説明

弁装置

【課題】気密性を確実に確保することが可能な弁装置を提供する。
【解決手段】工具本体の装填孔に嵌合装填される弁筺10と、弁筺10の長手方向に貫通する油通路22を有し、弁筺10の一端側に設けられる油流入部20と、ステム31に弁杆を取り付け、弁筺10に配される弁部30と、ボール弁35と、弁部30を油流入部方向20に付勢するスプリング40と、弁筺10の側壁に設けられ、ボール弁35の移動に伴って移動する弁部30のステム31の側壁によって開閉される油排出孔11とを備え、油流入部20は、スプリング40側の油通路に、油通路22より大径で、ボール弁35と弁部30のステム31の突起部32とを挿入する油流出部22aを有するとともに、油通路22と油流出部22aとの境界部にボール弁35によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面22cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具などの油圧作動装置に用いる弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置は、電気配線の導線と端子をヘッド部の押しダイスと受けダイスにより圧着する際、規定荷重に設定している油圧力に達した時の油量の流入排出を自動的に行い、過剰な圧力を防ぎ規定荷重の状態を保つものである。
一般に、電気配線の導線と端子を圧着(固着)する作業は、配線する作業現場で行われる。そして、この導線と端子との電気的接続の良否は、圧着後の導線と端子間の電気抵抗値が日本工業規格で決められている。
【0003】
締付け圧力は、圧着時の導線の太さ、端子の肉厚、材質によって異なるため、規定荷重を保つ弁装置(例えば、リリーフ弁、安全弁、圧力規定弁など)が設けられており、油圧が一定圧力に達すると油圧を開放するように最大限界圧力を設定できるようになっている。
最大限界圧力は、最も大きな圧力を必要とする締付け部材の圧力値を若干超えたところに設定し、この弁装置を工具本体の油圧系に臨むように工具本体に対して別体に着脱自在に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、油圧を開放する一定圧を可変的に設定できるように弁装置のスプリング圧を外部から調整可能にしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、これらの弁装置は、弁筺に先細テーパ状弁杆を挿入し、先細テーパ状弁杆を弁筺の一端弁座面に油流入用弁孔にスプリングにて嵌合付勢する構造のため、先細テーパ状弁杆と油流入用弁孔との気密性を確保する加工精度を得ることが難しく、油の一方的な流れが生じてしまい作動上の問題を引き起こすおそれがある。
【0005】
そこで、先細テーパ状弁杆の先端をボール弁を配したもの(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
また、高圧の流体回路においては、流体ポンプから連続的に吐出される流体により、回路中の流体圧力が所定値を超えた場合には、リリーフ弁が作動して減圧にするようになっている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】実開昭54−39698号公報
【特許文献2】特開昭62−33024号公報
【特許文献3】実公昭54−27390号公報
【特許文献4】特開昭49−11603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3、4に示す弁装置では、先細テーパ状弁杆の先端にボール弁を配するため、特許文献1,2に示す弁装置と同様に、先細テーパ状弁杆の先端を球面状と油流入用弁孔との嵌合精度を確保する加工精度を得ることが難しく、油の一方的な流れが生じてしまい作動上の問題を引き起こすおそれがある。また、円錐部と同様な同軸性が悪い場合に、ボール弁がスプリングの伸縮により徐々に回転してしまい、当たり面がずれてしまうという問題があった。さらに、ボール弁を受ける弁座面の角部が、油通路に対して角度180°を為しているので、ボール弁が油圧力の解放後、流速によって弁座面とにズレが生じて、油通路を塞ぐことができなくなるばかりか、繰り返し解放するので、油通路への座り位置が安定しないという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、気密性を確実に確保することが可能な弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、工具本体の装填孔に嵌合装填される電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、前記工具本体の装填孔に嵌合装填される細長筒状の弁筺と、前記弁筺の長手方向に貫通する油通路を有し、前記弁筺の一端側に設けられる油流入部と、円柱形状の突起部を有するステムに弁杆を取り付け、前記弁筺に配される弁部と、前記弁部のステムの突起部側に配されるボール弁と、前記弁部を前記油流入部方向に付勢するスプリングと、前記弁筺の他端部に設けられ、前記スプリングの付勢力を調整する調整部材と、前記弁筺の側壁に設けられ、前記ボール弁の移動に伴って移動する前記弁部のステムの側壁によって開閉される油排出孔とを備え、前記油流入部は、前記スプリング側の前記油通路に、前記油通路より大径で、前記ボール弁と前記弁部のステムの突起部とを挿入する油流出部を有するとともに、前記油通路と前記油流出部との境界部に前記ボール弁によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、前記油排出孔は、前記弁筺の側壁の左右対称位置に2つ設けられていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、前記油排出孔の孔径は、前記油通路の径の2倍であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