説明

弾性表面波発振器及びその周波数可変方法

【課題】発振周波数の連続性を備えながら広帯域化を実現する。
【解決手段】弾性表面波発振器1は、出力端子OUT1と出力端子OUT2に差動接続されたクロスカップル型回路10と、クロスカップル型回路10に並列に接続される共振周波数の異なるSAW共振子20,30と、出力端子OUT1から印加される第1の制御電圧に応じて容量値が変化するバリキャップダイオード50を含みSAW共振子20共振周波数を変化させる可変容量回路100と、出力端子OUT2から印加される第2の制御電圧に応じて容量値が変化するバリキャップダイオード60を含みSAW共振子30の共振周波数を変化させる可変容量回路200と、を有し、SAW共振子20と可変容量回路100、SAW共振子30と可変容量回路200、とが接続され、クロスカップル型回路10によって、SAW共振子20とSAW共振子30との結合された発振出力を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振周波数の異なる弾性表面波素子とこれらを差動接続するクロスカップリング型回路とからなる弾性表面波発振器、及びその周波数可変方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信機などでは、割り当てられた使用周波数帯域の中の多数チャネルを切り換えて通信が行われるため、制御チャネルで指定されたチャネル(周波数)に切り換える必要があり、PLL(Phase Locked Loop)によるシンセサイザが用いられている。このPLL回路には、通常、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)が用いられ、制御電圧を与えて発振周波数が切り換えられる。制御電圧を与えて発振周波数を切り換えるVCOの従来例として、例えば特許文献1の図3に示すように、可変容量ダイオードに制御電圧を印加することにより静電容量を変化させ、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子の共振点をシフトさせ発振周波数を変化させる方法がある。
【0003】
しかし、使用周波数帯域内でチャネルを切り換える場合、その周波数帯域のすべてのチャネルにわたって高いSN比(信号電力と雑音電力との比)とCN比(搬送波電力と雑音電力との比)が要求される。しかし、上記従来のVCOでは、周波数帯域内のすべてに対してSN比,CN比を高く保つことが難しく、周波数の変化量が大きくなるとSN比やCN比が低下するという欠点がある。逆に、SN比,CN比を高く保つようにすると周波数可変範囲が狭くなってしまうという課題がある。このような課題を技術的に解決するには、VCOを二つ用いて周波数帯域の半分ずつを割り当てる方法があるが、VCOを二つ用いると通信機の小形化に逆行し実用的な課題解決とは言えない。
【0004】
この問題を解決するために、例えば特許文献1には、二つのSAW素子を並列に接続し、各々を切り換えて使用する方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−213838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、二つのSAW素子を切り換えた際に出力される発振周波数を連続的に切り換えることができないという課題を有している。
【0007】
本発明の目的は、発振周波数の連続性を備えながら弾性表面波発振器の広帯域化を実現することと、複雑な制御なしで周波数を調整できる周波数可変方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の弾性表面波発振器は、第1の出力端子と第2の出力端子に差動接続された一対の第1の能動素子及び第2の能動素子を含むクロスカップル型回路と、前記クロスカップル型回路に並列に接続される共振周波数の異なる第1の弾性表面波素子及び第2の弾性表面波素子と、第1の制御端子から印加される第1の制御電圧に応じて容量値が変化する第1の可変容量素子を含み前記第1の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第1の可変容量回路と、第2の制御端子から印加される第2の制御電圧に応じて容量値が変化する第2の可変容量素子を含み前記第2の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第2の可変容量回路と、を有し、前記第1の弾性表面波素子と前記第1の可変容量回路、前記第2の弾性表面波素子と、前記第2の可変容量回路と、が接続され、前記クロスカップル型回路によって、前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子との結合された発振出力を出力することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、クロスカップル型回路に並列に接続された共振周波数の異なる第1の弾性表面波素子と第2の弾性表面波素子に、第1の可変容量素子と第2の可変容量素子を介して第1の制御電圧または第2の制御電圧を印加し、第1の弾性表面波素子と第2の弾性表面波素子とを発振させる。