説明

弁装置

【課題】弁体の周縁にシールリングが装着されている弁装置において、閉弁時のシールリングと壁との衝突による磨耗の進行、および、衝突後のシールリングと壁との摺動摩擦による磨耗の進行を抑制する。
【解決手段】弁装置1によれば、壁15に突起33が設けられ、突起33は、全ての回転角においてシールリング5が摺接して張力を及ぼすことができるように設けられている。これにより、シールリング5は、壁15に直接的に摺接することなく、突起33に摺接して広がりを抑制されながら回転することができる。このため、壁15とシールリング5との衝突が発生しなくなる。また、シールリング5と突起33との摺動摩擦は存在するものの、摺動面が突起33の内周縁に限定される。このため、シールリング5および壁15における磨耗の進行を大幅に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関するものであり、弁体の周縁にシールリングが装着されているものに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来から、弁装置100では、図8に示すように、弁体101の周縁にシールリング102が装着されているものが公知であり、例えば、内燃機関から排気される排気ガスの一部を吸気側に再循環するEGR装置において、排気ガスの循環量を可変するためのEGR弁装置として採用されている
【0003】
弁装置100は、流体の通路103を有する通路形成体104と、通路103に回転自在に収容されて通路103の開度を可変する板状の弁体101と、弁体101の周縁に装着されるシールリング102とを備える。
【0004】
ここで、シールリング102は、弁体101の周縁と通路103の壁105との間を封鎖するものであって、図9に示すようにC字状に設けられ、弁体101の周縁に設けられた環状の溝106に嵌まっている(例えば、特許文献1参照)。そして、シールリング102は、自身の周方向に対向する2つの端面により周方向隙間(以下、合口隙間と呼ぶ)107を形成するとともに、溝106の底面と自身の内周縁との間に径方向の隙間(以下、溝内隙間と呼ぶ。)108を形成しながら弁体101とともに回転する。
【0005】
また、シールリング102は、全閉のときに、壁105に環状に当接して合口隙間107および溝内隙間108が最も縮まるように弾性変形している。このとき、シールリング102は、自身の張力によって壁105に当接するとともに通路103の上流側から作用する排気ガスの圧力によって溝106の側面109に当接することで、弁体101の周縁と壁105との間を封鎖している。
【0006】
ここで、弁体101が、全閉の回転角(以下、全閉角と呼ぶ。)から全開の回転角(以下、全開角と呼ぶ。)まで、開側に回転していくときのシールリング102の状態の推移について図10を参照しながら説明する。
【0007】
まず、全閉角から開側に回転していくと、シールリング102は、合口隙間107および溝内隙間108を広げながら自身の外周縁の全周において壁105との当接を保ち、弁体101の周縁と壁105との間の封鎖を維持し続ける。やがて、シールリング102は、弁体101の周縁と壁105との間を封鎖しない開放状態との境界角(以下、第1境界角と呼ぶ。)に到達し、外周縁が部分的に壁105と当接しなくなる。
【0008】
さらに、第1境界角よりも開側に回転していくと、シールリング102は、外周縁において壁105と当接しない部分を拡大しながら張力を弱めていき、同時に、合口隙間107および溝内隙間108を広げ続ける。やがて、シールリング102は、溝106に嵌まった状態で張力を有さずに自在に動くことができるフリー状態との境界角(以下、第2境界角と呼ぶ。)に到達する。
【0009】
そして、第2境界角よりも開側の回転角において、シールリング102は、フリー状態を保ちながら合口隙間107および溝内隙間108を第2境界角における数値以上に広げることなく、全開角まで回転する。
【0010】
以上により、弁体101の回転角と排気ガスの循環量とは図11のような相関を示す。
すなわち、回転角が全閉角から第1境界角の範囲にある間では、シールリング102によって弁体101の周縁と壁105との間の封鎖が維持されるので循環量はゼロに略一致している。そして、第1境界角以上の範囲では、回転角の開側への移行に応じて循環量が増加していく。
【0011】
ところで、弁装置100によれば、弁体101がシールリング102のフリー状態から閉側に回転する場合、シールリング102は、合口隙間107および溝内隙間108が大きく広がった径大の状態で壁105に衝突し、衝突後、合口隙間107および溝内隙間108を縮めるように弾性変形していく。
【0012】
