説明

弁装置

【課題】圧力調整弁や一方向弁等に利用し得る弁装置を,未熟な作業者でも,ステムやガイド部材を破損させることなく,容易且つ能率良く組み立て得るようにする。
【解決手段】 弁ハウジング36が弁孔37,弁座38及び弁室42を有し,弁室42に収容される弁体39に,その開閉方向に延びるステム41bを有する弁リテーナ41を連接し,このステム41bを摺動自在に支承するガイド孔44を持ったガイド部材43を弁ハウジング36の内周面に圧入固定し,このガイド部材43及び弁リテーナ41間に弁ばね40を縮設した弁装置において,弁ハウジング36への圧入前のガイド部材43,弁リテーナ41,その両者間に縮設される弁ばね40と,ステム41bのガイド孔44からの抜け出しを阻止するる抜け止め手段60とで小組立体62を構成し,この小組立体62の組み立て後,そのガイド部材43を弁ハウジング36に圧力固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,圧力調圧弁や,リリーフ弁,チェック弁等に利用される弁装置に関し,特に,弁ハウジングが弁孔と,この弁孔に弁座を介して連なる弁室を有し,前記弁座と協働して前記弁孔を開閉すべく前記弁室に収容される弁体に,その開閉方向に延びるステムを有する弁リテーナを連接し,このステムを摺動自在に支承するガイド孔を持ったガイド部材を前記弁ハウジングの内周面に圧入固定し,このガイド部材及び前記弁リテーナ間に,前記弁体を前記弁座との着座方向に付勢する弁ばねを縮設してなる弁装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる弁装置は,下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【特許文献1】特開2003−247470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来,かゝる弁装置では,その組み立てに当たって,先ず,弁体,弁リテーナ及び弁ばねを順次収め,次いで,ガイド部材を弁ハウジングの内周面に圧入しながら,ガイド孔に弁リテーナのステムを嵌挿していくことが行われていた。しかしながら,ガイド部材を弁ハウジングの内周面に圧入しながら,ガイド孔に弁リテーナのステムを嵌挿していくという作業は非常に難しく,未熟な作業者は,ステムがガイド孔と一致しないうちに,ガイド部材を弁ハウジングに無理に圧入するという,誤った作業をし,ステムとガイド部材とを衝突させてそれらを破損させることが屡々あった。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,未熟な作業者でも,ステムやガイド部材を破損させることなく,容易且つ能率良く組み立てし得るようにした前記弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明は,弁ハウジングが弁孔と,この弁孔に弁座を介して連なる弁室を有し,前記弁座と協働して前記弁孔を開閉すべく前記弁室に収容される弁体に,その開閉方向に延びるステムを有する弁リテーナを連接し,このステムを摺動自在に支承するガイド孔を持ったガイド部材を前記弁ハウジングの内周面に圧入固定し,このガイド部材及び前記弁リテーナ間に,前記弁体を前記弁座との着座方向に付勢する弁ばねを縮設してなる弁装置において,前記弁ハウジングへの圧入前の前記ガイド部材と,このガイド部材のガイド孔に前記ステムを嵌挿した前記弁リテーナと,この弁リテーナ及びガイド部材間に縮設される弁ばねと,前記ステムのガイド孔からの抜け出しを阻止すべく該ステムに設けられる抜け止め手段とで小組立体を構成したことを第1の特徴とする。
【0006】
尚,この第1の特徴においては,前記弁体及び弁リテーナは,これらを不離一体に形成しても,それぞれ別体に形成してもよい。
【0007】