この際、クロスカップル型回路にて第1の弾性表面波素子と第2の弾性表面波素子との結合された発振出力を出力するので、各々の発振周波数を連続的に切り換えて出力させることができ、広帯域な発振周波数を連続性を有して出力することができる。
【0010】
前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子は、前記クロスカップル型回路と前記第1の可変容量回路と前記第2の可変容量回路とを含む半導体チップ上に積層されて形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、半導体チップ(集積回路)の基板上に積層して形成された2つの弾性表面波素子を並列して設けているので、概ね2個分の弾性表面波素子の面積で済み、面積の増加を抑え小型化を実現できる。
【0012】
また、本発明の弾性表面波発振器の周波数可変方法は、第1の出力端子と第2の出力端子に差動接続された一対の第1の能動素子及び第2の能動素子を含むクロスカップル型回路と、前記クロスカップル型回路に並列に接続される共振周波数の異なる第1の弾性表面波素子及び第2の弾性表面波素子と、第1の制御端子から印加される第1の制御電圧に応じて容量値が変化する第1の可変容量素子を含み前記第1の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第1の可変容量回路と、第2の制御端子から印加される第2の制御電圧に応じて容量値が変化する第2の可変容量回路含み前記第2の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第2の可変容量回路と、を有し、前記第1の弾性表面波素子と前記第1の可変容量回路、前記第2の弾性表面波素子と、前記第2の可変容量回路と、が接続され、前記クロスカップル型回路によって、前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子との結合された発振出力を出力する弾性表面波発振器の周波数可変方法であって、前記第1の制御電圧及び前記第2の制御電圧の電圧値を変えることにより、前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子の発振周波数を変化させることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、第1の制御端子に印加する第1の制御電圧を変化させることで第1の可変容量素子の容量値(コンデンサ容量)が変化し、この容量値に対応して第1弾性表面波素子の共振周波数がほぼ連続的に変化する。また、第2の制御端子に印加する第2の制御電圧を変化させることで第2の可変容量素子の容量値(コンデンサ容量)が変化し、この容量値に対応して第2弾性表面波素子の共振周波数が連続的に変化する。
そして、第1弾性表面波素子と第2表面波素子とは、互いに異なる共振周波数を有してクロスカップリング型回路に並列に接続しているので、第1の弾性表面波素子と第2の弾性表面波素子の発振周波数の広帯域化を実現し、且つ発振周波数を連続性を有して変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本実施形態に係る弾性表面波発振器の構成、作用及び周波数可変方法を示し、図5〜図18には本実施形態の変形例に係る弾性表面波発振器の構成を示している。
(実施形態)
【0015】
まず、本発明の実施形態に係る弾性表面波発振器の構成について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。
【0016】
図1において、弾性表面波発振器1は、第1の出力端子としての出力端子OUT1と第2の出力端子としての出力端子OUT2と接続されたクロスカップル型回路10とカレントミラー回路11、第1の弾性表面波素子としてのSAW共振子20と、第2の弾性表面波素子としてのSAW共振子30と、第1の制御端子である制御端子Vcont1と接続された第1の可変容量回路100と、第2の制御端子である制御端子Vcont2と接続された第2の可変容量回路200と、から構成されている。
【0017】
