弁装置
【課題】比較的高圧且つ大流量の圧力流体が圧力室内に導入された場合であっても、弁座に対する弁体のシート性を向上させること。
【解決手段】導入ポート111を介して圧力流体が導入される一次室110aを有する第1ボディ110と、導出ポート121を介して圧力流体が導出される二次室120aを有する第2ボディ120と、ソレノイド150によって軸線方向に変位するシャフト140と、前記シャフト140に連結されて前記シャフト140と一体的に変位することにより、前記一次室110aと前記二次室120aとの間の連通状態と非連通状態とを切り替える弁体130と、前記シャフト140の外周面を摺動可能に保持することにより前記シャフト140を軸方向に沿って案内するガイド部材160とを備える。
【解決手段】導入ポート111を介して圧力流体が導入される一次室110aを有する第1ボディ110と、導出ポート121を介して圧力流体が導出される二次室120aを有する第2ボディ120と、ソレノイド150によって軸線方向に変位するシャフト140と、前記シャフト140に連結されて前記シャフト140と一体的に変位することにより、前記一次室110aと前記二次室120aとの間の連通状態と非連通状態とを切り替える弁体130と、前記シャフト140の外周面を摺動可能に保持することにより前記シャフト140を軸方向に沿って案内するガイド部材160とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃料電池システム等に組み込まれる弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(燃料ガス、反応ガス)がアノードに、酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)がカソードに、それぞれ供給されることで発電する固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)等の燃料電池の開発が盛んである。このような燃料電池を用いたシステムでは、水素や酸素を含む空気等の流体の流れを許容または遮断制御するための弁装置が用いられている。
【0003】
ところで、前記したような燃料電池が発電すると、そのカソードで水蒸気(水)を生成し、生成した水の一部は、電解質膜(固体高分子膜)を介して、アノード側に透過する。また、電解質膜の湿潤状態を維持するため、燃料電池に向かう水素、空気は、中空糸膜を備える加湿器等によって加湿される。したがって、燃料電池や、アノードから排出されるアノードオフガス、カソードから排出されるカソードオフガスは多湿となる。よって、発電停止後、燃料電池が低温環境下(例えば0℃未満)に曝されると、燃料電池内や付属機器が凍結するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、凍結するおそれがある場合、燃料電池に掃気ガス(非加湿の空気や窒素等)を押し込み、燃料電池内に残留する水蒸気や結露水等の水分を押し出すことによって、燃料電池のアノードを掃気する手段を備えた燃料電池システムが提案されている。そして、水分と共に燃料電池から排出された掃気ガスは、掃気時に開かれる弁装置としての掃気ガス排出弁を介して排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、燃料電池から排出され弁装置内に導入される掃気ガスは比較的高圧で且つ大流量であるため、弁装置内に設けられた弁体や弁ロッドに対して大きな荷重が付与され、弁座に対して着座する弁体のシート性が劣化するおそれがある。
【0007】
例えば、弁体が着座する弁座の直径は、大流量の圧力流体(掃気ガス)が流通可能なように大径に設定され、しかも、弁ロッドを構成するシャフトが軸方向に沿って長尺に設けられている場合、圧力流体の流通によって前記シャフトが傾動し、大径な弁座に対して弁体が傾斜した状態で着座することによりシート性が劣化するおそれがある。
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通する場合であっても、弁体の傾きが抑制されて前記弁体の弁座に対するシート性を向上させることが可能な弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、圧力流体が導入される一方の圧力室と圧力流体が導出される他方の圧力室とがそれぞれ設けられたボディと、前記ボディ内の一方の圧力室と他方の圧力室との間で延設され、駆動機構によって軸線方向に変位するシャフトと、前記シャフトに連結されて前記シャフトと一体的に変位することにより、前記一方の圧力室と前記他方の圧力室との間の連通状態と非連通状態とを切り替える弁体と、前記駆動機構と前記弁体との間に設けられ、前記シャフトの外周面を摺動可能に保持することにより前記シャフトを軸方向に沿って案内するガイド部材とを備え、前記ガイド部材は、前記駆動機構に隣接する前記圧力室内に配設されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、駆動機構と弁体との間に、シャフトの外周面を摺動可能に保持してシャフトを軸方向に沿って案内するガイド部材を設けることにより、一方の圧力室と他方の圧力室との間で比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通する場合であっても、弁体の傾きが抑制されて前記弁体の弁座に対するシート性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記ガイド部材に対し溝部を介してシール部材が装着され、前記シール部材は、前記シャフトと前記ガイド部材との間隙をシールすることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ガイド部材に装着されたシール部材によって、ガイド部材とシャフトとの間隙をシールすることにより、前記間隙を通じて駆動機構側(例えば、ソレノイド側)へのガスの流入を防止することができる。
【0013】
さらに、本発明は、前記ガイド部材の軸方向に沿った一端部に、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなるインロー部が設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ガイド部材の軸方向に沿った一端部に、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなるインロー部を設けることにより、ガイド部材を駆動機構(例えば、ソレノイドを構成する固定コア)に対して組み付ける(例えば、ねじ締結する)ときに芯出し機能を発揮させることができ、前記ガイド部材を駆動機構に対して精度良く組み付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通する場合であっても、弁体の傾きが抑制されて前記弁体の弁座に対するシート性を向上させることが可能な弁装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る弁装置としての掃気ガス排出弁が組み込まれた燃料電池システムのシステム構成図である。
【図2】図1に示す掃気ガス排出弁の縦断面図である。
【図3】前記掃気ガス排出弁を構成するガイド部材及びシール部材の分解斜視図である。
【図4】図2に示すA部の拡大断面図である。
【図5】(a)〜(e)は、それぞれ、ガイド部材の組付工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る掃気ガス排出弁が組み込まれた燃料電池システムのシステム構成図である。
【0018】
図1に示されるように、燃料電池システム1は、図示しない燃料電池自動車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム1は、燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系とを備えている。
【0019】
アノード系は、水素タンク21(燃料ガス供給手段)、常閉型の遮断弁22、エゼクタ23、常閉型の水素パージ弁24、常閉型の掃気ガス排出弁(弁装置)100を備え、水素タンク21からの水素は、遮断弁22、エゼクタ23を介して、燃料電池スタック10のアノード流路11の入口側に供給されるようになっている。そして、アノード流路11の出口は、循環路23aを介してエゼクタ23の吸込口に接続されている。そして、エゼクタ23に戻されたアノードオフガスは、水素タンク21から新たに供給された水素と混合された後、アノード流路11に再供給されるようになっている。
