説明

弁装置

【課題】弁体の振動を防止する防振ばねの弁開閉方向の寸法を短縮して弁装置の小型化を図る。
【解決手段】弁本体30には、弁室35とオリフィス32aとが形成されている。弁体ユニット50において、オリフィス32aに接離して流量を調節する弁体58は、弁支持体53によって支持されており、圧縮コイルばね8cによってオリフィス32aを閉じる閉弁方向に付勢されている。弁支持体51は、弁体58を支持する弁押え部53と、弁押え部53に一体的に形成されるとともに弁室35の側面35aに沿って弁開閉方向と交差する方向に延びる複数のばね腕部54とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリフィスを流れる流量を制御可能な弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の空気調和装置等の冷凍サイクルに膨張弁が使用されている。膨張弁は、蒸発器に送り込まれる高圧の液相冷媒が通る高圧冷媒通路の途中を細く絞って形成されたオリフィスに対して上流側から対向するように弁体を配置した構造を有しており、エバポレータから送り出される低圧の気相冷媒の温度と圧力に対応して弁体を開閉動作させることで、オリフィスを通過する冷媒流量を制御するようになっている。
【0003】
図7は、従来の膨張弁の一例を示す縦断面図である。膨張弁5は、エンジンにより駆動されるコンプレッサ2と、該コンプレッサ2の吐出側に接続されるコンデンサ(凝縮器)3と、コンデンサ3に接続されるレシーバ4と、レシーバ4に接続されるエバポレータ(蒸発器)6とから構成される冷凍サイクル1内に組み込まれており、レシーバ4からの液相冷媒を断熱膨張させるために用いられている。
【0004】
図7に示す膨張弁5では、弁本体30は、基本的にはエバポレータ6に送り込まれる高圧冷媒が通る高圧側流路32bと低圧側流路32cとの間に形成されたオリフィス32aと、オリフィス32aに冷媒の上流側から対向するように配置された球状の弁体8と、弁体8を上流側からオリフィス32aに向けて付勢するための付勢手段としての圧縮コイルばね8cと、弁体8を支持し且つ圧縮コイルばね8cの付勢力を弁体8に伝えるための弁支持体8aと、エバポレータ6から送り出される低圧冷媒の温度に対応して動作するパワーエレメント部36と、このパワーエレメント部36と弁体8との間に配置され、感温棒と作動棒とが一体に形成されるとともにオリフィス32aを貫通する感温駆動部318とを備えており、パワーエレメント部36の動作に応じて弁体8をオリフィス32aに対して接離させることにより、オリフィス32aを通過する冷媒流量を制御する。
【0005】
パワーエレメント部36は、可撓性のある金属製薄板であるステンレス製のダイアフラム36aと、このダイアフラム36aを挟んで互いに密着して設けられ、ダイアフラム36aを一壁面として、その上下に区画された二つの圧力室としての上部圧力作動室36b及び下部圧力作動室36cをそれぞれ構成するステンレス製の上カバー36d及び下カバー36hと、上部圧力作動室36bにダイアフラム駆動媒体となる所定冷媒を封入するための孔を塞ぐ栓体36iとを備えている。下部圧力作動室36cは、均圧孔36eを通じてエバポレータ6からの低圧冷媒が流れる第2の通路34に連通されている。下カバー36hには筒状の取付座362が形成されおり、パワーエレメント部36は、取付座362がねじ孔361に螺着されることにより、弁本体30に固定されている。
【0006】
感温駆動部318は、例えばステンレス製の細径のロッド部316として構成されている。ロッド部316と別体に構成されている受け部36kは、ダイアフラム36aの下面に当接される端部が径方向に拡大されたストッパ部312と、中央部に突起部315を形成して下部圧力作動室36c内に摺動自在に挿入される摺動部314とからなっている。さらに、ロッド部316の上端は大径部314の突起部315の内部に嵌合し、その下端は弁体8に当接している。
【0007】
感温棒を構成するロッド部316は、弁本体30における低圧側流路32cと第2の通路34との間に形成された貫通孔を貫通しているので、この貫通孔との間のクリアランスを通じて冷媒が流れるのを防止するため、ロッド部316の外周に密着するOリング40及びストッパ部材41を貫通孔の大径の孔38内に配置している。また、弁室35は、オリフィス32aと同軸に形成される有底の室であり、弁本体30と螺合する調整ねじ8bと弁本体30との間に配設されるOリング8dにより、気密が保持されて密閉されている。弁室35は高圧側通路32bに連通し、また、オリフィス32aを通じて低圧側流路32cに連通する。
