説明

弁開度制御装置

【課題】操作器を大型化することなく、また安価なシステム構成で、十分な回転トルクを得る。連続的な弁開度の制御を行い、弁開度の早急な変更にも対応できるようにする。
【解決手段】ハウジング1の内壁面1bに、例えば90゜の角度間隔で、内部空間1aの中心部に向けて仕切壁1cを設ける。ロータ胴2aの周面に、仕切壁1cによって仕切られる内部空間1aの各分割空間1dに1つずつ位置しその分割空間1dを第1の圧力室R1と第2の圧力室R2に区画するベーン(回転翼)2bを形成する。ハウジング1に、分割空間1d毎に、圧縮空気AR1を第1の圧力室R1に導く圧縮空気導入口H1と、圧縮空気AR2を第2の圧力室R2に導く圧縮空気導入口H2を設ける。圧縮空気AR1およびAR2をポジショナ400から供給し、ロータ2の駆動軸2cに連結された弁体を回転させ、その弁体の実開度を設定開度に一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力流体の供給を受けて弁体を駆動する操作器と、圧力流体を操作器へ供給し弁体の開度を制御するポジショナとを備えた弁開度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の部材を初期位置と所定の角度位置との間で回転変位させる装置として、ロータリアクチュエータが知られている。このロータリアクチュエータは、ハウジングと、このハウジングの内部空間に回転自在に設けられたロータとを備え、内部空間に圧力流体を導くことによってロータの回転位置を変位させる。
【0003】
例えば、特許文献1に示されたロータリアクチュエータでは、ハウジングの内部空間に1個のベーン(回転翼)を有するロータを回転自在に設け、このロータのベーンによってハウジングの内部空間を2つの圧力室に区画し、一方の圧力室に圧縮空気を導くことによってロータを時計方向に回転させ、他方の圧力室に圧縮空気を導くことによってロータを反時計方向に回転させるようにしている。このロータリアクチュエータにおいて、ベーンの回転角度位置は、圧力室に突出可能に設けられた複数のストッパのうちの1つを突出させることによって規制される。
【0004】
【特許文献1】実開平6−40414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示されたロータリアクチュエータによると、ベーンが1枚であるので十分な回転トルクを得ることができない。このロータリアクチュエータにおいて、十分な回転トルクを得るためには、ベーンの面積を大きくしたり、圧縮空気の圧力を高圧としたり、圧縮空気の供給量を増大させたりしなければならず、ベーンの面積を大きくすると、ロータリアクチュエータが大型となる。また、圧縮空気の圧力を高圧としたり、圧縮空気の供給量を増大させたりすると、システム構成が高価となる。
【0006】
また、上述した特許文献1に示されたロータリアクチュエータを操作器とし、ポジショナから操作器へ圧力流体を供給して弁体を駆動するようにした場合、複数のストッパのうちの1つを圧力室の内部に突出させることによってベーンの回転角度位置を規制するので、連続的な任意の開度に弁体の開度(弁開度)を制御することができない。また、弁開度を変更する場合、ベーンの回転角度位置を規制している現在のストッパを圧力室の内部から引っ込める動作と、新たに設定された弁開度に対応するストッパを圧力室の内部に突出させる動作が必要となる。このため、弁開度の早急な変更に対応することができない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、操作器を大型化することなく、また安価なシステム構成で、十分な回転トルクを得ることができ、かつ連続的な弁開度の制御を行い、弁開度の早急な変更にも対応することができる弁開度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために本発明は、圧力流体の供給を受けて弁体を駆動する操作器と、圧力流体を操作器へ供給し弁体の開度を実開度と設定開度とが一致するように制御するポジショナとを備えた弁開度制御装置において、操作器を、軸線に垂直な断面が略環状の内壁面とこの内壁面から軸に向けて突出し一体的に形成された複数の仕切壁とを有するハウジングと、このハウジングの軸線回りに回転自在に設けられたロータとを備えた構成とし、ロータに、隣り合う2つの仕切壁によって仕切られる各分割空間に1つずつ位置しその分割空間を第1の圧力室と第2の圧力室とに区画する回転翼を設け、ハウジングに、分割空間の第1および第2の圧力室の少なくとも一方に圧力流体を導く流体圧力導入部を設ける一方、ポジショナを、弁体に対する設定開度に応じた入力信号と操作器からの弁体の実開度に応じたフィードバック信号とから弁体の設定開度と実開度との差に応じた電気信号を生成する制御部と、この制御部からの電気信号を空気圧信号に変換する電空変換部と、この電空変換部からの空気圧信号を増幅し圧力流体として操作器の流体圧力導入部に供給する空気圧信号増幅部とを備えた構成としたものである。
【0009】
この発明において、例えば、操作器に、各分割空間の第1の圧力室に圧力流体を導く流体圧力導入口(第1の流体圧力導入口)を流体圧力導入部として設けると、この第1の流体圧力導入口から各分割空間の第1の圧力室にポジショナからの圧力流体が導かれ、各分割空間に1つずつ位置するロータの回転翼(ベーン)の各々に圧力流体の圧力が加わり、この加えられた圧力の方向(第1の回転方向)にロータが回転する。すなわち、各回転翼の面積の総和を受圧面積として、ロータが第1の回転方向に回転する。
【0010】
また、この発明において、例えば、操作器に、各分割空間の第2の圧力室に圧力流体を導く流体圧力導入口(第2の流体圧力導入口)を流体圧力導入部として設けると、この第2の流体圧力導入口から各分割空間の第2の圧力室にポジショナからの圧力流体が導かれ、各分割空間に1つずつ位置するロータの回転翼(ベーン)の各々に圧力流体の圧力が加わり、この加えられた圧力の方向(第1の回転方向とは逆向きの方向(第2の回転方向))にロータが回転する。すなわち、各回転翼の面積の総和を受圧面積として、ロータが第2の回転方向に回転する。
【0011】
この発明において、操作器に設ける流体圧力導入部は、第1の流体圧力導入口および第2の流体圧力導入口の両方としてもよいし、第1の流体圧力導入口あるいは第2の流体圧力導入口のみとしてもよい。また、第1の流体圧力導入口や第2の流体圧力導入口は、全ての分割空間に対して設けるようにしてもよいし、所定の分割空間に対してのみ設けるようにしてもよい。また、本発明において、圧力流体を実際に導入する流体圧力導入口の数を選択するようにすれば、回転トルクを段階的に可変とすることが可能である。
【0012】
本発明において、流体圧力導入部として、第1の流体圧力導入口と第2の流体圧力導入口を設けるようにした場合、第1の流体圧力導入口へ導入する圧力流体の圧力値と第2の流体圧力導入口へ導入する圧力流体の圧力値とを調整することにより、ロータを第1の回転方向および第2の回転方向の連続的な任意の位置に停止させることができる。これにより、弁体の実開度を正逆両方向から設定開度に合わせ込むことが可能となり、連続的な任意の開度に弁開度を制御することができる複動型の弁開度制御装置が得られる。