【0020】
また、アノード流路11の出口には、水素パージ弁24、掃気ガス排出弁100が並列に接続されている。水素パージ弁24は、常閉型の電磁弁であり、燃料電池スタック10の発電時において、循環路23aを循環するアノードオフガス(水素)に含まれる不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合に、図示しないECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)によって適宜に開かれるようになっている。水素パージ弁24を通じて排出されたアノードオフガスは、下流側に接続された希釈器33で希釈された後、外部に排出されるようになっている。
【0021】
カソード系は、コンプレッサ31(酸化剤ガス供給手段、掃気手段)と、加湿器32と、希釈器33(ガス処理装置)とを備えている。
【0022】
コンプレッサ31は、加湿器32を介して、カソード流路12の入口に接続されている。そして、ECUの指令に基づいて作動すると、コンプレッサ31は、酸素を含む空気を取り込み、空気をカソード流路12に供給するようになっている。また、コンプレッサ31は、燃料電池スタック10の掃気時には、これを掃気する掃気手段として機能するようになっている。なお、コンプレッサ31は、燃料電池スタック10や燃料電池スタック10の発電電力を充放電する高圧バッテリ(図示しない)を電源として作動する。
【0023】
加湿器32は、コンプレッサ31からカソード流路12に向かう空気を加湿するため、カソード流路12に向かう空気と、多湿のカソードオフガスとを水分交換させる図示しない中空糸膜等を備えている。
【0024】
カソード流路12の出口は、希釈器33に接続され、カソード流路12(カソード)から排出された多湿のカソードオフガスが、希釈器33に供給されるようになっている。希釈器33は、水素パージ弁24から導入されるアノードオフガスと、コンプレッサ31からのカソードオフガス(希釈用ガス)とを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する容器である。希釈器33で生成した混合ガスは、車外に排出されるようになっている。
【0025】
図2は、図1に示す掃気ガス排出弁の縦断面図である。次に、本発明の実施形態に係る掃気ガス排出弁100について、図2に基づいて以下詳細に説明する。
【0026】
掃気ガス排出弁100は、常閉型で横置きに配置された電磁弁からなり、燃料電池スタック10の掃気時に開かれるバルブである。この掃気ガス排出弁100は、燃料電池スタック10のアノード流路11の掃気時にコンプレッサ31が作動された状態で、図示しないECUからの指令により開かれるようになっている。
【0027】
なお、掃気ガス排出弁100は、コンプレッサ31からの掃気ガス(非加湿の空気)をアノード系に導く、図示しない配管に設けられた、常閉型の図示しない掃気ガス導入弁と共に開かれる設定となっている。また、横置きとは、弁体が縦方向(上下方向)に動作する縦置きに対して、弁体が横方向(水平方向)に動作するものをいう。
【0028】
掃気ガス排出弁100は、一次室(一方の圧力室)110aを形成し、アノードオフガスが導入される導入ポート111が設けられる第1ボディ110(ボディ)と、この第1ボディ110に隣接して設けられて二次室(他方の圧力室)120aを形成し、前記アノードオフガスが導出される導出ポート121が設けられる第2ボディ120(ボディ)とを備えている。
【0029】
掃気ガス排出弁100は、第2ボディ120に隣接して配置された駆動機構を構成するソレノイド150によって弁体130が駆動されることで、一次室110aと二次室120aとの連通状態と非連通状態とを切り替えるように構成されている。つまり、掃気ガス排出弁100は、掃気時に開弁して、図1に示すように、燃料電池スタック10のアノード流路11から送られてくるアノードオフガスを下流側の希釈器33に排出するためのバルブとして機能するようになっている。
【0030】
本実施形態では、比較的高圧で且つ大流量からなるアノードオフガスが導入される側となる第1ボディ110が軸方向(横方向)の一端部側に配置され、また、アノードオフガスを導出する側となる第2ボディ120が軸方向の中間部に配置され、さらに、弁体130を駆動するためのソレノイド150が、第2ボディ120に隣接する軸方向の他端部側に配置される構造となっている。
【0031】
ここで、掃気ガス排出弁100は、このように、燃料電池スタック10(図1参照)のアノード流路11(図1参照)から送られてくるアノードオフガスが通流するバルブであり、アノードオフガスに同伴される水蒸気や結露水等の水分が通過する。このため、水分の滞留に起因する弁体130の第1ボディ110の内壁に対する凍結固着等を阻止するために、弁体130の頂部135が一次室110aの内壁に対して弾性的に当接可能な湾曲凸状の弾性体で形成されている。
【0032】
第1ボディ110は、前記したように、燃料電池スタック10のアノード流路11からの配管に接続可能な導入ポート111を有しており、この導入ポート111を通じて、燃料電池スタック10からの比較的高圧で且つ大流量からなるアノードオフガスが一次室110a内に導入されるようになっている。
【0033】
導入ポート111は、第1ボディ110の側部(図2中の紙面の奥側)に設けられており、アノード流路11からの配管が接続される開口部を有している。本実施形態では、導入ポート111が導出ポート121に対して上側に位置している。つまり、上から下へ向かう方向(重力方向)に、水分を含むアノードオフガスが流れるように構成されている。
【0034】
一次室110a内には、弁体130が水平方向(横方向)に変位可能に配置されている。つまり、弁体130は、一次室110aを形成する第1ボディ110の側壁に向けて矢印X1方向に変位することで開弁するようになっており、また、前記とは反対に矢印X2方向に変位し、弁体130の底面側に設けられた弁座116に着座することで閉弁するようになっている。
【0035】
弁体130は、基部131と、この基部131の孔部内に装着されたゴム製の緩衝部134と、この緩衝部134に挿入保持されたシャフト保持部138とから構成される。
【0036】
基部131は、半径外方向に拡径するフランジ部を備え、このフランジ部と、一次室110aの側部内壁に環状に突出して形成されたスプリングガイド112との間には、後記する復帰ばね113が縮設されるようになっている。これにより、弁体130は、非通電時に、その側方に設けられた弁座116に向けて復帰ばね113で付勢された状態となり、弁座116に着座される。
【0037】
緩衝部134は、略半球状(湾曲凸状)の頂部135と、弁座116に着座するシート部137とを有し、開弁時に、第1ボディ110の側部内壁に対して弾性的に当接可能となっている(図2中の2点鎖線参照)。また、略半球状とされているので、例えば、頂部135を平坦に形成した場合に比べて、側部内壁の当接面に対する接触面積が小さくなっている。
【0038】
弁体130の底面側に配置される弁座116は、一次室110aと二次室120aとを仕切る仕切り壁115に一体的に設けられており、仕切り壁115から一次室110a側へ向けて突出している。また、弁座116の内部には、後記するシャフト140が挿通する開口部が形成され、前記開口部は、比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通可能なように大径に設定されている。さらに、弁座116は、弁体130のシート部137に密着するように形成されている。
【0039】
第1ボディ110の側部内壁には、環状の突起部からなるスプリングガイド112が設けられ、このスプリングガイド112の外径面(内径面でもよい)によって、弁体130を弁座116へ向けて付勢する復帰ばね113の一端が保持される。このスプリングガイド112を設けて復帰ばね113の一端を保持することにより、導入ポート111から比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が導入された場合であっても、復帰ばね113の位置ずれを防止して所定位置に保持し弁体130を弁座116に向って正確に押圧する(復帰させる)ことができる。
【0040】
