説明

弦楽器、特にギターの自動調弦装置および自動調弦方法

弦(6a〜6f)を弾いて発生する音を捕捉し、この捕捉した音に対応するデジタル信号を送り出す捕音装置(12)と、必要とする音に対応したデジタル信号を予め入力して記憶させた記憶装置と、前記捕音装置(12)から送信されたデジタル信号と、前記記憶装置に記憶させた必要とする音に対応したデジタル信号とを比較する比較装置と、弦(6a〜6f)の張力を調整する調整装置(7)と、調整装置(7)を駆動する少なくとも一つの駆動装置(11)と、前記比較装置に接続され、かつこの比較装置で検出した発生した音と必要とする音のデジタル信号の差に基づいて一本のバスコードを介して、少なくとも一つの駆動装置(11)を調節する制御装置(10)とを具備した弦楽器(1)の自動調弦装置を示しており、本自動調弦装置は、楽器、特にギターに一体的に組み込まれ、取り付けても音響特性にほとんど影響を与えず、極めて小型軽量化された要素として取り付けることができる点で、従来の技術水準に比べ大幅に改良されている。また、制御装置(10)と少なくとも一つの駆動装置(11)が、弦楽器(1)の弦(6a〜6f)の縦方向視で、これら弦(6a〜6f)の互いに向き合う面に設置され、バスコードは、制御装置(10)と少なくとも一つの駆動装置(11)との間に、前記弦の縦方向を橋渡しするように取り付けられている。さらに、弦楽器(1)の自動調弦方法も示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に従った弦楽器の自動調弦装置に関する。また、本発明は、請求項11の上位概念に従った弦楽器の自動調弦方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に楽器を調律するには、訓練された聴覚とともに時間を要し、特に未熟な演奏者や趣味で楽器を演奏するホビーミュージシャンにとっては、調律できるようになるまで多くの時間を必要とする。従来の調律方法では、音楽家が叩くと所望の音を発する音叉を用いて手作業でしており、弦の長さや張力を変更しながら各弦の音を調整する。弦と音叉とを幾度も叩き、この結果を比較して、希望する弦を調律する。この方法で一つの弦の調律を終了してから、次の弦の調律へ順次移行する。
【0003】
楽器の弦は、素材が伸びて緩みが生じるため定期的に調律する必要があり、また弦は気象条件によって長さが変化する、例えばコンサートホールのステージ上では、比較的乾燥し、温度が低い練習室に比べて温度や湿度が高くなるため、ステージ上のギターの弦は延びるため、頻繁に調弦する必要がある。また、新しい弦を張った後は、必ず調弦しなければならない。
【0004】
このような調弦の困難性を緩和するため、米国特許明細書4803908号には、請求項1の上位概念の特徴をすべて備えた弦楽器の自動調弦装置が記載されている。この装置では、英語で「ストラマー」と呼ばれる補助具をギターのボディに取り付けることによって、全ての弦を同時に弾くことができるように構成されている。弾かれて発生した音を電子機器が捕捉し、これを予め保存した基準音と比較して、保存した音に一致するように弦に連結された調整装置によって弦の張力を調整する。
【0005】
このシステムは、自動的に調弦ができ、扱い易く、特に不慣れな演奏者だけでなく、プロの演奏家にとっても調弦コストの大幅な低減を実現できるという点で、極めて好ましいシステムである。しかしながら、このシステムには重大な問題点がある。大型で形状も優れておらず、ギターのボディの大幅な変更が必要であるため、アコースティックな面、すなわち音響だけでなく重さが変わるため、取り扱いにも影響を与えてしまうという問題である。またそれ以外にも、ギターの外見も変えてしまう点も問題である。
【0006】