3の何れか記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、前記弁部のステムの円柱形状の突起部は、前記ボール弁の直径と同等の直径を有することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4の何れか記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、前記スプリングによる付勢力で前記ボール弁を前記弁座面に当接する前記油通路の封鎖時に、前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部と前記弁筺とで形成される空間の前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部との間隔が、前記弁部のステムの側壁による前記油排出孔の封鎖距離より大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、細長筒状の弁筺と、前記弁筺の長手方向に貫通する油通路を有し、前記弁筺の一端側に設けられる油流入部と、円柱形状の突起部を有するステムに弁杆を取り付け、前記弁筺内に配される弁部と、前記弁部のステムの突起部側に配されるボール弁と、前記弁部を前記油流入部方向に付勢するスプリングと、前記弁筺の他端部に設けられ、前記スプリングの付勢力を調整する調整部材と、前記弁筺の側壁に設けられ、前記ボール弁の移動に伴って移動する前記弁部のステムの側壁によって開閉される油排出孔とを備え、前記油流入部は、前記スプリング側の前記油通路に、前記油通路より大径で、前記ボール弁と前記弁部のステムの突起部とを挿入する油流出部を有するとともに、前記油通路と前記油流出部との境界部に前記ボール弁によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面を有することを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項6記載の弁装置において、前記油排出孔は、前記弁筺の側壁の左右対称位置に2つ設けられていることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項6又は請求項7記載の弁装置において、前記油排出孔の孔径は、前記油通路の径の2倍であることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項6ないし請求項8の何れか記載の弁装置において、前記弁部のステムの円柱形状の突起部は、前記ボール弁の直径と同等の直径を有することを特徴とする。
【0013】
請求項10に係る発明は、請求項6ないし請求項9の何れか記載の弁装置において、前記スプリングによる付勢力で前記ボール弁を前記弁座面に当接する前記油通路の封鎖時に、前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部と前記弁筺とで形成される空間の前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部との間隔が、前記弁部のステムの側壁による前記油排出孔の封鎖距離より大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項11に係る発明は、側壁に2つの油排出孔を設けた円筒形状の弁筺と、前記弁筺の一端部に取り付けられる油流入部と、円柱形状の突起部を有するステムに弁杆を取り付け、前記弁筺内に配される弁部と、前記弁部のステムの突起部側に配されるボール弁と、前記弁部を前記油流入部方向に付勢するスプリングと、前記弁筺の他端部に取り付けられ、前記スプリングの付勢力を調整する調整部材とを備え、前記油流入部は、前記スプリング側の前記油通路に、前記油通路より大径で、前記ボール弁と前記弁部のステムの突起部とを挿入する油流出部を有するとともに、前記油通路と前記油流出部との境界部に前記ボール弁によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボール弁によって油通路の気密性を確実に確保することができるので、例えば、電動油圧式圧着工具において、モータ駆動中にヘッド部の油圧力が規定荷重に達した際、その油圧力の油流量が自動的に開閉でき、油タンク内に戻す作動をモータ駆動中連続的に繰り返し、ヘッド部の圧着作動状態を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜図5は、本発明の一実施形態に係る弁装置1を示す。
本実施形態に係る弁装置1は、側壁に2つの油排出孔11,12を設けた円筒形状の弁筺10と、弁筺10の一端部に取り付けられる油流入部20と、円柱形状の突起部32を有するステム31に弁杆33を取り付け、弁筺10内に配される弁部30と、弁部30のステム31の突起部32側に配されるボール弁35と、弁部30を油流入部20方向に付勢するスプリング40と、弁筺10の他端部に取り付けられ、スプリング40の付勢力を調整する調整部材50とを備えている。
【0017】
弁筺10は、一端部の内面に油流入部20の雄螺子部24を螺着する雌螺子部13を設け、他端部の内面に調整部材50の雄螺子部51を螺着する雌螺子部14を設けている。また、弁筺10は、他方の雌螺子部14を横切るように留め具54を螺着する螺子孔部15を設けている。さらに、弁筺10の側壁に設けた2つの油排出孔11,12は、弁筺10の長手方向の軸線に対して左右対称に設けられている。ここで、油排出孔11,12の孔径は、油流入部20の油通路22の孔22bの径の2倍としてある。
【0018】
油流入部20は、長手方向の中心線方向に貫通する油通路22を有する油流入部本体21と、弁筺10の一端部の内面に設けた雌螺子部13に螺着する雄螺子部24を外面に設けた弁筺用組付部23と、弁筺10への組付時に弁筺用組付部23の組付位置を決める位置決め用突起部25と、外面に雄螺子部27を設けた弁組付部26と、位置決め用突起部25と弁組付部26との境界部に位置し、O−リング29を取り付ける段部28とを備えている。