このため、衝突によって、シールリング102と壁105との間、およびシールリング102と側面109との間に衝撃が発生し、衝撃発生部位において磨耗の進行が著しくなる。さらに、シールリング102と壁105との間では、衝突後も、シールリング102が張力を増しながら壁105を摺動するので、摺動摩擦による磨耗の進行も著しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−285311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、弁体の周縁にシールリングが装着されている弁装置において、閉弁時のシールリングと通路の壁との衝突による磨耗の進行、および、衝突後のシールリングと通路の壁との摺動摩擦による磨耗の進行を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段によれば、弁装置は、流体の通路を有する通路形成体と、通路に回転自在に収容されて通路の開度を可変する板状の弁体と、通路の開度が全閉のときに弁体の周縁と通路の壁との間を封鎖するシールリングとを備える。また、シールリングは、C字状に設けられて自身の周方向に対向する2つの端面により周方向隙間(合口隙間)を形成するとともに、弁体の周縁に設けられた環状の溝に嵌まって弁体とともに回転し、全閉のときには、通路の壁に環状に当接して合口隙間が縮まるように弾性変形している。
【0016】
そして、通路の壁には、弁体が全閉から開側に回転するとき、および弁体が全閉に向かって開側から回転するときにシールリングに摺接されてシールリングから張力を受ける突起が設けられている。
これにより、シールリングは、壁に直接的に摺接することなく、突起に摺接して合口隙間や溝内隙間の広がりを抑制されながら、全閉から開側に回転したり、全閉に向かって開側から回転したりすることができる。
【0017】
このため、例えば、シールリングとの衝突を緩和できるような形状に突起を設けたり、全閉から全開の全ての範囲でシールリングが当接できるように突起を設けて衝突自体を解消したりすることで、シールリングと壁との衝突による磨耗の進行を抑制することができる。
【0018】
また、摺動面が突起の内周縁に限定されるので、シールリングと突起との摺動摩擦は存在するものの、従来の弁装置で発生していたシールリングと壁との摺動摩擦に比べて、磨耗の範囲は極めて限定的なものとなる。このため、シールリングと壁との摺動摩擦による磨耗の進行を抑制することができる。
【0019】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段によれば、通路の壁には3つ以上の突起が設けられ、シールリングは、全ての突起に摺接して張力を及ぼしながら回転する。
これにより、合口隙間や溝内隙間の広がりを抑制してシールリングが壁に直接的に摺動しないように、突起を設定するのが容易になる。
【0020】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段によれば、通路の開度が全閉のときに合口隙間が最も小さくなっている。そして、突起は、弁体およびシールリングが全閉の回転角にあるときに通路の壁からの突出量がゼロであり、かつ、弁体およびシールリングが全閉の回転角から開側に回転するときに合口隙間が連続的に大きくなるように設けられている。
これにより、全閉において流体の通過量を確実にゼロにすることができる。
【0021】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段によれば、弁体の周縁の回転軌跡面は、突起の内周縁の内側に存在する。
これにより、弁体を確実に突起の内側で回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】弁装置の構成図である(実施例)。
【図2】(a)はシールリングの平面図であり、(b)はシールリングによる弁体周縁の封鎖状態を示す説明図である(実施例)。
【図3】(a)は弁装置の要部断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は突起の斜視図である(実施例)。
【図4】(a)と(a´)とは全閉角におけるシールリングの状態を示す説明図であり、(b)と(b´)とは第1境界角に相当する回転角におけるシールリングの状態を示す説明図であり、(c)と(c´)とは第2境界角に相当する回転角におけるシールリングの状態を示す説明図であり、(d)と(d´)とは全開角におけるシールリングの状態を示す説明図である(実施例)。
【図5】弁装置における回転角と流量(循環量)との相関図である(実施例)。
【図6】両軸斜めのバタフライ弁を示す説明図である(変形例)。
【図7】オフセット弁を示す説明図である(変形例)。
【図8】(a)は弁装置の要部断面図であり、(b)は(a)のB−B断面図である(従来例)。
【図9】(a)はシールリングの平面図であり、(b)はシールリングによる弁体周縁の封鎖状態を示す説明図である(従来例)。
【図10】(a)と(a´)とは全閉角におけるシールリングの状態を示す説明図であり、(b)と(b´)とは第1境界角におけるシールリングの状態を示す説明図であり、(c)と(c´)とは第2境界角におけるシールリングの状態を示す説明図であり、(d)と(d´)とは全開角におけるシールリングの状態を示す説明図である(従来例)。