ギターの全体が、音響特性にとって重要な共鳴体になっているため、このような変化が加えられると音響特性も変化してしまう。このため、このシステムを既存の楽器に後付けすることはほぼ不可能であり、また新しいギターに一体的に取り付けることも容易ではないという実情がある。特に、音響面に関しては、設計段階で二種類のギター、すなわちこのシステムを取り付けたギターと、取り付けないギターとが別々に開発されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題から開発されている。本発明は、音響特性に極力影響を与えず、可能な限り小型の装置とすることで、楽器、特にギターに組み込むことができるように改良した自動調弦装置を創作することを課題としている。また、この条件を満たす弦楽器の自動調弦方法も提示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の特徴を有する装置を提案している。この課題を解決する方法は、請求項11に提示している。
【0009】
請求項2ないし10および12ないし15では、本装置および本方法の好ましい実施例を提示している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の基本概念は、本装置の各部分の少なくとも一部に、一本または複数本の弦を介して必要な給電をするというものである。このため、弦は、導体で、導体素材、導体素材で巻かれまたはコーティングされ、あるいは導体素材で巻かれコーティングされている。このように構成することにより、ギター、特にエレキギターにおいては、これら楽器のヘッドに各部分を設置できるため、ヘッドにバッテリや独自の電源コンセントなどの別の電源を組み込む必要がない。この場合、電力は、ギターのボディからこのギターの一本または複数本の弦を介してヘッドへ送られる。
【0011】
このような方法によって、弦の端部を固定し、スペースが限定され重量のあるものを保持できない楽器のヘッド部分の重量や面積を削減でき、本装置の各部分を少なくとも一つ取り付けることができる。
【0012】
請求項2では、システムともいう本装置の各部分が楽器上に分散して配置されており、一つのバスコードが弦に沿って張られている。例えば、ギターの場合は、装置全体をボディに取り付けることは不可能である。一方、ヘッドまたはネックには、他の部分を目立たないように設置できるスペースがわずかに存在する。特に、ギターの場合は、ヘッドに取り付けられている弦の長さや張力を調整する手段を利用できるため、その手段を利用すれば、特殊な部品を削減することも可能である。全体としてギターなどの楽器に設置できる付属の部分は、極めて限られる。
【0013】
バスコードを介する信号伝達では、従来の接続ケーブルを使用することもできるが、無線や赤外線などを利用してワイヤレスにすることも可能である。
【0014】
楽器のボディに過度の加工を施さずに制御装置および駆動装置の各部分を分散して配置できるようにするため、請求項3では、楽器の部分に取り付けた制御装置と少なくとも一つの駆動装置との間に、バスコードとして機能するギターの少なくとも一つの弦を通じて制御信号が送られるようになっている。弦楽器の弦は、多くの場合、金属などの導体や導体素材に導体の糸を巻きつけた構造になっている。音響上の問題がなければ、導体素材でコーティングすることも可能である。コーティングした場合には、楽器のボディに補助コードを敷設する必要がない。このため、音響特性だけでなく楽器の外見上も変化がなく、従来の形状を維持することが可能となる。複数の弦をコードとして利用し、弦同士で電気的なショートを起こさないようにするには、ギターのネックなどの弦を通す部分を、互いに絶縁される構造にしなければならない。このため、これら部分を、セラミックなどの不導体にしたり、不導体でコーティングしたり、間に絶縁プレートを挿入するなどのその他の絶縁処理を施したりしなければならない。
【0015】
駆動装置は、モータ、具体的には電動モータがよいが、空気圧や油圧による駆動装置を使用することも可能である。
【0016】
エレキギターなどのように、楽器が電気的にアンプに接続されている楽器の場合には、既存のピックアップ、またはアンプに接続されている楽器のピックアップを捕音装置の一部として利用することができる。
【0017】
請求項4で示した制御装置を用いれば、弦を弾くだけで簡単に制御装置に応答させることができる。
【0018】
請求項5で示したインターフェースを用いれば、後で制御装置に外部からソフトウエアをインストールできる。また、インターフェースを経由して各種の基準調律を記憶装置に入力し、様々な形で楽器を調弦することが可能となる。
【0019】