復帰ばね113は、前記したように、弁体130のフランジ部とスプリングガイド112との間に縮設されており、後記するように弁体130が閉弁された状態で、弁体130のシート部137が弁座116に気密性よく着座するように付勢する。このような復帰ばね113の付勢によって、閉弁時には、一次室110aと二次室120aとの間が、連通不能(ガス通流不能)に遮断される。
【0041】
また、後記するように弁体130が駆動されて変位した際、第1ボディ110の側部内壁に対し、弁体130の湾曲凸状の頂部135が当接するようになっている。つまり、弁体130は、後記するようにシャフト140によって変位した際に、頂部135が第1ボディ110の側部内壁に当接した状態となり、この頂部135の当接をもって、シャフト140の変位動作を規制するように構成されている。
【0042】
第2ボディ120は、第1ボディ110の側部に仕切り壁115を介して連続して設けられており、後記する希釈器33(図1参照)へ通じる配管が接続される導出ポート121を有している。つまり、弁体130が駆動されて開弁し、弁体130を介して一次室110aから二次室120aにアノードオフガスが流入すると、二次室120aに流入したアノードオフガスは、導出ポート121から配管を通じて希釈器33に送られることとなる。
【0043】
第2ボディ120には、先端が弁体130(シャフト保持部138)の挿入穴に固定されるシャフト140が二次室120a内を貫通するように設けられている。また、第2ボディ120の二次室120a内には、シャフト140の中間部の外周面を摺動可能に保持し、前記シャフト140を変位方向に沿って案内するガイド部材160が設けられる。前記ガイド部材160は、後記する固定コア151に複数のねじ部材162を介してねじ締結される。また、前記ガイド部材160は、駆動機構を構成するソレノイド150に隣接する二次室120a(駆動機構に隣接する圧力室)内に配設される。なお、前記ガイド部材160をねじ部材162によって着脱自在に締結することにより、ガイド部材160を取り外してメンテナンス作業を容易に遂行することができる。
【0044】
図3は、掃気ガス排出弁を構成するガイド部材及びシール部材の分解斜視図、図4は、図2に示すA部の拡大断面図である。
このガイド部材160は、図3に示されるように、軸方向に沿った一端部にシール部材164が装着される装着用溝部(溝部)166が形成された環状部160aと、シャフト140が摺動する摺動孔168が貫通形成された円筒部160bと、前記円筒部160bの外周面から半径外方向に拡径し複数のねじ部材162が取り付けられる取付用孔部170が形成された環状のフランジ部160cとによって構成される。
【0045】
前記円筒部160bの軸方向に沿った一端部には、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなり、所定寸法に精度よく形成されたインロー部160dが設けられる。前記インロー部160dは、固定コア151の孔部に挿入されることにより、ガイド部材160を固定コア151に対して組み付ける(ねじ締結する)ときの芯出し機能を有し、前記ガイド部材160を固定コア151に対して精度良く組み付けることができる。また、インロー部160dに近接する円筒部160bの環状段部160eには、Oリング172が装着され、前記Oリング172は、ガイド部材160を固定コア151に対して組み付けるときに、その潰れ具合(変形程度)によって調芯機能(偏芯機能)を発揮させることができる。
【0046】
装着用溝部166に装着されるシール部材164は、例えば、ゴム等の弾性環状体からなり、シャフト140の外周面に摺接してシール機能を発揮するリップ部164aが設けられる。このようなシール部材164を設けることによって、シャフト140が挿通する固定コア151とシャフト140との間隙が好適にシールされる。この結果、第2ボディ120の二次室120a内の気密が好適に保持されると共に、固定コア151とシャフト140との間隙からソレノイド150側へ掃気ガスが流入することを回避することができる。
【0047】
なお、ガイド部材160は、例えば、アルミニウム等の非磁性材料で形成され、後記するコイル155に通電してソレノイド150を励磁したときに発生する磁束特性に対して、悪影響を及ぼすことがないように設けられる。
【0048】
図2に戻って、ソレノイド150は、ケーシング154の開口部を閉塞するように配設されシャフト140が変位可能な貫通孔152が形成された固定コア151と、ケーシング154の内部に配設され樹脂封止体によって封止されたコイル155と、前記コイル155の励磁作用によってシャフト140の軸線方向に変位する円筒状の可動コア156と、可動コア156とケーシング154の閉塞壁154aとの間に介装され、可動コア156を固定コア151の方向(矢印X1方向)に付勢するスプリング157とを備える。
【0049】
可動コア156は、金属製磁性材料からなる円筒状の部材であり、コイル155を封止する樹脂封止体の内壁面に沿って挿通自在に配置され、コイル155の励磁作用によってシャフト140の軸線方向に変位可能となっている。すなわち、可動コア156は、コイル155を励磁したときに、固定コア151に吸引され、復帰ばね113(図2参照)の付勢力に抗して弁体130側(矢印X1方向)に変位する。これにより、前記弁体130は、シャフト140と一体的に矢印X1方向に押動される。
【0050】
可動コア156の略中央部には、軸線方向に沿って貫通する段付き孔部が形成されており、この段付き孔部にシャフト140の一端部が挿通されて固定されている。固定コア151と対向する可動コア156の端部には、固定コア151側に向かって徐々に縮径するテーパ面156aが形成されている。また、前記テーパ面156aと対向する固定コア151の端部には、前記テーパ面156aに対応する逆テーパ面151aが形成されており、これらの相互作用によって励磁作用下で可動コア156に推力が付与されるようになっている。
【0051】
図4に示されるように、固定コア151の逆テーパ面151aに近接する外周部位には、シャフト140の軸線と直交する端面151bに対して角度θだけ傾斜するように切り欠いて形成された傾斜面からなる磁路構成部151cが設けられる。固定コア151の端部外周面に磁路構成部151cを設けることにより、磁束密度を増大させて可動コア156を吸引する推力を向上させることができる。
【0052】
図2に戻り、シャフト140は、その一端部側が可動コア156の段付き孔部に嵌め込まれて固定され、他端部側が弁体130の挿入穴に挿入されて固定されている。なお、シャフト140の外周面に、フッ素コーティング等を施して、シャフト140が変位する際の摺動抵抗が低減するように構成してもよい。このようにすることで、シャフト140の摩耗が低減し、耐久性を向上させることができる。また同時に、シャフト140が変位動作する際に摩耗粉が発生するのを抑制することができる。フッ素コーティングには、水分をはじく撥水効果があるため、シャフト140の外周面に水分が付着することがなくシャフト140の錆びを防止し、前記シャフト140の耐久性を向上させることができる。この結果、ガイド部材160とシャフト140との間の摺動抵抗を抑制して潤滑性を向上させることができる。
【0053】
ケーシング154の閉塞壁154aの近傍には、通気路154bが形成されており、この通気路154bの開口部にキャップ159が装着されている。通気路154bは、ケーシング154の表面と、可動コア156を変位可能に摺動保持するシャフト側室156bとに開口する連通孔であり、シャフト側室156bをケーシング154の外部に連通する役割をなす。
【0054】
キャップ159には透湿防水素材158が配置され、この透湿防水素材158は、空気の出入りを許容しつつ水の出入りを阻止するものであり、例えば、周知であるゴアテックス(登録商標)などを用いることができる。
【0055】
このような透湿防水素材158を有するキャップ159を配置することによって、ソレノイド150内への水や埃等の侵入(浸入)を防止しつつ、透湿防水素材158を介して通気路154bに空気が出入りすることとなるので、可動コア156の円滑な摺動が実現される。
【0056】
燃料電池システム1に組み込まれた本実施形態に係る掃気ガス排出弁100は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0057】
