強誘電体メモリ装置
【課題】
従来の主な強誘電体メモリはデータを破壊読み出しするので寿命に限界があり、用途が限られた。また非破壊読み出しの強誘電体メモリでも強誘電体膜の組成が複雑で、開発に多大な期間を要し、かつ信頼性確保や製造上に困難を抱えていた。
【解決手段】
強誘電体コンデンサの2つの電極材料に異なる仕事関数の材料を用いて分極電荷−印加電圧特性を電圧軸の方向へ平行移動させ、ヒステリシス特性を非対称性とする。この強誘電体コンデンサに抗電圧以下の微小な電圧を加え、2つの異なる残留電荷をもつ状態における分極電荷−印加電圧特性の非対称性から1,0の記憶データを非破壊で読み出す構成とする。
従来の主な強誘電体メモリはデータを破壊読み出しするので寿命に限界があり、用途が限られた。また非破壊読み出しの強誘電体メモリでも強誘電体膜の組成が複雑で、開発に多大な期間を要し、かつ信頼性確保や製造上に困難を抱えていた。
【解決手段】
強誘電体コンデンサの2つの電極材料に異なる仕事関数の材料を用いて分極電荷−印加電圧特性を電圧軸の方向へ平行移動させ、ヒステリシス特性を非対称性とする。この強誘電体コンデンサに抗電圧以下の微小な電圧を加え、2つの異なる残留電荷をもつ状態における分極電荷−印加電圧特性の非対称性から1,0の記憶データを非破壊で読み出す構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不揮発性メモリである強誘電体メモリにおいて、メモリ素子の読み出し回数による寿命を永くするために、データを非破壊読み出しするようにした強誘電体メモリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリ分野のなかで電気的に書き込み、消去可能な不揮発性メモリの重要性が増している。不揮発性メモリには各種のものがあるが、高速性、低電圧特性、低消費電力等の観点から強誘電体メモリが注目されている。強誘電体メモリの具体的な構成は、以下の例に示すように様々である。
強誘電体メモリの一例としては、強誘電体膜内部の残留分極状態により2つの状態を定義する強誘電体コンデンサに抗電圧以上の電圧をかけて電荷を取り出し、1か0かの内部の記憶状態を検知する方法がある。この方法を簡単に示したのが図9である。
【0003】
図9において、1001、1002、1003、1004の4点の特性点を通る曲線が、強誘電体コンデンサの第1端子と第2端子の間に加えた印加電圧Vと内部分極電荷Qの特性を表している。
特性点1001は強誘電体コンデンサの第2端子に第1端子より正の高い電圧Vを加えた状態を示し、特性点1002は第1端子に第2端子より正の高い電圧Vを加えた状態を示している。特性点1001と特性点1002においては、強誘電体コンデンサの内部の分極は正負、すなわち逆の分極をする。
【0004】
いま、特性点1001の状態にあった強誘電体コンデンサの第1端子と第2端子の電位差を零とすると、その内部の分極は残留分極として保存され、特性点1004に示す状態となる。また、特性点1002の状態にあった強誘電体コンデンサの第1端子と第2端子の電位差を0とすると、その内部の分極は残留分極として保存されて、特性点1003に示す状態となる。
【0005】
したがって、強誘電体コンデンサの内部分極電荷と印加電圧は、ヒステリシス特性を持っていると同時に、強誘電体コンデンサの両端の端子を開放し、電圧を零としても前の状態によって、異なった残留分極を有している。この2つの状態が、特性点1003と特性点1004にそれぞれ相当する。
さて、強誘電体コンデンサの両端の端子が開放された状態から、第1端子を基準として第2端子に電圧V(ΔVB)をかけると、特性点1001に移動する。このとき、前の状態が特性点1003であれば、図9に示すΔQHBの電荷が取り出され、特性点1004の状態であればΔQLBの電荷が取り出される。図9から明らかにΔQLB≪ΔQHBであるので、残留分極として記憶されていた前の状態を1または0として判別することができる。
【0006】
このような方法は電荷を取り出す、つまりデータを破壊してしまうので、破壊読み出しと一般的に呼ばれる方式であり、この方式の一例として特許文献1に示すものが知られている。
一方、非破壊読み出し方式としては、絶縁ゲート電界効果型トランジスタ(以下、MOSFETと略す)のゲート電極の上方に強誘電体薄膜を設け、その強誘電体薄膜の分極の状態によって、MOSFETのスレッショルド電圧の相違で流れる電流値が異なることから、書き込まれた分極の方向、つまり1または0かの差違を検出する方式がある。この一例として、特許文献2に示すものが知られている。
【0007】
また、強誘電体薄膜の材質に工夫を凝らすことにより、図10に示すように、分極−電界ヒステリシス特性を非対称として、図10に示す特性点1103と特性点1104に相当する特性の傾きの差から、微弱な電圧を強誘電体コンデンサにかけ、データを非破壊で状態を検知する方法がある。この例として、特許文献3および特許文献4に示すものが知られている。
【特許文献1】特開平11−39882号公報
【特許文献2】特表2002−543627号公報
【特許文献3】特開平2−198094号公報
【特許文献4】特開平5−82800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来の強誘電体メモリでは、以下に述べるような不具合がそれぞれある。
すなわち、図9で説明し、あるいは特許文献1に示されるデータを破壊読み出しする方式では、データの読み出し後、消えたデータを再書き込みする必要がある。このため、データの書き込みとデータの消滅が繰り返され、現状では、データの書き換え回数が1010〜1012回が限界であり、この限界に達すると強誘電体材料としての寿命がつきてしまうという不具合がある。そのため、頻繁にデータが読み書きされるスタティックランダムアクセスメモリ(以下SRAMと略す)としては品質上、信頼性上、使用できず、用途が限られるという課題がある。
【0009】
また、特許文献2に示されるMOSFETのゲート電極上に強誘電体薄膜を配置する方式では、ゲートの上に乗せた強誘電体材料との形成上の困難さのために、現状では、1日から1週間程度でゲートの上に形成された強誘電体薄膜のデータが消滅してしまうという不具合がある。
さらに、特許文献3、4に示される強誘電体薄膜の分極電荷−印加電圧のヒステリシス特性で非対称のものを作り、その非対称性を利用してデータを非破壊で読み出す方法があるが、図10や特許文献4の代表図に見られる複雑な非線形のヒステリシス特性を持つ材料物質を得ることは実際には容易でなく、開発の遅れや製造上のトラブルを起こしやすいという不具合がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、このような不具合を解決するもので、その目的とするところは、強誘電体コンデンサを用い、非破壊読み出しとし、かつ、現状の実績のある強誘電体薄膜材料をそのまま活用できる方法を用いることで、長寿命で、かつ新たな格別な材料開発期間もなく、製造上も実績のある手法で確実にSRAMをはじめとする広い範囲の用途として使用できる強誘電体メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、各発明は、以下のように構成するようにした。
すなわち、第1の発明は、第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、を少なくとも有するものである。
【0012】
第2の発明は、第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっている。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなる。
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなる。
【0014】
第5の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が金属膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質の金属とは仕事関数が異なる金属膜からなる。
第6の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質が含む不純物原子と異なる原子価の半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなる。
【0015】
第7の発明は、第4または第6の発明において、前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなる。
第8の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、を少なくとも有するものである。
【0016】
第9の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっている。
【0017】
第10の発明は、第8または第9の発明において、前記第1の導電物質もしくは前記第2の導電物質が、半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなる。
第11の発明は、第10の発明において、前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなる。
【0018】
第12の発明は、第8または第9の発明において、前記第1の導電物質、もしくは前記第2の導電物質が、酸化物導電性膜からなる。
第13の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、を少なくとも有するものである。
【0019】
第14の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっている。
【0020】
第15の発明は、第13または第14の発明において、前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなる。
第16の発明は、第15の発明において、前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜は半導体膜としてポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなる。
【0021】
第17の発明は、第13または第14の発明において、前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなる。
第18の発明は、第1から第17のうちのいずれかの発明において、前記強誘電体コンデンサは、1トランジスタ・1キャパシタ型のメモリセルを構成するものである。
第19の発明は、第1から第17のうちのいずれかの発明において、前記強誘電体コンデンサは、1キャパシタ型のメモリセルを構成するものである。
【0022】
第20の発明は、第1から第17のうちのいずれかの発明において、前記強誘電体コンデンサの強誘電体薄膜は、PZT、PZTN、もしくはSBTからなる。
以上のように、本発明の強誘電体メモリ装置は、仕事関数の互いに異なる導電物質を第1電極、第2電極として強誘電体膜を挟む構造、もしくは電極間の仕事関数差の観点において、それと等価の構造の強誘電体コンデンサをメモリセルの構成要素として用いるようにし、データを読み出す際には強誘電体膜の抗電圧より低い電圧を加えて、メモリ情報を読み出すようにした。
【0023】
したがって、上記の構成によれば、強誘電体薄膜を挟む第1電極と第2電極の仕事関数差分だけ、強誘電体薄膜の分極−電界ヒステリシス特性が加える電圧方向に対して平行移動し、強誘電体コンデンサに加わる電圧が零の時点において、内部分極状態の差違により、印加電圧−電流特性に非対称性が生じているので、抗電圧以下の電圧を加えたときに生じる電流の差異により残留電荷の内部状態が1か0かのどちらかを検知できる。したがってデータを非破壊でデータ情報を読み出すことができるので、寿命が非常に永くなるという効果がある。
【0024】
また、非破壊読み出しであるので、データの再書き込みが不要とり、読み出し動作におけるサイクルタイムが短くてすむという効果がある。
また、以上により、読み出しが早く、長寿命の不揮発性メモリが実現するのでSRAMに置き換わる広い用途の強誘電体メモリが構成できるという効果がある。
さらにまた、上記の構成では仕事関数の異なる物質材料を電極に用いるだけなので、非対称性のヒステリシス特性を持つ特殊な新たな強誘電体薄膜を開発する必要はなく、一般的な対称のヒステリシス特性の材料をそのまま用いればよいので、早期に具現化し、かつ製造上も容易であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(本発明の動作原理)