【図11】弁装置における回転角と流量(循環量)との相関図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態の弁装置は、流体の通路を有する通路形成体と、通路に回転自在に収容されて通路の開度を可変する板状の弁体と、通路の開度が全閉のときに弁体の周縁と通路の壁との間を封鎖するシールリングとを備える。また、シールリングは、C字状に設けられて自身の周方向に対向する2つの端面により周方向隙間(合口隙間)を形成するとともに、弁体の周縁に設けられた環状の溝に嵌まって弁体とともに回転し、全閉のときには、通路の壁に環状に当接して合口隙間が縮まるように弾性変形している。
【0024】
そして、通路の壁には、弁体が全閉から開側に回転するとき、および弁体が全閉に向かって開側から回転するときにシールリングに摺接されてシールリングから張力を受ける突起が設けられている。
【0025】
また、通路の壁には3つ以上の突起が設けられ、シールリングは、全ての突起に摺接して張力を及ぼしながら回転する。
また、通路の開度が全閉のときに合口隙間が最も小さくなっており、突起は、弁体およびシールリングが全閉の回転角にあるときに通路の壁からの突出量がゼロであり、かつ、弁体およびシールリングが全閉の回転角から開側に回転するときに合口隙間が連続的に大きくなるように設けられている。
さらに、弁体の周縁の回転軌跡面は、突起の内周縁の内側に存在する。
【実施例】
【0026】
〔実施例の構成〕
実施例の弁装置1の構成を、図1〜図3に基づいて説明する。
弁装置1は、流体の通路2を有する通路形成体3と、通路2に回転自在に収容されて通路2の開度を可変する板状の弁体4と、弁体4の周縁に装着されるシールリング5と、弁体4に与える回転トルクを発生する電動機6と、電動機6の出力軸7から弁体4の回転軸8に回転トルクを減速して伝達する減速機構9と、電動機6への通電を制御して弁体4の動作を制御する制御手段10と、弁体4の回転角を検出して制御手段10に出力する回転角センサ11とを備える。
【0027】
そして、弁装置1は、例えば、内燃機関から排気される排気ガスの一部を吸気側に再循環するEGR装置において、流体としての排気ガスの循環量を可変するためのEGR弁装置として採用されている。
【0028】
通路形成体3は、排気ガスを再循環するための全ての通路2の内の一部を形成するものであり(以下、通路形成体3をノズル3と呼ぶ。)、ノズル3により形成される通路2の一部に弁体4が収容されている(以下、通路2という場合、特に断らない限りノズル3により形成される部分を示すものとする。)。また、ノズル3は、弁装置1のハウジング14とは別体であり、排気ガスに含まれる水分等に対する耐食性の点から、例えば、ステンレス鋼を素材として設けられている。
【0029】
弁体4は、略円形板状のバタフライ弁であり、弁体4の回転軸8は、弁体4の面方向に対して所定の角度だけ傾斜した状態で弁体4に溶接等で固定されている。そして、弁体4は、回転することにより、通路2の開口面積に相当する開度を全閉から全開の範囲で可変する。
【0030】
ここで、全閉とは、弁体4の周縁と通路2の壁15との間の隙間が最小となる開度であり、仮に、弁体4の周縁にシールリング5を配さない場合に通路2を通る排気ガスの流量が最小となる開度である。また、全開とは、通路2を通る排気ガスの流量が最大となる開度である。
【0031】
なお、弁体4も、水分等に対する耐食性の点からステンレス鋼を素材として設けられている。
また、回転軸8は、メタル軸受16、オイルシール17およびボールベアリング18を介してハウジング14に、回転自在に支持されている。
【0032】
シールリング5は、弁体4の周縁と通路2の壁15との間を封鎖するものであり、C字状に設けられて弁体4の周縁に設けられた環状の溝20に嵌まっている。そして、シールリング5は、自身の周方向に対向する2つの端面により周方向隙間(合口隙間)21を形成するとともに、溝20の底面22と自身の内周縁との間に径方向の隙間(溝内隙間)23を形成しながら弁体4とともに回転する。
【0033】
また、シールリング5は、全閉のときに、壁15に環状に当接して合口隙間21および溝内隙間23が最も縮まるように弾性変形している。このとき、シールリング5は、自身の張力によって壁15に当接するとともに通路2の上流側から作用する排気ガスの圧力によって溝20の側面24に当接することで、弁体4の周縁と壁15との間を封鎖している。
なお、シールリング5も、水分等に対する耐食性の点からステンレス鋼を素材として設けられている。
【0034】
電動機6は、ブラシレスDCモータ等の周知の回転電機であり、例えば、電機子コイルへの通電が制御されて、出力する回転トルクを可変する。
減速機構9は、電動機6の出力軸7に固定される小ギヤ26と、弁体4の回転軸8に固定される大ギヤ27と、小ギヤ26および大ギヤ27の両方に噛み合って回転する中間ギヤ28とを有し、中間ギヤ28は、小ギヤ26と噛み合う大径ギヤ部29と、大ギヤ27と噛み合う小径ギヤ部30とを同軸的に有する。