また本発明は,高圧流体を受け入れる弁孔及び,この弁孔に弁座を介して連なると共に低圧部に開放される弁室を有する弁ハウジングと,前記弁室に収容され前記弁座と協働して前記弁孔を開閉する弁体と,この弁体を前記弁座との着座方向に所定のセット荷重で付勢する弁ばねとを備え,前記高圧流体の圧力を前記セット荷重に対応した値に調整するようにした弁装置において,前記弁体を球状弁体とすると共に,この球状弁体を前記弁座と反対側で回転自在に支承する弁リテーナを前記弁室に収容し,この弁リテーナの,前記球状弁体の開閉方向に延びるステムを摺動自在に支承するガイド部材を弁ハウジングの内周面に圧入固定し,このガイド部材及び弁リテーナ間に前記弁ばねを縮設し,前記弁ハウジングへの圧入前の前記ガイド部材と,このガイド部材のガイド孔に前記ステムを嵌挿した前記弁リテーナと,この弁リテーナ及びガイド部材間に縮設される弁ばねと,前記ステムのガイド孔からの抜け出しを阻止すべく該ステムに設けられる抜け止め手段とで小組立体を構成したことを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,前記抜け止め手段を,合成樹脂製のステムの,前記ガイド孔に嵌挿される先端部に形成した,前記ガイド孔より大径の膨大部で構成し,この膨大部には,この膨大部が前記ガイド孔に嵌挿されるとき弾性的に縮径してガイド孔を通過することを可能にするすり割りを形成したことを第3の特徴とする。
【0009】
尚,前記弁装置は,後述する本発明の実施例中の圧力調整弁Rに対応する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば,弁装置の組み立てに当たっては,先ず弁リテーナのステムをガイド部材のガイド孔に挿通してなる小組立体を構成し,次いでこの小組立体のガイド部材を弁ハウジングに圧入,固定することになるから,未熟の作業者でも,ステムとガイド部材との衝突を全く心配することなく,ガイド部材の弁ハウジングへの圧入作業を容易,的確に行うことができ,弁装置の組立能率の向上を図ることができる。
【0011】
本発明の第2の特徴によれば,弁孔の圧力変化に伴なう球状弁体の開閉時,この球状弁体を回転自在に支承する弁リテーナがガイド部材にガイドされつゝ,球状弁体の開閉動作を適正に制御することで,球状弁体の横振れを防ぎ,その閉弁を迅速,的確に行うことができる。しかも,弁リテーナと別体の球状弁体は,安価で耐久性の高い鋼球の使用が可能であるから,耐久性,高性能及び低コストを満足させる圧力調整弁を提供することができる。さらに,この弁装置の組み立てに当たっては,先ず弁リテーナのステムをガイド部材のガイド孔に挿通してなる小組立体を構成し,次いでこの小組立体のガイド部材を弁ハウジングに圧入,固定することになるから,未熟の作業者でも,ステムとガイド部材との衝突を全く心配することなく,ガイド部材の弁ハウジングへの圧入作業を容易,的確に行うことができ,弁装置の組立能率の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第3の特徴によれば,前記抜け止め手段として,すり割り付きの膨大部を採用することにより,ステムの先端部をガイド孔に押し込み,通過させるだけで,ステムの抜け止めを図ることができるから,特別な抜け止め作業が不要となり,小組立体の組立性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例に係る圧力調整弁を備える燃料供給モジュールを,自動二輪車の燃料タンクへの取り付け状態で示す縦断面図,図2は上記圧力調整弁の拡大縦断面図,図3は図2の3矢視図,図4は上記圧力調整弁の組立要領説明図,図5は上記圧力調整弁の変形を示す,図2との対応図である。
【0015】
先ず,図1において,自動二輪車に搭載される燃料タンクTの天井壁1には,燃料タンクT内の燃料をエンジンの燃料噴射弁Iに供給する燃料供給モジュールMが取り付けられる。この燃料供給モジュールMは,取り付けベース部材2と,この取り付けベース部材2の直下に,軸方向を上下に向けて配置される電動ポンプEpと,取り付けベース部材2に一体に形成される上部ポンプホルダ3Aと,この上部ポンプホルダ3Aに着脱可能に結合されると共に,この取り付けベース部材2と協働して電動ポンプEpを収容,保持する下部ポンプホルダ3Bと,電動ポンプEpの下端に取り付けられる燃料ストレーナ4とを備えている。
【0016】
燃料タンクTの天井壁1には,その内部に電動ポンプEpを挿入するための開口部5が設けられると共に,この開口部5を囲繞する取り付けリング6が固設される。この取り付けリング6には,その上面から突出する複数本の取り付けボルト7,7…が固設されている。