本発明の強誘電体メモリ装置の実施形態を説明するのに先立って、本発明の動作原理について図1を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の強誘電体メモリ装置のメモリセル(記憶素子)として使用される強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性(ヒステリシス特性)を示す図である。図1の特性は、従来の一般的な強誘電体コンデンサの特性を示す図8の分極電荷−印加電圧特性を電圧軸方向に平行移動させた特性である。図1に示すような特性を持つ強誘電体コンデンサの具体的な構成は後述するものとし、図1の特性を有する強誘電体コンデンサが得られたものとして本発明の動作原理を以下に説明する。
【0026】
図1の特性を有する強誘電体コンデンサは後述のように2つの第1端子および第2端子を備え、第1端子を基準として第2端子に加わった正の電位を、図1における横軸である印加電圧の正の方向とする。
いま、その強誘電体コンデンサにおいて、第2端子に第1端子より充分に高い電圧を加えると、図1の101の特性点にまで分極する。その状態で、第1端子と第2端子の間の電圧を0〔V〕とすると内部の分極は残留分極として保存され、104の特性点の縦軸に示す分極電荷を内部に保存する。
【0027】
一方、その強誘電体コンデンサにおいて、第1端子に第2端子より充分に高い電圧を加えると102の特性点にまで分極する。そして、特性点102の状態にあった強誘電体コンデンサを開放して第1端子と第2端子の電位差を零とすると、内部の分極は残留分極として保存され、103の特性点の縦軸に示す残留分極を持つ状態となる。
特性点103と特性点104では、ともに第1端子と第2端子の電位差は零である。それでいて、特性点103では図1に示す負の残留分極を持ち、特性点104では図1に示す正の残留分極を持っている。つまり、強誘電体コンデンサとして放置された状態で、残留分極は2つの状態を記憶することになる。
【0028】
次に、第1端子を基準として第2端子に正の微弱な電圧ΔVN、つまり、抗電圧以下の電圧を正の方向に印加する。このとき、前の状態が特性点103にあれば、特性点103と特性点105との差異の電荷ΔQHNが出力される。一方、前の状態が特性点104であれば、特性点104と特性点106との差異の電荷ΔQLNが出力されることが期待される。ただし、実際には特性点104の場合には、電圧ΔVNを加えても特性点106に戻る訳ではなく、ヒステリシス特性を持っていて図1の特性点107に示すように特性点106よりは分極の影響が残る点に留まる。
【0029】
したがって、特性点104と特性点106との差異の電荷量ΔQLNより少ない特性点104と特性点107との差異の電荷量ΔQ’LNが出てくる。つまり、内部状態が未知の強誘電体コンデンサに対して、同じ僅かな正の電圧を加えるとΔQHNもしくはΔQ’LNの電荷がでてくる。
このΔQHNとΔQ’LNは、図1から明らかに異なった電荷量である。これは図1において、特性点103と特性点104との各近傍では特性曲線の傾きが大きく異なるからである。このため、その差異を検出することで、内部状態を知ることができる。
【0030】
ここでは、抗電圧以下の僅かな電圧ΔVNしか加えておらず、データの読み出しの際には特性点101や特性点102には移動せず、したがって、データは破壊されない。つまり、非破壊でデータの読み出しができている。
なお、図1において、特性点106の場合は、加わった電圧ΔVNを零にして解除すれば,特性点104に戻る。また、特性点107の場合や特性点105の場合は、加わった電圧ΔVNを零にして解除したときに、必ずしも、それぞれ特性点104や特性点103には完璧にはもどらないが、これは図から明らかなように微々たるものである。少なくとも特性点101まで読み出す破壊読み出しに較べれば変位は非常に僅かであるので、強誘電体コンデンサの寿命は大幅に延びる。
(メモリセルの構成および動作)
次に、図1に示すヒステリシス特性を持つ強誘電体コンデンサを使用したメモリセルの構成例について、図2を参照して説明する。
【0031】
このメモリセルは、図2に示すように、1個の強誘電体コンデンサ211と1個のトランジスタ212とからなる、いわゆる1トランジスタ1コンデンサ(1T1C)型のものであり、ワード線(WL)213、ビット線(BL)214、およびプレート線(PL)215を含んでいる。
さらに詳述すると、トランジスタ212は、N型の絶縁ゲート電界効果型トランジスタ(以下MOSFETと略す)からなる。ワード線213はMOSFET212のゲート電極に接続され、ビット線214はMOSFET212のソース電極またはドレイン電極となる第1端子に接続されている。プレート線215は強誘電体コンデンサ211の第1電極に接続され、強誘電体コンデンサ211の第2電極はMOSFET212のドレイン電極またはソース電極となる第2端子に接続されている。
【0032】
なお、実際には、図2に示すメモリセルは、複数個を行列状(アレイ状)に並べて構成し、ワード線、ビット線、プレート線はそれぞれ複数本、存在すると同時に、共有化している。
次に、このような構成からなる図2に示すメモリセルにおいて、データの書き込み方法を説明する。
【0033】
まず、強誘電体コンデンサ211にデータを書き込む場合は、対象となるメモリセルに対しワード線213を正電位にしてMOSFET212をオン(ON)させる。そして、ビット線214に負電位または零電位を、プレート線215に充分な値の正電位Vを印加すると、図1における特性点101の分極状態になる。このときは、印加電圧が解除されても特性点104に示す点の正の内部分極が残留分極として、強誘電体コンデンサ211に保存される。
【0034】
一方、ビット線214に充分な値の正電位Vを、プレート線215に負電位または零電位を印加すれば、図1の特性点102の分極状態になる。このときは、印加電圧が解除されても特性点103に示す正の内部分極が、強誘電体コンデンサ211に保存される。
以上の動作により、印加電圧が解除されても、残留分極として異なる2種類の状態をデータとして書き込める。
【0035】
次に、以上のように書き込まれたデータを読み出す方法について、図3を参照して説明する。
まず、ビット線(BL)214を、図3(A)に示すように、零電位にプリチャージする。そして、ワード線(WL)213を、図3(B)に示すように正電位にし、MOSFET212をオンさせる。次に、ビット線214を切り離して零電位のフローティング状態とする。さらに、プレート線(PL)215に,図3(C)に示すように、抗電圧以下の僅かな電圧ΔVNを加える。すると、強誘電体コンデンサ211にその電圧ΔVNが加わり、ビット線(BL)214に、図1に示すようなΔQHNもしくはΔQ’LNの電荷が出力される。この結果、ビット線(BL)214には、図3(A)に示すように、ビット線214の寄生静電容量を反映した電圧ΔVHNもしくは電位ΔVLNの電位変化として現れる。
【0036】
このように、ビット線214に出力される電位ΔVHNもしくは電位ΔVLNは,図4に示すセンスアンプ回路で検出する。
このセンスアンプ回路は、図4に示すようにコンパレータ回路420からなる。このコンパレータ回路420は、図示のように、入力信号端子421、リファレンス電圧端子422、および出力端子423を備えている。
【0037】
リファレンス電圧端子422には、ΔVHNもしくはΔVLNの中間電位となる信号Vrefが加えられている。その中間電位の生成方法は様々であるが、例えば2つのダミーセルで生じたΔVHNもしくはΔVLNを合成して丁度中間となる電位を生成させ、この生成電位をリファレンス電圧端子422に加えるようにしている。
この結果、コンパレータ回路420は、ビット線214に生じた電位ΔVHNもしくは電位ΔVLNをその中間電位と比較して、読み出したデータが「1」か「0」かを判定し、この判定結果を出力端子423から「1」もしくは「0」のデジタル信号として出力する。
【0038】
以上の動作において、メモリセルのデータは破壊されていない。したがって、図2に示すメモリセルでは、データの再書き込みのサイクルは不要である。
(強誘電体メモリ装置の構成)
次に、図2に示すメモリセルを使用した本発明の強誘電体メモリ装置の実施形態の全体構成の概略について、図5を参照して説明する。
【0039】
この強誘電体メモリ装置は、図5に示すように、メモリセル群531と、ワード線選択回路532と、ビット線選択回路533と、センス回路534と、ライト回路535と、入出力回路536と、全体制御回路537と、を備えている。
メモリセル群531は、その内部に図2に示すメモリセルがアレイ状に並んでいる。ワード線選択回路532とビット線選択回路533は、メモリセル群531内に配置される複数のメモリセルと接続されるワード線とビット線とをそれぞれ選択するものであり、この選択によりメモリセル群531内の所望の1つのメモリセルが選択できる。
【0040】
ライト回路535は、入出力回路536を経たデータを、ワード線選択回路532とビット線選択回路533で選択されたメモリセルに対し、全体制御回路537の指令にしたがって書き込むものである。また、センス回路534は、ワード線選択回路532とビット線選択回路533に選択されたメモリセルに記憶されるデータを全体制御回路537の指令にしたがって読み出し、この読み出したデータを入出回路536に出力するものである。
【0041】
なお、図5に示す強誘電体メモリ装置において、ワード線選択回路532、ビット線選択回路533、および全体制御回路537でメモリセルを選択するアドレス選択回路として機能する。また、ライト回路535、入出力回路536、および全体制御回路537で書き込み回路として機能する。さらに、センス回路534、入出力回路536、および全体制御回路537で読み出し回路として機能する。
【0042】
また、図2ではプレート線215を示してあるが、図5においてプレート線について記述がないのは、メモリセルによってはプレート線が存在しないものも有るためであり、図5ではプレート線に言及していない。
(メモリセルの変形例)
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に用いるメモリセルの第2の構成例について、図6を参照して説明する。
【0043】
図6において、311A、311Bは図1に示すヒステリシス特性を持つ強誘電体コンデンサであり、316はワード線であり、317A、317Bはビット線である。図3に示すように、ワード線とビット線は複数本存在し、その交点に強誘電体コンデンサが形成される構成となっている。図6のメモリセルの構成は、1個の強誘電体コンデンサで1メモリを構成する、いわゆる1コンデンサ(1C)型を示している。
【0044】
このような構成からなるメモリセルにおいても、図2に示すメモリセルと同様にデータの非破壊読み出しは可能である。なお、図6のメモリセルの構成においては、図2に示すプレート線は存在しない。
(強誘電体コンデンサの他の特性例)
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷−印加電圧特性の第2の特性について、図7を参照して説明する。
【0045】
図1では、本発明に係る強誘電体コンデンサの特性として、従来の一般的な強誘電体コンデンサの特性を電圧軸方向に、全体に右方向へ特性をずらしていたが、図7は逆に電圧を横軸として、全体に左方向に特性をずらすようにしたものである。
次に、図7に示すヒステリシス特性を持つ強誘電体コンデンサにおいて、データの書き込み、および読み出し動作について説明する。
【0046】
図7の特性を有する強誘電体コンデンサは第1端子および第2端子を備え、第1端子を基準として第2端子に加わった正の電位を、図7における横軸である印加電圧の正の方向とする。
いま、その強誘電体コンデンサにおいて、第2端子に第1端子より充分に高い電圧を加えると、図7の701の特性点にまで分極する。その状態で、第1端子と第2端子の間の電圧を零とすると内部の分極は残留分極として保存され、704の特性点の縦軸に示す分極電荷を内部に保存する。
【0047】
一方、その強誘電体コンデンサにおいて、第1端子に第2端子より充分に高い電圧を加えると702の特性点にまで分極する。そして、特性点702の状態にあった強誘電体コンデンサを開放して第1端子と第2端子の電位差を零とすると、内部の分極は残留分極として保存され、703の特性点の縦軸に示す残留分極を持つ状態となる。
次に、第1端子を基準として第2端子に正の微弱な電圧ΔVN、つまり、抗電圧以下の電圧を負の方向に印加する。このとき、前の状態が特性点703にあれば、特性点703と特性点705との差違の電荷ΔQHNが出力される。一方、前の状態が特性点704であれば、特性点704と特性点706との差違の電荷ΔQLNが出力される。