クロスカップル型回路10は、出力端子OUT1と出力端子OUT2に差動接続された一対の第1の能動素子であるNchトランジスタN1(以降、単にトランジスタN1と表す)及び第2の能動素子であるNchトランジスタN2(以降、単にトランジスタN2と表す)とから構成され、PchトランジスタP1,P2(以降、単にトランジスタP1,P2と表す)とからなるカレントミラー回路11及び定電流源40に接続されている。
【0018】
トランジスタP1は、ソース端子が電源線VDD(以降、単にVDDと表す)に接続され、ゲート端子とドレイン端子が出力端子OUT1に接続されている。トランジスタP2は、ソース端子がVDDに接続され、ゲート端子が出力端子OUT1に接続され、ドレイン端子が出力端子OUT2に接続されている。また、トランジスタN1は、ソース端子が定電流源40を介して接地電位線GNDに接続され、ゲート端子が出力端子OUT2に接続され、ドレイン端子が出力端子OUT1に接続されている。トランジスタN2は、ソース端子が定電流源40を介して接地電位線GNDに接続され、ゲート端子が出力端子OUT1に接続され、ドレイン端子が出力端子OUT2に接続されている。
【0019】
可変容量回路100は、第1の可変容量素子であるバリキャップダイオード50を有する。バリキャップダイオード50は、カソード端子が制御端子Vcont1に接続され、アノード端子が接地電位線GNDに接続されている。
【0020】
可変容量回路200は、第2の可変容量素子であるバリキャップダイオード60を有する。バリキャップダイオード60は、カソード端子が制御端子Vcont2に接続され、アノード端子が接地電位線GNDに接続されている。
【0021】
SAW共振子20は、半導体チップの基板上に圧電薄膜と励振電極とが積層形成されており、一方の端子が出力端子OUT1に接続され、他方の端子が可変容量回路100のバリキャップダイオード50のカソード端子と接続されている。つまり、SAW共振子20とバリキャップダイオード50とは、接地電位線GNDと出力端子OUT1(クロスカップル型回路10)との間で直列に接続されている。
【0022】
SAW共振子30は、半導体チップの基板上に圧電薄膜と励振電極とが積層形成されており、一方の端子が出力端子OUT2に接続され、他方の端子が可変容量回路200のバリキャップダイオード60のカソード端子と接続されている。つまり、SAW共振子30とバリキャップダイオード60とは、接地電位線GNDと出力端子OUT2(クロスカップル型回路10)との間で直列に接続されている。
【0023】
なお、SAW共振子20とSAW共振子30の共振周波数は、わずかに異なるように設定されている。
【0024】
図1に示すように、弾性表面波発振器1は、クロスカップル型回路10の出力端子OUT1と出力端子OUT2との間に、SAW共振子20と可変容量回路100が接地電位線GNDに接続、可変容量回路200とSAW共振子30が接地電位線GNDに接続されている。従って、クロスカップル型回路10に対してSAW共振子20と可変容量回路100、SAW共振子30と可変容量回路200は並列接続の関係にある。
【0025】
次に、弾性表面波発振器の動作について図面を参照して説明する。
図2、図3は、弾性表面波発振器の作用を説明するグラフである。図2のグラフは、弾性表面波発振器の第1の制御端子及び第2の制御端子に同一の電圧(すなわち第1の制御電圧=第2の制御電圧)を変化させながら印加した場合を例示している。図3は、図2の横軸を拡大した図である。
【0026】
横軸には周波数(MHz)、左縦軸には反射係数(S11:dB)、右縦軸には位相特性(phase:ω)を表している。図示される反射係数S11及び位相特性(Phase)の複数のグラフは、それぞれ第1の制御電圧、第2の制御電圧を変化させたときを表している。位相特性ω=0のときの反射係数S11が最も低くなる点との交点が出力周波数に相当する。図2,3に示すように、反射係数S11のグラフにおいて315.05MHz〜315.10MHZの広範囲で反射係数S11が低下している。つまり、この範囲で周波数を連続的に可変できる事を示している。
【0027】
図4は、本実施形態に係る弾性表面波発振器のバリキャップダイオード50,60の容量値(コンデンサ容量)と周波数の関係を示すグラフである。つまり、図2,3における周波数変化をプロットしたものであり、この弾性表面波発振器が約315.05〜315.10MHzまで、連続的に周波数を可変できることを示している。
【0028】
図4に示すように、コンデンサ容量に対応して周波数は変化する。具体的には、1pF近傍においてf1=315.105MHz、30pFにおいてf7=315.055MHzが出力され、その間において周波数が非直線に連続性を有して変化する。従って、第1の制御電圧及び第2の制御電圧それぞれを変えることにより、バリキャップダイオード50,60のコンデンサ容量を変化させ、SAW共振子20,30それぞれの所望の出力周波数に調整することができる。なお、図4に示した周波数f1〜f7は、図3に示した周波数f1〜f7と一致している。