【0013】
本発明において、流体圧力導入部として、分割空間の第1および第2の圧力室の何れか一方の圧力室に圧力流体を導く流体圧力導入口を設け、更に、流体圧力導入口から一方の圧力室に圧力流体が導かれた場合にロータが回転する方向(第1の回転方向)とは逆向きの方向(第2の回転方向)への付勢力をロータに付与する復帰バネを設けるようにしてもよい。このようにすることによっても、弁体の実開度を正逆両方向から設定開度に合わせ込むことが可能となり、連続的な任意の開度に弁開度を制御することができる複動型の弁開度制御装置が得られる。
【0014】
この場合、流体圧力導入口から一方の圧力室に導かれている圧力流体が消失すると、復帰バネの付勢力によってロータが第2の回転方向へ回転し、初期の回転位置に復帰する。これにより、操作器への圧力流体の供給が事故等で遮断されたときに、強制的に弁体を全開又は全閉状態にすることができる。また、復帰バネを設けるようにすると、ロータの回転位置を初期の回転位置に復帰させるための圧力流体の供給源を必要としないので、圧力流体の供給源が1系統で済む。また、圧力流体の導入口を半分に削減することも可能である。また、弁開度の制御に際し、操作器への圧力流体の供給量を削減できて、省エネルギーとなる。
【0015】
本発明において、復帰バネを設ける場合、第1の回転方向は、時計方向であってもよいし、反時計方向であってもよい。第1の回転方向を時計方向とした場合、流体圧力導入口から一方の圧力室に導かれている圧力流体が消失すると、ロータは復帰バネの付勢力によって反時計方向へ回転する。第1の回転方向を反時計方向とした場合、流体圧力導入口から一方の圧力室に導かれている圧力流体が消失すると、ロータは復帰バネの付勢力によって時計方向へ回転する。
【0016】
また、本発明において、復帰バネを設ける場合、他方の圧力室に対して流体圧力排出口を設け、一方の圧力室に導かれる圧力流体によって圧縮される第2の圧力室内の流体を排出させるようにしてもよい。復帰バネを設ける場合、他方の圧力室に対して流体圧力排出口を設けないものとすると、一方の圧力室に導かれる圧力流体によって他方の圧力室内の流体が圧縮され、ロータの回転速度が落ちたり、回転可能範囲が狭まったりする。他方の圧力室に対して流体圧力排出口を設けるようにすれば、一方の圧力室に導かれる圧力流体によって圧縮される他方の圧力室内の流体を排出させ、ロータの回転速度を速めたり、ロータの回転可能範囲を広くすることが可能となる。
【0017】
また、本発明において、ロータの軸を弁体の弁軸に連結し、ロータの軸と弁体の弁軸との間の連結部に、ロータの軸の回転ストロークを弁体の弁軸の回転ストロークに調整するストローク調整機構を設けるようにしてもよい。本発明では、回転トルクを増大させることができるが、ロータの軸の回転範囲(回転ストローク)は狭くなる。そこで、ロータの軸と弁体の弁軸との間の連結部に、ロータの軸の回転ストロークを弁体の弁軸の回転ストロークに調整するストローク調整機構を設けるようにすれば、ロータの軸の回転範囲を弁体の弁軸の回転範囲に対応させることができるようになる。
【0018】
この場合、ストローク調整機構として、ロータの軸に連結された外輪歯車と、この外輪歯車に噛合する遊星歯車と、この遊星歯車を軸支する遊星キャリアと、この遊星キャリアに軸支された遊星歯車と噛合し弁体の弁軸に連結された太陽歯車とで構成される遊星歯車機構を用いることが考えられる。ストローク調整機構として遊星歯車機構を用いると、ロータの軸と弁体の弁軸を同軸にすることができて、軸と直交する方向にスペースをとらない構造とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、操作器を、軸線に垂直な断面が略環状の内壁面とこの内壁面から軸に向けて突出し一体的に形成された複数の仕切壁とを有するハウジングと、このハウジングの軸線回りに回転自在に設けられたロータとを備えた構成とし、ロータに、隣り合う2つの仕切壁によって仕切られる各分割空間に1つずつ位置しその分割空間を第1の圧力室と第2の圧力室とに区画する回転翼を設け、ハウジングに、分割空間の第1および第2の圧力室の少なくとも一方に圧力流体を導く流体圧力導入部を設けるようにしたので、例えば、操作器の各分割空間の第1の圧力室にポジショナからの圧力流体を導いて、各分割空間に1つずつ位置するロータの回転翼の各々に圧力流体の圧力を加えるようにして、受圧面積を増大させ、ロータの回転翼の面積を大きくすることなく、また圧力流体の圧力を高圧としたり、圧力流体の供給量を増大させたりすることなく、回転トルクを増大させることが可能となる。これにより、操作器を大型化することなく、安価なシステム構成で、十分な回転トルクを得ることができるようになる。
【0020】
また、本発明によれば、弁体に対する設定開度に応じた入力信号と操作器からの弁体の実開度に応じたフィードバック信号とから弁体の設定開度と実開度との差に応じた電気信号を生成し、この電気信号を空気圧信号に変換し、この空気圧信号を増幅し圧力流体としてポジショナから操作器の流体圧力導入部に供給するようにしたので、例えば、第1の流体圧力導入口へ導入する圧力流体の圧力値と第2の流体圧力導入口へ導入する圧力流体の圧力値とを調整したり、復帰バネの付勢力に抗して導入する流体圧力導入口への圧力流体の圧力値を調整したりするなどして、ロータの回転角度位置を連続的に調整し、連続的な任意の開度に弁開度を制御することが可能となる。また、圧力流体の圧力値の調整のみでロータの回転角度位置を連続的に調整することができるので、弁開度の早急な変更にも対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。先ず、本発明に係る弁開度制御装置の説明に入る前に、この弁開度制御装置で用いる操作器について説明する。
【0022】
なお、本発明に係る弁開度制御装置は、図5にその概略構成を示すように、圧力流体の供給を受けて弁体4を駆動する操作器300と、圧力流体を操作器300へ供給し弁体4の開度を制御するポジショナ400とで構成される。ポジショナ400は圧力流体として圧縮空気ARを操作器300へ供給する。
【0023】
〔操作器:第1例〕
図1は本発明に係る弁開度制御装置で用いる操作器300の第1例の要部を示す図である。この操作器300は、ハウジング1と、このハウジング1の内部空間1aに回転自在に設けられたロータ2とを主要構成要素とする。以下、この第1例の操作器300を符号301で示し、後述する他の例の操作器と区別する。
【0024】
図1において、L1は操作器301への第1の圧縮空気AR1の供給ライン、L2は操作器301への第2の圧縮空気AR2の供給ライン、BS1は第1の圧縮空気AR1の供給ラインL1中に設けられたブースタ、BS2は第2の圧縮空気AR2の供給ラインL2中に設けられたブースタである。操作器301は、ラインL1からの圧縮空気AR1およびラインL2からの圧縮空気AR2の供給を受けて動作する。この圧縮空気AR1およびAR2はポジショナ400からブースタBS1およびBS2を介して供給される。
