004】
また、キャビン50の右側の旋回台40上には、支持プレート47を介して作業機械のアーム48が伏仰自在に設けられ、そのアーム48を伏仰する油圧シリンダ49が旋回台40に取り付けられる。
【0005】
この建設機械用キャビンにおいては、転倒時に、リアピラー42とアーム48を支持する支持プレート47とが干渉し、図示の丸Rで囲んだ位置のリアピラー42が局部座屈する問題がある。
【0006】
そこで、骨組みのROPS(Roll−Over Protective Structure)の強度を高めるために、特に、上述したようにリアピラーを補強するために、リアピラーを角パイプにして補強することが、特許文献1で提案されている。
【0007】
この特許文献1の補強構造は、図5に示すように、断面長方形状の角パイプでリヤピラー52を構成し、その角パイプからなるリヤピラー52の後面にハット状のチャネル材53を設け、そのチャネル材53でリヤパネル54を保持し、リヤピラー52の側面でサイドパネル55を保持するようにしている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−321373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、角パイプでリヤピラーを構成しても、上述した局部座屈を防止できる十分な強度を得るためには、板厚をアップする必要があり、コストアップとなる。
【0010】
またリヤパネル54やサイドパネル55は、リヤピラー52が断面四角形状の角パイプであるため、パネルのデザインに自由度がなく商品性がない問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、転倒時のリアピラーの局部座屈を防止できると共にパネルのデザイン性を向上できる建設機械用キャビンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、キャビンの骨組みを構成するリアピラーを、一対の中空角パイプで形成すると共にその前後が接するように並べて設けたことを特徴とする建設機械用キャビンである。
【0013】
請求項2の発明は、後方の中空角パイプを前方の中空角パイプに対して幅方向で内側にオフセットさせた請求項1記載の建設機械用キャビンである。
【0014】
請求項3の発明は、右側のリアピラーの後方の中空角パイプの右側面に補強用プレートを設けた請求項2記載の建設機械用キャビンである。
【0015】
請求項4の発明は、前後の中空角パイプのサイズを変え、これを前後が接するように並べて設けてリアピラーを構成した請求項1記載の建設機械用キャビンである。
【0016】
請求項5の発明は、前方の中空角パイプに対して後方の中空角パイプのサイズを小さく形成し、その前後の中空角パイプの内側の面が合うように並べた請求項4記載の建設機械用キャビンである。
【0017】
請求項6の発明は、右側のリアピラーの後方の中空角パイプの右側面に補強用プレートを設けた請求項5記載の建設機械用キャビンである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リアピラーを一対の中空角パイプを前後に並べて形成することで、リアピラーの強度を向上させることができ、また幅方向で後方の中空角パイプをオフセットさせることで、パネルのデザインに影響がなく局部座屈の補強プレートを組み付けるスペースが確保でき、さらに従来のストレートのリアピラーに対してデザイン的な商品性を向上できるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
図1は、本発明の建設機械用キャビンの全体斜視図を示し、図1(a)は、骨組み構造を、図1(b)は、サイドパネルとルーフパネルを取り付けた状態の斜視図を示したものである。
【0021】
先ず、骨組み構造10は、従来例と基本的には同じで、左右のフロントピラー11と左右のリアピラー12の上部をルーフサイド13で連結し、フロントピラー11間をフロントクロスメンバ14で連結し、リアピラー12、12間をリアクロスメンバ15と中間クロスメンバ16で連結して構成される。
【0022】
左右のフロントピラー11とリアピラー12は、ベースフレーム17に立設して設けられる。
【0023】
ルーフサイド13、13間には、ルーフ18とルーフウインドウ19を保持するルーフ補強材20が設けられ、左側のルーフサイド13には、フロントピラー11側に運転員の乗降口を区画するセンターピラー21が設けられる。
【0024】
フロントピラー11とルーフサイド13とは継手22にて連結される。
【0025】
フロントピラー11とルーフサイド13の内側には、フロントウインドウ(図示せず)をスライドするためのガイド溝23が形成され、フロントウインドウが、フロントピラー11の位置から、ルーフサイド13の位置までスライドできるようになっている。
【0026】
なお、24は、作業機械のアームを支持する支持プレートである。
【0027】
さて本発明においては、図2に示すように、リアピラー12を、一対の中空角パイプ25f、25rで形成すると共にその前後の中空角パイプ25f、25rが接するように並べて設けたものである。
【0028】
この中空角パイプ25f、25rは、同じサイズの断面正方形の角パイプからなり、これを後方の中空角パイプ25r、25rが幅方向で寸法hずつ内側にオフセットさせて設ける。また右側の後方の中空角パイプ25rの右側面(外側)には補強用プレート26を設ける。
【0029】
このように、後方の中空角パイプ25rをオフセットさせて設けることで、局部座屈防止用の補強用プレート26を取り付けるスペースが確保できると共に、前後の中空角パイプ25f、25rがオフセットされているため、リヤパネル27とサイドパネル28の取り付けスペースに余裕ができ、デザイン的な商品性を向上させることができる。
【0030】
すなわち、後方の中空角パイプ25rを内側にオフセットさせることで、サイドパネル28は図示の実線から2点鎖線28aで示す範囲で自由に曲面的デザインを変更することができ、デザイン性を向上させることができる。
【0031】
また中空角パイプ25f、25rをオフセットさせることで断面モーメントで3%強度を向上させることができる。
【0032】
図3は、本発明の他の実施の形態を示したものである。
【0033】
図2の実施の形態では、前後の中空角パイプ25f、25rの断面サイズを同じとしてオフセットさせる例を示したが、本実施の形態では、中空角パイプ29f、29rの断面サイズを変え、前後の中空角パイプ29f、29rが前後で接するように並べて設けてリアピラー12を構成したものである。
【0034】
この場合、前方の中空角パイプ29fに対して後方の中空角パイプ29rのサイズを小さく形成し、その前後の中空角パイプ29f、29rの内側の面が合うように並べることで、図2と同様にオフセットした状態と同じにでき、右側のリアピラー12の後方の中空角パイプ29rの右側面に補強用プレート26を設けることができる。
【0035】
本実施の形態においては、中空角パイプ29f、29rの内側面が合っているため、内側のデザイン性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明におけるキャビンの骨組み構造を示す斜視図である。
【図2】図1(a)のA−A線部の断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】従来のキャビンの斜視図である。
【図5】従来のリアピラーの詳細断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 キャビン
11 フロントピラー
12 リアピラー
25f、29f 前方の中空角パイプ
25r、29r 後方の中空角パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンの骨組みを構成するリアピラーを、一対の中空角パイプで形成すると共にその前後が接するように並べて設けたことを特徴とする建設機械用キャビン。
【請求項2】
後方の中空角パイプを前方の中空角パイプに対して幅方向で内側にオフセットさせた請求項1記載の建設機械用キャビン。
【請求項3】
右側のリアピラーの後方の中空角パイプの右側面に補強用プレートを設けた請求項2記載の建設機械用キャビン。
【請求項4】
前後の中空角パイプのサイズを変え、これを前後が接するように並べて設けてリアピラーを構成した請求項1記載の建設機械用キャビン。
【請求項5】
前方の中空角パイプに対して後方の中空角パイプのサイズを小さく形成し、その前後の中空角パイプの内側の面が合うように並べた請求項4記載の建設機械用キャビン。
【請求項6】
右側のリアピラーの後方の中空角パイプの右側面に補強用プレートを設けた請求項5記載の建設機械用キャビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137370(P2009−137370A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314365(P2007−314365)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】