【0029】
なお、上述した本実施形態では、制御端子Vcont1及び制御端子Vcont2に印加する電圧が同一の場合について説明したが、それぞれ別の電圧で制御することにより、さらに細分化した周波数に設定することができ、また広帯域化がはかれる。
【0030】
従って、本実施形態によれば、クロスカップル型回路10に並列に接続された共振周波数の異なるSAW共振子20,30それぞれに、バリキャップダイオード50,60を介して第1の制御電圧、第2の制御電圧を印加する。第1の制御電圧及び第2の制御電圧の印加電圧を変化させることで、バリキャップダイオード50,60のコンデンサ容量を変化させて所望の発振周波数でSAW共振子20,30とを発振させる。この際、クロスカップル型回路にてSAW共振子20とSAW共振子30との結合された発振出力を出力するので、各々の発振周波数を連続的に切り換えて出力し、広帯域化と、発振周波数を連続性を有して変化させることができる。
【0031】
また、SAW共振子20,30は、クロスカップル型回路10と第1の可変容量回路100と第2の可変容量回路200とを含む半導体チップの基板上に積層され構成されている。このような構成によれば、弾性表面波発振器1は2個分の弾性表面波素子(SAW共振子20,30)の面積で済み、面積の増加を抑え小型化を実現できる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることができる。以下、回路構成の変形例を挙げて説明する。なお、図1、図5〜図9は、バリキャップダイオードがNMOS型の場合、図10〜図14はPMOS型の場合を例示している。
(変形例1)
【0033】
図5は、本発明の変形例1に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例1は、前述した実施形態(図1、参照)に対して、弾性表面波発振器1がクロスカップル型回路10(トランジスタN1とトランジスタP1の間)と出力端子OUT1の間にコンデンサC1が接続され、クロスカップル型回路10(トランジスタN2とトランジスタP2の間)と出力端子OUT2の間にコンデンサC2が接続されていることが異なる。
【0034】
また、出力端子OUT1と接地電位線GNDとの間にSAW共振子20、可変容量回路100の順で直列接続され、出力端子OUT2と接地電位線GNDとの間にSAW共振子30可変容量回路200の順で直列接続されている。このような構成であっても前述した実施形態と同様な作用効果が得られる。
(変形例2)
【0035】
図6は、本発明の変形例2に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例2は、弾性表面波発振器1が可変容量回路100(バリキャップダイオード50)と出力端子OUT1の間にコンデンサC1が接続され、可変容量回路200(バリキャップダイオード60)と出力端子OUT2の間にコンデンサC2が接続されている。
【0036】
また、出力端子OUT1と接地電位線GNDとの間に、コンデンサC1、SAW共振子20、可変容量回路100の順に直列接続され、一方出力端子OUT2と接地電位線GNDとの間に、コンデンサC2、可変容量回路200、SAW共振子30の順に直列接続されている。図6に示すようにクロスカップル型回路10に対して左右が非対称の構成としても、前述した実施形態と同様な作用効果を奏する。
なお、コンデンサC1,C2のうち、どちらか一方だけにしてもよい。
(変形例3)
【0037】
図7は、本発明の変形例3に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例3は、弾性表面波発振器1が、出力端子OUT1とVDDの間にSAW共振子20、可変容量回路100を直列接続し、出力端子OUT2とVDDの間に、SAW共振子30、可変容量回路200を直列接続していることに特徴を有している。クロスカップル型回路10の構成は前述した実施形態(図1、参照)と同じである。
(変形例4)
【0038】
図8は、本発明の変形例4に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例4は、上述した変形例3(図7、参照)にコンデンサC1,C2を付加したことに特徴を有している。図8に示すように弾性表面波発振器1は、クロスカップル型回路10(トランジスタN1とトランジスタP1の間)とVDDの間にコンデンサC1とSAW共振子20と可変容量回路100とを直列接続し、クロスカップル型回路10(トランジスタN2とトランジスタP2の間)とVDDの間にコンデンサC2とSAW共振子30と可変容量回路200とを直列接続している。