【0025】
操作器301において、ハウジング1は円筒状とされており、その環状の内壁面1bで囲まれた空間が内部空間1aとされている。この環状の内壁面1bには、90゜の角度間隔で、内部空間1aの中心部に向けて一体的に突出して形成された仕切壁1c(1c1〜1c4)が設けられている。
【0026】
ロータ2は、その駆動軸2cが内部空間1aの中心部に位置し、そのロータ胴2aの周面に、仕切壁1cによって仕切られる内部空間1aの各分割空間(扇形の空間)1d(1d1〜1d4)に1つずつ位置しその分割空間1dを第1の圧力室R1と第2の圧力室R2に区画するベーン(回転翼)2b(2b1〜2b4)を備えている。各ベーン2bの先端はハウジング1の内壁面1bまで延びている。
【0027】
ハウジング1において、各仕切壁1cの先端はロータ胴2aの周面まで延びており、各分割空間1dに面するハウジング1の内壁面1bには、その分割空間1dを形成する両側の仕切壁1cの近傍に、ストッパST1,ST2が一体的に突出して設けられている。
【0028】
また、ハウジング1には、分割空間1d毎に、ストッパST1とこのストッパST1に近接する仕切壁1cとの間に、ラインL1からの圧縮空気AR1をベーン2bで区画される第1の圧力室R1に導く第1の圧縮空気導入口H1が設けられ、ストッパST2とこのストッパST2に近接する仕切壁1cとの間に、ラインL2からの圧縮空気AR2をベーン2bで区画される第2の圧力室R2に導く第2の圧縮空気導入口H2が設けられている。
【0029】
なお、この操作器301において、ロータ胴2aと各仕切壁1cとの間の摺動面、内壁面1bとベーン2bとの間の摺動面、各分割空間1dの上下面などはシールされることにより、区切られた区画の間で空気の流入はないものとされている。また、ロータ2の駆動軸2cは、図5に示すように、弁体4の弁軸4aに連結されている。
【0030】
この操作器301において、ポジショナ400からの圧縮空気AR1は、第1の圧縮空気導入口H1から各分割空間1dの第1の圧力室R1に導かれ、ポジショナ400からの圧縮空気AR2は、ハウジング1の第2の圧縮空気導入口H2から各分割空間1dの第2の圧力室R2に導かれる。
【0031】
ここで、圧縮空気AR1の圧力値が圧縮空気AR2の圧力値よりも高いと、その圧力差に応じた力が各分割空間1dに位置するベーン2bの各々に加わり、ロータ2が反時計方向に回転する。圧縮空気AR2の圧力値が圧縮空気AR1の圧力値よりも高いと、その圧力差に応じた力が各分割空間1dに位置するベーン2bの各々に加わり、ロータ2が時計方向に回転する。そして、第1の圧力室R1内の圧力と第2の圧力室R2内の圧力とが釣り合った位置で、ロータ2の回転が停止する。
【0032】
この操作器301では、ロータ2の各ベーン2bの面積の総和が受圧面積となるので、ベーン2bの面積を大きくすることなく、また圧縮空気AR1,AR2の圧力を高圧としたり、圧縮空気AR1,AR2の供給量を増大させたりすることなく、回転トルクを増大させることができるようになる。これにより、操作器301の大型化が避けられ、安価なシステム構成で、十分な回転トルクを得ることができる。
【0033】
また、この操作器301では、ポジショナ400からの圧縮空気AR1の圧力値と圧縮空気AR2の圧力値とを調整することにより、ロータ2を時計方向および反時計方向の連続的な任意の位置に停止させることができる。これにより、弁体4(図5)の実開度を正逆両方向から設定開度に一致させることが可能となり、連続的な任意の開度に弁開度を制御することができる複動型の弁開度制御装置が得られる。
【0034】
〔操作器:第2例〕
次に、操作器の第2例について説明する。上述した操作器301(操作器の第1例)では、圧縮空気の供給系統を2系統としている。これに対して、操作器の第2例では、図2にその概略構成を示すように、復帰バネ3を設けることによって、圧縮空気の供給系統を1系統としている。以下、この第2例の操作器300を符号302で示す。
【0035】
この例では、操作器302に対して、ポジショナ400から圧縮空気AR1のみを供給するようにしている。また、復帰バネ3として、ねじりコイルバネを設け、時計方向への付勢力をロータ2に付与させている。
【0036】
この操作器302では、ポジショナ400からの圧縮空気AR1が、ハウジング1に設けられた圧縮空気導入口H1から各分割空間1dの第1の圧力室R1に導かれる。これにより、各分割空間1dに位置するロータ2のベーン2bの各々に圧縮空気AR1の圧力が加わり、この加えられた圧力の方向(反時計方向)に、復帰バネ2の時計方向への付勢力に抗して、ロータ2が回転する。
【0037】
この場合、ロータ2の回転によって各分割空間1dの第2の圧力室R2内の空気が圧縮されるが、この第2の圧力室R2内の空気は圧縮空気導入口H2から排出されるので、ロータ2の素速い回転動作が得られる。なお、この操作器302では、圧縮空気導入口H2を圧縮空気排出口と呼ぶ。
【0038】
この操作器302では、圧縮空気AR1の圧力値の調整のみで、ロータ2を時計方向および反時計方向の連続的な任意の位置に停止させることができる。これにより、弁体4(図5)の実開度を正逆両方向から設定開度に一致させることが可能となり、連続的な任意の開度に弁開度を制御することができる複動型の弁開度制御装置が得られる。
【0039】
また、この操作器302では、圧縮空気AR1の供給が遮断され、圧縮空気導入口H1から各分割空間1dの第1の圧力室R1に導かれていた圧縮空気AR1が消失すると、復帰バネ3の付勢力によってロータ2が時計方向へ回転し、ロータ2が初期の回転位置に戻される。これにより、操作器302への圧縮空気AR1の供給が事故等で遮断されたときに、強制的に弁体4を全開又は全閉状態にすることができ、操作器302にフェールセーフ機能を持たせることができる。
【0040】
〔操作器:第3例〕
なお、図2に示した操作器302では、復帰バネ3によって時計方向への付勢力をロータ2に付与するようにしたが、復帰バネ3によって反時計方向への付勢力をロータ2に付与するようにしてもよい。この場合、その概略構成を図3に示すように、ポジショナ400からの圧縮空気AR2をハウジング1の圧縮空気導入口H2から各分割空間1dの第2の圧力室R2に導くようにする。この操作器303において、圧縮空気導入口H1は、圧縮空気排出口となる。
【0041】
また、図2に示した操作器302では、ハウジング1に圧縮空気排出口H2を設けるものとしたが、この圧縮空気排出口H2は必ずしも設けなくてもよい。圧縮空気排出口H2を省略すると、第2の圧力室R2内の空気が反発力として作用するので、ロータ2の回転速度が落ちたり、回転可能範囲が狭まったりするが、ハウジング1には圧縮空気導入口H1のみを設ければよく、圧縮空気の導入口を半分に削減することができる。図3に示した操作器303でも同様である。