【0008】
さらに、弁室35内には、弁体8を支持する機能を有する弁支持体8aを介して弁体8を閉弁方向に押圧する付勢手段としての圧縮コイルばね8cが配置されており、圧縮コイルばね8cの上端は弁支持体8aの鍔状の係止部分8a1に係止され、その下端は調整ねじ8bに支持されている。
【0009】
冷凍サイクル1においては、上流側で発生した圧力変動が高圧の液冷媒を媒体として膨張弁5に伝達されることに起因して、弁体8の動作が不安定になり、冷媒の流量制御が正確に行われなくなる、或いは弁体8の振動により騒音が発生する、というような不具合が生じる。こうした不具合に対処するため、弁支持体8aに取り付けられるとともに弁室35の側面に弾性的に当接する防振ばね8fを設けて、弁体8の動作の安定化と振動防止とを図っている。防振ばね8fは、圧縮コイルばね8cを係止するために弁押え8aに一体に形成された係止部分8a1と圧縮コイルばね8cの上端との間に、防振ばね8fの円板部8f1を、その中央の穴8f3に弁支持体8aの本体部分を挿入した状態で挟持することで、弁支持体8aに取り付けられている。防振ばね8fは、円板部8f1と一体にその外周に複数個(例えば、8本)のばね腕部8f2が形成されており、ばね腕部8f2の先端部分が弁室35の側面に弾性的に当接している。
【0010】
しかしながら、上記したような防振ばね8fは、弁室35内に8本のばね腕部8f2が縦方向に延びる構造を有している。一方で、膨張弁5の弁本体30の体格縮小化に伴う弁室35の小型化が進んでおり、こうした小型化された弁室35を備える膨張弁においては、縦寸法の長い防振ばね8fを弁室35内に取り付けるスペースを確保することが困難になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−156046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、オリフィスを開閉する弁体の振動を防止する防振ばねを備えた弁装置において、防振ばねの弁開閉方向寸法を縮小することにより、弁装置を小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明による弁装置は、オリフィス及び当該オリフィスに連なる弁室とを有する弁本体と、前記弁室内に配置されるとともに前記オリフィスに接離して前記オリフィスを流れる流体の量を調節する弁体と、該弁体の振動を防止する防振ばねとを備えた弁装置であって、前記防振ばねは、前記弁室の壁面に弾性的に当接する複数のばね腕部を有しており、該複数のばね腕部は、前記弁室の壁面に沿って前記弁体の開閉方向と交差する方向に延びるように形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に用いる防振ばねのばね腕部は、弁室の壁面に沿って弁体の開閉方向と交差する方向に延びるように形成されるので、弁室の開閉方向の寸法が短縮され、弁本体を小型化して弁装置の寸法を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による弁装置に用いられる弁体ユニット(弁体と弁支持体と防振ばねから成るユニット)の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明による弁装置に用いられる弁体ユニットの別の例を示す斜視図である。
【図3】本発明による弁装置に用いられる弁体ユニットの更に別の例を示す斜視図である。
【図4】本発明による弁装置に用いられる弁体ユニットの更に別の例を示す斜視図である。
【図5】図1に示す弁体ユニットを備える弁装置の一部を破断して示す図である。
【図6】図5の一部を拡大して示す図である。
【図7】従来の膨張弁の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面に基づいて、本発明による弁装置の実施例を説明する。図1は、本発明による弁装置に用いられる弁体と弁支持体と防振ばねから成る弁体ユニットの一例を示す斜視図である。本実施例において、図7に示す例と対応する部分には同一の符号を付してあり、重複する説明は省略するものとする。
【0017】
