説明

建設現場や、鉱山で使用する、片腕で扱える重量が1トン以上の5本指強力ロボットアーム。

【課題】重量を物取り扱う作業現場での、5本指を持つ人間の腕型ロボットを提供する。
【解決手段】以上の課題を解決するために、マスタースレーブ方式で制御する5本指強力ロボットアームを発明した。本発明を作業内容に適した任意の台座、又は台車に装着して活用する。この形態なら二足歩行時の重心が高くならないように、5本指強力ロボットアームを軽量化する必要性は高くない。5本指強力ロボットアームはアクティブサスペンション(脚)の技術をアーム部に使用したアクティブアクチュエーター(腕)を主たる動力源とする。アクティブサスペンションは、重さが50トン以上ある最新式の戦車の姿勢制御でも使用され始めており、十分な高出力と、耐久性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建設土木機械、マスタースレーブ手術支援ロボット、西洋式甲冑、アクティブ(リアクティブ)サスペンション、人工関節。
【背景技術】
【0002】
マスタースレーブ手術支援ロボット、西洋式甲冑,アクティブアクチュエーター、ATC(自動工具交換装置)、Site Cubic Positioning System(SCPS)事業所内空間座標位置判定システム、人工関節。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
重量物の取り扱いには、パワーシャベル、ブルドーザー、フォークリフト、クレーン等が使用されてきたが、これらの重機は操縦者の技量が高くないとなかなか効率的な作業が出来なかった。もう少し人間に直感的に操作出来る重量物取り扱い用の装置はないものだろうか。近年ロボット技術は秒速で進歩しており、人サイズのロボットは優れたものが多数あるが、重量を物取り扱う作業現場や災害現場で、5本指を持つ人間の腕型ロボットがほとんど存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
マスタースレーブ方式で制御する5本指強力ロボットアームを発明した。本発明を作業内容に適した任意の台座、又は台車に装着して活用する。この形態なら二足歩行時の重心が高くならないように、5本指強力ロボットアームを軽量化する必要性は高くない。アニメのロボットは軽快に二足歩行するが、万が一にも巨大ロボットが転倒すると大事故になるため、将来は可能となるが安全性や信頼性その他の理由で大型ロボットの二足歩行の実現はかなりハードルが高そうである。5本指強力ロボットアームはアクティブサスペンション(脚)の技術をアーム部に使用したアクティブアクチュエーター(腕)を主たる動力源とする。F−1レースカーで使用されていたアクティブサスペンションとは、油圧ポンプでチャージされるアクチュエータがついていた。ポンプの駆動はロータスと同じく、ホンダV6エンジンの左バンク側カムシャフトから動力を取り出していた。路面から伝わる高振動を、各サスペンションの角に並べたストラットとガス・スプリング球が受け止めた。さらに、それぞれが電子制御のバルブと連動して作動し、油圧オイルがストラットを出入りし、車高をコントロールする。次に各ストラットと平行についたセンサーが、サスペンションの変動データをコンピュータに送り、このインプットにもとづき、コンピュータが油圧バルブブロックを正確に動作させるようにプログラムされているのである。アクティブサスペンションは、重さが50トン以上ある最新式の戦車の姿勢制御でも使用され始めており、十分な高出力と、耐久性がある。
【発明の効果】
【0005】
マスタースレーブ方式で制御する5本指強力ロボットアームは、従来の建設機械に比べ、習熟に必要な時間が短くなる。対象物を握ることが出来る作業では、作業時間を大幅に短く出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