【0042】
〔操作器:第4例〕
上述した操作器では、ハウジング1の内壁面1bに90゜の角度間隔で仕切壁1c(1c1〜1c4)を設けたが、仕切壁1cは必ずしも90゜間隔で設けなくてもよい。例えば、図4に示すように、ハウジング1の内壁面1bに45゜の角度間隔で仕切壁1c(1c1〜1c8)を設けた操作器304としてもよい。
【0043】
この場合、ロータ胴2aの周面には、仕切壁1cによって仕切られる内部空間1aの各分割空間1d(1d1〜1d8)に1つずつ位置しその分割空間1dを第1の圧力室R1と第2の圧力室R2に区画するベーン2b(2b1〜2b8)を設けるようにする。また、分割空間1d毎に、ストッパST1,ST2、第1および第2の圧縮空気導入口H1,H2を設けるようにする。
【0044】
図4に示した操作器304では、分割空間1dおよびベーン2bの数がそれぞれ8個となり、分割空間1dおよびベーン2bの数が増える。このように、分割空間1dおよびベーン2bの数を増やすことにより、操作器の回転トルクをさらに増大させることができるようになる。
【0045】
図4に示した操作器304のように、分割空間1dおよびベーン2bの数を増やすと、ロータ2の回転可能範囲が減少する。ロータ2の回転可能範囲が減少すると、ロータ2の駆動軸2cを弁体4の弁軸4aに直結させた図5に示されるような構成では、回転範囲が不足するという問題が生じることがある。
【0046】
そこで、この操作器304では、図6に示すように、ロータ2の駆動軸2cと弁体4の弁軸4aとの間の連結部に、ロータ2の駆動軸2cの回転ストローク(回転範囲)を弁体4の弁軸4aの回転ストローク(回転範囲)に調整するストローク調整機構5を設ける。
【0047】
例えば、図7に示すように、ロータ2の駆動軸2cと弁体4の弁軸4aに適当に大きさを調整した歯車5a,5bを取り付けることで、ロータ2の駆動軸2cの回転ストロークと弁体4の弁軸4aの回転ストロークとを合わせる。
【0048】
なお、ストローク調整機構5として遊星歯車機構を用いるようにすれば、ロータ2の駆動軸2cと弁体4の弁軸4aを同軸にすることができて、軸と直交する方向にスペースをとらない構造とすることができるようになる。
【0049】
遊星歯車機構とは、太陽歯車を中心として、複数の遊星歯車が自転しつつ公転する構造をもった減速機構として周知の機構であり、少ない段数で大きな減速比が得られること、大きなトルクが伝達できること、入力軸と出力軸を同軸上に配置できること、などの特徴を有する。
【0050】
遊星歯車機構の1つのユニットは、図8にその概略的な構成を示すように、太陽歯車5−1と、遊星歯車5−2と、遊星歯車5−2の公転運動を拾う遊星キャリア5−3と、外輪歯車5−4とから構成される。
【0051】
この遊星歯車機構をストローク調整機構5として用いる場合、ロータ2の駆動軸2cに外輪歯車5−4を連結し、この外輪歯車5−4に遊星キャリア5−3に軸支された遊星歯車5−2を噛合させ、この遊星歯車5−4に太陽歯車5−1を噛合させ、この太陽歯車5−1に弁体4の弁軸4aを連結させる。
【0052】
なお、上述した操作器301〜304において、第1の圧縮空気導入口H1や第2の圧縮空気導入口H2は、所定の分割空間1dに対してのみ設けるようにしてもよい。
【0053】
また、上述した操作器301〜304において、圧縮空気を実際に導入する圧縮空気導入口H1やH2の数を選択するようにしてもよい。このようにすると、圧縮空気AR1やAR2の圧力を加えるベーン2bの数を変えて、すなわち受圧面積を変えて、操作器の回転トルクを段階的に可変とすることが可能となる。
【0054】
〔弁開度制御装置:第1例〕
図9は上述した操作器301を用いた弁開度制御装置(弁開度制御装置の第1例)をポジショナ400の構成を中心として示した模式図である。なお、この弁開度制御装置の第1例で使用するポジショナ400を符号401で示し、後述する操作器302や303用いた弁開度制御装置で使用するポジショナと区別する。
【0055】
この弁開度制御装置において、ポジショナ401は、トルクモータ部100と、圧力調整部200と、位置測定機構500と、比較演算増幅回路600とを備えている。トルクモータ部100は、電流が流れることで操作器301の駆動軸2cの回転角度位置の制御に必要なトルクを発生させる装置である。
【0056】
圧力調整部200は、トルクモータ部100で発生したトルクで作動するフラッパの動きに応じてノズルとフラッパの間隔が変化し、ノズル背圧の変化を大容量の空気圧の変化に変換して操作器301に出力する装置である。
【0057】
位置測定機構500は、操作器301の駆動軸2cの回転角度位置をフィードバックレバー501を介して測定し、弁体4の実開度θpvに応じたフィードバック信号を比較演算増幅回路600に入力する装置である。位置測定機構500のフィードバックレバー501は操作器301の駆動軸2cに取り付けられたレバー6とリンクして回転する。
【0058】
比較演算増幅回路600は、位置測定機構500からフィードバック信号として与えられる弁体4の実開度θpvと入力信号として外部から与えられる弁体4に対する設定開度θspとの差に応じて、トルクモータ部100に供給する電流値を制御する電気回路である。
【0059】
トルクモータ部100は、電磁石101と、電磁石101の中心軸位置に配置されたノズル102と、電磁石101の前部に設けられた強磁性体の棒状部材である可動片103とを配置した構造を有している。電磁石101に巻かれた導電材の両端は外部に延長されて電流の入力端子が形成されており、電流が入力端子に供給されることで、電磁石101に発生する磁力により磁化された可動片103と電磁石101の間で力が発生し、可動片103が図中矢印A方向やその逆方向へ微小量移動することになる。
【0060】
ここでは、ノズル102を電磁石101の中心軸位置に配置した例を示しているが、ノズル102と可動片103との接離状態を変化させることができる位置であれば、どの位置に配置しても構わない。また、図9では、トルクモータ部1として電磁石を用いた例を示しているが、電気的な制御でトルクの制御や変位調整を行うことが可能な装置を用いることができ、例えば半導体素子や圧電素子などを用いることが可能である。
【0061】
可動片103の一端にはL字形状の弾性体である支点板バネ104が取り付けられており、支点板バネ104の一辺は電磁石101に対して固定して取り付けられている。また、可動片103のノズル102側にはフラッパ105が形成されている。可動片103にトルクが加わると、その加えられたトルクに応じて支点板バネ104が弾性変形し、支点板バネ104の固定位置を回転中心として可動片103およびフラッパ105が回転する。
【0062】
また、フラッパ105には圧力調整部200から供給される空気が流出するノズル102が当接されており、可動片103にトルクが加わることでフラッパ105が動作して、ノズル102とフラッパ105との位置関係が変化し、ノズル102から流出する空気量が変化することになる。