本装置を請求項6に示した構造にすれば、楽器の弦毎に調弦できる。対応するギア機構や、弦毎に調整する同種の装置にて切り替えができる駆動装置を使用することも可能である。
【0020】
本装置を請求項7に示した構造にすれば、装置を極めて小型化できる。個々の各部分としてもできるだけ小型のものを選択すれば、これら各部分を楽器内に埋設でき、この楽器を演奏する音楽家の障害にならない。さらに、楽器の調弦の際に外部の部品を用いる必要がなく、演奏者はどのような場所でも自由に調弦することが可能となる。
【0021】
本装置の請求項8に示した構成にすると、冗長なシステムになる。この場合は、一本の弦が故障してもさらに楽器の調弦ができる。
【0022】
請求項9および10は、本装置がエレキギターに一体的に組み込まれている。
【0023】
請求項11の方法は、上述のように、既述の課題を解決する方法を提示している。請求項1ないし10いずれか一つの装置によって駆動されることが好ましいが、これら装置に限定されるものではない。
【0024】
請求項13では、楽器の弦をバスコードとしても使用できることが示されている。楽器の弦をバスコードとして使用できるため、特別なケーブルや、無線あるいは赤外線などの伝達手段を設置する必要もない。
【0025】
請求項14の方法では、第1のデジタル信号を用いる必要があるが、このデジタル信号から確実に音の状態を確定するために、デジタル信号の他の処理も重要である。
【0026】
第1のデジタル信号の音の状態を示す基本周波数を求める場合は、請求項15のように、数学的な周波数フィルタを用いることが望ましい。この周波数フィルタは、通常用いられる高速フーリエ変換(FFT)と異なり、弦を一回弾くだけで迅速かつ正確に周波数を求めることができる。弦を一回弾いただけでは、音の状態、すなわち周波数を正確に把握するために必ず捕捉しなければならない倍音が直ぐに消えてしまうため、この点は極めて重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に添付の図面を簡単に説明する。
【0028】
図1は、本発明で可能な実施例であるエレキギターを前方から見た概略平面図である。
【0029】
図2は、図1のエレキギターを後方から見た概略平面図である。
【0030】
図3は、他の細部を示したエレキギターの別の概略平面図である。
【0031】
図4は、図3で示したエレキギターのボディの拡大図である。
【0032】
図5は、エレキギターのトレモロシステムブロックの台を示した四種類(a)〜(d)の平面図である。
【0033】
図6は、弦がトレモロシステムブロック内で固定されている状態、および弦が電源コードないし信号ケーブルと接触している状態を示した概略図である。
【0034】
図7は、ギターのヘッドと、ヘッドに取り付けられているペグと、弦の張力を調整するステップモータとを示した四種類(a)〜(d)の平面図である。
【0035】
図8は、ギターのヘッドに取り付けられているペグとステップモータを示した四種類の平面図である。
【0036】
図9は、ギター自動調弦装置用の信号ケーブルによる給電を調節する検出回路の概略図である。
【0037】
図面には、エレキギターの実施例を用いて本発明が詳細に解説されている。図面中では、同一の構成要素に同じ番号が付されている。本発明は、エレキギターに限定されるものではない。本発明は、アコースティックギターや、エレキベース、バイオリン、ハープなどの他のエレキないしエレキアコースティック楽器、アコースティック弦楽器などにも用いることができる。
【0038】
図1〜図4は、本発明の装置を備えたエレキギター1の各種の平面図であり、一部に拡大図も含まれている。エレキギター1の全体は、大きく分けてボディ2、ネック3、およびヘッド4で構成されている。ボディに取り付けられているいわゆるトレモロシステムブロック5には、弦6a〜6fの一端(ボールエンド)が固定され、さらに、これら弦は、そこからネック3を通過してヘッド4まで並行に張られ、このヘッドで前記弦の他端が、ペグポスト7に巻き取られて、調整できるように固定されている。ペグポスト7は、ペグ8に連動可能に連結されているため、ペグ8を回すと前記弦の他端がペグポスト7に巻き取られたり、逆に緩められたりするようになっている。この操作で弦の張力や長さを調整し、ギターを調弦する。