システム停止時に、ECUによって、燃料電池スタック10内が凍結するおそれがあると判定されると、ECUの指令によって、コンプレッサ31が作動され、図示しない掃気ガス導入弁とともに掃気ガス排出弁100が開かれる。
【0058】
そして、コンプレッサ31からの掃気ガス(圧縮エア)が、アノード流路11およびカソード流路12に押し込まれ、これによって、アノード流路11等の水分(水蒸気、結露水等)が押し出され、燃料電池スタック10が掃気される。
【0059】
アノード流路11から押し出された水分は、掃気ガスと共に、掃気ガス排出弁100、希釈器33を介して車外に排出されるようになっている。一方、カソード流路12から押し出された水分は、掃気ガスと共に、希釈器33を介して車外に排出される。
【0060】
このような掃気時において、掃気ガス排出弁100では、ECUからの指令で励磁したコイル155により、可動コア156が固定コア151に吸引されて矢印X1方向に移動し、これに伴って移動したシャフト140により弁体130が弁座116から離間する。このとき弁体130は、その頂部135が側部内壁に弾性的に当接し、この当接によって弁体130の移動が規制されて開弁状態となる。
【0061】
これにより、アノード流路11から押し出された水分を含む比較的高圧で且つ大流量からなるアノードオフガスは、導入ポート111から一次室110aに流入し、さらに、一次室110aから二次室120aに流入して導出ポート121より排出されるようになる。このとき、水蒸気や結露水等の水分がアノードオフガスに同伴されて通過しても、弁体130は、その頂部135が略半球状を呈しているので、頂部135にこれらが留まることがなく、水分の滞留(液溜まり)に起因する弁体130の凍結固着が好適に阻止される。
【0062】
また、閉弁時には、ECUによりコイル155が非励磁とされ、復帰ばね113によって弁体130の頂部135が側部内壁から離間し、その後、弁体130が弁座116に着座する。これにより、一次室110aと二次室120aとの間が遮断され、掃気が終了する。
【0063】
本実施形態では、弁体130が弁座116から離間した弁開状態において、導入ポート111から導入された比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が一次室110aから二次室120aに向かって流通する場合であっても、シャフト140の中間部がガイド部材160によって安定的に保持されることにより、前記シャフト140が傾動することが阻止されて弁体130が傾くことがないため、弁座116に対する弁体130のシート性を向上させることができる。この場合、シャフト140がガイド部材160によってバランスよく保持されることにより、弁体130の作動性が向上する。
【0064】
また、本実施形態では、シャフト140を摺動可能に保持するガイド部材160を設けることにより、シャフト140が挿通する固定コア151の貫通孔152内径の寸法精度が不要となり、固定コア151の製造が容易になると共に、製造コストを低減することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、ガイド部材160の装着用溝部166にシール部材164が装着されることにより前記ガイド部材160の摺動孔168とシャフト140の外周面との間隙がシールされ、終局的には、固定コア151の孔部とシャフト140との間隙を通じて掃気ガスの流入が阻止されることにより、ソレノイド150側への掃気ガスの流入を回避することができる。
【0066】
さらにまた、本実施形態では、シャフト140を摺動可能に保持するガイド部材160を設けることにより、ガイド長を増大させて、流入する圧力流体の大流量を確保することができるとともに、弁体130をレスポンスよく円滑に移動させることができる。この結果、シャフト140の安定した変位動作を確保することができ、弁体130の作動性が向上する。
【0067】
なお、本実施形態では、弁装置として掃気ガス排出弁100を用いた例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、水素パージ弁24に用いてもよいし、または図示しない掃気ガス導入弁等に用いてもよい。
【0068】
また、駆動機構としてソレノイド150を例示しているが、これに限られることはなく、他の駆動機構、例えば、離隔して対向位置した永久磁石の磁極面間にコイル部材を配設して通電することにより、電磁力を利用してシャフト140を軸方向に駆動するようにしたボイスコイル型の駆動機構も採用可能である。
【0069】
さらに、本実施形態では、燃料電池システム1が燃料電池自動車に搭載された場合を例示したが、その他に例えば、自動二輪車、列車、船舶に搭載された燃料電池システムでもよく、また、住居、店舗、オフィス用等として用いられる燃料電池システムでもよい。
【0070】
図5(a)〜(e)は、それぞれ、ガイド部材の組付工程を示す断面図である。以下、図5に基づいて、ガイド部材160を含む掃気ガス排出弁100の組付工程について説明する。
【0071】
図5(a)に示されるように、ガイド部材160の軸方向に沿った一端部に形成された装着用溝部166に対してリップ部164aを有するシール部材164を嵌め込んだ後、図5(b)に示されるように、前記とは反対側の軸方向に沿った他端側でインロー部160dに近接する環状段部160eに対してOリング172を装着する。
【0072】
続いて、図5(c)に示されるように、固定コア151の貫通孔152に沿ってガイド部材160のインロー部160d及び円筒部160bの一部を挿入した後、図5(d)に示されるように、複数のねじ部材162を締結することによってガイド部材160を固定コア151に固定する。その際、ガイド部材160のインロー部160dが固定コア151の孔部内に挿入されることによって芯出し機能が発揮される。また、ねじ部材162によってガイド部材160を固定コア151に固定するとき、Oリング172の潰れ具合によって調芯機能(偏芯機能)が発揮される。
【0073】
このようにして、ガイド部材160が固定コア151に対して一体的に組み付けられた後、図5(e)に示されるように、ガイド部材160の摺動孔168に対し矢印X1方向に沿ってシャフト140を摺動させ、固定コア151及びガイド部材160を貫通させることにより、ガイド部材160、固定コア151及びシャフト140等が一体的に組み付けられたユニットが構成される。なお、挿通されたシャフト140の一端部は、シール部材164を貫通して外部に露呈する。
【0074】
このようにしてユニットが構成された後、ケーシング154内に予めコイル155及び可動コア156等が配設されたソレノイド150と前記ユニットとを一体的に組み付け、さらに、弁体130をシャフト140の一端部に連結した後に復帰ばね113を装着し、第1ボディ110を第2ボディ120と位置決めして一体的に締結する。このようにして掃気ガス排出弁100の組付工程が完了する。
【0075】
本実施形態では、このようにしてシャフト140を案内するガイド部材160を二次室120aに臨む固定コア151の端面に対して簡便に組み付けることができ、組付工程を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0076】
100 掃気ガス排出弁 110 第1ボディ(ボディ)
110a 一次室(一方の圧力室) 116 弁座
120 第2ボディ(ボディ) 120a 二次室(他方の圧力室)
130 弁体 140 シャフト
150 ソレノイド(駆動機構) 160 ガイド部材
160d インロー部 164 シール部材
166 装着用溝部(溝部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃料電池システム等に組み込まれる弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(燃料ガス、反応ガス)がアノードに、酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)がカソードに、それぞれ供給されることで発電する固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)等の燃料電池の開発が盛んである。このような燃料電池を用いたシステムでは、水素や酸素を含む空気等の流体の流れを許容または遮断制御するための弁装置が用いられている。
【0003】