【0063】
また、可動片103にはバイアススプリング106が取り付けられており、可動片103の回転運動によってバイアススプリング106に弾性力が発生して、可動片103に力が加わる。また、可動片103の端部には、その上面および下面に、圧力調整部200から供給される空気を噴出するフィードバックノズル107および108が配置されている。
【0064】
フィードバックノズル107および108の先端は、可動片103とは当接せずに微小距離をおいて可動片103に対向している。このため、フィードバックノズル107および108から噴出した空気の流れは噴流として可動片103に衝突し、それぞれ可動片103に対して回転する力を加えることになる。
【0065】
なお、可動片103のフィードバックノズル107および108が対向する位置に、噴流を衝突させるための噴流衝突部を形成し、噴流の衝突によって効率的に力が可動片103に加わる構成としても良い。
【0066】
トルクモータ部100では、可動片103の動作によってノズル102から流出する空気の流量が変化し、圧力調整部200での圧力調整が行われる。圧力調整部200は、供給配管201を介する外部からの圧縮空気の供給を受け、出力配管202aおよび202bを介する操作器301への圧縮空気AR1およびAR2生成する。また、ノズル配管203を介して、ノズル102から空気を流出させる。
【0067】
圧力調整部200は、外形を形成している筐体内部に摺動可能にリレースプール205が配置され、筐体内部に形成された流路に空気が流れることで、気密を保持しながらリレースプール205の位置が変化する構造となっている。リレースプール205の内部には、中心軸付近に排気流路204が形成されており、排気流路204を介して圧力調整部200の外部に排気が行われる。
【0068】
出力配管202aおよび202bは、操作器301に対して圧縮空気AR1およびAR2の供給を行うだけではなく、それぞれ一部が分岐されて分岐配管202xおよび202yとしてトルクモータ部100のフィードバックノズル107および108に接続されており、フィードバックノズル107および108に対しても空気を流出させる。
【0069】
圧力調整部200の筐体内部には、リレースプール205を挟んで供給圧力室206aおよび供給圧力室206bが形成されるとともに、ノズル背圧室208、リレースプール圧力室209が形成されており、供給圧力室206a内にはバルブポート210aが配置され、供給圧力室206b内にはバルブポート210bが配置されている。
【0070】
供給圧力室206aと供給圧力室206bとリレースプール圧力室209には供給配管201が接続され、供給圧力室206aおよび供給圧力室206b内部とリレースプール圧力室209内部に加圧された空気が供給されている。
【0071】
ノズル背圧室208は、固定絞り207を介して供給圧力室206aと接続されるとともに、ノズル102と配管を介して接続されている。ノズル背圧室208とリレースプール圧力室209とは、変形可能な隔壁を隔てて隣接しており、ノズル背圧室208とリレースプール圧力室209に導入されている空気の圧力差に応じてリレースプール205が移動可能となっている。
【0072】
バルブポート210aは、リレースプール205の位置に応じて移動可能に配置されており、供給圧力室206aと出力配管202aとの間の流路を閉じているときには供給配管201と排気流路204との接続を開き、供給圧力室206aと出力配管202aとの間の流路が開いているときには供給配管201と排気流路204との接続を閉じる機能を実現している。
【0073】
また、バルブポート210bは、リレースプール205の位置に応じて移動可能に配置されており、供給圧力室206bと出力配管202bとの間の流路を閉じているときには供給配管201と排気流路204との接続を開き、供給圧力室206bと出力配管202bとの間の流路が開いているときには供給配管201と排気流路204との接続を閉じる機能を実現している。
【0074】
また、バルブポート210aとバルブポート210bとは、それぞれリレースプール205の排気流路204の両端に配されており、一方が排気流路204を閉じている場合には他方が開くように、排気流路204の開閉を行う。
【0075】
位置測定機構500は、操作器301の駆動軸2cの回転角度位置をフィードバックレバー501を介して測定し、弁体4の実開度θpvに応じたフィードバック信号を比較演算増幅回路600に入力する。比較演算増幅回路600は、位置測定機構500からフィードバック信号として与えられる弁体4の実開度θpvと入力信号として外部から与えられる弁体4に対する設定開度θspとの差に応じて、トルクモータ部100に供給する電流値を制御する。
【0076】
この比較演算増幅回路600は、ポジショナ401と組み合わせる操作器301の容量、作動速度、操作器301が操作すべき対象の負荷、摩擦力などの多様さに対して、増幅度あるいは積分性の増幅機能の積分ゲインなど、演算のパラメータを電子回路上あるいはソフトウェア上で、任意に変更できるものとする。
【0077】
次に、図9に示したポジショナ401の動作について説明する。設定開度θspに対して実開度θpvが変化し、その結果として、例えばポジショナ401のトルクモータ部100に流れる電流が減少すると、電磁石101に発生する磁力が減少し、可動片103が受ける電磁石101の方向への力が減少し、支点板バネ104の弾性力およびバイアススプリング106の弾性力とのバランスが変化する。これにより、支点板バネ104を中心として図中矢印A方向に可動片103に働くトルクが増加する。この可動片103の動きによって、フラッパ105も図中矢印A方向に動き、フラッパ105とノズル102との間隔がわずかに拡がる。
【0078】
フラッパ105とノズル102との間隔が拡がると、ノズル102から流出する空気の流量が増加してノズル背圧室208内の圧力が低下し、リレースプール圧力室209とノズル背圧室208の圧力バランスが崩れて、リレースプール205がノズル背圧室208側に移動する。このとき、リレースプール205はバルブポート210aと当接して排気流路204とバルブポート210aとの間が閉じられ、バルブポート210aが移動して供給圧力室206aと出力配管202aとの流路が開かれる。これにより、供給配管201、供給圧力室206aおよび出力配管202aが連通して、操作器301への圧縮空気AR1の圧力値が上昇する。
【0079】
同時に、バルブポート210bが移動してリレースプール205はバルブポート210bから離れ、排気流路204とバルブポート210bとの間が開放されて、供給圧力室206bと出力配管202bとの流路が閉じる。これにより、供給配管201と供給圧力室206bとが遮断され、出力配管202bと排気流路204が連通して、操作器301への圧縮空気AR2の圧力値が低下する。
【0080】
これにより、操作器301における駆動軸2cが回転し、弁体4の開度が変化する。比較演算増幅回路600は、弁体4の実開度θpvと設定開度θspとが等しくなるまで、トルクモータ部100への電流値を減少させる。