【0039】
図1では、いわゆるピックガード9が示されているが、これは一種のカバープレートであって、ボディ2の下部に設けた空間内にエレキギター1の電子機器が収納されており、この空間をピックガードが被っている。このピックガード9の下には、本発明の装置の一部である制御チップが設置されており、図2では前記制御チップが符号10で簡略的に示されている。
【0040】
さらに、図2では、エレキギター1のヘッド4にあるペグ8の機械的な部分に、ギアなどを介して連結されたステップモータ11が取り付けられている。これらステップモータは、本発明の装置の一部を構成し、後述する方法によって、調節用の制御チップ10に接続されている。手でペグ8を操作し、ペグポスト7を回して弦6a〜6fの張力を調整することも可能であるが、これらステップモータで弦を張力調整することも可能である。
【0041】
図3および図4では、エレキギター1を別の角度から見た状態が示されている。ここで、図1および図2で示した部分に加え、エレキギター1の他の細かい部分も示されている。例えば、ボディ2では、弦6a〜6fの下に取り付けられたピックアップ12などを確認でき、このピックアップは、弦の振動、すなわち弦を弾いた際に発生する音を電気信号に変換する機能を有している。同時に、このピックアップ12は、本発明の装置の構成要素としても使用されており、その詳細は後述する。
【0042】
また、これら図面には、ポテンショメータ13が記載されている。通常、エレキギターでは、高音、低音、およびボリュームを調整するため、この種のポテンショメータが複数個使われている。これら図面で示すポテンショメータ13は、ボリュームコントローラになっている。このコントローラは、本発明の装置をエレキギター1に取り付けるためのコントローラであり、従来のポテンショメータと構造が異なり、補助のスイッチ機能を有するいわゆるプッシュプルポテンショメータとなっている。
【0043】
さらに、これら図面から、制御チップからトレモロシステムブロック5、正確には弦6a〜6fまでに亘ってコード14が通っていることが分かる。
【0044】
図5および6では、トレモロシステムブロック5が示されており、これらトレモロシステムブロック5に固定された弦をガイドする台15が、トレモロシステムブロック上に設置されている。図6では、弦6a〜6fがトレモロシステムブロック5内の孔17を通り、これら弦の一端に設けられたボールエンド18である太部18が、孔17の下の縁部にて保持されている。各孔17の下の縁部内のそれぞれは、孔17から突出した縁部に、外側に向いた環部を有する絶縁スリーブ19が挿入されている。スリーブ19の前記環部と、ボールエンドとしての太部18との間には、弦6a〜6fのボールエンドである太部18と接触する導体プレート20が取り付けられている。また、このプレートは、制御チップ10に接続されたコード14、すなわち、これら図面で14a〜14fとして表示したものにも接続されている。
【0045】
この方法によって、導体金属製または導体繊維で巻かれたエレキギター1の弦6a〜6fは、制御チップ10に電気的に接続された状態になっている。
【0046】
トレモロシステムブロック5上には、図5(a)〜図5(b)に示す台15が取り付けられている。16の番号が付された台の挿入部では、弦が前記台の上方を通過している。台の挿入部を拡大表示したのが図5(d)であるが、この台の挿入部は、図5(a)に示す台のうちの図5(a)内の右側に示されている凹部内に挿入される。エレキギター1の場合、台15および台の挿入部16は、常に金属製、すなわち導体になっているため、コード14を介して電気的に接続されている弦同士のショートを防止するため、弦6a〜6fが通過する台の挿入部16を相互に絶縁させる必要がある。このため、図5(a)では、21の番号を付けたプレートを挿入して絶縁している。
【0047】
図7(a)〜7(d)でも、エレキギター1のヘッド4の細かい部分を示しており、このヘッドに取り付けられた本発明の各部分も見えるが、この場合、図7(d)は、図7(c)の符号Dが付されている部分を拡大した図面となっている。
【0048】