【0035】
制御手段10は、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムや各種データを保存する記憶装置、入力回路、出力回路等の機能を含んで構成される周知構造のマイクロコンピュータであり、回転角センサ11およびその他の各種センサから入力されるパラメータに応じて、通路2の開度や弁体4の回転角を目標値に制御する。
【0036】
すなわち、制御手段10は、例えば、内燃機関の運転状態に応じて回転角の目標値を算出するとともに、回転角の現在値と目標値との差分に応じて電動機6への通電量等を制御して回転角の現在値を目標値に略一致させる。
【0037】
回転角センサ11は、例えば、回転軸8に固定された永久磁石等の磁束発生手段と、磁束発生手段が発生する磁束を検出するホールIC等の磁束検出手段とからなる周知構造を有するものである。
以上の構成により、弁装置1は、電動機6への通電を制御することで、内燃機関の運転状態に応じて通路2の開度を操作し、排気ガスの循環量を可変している。
【0038】
〔実施例の特徴〕
実施例の弁装置1の特徴を、図3〜図5を用いて説明する。
弁装置1によれば、通路2の壁15には、弁体4が全閉から開側に回転するとき、および弁体4が全閉に向かって開側から回転するときにシールリング5に摺接されてシールリング5から張力を受ける4つの突起33が設けられている。そして、シールリング5は、全ての突起33に摺接して張力を及ぼしながら回転する。
【0039】
それぞれの突起33は、弁体4およびシールリング5が全閉の回転角(全閉角)にあるときに壁15からの突出量がゼロであり、かつ、弁体4およびシールリング5が全閉角から開側に回転するときに合口隙間21や溝内隙間23が連続的に大きくなるように設けられている。つまり、突起33は、弁体4およびシールリング5の開側への回転に合わせて突出量が増大するように、また、弁体4およびシールリング5の閉側への回転に合わせて突出量が減少するように設けられている。
【0040】
また、突起33は、弁体4およびシールリング5が全開の回転角(全開角)に到達しても、シールリング5が当接することができるように設けられている。つまり、突起33は、全閉角から全開角の全ての回転角の範囲で、シールリング5が摺接することができるように、かつ、回転角が開側に移行するときに合口隙間21や溝内隙間23が連続的に大きくなるように設けられている。
【0041】
そして、シールリング5は、全閉角のときに合口隙間21や溝内隙間23が最も小さくなっており、全閉から開側に回転するときに、合口隙間21や溝内隙間23を広げながら突起33との当接を保って回転する(図4参照)。また、シールリング5は、全開角のときに合口隙間21や溝内隙間23が最も大きくなっており、全開から閉側に回転するときに、合口隙間21や溝内隙間23を狭めながら突起33との当接を保って回転する。
【0042】
また、突起33の突出量は、シールリング5が全閉角にあるときのみゼロであるから、弁体4およびシールリング5が全閉角からわずかに開側に回転しても、シールリング5は、弁体4の周縁と壁15との間の封鎖を維持しなくなり、排気ガスが流れるようになる。そして、突起33は、全閉角から全開角の全ての回転角の範囲において、排気ガスの循環量が回転角に対してリニアに増加するように設けられている(図5参照)。
【0043】
このため、弁装置1によれば、従来の弁装置100に存在した第1、第2境界角に相当する回転角では、弁装置100よりもシールリング5の広がりが突起33によって抑制され、実質的な開度が大きくなって循環量が多くなる。
【0044】
また、4つの突起33をそれぞれ突起33a、33b、33c、33dとすると(図3参照)、ノズル3を上流側から見たときに、弁体4の回転中心の周囲に右回りに突起33a、突起33b、突起33c、突起33dが順次配置されている。また、突起33a、33cは、弁体4およびシールリング5が全閉角にあるときに、弁体4の上流側に存在し、突起33b、33dは、弁体4およびシールリング5が全閉角にあるときに、弁体4の下流側に存在する。
【0045】
さらに、突起33a、33cは、弁体4の回転中心を対称中心として点対称となるように設けられ、突起33b、33dも、弁体4の回転中心を対称中心として点対称となるように設けられている。
なお、弁体4の周縁の回転軌跡面は、突起33a〜33dの内周縁の内側に存在する。
【0046】
〔実施例の効果〕
実施例の弁装置1によれば、通路2の壁15には突起33が設けられ、突起33は、全閉角と全開角との間の全ての回転角においてシールリング5が摺接して張力を及ぼすことができるように設けられている。
これにより、シールリング5は、壁15に直接的に摺接することなく、突起33に摺接して合口隙間21や溝内隙間23の広がりを抑制されながら回転することができる。このため、従来の弁装置100で発生していた壁15とシールリング5との衝突が発生しなくなるので、シールリング5および壁15における磨耗の進行を大幅に抑制することができる。
【0047】