重量物を取り扱う道具には、パワーシャベル、ブルドーザー、フォークリフト、クレーン等従来から数々の優れた機構が在り、本ロボット腕を製作する際にも、これらの公知の機構を活用する。以下では、本発明、5本指重工業用ロボット腕の申請の特徴点のみを列挙する。文頭に「ひとつは」と振ってある。これらの特徴点を使うことで、人サイズロボットは優れたものが多数あるにもかかわらず、ほとんど実用化されていない重量物を取り扱う作業現場での、人間の腕型ロボットが実現する。ひとつは作業中の他との接触から、内部機構を守る甲殻の内部に、全ての機構を収納する。甲殻とは、西洋甲冑の技術を使い、取外しが簡単に可能で、様々な動きを行ないやすい外殻という意味であり、部品用語も西洋甲冑の呼称を使用している。高負荷作業を連続して行なうと、動力部分は発熱するため放熱機構を持つ。甲殻の第一の目的は、作業中の他との接触から、内部機構を守るためなので、アニメのロボットのように必ずしも密閉構造である必要はなく隙間より高圧エアーで放熱する。従来の建設機械の多くは、駆動部が大気に露出していたため、外気に作動熱の一部を放熱していたが、本発明の駆動部は甲殻内にあるため、積極的な熱対策が必要となる。甲殻で包んでも、現代の重機が持つ、駆動部の対天候性は維持する。放熱グリッドには、液体の侵入を防ぐ、耐久性のある透湿シートを付けることも出来る。原始的だがアームを単純に水の入った大型のバケツに入れて、冷水で冷やす方法が最も簡便である。または水が豊富にある現場では甲殻外面に霧を吹き付けいわば汗で冷やす方法もある。他に水冷、液冷という方法があるが、故障が多くなるため、できるだけ使用しない。寒冷地での作業時は、ヒーターを使用する。甲殻は西洋甲冑を外すように簡単に取り外せるが、日常点検には、センサー、内部カメラ、点検孔を活用する。様々な物体との接点となる、手首より先の篭手部分だけはほとんど密閉型となり、手首部分を保護するスカート部を持つ西洋甲冑の特徴を受け継ぐ。甲殻の形態は、作業環境に合わせて最適なものを使用する、これらは重甲殻、軽甲殻などである。ひとつは強力ロボットアームは、マスタースレーブ方式で制御する。値段を下げるため、エンコーダー等を使用して指令を出し、角度を正確に制御して操縦するのではなく、操作方法は重量物の取り扱い用に修正した、手術支援ロボットで実績のあるマスタースレーブ方式を使用する。操作は、左右の手で操作する2本のマスターとフットスイッチ(クラッチ用、カメラ用、カメラフォーカス用、その他用)で行う。マスタースイッチにはアームからのフィードバックがかかる構造である。画像は三次元画像とし、時には台車上に操縦席を設け操縦者が搭乗するが、重工業用ロボット腕は基本的には遠隔操作である。フットスイッチはマルチファンクションとし台車の操縦にも使用する。同じ操縦、動力系統を利用し主に強力ロボットアームの保守と周囲の偵察目的で人型ロボットも操作する。この人型ロボットの動力も台車より供給することによりランドセルのような動力源が不要となり、人型ロボットを有線ではあるが軽量とすることが出来る。片腕で扱える重量が1トン以上で、腕の本数分の物体は持ち上げ可能。ひとつはこのヘラクレスの腕のようなものに供給する主動力又は筋肉は、従来車両のサスペンションに使われていたアクティブサスペンション(脚)の技術を、アーム(腕)部に使用するものである。このアクティブアクチュエーターでは、荷物を扱った際の、反力を計測し、よりきめ細かな荷役が可能となる。その圧力はコモンレールなどで使用実績がある高圧油圧が望ましい。高圧油圧は航空機などでも実用化されており、装置の小型化軽量化に貢献している。手首部分などで油圧シリンダーの根元側に微動送り用高出力デジタルサーボモーターを取り付けることも出来る。これは油圧を電気モーターが補助する油圧と電気のハイブリッド方式である。図3では、簡略化し、各部品の大きさも判りやすいように大きく誇張して作動機構を描いてある。人の手では全く出来ない相談だが、指一本一本の力配分を作業内容により、微調整可能。高圧油圧の作動油は、油圧源で冷却し温度管理を行なう。人間サイズのロボットでは、全てを人間の大きさと仕様にしなければならないが、建設現場や、鉱山で使用する場合は、ほとんど人間的比率は必要ないので、きわめて武骨な構造となる。耐久性を第一に考えるが、価格のはる軽量材料の使用は少なめにする。後述の交換機能のためには、腕は2本以上あったほうが良い、理想的には、3本の腕が必要のため、参考図の図3では、人より1本多く台車中央に3本目を追加した3本仕様とした。作動することに、意味がある装置のため、停止状態等の、いくつかの位置以外は、強力ロボットアームの姿勢保持力は強くない。