【0017】
前記取り付けベース部材2は,上記開口部5を塞ぐように取り付けリング6の上面に重ねられ,そして複数の取り付けボルト7,7…と,これらに螺締される複数のナット8,8…とにより取り付けリング6に固定される。その際,取り付けベース部材2と燃料タンクTの天井壁1との間には,開口部5をシールする環状のシール部材9が介装される。
【0018】
この取り付けベース部材2は合成樹脂製であり,取り付けベース部材2の上部には,燃料タンクT外で水平方向に突出する燃料取り出し管12が一体成形され,この燃料取り出し管12の外端部には,エンジンの燃料噴射弁Iに連なる燃料供給導管33が接続されるようになっている。
【0019】
また取り付けベース部材2の下面に一体に成形される上部ポンプホルダ3Aは,燃料タンクT内に突出して電動ポンプEpの上半部外周面に嵌合するよう円筒状をなしており,この上部ポンプホルダ3Aには,下端を開放したT字状の係止溝13Fが周方向等間隔置きに複数設けられる。
【0020】
一方,下部ポンプホルダ3Bは,電動ポンプEpの下半部を収容,保持するよう,合成樹脂により円筒状に成形される。その際,その上端から突出するT字状の係止爪13Mが複数一体に形成される。そしてこれら係止爪13Mを前記係止溝13Fに係合することにより,上部ポンプホルダ3Aに下部ポンプホルダ3Bが結合される。こうして電動ポンプEpは上部ポンプホルダ3A及び下部ポンプホルダ3B間に収容保持される。
【0021】
電動ポンプEpは,ロータ20を鉛直方向に向けた電動モータEと,この電動モータEにより駆動される燃料ポンプPとからなっている。電動モータEは,内周面に周方向に並ぶ複数の磁石17aを固設した円筒状のステータ17と,このステータ17の上端にカシメ結合される上部軸受ブラケット18と,同下端部に結合される下部軸受ブラケット19と,上部及び下部軸受ブラケット18,19によりロータ軸20aが支承されるロータ20とから構成される。
【0022】
燃料ポンプPは,下部軸受ブラケット19下面との間にポンプ室22を画成すべく下部軸受ブラケット19と共にステータ17にカシメ結合されるポンプケース23と,ポンプ室22に回転自在に収容されてロータ軸20aの下端部に連結されるポンプインペラ24とで,ウエスコ型に構成される。
【0023】
ポンプケース23には,ポンプ室22に開口する吸入ポート25が設けられ,この吸入ポート25に,燃料タンクT内の底部に配置される前記燃料ストレーナ4が接続され,この燃料ストレーナ4は,ポンプケース23の下面に突設された支軸26に取り付けられる。また前記下部軸受ブラケット19には,ポンプ室22及びステータ17内を連通する吐出ポート27が設けられる。
【0024】
前記上部軸受ブラケット18には,その上方に突出すると共に,ステータ17内と連通した最終吐出ポート34を有する燃料吐出管30が一体に形成され,その内部には最終吐出ポート34への燃料の逆流を阻止する逆止弁31が設けられる。この燃料吐出管30は,取り付けベース部材2の下面に開口する嵌合孔29にシール部材32を介して嵌合される。
【0025】
取り付けベース部材2には,燃料取り出し管12及び燃料吐出管30の内部を走る一連のL字状の燃料通路28と,この燃料通路28の途中から分岐する調圧路35とが形成される。その調圧路35には,燃料通路28内の圧力を,前記燃料噴射弁Iからの燃料噴射に適した所定圧力に調整するための圧力調整弁Rが接続される。
【0026】
図2及び図3に示すように,この圧力調整弁Rは,取り付けベース部材2とは別個に形成された端壁36a付きの円筒状弁ハウジング36を備えており,この弁ハウジング36の外周の環状凹部52には環状のシール部材53が装着される。この弁ハウジング36は,取り付けベース部材2にその下面に開口するように設けられる嵌合孔46に,端壁36aを上方に向けると共にシール部材53を嵌合孔46内周面に密接させながら,圧入して取り付けられる。この弁ハウジング36は,金属製(例えばステンレス鋼製),合成樹脂製の何れでもよい。
【0027】