【0048】
以上の説明からわかるように、図7の場合には、印加電圧0〔V〕で開放されたときに負の残留分極を持つ特性点703と、正の残留分極を持つ特性点704でデータを記憶しているが、特性点703と特性点704では分極電荷−印加電圧特性が異なっているので、この場合でも抗電圧以下の僅かな電圧ΔVNを用いて、データの非破壊読み出しが可能である。
(強誘電体コンデンサの構造例)
次に、図1や図7に示すような特性を有する本発明に係る強誘電体コンデンサの具体的な構造例について、従来例を考慮しながら説明する。
【0049】
図11は、従来からの強誘電体コンデンサの構造の断面図を示し、これは本発明に係る強誘電体コンデンサの構造と比較するためである。
従来の強誘電体コンデンサは、図11に示すように、絶縁基板1240上に形成され、金属膜からなる金属電極1242、1243によって強誘電体膜1241の両側を挟むようにしたものである。そして、金属電極1242と金属電極1243とには、電気信号が供給されるようになっている。
【0050】
絶縁基板1240は、二酸化珪素(SiO2)を主成分とする基板であり、強誘電体コンデンサをのせるようになっている。強誘電体膜1241は、一般にPZT、PZTN、SBT等が用いられる。なお、前述したPZTとはPb(Zr,Ti)O3の総称であり、またPZTNとはPZTのTiの一部をNbで置き換えたものの総称であり、またSBTとはSrBi2Ta2O9もしくはそれに近い組成の総称である。また、金属電極1242と金属電極1243は、一般に白金(Pt)が用いられる。
【0051】
図11に示す構造からなる従来の強誘電体コンデンサの分極電荷−印加電圧特性のヒステリシス特性は、一般に知られている図8に示すものとなる。図8の特性は、横軸の印加電圧に対して対称形の特性を示している。
図12は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第1の例を示す断面図である。
【0052】
この強誘電体コンデンサは、図12に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1340上に形成され、金属膜からなる金属電極1342と、電極として機能する酸化物導電性膜1344とによって、強誘電体膜1341の両側を挟むようにしたものである。そして、金属電極1342と電極としての酸化物導電性膜1344には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0053】
強誘電体膜1341の材料としては、図11に示す強誘電体膜1241と同様に、PZT、PZTN、SBT等が用いられる。また、第1電極である酸化物導電性膜1344の材料としてはRuO2、IrO2などが使用され、第2電極である金属電極1342の材料としては白金(Pt)などが使用される。
ここで、第1電極および第2電極は、仕事関数の異なる材料からなる金属膜から形成するようにしても良い。
【0054】
このような構成からなる強誘電体コンデンサでは、第1電極である酸化物導電性膜1344と、第2電極である金属電極1342とではその構成材料が異なる。このため、その両電極の間には仕事関数差があり、その仕事関数差だけ、電圧軸上で分極電荷−印加電圧特性はずれて平行移動する(例えば図1参照)。また、第1電極と第2電極の材料に何を選ぶかによって仕事関数の差も変わり、その特性の移動の度合いや方向も変えることができる。
【0055】
図13は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第2の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図13に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1440上に形成され、電極として機能する酸化物導電性膜1445と、金属膜からなる金属電極1443とによって、強誘電体膜1441の両側を挟むようにしたものである。そして、電極としての酸化物導電性膜1445と金属電極1443とには、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0056】
ここで、図13と図12の構造上の違いは、金属電極を上部電極に用いたか下部電極に用いたかの差違であり、分極電荷−印加電圧特性の移動の方向が異なる。また製造上の難易度によってどちらも選択可能である。
図14は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第3の例を示す断面図である。
【0057】
この強誘電体コンデンサは、図14に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1540上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1542、1543によって、強誘電体膜1541の両側を挟むとともに、金属電極1542の表面側に導体膜1553を密着させるようにしたものである。そして、金属電極1542には電気信号が直接供給され、金属電極1543には電気信号が導体膜1553を介することにより供給されるようになっている。
【0058】
導体膜1553は、不純物原子を含んだポリシリコンからなる。ポリシリコンは、半導体であるが、不純物原子をドープすることにより導電性を有するので、導体として扱うことができる。従って、導体膜1553はシリコンを材料とするが、シリコンは4価の原子であるので、不純物原子としては3価の原子ホウ素(硼素B)や5価の原子リン(燐P)等が使用される。
【0059】
このような構造からなる強誘電体コンデンサでは、金属電極1543の表面に不純物を含んだ導体膜1553が付加されているので、その分極電荷−印加電圧特性は導体膜1553と金属電極1543の仕事関数差だけ平行移動する。このとき、導体膜1553を形成するシリコンに添加される不純物原子として3価の原子または5価の原子のどちらかを選ぶかにより、特性曲線の移動の方向を選択でき、かつ不純物原子のイオンのドープ量によって仕事関数が変化するので、その平行移動の移動量を変えることができる。
【0060】
なお、図14の強誘電体コンデンサでは、金属電極1543の表面に導体膜1553を密着させるようにしたが、金属電極1543をポリシリコンからなる導体膜1553だけで形成するようにしても良い。
図15は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第4の例を示す断面図である。
【0061】
この強誘電体コンデンサは、図15に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1640上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1642、1643によって、強誘電体膜1641の両側を挟むとともに、金属電極1642の表面側に導体膜1652を密着させるようにしたものである。導体膜1652は、図14に示す導体膜1543と同様なポリシリコンからなる。そして、金属電極1643には電気信号が直接供給され、金属電極1642には電気信号が導体膜1652を介することにより供給されるようになっている。
【0062】
このような構造からなる強誘電体コンデンサでは、金属電極1642の表面側に不純物を含んだ導体膜1652が密着(付加)されているので、その分極電荷−印加電圧特性は導体膜1652と金属電極1642の仕事関数差だけ平行移動する。
ここで、図15と図14との構造上の違いは、ポリシリコンからなる導体膜を上部電極に用いたか下部電極に用いたかの差違であり、分極電荷−印加電圧特性の移動の方向が異なる。
【0063】
図16は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第5の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図16に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1740上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1742、1743によって、強誘電体膜1741の両側を挟むとともに、金属電極1742、1743の各表面側に異なる不純物原子を含むポリシリコンからなる導体膜1752、1753をそれぞれ密着させるようにしたものである。そして、金属電極1742には電気信号が導体膜1752を介することにより供給され、金属電極1743には電気信号が導体膜1753を介することにより供給されるようになっている。
【0064】
このような構造からなる強誘電体コンデンサでは、金属電極1742はその表面側に第1の不純物原子を含んだ導体膜1752が密着され、金属電極1743はその表面側に第1の不純物原子とは異なる第2の不純物原子を含んだ導体膜1753が密着されている。このため、強誘電体コンデンサとしての分極電荷−印加電圧特性は、導体膜1752と金属電極1742の仕事関数差、および導体膜1753と金属電極1743の仕事関数差の合計だけ平行移動する。したがって、分極電荷−印加電圧特性の平行移動の量を大きく、かつ自由に設定できる。
【0065】
なお、図16の強誘電体コンデンサでは、金属電極1742、1743の各表面に導体膜1752、1753をそれぞれ密着させるようにしたが、金属電極1742、1743をポリシリコンからなる導体膜1752、1753だけで形成するようにしても良い。
図17は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第6の例を示す断面図である。
【0066】
この強誘電体コンデンサは、図17に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1840上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1842、1843によって、強誘電体膜1841の両側を挟むとともに、金属電極1843はその裏面側に導体膜1853を密着させるようにしたものである。導体膜1853は、図14に示す導体膜1553と同様なポリシリコンからなる。そして、金属電極1842、1843には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0067】
このような構造からなる強誘電体コンデンサを図14に示すものと比較すると、図14に示す上部側の導体膜1553と金属電極1543が、図17では金属電極1843と導体膜1853とにその上下が入れ替わっている点が異なる。
したがって、図17に示す強誘電体コンデンサでは、その分極電荷−印加電圧特性が図14に示す強誘電体コンデンサの特性と同じように平行移動する。図14の構造を選ぶか図17の構造を選ぶかは、主に製造上の容易さと信頼性による。
【0068】
図18は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第7の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図18に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1940上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1942、1943によって、強誘電体膜1941の両側を挟むとともに、金属電極1942はその裏面側に導体膜1952を密着させるようにしたものである。導体膜1952は、図15に示す導体膜1652と同様なポリシリコンからなる。そして、金属電極1942、1943には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0069】
このような構造からなる強誘電体コンデンサを図15に示すものと比較すると、図15に示す下部側の導体膜1652と金属電極1642が、図18では金属電極1942と導体膜1952とにその上下が入れ替わっている点が異なる。
したがって、図18に示す強誘電体コンデンサでは、その分極電荷−印加電圧特性が図15に示す強誘電体コンデンサの特性と同じように平行移動する。図15の構造を選ぶか図18の構造を選ぶかは、主に製造上の容易さと信頼性による。
【0070】