このため完全に油圧が落ちそうな場合は、アームをしっかり休止位置に移動させなければならない。いわばオートマチック自動車でギヤをパークに入れ、メカニカルストップとしてサイドブレーキを入れるようなものである。ひとつは関節部は、動きの自由度を確保することを、一番の目的とした、人工関節の構造を参考にしたものとするが、強度を得るため人間での軟骨の代わりにピローボールを使用する。第二、第三関節はパワーシャベルのような単純なピボット型でも良い。位置固定用に歯車を補完に使用するのも一考に値する。ひとつは関節は指も腕も一関節多い4関節とすることで、全体として、曲がる自由度を得、関節への曲げ負荷を少なくする。その結果各ケーブルへの曲げ負担も少なくなる。この形態は節足動物の蜘蛛などの脚部に見られ、指が4関節であると、丸みのある荷物を容易に掴むことが出来る。漫画のロボットは拳を使って殴っているが、本発明重工業用ロボット腕は指部の機構を痛めないために、手の平に打撃部を持ち、張り手を行なう。この打撃部に強力マグネットを組み込めば、鉄製の荷物の取り扱いが容易になる。手刀が出来るような補強も行なう。肩関節の自由度は極めて大きい。ひとつは人間では到底出来ない相談だが、構成部品毎に簡単に交換可能とする、この機能により故障に対する対応、作業内容に適した形態への交換が可能となる。図2の例では下部腕甲中間から先の交換、削られやすい指先の第二関節の先の中間部での交換を行なっている。従来装置は、関節部で、脱着させることが多かったが、重負荷のかかる、関節部での脱着は、構造を複雑にし壊れやすくなる、本発明では各ケーブルは関節周囲を取り回せば良い。このAAC(Automatic Arm Changer)は工作機械のATC(自動工具交換)を参考にする、ATCでは、工作機械の主軸工具を、アームと呼ばれる装置が交換するが、AACでは、正にアームが交換を実施する。連結前に、連結部分は高圧エアーを噴射して清掃する、もう片方のアームがあればそれから高圧エアーを当てても良い、ケーブル類も結線する。連結する上下の部品それぞれに、空間位置検出用のSCPSのICタグを取り付け、二つの部品のはめ合わせを迅速に自動で行なう。別特許のSite Cubic Positioning System(SCPS)、事業所内空間座標位置判定システムは、ICタグに、個々の物品の移動履歴情報として、地球上にひとつしかない絶対座標および時間の4次元情報を持たせるものに関する。GPSと大きく異なる点は、サテライト(親機)が絶対座標の判明している点に固定され動かない点と、SCPSの基本形では、GPSの受信機と異なりRFIDのICは複雑な座標位置の計算は実施せず、親機であるサテライトが計算して、RFIDのICにその固有座標情報を送信する点である。荷役時のカウンターウェイトも兼ねる動力部も他機のロボットアームで脱着可能とし、強力ロボットアームを無限軌道などの台車の上に装着した例が図4である。ひとつは台車ではアクティブサスペンションの使用でロボットアームの動きと協調作動して姿勢制御を行なう。建設現場や、鉱山等で使用するため、軽量性より、堅牢性を重視する。テール(尻尾)にケーブルを接続するか、テールをアンテナとしてリモコンとする。テールは危険回避のための台車の旋回範囲を示す。操作は、左右の手で操作する2本のマスターとフットスイッチ(クラッチ用、カメラ用、カメラフォーカス用、その他用)で行う。画像は三次元画像である。フットスイッチはマルチファンクションとする、高所を作業する場合は、3本目がセンサーヘッド部をろくろ首のように持ち上げて視界を確保するのも一考である。パワーシャベル型の腕の起点取り付け部は、センターピボットとする。腕の起点取り付け部は、重工業用ロボット腕では肩関節にあたり自由度は極めて大きく股関節並みとする。図4のセンサーヘッド部のデザインは一例で、機能が満たされていれば、お好みのデザインとなる。重工業用ロボット腕は、操縦者の人的損失を避けるため、基本的には遠隔操作とすることで生命維持装置が不要となり価格を下げられる。操縦者ポッドは、潜水艇の耐圧圧殻の技術を使用する。操縦者ポッドへの乗り降りは通常は前面で行うが、背面に緊急時の閉じ込め予防にエスケープハッチを持つ。操縦者ポッドはロボットアームで脱着可能とする、荷物の落下に対する安全対策として操縦者が着座している場合は頭上に手は上がらないインターロックが入る。強力ロボットアームが握って使う専用工具には、鋸などがある、構造が複雑で高価なチェーンソーなどを買う必要が無くなる。