また、摺動面が突起33の内周縁に限定されるので、シールリング5と突起33との摺動摩擦は存在するものの、従来の弁装置100で発生していたシールリング5と壁15との摺動摩擦に比べて、磨耗の範囲も極めて限定的なものとなる。このため、仮に磨耗が進行しても、従来の弁装置100に比べて漏れ量を大幅に抑制することができる。
また、突起33は、排気ガスの循環量と回転角とがリニアな相関を有するように設けられているので、例えば、循環量の可変制御をより容易に行なうことができる。
【0048】
また、壁15には4つの突起33a〜33dが設けられ、シールリング5は、突起33a〜33dの全てに摺接して張力を及ぼしながら回転する。
これにより、合口隙間21や溝内隙間23の広がりを抑制してシールリング5が壁15に直接的に摺動しないように、突起33を設定するのが容易になる。
【0049】
また、突起33は、弁体4およびシールリング5が全閉角にあるときに壁15からの突出量がゼロであり、かつ、弁体4およびシールリング5が全閉角から開側に回転するときに合口隙間21が連続的に大きくなるように設けられている。
これにより、全閉において流体の通過量を確実にゼロにすることができる。
さらに、弁体4の周縁の回転軌跡面は、4つの突起33a〜33dの内周縁の内側に存在するので、弁体4を確実に突起33a〜33dの内側で回転させることができる。
【0050】
〔変形例〕
弁装置1の態様は、実施例に限定されず種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例の弁装置1によれば、壁15には4つの突起33a〜33dが設けられていたが、突起33の設置数は3つ以上であればよく、4つに限定されない。
【0051】
また、実施例の弁装置1によれば、弁体4は、回転軸8が一方の面にのみ固定されている片軸のバタフライ弁であったが、図6に示すように、両方の面から回転軸8が正反対の方向に伸びる両軸のバタフライ弁を弁体4として採用してもよい。
【0052】
さらに、実施例の弁装置1によれば、弁体4は、回転軸8が弁体4の面方向に対して所定の角度だけ傾斜した状態で弁体4に固定されている斜めのバタフライ弁であったが、図7に示すように、回転軸8が弁体4の片方の面に面方向と平行に固定されたオフセット弁を弁体4として採用してもよい。
【0053】
さらに、実施例の弁装置1は、排気ガスの循環量を可変するためのEGR弁装置に採用されていたが、他の流体の流量を可変するための弁装置に採用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 弁装置
2 通路
3 ノズル(通路形成体)
4 弁体
5 シールリング
15 壁(通路の壁)
20 溝
21 合口隙間(周方向隙間)
33、33a〜33d 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の通路を有する通路形成体と、
前記通路に回転自在に収容されて前記通路の開度を可変する板状の弁体と、
前記通路の開度が全閉のときに前記弁体の周縁と前記通路の壁との間を封鎖するシールリングとを備え、
このシールリングは、C字状に設けられて自身の周方向に対向する2つの端面により周方向隙間を形成するとともに、前記弁体の周縁に設けられた環状の溝に嵌まって前記弁体とともに回転し、全閉のときには、前記通路の壁に環状に当接して前記周方向隙間が縮まるように弾性変形しており、
前記通路の壁には、前記弁体が全閉から開側に回転するとき、および前記弁体が全閉に向かって開側から回転するときに前記シールリングに摺接されて前記シールリングから張力を受ける突起が設けられていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記通路の壁には3つ以上の前記突起が設けられ、
前記シールリングは、全ての前記突起に摺接して張力を及ぼしながら回転することを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の弁装置において、
前記通路の開度が全閉のときに前記周方向隙間が最も小さくなっており、
前記突起は、前記弁体および前記シールリングが全閉の回転角にあるときに前記通路の壁からの突出量がゼロであり、かつ、前記弁体および前記シールリングが全閉の回転角から開側に回転するときに前記周方向隙間が連続的に大きくなるように設けられていることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載の弁装置において、
前記弁体の周縁の回転軌跡面は、前記突起の内周縁の内側に存在することを特徴とする弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−202545(P2012−202545A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70625(P2011−70625)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】