弁ハウジング36の端壁36aには,それを貫通して前記調圧路35に連通する弁孔37と,この弁孔37の内端に連なる円錐状の弁座38とが形成される。弁ハウジング36内の弁室42には,弁座38に着座し得る鋼球よりなる球状弁体39と,この球状弁体39を弁座38と反対側で回転自在に支承する弁リテーナ41と,この弁リテーナ41を介して球状弁体39を弁座38との着座方向に所定のセット荷重をもって付勢する弁ばね40とが収容され,この弁ばね40の固定端部40aを支持すると共に,弁リテーナ41を球状弁体39の開閉方向に摺動自在に支承するガイド部材43が弁ハウジング36の内周面に圧入固定される。
【0028】
前記弁リテーナ41は,球状弁体39より大径の,弁孔37に対向する前面を受圧面54とするフランジ41aと,このフランジ41aの背面より突出したステム41bとより傘状に構成され,フランジ41aの受圧面54には,球状弁体39の一部が回転自在に係合する球状の位置決め凹部55が設けられる。ステム41bは,その曲げ強度を増強すべく,フランジ41aの背面に連結した円錐状の根元部41baを有しており,フランジ41aの背面には,上記根元部41baを囲繞する平坦で弁ばね40の可動端部40bを支持する環状のばね受け面56が形成される。この弁リテーナ41は合成樹脂製である。
【0029】
また前記ガイド部材43は,弁ハウジング36の内周面に圧入して固定される円筒状の胴部43aと,この胴部43aの下端に一体に連なる底壁43bとで構成される。その底壁43bには,中心部に位置するガイド孔44と,このガイド孔44を取り囲むように配列する複数の開放孔57,57…とが設けられ,ガイド孔44は前記ステム41bを球状弁体39の開閉方向に摺動自在に支承し,また開放孔57,57…は,弁ハウジング36の内部,即ち弁室42を燃料タンクTに開放する。上記底壁43bの肉厚tは,前記ステム41bの直径dより小さく設定されると共に,ガイド孔44の上下開口縁に面取り部44a,44aが形成される。このガイド部材43は,金属製(例えば真鍮製),合成樹脂製の何れでもよい。
【0030】
弁ばね40はコイルばねで構成され,その可動端部40bは,前記弁リテーナ41のステム41bの円錐状の根元部41baで調心されつゝ,ばね受け面56で支承され,固定端部40aは,前記ガイド部材43の胴部43aの内周面で調心されつゝ,底壁43bの内面で支承される。そして,この弁ばね40の,球状弁体39に対するセット荷重は,ガイド部材43の胴部43aの,弁ハウジング36内周面への圧入深さを調節することにより調整される。
【0031】
前記ガイド孔44に挿通される弁リテーナ41のステム41bの先端部には,ガイド孔44より大径の抜け止め手段としての膨大部60が一体に形成される。この膨大部60にはすり割り61が設けられ,これにより膨大部60は,ガイド孔44に嵌挿されるとき弾性的に縮径してガイド孔44を通過することができ,通過後は,原形に拡径してステム41bのガイド孔44からの抜け出しを阻止するようになっている。
【0032】
而して,図2及び図4に示すように,弁ハウジング36への圧入前のガイド部材43と,このガイド部材43のガイド孔44にステム41bを嵌挿した前記弁リテーナ41と,この弁リテーナ41及びガイド部材43間に縮設される弁ばね40と,ステム41bのガイド孔44からの抜け出しを阻止する膨大部60とで小組立体62が構成される。
【0033】
再び図1において,取り付けベース部材2には,前記調圧路35から分岐する袋状凹部45が形成される。図示例では,袋状凹部45は,前記調圧路上流部35aの下流端側の延長線上に配置され,したがって,取り付けベース部材2の成形時,燃料取り出し管12内の燃料通路28,調圧路上流部35a及び袋状凹部45は,共通1本の中子で形成することができる。
【0034】
前記燃料吐出管30は上部軸受ブラケット18の上端面片側に配置され,他方の片側には,電動モータEの給電端子47が突設される。一方,取り付けベース部材2には,その上面から突出する給電用カプラ48が一体に形成され,このカプラ48内の接続端子49と前記給電端子47とが中継導線50を介して接続される。
【0035】
前記圧力調整弁Rの下面は,前記給電端子47が突設される上部軸受ブラケット18の上面18a,即ち電動ポンプEpの上面に対向するように配置され,開放孔57,57…から排出される燃料が,給電端子47周りの上部軸受ブラケット18の上面18aに落下するようになっている。その落下した燃料を,燃料タンクT内に還流させるために,前記上部ポンプホルダ3Aの周壁に切欠き窓51が設けられる。