【0019】
油通路22は、弁筺用組付部23の開口側(スプリング側)に位置する油流出部22aと、この油流出部22aに弁座面22cを介して連なる油流出部22aの径より小径の孔22bと、拡大するテーパ形状の段部22eを介して孔22bに連なる孔22dと、孔22dの端部で拡大するテーパ形状を為す弁組付部26側の開口部22fとで構成されている。
【0020】
油流出部22aは、油通路22の孔22bより大径で、ボール弁35と弁部30のステム31の突起部32とを挿入するとともに、油通路22bと油流出部22aとの境界部にボール弁35によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面22cを有する。油流出部22aの径は、弁部30のステム31の突起部32とボール弁35との動きが円滑にできるように設定されている。また、弁座面22cのテーパ角100〜140°は、ボール弁35による気密性を確保するために最適な値として実験的に求めた値である。
【0021】
弁部30は、弁筺10の内周面を摺動するステム31の中心に円柱形状の突起部32を有し、円柱形状の突起部32は、流入する油の抵抗を受けづらくするためにボール弁35の直径と同等の直径としてある。
調整部材50は、外周に雄螺子51を設けた筒状体からなり、端部に切込み溝52が設けられている。調整部材50は、圧力調整時に切込み溝52に工具を当てて回転される。
【0022】
調整部材50は、規定される圧力(最大)がボール弁35およびステム31の先端部に作用した際に、弁部30の軸方向に加わる荷重と釣り合うようにスプリング40のたわみ代を調節することができる。また、規定される圧力(最高圧力)は、調整部材50のねじ込み量を調整することによって、スプリング40のたわみ代が変化して自由に圧力調整が可能である。
【0023】
次に、本実施形態に係る弁装置1の作用を説明する。
本実施形態に係る弁装置1では、図1,図2,図3に示すように、スプリング40による付勢力でボール弁35を弁座面22cに当接する油通路22の封鎖時に、弁部30のステム31の先端部側と油流入部20と弁筺10とで形成される空間55の弁部30のステム31の先端部側と油流入部20との距離が、弁部30のステム31の側壁による油排出孔11,12の封鎖距離より大きくなるように構成されている。
【0024】
そして、規定される圧力(最大)がボール弁35およびステム31の先端部に作用した際に、弁部30の軸方向に加わる荷重と釣り合うように、調整部材50を操作してスプリング40のたわみ代を調節する。弁装置1の規定圧力(設定)は、弁部30をスプリング40により押さえる荷重と油圧を受ける弁部30とボール弁35の荷重とが釣り合うように調整する(スプリングが最もたわむ時)。
【0025】
規定圧力を超えた油圧がボール弁35に作用した場合、スプリング40が縮みボール弁35で遮断していた油が油通路22から浸入してステム31の円柱形状の突起部32端面に作用し、さらにスプリング40を縮める。この際の作動は、油圧が上昇し規定圧力付近で徐々にスプリング荷重を勝ると釣り合いが壊れ始め、弁部30のボール弁35から油が徐々に流れを開始し、空間55に溜まる。その後、図4に示すように、油圧がスプリング荷重を上回った時、弁部30を押し込んでステム31の側面により塞いでいた油排出孔11,12が開き、油が一気に弁筺10の外へ排出される。ステム31の端面に作用していた油圧が解放され、スプリング40の荷重が勝ると、再びステム31を押し戻してボール弁35により油通路22が塞がれる。
【0026】
この動作は、本実施形態に係る弁装置1が取り付けられている装置の油圧ポンプ部のモータが作動している間は、一定間隔でボール弁35により油通路22の開閉が繰り返される。
本実施形態に係る弁装置1が取り付けられている装置がOFFおよび圧着終了後は、油圧よりスプリング40の荷重が大きいため、弁部30とボール弁35が油通路22を閉じた状態になる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、弁装置1が弁筺10と油流入部20との分割構造となっているため、油通路22などの孔径の精度を容易に高く加工でき、かつ低コストが可能となる。
また、油流出部22aは、油通路22の孔22bより大径で、ボール弁35と弁部30のステム31の突起部32とを挿入するとともに、油通路22bと油流出部22aとの境界部にボール弁35によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面22cを有するので、ボール弁35に掛かる油圧により、ボール弁35が油流出部22aの内径とのクリアランスで振れ、弁部30のステム31の突出部32が長手方向の中心軸線から多少外れてもこれらの動きを許容し、油通路22を確実に塞ぐことができる。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態に係る弁装置1を適用した電動油圧式圧着工具60の油流通経路を示す説明図である。
本実施形態において、電動式油圧式圧着工具60は、工具本体61内に油圧ポンプ機構62を内蔵し、この油圧ポンプ機構62によって作動されるヘッド部67を備えている。
油圧ポンプ機構62は、モータを備えた油圧ポンプ部63と、油タンク部64と、手動式油圧解除装置77と、本実施形態に係る弁装置1とで構成されている。
【0029】
油圧ポンプ部63と油タンク部64とは、油路65を介して連絡している。油圧ポンプ部63とヘッド部67とは、油路66を介して連絡している。
ヘッド部67は、電気配線の導線と端子を圧着(固着)するためのダイス68と、ダイス68によって押圧される電気配線の導線と端子を受け止めるダイス受け69と、ダイス68を油圧力で押圧する油圧ピストン装置70とを備えている。なお、ダイス受け69は、取り外し自在タイプと固定式タイプとがある。