(変形例5)
【0039】
図9は、本発明の変形例5に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例5は、上述した変形例4(図8、参照)に対して付加するコンデンサC1,C2の配置位置を変更している。図9に示すように弾性表面波発振器1は、SAW共振子20と出力端子OUT1の間にコンデンサC1が接続され、SAW共振子30と出力端子OUT2の間にコンデンサC2が接続されている。従って、出力端子OUT1とVDDの間にコンデンサC1とSAW共振子20と可変容量回路100とが直列接続されている。一方、出力端子OUT2とVDDの間にコンデンサC2とSAW共振子30と可変容量回路200とが直列接続されている。
(変形例6)
【0040】
図10は、本発明の変形例6に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例6は、図1、図5〜図9に示したクロスカップル型回路10を第1の能動素子及び第2の能動素子をPchトランジスタで構成したクロスカップル型回路12にしたものである。クロスカップル型回路12は、出力端子OUT1と出力端子OUT2に差動接続された一対の第1の能動素子であるPchトランジスタPx1(以降、単にトランジスタPx1と表す)及び第2の能動素子であるPchトランジスタPx2(以降、単にトランジスタPx2と表す)とから構成され、NchトランジスタNx1,Nx2(以降、単にトランジスタNx1,Nx2と表す)から構成されるカレントミラー回路13と、定電流源40と、に接続されている。トランジスタNx1は、ソース端子が接地電位線GNDに接続され、ゲート端子とドレイン端子が出力端子OUT1に接続されている。
【0041】
トランジスタNx2は、ソース端子が接地電位線GNDに接続され、ゲート端子が出力端子OUT1に接続され、ドレイン端子が出力端子OUT2に接続されている。トランジスタPx1は、ソース端子が定電流源40を介してVDDに接続され、ゲート端子が出力端子OUT2に接続され、ドレイン端子が出力端子OUT1に接続されている。トランジスタPx2は、ソース端子が定電流源40を介してVDDに接続され、ゲート端子が出力端子OUT1に接続され、ドレイン端子が出力端子OUT2に接続されている。
また、変形例6に用いられるバリキャップダイオード50,60はPMOS型ダイオードである。
(変形例7)
【0042】
図11は、本発明の変形例7に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例7は、上述した変形例6(図10、参照)に対してコンデンサC1,C2を付加したことに特徴を有している。図11に示すように弾性表面波発振器1は、出力端子OUT1と接地電位線GNDの間にコンデンサC1、SAW共振子20、可変容量回路100とが直列接続され、出力端子OUT2と接地電位線GNDの間にコンデンサC2、SAW共振子30、可変容量回路200とが直列接続されている。
(変形例8)
【0043】
図12は、本発明の変形例8に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例8は、上述した変形例7(図11、参照)に対して付加するコンデンサC1,C2の配置を変えていることに特徴を有している。図12に示すように弾性表面波発振器1は、クロスカップル型回路12(トランジスタPx1とトランジスタNx1の間)と接地電位線GNDとの間に、コンデンサC1、SAW共振子20、可変容量回路100が直列接続され、クロスカップル型回路12(トランジスタPx2とトランジスタNx2の間)と接地電位線GNDとの間に、コンデンサC2、SAW共振子30、可変容量回路200が直列接続されている。
(変形例9)
【0044】
図13は、本発明の変形例9に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例9は、上述した変形例6(図10、参照)に対してコンデンサC1,C2を付加し、可変容量回路100,200の配置を変えていることに特徴を有している。図13に示すように弾性表面波発振器1は、クロスカップル型回路12(トランジスタNx1とトランジスタPx1の間)と接地電位線GNDとの間に可変容量回路100、SAW共振子20が直列接続され、接地電位線GNDと出力端子OUT1の間にSAW共振子20、コンデンサC1が直列接続されている。
【0045】