【0036】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0037】
電動ポンプEpにおいて,電動モータEを作動すれば,そのロータ軸20aによりポンプインペラ24が回転駆動される。これに伴い燃料タンクT内の燃料が燃料ストレーナ4で濾過されながら吸入ポート25からポンプ室22に吸入され,ポンプインペラ24により昇圧されて吐出ポート27からステータ17内へ圧送され,最終吐出ポート34から燃料吐出管30及び燃料取り出し管12,即ち燃料通路28を経て燃料噴射弁Iに供給される。
【0038】
その間,燃料通路28の圧力,即ち電動ポンプEpの吐出圧力は調圧路35を経て圧力調整弁Rの球状弁体39に作用するので,電動ポンプEpの吐出圧力が所定値を超えると,球状弁体39が弁ばね40のセット荷重に抗して開弁し,燃料通路28内の燃料の一部が調圧路35及び弁孔37を経て弁室42に流出し,さらに開放孔57,57…から燃料タンクT内へと排出され,これに伴ない燃料通路28の圧力が所定値に戻ると,球状弁体39は弁ばね40のセット荷重により再び閉弁する。こうして燃料通路28の圧力は所定値に自動的に調整されるので,燃料噴射弁Iからの燃料の噴射圧力が適正に制御される。
【0039】
このような球状弁体39の開閉時,この球状弁体39を回転自在に支承する弁リテーナ41は,ステム41bをガイド部材43のガイド孔44にガイドさせつゝ昇降して,球状弁体39の開閉動作を適正に制御するので,球状弁体39の横振れを防いで,その閉弁を迅速,的確に行うことができる。特に,弁リテーナ41は,その上面に球状弁体39を回転自在に支承する球状の位置決め凹部55を備えるので,この位置決め凹部55が常に球状弁体39に対する調心機能を発揮して,球状弁体39の閉弁を,より迅速,的確に行うことができる。
【0040】
しかも,ガイド部材43は,弁ハウジング36の内周面に圧入されて弁ばね40の一部を収容する円筒状の胴部43aと,この胴部43aの外端に一体に形成されて前記弁ばね40の固定端部40aを支承する底壁43bとで構成され,前記ガイド孔44は,その底壁43bに設けられるので,弁リテーナ41を,常に安定した姿勢で弁ハウジング36に圧入固定することができて,ガイド孔44のステム41bに対するガイド機能を適正に保つことができると共に,弁ばね40を一部を収容することで圧力調整弁Rのコンパクト化に寄与し得る。
【0041】
その際,前記底壁43bの肉厚tは,ステム41bの直径より小さく設定されると共に,ガイド孔44の上下開口縁に面取り部44a,44aが形成されるので,ガイド孔44は,ステム41bの傾きを僅かに許容することができ,したがってステム41bのガイド孔44での摺動時,ステム41bのこじれを防いで,摺動抵抗の増大を回避し,球状弁体39の開閉動作をスムーズにすることができる。
【0042】
さらに,弁ばね40の固定端部40aは,ガイド部材43の胴部43aの内周面で調心されつゝ,底壁43bの内面で支承され,可動端部40bは,弁リテーナ41のステム41bの円錐状の根元部41baで調心されつゝ,ばね受け面56で支承されるので,球状弁体39の開閉時,弁ばね40の横振れも傾きもなく,球状弁体39に安定したセット荷重を付与し続けることができ,これにより高精度の調圧を行うことができる。
【0043】
ところで,この圧力調整弁Rの組み立てに当たっては,図4に示すように,先ず,ガイド部材43を弁ハウジング36に圧入する前に,弁リテーナ41,弁ばね40及びガイド部材43より小組立体62を組み立てる。即ち,弁リテーナ41のばね受け面56に弁ばね40を載せた後,ガイド部材43底壁43bに弁ばね40の固定端を支承させながら,弁リテーナ41のステム41bの先端部,即ち膨大部60をガイド孔44に押し込む。すると,膨大部60は,すり割り61側に弾性的に縮径することでガイド孔44を通過することができる。通過後,膨大部60は,それ自身の弾性復元力で原形に拡径することで,ステム41bのガイド孔44からの抜け出しを阻止することができる。このように,すり割り61付きの膨大部60によれば,ステム41bの先端部をガイド孔44に押し込み,通過させるだけで,ステム41bの抜け止めを図ることができるから,特別は抜け止め作業が不要であり,小組立体62の組立性は極めて良好である。