図19は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第8の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図19に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板2040上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極2042、2043によって、強誘電体膜2041の両側を挟むとともに、金属電極2042はその裏面側に導体膜2052を密着させ、かつ、金属電極2043はその裏面側に導体膜2053を密着させるようにしたものである。
【0071】
導体膜2052、2053は、図16に示す導体膜1752、1753と同様に、半導体膜にそれぞれ別の不純物原子を含んだポリシリコンからなる。また、金属電極2042、2043には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
このような構造からなる強誘電体コンデンサを図16に示すものと比較すると、図16に示す下部側の金属電極1742と導体膜1752、および上部側の金属電極1743と導体膜1753が、図19では金属電極2042と導体膜2052、および金属電極2043と導体膜2053に、その上下がそれぞれ入れ替わっている点が異なる。
【0072】
したがって、図19に示す強誘電体コンデンサでは、その分極電荷−印加電圧特性が図16に示す強誘電体コンデンサの特性と同じように平行移動する。図16の構造を選ぶか図19の構造を選ぶかは、主に製造上の容易さと信頼性による。また、図19の構造は、図16の構造と同様に分極電荷−印加電圧特性の平行移動の量を大きく、かつ自由に設定できる。
(その他)
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の本質は、強誘電体膜を挟む2つの端子の電極材料の仕事関数の相違を利用して、強誘電体コンデンサとしての分極電荷−印加電圧特性を電圧軸方向に平行移動させ、強誘電体コンデンサを外部から見たときのヒステリシス特性を非対称とし、その非対称性から生ずる微小電圧による出力電荷の差異を利用して内部状態を検出するものである。したがって、以上の条件を満たすものならば他の方法でもよい。
【0073】
例えば、図12、13で用いた仕事関数の異なる電極材料を用いる手法と、図14、図15、図16で用いた導体膜を用いる手法とを組み合わせてもよい。
また、メモリセル構造としては1T1Cと1Cについて図2、図6で述べたが、従来から、よく用いられている2T2Cのメモリセル構造の破壊読み出しについて本発明の非破壊読み出し手法は適用できて、寿命を延ばすこともできる。かつ、他のメモリセル構造に対しても周辺回路の制御方式を変更すれば同様に適用できる。
【0074】
また、センスアンプ回路として図4の回路を示したが、これは回路動作原理を説明するために一番簡単な回路を例としてあげたもので、実際には様々な回路があり、かつ用いることができる。
また、メモリ装置全体の構成例として図5の回路ブロック図に示したが、これはメモリ装置の最も簡単で一般的な回路ブロックの例であって、回路ブロックを分割、あるいは統合してもよいし、また他の機能回路を付け加えてもよい。
【0075】
また、強誘電体膜の材料としては前述した、PZT、PZTN、SBT以外のものを用いてもよい。例えば(Ba,Sr)TiO3、Bi4Ti3O12、BaBiNb2O9等々がある。また、組成の割合が変われば無数にある。
また、酸化物導電性膜の材料としては前述したRuO2、IrO2以外にSrRuO3、RhO2等でもよい。
【0076】
また、金属膜の電極の材料として前述した白金(Pt)以外でも可能で、Ta、Tiを用いてもよいし、Pt/Tiの合金を用いてもよい。
また、半導体膜に不純物原子を含んだ導体膜の材質はポリシリコン以外でも良いし、また、不純物原子は3価や5価の原子であれば他の原子も有力である。
さらに、不純物原子のドープ量を変えれば仕事関数が変わり、強誘電体コンデンサとしての分極電荷−印加電圧特性を電圧軸方向に平行移動させる移動量を変えることがで、かつ適正値に調整できる。 以上、強誘電体膜の特性に合う最適な特性と製造上の課題により、材質や構造を選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の第一例を示す特性図である。
【図2】本発明の強誘電体メモリ装置に用いるメモリセルの第1の構成例を示す回路図である。
【図3】図2に示すメモリセルからデータを読み出す際の各部の信号あるいは変位を示すタイミングチャート図である。
【図4】本発明の強誘電体メモリ装置に用いるセンスアンプの回路図である。
【図5】本発明の強誘電体メモリ装置の全体の構成概要を示すブロック図である。
【図6】本発明の強誘電体メモリ装置に用いるメモリセルの第2の構成例を示す回路図である。
【図7】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の第2例を示す特性図である。
【図8】従来の強誘電体コンデンサの分極電荷−印加電圧特性の一例を示す特性図である。
【図9】従来の破壊読み出し強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の一例を示す特性図である。
【図10】従来の非破壊読み出し強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の他の例を示す特性図である。
【図11】従来の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造を示す断面図である。
【図12】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第1例を示す断面図である。
【図13】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第2例を示す断面図である。
【図14】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第3例を示す断面図である。
【図15】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第4例を示す断面図である。
【図16】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第5例を示す断面図である。
【図17】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第6例を示す断面図である。
【図18】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第7例を示す断面図である。
【図19】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第8例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
211、311A、311B・・・強誘電体コンデンサ、212・・・MOSFET、213、316・・・ワード線、214、317A、317B・・・ビット線、215・・・プレート線、420・・・コンパレータ回路、421・・・入力信号端子、422・・・リファレンス電圧端子、423・・・出力端子、531・・・メモリセル群、532・・・ワード線選択回路、533・・・ビット線選択回路、534・・・センス回路、535・・・ライト回路、536・・・入出力回路、537・・・全体制御回路、1240、1340、1440、1540、1640、1740、1840、1940、2040・・・基板、1241、1341、1441、1541、1641、1741、1841、1941・・・強誘電体膜、1242、1243、1342、1443、1542、1543、1642、1643、1742、1743、1842、1843、1942、1943、2042、2043・・・金属電極、1344、1445・・・酸化物導電性膜、1553、1652、1752、1753、1853、1952、2052、2053・・・導体膜
【技術分野】
【0001】
本発明は不揮発性メモリである強誘電体メモリにおいて、メモリ素子の読み出し回数による寿命を永くするために、データを非破壊読み出しするようにした強誘電体メモリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリ分野のなかで電気的に書き込み、消去可能な不揮発性メモリの重要性が増している。不揮発性メモリには各種のものがあるが、高速性、低電圧特性、低消費電力等の観点から強誘電体メモリが注目されている。強誘電体メモリの具体的な構成は、以下の例に示すように様々である。
強誘電体メモリの一例としては、強誘電体膜内部の残留分極状態により2つの状態を定義する強誘電体コンデンサに抗電圧以上の電圧をかけて電荷を取り出し、1か0かの内部の記憶状態を検知する方法がある。この方法を簡単に示したのが図9である。
【0003】
図9において、1001、1002、1003、1004の4点の特性点を通る曲線が、強誘電体コンデンサの第1端子と第2端子の間に加えた印加電圧Vと内部分極電荷Qの特性を表している。
特性点1001は強誘電体コンデンサの第2端子に第1端子より正の高い電圧Vを加えた状態を示し、特性点1002は第1端子に第2端子より正の高い電圧Vを加えた状態を示している。特性点1001と特性点1002においては、強誘電体コンデンサの内部の分極は正負、すなわち逆の分極をする。
【0004】
いま、特性点1001の状態にあった強誘電体コンデンサの第1端子と第2端子の電位差を零とすると、その内部の分極は残留分極として保存され、特性点1004に示す状態となる。また、特性点1002の状態にあった強誘電体コンデンサの第1端子と第2端子の電位差を0とすると、その内部の分極は残留分極として保存されて、特性点1003に示す状態となる。
【0005】
したがって、強誘電体コンデンサの内部分極電荷と印加電圧は、ヒステリシス特性を持っていると同時に、強誘電体コンデンサの両端の端子を開放し、電圧を零としても前の状態によって、異なった残留分極を有している。この2つの状態が、特性点1003と特性点1004にそれぞれ相当する。
さて、強誘電体コンデンサの両端の端子が開放された状態から、第1端子を基準として第2端子に電圧V(ΔVB)をかけると、特性点1001に移動する。このとき、前の状態が特性点1003であれば、図9に示すΔQHBの電荷が取り出され、特性点1004の状態であればΔQLBの電荷が取り出される。図9から明らかにΔQLB≪ΔQHBであるので、残留分極として記憶されていた前の状態を1または0として判別することができる。
【0006】
このような方法は電荷を取り出す、つまりデータを破壊してしまうので、破壊読み出しと一般的に呼ばれる方式であり、この方式の一例として特許文献1に示すものが知られている。
一方、非破壊読み出し方式としては、絶縁ゲート電界効果型トランジスタ(以下、MOSFETと略す)のゲート電極の上方に強誘電体薄膜を設け、その強誘電体薄膜の分極の状態によって、MOSFETのスレッショルド電圧の相違で流れる電流値が異なることから、書き込まれた分極の方向、つまり1または0かの差違を検出する方式がある。この一例として、特許文献2に示すものが知られている。
【0007】
また、強誘電体薄膜の材質に工夫を凝らすことにより、図10に示すように、分極−電界ヒステリシス特性を非対称として、図10に示す特性点1103と特性点1104に相当する特性の傾きの差から、微弱な電圧を強誘電体コンデンサにかけ、データを非破壊で状態を検知する方法がある。この例として、特許文献3および特許文献4に示すものが知られている。
【特許文献1】特開平11−39882号公報
【特許文献2】特表2002−543627号公報
【特許文献3】特開平2−198094号公報
【特許文献4】特開平5−82800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来の強誘電体メモリでは、以下に述べるような不具合がそれぞれある。
すなわち、図9で説明し、あるいは特許文献1に示されるデータを破壊読み出しする方式では、データの読み出し後、消えたデータを再書き込みする必要がある。このため、データの書き込みとデータの消滅が繰り返され、現状では、データの書き換え回数が1010〜1012回が限界であり、この限界に達すると強誘電体材料としての寿命がつきてしまうという不具合がある。そのため、頻繁にデータが読み書きされるスタティックランダムアクセスメモリ(以下SRAMと略す)としては品質上、信頼性上、使用できず、用途が限られるという課題がある。
【0009】
また、特許文献2に示されるMOSFETのゲート電極上に強誘電体薄膜を配置する方式では、ゲートの上に乗せた強誘電体材料との形成上の困難さのために、現状では、1日から1週間程度でゲートの上に形成された強誘電体薄膜のデータが消滅してしまうという不具合がある。