図8(a)〜8(d)では、弦の張力を調整するペグポスト7、ペグ8、ステップモータ11を含む、弦の張力を調整するユニットをヘッド4から取り外した状態を示した図面である。これら装置のそれぞれは、ステップモータ11を調節する別の制御部を備えた共通する1つのボード22上に取り付けられている。弦は、金属製すなわち導体のペグポスト7を介して、対応するボード22上のコードレーンに電気的に接続されている。
【0049】
本発明であるエレキギター1の自動調弦装置は、以下のように作動する:
プッシュプルポテンショメータ13を引くと、システムが作動する。システムの作動には、図9に示す回路が関係しているが、この回路については後述する。
【0050】
一本の弦を弾くと、制御チップ10に命令が送られる。弦を弾いて発生した音は、ピックアップ12にて電気信号に変換され、その電気信号は制御装置内で一つの周波数に変換される。この制御装置にはプログラムされた特定の命令が予め記憶されており、このプログラムによって一定の制御可能な範囲内の周波数が生成される。このようにして、E弦6fなどの一本の弦を調弦するプログラムが呼び出される。このプログラムが作動すると、制御チップが記憶装置から基準周波数となる前記弦の参考周波数を呼び出す。この弦を、場合によっては再度弾くと、ピックアップ12にて変換された電気信号から制御チップ10で実際の周波数を算出し、バスコードとして利用されている弦を通じてボード22、またはこのボードを経て対応するステップモータ11へ送られ、弦の張力を調整し、基準周波数にする。この場合、制御チップ10にて周波数の変化をモニタリングし、基準周波数に到達した段階でステップモータ11に停止信号が送られる。このようにして全ての弦を順次調弦できる。ピックアップの電気信号から実際の周波数を求めるルーティンとしては、極めて迅速かつ正確に算出できることから数学的な周波数フィルタを使用している。
【0051】
制御チップ10には、図示しないインターフェースから、オープンチューニングなどの選択する調弦タイプに応じて様々な周波数を事前に入力しておくことが可能である。
【0052】
制御信号の伝達に関しては、2本の弦のみを利用している。他の2本の弦、この場合は下のE弦である弦6fおよびA弦である弦6eを、ボード22およびヘッド4のステップモータ11への給電ラインとして使用しているため、ボードやステップモータに独自の電源が不要となっている。弦6fおよび6eが給電ラインとして用いられているが、これは、下のE弦とA弦がエレキギター1の弦の中では最も太く破断しにくいことによるものである。残り4本の弦6a〜6dのうちの任意の2本の弦は、バスコードとして制御チップ10にて自由に調節できるように構成されている。この結果、システムが冗長なシステムとなり、弦6a〜6fの1本が破断した場合や、仮に2本の弦が破断した場合でも問題なく作動できる。
【0053】
ボディ2やピックアップ12の部分にある弦6a〜6fの下部に発光ダイオードを設置し、これら発光ダイオードで制御チップ10やプログラムの状態を表示すれば、装置の取り扱いを簡素化できる。この同じ場所に、弦6a〜6fのどの弦を弾くとどのような音が鳴りどのような命令が呼び出されるかを表示する「簡易マニュアル」を取り付けることも可能である。命令に関係する周波数は、制御チップ10にてエレキギターのその時点における調弦状態に適した周波数になるように管理されており、命令を呼び出すためにユーザーは、常に同じ弦を同じグリップで弾く必要はあるが、ギター、すなわち弦の調弦状態がどのようになっているかは問題にはならない。
【0054】
この実施例の場合は、システムへの給電が外部から、すなわちギターとアンプとを電気的に接続するアンプケーブルを介して供給される。図9に示す信号回路によってエレキギター1の内部抵抗が常にモニタリングされている。通常、演奏準備が整った状態のエレキギター1は内部抵抗が高くなっている。演奏者がプッシュプルポテンショメータ13を引くと、演奏者にてアンプのケーブル用のジャックブッシュすなわちアンプから、ピックアップ12が離れ、制御チップ10のスイッチが入る。この結果、エレキギター1の内部抵抗が少なくとも20以上低下する。前記回路が内部抵抗の低下を検知すると、エレキギター1が静かに調弦できるようにアンプの1つに接続されているアンプのケーブルを遮断する。