【0044】
こうして組み立てられた小組立体62は,次に,既に球状弁体39を収めた弁ハウジング36内に弁リテーナ41を先頭にして挿入し,ガイド部材43の胴部43aを弁ハウジング36の内周面に圧入して固定する。したがって,ガイド部材43の弁ハウジング36への圧入時には,既にステム41bはガイド孔44に挿通されているから,未熟の作業者でも,ステム41bとガイド部材43との衝突を全く心配することなく,ガイド部材43の弁ハウジング36への圧入作業を容易,的確に行うことができ,圧力調整弁Rの組立能率の向上を図ることができる。
【0045】
またその際,ガイド部材43の,弁ハウジング36内周面への圧入深さを調節することにより,弁ばね40のセット荷重を調整するので,ガイド部材43の弁ハウジング36への取り付けと同時に弁ばね40のセット荷重の調整を行うことができ,構造の簡素化に寄与し得る。
【0046】
また,弁リテーナ41のフランジ41aには,球状弁体39より大径で弁孔37に対向する受圧面54が設けられるので,球状弁体39の開弁時,弁孔37を通過した燃料が上記受圧面54に圧力を作用させることにより,特に弁孔37を通過する燃料流量が多い場合には,弁リテーナ41が弁ばね40のセット荷重に抗して下降し,球状弁体39の開度を広げることができる。したがって,大量の燃料を弁孔37から弁室42を経て燃料タンクT内へとスムーズに排出させて減圧遅れを少なくし,迅速な調圧を行うことができる。
【0047】
勿論,弁リテーナ41とは別体の球状弁体39は,これを安価で耐久性の高い鋼球で構成することができる。
【0048】
かくして耐久性,高性能及び低コストを満足させる圧力調整弁を提供することができる。
【0049】
圧力調整弁Rの弁室42から排出される燃料は,給電端子47周りの上部軸受ブラケット18の上面18a,即ち電動ポンプEpの上面に落下し,上部ポンプホルダ3Aの切欠き窓51を通過して燃料タンクT内に還流する。したがって,給電端子47の周囲は,圧力調整弁Rからの排出燃料により始終洗われることになるので,給電端子47周りに燃料が滞留することがなく,滞留燃料中に含まれる水分による給電端子47の腐蝕を未然に防ぐことができる。
【0050】
また上部軸受ブラケット18の上面18aに落下した燃料は,そこで運動エネルギを減衰された後,上部ポンプホルダ3Aの切欠き窓51から,燃料タンクT内の貯留燃料上に静かに流下することになるから,燃料の落下音を防ぐことができる。
【0051】
さらに電動ポンプEpから燃料通路28への燃料の吐出中に,その吐出圧力が脈動すると,その脈動は,調圧路上流部35a側に伝達するが,圧力調整弁Rに到達する前に,圧力調整弁Rの手前から分岐した袋状凹部45へと伝達して,その内壁に衝突することにより減衰される。その結果,電動ポンプEpの吐出圧力の脈動に起因する圧力調整弁Rの球状球状弁体39の振動を防いで,圧力調整弁Rの適正な調圧機能を確保することができると共に,燃料噴射弁Iの燃料噴射圧力の安定化を図ることができる。
【0052】
また燃料噴射弁Iの開閉によっても燃料通路28に圧力の脈動が発生することがあるが,その脈動も上記と同様の作用により減衰することができ,さらに圧力調整弁Rの開閉により燃料通路28に圧力の脈動が発生することがあるが,その脈動も上記と同様の作用により減衰することができる。
【0053】
しかも燃料通路28の圧力の脈動減衰を,圧力調整弁Rの手前から袋状凹部45を分岐させるという,極めて簡単な減衰手段で達成するので,部品点数の増加もなく,燃料供給モジュールMのコストアップを招かずに済む。
【0054】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,図5に示すように,開放孔57,57…は,弁ハウジング36の周壁に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の圧力調整弁を備える燃料供給モジュールを,自動二輪車の燃料タンクへの取り付け状態で示す縦断面図。