図1に示す弁体ユニット50は、弁体58と、当該弁体58を支持する弁支持体51と、防振ばね52とから成っている。弁支持体51は、弁体58を上面中央部分に支持する円盤状の弁押え部53を有している。防振ばね52は、弁体58の振動を防止する複数のばね腕部54を有しており、ばね腕部54は、弁押え部53の外周縁の複数箇所においてそれぞれ形成された折り曲げ部分を介して弁押え部53と一体に形成されている。弁支持体51及び防振ばね52は金属板をプレス加工することによって一体に形成されている。
【0018】
弁押え部53は、その上面中央部分に凹部を形成し、当該凹部に安定的に着座した弁体58を溶接等で当該凹部に固定することで弁体58を支持している。防振ばね52の各ばね腕部54は、弁押え部53の外周縁から弁体58の開方向にオフセットした位置において鉤状に折れ曲がった状態に形成されている。各ばね腕部54において、下腕部分55は、弁室35(図5、6参照)の側壁面35aに沿って弁体58の開閉方向と交差する横方向に延びており、先端に向かうほど、弁押え部53を横断断面形状とする仮想の円筒面から次第に外側に離れていき、先端の滑らかな突起部分56が弁室35の側壁面35aに弾性的に当接している。図示の例では、下腕部分55は真っ直ぐに横方向に延びている。
【0019】
各ばね腕部52は、横方向に張り出しているので、従来の防振ばねのばね腕部が縦方向に延びるのに対して、上下寸法の縮小を図ることができる。また、各ばね腕部54は、弁体58を支持する弁押え部53と一体に形成されているので、従来の弁支持体と防振ばねとの組合せと比べて、部品点数や組立工数を低減することができるのみならず、製造コストの低減をも図ることができる。
【0020】
図5は図1に示す弁体ユニット50を組み込んだ弁装置の一部を破断して示す斜視図であり、図6は図5に示す図の一部を拡大して示す斜視図である。弁体ユニット50は、弁室35内に収容されており、弁本体30の下端にねじ込まれる調整ねじ8bと弁体ユニット50との間には付勢手段としての圧縮コイルばね8cが介装されているので、弁体58は圧縮コイルばね8cによってオリフィス32aを閉じる方向に付勢されている。圧縮コイルばね8cの上端部は、弁支持体51の弁押え部53に対して下側から当接するとともに、その周囲が複数のばね腕部54によって取り囲まれている。
【0021】
ばね腕部54は横方向に延びているので、弁支持体51は、高圧側流路32bにおける弁室35と繋がるポート32b1よりも上方に配置することができる。したがって、ばね腕部54は、ポート32b1から弁室35に流入する冷媒の流れに対して抵抗とならないので、弁室35内を流れる高圧冷媒の圧損を一層低減させることができるとともに、騒音についても低減することができる。
【0022】
図2は、本発明による弁装置に用いられる弁体ユニットの別の例を示す斜視図である。図2に示す弁体ユニット60は、図1に示す弁体ユニット50の変形例であり、球状の弁体68と、当該弁体68を支持する弁支持体61と, 防振ばね62とから成っている。弁支持体61は、弁体68を上面中央部分に支持する円盤状の弁押え部63と、弁体68の振動を防止する複数のばね腕部64とを有している。防振ばね62は、弁押え部63の外周縁から弁体68の開方向に延びる円筒形状の筒状部65を有している。弁押え部63と筒状部65とは、金属板のプレス成形によって一体に形成されている。ばね腕部64は、筒状部65の複数箇所において、径方向に切り起こして形成されている。詳細には、ばね腕部64は、弁押え部63から筒状部65の軸線方向にオフセットした位置に設けられている。ばね腕部64の先端部分には突起部分66が形成されており、この突起部分66は弁室35(図5参照)の側壁面35aに弾性的に当接する。
【0023】
図3は、本発明による弁装置に用いられる弁体ユニットの更に別の例を示す斜視図である。図3に示す弁体ユニット70は、弁体78が弁支持体71と一体に形成されている。それ以外については図1に示す例と同等であるので、同じ部位には同じ符号を付すことで再度の詳細な説明については省略する。本例では、弁体78は、弁支持体71の弁押え部72の中央部分において弁押え部72と一体に上方に膨出したドーム状に成形されている。弁体78の形状はドーム状に限ることはなく、半球状の膨出部や、或いは円錐台、角錐台等のプレス成形に適したものであれば適宜の形状に形成することができる。
【0024】
弁体78を弁押え部72と一体に成形することにより、従来のように弁支持体と別体で製作した球状の弁体を溶接等で弁支持体に固定する工程を省略することができる。
【0025】