さらに、特許文献3、4に示される強誘電体薄膜の分極電荷−印加電圧のヒステリシス特性で非対称のものを作り、その非対称性を利用してデータを非破壊で読み出す方法があるが、図10や特許文献4の代表図に見られる複雑な非線形のヒステリシス特性を持つ材料物質を得ることは実際には容易でなく、開発の遅れや製造上のトラブルを起こしやすいという不具合がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、このような不具合を解決するもので、その目的とするところは、強誘電体コンデンサを用い、非破壊読み出しとし、かつ、現状の実績のある強誘電体薄膜材料をそのまま活用できる方法を用いることで、長寿命で、かつ新たな格別な材料開発期間もなく、製造上も実績のある手法で確実にSRAMをはじめとする広い範囲の用途として使用できる強誘電体メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、各発明は、以下のように構成するようにした。
すなわち、第1の発明は、第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、を少なくとも有するものである。
【0012】
第2の発明は、第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっている。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなる。
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなる。
【0014】
第5の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が金属膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質の金属とは仕事関数が異なる金属膜からなる。
第6の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質が含む不純物原子と異なる原子価の半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなる。
【0015】
第7の発明は、第4または第6の発明において、前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなる。
第8の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、を少なくとも有するものである。
【0016】
第9の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっている。
【0017】
第10の発明は、第8または第9の発明において、前記第1の導電物質もしくは前記第2の導電物質が、半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなる。
第11の発明は、第10の発明において、前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなる。
【0018】
第12の発明は、第8または第9の発明において、前記第1の導電物質、もしくは前記第2の導電物質が、酸化物導電性膜からなる。
第13の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、を少なくとも有するものである。
【0019】
第14の発明は、第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっている。
【0020】
第15の発明は、第13または第14の発明において、前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなる。
第16の発明は、第15の発明において、前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜は半導体膜としてポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなる。
【0021】
第17の発明は、第13または第14の発明において、前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなる。
第18の発明は、第1から第17のうちのいずれかの発明において、前記強誘電体コンデンサは、1トランジスタ・1キャパシタ型のメモリセルを構成するものである。
第19の発明は、第1から第17のうちのいずれかの発明において、前記強誘電体コンデンサは、1キャパシタ型のメモリセルを構成するものである。
【0022】
第20の発明は、第1から第17のうちのいずれかの発明において、前記強誘電体コンデンサの強誘電体薄膜は、PZT、PZTN、もしくはSBTからなる。
以上のように、本発明の強誘電体メモリ装置は、仕事関数の互いに異なる導電物質を第1電極、第2電極として強誘電体膜を挟む構造、もしくは電極間の仕事関数差の観点において、それと等価の構造の強誘電体コンデンサをメモリセルの構成要素として用いるようにし、データを読み出す際には強誘電体膜の抗電圧より低い電圧を加えて、メモリ情報を読み出すようにした。
【0023】
したがって、上記の構成によれば、強誘電体薄膜を挟む第1電極と第2電極の仕事関数差分だけ、強誘電体薄膜の分極−電界ヒステリシス特性が加える電圧方向に対して平行移動し、強誘電体コンデンサに加わる電圧が零の時点において、内部分極状態の差違により、印加電圧−電流特性に非対称性が生じているので、抗電圧以下の電圧を加えたときに生じる電流の差異により残留電荷の内部状態が1か0かのどちらかを検知できる。したがってデータを非破壊でデータ情報を読み出すことができるので、寿命が非常に永くなるという効果がある。
【0024】
また、非破壊読み出しであるので、データの再書き込みが不要とり、読み出し動作におけるサイクルタイムが短くてすむという効果がある。
また、以上により、読み出しが早く、長寿命の不揮発性メモリが実現するのでSRAMに置き換わる広い用途の強誘電体メモリが構成できるという効果がある。
さらにまた、上記の構成では仕事関数の異なる物質材料を電極に用いるだけなので、非対称性のヒステリシス特性を持つ特殊な新たな強誘電体薄膜を開発する必要はなく、一般的な対称のヒステリシス特性の材料をそのまま用いればよいので、早期に具現化し、かつ製造上も容易であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(本発明の動作原理)
本発明の強誘電体メモリ装置の実施形態を説明するのに先立って、本発明の動作原理について図1を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の強誘電体メモリ装置のメモリセル(記憶素子)として使用される強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性(ヒステリシス特性)を示す図である。図1の特性は、従来の一般的な強誘電体コンデンサの特性を示す図8の分極電荷−印加電圧特性を電圧軸方向に平行移動させた特性である。図1に示すような特性を持つ強誘電体コンデンサの具体的な構成は後述するものとし、図1の特性を有する強誘電体コンデンサが得られたものとして本発明の動作原理を以下に説明する。
【0026】
図1の特性を有する強誘電体コンデンサは後述のように2つの第1端子および第2端子を備え、第1端子を基準として第2端子に加わった正の電位を、図1における横軸である印加電圧の正の方向とする。
いま、その強誘電体コンデンサにおいて、第2端子に第1端子より充分に高い電圧を加えると、図1の101の特性点にまで分極する。その状態で、第1端子と第2端子の間の電圧を0〔V〕とすると内部の分極は残留分極として保存され、104の特性点の縦軸に示す分極電荷を内部に保存する。
【0027】
一方、その強誘電体コンデンサにおいて、第1端子に第2端子より充分に高い電圧を加えると102の特性点にまで分極する。そして、特性点102の状態にあった強誘電体コンデンサを開放して第1端子と第2端子の電位差を零とすると、内部の分極は残留分極として保存され、103の特性点の縦軸に示す残留分極を持つ状態となる。
特性点103と特性点104では、ともに第1端子と第2端子の電位差は零である。それでいて、特性点103では図1に示す負の残留分極を持ち、特性点104では図1に示す正の残留分極を持っている。つまり、強誘電体コンデンサとして放置された状態で、残留分極は2つの状態を記憶することになる。
【0028】
次に、第1端子を基準として第2端子に正の微弱な電圧ΔVN、つまり、抗電圧以下の電圧を正の方向に印加する。このとき、前の状態が特性点103にあれば、特性点103と特性点105との差異の電荷ΔQHNが出力される。一方、前の状態が特性点104であれば、特性点104と特性点106との差異の電荷ΔQLNが出力されることが期待される。ただし、実際には特性点104の場合には、電圧ΔVNを加えても特性点106に戻る訳ではなく、ヒステリシス特性を持っていて図1の特性点107に示すように特性点106よりは分極の影響が残る点に留まる。
【0029】
したがって、特性点104と特性点106との差異の電荷量ΔQLNより少ない特性点104と特性点107との差異の電荷量ΔQ’LNが出てくる。つまり、内部状態が未知の強誘電体コンデンサに対して、同じ僅かな正の電圧を加えるとΔQHNもしくはΔQ’LNの電荷がでてくる。
このΔQHNとΔQ’LNは、図1から明らかに異なった電荷量である。これは図1において、特性点103と特性点104との各近傍では特性曲線の傾きが大きく異なるからである。このため、その差異を検出することで、内部状態を知ることができる。
【0030】
ここでは、抗電圧以下の僅かな電圧ΔVNしか加えておらず、データの読み出しの際には特性点101や特性点102には移動せず、したがって、データは破壊されない。つまり、非破壊でデータの読み出しができている。
なお、図1において、特性点106の場合は、加わった電圧ΔVNを零にして解除すれば,特性点104に戻る。また、特性点107の場合や特性点105の場合は、加わった電圧ΔVNを零にして解除したときに、必ずしも、それぞれ特性点104や特性点103には完璧にはもどらないが、これは図から明らかなように微々たるものである。少なくとも特性点101まで読み出す破壊読み出しに較べれば変位は非常に僅かであるので、強誘電体コンデンサの寿命は大幅に延びる。
(メモリセルの構成および動作)
次に、図1に示すヒステリシス特性を持つ強誘電体コンデンサを使用したメモリセルの構成例について、図2を参照して説明する。
【0031】
このメモリセルは、図2に示すように、1個の強誘電体コンデンサ211と1個のトランジスタ212とからなる、いわゆる1トランジスタ1コンデンサ(1T1C)型のものであり、ワード線(WL)213、ビット線(BL)214、およびプレート線(PL)215を含んでいる。
さらに詳述すると、トランジスタ212は、N型の絶縁ゲート電界効果型トランジスタ(以下MOSFETと略す)からなる。ワード線213はMOSFET212のゲート電極に接続され、ビット線214はMOSFET212のソース電極またはドレイン電極となる第1端子に接続されている。プレート線215は強誘電体コンデンサ211の第1電極に接続され、強誘電体コンデンサ211の第2電極はMOSFET212のドレイン電極またはソース電極となる第2端子に接続されている。
【0032】
なお、実際には、図2に示すメモリセルは、複数個を行列状(アレイ状)に並べて構成し、ワード線、ビット線、プレート線はそれぞれ複数本、存在すると同時に、共有化している。
次に、このような構成からなる図2に示すメモリセルにおいて、データの書き込み方法を説明する。
【0033】
まず、強誘電体コンデンサ211にデータを書き込む場合は、対象となるメモリセルに対しワード線213を正電位にしてMOSFET212をオン(ON)させる。そして、ビット線214に負電位または零電位を、プレート線215に充分な値の正電位Vを印加すると、図1における特性点101の分極状態になる。このときは、印加電圧が解除されても特性点104に示す点の正の内部分極が残留分極として、強誘電体コンデンサ211に保存される。
【0034】
一方、ビット線214に充分な値の正電位Vを、プレート線215に負電位または零電位を印加すれば、図1の特性点102の分極状態になる。このときは、印加電圧が解除されても特性点103に示す正の内部分極が、強誘電体コンデンサ211に保存される。
以上の動作により、印加電圧が解除されても、残留分極として異なる2種類の状態をデータとして書き込める。
【0035】
次に、以上のように書き込まれたデータを読み出す方法について、図3を参照して説明する。