【0081】
逆に、ポジショナ401のトルクモータ部100に流れる電流が増加すると、電磁石101に発生する磁力が増加し、可動片103が受ける電磁石101方向への力が増加し、支点板バネ104の弾性力およびバイアススプリング106の弾性力とのバランスが変化する。これにより、支点板バネ104を中心として図中矢印A方向に働くトルクが減少する。
【0082】
この可動片103の動きによって、フラッパ105も図中矢印A方向と反対方向に動き、フラッパ105とノズル102との間隔がわずかに狭まる。以下、圧力調整部200、操作器301、位置測定機構500、比較演算増幅回路600で上述した電流減少時と逆の動作が行われて、トルクモータ部100に流れる電流の変化量に対応して、弁体4の開度が変化する。比較演算増幅回路600は、弁体4の実開度θpvと設定開度θspとが等しくなるまで、トルクモータ部100への電流値を増加させる。
【0083】
このポジショナ401では、出力配管202aから分岐されたフィードバックノズル107、および出力配管202bから分岐されたフィードバックノズル108から少量の空気が噴出され、トルクモータ部100の可動片103の両側に衝突する。この可動片103に空気が衝突することで得られる力によって、可動片103に加わる力は電磁石101による磁力と、支点板バネ104の弾性力と、バイアススプリング106の弾性力と、フィードバックノズル107およびフィードバックノズル108からの空気の噴流による圧力の5つとなる。これにより、低コストで簡便に、バックラッシュやヒステリシスなどの非線形性を減少させて、ポジショナ401の動作を安定させることができる。
【0084】
図10に図9に示した弁開度制御装置におけるポジショナ401の概略的なブロック図を示す。このポジショナ401において、比較演算増幅回路600は、実開度θpvと設定開度θspとの差に基づいてトルクモータ部100に対して電流を供給する。トルクモータ部100は、比較演算増幅回路600からの電流を電磁石101によってトルクに変換し、この電磁石101からのトルクによってノズル102とフラッパ105とで構成されるノズルフラッパ機構109が駆動され、圧力調整部200のノズル背圧が変化する。このノズル背圧の変化によって、圧力調整部200から操作器301へ供給される圧縮空気AR1およびAR2の圧力値が変化し、操作器301の駆動軸2cが回転し、弁体4の開度が変化する。この際、弁体4の実開度θpvは、位置測定機構500によって比較演算増幅回路600にフィードバックされる。
【0085】
このポジショナ401のブロック構成において、比較演算増幅回路600が本発明でいう制御部に対応し、トルクモータ部100が本発明でいう電空変換部に対応し、圧力調整部200が本発明でいう空気圧信号増幅部に対応する。圧力調整部200はトルクモータ部100からのノズル背圧を増幅して圧縮空気AR1およびAR2とする。
【0086】
〔弁開度制御装置:第2例〕
図11は上述した操作器302を用いた弁開度制御装置(弁開度制御装置の第2例)をポジショナ400の構成を中心として示した模式図である。なお、この弁開度制御装置の第2例で使用するポジショナ400を符号402で示し、上述した弁開度制御装置の第1例で使用するポジショナと区別する。
【0087】
この弁開度制御装置において、ポジショナ402は、トルクモータ部10と、圧力調整部20と、位置測定機構50と、比較演算増幅回路60とを備えている。トルクモータ部10は、電流が流れることで操作器302の駆動軸2cの回転角度位置の制御に必要なトルクを発生させる装置である。
【0088】
圧力調整部20は、トルクモータ部10で発生したトルクで作動するフラッパの動きに応じてノズルとフラッパの間隔が変化し、ノズル背圧の変化を大容量の空気圧の変化に変換して操作器302に出力する装置である。
【0089】
位置測定機構50は、操作器302の駆動軸2cの回転角度位置をフィードバックレバー51を介して測定し、弁体4の実開度θpvに応じたフィードバック信号を比較演算増幅回路60に入力する装置である。位置測定機構50のフィードバックレバー51は操作器302の駆動軸2cに取り付けられたレバー6とリンクして回転する。
【0090】
比較演算増幅回路60は、位置測定機構50からフィードバック信号として与えられる弁体4の実開度θpvと入力信号として外部から与えられる弁体4に対する設定開度θspとの差に応じて、トルクモータ部10に供給する電流値を制御する電気回路である。
【0091】
トルクモータ部10は、電磁石11と、電磁石11の中心軸位置に配置されたノズル12と、電磁石11の前部に設けられた強磁性体の棒状部材である可動片13とを配置した構造を有している。電磁石11に巻かれた導電材の両端は外部に延長されて電流の入力端子が形成されており、電流が入力端子に供給されることで、電磁石11に発生する磁力により磁化された可動片13と電磁石11の間で力が発生し、可動片13が図中矢印A方向やその逆方向へ微小量移動することになる。
【0092】
ここでは、ノズル12を電磁石11の中心軸位置に配置した例を示しているが、ノズル12と可動片13との接離状態を変化させることができる位置であれば、どの位置に配置しても構わない。また、図11では、トルクモータ部1として電磁石を用いた例を示しているが、電気的な制御でトルクの制御や変位調整を行うことが可能な装置を用いることができ、例えば半導体素子や圧電素子などを用いることが可能である。
【0093】
可動片13の一端にはL字形状の弾性体である支点板バネ14が取り付けられており、支点板バネ14の一辺は電磁石11に対して固定して取り付けられている。また、可動片13のノズル12側にはフラッパ15が形成されている。可動片13にトルクが加わると、その加えられたトルクに応じて支点板バネ14が弾性変形し、支点板バネ14の固定位置を回転中心として可動片13およびフラッパ15が回転する。
【0094】
また、フラッパ15には圧力調整部20から供給される空気が流出するノズル12が当接されており、可動片13にトルクが加わることでフラッパ15が動作して、ノズル12とフラッパ15との位置関係が変化し、ノズル12から流出する空気量が変化することになる。
【0095】
また、可動片13にはバイアススプリング16が取り付けられており、可動片13の回転運動によってバイアススプリング16に弾性力が発生して、可動片13に力が加わる。また、可動片13の端部には、その上面に、圧力調整部20から供給される空気を噴出するフィードバックノズル17が配置されている。
【0096】
フィードバックノズル17の先端は、可動片13とは当接せずに微小距離をおいて可動片13に対向している。このため、フィードバックノズル17から噴出した空気の流れは噴流として可動片13に衝突し、可動片13に対して回転する力を加えることになる。
【0097】
なお、可動片13のフィードバックノズル17が対向する位置に、噴流を衝突させるための噴流衝突部を形成し、噴流の衝突によって効率的に力が可動片13に加わる構成としても良い。