一方、クロスカップル型回路12(トランジスタNx2とトランジスタPx2の間)と接地電位線GNDとの間に可変容量回路200、SAW共振子30が直列接続され、接地電位線GNDと出力端子OUT2の間にSAW共振子30、コンデンサC2が直列接続されている。
(変形例10)
【0046】
図14は、本発明の変形例10に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。変形例10は、上述した変形例9(図13、参照)の可変容量回路100,200にバリキャップダイオードを二つずつ付加していることに特徴を有している。なお、コンデンサC1,C2は使用していない。図14に示すように弾性表面波発振器1は、クロスカップル型回路12(トランジスタNx1とトランジスタPx1の間)と接地電位線GNDとの間に可変容量回路101(バリキャップダイオード51,50)とSAW共振子20とが直列接続され、バリキャップダイオード51,50の間に制御端子Vcont1が接続されている。そして、出力端子OUT1とクロスカップル型回路12の間にバリキャップダイオード50,51が直列接続されている。
【0047】
一方、クロスカップル型回路12(トランジスタNx2とトランジスタPx2の間)と接地電位線GNDとの間に可変容量回路201(バリキャップダイオード61,60)とSAW共振子30とが直列接続され、バリキャップダイオード61,60の間に制御端子Vcont2が接続されている。そして、出力端子OUT2とクロスカップル型回路12の間にバリキャップダイオード60,61が直列接続されている。
【0048】
以上説明した変形例1〜変形例10(図5〜図14、参照)のような構成であっても、弾性表面波発振器1は、前述した実施形態(図1〜図4、参照)と同様な作用効果を奏することができる。
【0049】
なお、図10〜図14においてPMOS型のバリキャップダイオードを用いる構成について説明したが、図7〜図9に示したNMOS型のバリキャップダイオードを用いる回路構成において、NMOS型をPMOS型のバリキャップダイオードに置き換える回路構成としてもよい(図示は省略する)。
(変形例11)
【0050】
続いて、本発明の変形例11について図面を参照して説明する。変形例11は、前述した実施形態1及びその変形例1〜変形例10が、SAW共振子と可変容量回路とが直列接続されていることに対して並列接続されていることに特徴を有している。なお、バリキャップダイオードとしてはNMOS型を用いた構成を例示して説明する。
【0051】
図15は、本発明の変形例11に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。図15において、弾性表面波発振器1は、出力端子OUT1と出力端子OUT2とを有するクロスカップル型回路10と、SAW共振子20と、SAW共振子30と、制御端子Vcont1と接続された可変容量回路103と、制御端子Vcont2と接続された可変容量回路203と、から構成されている。
【0052】
可変容量回路103は、バリキャップダイオード50とコンデンサC1とを有する。バリキャップダイオード50は、カソード端子が制御端子Vcont1に接続され、アノード端子が接地電位線GNDに接続されている。コンデンサC1は、一方の端子が制御端子Vcont1(バリキャップダイオード50)に接続され、他方の端子が出力端子OUT1に接続されている。
【0053】
可変容量回路203は、バリキャップダイオード60とコンデンサC2とを有する。バリキャップダイオード60は、カソード端子が制御端子Vcont2に接続され、アノード端子が接地電位線GNDに接続されている。コンデンサC2は、一方の端子が制御端子Vcont2(バリキャップダイオード60)に接続され、他方の端子が出力端子OUT2に接続されている。
また、SAW共振子20は、一方の端子が出力端子OUT1に接続され、他方の端子が接地電位線GNDに接続されている。
【0054】
SAW共振子30は、一方の端子が出力端子OUT2に接続され、他方の端子が接地電位線GNDに接続されている。
【0055】
従って、図15に示すように、弾性表面波発振器1は、クロスカップル型回路10と可変容量回路103とSAW共振子20、クロスカップル型回路10と可変容量回路203とSAW共振子30とが並列に接続されて構成されている。
【0056】
続いて、変形例11に係る弾性表面波発振器の作用について図面を参照して説明する。