【0030】
油圧ピストン装置70は、ピストン71と、ピストン71に取り付けられるとともにダイス68を取り付けるロッド72と、ピストン71を油圧力で移動させるシリンダ73と、ロッド72の周囲に配されるスプリング74とを備えている。そして、シリンダ73内に油を送る油路66と、シリンダ73内の油を油タンク部64方向に戻す油路76とが、ロッド72とは反対側のシリンダ73の壁面73aに接続され、ピストン71とシリンダ73の壁面73aとの間に油溜室75を形成している。ここで、油は、油路66から油溜室75に流入し、油溜室75から油路76を介して流出する。
【0031】
油路76は、手動式油圧解除装置77に連絡している。
手動式油圧解除装置77は、工具本体61に設けられ、油溜室75に連なる油路76と、弁装置1に連なる油路84と、油タンク部64に連なる油路86とにそれぞれ開口する孔78と、この孔78内に装着される弁部材79と、この弁部材79を移動するレバー部材80とで構成されている。
【0032】
孔78は、油路76と油路84とに繋がる部位にレバー部材80側に縮小するテーパ部78aを設けている。弁部材79は、孔78内に装着されて弁杆81と、テーパ部78aより奥側の孔78に配置されてスプリング83によって付勢されるテーパ形状の弁82とで構成されている。弁杆81は、工具本体61に支点80aを介して回動自在に取り付けられたレバー部材80に軸支されている。
【0033】
レバー部材80を操作しない場合には、図6(a)に示すように、弁82がテーパ部78aを塞いで、油路76と油路84とを繋ぎ、レバー部材80を操作して弁杆81を孔78内に押し込むと、図6(b)に示すように、弁82がテーパ部78aから離れて油路76と油路86とを繋ぐように油路を切り替える。
弁装置1は、油流入部20に油路84を繋ぎ、油排出孔11,12に油路85を繋いでいる。なお、図5では、便宜上、油排出孔11のみに油路85を繋いで示した。
【0034】
次に、図5の油流路経路に基づき説明する。
モータ部を駆動させることによって油圧ポンプ部63が作動し、油タンク部64から油が吸い込まれる。吸い込まれた油は油路65を経由し、油路66を通り、ヘッド部67の油溜室75を充満する。油溜室75の内圧により、ピストン71を前進させてダイス68とダイス受け69の間に配される圧着物への規定荷重が生じるまで前進する。さらに、油は油路76を通り、手動式油圧解除装置77内を経由して油路84を通って弁装置1内に到達する。この際、図6(a)に示すように、弁82がテーパ78aを閉じているので、油は油路84へ導かれる。そして、弁装置1は規定荷重に達すると、ボール弁35が解放して圧力が解除され、油は油路85を通って油タンク部64内に戻される。
【0035】
この油供給は、油圧ポンプ部63のモータが作動している間、ステップが繰り返され規定荷重の状態が持続される。
油圧ポンプ部63のモータ停止後の圧力は、図6(b)に示すように、手動式油圧解除装置77のレバー部材80を引くことによって、弁82がテーパ78aから解放されて圧力が低下し、油路86を通って油タンク部64へ戻される。この時には、弁装置1のボール弁35は閉じた状態になっており、油路84へ連通されないため、油は油路76から油路86へ流れ、油タンク部64へ排出される。
【0036】
ところで、本実施形態に係る弁装置1では、油圧が上昇し規定圧力付近で徐々にスプリング荷重を勝ると釣り合いが壊れ始め、弁部30のボール弁35から油が徐々に流れを開始し、空間55に溜まった後、油圧がスプリング荷重を上回った時、弁部30を押し込んで油排出孔11,12から油を排出して弁部30を解放するが、油を排出した後、弁部30がスプリング荷重で戻ろうとした時、空間55にスプリング荷重を上回る残圧が存在した場合、油通路22を塞ぐことができず、作動不良(解放状態)を起こすおそれがある。
【0037】
つまり、図7に示すように、油排出孔11,12(D)と弁部30のステム31の側面とのラップ距離A(図7参照)が小さいと、油が油排出孔11,12から流れ出て内圧が瞬時に上昇しない、またラップ距離Aが大き過ぎると、弁部30のステム31が油排出孔11,12を閉じる前に油が浸入して残圧として残ってしまう。さらに、空間55の内容積Bが大きい場合も弁部30を閉じることができず、弁部30をスプリング40により押さえる荷重と油圧の荷重が釣り合ってしまい、作動不良が発生する。
【0038】
そのため、ボール弁35と油通路22の気密性を向上させ、さらに空間55の内圧を瞬時に上昇させて最高圧に到達した際、一気に油排出孔11,12から油を排出して弁部30を解放させることができるように変更する必要がある。
そこで、本実施形態では、図7に示す各要素の寸法を変え、電池パック試験(図8)および電動ポンプ試験(図9)を行った。
【0039】
1)油排出孔11,12(D)(φ2)と弁部30のステム31とのラツプ距離A(0.62mm)と空間55の内容積B(0.48mm)との関係
最高圧力付近で油圧力がスプリング荷重を勝るとつり合いが開始し、ボール弁35から油が徐々に流れを開始して内圧を瞬時に上昇させ、最高圧に到達した際、一気に油排出孔11,12から油を排出して弁部30を解放させることができる。
【0040】
しかし、油が排出した後、弁部30がスプリング荷重で戻ろうとした時、空間55の内容積Bにスプリング荷重を上回る残圧が存在した場合、油通路22を塞ぐことができず、作動不良を起こす。
油排出孔11,12(D)と弁部30のステム31の側面とのラップ距離Aが小さいと、油が油排出孔11,12(D)から流れ出て内圧が瞬時に上昇しない、またラップ距離Aが大き過ぎると、弁部30のステム31が油通路22を閉じる前に油が浸入して残圧として残る。つまり、ラップ距離Aが小さいと内圧が瞬時に上昇せず、また空間55の内容積Bが大きい場合も弁を閉じることができず、作動不良が発生する。そのため、弁筺10の油排出孔11,12(D)(φ2)と鋼球35(L)とラップ距離A(0.62mm)と空間55の内容積B(0.48mm)との組合せによる試験結果によって求めた。