【0098】
トルクモータ部10では、可動片13の動作によってノズル12から流出する空気の流量が変化し、圧力調整部20での圧力調整が行われる。圧力調整部20は、供給配管21を介する外部からの圧縮空気の供給を受け、出力配管22を介する操作器302への圧縮空気AR1を生成する。また、ノズル配管23を介して、ノズル12から空気を流出させる。
【0099】
圧力調整部20は、外形を形成している筐体内部に摺動可能にリレースプール25が配置され、筐体内部に形成された流路に空気が流れることで、気密を保持しながらリレースプール25の位置が変化する構造となっている。リレースプール25の内部には、中心軸付近に排気流路24が形成されており、排気流路24を介して圧力調整部20の外部に排気が行われる。
【0100】
出力配管22は、操作器302に対して圧縮空気AR1供給を行うだけではなく、一部が分岐されて分岐配管22xとしてトルクモータ部10のフィードバックノズル17に接続されており、フィードバックノズル17に対しても空気を流出させる。
【0101】
圧力調整部20の筐体内部には、供給圧力室26、ノズル背圧室28およびリレースプール圧力室29が形成されており、供給圧力室26内にはバルブポート30が配置されている。供給圧力室26とリレースプール圧力室29には供給配管21が接続され、供給圧力室26内部とリレースプール圧力室29内部に加圧された空気が供給されている。
【0102】
ノズル背圧室28は、固定絞り27を介して供給圧力室26と接続されるとともに、ノズル12と配管を介して接続されている。ノズル背圧室28とリレースプール圧力室29 とは、変形可能な隔壁を隔てて隣接しており、ノズル背圧室28とリレースプール圧力室29に導入されている空気の圧力差に応じてリレースプール25が移動可能となっている。
【0103】
バルブポート30は、リレースプール25の位置に応じて移動可能に配置されており、供給圧力室26と出力配管22との間の流路を閉じているときには供給配管21と排気流路24との接続を開き、供給圧力室26と出力配管22との間の流路が開いているときには供給配管21と排気流路24との接続を閉じる機能を実現している。
【0104】
位置測定機構50は、操作器302の駆動軸2cの回転角度位置をフィードバックレバー51を介して測定し、弁体4の実開度θpvに応じたフィードバック信号を比較演算増幅回路60に入力する。比較演算増幅回路60は、位置測定機構50からフィードバック信号として与えられる弁体4の実開度θpvと入力信号として外部から与えられる弁体4に対する設定開度θspとの差に応じて、トルクモータ部10に供給する電流値を制御する。
【0105】
この比較演算増幅回路60は、ポジショナ402と組み合わせる操作器302の容量、作動速度、操作器302が操作すべき対象の負荷、摩擦力などの多様さに対して、増幅度あるいは積分性の増幅機能の積分ゲインなど、演算のパラメータを電子回路上あるいはソフトウェア上で、任意に変更できるものとする。
【0106】
次に、図11に示したポジショナ402の動作について説明する。設定開度θspに対して実開度θpvが変化し、その結果として、例えばポジショナ401のトルクモータ部10に流れる電流が減少すると、電磁石11に発生する磁力が減少し、可動片13が受ける電磁石11の方向への力が減少し、支点板バネ14の弾性力およびバイアススプリング16の弾性力とのバランスが変化する。これにより、支点板バネ14を中心として図中矢印A方向に可動片13に働くトルクが増加する。この可動片13の動きによって、フラッパ15も図中矢印A方向に動き、フラッパ15とノズル12との間隔がわずかに拡がる。
【0107】
フラッパ15とノズル12との間隔が拡がると、ノズル12から流出する空気の流量が増加してノズル背圧室28内の圧力が低下し、リレースプール圧力室29とノズル背圧室28の圧力バランスが崩れて、リレースプール25がノズル背圧室28側に移動する。このとき、リレースプール25はバルブポート30と当接して排気流路24が閉じられ、バルブポート30が移動して供給圧力室26と出力配管22との流路が開かれる。これにより、供給配管21、供給圧力室26および出力配管22が連通して、操作器302への圧縮空気AR1の圧力値が上昇する。
【0108】
これにより、操作器302における駆動軸2cが復帰バネ3(図3参照)の付勢力に抗して回転し、弁体4の開度が変化する。比較演算増幅回路60は、弁体4の実開度θpvと設定開度θspとが等しくなるまで、トルクモータ部10への電流値を減少させる。
【0109】
逆に、ポジショナ401のトルクモータ部10に流れる電流が増加すると、電磁石11に発生する磁力が増加し、可動片13が受ける電磁石11方向への力が増加し、支点板バネ14の弾性力およびバイアススプリング16の弾性力とのバランスが変化する。これにより、支点板バネ14を中心として図中矢印A方向に働くトルクが減少する。
【0110】
この可動片13の動きによって、フラッパ15も図中矢印A方向と反対方向に動き、フラッパ15とノズル12との間隔がわずかに狭まる。以下、圧力調整部20、操作器302、位置測定機構50、比較演算増幅回路60で上述した電流減少時と逆の動作が行われて、トルクモータ部10に流れる電流の変化量に対応して、弁体4の開度が変化する。比較演算増幅回路60は、弁体4の実開度θpvと設定開度θspとが等しくなるまで、トルクモータ部10への電流値を増加させる。
【0111】
このポジショナ402では、出力配管22から分岐されたフィードバックノズル17から少量の空気が噴出され、トルクモータ部10の可動片13に衝突する。この可動片13に空気が衝突することで得られる力によって、可動片13に加わる力は電磁石11による磁力と、支点板バネ14の弾性力と、バイアススプリング16の弾性力と、フィードバックノズル17からの空気の噴流による圧力の4つとなる。これにより、低コストで簡便に、バックラッシュやヒステリシスなどの非線形性を減少させて、ポジショナ402の動作を安定させることができる。
【0112】
図12に図11に示した弁開度制御装置におけるポジショナ402の概略的なブロック図を示す。このポジショナ402において、比較演算増幅回路60は、実開度θpvと設定開度θspとの差に基づいてトルクモータ部10に対して電流を供給する。トルクモータ部10は、比較演算増幅回路60からの電流を電磁石11によってトルクに変換し、この電磁石11からのトルクによってノズル12とフラッパ15とで構成されるノズルフラッパ機構19が駆動され、圧力調整部20のノズル背圧が変化する。このノズル背圧の変化によって、圧力調整部20から操作器302へ供給される圧縮空気AR1の圧力値が変化し、操作器302の駆動軸2cが回転し、弁体4の開度が変化する。この際、弁体4の実開度θpvは、位置測定機構50によって比較演算増幅回路60にフィードバックされる。
【0113】