まず、ビット線(BL)214を、図3(A)に示すように、零電位にプリチャージする。そして、ワード線(WL)213を、図3(B)に示すように正電位にし、MOSFET212をオンさせる。次に、ビット線214を切り離して零電位のフローティング状態とする。さらに、プレート線(PL)215に,図3(C)に示すように、抗電圧以下の僅かな電圧ΔVNを加える。すると、強誘電体コンデンサ211にその電圧ΔVNが加わり、ビット線(BL)214に、図1に示すようなΔQHNもしくはΔQ’LNの電荷が出力される。この結果、ビット線(BL)214には、図3(A)に示すように、ビット線214の寄生静電容量を反映した電圧ΔVHNもしくは電位ΔVLNの電位変化として現れる。
【0036】
このように、ビット線214に出力される電位ΔVHNもしくは電位ΔVLNは,図4に示すセンスアンプ回路で検出する。
このセンスアンプ回路は、図4に示すようにコンパレータ回路420からなる。このコンパレータ回路420は、図示のように、入力信号端子421、リファレンス電圧端子422、および出力端子423を備えている。
【0037】
リファレンス電圧端子422には、ΔVHNもしくはΔVLNの中間電位となる信号Vrefが加えられている。その中間電位の生成方法は様々であるが、例えば2つのダミーセルで生じたΔVHNもしくはΔVLNを合成して丁度中間となる電位を生成させ、この生成電位をリファレンス電圧端子422に加えるようにしている。
この結果、コンパレータ回路420は、ビット線214に生じた電位ΔVHNもしくは電位ΔVLNをその中間電位と比較して、読み出したデータが「1」か「0」かを判定し、この判定結果を出力端子423から「1」もしくは「0」のデジタル信号として出力する。
【0038】
以上の動作において、メモリセルのデータは破壊されていない。したがって、図2に示すメモリセルでは、データの再書き込みのサイクルは不要である。
(強誘電体メモリ装置の構成)
次に、図2に示すメモリセルを使用した本発明の強誘電体メモリ装置の実施形態の全体構成の概略について、図5を参照して説明する。
【0039】
この強誘電体メモリ装置は、図5に示すように、メモリセル群531と、ワード線選択回路532と、ビット線選択回路533と、センス回路534と、ライト回路535と、入出力回路536と、全体制御回路537と、を備えている。
メモリセル群531は、その内部に図2に示すメモリセルがアレイ状に並んでいる。ワード線選択回路532とビット線選択回路533は、メモリセル群531内に配置される複数のメモリセルと接続されるワード線とビット線とをそれぞれ選択するものであり、この選択によりメモリセル群531内の所望の1つのメモリセルが選択できる。
【0040】
ライト回路535は、入出力回路536を経たデータを、ワード線選択回路532とビット線選択回路533で選択されたメモリセルに対し、全体制御回路537の指令にしたがって書き込むものである。また、センス回路534は、ワード線選択回路532とビット線選択回路533に選択されたメモリセルに記憶されるデータを全体制御回路537の指令にしたがって読み出し、この読み出したデータを入出回路536に出力するものである。
【0041】
なお、図5に示す強誘電体メモリ装置において、ワード線選択回路532、ビット線選択回路533、および全体制御回路537でメモリセルを選択するアドレス選択回路として機能する。また、ライト回路535、入出力回路536、および全体制御回路537で書き込み回路として機能する。さらに、センス回路534、入出力回路536、および全体制御回路537で読み出し回路として機能する。
【0042】
また、図2ではプレート線215を示してあるが、図5においてプレート線について記述がないのは、メモリセルによってはプレート線が存在しないものも有るためであり、図5ではプレート線に言及していない。
(メモリセルの変形例)
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に用いるメモリセルの第2の構成例について、図6を参照して説明する。
【0043】
図6において、311A、311Bは図1に示すヒステリシス特性を持つ強誘電体コンデンサであり、316はワード線であり、317A、317Bはビット線である。図3に示すように、ワード線とビット線は複数本存在し、その交点に強誘電体コンデンサが形成される構成となっている。図6のメモリセルの構成は、1個の強誘電体コンデンサで1メモリを構成する、いわゆる1コンデンサ(1C)型を示している。
【0044】
このような構成からなるメモリセルにおいても、図2に示すメモリセルと同様にデータの非破壊読み出しは可能である。なお、図6のメモリセルの構成においては、図2に示すプレート線は存在しない。
(強誘電体コンデンサの他の特性例)
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷−印加電圧特性の第2の特性について、図7を参照して説明する。
【0045】
図1では、本発明に係る強誘電体コンデンサの特性として、従来の一般的な強誘電体コンデンサの特性を電圧軸方向に、全体に右方向へ特性をずらしていたが、図7は逆に電圧を横軸として、全体に左方向に特性をずらすようにしたものである。
次に、図7に示すヒステリシス特性を持つ強誘電体コンデンサにおいて、データの書き込み、および読み出し動作について説明する。
【0046】
図7の特性を有する強誘電体コンデンサは第1端子および第2端子を備え、第1端子を基準として第2端子に加わった正の電位を、図7における横軸である印加電圧の正の方向とする。
いま、その強誘電体コンデンサにおいて、第2端子に第1端子より充分に高い電圧を加えると、図7の701の特性点にまで分極する。その状態で、第1端子と第2端子の間の電圧を零とすると内部の分極は残留分極として保存され、704の特性点の縦軸に示す分極電荷を内部に保存する。
【0047】
一方、その強誘電体コンデンサにおいて、第1端子に第2端子より充分に高い電圧を加えると702の特性点にまで分極する。そして、特性点702の状態にあった強誘電体コンデンサを開放して第1端子と第2端子の電位差を零とすると、内部の分極は残留分極として保存され、703の特性点の縦軸に示す残留分極を持つ状態となる。
次に、第1端子を基準として第2端子に正の微弱な電圧ΔVN、つまり、抗電圧以下の電圧を負の方向に印加する。このとき、前の状態が特性点703にあれば、特性点703と特性点705との差違の電荷ΔQHNが出力される。一方、前の状態が特性点704であれば、特性点704と特性点706との差違の電荷ΔQLNが出力される。
【0048】
以上の説明からわかるように、図7の場合には、印加電圧0〔V〕で開放されたときに負の残留分極を持つ特性点703と、正の残留分極を持つ特性点704でデータを記憶しているが、特性点703と特性点704では分極電荷−印加電圧特性が異なっているので、この場合でも抗電圧以下の僅かな電圧ΔVNを用いて、データの非破壊読み出しが可能である。
(強誘電体コンデンサの構造例)
次に、図1や図7に示すような特性を有する本発明に係る強誘電体コンデンサの具体的な構造例について、従来例を考慮しながら説明する。
【0049】
図11は、従来からの強誘電体コンデンサの構造の断面図を示し、これは本発明に係る強誘電体コンデンサの構造と比較するためである。
従来の強誘電体コンデンサは、図11に示すように、絶縁基板1240上に形成され、金属膜からなる金属電極1242、1243によって強誘電体膜1241の両側を挟むようにしたものである。そして、金属電極1242と金属電極1243とには、電気信号が供給されるようになっている。
【0050】
絶縁基板1240は、二酸化珪素(SiO2)を主成分とする基板であり、強誘電体コンデンサをのせるようになっている。強誘電体膜1241は、一般にPZT、PZTN、SBT等が用いられる。なお、前述したPZTとはPb(Zr,Ti)O3の総称であり、またPZTNとはPZTのTiの一部をNbで置き換えたものの総称であり、またSBTとはSrBi2Ta2O9もしくはそれに近い組成の総称である。また、金属電極1242と金属電極1243は、一般に白金(Pt)が用いられる。
【0051】
図11に示す構造からなる従来の強誘電体コンデンサの分極電荷−印加電圧特性のヒステリシス特性は、一般に知られている図8に示すものとなる。図8の特性は、横軸の印加電圧に対して対称形の特性を示している。
図12は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第1の例を示す断面図である。
【0052】
この強誘電体コンデンサは、図12に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1340上に形成され、金属膜からなる金属電極1342と、電極として機能する酸化物導電性膜1344とによって、強誘電体膜1341の両側を挟むようにしたものである。そして、金属電極1342と電極としての酸化物導電性膜1344には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0053】
強誘電体膜1341の材料としては、図11に示す強誘電体膜1241と同様に、PZT、PZTN、SBT等が用いられる。また、第1電極である酸化物導電性膜1344の材料としてはRuO2、IrO2などが使用され、第2電極である金属電極1342の材料としては白金(Pt)などが使用される。
ここで、第1電極および第2電極は、仕事関数の異なる材料からなる金属膜から形成するようにしても良い。
【0054】
このような構成からなる強誘電体コンデンサでは、第1電極である酸化物導電性膜1344と、第2電極である金属電極1342とではその構成材料が異なる。このため、その両電極の間には仕事関数差があり、その仕事関数差だけ、電圧軸上で分極電荷−印加電圧特性はずれて平行移動する(例えば図1参照)。また、第1電極と第2電極の材料に何を選ぶかによって仕事関数の差も変わり、その特性の移動の度合いや方向も変えることができる。
【0055】
図13は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第2の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図13に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1440上に形成され、電極として機能する酸化物導電性膜1445と、金属膜からなる金属電極1443とによって、強誘電体膜1441の両側を挟むようにしたものである。そして、電極としての酸化物導電性膜1445と金属電極1443とには、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0056】
ここで、図13と図12の構造上の違いは、金属電極を上部電極に用いたか下部電極に用いたかの差違であり、分極電荷−印加電圧特性の移動の方向が異なる。また製造上の難易度によってどちらも選択可能である。
図14は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第3の例を示す断面図である。
【0057】
この強誘電体コンデンサは、図14に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1540上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1542、1543によって、強誘電体膜1541の両側を挟むとともに、金属電極1542の表面側に導体膜1553を密着させるようにしたものである。そして、金属電極1542には電気信号が直接供給され、金属電極1543には電気信号が導体膜1553を介することにより供給されるようになっている。
【0058】
導体膜1553は、不純物原子を含んだポリシリコンからなる。ポリシリコンは、半導体であるが、不純物原子をドープすることにより導電性を有するので、導体として扱うことができる。従って、導体膜1553はシリコンを材料とするが、シリコンは4価の原子であるので、不純物原子としては3価の原子ホウ素(硼素B)や5価の原子リン(燐P)等が使用される。
【0059】
このような構造からなる強誘電体コンデンサでは、金属電極1543の表面に不純物を含んだ導体膜1553が付加されているので、その分極電荷−印加電圧特性は導体膜1553と金属電極1543の仕事関数差だけ平行移動する。このとき、導体膜1553を形成するシリコンに添加される不純物原子として3価の原子または5価の原子のどちらかを選ぶかにより、特性曲線の移動の方向を選択でき、かつ不純物原子のイオンのドープ量によって仕事関数が変化するので、その平行移動の移動量を変えることができる。
【0060】