また前記回路は、アンプの給電回路や外部の給電回路から電源を得ているが、内部抵抗の低下を検知すると、それまでの電源をアンプケーブルからの給電に切り替える。この後、この電圧が制御チップ10へ送られ、さらに弦6a〜6fを介してヘッド4へ供給される。よって、本発明の装置が作動する。調弦、回路調整、新規データの入力が終了すると、プッシュプルポテンショメータ13が演奏者にて通常のポジションに戻される。この結果、再びアンプのケーブルに接続されたピックアップ12にてエレキギター1の内部抵抗が上昇する。この内部抵抗の上昇を図9の信号回路が検知すると、アンプケーブルから再びアンプに信号が送られ、演奏者は演奏を続けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明で可能な実施例であるエレキギターを前方から見た概略平面図である。
【図2】図1のエレキギターを後方から見た概略平面図である。
【図3】他の細部を示したエレキギターの別の概略平面図である。
【図4】図3で示したエレキギターのボディの拡大図である。
【図5】エレキギターのトレモロシステムブロックの台を示した四種類(a)〜(d)の平面図である。
【図6】弦がトレモロシステムブロック内で固定されている状態、および弦が電源コードないし信号ケーブルと接触している状態を示した概略図である。
【図7】ギターのヘッドと、ヘッドに取り付けられているペグと、弦の張力を調整するステップモータとを示した四種類(a)〜(d)の平面図である。
【図8】ギターのヘッドに取り付けられているペグとステップモータを示した四種類の平面図である。
【図9】ギター自動調弦装置用の信号ケーブルによる給電を調節する検出回路の概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1 エレキギター
2 ボディ
3 ネック
4 ヘッド
5 トレモロシステムブロック
6a〜6f 弦
7 ペグポスト
8 ペグ
9 ピックガード
10 制御チップ
11 ステップモータ
12 ピックアップ
13 ポテンショメータ
14 コード
15 台
16 台の挿入部
17 孔
18 太部
19 スリーブ
20 プレート
21 プレート
22 ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 弦(6a〜6f)を弾いて発生する音を捕捉し、この捕捉した音に対応するデジタル信号を送信する捕音装置(12)と、
b) 必要とする音に対応したデジタル信号を予め入力して記憶させた記憶装置と、
c) 前記捕音装置から送信されたデジタル信号と、前記記憶装置に記憶させた必要とする音に対応したデジタル信号とを比較する比較装置と、
d) 弦(6a〜6f)の張力を調整する調整装置(7)と、
e) 前記調整装置(7)を駆動する少なくとも一つの駆動装置(11)と、
f) 前記比較装置に接続され、かつこの比較装置で検出した発生した音と必要とする音のデジタル信号の差に基づいて一本のバスコードを介して少なくとも一つの駆動装置(11)を調節する制御装置(10)と
を具備し、
弦(6a〜6f)の縦方向の第一の面上に取り付けられ、本装置の各部の給電は、弦(6a〜6f)の縦方向で向き合う弦(6a〜6f)の第二の面上に取り付けられた電源または電力供給源から弦(6a〜6f)の少なくとも一本の弦を介して供給され、少なくとも一本の弦(6a〜6f)は、導体素材、導体素材で巻かれまたはコーティングされ、あるいは導体素材で巻かれコーティングされていることを特徴とする弦楽器(1)、特にギターの自動調弦装置。
【請求項2】
制御装置(10)および少なくとも一つの駆動装置(11)は、弦楽器(1)の弦(6a〜6f)の縦方向視で、これら弦(6a〜6f)の互いに向き合う面に設置され、制御装置(10)と少なくとも一つの駆動装置との間には、弦の端部を橋渡しするように弦に沿ってバスコードが取り付けられていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項3】
導体の弦、または導体素材で巻かまたはコーティングされ、あるいは導体素材で巻かれコーティングされた弦(6a〜6f)の少なくとも一本がバスコードとして機能することを特徴とする請求項2の装置。
【請求項4】