このポジショナ402のブロック構成において、比較演算増幅回路60が本発明でいう制御部に対応し、トルクモータ部10が本発明でいう電空変換部に対応し、圧力調整部20が本発明でいう空気圧信号増幅部に対応する。圧力調整部20はトルクモータ部10からのノズル背圧を増幅して圧縮空気AR1とする。
【0114】
なお、上述した弁開度制御装置の第2例では、操作器300として図2に示した操作器302を使用するようにしたが、図3に示した操作器303を同様にして使用することもできる。この場合、ポジショナ402からの圧縮空気AR1を圧縮空気AR2として、操作器303へ供給するようにすればよい。
【0115】
また、上述した弁開度制御装置の第1例や第2例では、操作器301や302にレバー6を設け、このレバー6を介して弁体4の実開度θpvに応じたフィードバック信号を得るようにしたが、操作器301や303の駆動軸2cに直接ポジショナの回転検出端を接続し、弁体4の実開度θpvに応じたフィードバック信号を得るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る弁開度制御装置で用いる操作器の第1例の要部を示す図である。
【図2】本発明に係る弁開度制御装置で用いる操作器の第2例の要部を示す図である。
【図3】本発明に係る弁開度制御装置で用いる操作器の第3例の要部を示す図である。
【図4】本発明に係る弁開度制御装置で用いる操作器の第4例の要部を示す図である。
【図5】本発明に係る弁開度制御装置の概略構成(ロータの駆動軸を弁体の弁軸に直結した例)を示す図である。
【図6】ロータの駆動軸と弁体の弁軸との間の連結部にストローク調整機構を設けた例を示す図である。
【図7】ロータの駆動軸の回転ストロークと弁体の弁軸の回転ストロークとの調整を説明する図である。
【図8】遊星歯車機構の概略的な構成を示す図である。
【図9】操作器301を用いた弁開度制御装置(弁開度制御装置の第1例)をポジショナの構成を中心として示した模式図である。
【図10】この弁開度制御装置の第1例におけるポジショナの概略を示すブロック図である。
【図11】操作器302を用いた弁開度制御装置(弁開度制御装置の第2例)をポジショナの構成を中心として示した模式図である。
【図12】この弁開度制御装置の第2例におけるポジショナの概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0117】
1…ハウジング、1a…内部空間、1b…内壁面、1c(1c1〜1c8)…仕切壁、1d(1d1〜1d8)…分割空間、ST1,ST2…ストッパ、R1…第1の圧力室、R2…第2の圧力室、H1…第1の圧縮空気導入口、H2…第2の圧縮空気導入口、2…ロータ、2a…ロータ胴、2b(2b1〜2b8)…ベーン(回転翼)、2c…駆動軸、3…復帰バネ、4…弁体、4a…弁軸、5…ストローク調整機構、5a,5b…歯車、5−1…太陽歯車、5−2…遊星歯車、5−3…遊星キャリア、5−4…外輪歯車、300(301〜304)…操作器、400(401,402)…ポジショナ、100,10…トルクモータ部、200,20…圧力調整部、500,50…位置測定機構、600,60…比較演算増幅回路、AR1,AR2…圧縮空気、BS1,BS2…ブースタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体の供給を受けて弁体を駆動する操作器と、前記圧力流体を前記操作器へ供給し前記弁体の開度を実開度と設定開度とが一致するように制御するポジショナとを備えた弁開度制御装置において、
前記操作器は、
軸線に垂直な断面が略環状の内壁面とこの内壁面から前記軸に向けて突出し一体的に形成された複数の仕切壁とを有するハウジングと、
このハウジングの前記軸線回りに回転自在に設けられたロータとを備え、
前記ロータは、
隣り合う2つの前記仕切壁によって仕切られる各分割空間に1つずつ位置しその分割空間を第1の圧力室と第2の圧力室とに区画する回転翼を備え、
前記ハウジングは、
前記分割空間の前記第1および第2の圧力室の少なくとも一方に圧力流体を導く流体圧力導入部を備え、
前記ポジショナは、
前記弁体に対する設定開度に応じた入力信号と前記操作器からの前記弁体の実開度に応じたフィードバック信号とから前記弁体の設定開度と実開度との差に応じた電気信号を生成する制御部と、
この制御部からの電気信号を空気圧信号に変換する電空変換部と、
この電空変換部からの空気圧信号を増幅し前記圧力流体として前記操作器の流体圧力導入部に供給する空気圧信号増幅部と
を備えることを特徴とする弁開度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された弁開度制御装置において、
前記流体圧力導入部は、
前記分割空間の前記第1および第2の圧力室のうち第1の圧力室に前記圧力流体を導く第1の流体圧力導入口と、
前記分割空間の前記第1および第2の圧力室のうち第2の圧力室に前記圧力流体を導く第2の流体圧力導入口とを備え、
前記第1の流体圧力導入口から前記第1の圧力室に前記圧力流体が導かれた場合、前記ロータが第1の回転方向に回転し、
前記第2の流体圧力導入口から前記第2の圧力室に前記圧力流体が導かれた場合、前記ロータが前記第1の回転方向とは逆向きの第2の回転方向に回転する
ことを特徴とする弁開度制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載された弁開度制御装置において、
前記流体圧力導入部は、
前記分割空間の前記第1および第2の圧力室の何れか一方の圧力室に前記圧力流体を導く流体圧力導入口を備え、
更に、
前記流体圧力導入口から前記一方の圧力室に前記圧力流体が導かれた場合に前記ロータが回転する方向とは逆向きの方向への付勢力を前記ロータに付与する復帰バネを備える
ことを特徴とする弁開度制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載された弁開度制御装置において、
前記ロータの駆動軸と前記弁体の弁軸との間の連結部に前記ロータの軸の回転ストロークを前記弁体の弁軸の回転ストロークに調整するストローク調整機構が設けられている
ことを特徴とする弁開度制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載された弁開度制御装置において、
前記ストローク調整機構は、
前記ロータの軸に連結された外輪歯車と、
この外輪歯車に噛合する遊星歯車と、
この遊星歯車を軸支する遊星キャリアと、
この遊星キャリアに軸支された遊星歯車と噛合し前記弁体の弁軸に連結された太陽歯車とで構成される遊星歯車機構である
ことを特徴とする弁開度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−71442(P2010−71442A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242359(P2008−242359)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】