なお、図14の強誘電体コンデンサでは、金属電極1543の表面に導体膜1553を密着させるようにしたが、金属電極1543をポリシリコンからなる導体膜1553だけで形成するようにしても良い。
図15は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第4の例を示す断面図である。
【0061】
この強誘電体コンデンサは、図15に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1640上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1642、1643によって、強誘電体膜1641の両側を挟むとともに、金属電極1642の表面側に導体膜1652を密着させるようにしたものである。導体膜1652は、図14に示す導体膜1543と同様なポリシリコンからなる。そして、金属電極1643には電気信号が直接供給され、金属電極1642には電気信号が導体膜1652を介することにより供給されるようになっている。
【0062】
このような構造からなる強誘電体コンデンサでは、金属電極1642の表面側に不純物を含んだ導体膜1652が密着(付加)されているので、その分極電荷−印加電圧特性は導体膜1652と金属電極1642の仕事関数差だけ平行移動する。
ここで、図15と図14との構造上の違いは、ポリシリコンからなる導体膜を上部電極に用いたか下部電極に用いたかの差違であり、分極電荷−印加電圧特性の移動の方向が異なる。
【0063】
図16は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第5の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図16に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1740上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1742、1743によって、強誘電体膜1741の両側を挟むとともに、金属電極1742、1743の各表面側に異なる不純物原子を含むポリシリコンからなる導体膜1752、1753をそれぞれ密着させるようにしたものである。そして、金属電極1742には電気信号が導体膜1752を介することにより供給され、金属電極1743には電気信号が導体膜1753を介することにより供給されるようになっている。
【0064】
このような構造からなる強誘電体コンデンサでは、金属電極1742はその表面側に第1の不純物原子を含んだ導体膜1752が密着され、金属電極1743はその表面側に第1の不純物原子とは異なる第2の不純物原子を含んだ導体膜1753が密着されている。このため、強誘電体コンデンサとしての分極電荷−印加電圧特性は、導体膜1752と金属電極1742の仕事関数差、および導体膜1753と金属電極1743の仕事関数差の合計だけ平行移動する。したがって、分極電荷−印加電圧特性の平行移動の量を大きく、かつ自由に設定できる。
【0065】
なお、図16の強誘電体コンデンサでは、金属電極1742、1743の各表面に導体膜1752、1753をそれぞれ密着させるようにしたが、金属電極1742、1743をポリシリコンからなる導体膜1752、1753だけで形成するようにしても良い。
図17は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第6の例を示す断面図である。
【0066】
この強誘電体コンデンサは、図17に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1840上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1842、1843によって、強誘電体膜1841の両側を挟むとともに、金属電極1843はその裏面側に導体膜1853を密着させるようにしたものである。導体膜1853は、図14に示す導体膜1553と同様なポリシリコンからなる。そして、金属電極1842、1843には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0067】
このような構造からなる強誘電体コンデンサを図14に示すものと比較すると、図14に示す上部側の導体膜1553と金属電極1543が、図17では金属電極1843と導体膜1853とにその上下が入れ替わっている点が異なる。
したがって、図17に示す強誘電体コンデンサでは、その分極電荷−印加電圧特性が図14に示す強誘電体コンデンサの特性と同じように平行移動する。図14の構造を選ぶか図17の構造を選ぶかは、主に製造上の容易さと信頼性による。
【0068】
図18は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第7の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図18に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板1940上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極1942、1943によって、強誘電体膜1941の両側を挟むとともに、金属電極1942はその裏面側に導体膜1952を密着させるようにしたものである。導体膜1952は、図15に示す導体膜1652と同様なポリシリコンからなる。そして、金属電極1942、1943には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
【0069】
このような構造からなる強誘電体コンデンサを図15に示すものと比較すると、図15に示す下部側の導体膜1652と金属電極1642が、図18では金属電極1942と導体膜1952とにその上下が入れ替わっている点が異なる。
したがって、図18に示す強誘電体コンデンサでは、その分極電荷−印加電圧特性が図15に示す強誘電体コンデンサの特性と同じように平行移動する。図15の構造を選ぶか図18の構造を選ぶかは、主に製造上の容易さと信頼性による。
【0070】
図19は、本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第8の例を示す断面図である。
この強誘電体コンデンサは、図19に示すように、二酸化珪素を主成分とする絶縁基板2040上に形成され、金属膜からなる2つの金属電極2042、2043によって、強誘電体膜2041の両側を挟むとともに、金属電極2042はその裏面側に導体膜2052を密着させ、かつ、金属電極2043はその裏面側に導体膜2053を密着させるようにしたものである。
【0071】
導体膜2052、2053は、図16に示す導体膜1752、1753と同様に、半導体膜にそれぞれ別の不純物原子を含んだポリシリコンからなる。また、金属電極2042、2043には、それぞれ電気信号が供給されるようになっている。
このような構造からなる強誘電体コンデンサを図16に示すものと比較すると、図16に示す下部側の金属電極1742と導体膜1752、および上部側の金属電極1743と導体膜1753が、図19では金属電極2042と導体膜2052、および金属電極2043と導体膜2053に、その上下がそれぞれ入れ替わっている点が異なる。
【0072】
したがって、図19に示す強誘電体コンデンサでは、その分極電荷−印加電圧特性が図16に示す強誘電体コンデンサの特性と同じように平行移動する。図16の構造を選ぶか図19の構造を選ぶかは、主に製造上の容易さと信頼性による。また、図19の構造は、図16の構造と同様に分極電荷−印加電圧特性の平行移動の量を大きく、かつ自由に設定できる。
(その他)
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の本質は、強誘電体膜を挟む2つの端子の電極材料の仕事関数の相違を利用して、強誘電体コンデンサとしての分極電荷−印加電圧特性を電圧軸方向に平行移動させ、強誘電体コンデンサを外部から見たときのヒステリシス特性を非対称とし、その非対称性から生ずる微小電圧による出力電荷の差異を利用して内部状態を検出するものである。したがって、以上の条件を満たすものならば他の方法でもよい。
【0073】
例えば、図12、13で用いた仕事関数の異なる電極材料を用いる手法と、図14、図15、図16で用いた導体膜を用いる手法とを組み合わせてもよい。
また、メモリセル構造としては1T1Cと1Cについて図2、図6で述べたが、従来から、よく用いられている2T2Cのメモリセル構造の破壊読み出しについて本発明の非破壊読み出し手法は適用できて、寿命を延ばすこともできる。かつ、他のメモリセル構造に対しても周辺回路の制御方式を変更すれば同様に適用できる。
【0074】
また、センスアンプ回路として図4の回路を示したが、これは回路動作原理を説明するために一番簡単な回路を例としてあげたもので、実際には様々な回路があり、かつ用いることができる。
また、メモリ装置全体の構成例として図5の回路ブロック図に示したが、これはメモリ装置の最も簡単で一般的な回路ブロックの例であって、回路ブロックを分割、あるいは統合してもよいし、また他の機能回路を付け加えてもよい。
【0075】
また、強誘電体膜の材料としては前述した、PZT、PZTN、SBT以外のものを用いてもよい。例えば(Ba,Sr)TiO3、Bi4Ti3O12、BaBiNb2O9等々がある。また、組成の割合が変われば無数にある。
また、酸化物導電性膜の材料としては前述したRuO2、IrO2以外にSrRuO3、RhO2等でもよい。
【0076】
また、金属膜の電極の材料として前述した白金(Pt)以外でも可能で、Ta、Tiを用いてもよいし、Pt/Tiの合金を用いてもよい。
また、半導体膜に不純物原子を含んだ導体膜の材質はポリシリコン以外でも良いし、また、不純物原子は3価や5価の原子であれば他の原子も有力である。
さらに、不純物原子のドープ量を変えれば仕事関数が変わり、強誘電体コンデンサとしての分極電荷−印加電圧特性を電圧軸方向に平行移動させる移動量を変えることがで、かつ適正値に調整できる。 以上、強誘電体膜の特性に合う最適な特性と製造上の課題により、材質や構造を選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の第一例を示す特性図である。
【図2】本発明の強誘電体メモリ装置に用いるメモリセルの第1の構成例を示す回路図である。
【図3】図2に示すメモリセルからデータを読み出す際の各部の信号あるいは変位を示すタイミングチャート図である。
【図4】本発明の強誘電体メモリ装置に用いるセンスアンプの回路図である。
【図5】本発明の強誘電体メモリ装置の全体の構成概要を示すブロック図である。
【図6】本発明の強誘電体メモリ装置に用いるメモリセルの第2の構成例を示す回路図である。
【図7】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の第2例を示す特性図である。
【図8】従来の強誘電体コンデンサの分極電荷−印加電圧特性の一例を示す特性図である。
【図9】従来の破壊読み出し強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の一例を示す特性図である。
【図10】従来の非破壊読み出し強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの分極電荷と印加電圧の特性の他の例を示す特性図である。
【図11】従来の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造を示す断面図である。
【図12】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第1例を示す断面図である。
【図13】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第2例を示す断面図である。
【図14】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第3例を示す断面図である。
【図15】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第4例を示す断面図である。
【図16】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第5例を示す断面図である。
【図17】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第6例を示す断面図である。