図4は、本発明による弁装置に用いられる弁体ユニットの更に別の例を示す斜視図である。図4に示す弁体ユニット80は、弁体88が弁支持体81と別体に製作した球状の弁体ではなく、図3に示す例の場合と同様に、弁支持体81と一体に形成されている。具体的には、弁体88は弁支持体81の弁押え部82と一体に上方に膨出したドーム状に成形されている。また、防振ばね62は、図2に示す例と同様の構造であるので、対応する部位には同じ符号を付すことで再度の説明を省略する。弁体88を弁支持体81と一体に成形することにより、従来のように弁支持体と別体で製作した球状の弁体を溶接等で弁支持体に固定する工程を省略することができる。
【0026】
上記実施例では、防振ばねは弁支持体と一体に形成されているが、本発明は、かかる実施例にのみに限るのではなく、弁支持体と防振ばねが別々に形成されていてもよいことは明らかである。
また、本発明が適用される弁装置は膨張弁に限られるものではなく、オリフィスを通過する流体の流量を制御する弁体と弁体の振動を抑制する防振ばねを有する弁装置であれば、どのような弁装置にも適用できる。
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施例に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 冷凍サイクル 2 コンプレッサ
3 コンデンサ(凝縮器) 4 レシーバ
8c 圧縮コイルばね
30 弁本体 32a オリフィス
32b 高圧側流路 32b1 ポート
35 弁室
51,61,71,81 弁支持体
53,63,72,82 弁押え部
52,62 防振ばね
54,64 ばね腕部
58,68,78,88 弁体
65 筒状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリフィス及び当該オリフィスに連なる弁室を有する弁本体と、前記弁室内に配置されるとともに前記オリフィスに接離して前記オリフィスを流れる流体の量を調節する弁体と、前記弁体の振動を防止する防振ばねとを備えた弁装置であって、
前記防振ばねは、前記弁室の壁面に当接する複数のばね腕部を有しており、該複数のばね腕部は、前記弁室の壁面に沿って前記弁体の開閉方向と交差する方向に延びるように形成されることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記弁体を支持する弁支持体を備え、前記防振ばねは前記弁支持体と一体に形成されることを特徴とする請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記ばね腕部は、前記弁支持体の外周縁から前記弁体の開方向にオフセットした位置において鉤状に折れ曲がった状態に形成されることを特徴とする請求項2記載の弁装置。
【請求項4】
前記防振ばねは、前記弁支持体の外周縁から前記弁体の開方向に延びる筒状部を有しており、前記ばね腕部は、前記筒状部の一部を切り起こすことにより形成されることを特徴とする請求項2記載の弁装置。
【請求項5】
前記弁支持体を前記弁体の閉方向に付勢するコイルばねを備えており、該コイルばねの一端が前記ばね腕部に囲まれた状態で前記弁支持体に当接することを特徴とする請求項3又は4記載の弁装置。
【請求項6】
前記弁体が前記弁支持体に一体に形成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項記載の弁装置。
【請求項7】
前記防振ばねは、金属板をプレス加工することにより形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の弁装置。
【請求項8】
前記弁装置は、凝縮器で凝縮するとともに前記弁室内に導入される高圧の液相冷媒を前記オリフィスで減圧するとともに、蒸発器で蒸発した低圧の気相冷媒の温度に基いて前記弁体を開閉制御する温度式の膨張弁であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の弁装置。
【請求項9】
前記防振ばねは、前記液冷媒を前記弁室内に導入する高圧側流路のポートに対して前記オリフィス側にオフセットした位置に配置されることを特徴とする請求項8記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68368(P2013−68368A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207528(P2011−207528)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】