制御装置(10)は、制御可能な範囲の音を示すデジタル信号を前記捕音装置から受けることによりスイッチが切れる構造になっていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つの装置。
【請求項5】
データ交換用のインターフェースを備えていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つの装置。
【請求項6】
各弦(6a〜6f)には、駆動装置(11)を備えた調整装置(7)がそれぞれ一つずつ取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つの装置。
【請求項7】
捕音装置、記憶装置、比較装置、調整装置(7)、駆動装置(11)および制御装置(10)などの各部分が、弦楽器(1)に一体的に組み込まれていることを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つの装置。
【請求項8】
バスコードおよび電源コード、もしくはバスコードあるいは電源コードとして使われる一本または複数本の弦(6a〜6f)は、制御装置(10)を自由に選択でき、弦(6a〜6f)の一本に亀裂や破断などの不具合があっても、他の弦(6a〜6f)をバスコードまたは電源コードとして利用できることを特徴とする請求項2ないし7いずれか一つの装置。
【請求項9】
本装置は、ギター(1)、特にエレキギターに一体的に組み込まれていることを特徴とする請求項1ないし8いずれか一つの装置。
【請求項10】
制御装置(10)はギター(1)のボディ(2)に取り付けられ、調整装置(7)および少なくとも一つの駆動装置(11)は前記ネックの上端にそれぞれ取り付けられ、前記駆動装置(11)は、前記ネックに沿って配設されたバスコード、あるいはバスコードとして使用される弦(6a〜6f)を介して制御装置(10)に接続されていることを特徴とする請求項9の装置。
【請求項11】
1.調整する弦を弾くステップと、
2.前記弦から発生した音を捕音装置で捕捉し、対応する第1のデジタル信号に変換するステップと、
3.前記第1のデジタル信号と、予め入力させた必要とする音に対応する第2のデジタル信号とを比較し、制御装置で比較した結果に基づいて、必要な弦の張力調整値を求めるステップとを含み、
縦方向視で弦の第一の面上に取り付けられている本装置の各部分への給電は、弦の縦方向視で弦の向き合う第二の面上に取り付けられた電源または電力供給源から、少なくとも一本の弦を介して供給され、少なくとも一本の前記弦は、導体素材で巻かれまたはコーティングされ、あるいは導体素材で巻かれコーティングされている導体であることを特徴とする弦楽器の自動調弦方法。
【請求項12】
制御信号は、弦の縦方向視で第一の面上に取り付けられた制御装置から、弦の張力を調整する調整装置に連結されかつ弦の縦方向視で互いに向き合う面に設置された駆動装置へ1本または複数本のバスコードを介して送られることを特徴とする請求項11の方法。
【請求項13】
一本または複数本のバスコードには、導体、または導体素材で巻かれまたはコーティングされ、あるいは導体素材で巻かれコーティングされた弦楽器の一本または複数本の弦が用いられることを特徴とする請求項12の方法。
【請求項14】
第1のデジタル信号は、他の処理もできるよう構成されていることを特徴とする請求項12または13の方法。
【請求項15】
弾いて得られた音の周波数は、第1のデジタル信号を数学的な周波数フィルタを介して得られ、第2のデジタル信号は、予め入力された周波数に対応していることを特徴とする請求項14の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−537470(P2007−537470A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511885(P2007−511885)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000478
【国際公開番号】WO2005/116986
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(507147275)
【Fターム(参考)】