ところで、前記したような燃料電池が発電すると、そのカソードで水蒸気(水)を生成し、生成した水の一部は、電解質膜(固体高分子膜)を介して、アノード側に透過する。また、電解質膜の湿潤状態を維持するため、燃料電池に向かう水素、空気は、中空糸膜を備える加湿器等によって加湿される。したがって、燃料電池や、アノードから排出されるアノードオフガス、カソードから排出されるカソードオフガスは多湿となる。よって、発電停止後、燃料電池が低温環境下(例えば0℃未満)に曝されると、燃料電池内や付属機器が凍結するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、凍結するおそれがある場合、燃料電池に掃気ガス(非加湿の空気や窒素等)を押し込み、燃料電池内に残留する水蒸気や結露水等の水分を押し出すことによって、燃料電池のアノードを掃気する手段を備えた燃料電池システムが提案されている。そして、水分と共に燃料電池から排出された掃気ガスは、掃気時に開かれる弁装置としての掃気ガス排出弁を介して排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、燃料電池から排出され弁装置内に導入される掃気ガスは比較的高圧で且つ大流量であるため、弁装置内に設けられた弁体や弁ロッドに対して大きな荷重が付与され、弁座に対して着座する弁体のシート性が劣化するおそれがある。
【0007】
例えば、弁体が着座する弁座の直径は、大流量の圧力流体(掃気ガス)が流通可能なように大径に設定され、しかも、弁ロッドを構成するシャフトが軸方向に沿って長尺に設けられている場合、圧力流体の流通によって前記シャフトが傾動し、大径な弁座に対して弁体が傾斜した状態で着座することによりシート性が劣化するおそれがある。
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通する場合であっても、弁体の傾きが抑制されて前記弁体の弁座に対するシート性を向上させることが可能な弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、圧力流体が導入される一方の圧力室と圧力流体が導出される他方の圧力室とがそれぞれ設けられたボディと、前記ボディ内の一方の圧力室と他方の圧力室との間で延設され、駆動機構によって軸線方向に変位するシャフトと、前記シャフトに連結されて前記シャフトと一体的に変位することにより、前記一方の圧力室と前記他方の圧力室との間の連通状態と非連通状態とを切り替える弁体と、前記駆動機構と前記弁体との間に設けられ、前記シャフトの外周面を摺動可能に保持することにより前記シャフトを軸方向に沿って案内するガイド部材とを備え、前記ガイド部材は、前記駆動機構に隣接する前記圧力室内に配設されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、駆動機構と弁体との間に、シャフトの外周面を摺動可能に保持してシャフトを軸方向に沿って案内するガイド部材を設けることにより、一方の圧力室と他方の圧力室との間で比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通する場合であっても、弁体の傾きが抑制されて前記弁体の弁座に対するシート性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記ガイド部材に対し溝部を介してシール部材が装着され、前記シール部材は、前記シャフトと前記ガイド部材との間隙をシールすることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ガイド部材に装着されたシール部材によって、ガイド部材とシャフトとの間隙をシールすることにより、前記間隙を通じて駆動機構側(例えば、ソレノイド側)へのガスの流入を防止することができる。
【0013】
さらに、本発明は、前記ガイド部材の軸方向に沿った一端部に、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなるインロー部が設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ガイド部材の軸方向に沿った一端部に、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなるインロー部を設けることにより、ガイド部材を駆動機構(例えば、ソレノイドを構成する固定コア)に対して組み付ける(例えば、ねじ締結する)ときに芯出し機能を発揮させることができ、前記ガイド部材を駆動機構に対して精度良く組み付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通する場合であっても、弁体の傾きが抑制されて前記弁体の弁座に対するシート性を向上させることが可能な弁装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る弁装置としての掃気ガス排出弁が組み込まれた燃料電池システムのシステム構成図である。
【図2】図1に示す掃気ガス排出弁の縦断面図である。
【図3】前記掃気ガス排出弁を構成するガイド部材及びシール部材の分解斜視図である。
【図4】図2に示すA部の拡大断面図である。
【図5】(a)〜(e)は、それぞれ、ガイド部材の組付工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る掃気ガス排出弁が組み込まれた燃料電池システムのシステム構成図である。
【0018】
図1に示されるように、燃料電池システム1は、図示しない燃料電池自動車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム1は、燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系とを備えている。
【0019】
アノード系は、水素タンク21(燃料ガス供給手段)、常閉型の遮断弁22、エゼクタ23、常閉型の水素パージ弁24、常閉型の掃気ガス排出弁(弁装置)100を備え、水素タンク21からの水素は、遮断弁22、エゼクタ23を介して、燃料電池スタック10のアノード流路11の入口側に供給されるようになっている。そして、アノード流路11の出口は、循環路23aを介してエゼクタ23の吸込口に接続されている。そして、エゼクタ23に戻されたアノードオフガスは、水素タンク21から新たに供給された水素と混合された後、アノード流路11に再供給されるようになっている。
【0020】
また、アノード流路11の出口には、水素パージ弁24、掃気ガス排出弁100が並列に接続されている。水素パージ弁24は、常閉型の電磁弁であり、燃料電池スタック10の発電時において、循環路23aを循環するアノードオフガス(水素)に含まれる不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合に、図示しないECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)によって適宜に開かれるようになっている。水素パージ弁24を通じて排出されたアノードオフガスは、下流側に接続された希釈器33で希釈された後、外部に排出されるようになっている。
【0021】
カソード系は、コンプレッサ31(酸化剤ガス供給手段、掃気手段)と、加湿器32と、希釈器33(ガス処理装置)とを備えている。
【0022】
コンプレッサ31は、加湿器32を介して、カソード流路12の入口に接続されている。そして、ECUの指令に基づいて作動すると、コンプレッサ31は、酸素を含む空気を取り込み、空気をカソード流路12に供給するようになっている。また、コンプレッサ31は、燃料電池スタック10の掃気時には、これを掃気する掃気手段として機能するようになっている。なお、コンプレッサ31は、燃料電池スタック10や燃料電池スタック10の発電電力を充放電する高圧バッテリ(図示しない)を電源として作動する。
【0023】
加湿器32は、コンプレッサ31からカソード流路12に向かう空気を加湿するため、カソード流路12に向かう空気と、多湿のカソードオフガスとを水分交換させる図示しない中空糸膜等を備えている。
【0024】
カソード流路12の出口は、希釈器33に接続され、カソード流路12(カソード)から排出された多湿のカソードオフガスが、希釈器33に供給されるようになっている。希釈器33は、水素パージ弁24から導入されるアノードオフガスと、コンプレッサ31からのカソードオフガス(希釈用ガス)とを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する容器である。希釈器33で生成した混合ガスは、車外に排出されるようになっている。