【図18】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第7例を示す断面図である。
【図19】本発明の強誘電体メモリ装置に用いる強誘電体コンデンサの構造の第8例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
211、311A、311B・・・強誘電体コンデンサ、212・・・MOSFET、213、316・・・ワード線、214、317A、317B・・・ビット線、215・・・プレート線、420・・・コンパレータ回路、421・・・入力信号端子、422・・・リファレンス電圧端子、423・・・出力端子、531・・・メモリセル群、532・・・ワード線選択回路、533・・・ビット線選択回路、534・・・センス回路、535・・・ライト回路、536・・・入出力回路、537・・・全体制御回路、1240、1340、1440、1540、1640、1740、1840、1940、2040・・・基板、1241、1341、1441、1541、1641、1741、1841、1941・・・強誘電体膜、1242、1243、1342、1443、1542、1543、1642、1643、1742、1743、1842、1843、1942、1943、2042、2043・・・金属電極、1344、1445・・・酸化物導電性膜、1553、1652、1752、1753、1853、1952、2052、2053・・・導体膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、
を少なくとも有することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項2】
第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、
前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、
前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっていることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が金属膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質の金属とは仕事関数が異なる金属膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質が含む不純物原子と異なる原子価の半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項7】
請求項4または請求項6において、
前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項8】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、
を少なくとも有することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項9】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、
前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、
前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっていることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、
前記第1の導電物質もしくは前記第2の導電物質が、半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項12】
請求項8または請求項9において、
前記第1の導電物質、もしくは前記第2の導電物質が、酸化物導電性膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項13】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、
を少なくとも有することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項14】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、
前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、
前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっていることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項15】
請求項13または請求項14において、
前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜は半導体膜としてポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項17】
請求項13または請求項14において、前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項18】
請求項1から請求項17のうちのいずれかにおいて、
前記強誘電体コンデンサは、1トランジスタ・1キャパシタ型のメモリセルを構成することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項19】
請求項1から請求項17のうちのいずれかにおいて、
前記強誘電体コンデンサは、1キャパシタ型のメモリセルを構成することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項20】
請求項1から請求項17のうちのいずれかにおいて、
前記強誘電体コンデンサの強誘電体薄膜は、PZT、PZTN、もしくはSBTからなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項1】
第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、
を少なくとも有することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項2】
第1の導電物質からなる第1電極と、前記第1の導電物質とは仕事関数の異なる第2の導電物質からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、
前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、
前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっていることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が金属膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が金属膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質の金属とは仕事関数が異なる金属膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなり、かつ前記第2の導電物質が前記第1の導電物質が含む不純物原子と異なる原子価の半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項7】
請求項4または請求項6において、
前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項8】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、
を少なくとも有することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項9】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、第2の導電物質が密着した金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、
前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、
前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっていることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、
前記第1の導電物質もしくは前記第2の導電物質が、半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜はポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項12】
請求項8または請求項9において、
前記第1の導電物質、もしくは前記第2の導電物質が、酸化物導電性膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項13】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有する複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルのうちの1つを選択するアドレス選択回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するための書き込み回路と、
前記アドレス選択回路で選択されたメモリセルの強誘電体コンデンサに強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するための読み出し回路と、
を少なくとも有することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項14】
第1の導電物質が密着した金属膜からなる第1電極と、金属膜からなる第2電極とで強誘電体膜を挟んだ構造の強誘電体コンデンサを有するメモリセルを備え、
前記強誘電体コンデンサにデータを書き込む際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より大きい電圧を印加するようになっており、
前記強誘電体コンデンサからデータを読み出す際には、その強誘電体コンデンサに対して強誘電体膜の抗電界より小さい電圧を印加するようになっていることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項15】
請求項13または請求項14において、
前記第1の導電物質が半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記半導体膜に不純物原子をドープして導電性となった導体膜は半導体膜としてポリシリコンであり、かつ前記不純物原子は3価もしくは5価の原子価からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項17】
請求項13または請求項14において、前記第1の導電物質が酸化物導電性膜からなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項18】
請求項1から請求項17のうちのいずれかにおいて、
前記強誘電体コンデンサは、1トランジスタ・1キャパシタ型のメモリセルを構成することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項19】
請求項1から請求項17のうちのいずれかにおいて、
前記強誘電体コンデンサは、1キャパシタ型のメモリセルを構成することを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【請求項20】
請求項1から請求項17のうちのいずれかにおいて、
前記強誘電体コンデンサの強誘電体薄膜は、PZT、PZTN、もしくはSBTからなることを特徴とする強誘電体メモリ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−32526(P2006−32526A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207008(P2004−207008)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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