図16は、変形例11に係るコンデンサ容量と周波数の関係を示すグラフである。図16において、制御端子Vcont1及び制御端子Vcont2に印加する電圧を変化させ、その電圧値の大きさに対応してバリキャップダイオード50,60のコンデンサ容量が変化した際のSAW共振子20,30の周波数の変化を表している。図16に示すように、コンデンサ容量に対応して周波数は変化する。具体的には、0pF近傍においてf1=315.052MHz、30pFにおいてf7=315.034MHzが出力され、その間において周波数(図中、f2〜f6で示す)が連続性を有して変化する。従って、第1の制御電圧及び第2の制御電圧それぞれの電圧値を変えることにより、バリキャップダイオード50,60のコンデンサ容量を変化させ、SAW共振子20,30それぞれ所望の出力周波数に調整することができる。
【0057】
図17は、変形例11に係る弾性表面波発振器の作用を説明するグラフである。なお、図17のグラフは、弾性表面波発振器1の制御端子Vcont1及び制御端子Vcont2に同一の電圧(すなわち第1の制御電圧=第2の制御電圧)を変化させながら印加した場合を例示している。図示される反射係数(S11)及び位相特性(Phase)の複数のグラフは、それぞれ第1の制御電圧、第2の制御電圧を変化させたときを表している。図17に示すように反射係数(S11)のグラフにおいて、314.97MHz〜315.09MHzの広範囲で利得が得られている。
【0058】
そして、位相特性ω=0のときの反射係数S11が最も低くなるときの交点が出力周波数に相当することから周波数f1〜f7(f4、f5、f6は図示の都合上省略している)が得られる。周波数f1〜f7は、図16において示した周波数f1〜f7に相当する。従って、出力周波数は、f1〜f7の間で連続性を有して変化させることができる。
【0059】
上述した変形例11のようにSAW共振子と可変容量回路とを並列接続する構成においても、直列接続する構成に対してコンデンサ容量の変化に対する周波数感度が若干低くなるものの連続性を有して出力周波数を変化させ、広帯域化を実現することが出きる。
【0060】
なお、上述した変形例11では、制御端子Vcont1及び制御端子Vcont2に印加する電圧が同一の場合について説明したが、それぞれ別の電圧で制御することにより、さらに細分化した周波数、広帯域に設定することができる。
(変形例12)
【0061】
次に、本発明の変形例12に係る弾性表面波発振器について図面を参照して説明する。変形例12は、上述した変形例11(図15、参照)に対して可変容量回路にバリキャップダイオードを二つずつ付加し、コンデンサC1,C2を削除していることに特徴を有している。
図18は、変形例12に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図である。図18において、弾性表面波発振器1は、クロスカップル型回路10と可変容量回路104とSAW共振子20、クロスカップル型回路10と可変容量回路204とSAW共振子30とが並列に接続され構成されている。
【0062】
可変容量回路104は、出力端子OUT1と接地電位線GNDの間にバリキャップダイオード51,50が直列接続され、バリキャップダイオード51とバリキャップダイオード50の間に制御端子Vcont1が接続され構成されている。
【0063】
一方、可変容量回路204は、出力端子OUT2と接地電位線GNDの間にバリキャップダイオード61,60が直列接続され、バリキャップダイオード61とバリキャップダイオード60の間に制御端子Vcont2が接続され構成されている。
【0064】
このような変形例12の構成においても、前述した変形例11と同様な効果を奏することができる。
【0065】
なお、変形例11及び変形例12では、NMOS型のバリキャップダイオードを用いる構成を例示して説明したが、PMOS型のバリキャップダイオードを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図2】本発明の実施形態に係る弾性表面波発振器の作用を説明するグラフ。
【図3】図2の横軸拡大図。
【図4】本発明の実施形態に係るコンデンサ容量と周波数の関係を示すグラフ。
【図5】本発明の変形例1に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図6】本発明の変形例2に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図7】本発明の変形例3に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図8】本発明の変形例4に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図9】本発明の変形例5に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図10】本発明の変形例6に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