【0041】
2)B:空間55の内容積
内圧を瞬時に上昇させ、最高圧に到達した際、一気に油排出孔11,12(D)から油を排出して弁部30を解放させることができる容積とした。
そのため、弁筺10の油排出孔11,12(D)(φ2)と弁部30のステム31とのラップ距離A(0.62mm)と空間55の内容積B(0.48mm)との組合せによる試験結果によって求めた。
【0042】
3)D:弁筺10の油排出孔11,12
油排出孔11,12(D)を左右対称に2箇所付けたことで、油が平均して排出される際、ボール弁35が油の流れにより軸線からはずれることが無く、安定した繰り返しの作動が期待できる。さらに、油排出孔11,12(D)孔径は、一気に油を排出したいため、油通路22の内径Jの2倍とした。
【0043】
4)F:弁部30のステム31の突起部32の径
油流出部22aの孔径Kと突起部32の径Fとのクリアランスが大きいと、鋼球35(L)の動きが安定せず作動不良を起こす。さらに、鋼球35(L)がずれて油流出部22aの孔径Kと突起部32の径Fとの間に挟まってしまう。逆に、クリアランスが小さいと、残圧が存在することにより、ボール弁35を閉じることができず、作動不良が発生する。さらに、油圧力により、異常に弁部30を押し込んで鋼球35(L)が飛び出してしまう。
【0044】
5)G:弁部30のステム31の側面長さ
弁部30が作動する時に左右に移動(スライド)するが、最もスムーズな動きとなる長さに設定した。従来のニードル弁方式に対して1mm長くした。
6)H:弁部30のステム31の突起部32の長さ
規定圧力にて作動した時に、弁部30の移動距離(スライド)に対し、油排出孔11,12(D)から油が排出した際に、空間55の内容積Bに極力残らない開放状態とした。
【0045】
そのため、油排出孔11,12(D)(φ2)と弁部30のステム31とのラップ距離A(0.62mm)と空間55の内容積B(0.48mm)との組合せによる試験結果によって求めた。
7)I:油流出部22aの深さ
規定圧力にて作動した時に弁部30の移動距離(スライド)に対し、油流出部22aの深さIが浅いと油流出部22aから鋼球35(L)が外へ飛び出してしまう。そこで、鋼球35(L)が外へ飛び出さない距離とした。
【0046】
8)K:油流出部22aの孔径
4項に同じ。
9)ボール弁35と油流出部22aの弁座面22c(角度C(120°)と油通路22の内径J(φ1)の関係
当該部位は線接触により気密を保持する。
【0047】
角度Cが120°より小さくなると、面接触となり、保持力を減少させて作動不良を起こす要因となる。逆に、角度が大きくなると、鋼球の据わりが悪くなり安定しない。
10)油流出部22aの孔径K(φ2.5)と弁部30のステム31の円筒形状の突起部32の外径F(φ1・5)との関係
孔径Kと外径Fとのクリアランスが大きいと、ボール弁35の動きが安定せず作動不良を起こす。逆に、クリアランスが、小さいと残圧が存在することにより、ボール弁35を閉じることができず作動不良が発生する。
【0048】
11)油通路22の弁座面22cの角度120°の設定根拠
1.機構の説明
油通路22からの油の浸入を弁部30のステム31の突出部32がボール弁35をスプリング40の荷重により押し付け、ボール弁35と弁座面22cとの線接触による気密性を保持することで防いでいる。
【0049】
2.弁座面22cに付けた角度の目的
ボール弁35と油通路22の弁座面22cとは、線接触することで気密性が向上する。弁座面22cのテーパ部と面接触した場合、接触面の面粗度の影響を受け気密が十分確保できない可能性がある。また、テーパを付けることで圧力が開放した後、ボール弁35が油通路22を瞬時に確実に塞ぐことができる。ただし、テーパ角が大きいほどボール弁35と弁座面22cとの線接触が強くなるが、逆にボール弁35が油通路22を塞ぐタイミングにバラツキがでる。
【0050】
3.テーパ角120°の根拠
ボール弁35が油通路22の弁座面22cと線接触する最小のテーパ角は計算から約97°である。従って、ボール弁35の座り(安定性)を考慮すれば、図10に示すように、テーパ角は100°〜140°が適切と考える。本実施形態では、加工安定性を考慮し120°を採用した。
【0051】
なお、弁座面22cのテーパ角を180°にした場合には、図12に示すように、ボール弁35が油圧力の解放後、流速によって突起部32とにズレが生じて油通路22の孔22bを塞ぐことができなくなる。また、繰り返し解放するので、油通路22の孔22bへの座り位置が安定しないという問題があった。
12)ボール弁35の径(φ1.5mm)の設定根拠
1.機構の説明
11項と同じ
2.油通路径22の設定根拠
設定圧力80MPaの場合、ボール弁35をスプリング40により押さえる荷重と油圧を受けるボール弁35の受圧面積とから計算される荷重が釣り合うように調整されるが、ボール弁35の受圧面積は油通路22の径により決定される。バネ特性は、表1に示す。
【0052】
ボール弁35の受圧面(φ1)に80Mpaが作用した際に受ける荷重は、(1)式の通りとなる。
F=80×102(N/cm2)×(0.05)2×π(cm2
=62.83N ・・・・ (1)
一方、ボール弁35の受圧面をφ1.5にした場合、80MPaが作用した場合の荷重は、(2)式の通りとなる。
【0053】
F=80×102(N/cm2)×(0.075)2×π(cm2
=141.37N ・・・・ (2)
表1に示すバネ特性から設定時のスプリング40のたわみは、(1)の場合1.01mm、(2)の場合2.28mmである。密着する時のスプリング40のたわみ代は4.25mmであるから、スプリング設定位置からスプリング40が密着するまでに約2mmのたわみ代が確保できる。しかし、規定圧に達しボール弁35が油通路22との接触が開放した時、弁部30が押し込まれ油排出孔11,12が開くが、その時のスプリング40のたわみ量は1mm以上ある。以上を考慮すると、図10に示すように、80MPaに設定した場合、油通路22の径がφ1.5mmでは、常にスプリング40が完全密着付近で使われるため、スプリング40の機能上好ましくない。そこで、油通路22はφ1mmとした。