【0025】
図2は、図1に示す掃気ガス排出弁の縦断面図である。次に、本発明の実施形態に係る掃気ガス排出弁100について、図2に基づいて以下詳細に説明する。
【0026】
掃気ガス排出弁100は、常閉型で横置きに配置された電磁弁からなり、燃料電池スタック10の掃気時に開かれるバルブである。この掃気ガス排出弁100は、燃料電池スタック10のアノード流路11の掃気時にコンプレッサ31が作動された状態で、図示しないECUからの指令により開かれるようになっている。
【0027】
なお、掃気ガス排出弁100は、コンプレッサ31からの掃気ガス(非加湿の空気)をアノード系に導く、図示しない配管に設けられた、常閉型の図示しない掃気ガス導入弁と共に開かれる設定となっている。また、横置きとは、弁体が縦方向(上下方向)に動作する縦置きに対して、弁体が横方向(水平方向)に動作するものをいう。
【0028】
掃気ガス排出弁100は、一次室(一方の圧力室)110aを形成し、アノードオフガスが導入される導入ポート111が設けられる第1ボディ110(ボディ)と、この第1ボディ110に隣接して設けられて二次室(他方の圧力室)120aを形成し、前記アノードオフガスが導出される導出ポート121が設けられる第2ボディ120(ボディ)とを備えている。
【0029】
掃気ガス排出弁100は、第2ボディ120に隣接して配置された駆動機構を構成するソレノイド150によって弁体130が駆動されることで、一次室110aと二次室120aとの連通状態と非連通状態とを切り替えるように構成されている。つまり、掃気ガス排出弁100は、掃気時に開弁して、図1に示すように、燃料電池スタック10のアノード流路11から送られてくるアノードオフガスを下流側の希釈器33に排出するためのバルブとして機能するようになっている。
【0030】
本実施形態では、比較的高圧で且つ大流量からなるアノードオフガスが導入される側となる第1ボディ110が軸方向(横方向)の一端部側に配置され、また、アノードオフガスを導出する側となる第2ボディ120が軸方向の中間部に配置され、さらに、弁体130を駆動するためのソレノイド150が、第2ボディ120に隣接する軸方向の他端部側に配置される構造となっている。
【0031】
ここで、掃気ガス排出弁100は、このように、燃料電池スタック10(図1参照)のアノード流路11(図1参照)から送られてくるアノードオフガスが通流するバルブであり、アノードオフガスに同伴される水蒸気や結露水等の水分が通過する。このため、水分の滞留に起因する弁体130の第1ボディ110の内壁に対する凍結固着等を阻止するために、弁体130の頂部135が一次室110aの内壁に対して弾性的に当接可能な湾曲凸状の弾性体で形成されている。
【0032】
第1ボディ110は、前記したように、燃料電池スタック10のアノード流路11からの配管に接続可能な導入ポート111を有しており、この導入ポート111を通じて、燃料電池スタック10からの比較的高圧で且つ大流量からなるアノードオフガスが一次室110a内に導入されるようになっている。
【0033】
導入ポート111は、第1ボディ110の側部(図2中の紙面の奥側)に設けられており、アノード流路11からの配管が接続される開口部を有している。本実施形態では、導入ポート111が導出ポート121に対して上側に位置している。つまり、上から下へ向かう方向(重力方向)に、水分を含むアノードオフガスが流れるように構成されている。
【0034】
一次室110a内には、弁体130が水平方向(横方向)に変位可能に配置されている。つまり、弁体130は、一次室110aを形成する第1ボディ110の側壁に向けて矢印X1方向に変位することで開弁するようになっており、また、前記とは反対に矢印X2方向に変位し、弁体130の底面側に設けられた弁座116に着座することで閉弁するようになっている。
【0035】
弁体130は、基部131と、この基部131の孔部内に装着されたゴム製の緩衝部134と、この緩衝部134に挿入保持されたシャフト保持部138とから構成される。
【0036】
基部131は、半径外方向に拡径するフランジ部を備え、このフランジ部と、一次室110aの側部内壁に環状に突出して形成されたスプリングガイド112との間には、後記する復帰ばね113が縮設されるようになっている。これにより、弁体130は、非通電時に、その側方に設けられた弁座116に向けて復帰ばね113で付勢された状態となり、弁座116に着座される。
【0037】
緩衝部134は、略半球状(湾曲凸状)の頂部135と、弁座116に着座するシート部137とを有し、開弁時に、第1ボディ110の側部内壁に対して弾性的に当接可能となっている(図2中の2点鎖線参照)。また、略半球状とされているので、例えば、頂部135を平坦に形成した場合に比べて、側部内壁の当接面に対する接触面積が小さくなっている。
【0038】
弁体130の底面側に配置される弁座116は、一次室110aと二次室120aとを仕切る仕切り壁115に一体的に設けられており、仕切り壁115から一次室110a側へ向けて突出している。また、弁座116の内部には、後記するシャフト140が挿通する開口部が形成され、前記開口部は、比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が流通可能なように大径に設定されている。さらに、弁座116は、弁体130のシート部137に密着するように形成されている。
【0039】
第1ボディ110の側部内壁には、環状の突起部からなるスプリングガイド112が設けられ、このスプリングガイド112の外径面(内径面でもよい)によって、弁体130を弁座116へ向けて付勢する復帰ばね113の一端が保持される。このスプリングガイド112を設けて復帰ばね113の一端を保持することにより、導入ポート111から比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が導入された場合であっても、復帰ばね113の位置ずれを防止して所定位置に保持し弁体130を弁座116に向って正確に押圧する(復帰させる)ことができる。
【0040】
復帰ばね113は、前記したように、弁体130のフランジ部とスプリングガイド112との間に縮設されており、後記するように弁体130が閉弁された状態で、弁体130のシート部137が弁座116に気密性よく着座するように付勢する。このような復帰ばね113の付勢によって、閉弁時には、一次室110aと二次室120aとの間が、連通不能(ガス通流不能)に遮断される。
【0041】
また、後記するように弁体130が駆動されて変位した際、第1ボディ110の側部内壁に対し、弁体130の湾曲凸状の頂部135が当接するようになっている。つまり、弁体130は、後記するようにシャフト140によって変位した際に、頂部135が第1ボディ110の側部内壁に当接した状態となり、この頂部135の当接をもって、シャフト140の変位動作を規制するように構成されている。
【0042】
第2ボディ120は、第1ボディ110の側部に仕切り壁115を介して連続して設けられており、後記する希釈器33(図1参照)へ通じる配管が接続される導出ポート121を有している。つまり、弁体130が駆動されて開弁し、弁体130を介して一次室110aから二次室120aにアノードオフガスが流入すると、二次室120aに流入したアノードオフガスは、導出ポート121から配管を通じて希釈器33に送られることとなる。
【0043】
第2ボディ120には、先端が弁体130(シャフト保持部138)の挿入穴に固定されるシャフト140が二次室120a内を貫通するように設けられている。また、第2ボディ120の二次室120a内には、シャフト140の中間部の外周面を摺動可能に保持し、前記シャフト140を変位方向に沿って案内するガイド部材160が設けられる。前記ガイド部材160は、後記する固定コア151に複数のねじ部材162を介してねじ締結される。また、前記ガイド部材160は、駆動機構を構成するソレノイド150に隣接する二次室120a(駆動機構に隣接する圧力室)内に配設される。なお、前記ガイド部材160をねじ部材162によって着脱自在に締結することにより、ガイド部材160を取り外してメンテナンス作業を容易に遂行することができる。
【0044】
図3は、掃気ガス排出弁を構成するガイド部材及びシール部材の分解斜視図、図4は、図2に示すA部の拡大断面図である。