【0007】
「実施形態の効果」
荷物にも持つ部分が必要だが、握ることが出来るので、重量物を、ワイヤー、ナイロンスリング等を使用せずに移動出来る。重工業用ロボット腕は、操縦者の人的損失を避けるため、基本的には遠隔操作のため、文楽人形を操るように、複数の操縦者が、一台の台車を分担して操縦することで、より複雑な作業が実施出来、操縦者は環境の良い管制室で作業に集中出来、操縦席設置による重量増加を避けられる。腕の自由度はきわめて大きいため、台車が未舗装の現場のぬかるみで立ち往生した場合、腕を利用して脱出が出来る。
【0008】
「他の実施形態」
単純作業は人工知能が操作する形態。台車中央の3本目の腕に人間感知センサーを付け、生き埋め事故の被災者救助活動に活用すれば、一刻を争う現場で、以前より早く救助出来る。いささかSFじみているが、全くの絵空事とも思えない宇宙基地での活動用に改造したもの。例えば引力が六分の一の月面上では、構造強度は少なくなるが、温度変化、無大気状態への対応は重要課題となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の分解図。
【図2】本発明の下部腕甲部拡大図。(連結機構の説明)。
【図3】簡略した本発明の内部構造の一例。
【図4】本発明をパワーシャベル型台車に装着した説明図。
【符号の説明】
【0010】
「図1」における符号
1 篭手 2 打撃部
3 手首関節保護スカート 4 下部腕甲
5 銃(水、エアー、その他) 6 中部腕甲
7 強力防水ライト 8 上部腕甲
9 肩当 10 台車のインターフェイス
11 第4関節位置 12 第3関節位置
13 翼状肘当 14 肘当
15 第2関節位置 16 排熱口
17 第1関節(篭手内部)
「図2」における符号
1 篭手 2 手刀部
3 排熱口 4 肘当(第2関節)
5 第2関節位置 6 翼状肘当
7 下部腕甲の上部 8 SCPSチップ
9 下部腕甲連結シャフト 10 インターフェイス
11 下部腕甲の下部 12 篭手の甲部
13 親指 14 指の1から4までの関節
15 指連結シャフト
「図3」における符号
1 指作動部 2 指用油圧ホース
3 第1関節 4 第2関節
5 第3関節(ピボット型) 6 アクチュエーター
7 第4関節 8 台車のインターフェイス
9 アクチュエーター接合部(腱) 10 アクチュエーター
11 アクチュエーター用油圧ホース 12 人工関節形状を示す
13 手首回転用高トルクモーター 14 手刀部
「図4」における符号
1 主キャタピラー 2 前方キャタピラー
3 第3アーム(機械中心) 4 篭手
5 第2関節 6 操縦ポッド(脱着式)
7 第3関節 8 カメラアイ
9 強力ライト 10 猫耳機能マイク
11 後方監視カメラアイ 12 センサーヘッド
13 排気口 14 取外し可能動力部
15 尻尾(通信用インターフェイス内蔵) 16 第4関節(低い位置)
17 胴体旋回中心 18 動輪
19 アクティブサスペンション(ロボットアームの動きと協調作動)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場や、鉱山で使用する、扱える重量が片腕で1トン以上の5本指強力ロボットアーム。
【請求項2】
請求項1の強力ロボットアームを装着した、アクティブサスペンションの使用でロボットアームの動きと協調作動して姿勢制御を行なう無限軌道などの台車。
【請求項3】
請求項1の強力ロボットアームの何箇所かを自動で脱着可能とした、AAC(Automatic Arm Changer)機能。
【請求項4】
請求項1の強力ロボットアームが、握って使うための専用工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−23638(P2008−23638A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197599(P2006−197599)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(304045859)
【Fターム(参考)】