【0054】
【表1】

3.ボール弁35の径φ1.5mmの根拠
ボール弁35の径φ2.0mmを使用した時の油通路22との接触状況を図11に示す。
【0055】
ボール弁35が油通路22の弁座面22cと線接触する最小のテーパ角は計算から120°である。
従って、ボール弁35の座り(安定性)を考慮すれば、図11に示すように、テーパ角は120°〜140°が適切と考える。この場合、ボール弁35の径φ1.5mmに比べ使用テーパ角範囲が狭くなるため、加工のバラツキを考慮すると、品質上不利であるから、ボール弁35の径はφ1.5mmとした。
【0056】
また、φ1mmのボール弁35を使用する場合は、油通路22の径をφ0.6mmにする必要があり、80MPaに設定するにはスプリング40のたわみ量を0.36mmにしなければならず調整が困難である。
次に、図8に示す電池パック試験機について説明する。
本試験機に電動油圧式圧着工具(以下、「本圧着工具」という)90を本体95外側に取り付け、本圧着工具90の自動安全弁として弁装置1を連結し、弁装置1の周囲に排出される油を収容する排出ケース91を設ける。また、供給ホース92は油タンク93および本圧着工具90と直接連通している。圧力計94を取り付ける。
【0057】
本試験機(図8)の計測方法は、先ず油を、油タンク93から供給ホース92を経て本圧着工具90へ流通させ、弁装置1の調整部材50を締め付け、スプリング40を圧縮させ規定圧力に設定する。
そして、本圧着工具90のスイッチを連続的可動させる。これにより、弁装置1の圧力初期設定と、弁装置1の作動性(連続的繰り返し動作)の確認ができる。正常に弁装置1が可動している時は、断続的に「ポン、ポン」という音が発生し、所定回数(20回)、正常かつ安定正常に弁装置1が可動している時は、断続的に「ポン、ポン」という音が発生し、所定回数(20回)、正常かつ安定した動作が耳で確認できる。然るに、音の発生が無くなったり、断続音が異常音となったりなどした場合は、作動の不良と認識できる。
【0058】
図9に示す試験機は、「電動ポンプ試験機」で、本体100に圧力計94と弁装置1と供給ホース96とを連結させ、弁装置1からの油排出を収容する排出ケース97とを設置し、別途油タンク(油圧モータ付)98を配置する。そして、油タンク98と弁装置1とを油供給ホース96で連通する。さらに、排出ケース97に排出ホース99を接続し排出油を油タンク98へ還流させる。
【0059】
本試験機(図9)の計測方法は、先ず油を、モータ付油タンク98を作動させ油供給ホース96から弁装置1へ流通させ、弁装置1の調整部材50を締め付け、スプリング40を圧縮させ規定圧力に設定する。そして、モータ付油タンク98を連続的可動させる。これにより、弁装置1の圧力設定と、圧力計94によるリークの確認ができる。正常に弁装置1が可動しているときは、前述(電池パック試験機)したとおり、弁装置1の音の発生が確認できる。また、圧力計94で、調整後圧力設定から所定秒数後の圧力値を計測し、圧力の低下をリーク(リーク量)とした。
【0060】
(実験例)
1.表2は、図6における各構成部の関係について構成寸法を変えて行ったもので、図8に示す「電池パック試験機」と図9に示す「電動ポンプ試験機」の両試験機により実験した結果を示す。
また、表2の作動結果とは、弁装置1が連続して正常に可動を繰り返し続けることができるかを評価したもので、「○」は、良好で10回以上連続可動したもの、「△」は、不安定作動で数回の連続可動後に弁の閉塞が為されなかったもの、「×」は、不良で可動すぐに弁の閉塞が為されなかったものである。
【0061】
なお、表2中で、「PUMP」はポンプ試験機を意味し、「PACK」は電池パック試験機を意味する。
2.表3は、表2の結果から、両機による作動結果が両方とも良好(○)のものを求め、最良の実施形態(データ)を抽出し、「電動ポンプ試験機」のみによりリーク量を計測した結果を示す。
【0062】
ただし、作動確認については「電池パック試験機」を示す。
3.実験例1は、図7に示す弁装置1の各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「A>B」で差0.14、「(A+B)<D」で差0.9とし、油排出孔11,12を2カ所とした。
その結果、両試験機で良好(○)を得た。
【0063】
4.実験例2は、実験例1の本安全弁を用い、図7に示す各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「A>B」で差0.24、「(A+B)<D」で差1.0とし、油排出孔11,12を2カ所とした。
その結果、両試験機で良好(○)を得た。
【0064】
5.実験例3は、油排出孔11,12を1カ所に形成した以外は、実験例1の弁装置1と同様の構成とし、図7に示す各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「A>B」で差0.26、「(A+B)<D」で差0.9、油通路22の孔22bの径「J」を1.2と広くし、油排出孔11,12を1カ所とした。
その結果、両試験機で良好(○)を得た。
【0065】
6.実験例4は、油排出孔11,12を1カ所に形成した以外は、実験例1の弁装置1と同様の構成とし、図7に示す各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「A>B」で差0.14、「(A+B)<D」で差0.9とし、油通路22の孔22bの径「J」は1.0と実験例3より小さくし、油排出孔11,12を1カ所とした。
【0066】
その結果、ポンプ試験機では不良(×)で、パック試験機では良好(○)であった。
7.実験例5は、実験例1の弁装置1を用い、図7に示す各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「BをAより大きく」し、「(A+B)<D」とし、油排出孔11,12を2カ所とした。