【図2】上記圧力調整弁の拡大縦断面図。
【図3】図2の3矢視図。
【図4】図4は上記圧力調整弁の組立要領説明図,
【図5】上記圧力調整弁の変形を示す,図2との対応図。
【符号の説明】
【0056】
R・・・・・弁装置(圧力調整弁)
36・・・・弁ハウジング
37・・・・弁孔
38・・・・弁座
39・・・・弁体(球状弁体)
40・・・・弁ばね
41・・・・弁リテーナ
41b・・・ステム
42・・・・弁座
43・・・・ガイド部材
44・・・・ガイド孔
60・・・・抜け止め手段(膨大部)
61・・・・すり割り
62・・・・小組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジング(36)が弁孔(37)と,この弁孔(37)に弁座(38)を介して連なる弁室(42)を有し,前記弁座(38)と協働して前記弁孔(37)を開閉すべく前記弁室(42)に収容される弁体(39)に,その開閉方向に延びるステム(41b)を有する弁リテーナ(41)を連接し,このステム(41b)を摺動自在に支承するガイド孔(44)を持ったガイド部材(43)を前記弁ハウジング(36)の内周面に圧入固定し,このガイド部材(43)及び前記弁リテーナ(41)間に,前記弁体(39)を前記弁座(38)との着座方向に付勢する弁ばね(40)を縮設してなる,弁装置において,
前記弁ハウジング(36)への圧入前の前記ガイド部材(43)と,このガイド部材(43)のガイド孔(44)に前記ステム(41b)を嵌挿した前記弁リテーナ(41)と,この弁リテーナ(41)及びガイド部材(43)間に縮設される弁ばね(40)と,前記ステム(41b)のガイド孔(44)からの抜け出しを阻止すべく該ステム(41b)に設けられる抜け止め手段(60)とで小組立体(62)を構成したことを特徴とする,弁装置。
【請求項2】
高圧流体を受け入れる弁孔(37)及び,この弁孔(37)に弁座(38)を介して連なると共に低圧部に開放される弁室(42)を有する弁ハウジング(36)と,前記弁室(42)に収容され前記弁座(38)と協働して前記弁孔(37)を開閉する弁体(39)と,この弁体(39)を前記弁座(38)との着座方向に所定のセット荷重で付勢する弁ばね(40)とを備え,前記高圧流体の圧力を前記セット荷重に対応した値に調整するようにした,弁装置において,
前記弁体を球状弁体(39)とすると共に,この球状弁体(39)を前記弁座(38)と反対側で回転自在に支承する弁リテーナ(41)を前記弁室(42)に収容し,この弁リテーナ(41)の,前記球状弁体(39)の開閉方向に延びるステム(41b)を摺動自在に支承するガイド部材(43)を弁ハウジング(36)の内周面に圧入固定し,このガイド部材(43)及び弁リテーナ(41)間に前記弁ばね(40)を縮設し,前記弁ハウジング(36)への圧入前の前記ガイド部材(43)と,このガイド部材(43)のガイド孔(44)に前記ステム(41b)を嵌挿した前記弁リテーナ(41)と,この弁リテーナ(41)及びガイド部材(43)間に縮設される弁ばね(40)と,前記ステム(41b)のガイド孔(44)からの抜け出しを阻止すべく該ステム(41b)に設けられる抜け止め手段(60)とで小組立体(62)を構成したことを特徴とする,弁装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の弁装置において,
前記抜け止め手段(60)を,合成樹脂製のステム(41b)の,前記ガイド孔(44)に嵌挿される先端部に形成した,前記ガイド孔(44)より大径の膨大部(60)で構成し,この膨大部(60)には,この膨大部(60)が前記ガイド孔(44)に嵌挿されるとき弾性的に縮径してガイド孔(44)を通過することを可能にするすり割り(61)を形成したことを特徴とする,弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−138786(P2008−138786A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326117(P2006−326117)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】