このガイド部材160は、図3に示されるように、軸方向に沿った一端部にシール部材164が装着される装着用溝部(溝部)166が形成された環状部160aと、シャフト140が摺動する摺動孔168が貫通形成された円筒部160bと、前記円筒部160bの外周面から半径外方向に拡径し複数のねじ部材162が取り付けられる取付用孔部170が形成された環状のフランジ部160cとによって構成される。
【0045】
前記円筒部160bの軸方向に沿った一端部には、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなり、所定寸法に精度よく形成されたインロー部160dが設けられる。前記インロー部160dは、固定コア151の孔部に挿入されることにより、ガイド部材160を固定コア151に対して組み付ける(ねじ締結する)ときの芯出し機能を有し、前記ガイド部材160を固定コア151に対して精度良く組み付けることができる。また、インロー部160dに近接する円筒部160bの環状段部160eには、Oリング172が装着され、前記Oリング172は、ガイド部材160を固定コア151に対して組み付けるときに、その潰れ具合(変形程度)によって調芯機能(偏芯機能)を発揮させることができる。
【0046】
装着用溝部166に装着されるシール部材164は、例えば、ゴム等の弾性環状体からなり、シャフト140の外周面に摺接してシール機能を発揮するリップ部164aが設けられる。このようなシール部材164を設けることによって、シャフト140が挿通する固定コア151とシャフト140との間隙が好適にシールされる。この結果、第2ボディ120の二次室120a内の気密が好適に保持されると共に、固定コア151とシャフト140との間隙からソレノイド150側へ掃気ガスが流入することを回避することができる。
【0047】
なお、ガイド部材160は、例えば、アルミニウム等の非磁性材料で形成され、後記するコイル155に通電してソレノイド150を励磁したときに発生する磁束特性に対して、悪影響を及ぼすことがないように設けられる。
【0048】
図2に戻って、ソレノイド150は、ケーシング154の開口部を閉塞するように配設されシャフト140が変位可能な貫通孔152が形成された固定コア151と、ケーシング154の内部に配設され樹脂封止体によって封止されたコイル155と、前記コイル155の励磁作用によってシャフト140の軸線方向に変位する円筒状の可動コア156と、可動コア156とケーシング154の閉塞壁154aとの間に介装され、可動コア156を固定コア151の方向(矢印X1方向)に付勢するスプリング157とを備える。
【0049】
可動コア156は、金属製磁性材料からなる円筒状の部材であり、コイル155を封止する樹脂封止体の内壁面に沿って挿通自在に配置され、コイル155の励磁作用によってシャフト140の軸線方向に変位可能となっている。すなわち、可動コア156は、コイル155を励磁したときに、固定コア151に吸引され、復帰ばね113(図2参照)の付勢力に抗して弁体130側(矢印X1方向)に変位する。これにより、前記弁体130は、シャフト140と一体的に矢印X1方向に押動される。
【0050】
可動コア156の略中央部には、軸線方向に沿って貫通する段付き孔部が形成されており、この段付き孔部にシャフト140の一端部が挿通されて固定されている。固定コア151と対向する可動コア156の端部には、固定コア151側に向かって徐々に縮径するテーパ面156aが形成されている。また、前記テーパ面156aと対向する固定コア151の端部には、前記テーパ面156aに対応する逆テーパ面151aが形成されており、これらの相互作用によって励磁作用下で可動コア156に推力が付与されるようになっている。
【0051】
図4に示されるように、固定コア151の逆テーパ面151aに近接する外周部位には、シャフト140の軸線と直交する端面151bに対して角度θだけ傾斜するように切り欠いて形成された傾斜面からなる磁路構成部151cが設けられる。固定コア151の端部外周面に磁路構成部151cを設けることにより、磁束密度を増大させて可動コア156を吸引する推力を向上させることができる。
【0052】
図2に戻り、シャフト140は、その一端部側が可動コア156の段付き孔部に嵌め込まれて固定され、他端部側が弁体130の挿入穴に挿入されて固定されている。なお、シャフト140の外周面に、フッ素コーティング等を施して、シャフト140が変位する際の摺動抵抗が低減するように構成してもよい。このようにすることで、シャフト140の摩耗が低減し、耐久性を向上させることができる。また同時に、シャフト140が変位動作する際に摩耗粉が発生するのを抑制することができる。フッ素コーティングには、水分をはじく撥水効果があるため、シャフト140の外周面に水分が付着することがなくシャフト140の錆びを防止し、前記シャフト140の耐久性を向上させることができる。この結果、ガイド部材160とシャフト140との間の摺動抵抗を抑制して潤滑性を向上させることができる。
【0053】
ケーシング154の閉塞壁154aの近傍には、通気路154bが形成されており、この通気路154bの開口部にキャップ159が装着されている。通気路154bは、ケーシング154の表面と、可動コア156を変位可能に摺動保持するシャフト側室156bとに開口する連通孔であり、シャフト側室156bをケーシング154の外部に連通する役割をなす。
【0054】
キャップ159には透湿防水素材158が配置され、この透湿防水素材158は、空気の出入りを許容しつつ水の出入りを阻止するものであり、例えば、周知であるゴアテックス(登録商標)などを用いることができる。
【0055】
このような透湿防水素材158を有するキャップ159を配置することによって、ソレノイド150内への水や埃等の侵入(浸入)を防止しつつ、透湿防水素材158を介して通気路154bに空気が出入りすることとなるので、可動コア156の円滑な摺動が実現される。
【0056】
燃料電池システム1に組み込まれた本実施形態に係る掃気ガス排出弁100は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0057】
システム停止時に、ECUによって、燃料電池スタック10内が凍結するおそれがあると判定されると、ECUの指令によって、コンプレッサ31が作動され、図示しない掃気ガス導入弁とともに掃気ガス排出弁100が開かれる。
【0058】
そして、コンプレッサ31からの掃気ガス(圧縮エア)が、アノード流路11およびカソード流路12に押し込まれ、これによって、アノード流路11等の水分(水蒸気、結露水等)が押し出され、燃料電池スタック10が掃気される。
【0059】
アノード流路11から押し出された水分は、掃気ガスと共に、掃気ガス排出弁100、希釈器33を介して車外に排出されるようになっている。一方、カソード流路12から押し出された水分は、掃気ガスと共に、希釈器33を介して車外に排出される。
【0060】
このような掃気時において、掃気ガス排出弁100では、ECUからの指令で励磁したコイル155により、可動コア156が固定コア151に吸引されて矢印X1方向に移動し、これに伴って移動したシャフト140により弁体130が弁座116から離間する。このとき弁体130は、その頂部135が側部内壁に弾性的に当接し、この当接によって弁体130の移動が規制されて開弁状態となる。
【0061】
これにより、アノード流路11から押し出された水分を含む比較的高圧で且つ大流量からなるアノードオフガスは、導入ポート111から一次室110aに流入し、さらに、一次室110aから二次室120aに流入して導出ポート121より排出されるようになる。このとき、水蒸気や結露水等の水分がアノードオフガスに同伴されて通過しても、弁体130は、その頂部135が略半球状を呈しているので、頂部135にこれらが留まることがなく、水分の滞留(液溜まり)に起因する弁体130の凍結固着が好適に阻止される。
【0062】
また、閉弁時には、ECUによりコイル155が非励磁とされ、復帰ばね113によって弁体130の頂部135が側部内壁から離間し、その後、弁体130が弁座116に着座する。これにより、一次室110aと二次室120aとの間が遮断され、掃気が終了する。
【0063】
本実施形態では、弁体130が弁座116から離間した弁開状態において、導入ポート111から導入された比較的高圧で且つ大流量の圧力流体が一次室110aから二次室120aに向かって流通する場合であっても、シャフト140の中間部がガイド部材160によって安定的に保持されることにより、前記シャフト140が傾動することが阻止されて弁体130が傾くことがないため、弁座116に対する弁体130のシート性を向上させることができる。この場合、シャフト140がガイド部材160によってバランスよく保持されることにより、弁体130の作動性が向上する。