【0067】
その結果、ポンプ試験機では良好(○)で、パック試験機では作動不要(△)であった。
8.実験例6は、実験例1の弁装置1を用い、図7に示す各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「BをAより大きく」、「(A+B)をDより大きく」とし、油排出孔11,12を2カ所とした。
【0068】
その結果、ポンプ試験機では良好(○)で、パック試験機では作動不要(△)であった。
9.実験例7は、油排出孔11,12を1カ所に形成した以外は、実験例1の弁装置1と同様の構成とし、図7に示す各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「A>B」であるが差0.84と大きく、「(A+B)をDより大きく」とし、油排出孔11,12を1カ所とした。その結果、ポンプ試験機では不良(×)で、パック試験機では良好(○)であった。
【0069】
10.実験例8は、油排出孔11,12を1カ所に形成した以外は、実験例1の弁装置1と同様の構成とし、図7に示す各構成の寸法に基づき行った。
ここでは、「A>B」であるが差0.56と大きくし、「(A+B)をDより大きく」とし、油排出孔11,12口を1カ所とした。
その結果、ポンプ試験機では不良(×)で、パック試験機では良好(○)であった。
【0070】
11.次に、ポンプ試験機のみで、弁装置1の耐久性とリークの確認実験を、実験例9〜13で行った。
その結果を表3に示す。
本試験機での計測方法は、先ず、実験例1と同構成の本圧着工具90を用いて、弁装置1の調整部材50で圧力設定を行ない、2000回の連続作動を開始し所定回数後に停止させ、圧力値の確認(耐久後圧力)を行った。次に、作動するかどうかの確認をパック試験機で連続10回行ない作動確認した。そして、耐久後の圧力を調整(調整後圧力)し、78MPa〜79MPaに設定した。ここで、調整後圧力設定による、リークを計測するため連続10回の作動を行い停止させ、圧力計94でリーク量(MPa)を確認(圧力設定値のリーク)した。さらに、この調整後圧力を5MPa低く設定し、この設定で連続作動させた後、15秒間停止し、15秒間後のリーク量を確認(5MPa低いリーク)した。
【0071】
なお、本実験では15秒間に8MPaを超えるリークが無いことを目安とした。
12.実験例9〜11は、「耐久後圧力」と「調整後圧力」の圧力が同じであり、「設定圧力値のリーク」は3MPaで、「5MPa低いリーク」は2MPaと良好な値を示した。
13.実験例12と13は、「調整後圧力」の圧力を「耐久後圧力」より1MPa高く設定した。
【0072】
その結果、両実験例とも「設定圧力値のリーク」は実験例12が2MPaで、実験例13が3MPaであったが、「5MPa低いリーク」では、実験例12が2MPaで、実験例13が1MPaと、かなり良好な値を示した。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

なお、上記実施形態では、弁装置1を弁筺10と油流入部20とに分割した構造として説明したが、弁筺10と油流入部20とを一体にしたものでも良い。
また、本発明を電動油圧式圧着工具に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、手動電動油圧式圧着工具に適用しても良い。また、電動油圧式圧着工具や手動油圧式圧着工具に限らず、例えば、カッターやベンダーなどの油圧で駆動する装置に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る弁装置を示す断面図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】図1の弁装置の閉弁状態を示す要部拡大図である。
【図4】図1の弁装置の開弁状態を示す要部拡大図である。
【図5】図1の弁装置を電動油圧式圧着工具に適用した例を示す説明図である。
【図6】(a)図5の電動油圧式圧着工具における手動式油圧解除装置の非操作時を示す拡大図、(b)図5の電動油圧式圧着工具における手動式油圧解除装置の操作時を示す拡大図である。
【図7】図1の弁装置における要部の寸法構成を示す断面図である。
【図8】電池パック試験機を示す説明図である。
【図9】電動ポンプ試験機を示す説明図である。
【図10】図1の弁装置における径1.0mmのボール弁と弁座面との関係を示す図である。
【図11】図1の弁装置における径1.5mmのボール弁と弁座面との関係を示す図である。
【図12】図1の弁装置におけるボール弁と弁座面との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 弁装置
10 弁筺
11,12 油排出孔
13,14 雌螺子部
20 油流入部
21 油流入部本体
22 油通路
22a 油流出部
22b,22d 孔
23 弁筺用組付部
24,27,51 雄螺子部
25 位置決め用突起部
26 弁組付部
30 弁部
31 ステム
32 突起部
33 弁杆
35 ボール弁
40 スプリング
50 調整部材
55 空間
60 電動油圧式圧着工具
61 工具本体
62 油圧ポンプ機構
63 油圧ポンプ部
64 油タンク部
65,66,76,84,85,86 油路
67 ヘッド部
68 ダイス
69 ダイス受け
70 油圧ピストン装置
71 ピストン
72 ロッド
73 シリンダ
74 スプリング
75 油溜室
77 手動式油圧解除装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧が規定以上高くなると油通路を開き油を逃がす弁を有し、工具本体の装填孔に嵌合装填される弁装置において、
前記工具本体の装填孔に嵌合装填される細長筒状の弁筺と、
前記弁筺の長手方向に貫通する油通路を有し、前記弁筺の一端側に設けられる油流入部と、