図11】本発明の変形例7に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図12】本発明の変形例8に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図13】本発明の変形例9に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図14】本発明の変形例10に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図15】本発明の変形例11に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【図16】本発明の変形例11に係るコンデンサ容量と周波数の関係を示すグラフ。
【図17】本発明の変形例11に係る弾性表面波発振器の作用を説明するグラフ。
【図18】本発明の変形例12に係る弾性表面波発振器の構成を示す回路図。
【符号の説明】
【0067】
1…弾性表面波発振器、10…クロスカップル型回路、11…カレントミラー回路、20,30…SAW共振子、40…定電流源、50,60…バリキャップダイオード、100,200…可変容量回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の出力端子と第2の出力端子に差動接続された一対の第1の能動素子及び第2の能動素子を含むクロスカップル型回路と、
前記クロスカップル型回路に並列に接続される共振周波数の異なる第1の弾性表面波素子及び第2の弾性表面波素子と、
第1の制御端子から印加される第1の制御電圧に応じて容量値が変化する第1の可変容量素子を含み前記第1の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第1の可変容量回路と、
第2の制御端子から印加される第2の制御電圧に応じて容量値が変化する第2の可変容量素子を含み前記第2の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第2の可変容量回路と、
を有し、
前記第1の弾性表面波素子と前記第1の可変容量回路、前記第2の弾性表面波素子と前記第2の可変容量回路と、が接続され、
前記クロスカップル型回路によって、前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子との結合された発振出力を出力することを特徴とする弾性表面波発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波発振回路において、
前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子は、前記クロスカップル型回路と前記第1の可変容量回路と前記第2の可変容量回路とを含む半導体チップ上に積層され
て形成されていることを特徴とする弾性表面波発振器。
【請求項3】
第1の出力端子と第2の出力端子に差動接続された一対の第1の能動素子及び第2の能動素子を含むクロスカップル型回路と、前記クロスカップル型回路に並列に接続される共振周波数の異なる第1の弾性表面波素子及び第2の弾性表面波素子と、第1の制御端子から印加される第1の制御電圧に応じて容量値が変化する第1の可変容量素子を含み前記第1の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第1の可変容量回路と、第2の制御端子から印加される第2の制御電圧に応じて容量値が変化する第2の可変容量回路を含み前記第2の弾性表面波素子の共振周波数を変化させる第2の可変容量回路と、を有し、前記第1の弾性表面波素子と前記第1の可変容量回路、前記第2の弾性表面波素子と前記第2の可変容量回路と、が接続され、前記クロスカップル型回路によって、前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子との結合された発振出力を出力する弾性表面波発振器の周波数可変方法であって、
前記第1の制御電圧及び前記第2の制御電圧の電圧値を変えることにより、前記第1の弾性表面波素子と前記第2の弾性表面波素子の発振周波数を変化させることを特徴とする弾性表面波発振器の周波数可変方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−219839(P2008−219839A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78414(P2007−78414)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】