【0064】
また、本実施形態では、シャフト140を摺動可能に保持するガイド部材160を設けることにより、シャフト140が挿通する固定コア151の貫通孔152内径の寸法精度が不要となり、固定コア151の製造が容易になると共に、製造コストを低減することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、ガイド部材160の装着用溝部166にシール部材164が装着されることにより前記ガイド部材160の摺動孔168とシャフト140の外周面との間隙がシールされ、終局的には、固定コア151の孔部とシャフト140との間隙を通じて掃気ガスの流入が阻止されることにより、ソレノイド150側への掃気ガスの流入を回避することができる。
【0066】
さらにまた、本実施形態では、シャフト140を摺動可能に保持するガイド部材160を設けることにより、ガイド長を増大させて、流入する圧力流体の大流量を確保することができるとともに、弁体130をレスポンスよく円滑に移動させることができる。この結果、シャフト140の安定した変位動作を確保することができ、弁体130の作動性が向上する。
【0067】
なお、本実施形態では、弁装置として掃気ガス排出弁100を用いた例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、水素パージ弁24に用いてもよいし、または図示しない掃気ガス導入弁等に用いてもよい。
【0068】
また、駆動機構としてソレノイド150を例示しているが、これに限られることはなく、他の駆動機構、例えば、離隔して対向位置した永久磁石の磁極面間にコイル部材を配設して通電することにより、電磁力を利用してシャフト140を軸方向に駆動するようにしたボイスコイル型の駆動機構も採用可能である。
【0069】
さらに、本実施形態では、燃料電池システム1が燃料電池自動車に搭載された場合を例示したが、その他に例えば、自動二輪車、列車、船舶に搭載された燃料電池システムでもよく、また、住居、店舗、オフィス用等として用いられる燃料電池システムでもよい。
【0070】
図5(a)〜(e)は、それぞれ、ガイド部材の組付工程を示す断面図である。以下、図5に基づいて、ガイド部材160を含む掃気ガス排出弁100の組付工程について説明する。
【0071】
図5(a)に示されるように、ガイド部材160の軸方向に沿った一端部に形成された装着用溝部166に対してリップ部164aを有するシール部材164を嵌め込んだ後、図5(b)に示されるように、前記とは反対側の軸方向に沿った他端側でインロー部160dに近接する環状段部160eに対してOリング172を装着する。
【0072】
続いて、図5(c)に示されるように、固定コア151の貫通孔152に沿ってガイド部材160のインロー部160d及び円筒部160bの一部を挿入した後、図5(d)に示されるように、複数のねじ部材162を締結することによってガイド部材160を固定コア151に固定する。その際、ガイド部材160のインロー部160dが固定コア151の孔部内に挿入されることによって芯出し機能が発揮される。また、ねじ部材162によってガイド部材160を固定コア151に固定するとき、Oリング172の潰れ具合によって調芯機能(偏芯機能)が発揮される。
【0073】
このようにして、ガイド部材160が固定コア151に対して一体的に組み付けられた後、図5(e)に示されるように、ガイド部材160の摺動孔168に対し矢印X1方向に沿ってシャフト140を摺動させ、固定コア151及びガイド部材160を貫通させることにより、ガイド部材160、固定コア151及びシャフト140等が一体的に組み付けられたユニットが構成される。なお、挿通されたシャフト140の一端部は、シール部材164を貫通して外部に露呈する。
【0074】
このようにしてユニットが構成された後、ケーシング154内に予めコイル155及び可動コア156等が配設されたソレノイド150と前記ユニットとを一体的に組み付け、さらに、弁体130をシャフト140の一端部に連結した後に復帰ばね113を装着し、第1ボディ110を第2ボディ120と位置決めして一体的に締結する。このようにして掃気ガス排出弁100の組付工程が完了する。
【0075】
本実施形態では、このようにしてシャフト140を案内するガイド部材160を二次室120aに臨む固定コア151の端面に対して簡便に組み付けることができ、組付工程を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0076】
100 掃気ガス排出弁 110 第1ボディ(ボディ)
110a 一次室(一方の圧力室) 116 弁座
120 第2ボディ(ボディ) 120a 二次室(他方の圧力室)
130 弁体 140 シャフト
150 ソレノイド(駆動機構) 160 ガイド部材
160d インロー部 164 シール部材
166 装着用溝部(溝部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体が導入される一方の圧力室と圧力流体が導出される他方の圧力室とがそれぞれ設けられたボディと、
前記ボディ内の一方の圧力室と他方の圧力室との間で延設され、駆動機構によって軸線方向に変位するシャフトと、
前記シャフトに連結されて前記シャフトと一体的に変位することにより、前記一方の圧力室と前記他方の圧力室との間の連通状態と非連通状態とを切り替える弁体と、
前記駆動機構と前記弁体との間に設けられ、前記シャフトの外周面を摺動可能に保持することにより前記シャフトを軸方向に沿って案内するガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材は、前記駆動機構に隣接する前記圧力室内に配設されることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の弁装置において、
前記ガイド部材には、溝部を介してシール部材が装着され、前記シール部材は、前記シャフトと前記ガイド部材との間隙をシールすることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の弁装置において、
前記ガイド部材の軸方向に沿った一端部には、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなるインロー部が設けられることを特徴とする弁装置。
【請求項1】
圧力流体が導入される一方の圧力室と圧力流体が導出される他方の圧力室とがそれぞれ設けられたボディと、
前記ボディ内の一方の圧力室と他方の圧力室との間で延設され、駆動機構によって軸線方向に変位するシャフトと、
前記シャフトに連結されて前記シャフトと一体的に変位することにより、前記一方の圧力室と前記他方の圧力室との間の連通状態と非連通状態とを切り替える弁体と、
前記駆動機構と前記弁体との間に設けられ、前記シャフトの外周面を摺動可能に保持することにより前記シャフトを軸方向に沿って案内するガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材は、前記駆動機構に隣接する前記圧力室内に配設されることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の弁装置において、
前記ガイド部材には、溝部を介してシール部材が装着され、前記シール部材は、前記シャフトと前記ガイド部材との間隙をシールすることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の弁装置において、
前記ガイド部材の軸方向に沿った一端部には、他の部位と比較して薄肉で円筒状からなるインロー部が設けられることを特徴とする弁装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2011−69450(P2011−69450A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221877(P2009−221877)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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