円柱形状の突起部を有するステムに弁杆を取り付け、前記弁筺に配される弁部と、
前記弁部のステムの突起部側に配されるボール弁と、
前記弁部を前記油流入部方向に付勢するスプリングと、
前記弁筺の他端部に設けられ、前記スプリングの付勢力を調整する調整部材と、
前記弁筺の側壁に設けられ、前記ボール弁の移動に伴って移動する前記弁部のステムの側壁によって開閉される油排出孔と
を備え、
前記油流入部は、前記スプリング側の前記油通路に、前記油通路より大径で、前記ボール弁と前記弁部のステムの突起部とを挿入する油流出部を有するとともに、前記油通路と前記油流出部との境界部に前記ボール弁によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面を有する
ことを特徴とする電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、
前記油排出孔は、前記弁筺の側壁の左右対称位置に2つ設けられている
ことを特徴とする電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、
前記油排出孔の孔径は、前記油通路の径の2倍である
ことを特徴とする電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、
前記弁部のステムの円柱形状の突起部は、前記ボール弁の直径と同等の直径を有する
ことを特徴とする電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか記載の電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置において、
前記スプリングによる付勢力で前記ボール弁を前記弁座面に当接する前記油通路の封鎖時に、前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部と前記弁筺とで形成される空間の前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部との間隔が、前記弁部のステムの側壁による前記油排出孔の封鎖距離より大きくなるように構成されている
ことを特徴とする電動油圧式圧着工具又は手動油圧式圧着工具に用いる弁装置。
【請求項6】
細長筒状の弁筺と、
前記弁筺の長手方向に貫通する油通路を有し、前記弁筺の一端側に設けられる油流入部と、
円柱形状の突起部を有するステムに弁杆を取り付け、前記弁筺内に配される弁部と、
前記弁部のステムの突起部側に配されるボール弁と、
前記弁部を前記油流入部方向に付勢するスプリングと、
前記弁筺の他端部に設けられ、前記スプリングの付勢力を調整する調整部材と、
前記弁筺の側壁に設けられ、前記ボール弁の移動に伴って移動する前記弁部のステムの側壁によって開閉される油排出孔と
を備え、
前記油流入部は、前記スプリング側の前記油通路に、前記油通路より大径で、前記ボール弁と前記弁部のステムの突起部とを挿入する油流出部を有するとともに、前記油通路と前記油流出部との境界部に前記ボール弁によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面を有する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項7】
請求項6記載の弁装置において、
前記油排出孔は、前記弁筺の側壁の左右対称位置に2つ設けられている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の弁装置において、
前記油排出孔の孔径は、前記油通路の径の2倍である
ことを特徴とする弁装置。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8の何れか記載の弁装置において、
前記弁部のステムの円柱形状の突起部は、前記ボール弁の直径と同等の直径を有する
ことを特徴とする弁装置。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9の何れか記載の弁装置において、
前記スプリングによる付勢力で前記ボール弁を前記弁座面に当接する前記油通路の封鎖時に、前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部と前記弁筺とで形成される空間の前記弁部のステムの先端部側と前記油流入部との間隔が、前記弁部のステムの側壁による前記油排出孔の封鎖距離より大きくなるように構成されている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項11】
側壁に2つの油排出孔を設けた円筒形状の弁筺と、
前記弁筺の一端部に取り付けられる油流入部と、
円柱形状の突起部を有するステムに弁杆を取り付け、前記弁筺内に配される弁部と、
前記弁部のステムの突起部側に配されるボール弁と、
前記弁部を前記油流入部方向に付勢するスプリングと、
前記弁筺の他端部に取り付けられ、前記スプリングの付勢力を調整する調整部材と
を備え、
前記油流入部は、前記スプリング側の前記油通路に、前記油通路より大径で、前記ボール弁と前記弁部のステムの突起部とを挿入する油流出部を有するとともに、前記油通路と前記油流出部との境界部に前記ボール弁によって開閉するテーパ角100〜140°の弁座面を有する
ことを特徴とする弁装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−196520(P2008−196520A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29377(P2007−29377)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(390037224)日本工機株式会社 (43)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】